説明

刺痛及び唾液分泌組成物

唾液分泌成分、刺痛成分、及びフレーバーを含有する感覚刺激組成物であって、その際、唾液分泌成分が、クエン酸、リンゴ酸及びコハク酸の、又はそれらの塩の少なくとも1つの混合物から形成され、かつ刺痛成分が、Jambu含油樹脂、スピラントール、そのどちらか又は双方を含有するあらゆる抽出物、及びそれらの混合物からなる群から選択された成分から形成される組成物。前記感覚刺激組成物は、改良された唾液分泌特性を有する消費製品の製造を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品摂取に対して口内で有用な感覚をもたらすことができる食品成分及びフレーバー組成物の分野に関する。特に、本発明は、酸味ベースを有する唾液分泌剤、及び刺痛(tingling)成分を含有する唾液分泌及び刺痛組成物に関する。有利には、該刺痛成分は、封入された形で、すなわち押出製品の形であり、かつJambu含油樹脂を含む。
【0002】
本発明は、経口的に摂取できる又は咀嚼された消費製品、特に菓子製品、例えばハードボイルドキャンディー、チューインガム及び圧縮錠剤における、しかし、一般に、食品及び飲料、乳製品、塩味製品例えばスナック及びインスタント食品、ペットフード、機能性食品例えば栄養サプリメント型製品、典型的なオーラルケア製品例えば練り歯磨き、口内洗浄剤及びブレスフィルム、並びに医薬品にもおける、この組成物の使用にも関する。
【0003】
背景技術
三叉神経によって仲介される特定の感覚、例えば冷たい、暖かい、辛い、及び唾液分泌は、このタイプの効果を提供することが可能な経口摂取できる製品の消費に対して消費者の感覚を刺激する。本発明は、特に飲料水及び菓子製品における消費の特に評価された、口内乾燥又は口腔乾燥症の問題を克服する能力と、口内に刺痛/電気的タイプの感覚の付与とを組み合わせる組成物を提供しようとする。
【0004】
これらは、口腔乾燥症の問題を治療することができる組成物の先行技術において報告されている。例えば、International Flavors & Fragrances Inc.のEP 1 454 533 A1号は、食品、例えばチューインガム、ブレスフィルム、練り歯磨き及びロゼンジにおいて、種々の食品用銘柄の許容できる酸の使用を通して、口内で唾液発生を促進する製品を開示している。これは、特に、付香成分を含有する食品用銘柄組成物を開示しており、その際、該付香成分は、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、グルタル酸及びフマル酸からなる群から選択される酸又は酸塩の少なくとも約8質量%を含有し、食品銘柄組成物は、口内で少なくとも1分を費やす。
【0005】
口腔乾燥症の条件に関する問題、及びそれらを軽減することが可能な製品を提供する必要性も挙げている、米国特許出願20030118628 A1号は、唾液分泌剤が菓子製品中にある領域とは別個の及び異なる、唾液分泌剤及び口の快適成分を含有する菓子製品を開示している。製菓基材は、炭水化物又は炭水化物誘導体、すなわち砂糖であってよく、かつ唾液分泌剤は、酸味料、冷却化合物、塩、塩増強剤、グルタミン酸一ナトリウム(MSG)、MSG増強剤、フレーバー及びそれらの混合物を含む。酸味料の混合物は、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸及びアジピン酸を含む。
【0006】
他の米国文献、第4,820,506号及び第4,151,270号は、甘味料、例えばアスパルテーム又はサッカリンとの合成混合物中の、有機酸味料、すなわちクエン酸、リンゴ酸又はアスコルビン酸を含有する、ヒトの唾液の促進のための液体の使用に関する。同様の記載内容において、US 4,088,788号も、チューインガムによって提供される唾液分泌を刺激し、その上筋肉疲労を低減する、有機酸と、サッカリン、並びにナトリウム塩及びカリウム塩との合成混合物を開示している。
【0007】
さらに最近の米国特許5,057,328号及び6,770,308号は、ポリ酢酸ビニル基質中で封入された形での酸味料の使用を記載している。これは、封入された酸味料が、押出調理を受ける場合により少なく劣化され、従って、長く残る酸味及びフレーバーを、それらを取り込む菓子製品に提供することを開示している。同様の記載内容において、US 6,399,141号は、噴霧造粒法及びフマル酸を接触することによって得られる粒状食品の酸組成物の調製物を教示する。
【0008】
全ての前記先行技術の文献は、多くの調理された菓子製品の製造において使用される調理方法の間に、唾液分泌を刺激する酸混合物の、酸混合物と甘味剤との相乗効果を得る試みの、及びそれら食品酸混合物の安定性を改良することを意図した一定の開発の、一般の有用性を証明する。前記文献は、本発明の目的を挙げる又は提案でさえしていない。
【0009】
前記先行技術は、三叉神経を刺激して、冷たい、暖かい、及び刺痛の感覚を提供することが可能な感覚刺激(sensate)混合物の開示に富んでもいる。一つは、多くの先行技術が、この分野、最近の米国特許6,899,901号及び6,780,443号において報告されている中で、この記載内容において挙げることができる。これら文献は、冷たい、暖かい、及び刺痛の成分を含有する感覚刺激組成物の使用に関し、その際、該刺痛成分は、Jambu含油樹脂又はスピラントール(spilanthol)を含む。該文献は、本発明の目的を挙げておらず、唾液分泌混合物への考慮を有するあらゆる教示も有さない。
【0010】
結論として、三叉神経の刺激を提供して、動物及びヒトの口内に、冷たい、暖かい、刺痛及び唾液分泌のタイプの感覚を誘発することが可能な組成物の豊富な先行技術の開示にもかかわらず、知る限りにおいて、それらは、成分、例えばJambu含油樹脂又はスピラントールの刺痛成分を有するよく知られた酸味料の混合物間の相乗効果を得る現在請求されている成分の組み合わせのあらゆる開示又は示唆を決して有さしない。
【0011】
本発明による感覚刺激組成物が、食品有機酸例えばクエン酸、リンゴ酸、コハク酸及び同様の酸の混合物を基礎とした既に公知の唾液分泌剤の唾液分泌効果を高めることを可能にすることを、現在驚くべきことに確立している一方で、Jambu含油樹脂又はスピラントールの一定の形の使用によって多くの所望された刺痛の感覚を提供する。以下の開示から明らかとなるように、特に、固体及び液体の酸味成分の一定の組み合わせと共に、後者の押出された形の使用は、特に菓子の消費製品における望ましくない唾液分泌効果を提供することができる驚くべき組成物を付与する。
【0012】
発明の概要
本発明は、唾液分泌成分、フレーバー及び刺痛成分を含有する組成物を製造することによって確立しており、その際、該唾液分泌成分は、クエン酸、リンゴ酸及びコハク酸、又はそれらの前駆物質の少なくとも1つの混合物を含有し、かつ刺痛成分は、Jambu含油樹脂、スピラントール、そのどちらか又は双方を含有する抽出物、及びそれらの混合物からなる群から選択された成分で形成され、改良された唾液分泌効果を付与する感覚刺激組成物を得ることができる。
【0013】
従って、本発明は、第一の側面において、前記の特徴を有する感覚刺激組成物を提供する。
【0014】
第二の側面において、本発明は、咀嚼されるため、又は口腔及びよりいっそう詳述すればヒトの口を洗浄する、清涼にする、もしくは衛生的にするために使用されるための、意図された口内摂取である消費製品を製造する前記の感覚刺激組成物の使用を提供する。
【0015】
他の側面において、本発明は、本発明の感覚刺激組成物を含有する前記で挙げられたような消費製品、特に食品、オーラルケア製品、医薬品又は栄養サプリメントを提供する。
【0016】
本発明の他の実施態様は、前記で列挙された消費製品を消費すること又は使用することを含む、唾液分泌を刺激する方法に関する。
【0017】
本発明の他の目的は、唾液分泌を促進し、かつ実質的に、一般に特に刺痛成分、すなわちJambu含油樹脂及びJambu含油樹脂を含む天然抽出物の使用と関連させたあらゆるオフノートがない、感覚刺激組成物及び感覚刺激組成物を含む消費製品を提供することであり、その際、それら化合物の高い濃度は、消費製品の味覚的特徴が、この刺痛成分の存在による悪影響がないように存在する。
【0018】
図面の説明
図1は、本発明によって製造され、かつ盲検法の調査員団評価の結果として、先行技術の対照(実施例1)と比較されたハードボイルドキャンディーから、訓練されたパネリストによって知覚された唾液分泌の感覚の比較を示す。差異は、95%(*)及び99%(**)の信頼度のレベルで統計的に有意である。
【0019】
図2は、本発明によって製造され、かつ盲検法の調査員団評価の結果として、先行技術の対照(実施例2)と比較されたチューインガムから、訓練されたパネリストによって知覚された唾液分泌の感覚の比較を示す。差異は、95%(*)及び99%(**)の信頼度のレベルで統計的に有意である。
【0020】
図3は、本発明によって製造され、かつ盲検法の調査員団評価の結果として、先行技術の対照と比較された圧縮錠剤から、訓練されたパネリストによって知覚された唾液分泌の感覚の比較を示す。差異は、95%(*)及び99%(**)の信頼度のレベルで統計的に有意である。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明の感覚刺激組成物は、唾液分泌成分及び刺痛成分、並びにフレーバーを含有し、その際、唾液分泌成分は、クエン酸、リンゴ酸及びコハク酸の、又はそれらの塩の少なくとも1つの混合物から形成され、かつ刺痛成分は、Jambu含油樹脂、スピラントール、そのどちらか又は双方を含有するあらゆる抽出物、及びそれらの混合物からなる群から選択された成分から形成される。
【0022】
好適な一実施態様に続いて、本発明の組成物は、さらに、グリシルリチンを、すなわちアンモニア化された形で、含有する。
【0023】
有用な実施態様によって、本発明の組成物の唾液分泌成分は、食品有機酸の固体混合物、及びフレーバー又は付香成分を含有してよい液体唾液分泌基材の二成分から形成される。双方のそれら一部は、前述された典型的な先行技術において挙げられるように、食品酸味料として一般に使用される食品有機酸を含有する。該唾液分泌成分は、クエン酸、リンゴ酸及びコハク酸、又はそれらの塩の少なくとも1つの混合物を含有する。該唾液分泌成分は、さらに、他の一般に使用される食品酸味料、特にホスホン酸、グルタル酸、アジピン酸、乳酸又はさらにフマル酸を含有してよい。かかる酸の食品の許容できる塩が、本発明による適切な唾液分泌成分であることも明らかである。
【0024】
本発明の感覚刺激組成物における唾液分泌成分の全濃度は、感覚刺激組成物の全質量に対して、有利には10〜98質量%を含み、その際、刺痛成分は、典型的に、混合物の0.005〜1質量%、有利には0.01〜0.1質量%を形成し、かつフレーバーは、感覚刺激組成物の合計の0.01〜1質量%を構成する量でも使用される。
【0025】
典型的に、本発明の感覚刺激組成物は、クエン酸0.01〜60質量%、リンゴ酸0.01〜50質量%、及びコハク酸0.01〜30質量%を含有し、その際、全ての質量は、感覚刺激組成物の全質量に対するものである。
【0026】
前記で挙げられたように、一定量のグリシルリチンを本発明の感覚刺激組成物に添加することが好ましい。この材料の好ましい濃度は、感覚刺激組成物の唾液分泌成分の全質量に対して、0.1〜2質量%を構成する。
【0027】
感覚刺激組成物の刺痛成分は、場合により、抽出物の全質量に対して、スピラントールの少なくとも30質量%、及びより有利には40質量%以上の濃度でスピラントールを含有するあらゆる天然抽出物と共に、Jambu含油樹脂化合物から形成される。
【0028】
一般に市販されているJambu含油樹脂のあらゆる物理的形態で刺痛成分を使用することができるが、本発明によって、一般の押出方法によって製造される、すなわち、例えば先行技術文献のUS 6,607,771号、US 6,607,778号、US 6,932,982号、又はさらにWO 03/56938号において記載されているようなガラス基材中で封入される、固体製品の形状で後者を使用することが好ましい。
【0029】
典型的に、Jambu含油樹脂が取り込まれている炭水化物溶融物の押出によって得られる製品がある。典型的に、かかる押出方法は、その中に封入されるための成分を含有し、かつ前記混合物のガラス転移温度が、最終製品のガラス転移温度であることを確実にするための低い含水率を有する連続相キャリヤーの混合物を製造すること、前記混合物をスクリュー押出機中で90〜130℃までを構成する温度まで加熱して溶融塊を形成すること、並びに押出型を通して溶融塊を押出すことを含む。該溶融塊は、押出型を出る時に、すなわち押出温度で、直接細断され、又は裁断する前に冷却されて、所望の大きさの粒子を形成することができる。
【0030】
このタイプの押出方法は、前記で挙げられているものを含み、及び特に不安定なフレーバー及び芳香材料の封入にも関する先行技術において一般に記載されており、かつかかる方法のより詳細な記載は、本明細書で保証されていない。本発明の感覚刺激組成物の一部を形成する押出されたJambu含油樹脂化合物の製造のための作業条件は、典型的に前記で挙げられた先行技術の文献において、又はさらに、例えば双方ともFirmenich S.A.のWO 2004/082393号及びWO 2006/038067号において記載されたあらゆる一般に公知の溶融物押出法であってよい。これら先行文献は、かかる製品の製造に好まれるキャリヤーの性質も詳細に記載している。
【0031】
感覚刺激組成物の刺痛成分に適当な典型的な押出製品は、スイス、ジュネーブのFirmenich S.A.から入手でき、かつ商品名Durarome(登録商標)及びFlexarome(登録商標)下で商品化されているものと同様である。
【0032】
有利には、10〜18を含むDEを有するマルトデキストリン、及び水素化デンプン水解物とそれらの混合物は、本発明による押出された刺痛成分の基材キャリヤーとして使用される。
【0033】
かかる押出製品は、典型的に、固体押出物の質量に対して、刺痛化合物1〜5質量%での濃度を構成する。
【0034】
本発明の組成物における刺痛成分の濃度は、感覚刺激組成物が向かう所望の刺痛効果及び最終消費製品に依存して、広い範囲の値で変動する。それは、例として、感覚刺激組成物の全質量に対して、0.1〜1質量%を構成する刺痛成分の濃度を挙げることができる。
【0035】
前記で挙げられたように、該刺痛成分は、スピラントール、一般にオランダセンニチとして公知のSpilanthes属の種の活性成分も含んでよい。
【0036】
本発明による感覚刺激組成物の唾液分泌及び刺痛成分は、後者において、それぞれ相対的な濃度比1:1〜10:1で存在する。
【0037】
前述されたように、該組成物は、他の成分、特に付香成分も含んでよい。該付香成分は、該組成物の唾液分泌又は刺痛成分に添加されてもよい。本発明のいつかの実施態様によって、これらは、それらの固体成分中で、もしくは唾液分泌液体基材中で、又は双方中で、フレーバー又は付香組成物の物理的形状に依存して、唾液分泌成分中へ簡単に取り込まれる。
【0038】
"フレーバー又は付香組成物"に関しては、本明細書で、付香成分、又は付香配合物の製造のために現在使用している付香成分、溶剤もしくは補助剤の混合物、すなわち食用の組成物又は咀嚼できる製品に添加して、その感覚刺激性、特にそのフレーバー及び/もしくは味を付与させる、改良させるもしくは改質させることを意図する成分の特定の混合物を意味する。付香成分は、当業者によく知られており、かつそれらの性質は、あらゆる場合において網羅されない、本明細書の詳細な説明を保証せず、その際、熟練したフレーバリストが、一般知識に基づいて、並びに達成するために所望される意図された使用又は適用及び感覚刺激効果によって、それらを選択することができる。多くのこれら付香成分は、関連する文献において、例えば米国ニュージャージー州モントクレアのS.Arctanderによる1969年のPerfume and Flavour Chemicals、もしくはその最新版の本において、又は同様の性質の他の出版物、例えば1975年のCRC出版社のFenaroli’s Handbook of Flavour Ingredients、もしくはM.B.Jacobsによる1947年のNostrand Co.,Inc.のSynthetic Food Adjunctsにおいて挙げられている。付香配合物の製造のために現在使用している溶剤及び補助剤も、当業者によく知られている。これらは、付香配合物を、技術的要求、例えば安定性又は香調の持続性を満たすことを可能にする。該溶剤は、付香組成物の多くの時間の一部である。この記載内容において現在使用される溶剤は、例えばベンジルアルコール、プロピレングリコール、トリアセチン、植物油、エタノール又はリモネンを含む。一方で、補助剤は、付香組成物中の多くの種々の機能を有することができる。該補助剤は、例えば安定剤を含む。今日、付香された製品タイプ及び製品配合物の範囲は、非常に広範囲になり、かつ製品単位で及び使用されうるそれぞれの場合の補助剤のための定義で製造されるその方法が実用的でない、頻繁な変化にさらされる。これが、付香配合物において現在使用される補助剤のリストが本明細書で与えられない理由である。しかしながら、当業者、すなわちフレーバリストは、付香された製品の、及び該配合物中に含まれる付香成分の性質の機能として、それら成分を選択することができる。
【0039】
本発明の感覚刺激組成物は、製菓、飲料又は塩味の物のような種々の食品分野に属する食用の又は咀嚼可能な最終製品の、並びにオーラルケア、医薬品及び栄養サプリメントのタイプの製品の感覚刺激性を改質するために使用されうる。よりいっそう詳述すれば、本発明の組成物は、製品、例えばチューインガム、シュガーアーモンド、圧縮錠剤、ハードボイルドキャンディー、チューイングキャンディーなどにおいて、菓子分野におけるより最新のものを挙げるために使用されうる。飲料の場合において、該組成物は、刺痛及び唾液分泌効果を、炭酸又は非炭酸飲料、アルコール飲料等に付与するために好適である。該組成物は、乳製品用、例えば乳飲料、酸性製品、例えば果物又は乳を付香させた飲料、ヨーグルト等のためにも有用である。
【0040】
本発明の組成物は、塩味適用、例えばドライブレンドさせた調味料、香辛料、スープ、チーズ、バター等において刺痛及び唾液分泌の感覚を付与するためにも好適である。
【0041】
本発明の組成物は、オーラルケア製品、例えば練り歯磨き、口内洗浄剤及び息を改良するフィルムの唾液分泌の感覚を付与するためにも有利に使用される。
【0042】
本発明による組成物を前記の消費製品中に取り込むことができる割合は、広範囲の値で変動する。それらの値は、すぐに消費できる又は咀嚼可能な製品の性質、及び前記製品において使用される感覚刺激組成物の性質に、並びに得るために所望される機能的効果の強度に依存する。
【0043】
典型的に、本発明の感覚刺激組成物は、最終製品を提供するために十分な量で、取り込まれる消費製品、すなわち最終製品の全質量の、0.1〜10質量%、より有利には0.1〜5質量%を構成する酸味料、すなわち食用酸の唾液分泌混合物における濃度で、及び0.1〜2質量%、より有利には0.1〜1質量%を構成する刺痛成分における濃度で、最終製品に添加される。
【0044】
典型的なフレーバー濃度は、最終製品の0.001〜5質量%まで変動し、かつより有利には最終製品の全質量の2%未満である。
【0045】
本発明の感覚刺激組成物が、かかる消費製品において一般に使用される多くの他の活性成分と組み合わされてよいことは言うまでもない。これは、例えば、感覚刺激組成物が、しばしばビタミン、有用な脂肪酸等に含まれる機能性食品、例えば栄養製品又は健康サプリメントに添加されることを意図する場合である。
【0046】
一般の方法において、本発明の感覚刺激組成物は、パン、ウエハース、クッキー、クラッカー、プレッツェル、ピザ、ロール、インスタント朝食用シリアル、ホットシリアル、パスタ製品、スナック、例えば果実スナック、塩味のスナック、穀物ベースのスナック及び電子レンジ用ポップコーン、乳製品、例えばヨーグルト、チーズ及びアイスクリーム、甘味製品、例えばハードキャンディー、ソフトキャンディー及びチョコレート、飲料、動物飼料、ペットフード、例えばドックフード及びキャットフード、水産養殖食品、例えば魚食品及びエビ飼料、特殊食品、例えば乳児食、乳児用調製粉乳、病院食、医療食品及び医薬品、スポーツ食品、パフォーマンス食品(performance food)又は、栄養バー、強化食品、家庭又はフードサービスの使用のためのプレブレンド又はプレミックス食品、例えばスープもしくは肉汁のためのプレブレンド、デザートミックス、ディナーミックス、ベーキングミックス、例えばブレッドミックス及びケーキミックス、並びに焼き物用小麦粉(baking flour)の、刺痛及び唾液分泌の特性を改良する。
【0047】
本発明はまた、かかる最終消費製品に、及び前記の感覚刺激組成物を該製品に添加することによってその感覚刺激性を改良する方法に関する。従って、特に有利に本発明の感覚刺激組成物を構成する、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、ホスホン酸、アスパラギン酸、フマル酸、乳酸、アジピン酸、酢酸の系統、又は前述の刺痛成分と、及び場合によりグリシルリチン、調味料、ミント、アニス、シトラスフレーバー、もしくはさらにあらゆる果実フレーバーの香調と組み合わせられた前記酸の塩における酸の配合物は、消費製品の非常に多種において取り込まれる選び抜かれた製品を提供し、かつ以下で示された実施例は、本発明の範囲を制限すると解釈されないそれらの特定の実施態様を示す。
【0048】
本発明の他の側面として、
(i)クエン酸、リンゴ酸及びコハク酸、又はそれらの塩の固体混合物と唾液分泌液体基材とを混合して、唾液分泌成分を形成する工程、
(ii)前記の唾液分泌成分に、Jambu含油樹脂、スピラントール、それらのどちらか又は双方を含むあらゆる抽出物、及びそれらの混合物からなる群から選択される成分から形成される刺痛成分を添加する工程、
(iii)一般に公知の方法によって前記消費製品を形成する工程
を含む、かかる消費製品を製造する好ましい方法も提供する。
【0049】
いくつかの次の実施例において開示されている感覚試験から明らかになるように、刺痛成分、すなわちJambu含油樹脂及び/又はスピラントールの押出固体と、要求されるような酸味料混合物との組合せは、後者の唾液分泌効果を相乗的に改良することが確かめられ、かつ従って、かかる消費製品によって提供された唾液分泌効果を高める及び改良し、口内乾燥及び口腔乾燥症の条件に関する問題を緩和させることを可能にする。
【0050】
本発明は、現在、次の実施例の方法によって示されているが、しかしそれら実施例に制限されない。温度は、摂氏度で示され、かつ省略形は、技術において通常の意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明によって製造され、かつ盲検法の調査員団評価の結果として、先行技術の対照(実施例1)と比較されたハードボイルドキャンディーから、訓練されたパネリストによって知覚された唾液分泌の感覚の比較を示す図。
【図2】本発明によって製造され、かつ盲検法の調査員団評価の結果として、先行技術の対照(実施例2)と比較されたチューインガムから、訓練されたパネリストによって知覚された唾液分泌の感覚の比較を示す図。
【図3】本発明によって製造され、かつ盲検法の調査員団評価の結果として、先行技術の対照と比較された圧縮錠剤から、訓練されたパネリストによって知覚された唾液分泌の感覚の比較を示す図。
【0052】
実施例
実施例1
無糖のハードボイルドキャンディーの製造
本発明による液体の唾液分泌成分Aを、次の成分で得た:
【表1】

【0053】
そして、前記の組成物を使用して、以下のように、無糖のハードボイルドキャンディーを製造した:
Isomalt(100g)と水(30g)とを混合し、そして銅の平鍋中で160℃まで加熱した。160℃で、銅の平鍋を、加熱から外し、そして温浴(40℃)に設置した。温度が135℃に達してから、アスパルテーム、アセスルファム−K、液体の酸味料混合物(1.0%)、及びフレーバーを添加した。煮沸された塊を、室温で、適切なTeflon(登録商標)型中に流し込んだ。
【0054】
次の第I表は、先行技術によって及び酸味料としてクエン酸のみを含む対照のハードボイルドキャンディー、並びに本発明によって製造されたキャンディーの本明細書で前述されたような配合物において使用される成分並びにそれぞれの添加香味料を要約する。
【0055】
【表2】

【0056】
そして、対照のキャンディー及び本発明のキャンディーを、訓練された評価者の調査員団によって盲検法で評価し、そしてこの評価の結果を、図1に示した。
【0057】
この図に示された感覚の結果は、明らかに、唾液分泌の感覚に対する封入されたJambu含油樹脂の刺痛成分の存在の相乗効果を実証する。キャンディーの咀嚼を開始した後、30秒で及び5分までで知覚された唾液分泌の感覚に対する直接影響があった。
【0058】
その影響及び酸味の付与のために果実フレーバーとして一般に使用されるクエン酸は、期待された効果を付与することが見出された。しかしながら、本発明の感覚刺激混合物は、特に極めて長期間にわたって、改良された影響及び酸味を提供することが見出された。これは、クエン酸のみよりも強い唾液分泌効果も付与した。
【0059】
実施例2
無糖のチューインガムの製造
付香したチューインガムを次のように製造した:
結晶質のソルビトール、アセスルファム−K及びアスパルテームを、Turbula配合機で配合した。配合物の半分を、Winkworthシグマ−ブレード混合機中で、45〜50℃で4分間、予熱したBalear(登録商標)T及びMistral(登録商標)ガム基礎剤(Cafosa社製)で混合した。そして、残った粉末配合物を、湿ったシロップ(Lycasin(登録商標)80/55、グリセリン)と共に混合し、そしてさらに6分間混合した。最終的に、付香系を付与した。
【0060】
次の第II表は、フレーバーのみを含有する対照のチューインガム、及び本発明によるチューインガムの本明細書で前述されたような配合物において使用される成分並びにそれぞれの添加香味料を要約する。
【0061】
【表3】

【0062】
そして、対照のチューインガム及び本発明のチューインガムを、訓練された評価者の調査員団によって盲検法で評価し、そしてこの評価の結果を、図2に示した。
【0063】
この図に示された感覚の結果は、明らかに、唾液分泌の感覚に対する刺痛成分の存在の相乗効果を実証する。咀嚼を開始した後、30秒で及び5分までで知覚された唾液分泌の感覚に対する直接影響があった。
【0064】
実施例3
圧縮錠剤の製造
付香した圧縮錠剤を、次のように製造した:
結晶質のソルビトール(97.9%)、アスパルテーム(0.05%)、アセスルファム−K(0.05%)及びステアリン酸マグネシウム(2%)を、Turbula(スイス、バーゼルのWAB AG製)で5分間混合した。付香系を付与した。質量1.20g、直径20mm、硬さ255Newtonの錠剤を、Korsch装置(ドイツ、Korsch社製)を使用して製造した。
【0065】
次の第III表は、フレーバー及びクエン酸のみを含有する対照の圧縮錠剤、及び本発明による圧縮錠剤の本明細書で前述されたような配合物において使用される成分並びにそれぞれの添加香味料を要約する。
【0066】
【表4】

【0067】
そして、対照の圧縮錠剤及び本発明の圧縮錠剤を、訓練された評価者の調査員団によって盲検法で評価し、そしてこの評価の結果を、図3に示した。
【0068】
この図に示された感覚の結果は、明らかに、唾液分泌の感覚に対する刺痛成分の存在の相乗効果を実証する。咀嚼を開始した後、30秒で及び5分までで知覚された唾液分泌の感覚に対する直接影響があった。
【0069】
前記の実施例1において記載されたようなクエン酸を超える本発明の同様の利点が、観察された。
【0070】
実施例4〜6
消費製品の製造
実施例1〜3において記載されたような同様の消費製品を、液体の唾液分泌成分Aと、次の成分で製造された本発明による液体の唾液分泌成分Bとを置き換えることによって製造した:
【表5】

【0071】
そして、実施例1〜3と同様の条件で実施して得られた消費製品の盲検法及び評価に対して、同様の唾液分泌効果の改善が、観察された。
【0072】
実施例7
練り歯磨き(不透明タイプ)の製造
練り歯磨き5kgを、次のプロトコル、及び以下で与えられる成分で製造した:
パート1:カルボキシメチルセルロース溶液
【表6】

【0073】
方法:
研究室用混合機を使用して、高速で5〜10分間、CMCとグリセリンとを混合した。その溶液を、30分間水和させた。
【0074】
パート2:粉末成分溶液
【表7】

【0075】
方法:
水中へ、(挙げられたような)乾燥成分を、混合機Turraxを使用して、5〜10分間流し込んだ。ソルビトール溶液を添加し、3分間混合した。パート1及びパート2を添加し、そして10〜15分間混合した。
【0076】
パート3:硫酸ラウリルナトリウム溶液
【表8】

【0077】
方法:
硫酸ラウリルナトリウムと水とを静かに混合し、そして最低3時間、より適切には一晩中、放置させた。パート1とパート2との混合物を、Stephan Mixerの平鍋中に流し込み、そして2〜3時間、又は気泡が消えるまで放置させた。ソルビトール(TC 15及びAC 77)を添加し、そして減圧下(50〜60mBar)で30分間混合した。平鍋を開き、そして硫酸ラウリルナトリウム溶液を添加した。減圧下(50〜60mBar)で5分間混合した。
【0078】
最後に、フレーバーを練り歯磨きに添加した。従って、液体のミントフレーバー(Firmenich SA、ジュネーブ)1質量%と、本発明による液体の唾液分泌成分B(実施例4〜6)0.20質量%とを、得られた練り歯磨きに添加した。該練り歯磨きは、唾液分泌の、発泡性の、気泡の感覚、並びに歯磨き中に改良された密度及び容量の感覚を提供した。
【0079】
実施例8
口内洗浄剤の製造
口内洗浄剤1000グラムを、次のプロトコル、及び以下で与えられる成分で製造した:
パート1
【表9】

【0080】
方法:
磁気撹拌下で、SMFP、ナトリウムサッカリン及び安息香酸ナトリウムを、水中で加熱しながら添加した。
【0081】
ソルビトール、グリセリン及びエタノールを添加した。10分間、又は十分に溶解するまで混合させた。
【0082】
口内洗浄剤として非希釈の形で使用した。
【0083】
パート2
【表10】

【0084】
方法:
PEG40とフレーバーとを混合した。十分に溶解するまで加熱し、そして混合した。
【0085】
パート1パート2とを混合した。
【0086】
【表11】

【0087】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
唾液分泌成分、刺痛成分、及びフレーバーを含有する感覚刺激組成物であって、その際、唾液分泌成分が、クエン酸、リンゴ酸及びコハク酸の、又はそれらの塩の少なくとも1つの混合物から形成され、かつ刺痛成分が、Jambu含油樹脂、スピラントール、そのどちらか又は双方を含有するあらゆる抽出物、及びそれらの混合物からなる群から選択された成分から形成される組成物。
【請求項2】
さらにグリシルリチンを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該刺痛成分が、Jambu含油樹脂、スピラントール、そのどちらか又は双方を含有するあらゆる抽出物、及びそれらの混合物からなる群から選択された前記成分の押出された固体である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記の押出された固体が、刺痛成分1〜5質量%を含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
クエン酸0.01〜60質量%、リンゴ酸0.01〜50質量%、及びコハク酸0.01〜30質量%を含有し、その際全ての質量が感覚刺激組成物の全質量に対するものである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
酸又は酸塩の濃度が、組成物の全質量に対して、10〜98質量%、より有利には組成物の全質量の60〜85質量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
刺痛成分の濃度が、組成物の全質量に対して、0.1〜1質量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
組成物の全質量に対して、グリシルリチン0.1〜2質量%を含有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の感覚刺激組成物を含む、経口的に摂取され、咀嚼され、又は口腔を清浄もしくは衛生的にするために使用されることが可能な消費製品。
【請求項10】
菓子製品、例えばチューインガム、シュガーアーモンド、圧縮錠剤、又はハードボイルドキャンディーの形での、請求項9に記載の消費製品。
【請求項11】
感覚刺激組成物0.01〜10質量%を含有する、請求項9又は10に記載の消費製品。
【請求項12】
ペットフード、医薬品組成物又は飲料の形での、請求項9に記載の消費製品。
【請求項13】
i)クエン酸、リンゴ酸及びコハク酸、又はそれらの塩の固体混合物と唾液分泌液体基材とを混合して、唾液分泌成分を形成する工程、
(ii)前記の唾液分泌成分に、Jambu含油樹脂、スピラントール、それらのどちらか又は双方を含むあらゆる抽出物、及びそれらの混合物からなる群から選択される成分から形成される刺痛成分を添加する工程、
(iii)一般に公知の方法によって前記消費製品を形成する工程
を含む、請求項9から12までのいずれか1項に記載の消費製品の製造方法。
【請求項14】
消費製品の質量に対して、前記の工程(i)において使用される固体混合物が、0.1〜10質量%の濃度で添加され、かつ唾液分泌液体基材が、0.01〜10質量%の濃度で添加される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記刺痛成分が、押出された固体の形で、及び、消費製品の質量に対して、0.001〜10質量%の濃度で添加される、請求項13又は14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−539397(P2009−539397A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514944(P2009−514944)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052044
【国際公開番号】WO2007/144800
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】