説明

刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】画像の色合いや刺繍の出力サイズを変更しても、ぼやけて不鮮明でない刺繍の刺繍データを作成する刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及び刺繍データ作成プログラムを記録した記録媒体を提供する。
【解決手段】刺繍の糸密度と刺繍サイズとから刺繍データ700の作成に必要な画素数が決定され、元画像データ100を複写した複写色用画像データ210を必要な画素数のサイズ調整色用画像データ220に伸縮させる。一方、元画像データ100を複写した角度用画像データ300から初期角度情報510を作成し、初期角度情報510から必要な画素構成の角度情報を再算出し、再算出角度情報530が作成される。そして、再算出角度情報530から線分データ600が作成され、サイズ調整色用画像データ220,線分データ600から色データ400が作成され、線分データ600,色データ400から刺繍データ700が作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものであり、詳細には、写真をより自然な色合いで刺繍する刺繍データを作成する刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラにより撮影された写真や、フィルムから焼き付けられた写真の画像を刺繍する写真刺繍が行われている。この写真刺繍にはデジタルカメラにより撮影された写真の画像データや、フィルムから焼き付けられた写真をスキャナで取り込んだ画像データが用いられる。そして、この画像データから糸の縫い目の形状を示す線分データと縫い目の色を示す色データとが作成され、糸の色ごとに縫い目を示す刺繍データが作成されている。このような刺繍データを作成する刺繍データ作成装置において、より写真画像に刺繍結果を近づけるために、糸の縫い目の形状を示す線分データを作成するにあたり、縫い目の方向を一方向だけでなく360°さまざまな角度を持たせるようにしているものが提案されている(例えば、特許文献1)。具体的には、画像データを構成する画素1つ1つに対して、周囲の画素との関係からその画素上に配置される縫い目の方向(角度特徴)と、その強さ(角度特徴の強度)を算出し、線分データの作成に使用している。この角度特徴の強度は、注目画素の周囲の画素の輝度に基づいて算出され、周囲との輝度の差が大きいほど、角度特徴の強度の値も大きくなる。また、特許文献2に記載の刺繍データ作成装置においては、1つの縫い目の太さ(糸1本)を1画素に割り当てて、縫い目の形状を示す線分データを作成している。
【特許文献1】特開2001−259268号公報
【特許文献2】特開2003−154181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献2に記載の刺繍データ作成装置のように、糸1本を1画素に割り当てて線分データを作成する場合には、画像データの縦横の画素数よりも、刺繍領域の縦横に配置される糸の本数の方が多い場合には、画像データを拡大する必要があり、一般的に画像を拡大する場合、拡大後の画像は不鮮明で全体的にぼやけた画像になる。そして、特許文献1に記載の刺繍データ作成装置のように、角度特徴の強度を利用する場合、画像データが不鮮明で全体的にぼやけていると、周囲の画素との輝度の差が小さい場合が多く、角度特徴の強度の値が全体的に小さくなってしまい、刺繍結果も全体的にぼやけて不鮮明になってしまうという問題点がある。そこで、画像データに先鋭化処理を施し、画像をはっきりさせるという方法が考えられる。この場合には、角度特徴の強度の値も大きくなり、刺繍結果もはっきりしたものとなるが、先鋭化処理により画像の濃淡が激しくなり、刺繍結果の色合いが大元の画像データとは異なるものとなってしまうという問題点がある。また、画像データの縦横の画素数が、刺繍領域の縦横に配置される糸の本数よりも多い場合には、画像データを縮小する必要があり、一般的に画像を縮小する場合、縮小率が高い程、縮小後の画像は細部が潰れてしまうことがある。したがって、元の画像データとは細部において異なる印象の画像となってしまい、有用な角度特徴の強度が得られないことがあるという問題点がある。また、画像の色合いを変化させた場合でも、角度特徴の強さは小さくなる場合がある。例えば、大元の画像データが暗いような場合、作成される刺繍データも暗くなってしまうので、画像データに明度を上げる処理を施し、画像を明るくするという方法が考えられる。この場合には、画像データが明るくなり、刺繍結果も明るいものとなるが、画像全体を明るくすることにより、画像の濃淡が少なくなり、角度特徴の強度が全体的に小さくなってしまい、刺繍結果も全体的にぼやけて不鮮明になってしまうという問題点がある。
【0004】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、画像の色合いを変更したり、刺繍の出力サイズを変更たりしても、ぼやけて不鮮明になることなく刺繍する刺繍データを作成する刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及び刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の刺繍データ作成装置では、画素の集合体からなり任意の画像を形成する画像データに基づいて、ミシンで刺繍を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置において、色の連続性の高い方向を示す角度特徴及び連続性の強さを示す角度特徴強度を画素ごとに決定するための角度用画像データを前記画像データから作成する角度用画像データ作成手段と、前記ミシンで使用される糸色を決定するための色用画像データを前記画像データから作成する色用画像データ作成手段と、前記角度用画像データ作成手段により作成された角度用画像データの各画素についての前記角度特徴及び前記角度特徴強度を算出する角度情報算出手段と、当該角度情報算出手段により算出された角度特徴及び角度特徴強度を角度情報として記憶する角度情報記憶手段と、作成する刺繍データの大きさに応じて、前記色用画像データを構成する画素数を追加又は削除することにより、当該色用画像データの大きさを拡大又は縮小する画像データ拡大縮小手段と、当該画像データ拡大縮小手段により拡大又は縮小された色用画像データの大きさと前記角度用画像データの大きさとが異なる場合に、当該色用画像データの各画素について角度情報を再算出する角度情報再算出手段と、当該角度情報再算出手段により算出された角度特徴及び角度特徴強度を前記角度情報記憶手段に再記憶する角度情報記憶制御手段と、前記角度情報記憶手段に記憶されている角度情報に基づいて、各画素上に配置される糸の軌跡である線分を示す線分データを作成する線分データ作成手段と、前記色用画像データに基づいて、前記線分データ作成手段により作成された線分データの各線分の糸色を示す色データを作成する色データ作成手段と、前記線分データ作成手段により作成された線分データ及び前記色データ作成手段により作成された色データに基づいて前記刺繍データを作成する刺繍データ作成手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1に記載の発明の構成に加えて、各画素の角度特徴及び角度特徴強度の再算出の計算方法が異なる複数の前記角度情報再算出手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、前記角度情報再算出手段は、前記画像データ拡大縮小手段により前記画像データが拡大された場合に、前記画像データ拡大縮小手段により追加された画素である追加画素の角度特徴及び角度特徴強度を元となる画素の角度特徴及び角度特徴強度と同じ値とする、前記追加画素の角度特徴及び角度特徴強度をゼロとする、又は、前記追加画素の角度特徴及び角度特徴強度を当該画素の周囲の画素の前記角度特徴及び前記角度特徴強度に基づいて計算するうちの少なくとも1つの方法で前記角度特徴及び前記角度特徴強度を算出することを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記角度情報再算出手段は、前記画像データ拡大縮小手段により縮小された場合に、前記画像データ拡大縮小手段により画素を削除されることにより前記画像データが縮小され、残った画素である残存画素の角度特徴及び角度特徴強度を、元となる画素の角度特徴及び角度特徴強度と同じ値とする、及び、前記残存画素の角度特徴及び角度特徴強度を当該画素の周囲の角度特徴及び角度特徴強度に基づいて計算するうちの少なくとも一方の方法で前記角度特徴及び前記角度特徴強度を算出することを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、画像を表示する表示手段と、前記刺繍データ作成手段により作成された前記刺繍データに基づいて刺繍を行った場合の縫い上がり状態を前記表示手段に表示するプレビュー表示制御手段と、それぞれの前記角度情報再算出手段により再算出された角度特徴及び角度特徴強度を用いて作成されたそれぞれの刺繍データの縫い上がり状態を前記プレビュー表示制御手段の制御により前記表示手段に表示する第一複数プレビュー表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記色用画像データ作成手段により作成された色用画像データの色を変化させる色用画像色変化手段と、前記色データ作成手段は、前記色用画像色変化手段により色の変化された色用画像データに基づいて前記色データを作成することを特徴とする。
【0011】
また、請求項7に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項6に記載の発明の構成に加えて、前記色用画像色変化手段は、色相、彩度、色の明るさ、色のコントラスト、色を指定する値のうちの少なくとも1つを変化させることにより色を変化させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項8に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項6又は7に記載の発明の構成に加えて、前記色用画像色変化手段による前記色用画像データの色の変化度合いを指定する色変化指定手段を備え、前記色用画像色変化手段は、前記色変化指定手段の指定に基づいて前記色用画像データの色を変化させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項9に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明の構成に加えて、画像を表示する表示手段と、前記刺繍データ作成手段により作成された前記刺繍データに基づいて刺繍を行った縫い上がり状態を前記表示手段に表示するプレビュー表示制御手段と、前記色用画像色変化手段により前記色用画像データに異なる色変化を行った複数の色用画像データに基づいて、前記色データ作成手段によりそれぞれの前記色データを作成し、それぞれの前記色データを用いて作成されたそれぞれの刺繍データの縫い上がり状態を前記プレビュー表示制御手段の制御により前記表示手段に表示する第二複数プレビュー表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項10に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明の構成に加えて、前記角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度において、全画素の値が所定の閾値よりも小さいか否かにより前記角度特徴強度を補正するか否かを判断する補正判断手段と、当該補正判断手段により補正すると判断された場合に前記角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度を補正する補正手段と、当該補正手段により補正された角度情報を前記角度情報記憶手段に記憶する補正角度情報記憶制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項11に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項10に記載の発明の構成に加えて、前記補正判断手段は、前記角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度において外れ値を取る画素がある場合には、当該外れ値を取る画素以外の画素の値が前記所定の閾値よりも小さい場合に補正をすると判断することを特徴とする。
【0016】
また、請求項12に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項10又は11に記載の発明の構成に加えて、前記補正手段は、前記角度特徴強度に対して所定の値を加算すること、又は、前記角度特徴強度に対して所定の値を掛けることにより補正を行い、計算の結果が前記角度特徴強度の最大値よりも大きな値となった場合には最大値を補正後の値とすることを特徴とする。
【0017】
また、請求項13に係る発明の刺繍データ作成プログラムでは、請求項1乃至12のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させる。
【0018】
また、請求項14に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項13に記載の刺繍データ作成プログラムを記録する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明の刺繍データ作成装置では、角度用画像データ作成手段は、色の連続性の高い方向を示す角度特徴及び連続性の強さを示す角度特徴強度を画素ごとに決定するための角度用画像データを画像データから作成し、色用画像データ作成手段は、ミシンで使用される糸色を決定するための色用画像データを画像データから作成し、角度情報算出手段は、角度用画像データ作成手段により作成された角度用画像データの各画素についての角度特徴及び角度特徴強度を算出し、角度情報記憶手段は、角度情報算出手段により算出された角度特徴及び角度特徴強度を角度情報として記憶し、画像データ拡大縮小手段は、作成する刺繍データの大きさに応じて、色用画像データを構成する画素数を追加又は削除することにより、色用画像データの大きさを拡大又は縮小し、角度情報再算出手段は、画像データ拡大縮小手段により拡大又は縮小された色用画像データの大きさと角度用画像データの大きさとが異なる場合に、色用画像データの各画素について角度情報を再算出し、角度情報記憶制御手段は、角度情報再算出手段により算出された角度特徴及び角度特徴強度を角度情報記憶手段に再記憶し、線分データ作成手段は、角度情報記憶手段に記憶されている角度情報に基づいて、各画素上に配置される糸の軌跡である線分を示す線分データを作成し、色データ作成手段は、色用画像データに基づいて、線分データ作成手段により作成された線分データの各線分の糸色を示す色データを作成し、刺繍データ作成手段は、線分データ作成手段により作成された線分データ及び色データ作成手段により作成された色データに基づいて刺繍データを作成することができる。したがって、刺繍の糸色の決定に使用するために拡大又は縮小される色画像データとは異なる角度用画像データに基づいて角度情報が作成され、その後、拡大又は縮小後の色画像データの各画素に対応する角度情報が再算出されるので、色画像データの拡大又は縮小が角度特徴及び角度特徴強度に影響を与えることがない。
【0020】
また、請求項2に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1に記載の発明の効果に加えて、各画素の角度特徴及び角度特徴強度の再算出の計算方法が異なる複数の角度情報再算出手段を備えることができる。したがって、1つの計算方法だけでなく、複数の計算方法で角度情報を再算出することができるので、再算出された角度情報に基づいて作成される刺繍データにより実施される刺繍の縫い上がり状態も複数得られることとなり、ユーザにより好ましい縫い上がり状態を得る計算方法を選択させることや、画像データにより異なる計算方法の角度情報再算出手段を用いることが可能となる。
【0021】
また、請求項3に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加えて、角度情報再算出手段は、画像データ拡大縮小手段により画像データが拡大された場合に、画像データ拡大縮小手段により追加された画素である追加画素の角度特徴及び角度特徴強度を元となる画素の角度特徴及び角度特徴強度と同じ値とする、追加画素の角度特徴及び角度特徴強度をゼロとする、又は、追加画素の角度特徴及び角度特徴強度をその画素の周囲の画素の角度特徴及び角度特徴強度に基づいて計算するうちの少なくとも1つの方法で角度特徴及び角度特徴強度を算出することができる。したがって、画像データが拡大された際において、追加画素の角度特徴及び角度特徴強度を適切な値とすることができる。
【0022】
また、請求項4に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、角度情報再算出手段は、画像データ拡大縮小手段により縮小された場合に、画像データ拡大縮小手段により画素を削除されることにより画像データが縮小され、残った画素である残存画素の角度特徴及び角度特徴強度を、元となる画素の角度特徴及び角度特徴強度と同じ値とする、及び、残存画素の角度特徴及び角度特徴強度をその画素の周囲の角度特徴及び角度特徴強度に基づいて計算するうちの少なくとも一方の方法で角度特徴及び角度特徴強度を算出することができる。したがって、画像データが縮小された際において、残存画素の角度特徴及び角度特徴強度を適切な値とすることができる。
【0023】
また、請求項5に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、表示手段は画像を表示し、プレビュー表示制御手段は、刺繍データ作成手段により作成された刺繍データに基づいて刺繍を行った場合の縫い上がり状態を表示手段に表示し、第一複数プレビュー表示制御手段は、それぞれの角度情報再算出手段により再算出された角度特徴及び角度特徴強度を用いて作成されたそれぞれの刺繍データの縫い上がり状態をプレビュー表示制御手段の制御により表示手段に表示するとことができる。したがって、ユーザは好ましい縫い上がり状態を得る計算方法を表示手段に表示される縫い上がり状態の画像により確認することができる。
【0024】
また、請求項6に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、色用画像色変化手段は、色用画像データ作成手段により作成された色用画像データの色を変化させ、色データ作成手段は、色用画像色変化手段により色の変化された色用画像データに基づいて色データを作成することができる。したがって、ユーザはより好ましい縫い上がり状態となるように色を変化させることができる。
【0025】
また、請求項7に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項6に記載の発明の効果に加えて、色用画像色変化手段は、色相、彩度、色の明るさ、色のコントラスト、色を指定する値のうちの少なくとも1つを変化させることにより色を変化させることができる。したがって、色相、彩度、色の明るさ、色のコントラスト、色を指定する値のうちの少なくとも1つにより確実に色を変化させることができる。
【0026】
また、請求項8に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項6又は7に記載の発明の効果に加えて、色変化指定手段は、色用画像色変化手段による色用画像データの色の変化度合いを指定することができる。したがって、ユーザは特に複雑な指示をすることなく、度合いを指定するだけで、色用画像データの色を容易に変化させることができる。
【0027】
また、請求項9に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明の効果に加えて、表示手段は画像を表示し、プレビュー表示制御手段は、刺繍データ作成手段により作成された刺繍データに基づいて刺繍を行った縫い上がり状態を表示手段に表示し、第二複数プレビュー表示制御手段は、色用画像色変化手段により色用画像データに異なる色変化を行った複数の色用画像データに基づいて、色データ作成手段によりそれぞれの色データを作成し、それぞれの色データを用いて作成されたそれぞれの刺繍データの縫い上がり状態をプレビュー表示制御手段の制御により表示手段に表示するとことができる。したがって、色を変化させた結果の縫い上がり状態を確認することができる。
【0028】
また、請求項10に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明の効果に加えて、補正判断手段は、角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度において、全画素の値が所定の閾値よりも小さいか否かにより角度特徴強度を補正するか否かを判断し、補正手段は、補正判断手段により補正すると判断された場合に角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度を補正し、補正角度情報記憶制御手段は、補正手段により補正された角度情報を角度情報記憶手段に記憶するとことができる。したがって、ぼやけた画像の画像データであったとしても角度情報を補正することにより、よりくっきりとさせぼやけていない縫い上がり状態を得ることができる。
【0029】
また、請求項11に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項10に記載の発明の効果に加えて、補正判断手段は、角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度において外れ値を取る画素がある場合には、外れ値を取る画素以外の画素の値が所定の閾値よりも小さい場合に補正をすると判断することができる。したがって、一部分のみにくっきりした場所があるが、全体的にぼやけている画像の画像データであっても、よりくっきりと全体的にぼやけていない縫い上がり状態を得ることができる。
【0030】
また、請求項12に係る発明の刺繍データ作成装置では、請求項10又は11に記載の発明の効果に加えて、補正手段は、角度特徴強度に対して所定の値を加算すること、又は、角度特徴強度に対して所定の値を掛けることにより補正を行い、計算の結果が角度特徴強度の最大値よりも大きな値となった場合には最大値を補正後の値とすることができる。したがって、簡易な計算で補正を行うことができる。
【0031】
また、請求項13に係る発明の刺繍データ作成プログラムでは、請求項1乃至12のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることができる。したがって、請求項1乃至12のいずれかに記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0032】
また、請求項14に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、請求項13に記載の刺繍データ作成プログラムを記録することができる。したがって、当該記録媒体に記録された刺繍データ作成プログラムをコンピュータに読み込ませ、動作させることにより、請求項1乃至12のいずれかに記載の発明の効果と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る刺繍データ作成装置1の一実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施の形態の刺繍データ作成装置1は、画像データに表された図柄を刺繍ミシン3による刺繍によって出力するための刺繍データを画像データに基づいて作成するものである。まず、刺繍ミシン3について説明する。図1は、刺繍ミシン3の外観図である。
【0034】
また、刺繍ミシン3は、ミシンベッド30上に配置された、刺繍を施そうとする加工布を保持する刺繍枠31を、Y方向駆動部32及び、本体ケース33内に収容されたX方向駆動機構によって装置固有のX・Y座標系で示される所定位置に移動させながら、縫い針34及び釜機構(図示外)による縫製動作を行うことにより、その加工布に所定の図柄の刺繍を施すようになっており、前記Y方向駆動部32、X方向駆動機構や針棒35等は、刺繍ミシン3に内蔵されたマイクロコンピュータ等から構成される制御装置により制御される。また、刺繍ミシン3の脚柱部36の側面にはメモリカードスロット37が搭載されており、刺繍データが記憶されたメモリカード115をメモリカードスロット37に装着することにより、刺繍データ作成装置1で作成された刺繍データが供給される。
【0035】
次に、刺繍データ作成装置1について図面を参照して説明する。図2は、刺繍データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図であり、図3は、刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0036】
図1に示すように、この刺繍データ作成装置1は、所謂パーソナルコンピュータである装置本体10と、この装置本体10に接続されるマウス21、キーボード22、メモリカードコネクタ23、ディスプレイ24及びイメージスキャナ装置25から構成されている。なお、装置本体10、マウス21、キーボード22、メモリカードコネクタ23、ディスプレイ24、イメージスキャナ装置25の形状は図1に示すものに限らない。例えば、装置本体10はタワー型のものに限らず、横置きのものであってもよく、装置本体10とディスプレイ24とキーボード22とが一体化したノート型であってもよい。また、装置本体10は所謂パーソナルコンピュータでなく、専用機であってもよいことは言うまでもない。
【0037】
次に、図3のブロック図を参照して、刺繍データ作成装置1の電気的構成について説明する。図3に示すように、刺繍データ作成装置1には、刺繍データ作成装置1の制御を司るコントローラとしてのCPU101が設けられ、CPU101には、各種のデータを一時的に記憶するRAM102と、BIOS等を記憶したROM103と、データの受け渡しの仲介を行うI/Oインタフェイス104とが接続されている。I/Oインタフェイス104には、ハードディスク装置120が接続され、当該ハードディスク装置120には、元画像データ記憶エリア121と、色用画像データ記憶エリア122と、角度用画像データ記憶エリア123と、色データ記憶エリア124と、角度情報記憶エリア125と、線分データ記憶エリア126と、刺繍データ記憶エリア127と、プログラム記憶エリア128と、その他の情報記憶エリア129とが少なくとも設けられている。
【0038】
尚、元画像データ記憶エリア121には、イメージスキャナ装置25により読み込まれた元画像データ100(図4参照。「画像データ」に該当する)が記憶され、色用画像データ記憶エリア122には、色データ400(図4参照)を作成するための色用画像データ200(図4参照)が記憶され、角度用画像データ記憶エリア123には、後述する角度情報500(図4参照)を算出するための角度用画像データ300(図4参照)が記憶される。そして、色データ記憶エリア124には、色用画像データ200から作成される色データ400が記憶される。そして、角度情報記憶エリア125には、角度用画像データ300から作成される角度情報500が記憶される。線分データ記憶エリア126には、角度情報500から作成された線分データ600(図4参照)が記憶される。そして、刺繍データ記憶エリア127には、色データ400及び線分データ600から作成される刺繍データ700(図4参照)が記憶される。そして、プログラム記憶エリア128にはCPU101で実行される刺繍データ作成プログラムが記憶されている。その他の情報記憶エリア129には、刺繍データ作成装置1で使用されるその他の情報が記憶されている。なお、刺繍データ作成装置1がハードディスク装置120を備えていない専用機の場合は、ROMにプログラムが記憶される。
【0039】
また、I/Oインタフェイス104には、マウス21と、ビデオコントローラ106と、キーコントローラ107と、CD−ROMドライブ108と、メモリカードコネクタ23と、イメージスキャナ装置25とが接続されている。ビデオコントローラ106にはディスプレイ24が接続され、キーコントローラ107にはキーボード22が接続されている。なお、CD−ROMドライブ108に挿入されるCD−ROM114には、刺繍データ作成装置1の制御プログラムである刺繍データ作成プログラムが記憶されており、導入時には、制御プログラムは、CD−ROM114から、ハードディスク装置120にセットアップされてプログラム記憶エリア128に記憶される。また、メモリカードコネクタ23では、メモリカード115の読み取りや書き込みが可能となっている。
【0040】
ここで、図4を参照して、元画像データ100から刺繍データ700を作成する際に使用される情報について説明する。図4は、刺繍データ700作成の際に使用される情報とそれらの関係を示した情報関係図である。図4に示すように、元画像データ100から刺繍データ700を作成するために、色用画像データ200、角度用画像データ300、色データ400、角度情報500、線分データ600が用いられる。
【0041】
元画像データ100は、イメージスキャナ装置25により取り込まれたデータや、メモリカード115やCD−ROM114などの外部記録媒体に記憶されているデータや、ハードディスク装置120に記憶されているデータ等である。また、刺繍データ700は、刺繍ミシン3において、何色の糸でどのように縫い針34を運んで刺繍を行うかを示した情報である。刺繍データ700では、この縫い針34による1目の縫い目が「線分」として表されている。この刺繍データ700は、刺繍の縫い目を線分で現した線分データ600と、各線分の糸色を示す色データ400とから作成される。この線分データ600及び色データ400は、元画像データ100から作成される。
【0042】
ここで、刺繍ミシン3により実際に行われる刺繍の縫い上がりサイズと、元画像データ100のサイズについて考える。元画像データ100は、略正方形の画素の集合により画像を形成しており、そのサイズは縦の画素数及び横の画素数として捉えることができる。そして、刺繍の縫い上がり(刺繍結果)のサイズは、刺繍領域を隙間なく縫った際の縦糸の本数及び横糸の本数として捉えることができる。この縦の画素数と縦糸の本数、横の画素数と横糸の本数を一致させることにより、1つの画素と、刺繍領域内において縦糸1本横糸1本とで特定される領域(以下、「単位領域」という。)とを対応させることができ、より元画像データ100に近い刺繍結果を得ることができる。
【0043】
なお、縦糸の本数及び横糸の本数の算出には、刺繍結果の縦の長さ、横の長さ、糸密度が関係する。例えば、3本/1mmの糸密度、刺繍サイズが縦100mm、横100mmであるとすると、この領域を隙間なく縫う場合には縦300本、横300本の糸が必要となる。つまり、刺繍領域は、縦×横が300個×300個の単位領域の集まりとして捉えられる。
【0044】
また、刺繍を行う際の糸色は、その縫い目の元画像データ100上の対応位置における色により近いものとしたい。そこで、縫い目を示す線分が配置される単位領域と元画像データ100の画素を対応させて、線分の配置位置の色を参照し、色データ400が作成される。この際に、刺繍領域が300個×300個の単位領域で現される刺繍データ700を作成する際に、元画像データ100が300個×300個の画素で形成されるものであれば、元画像データ100の1画素が1単位領域に該当するので問題はない。しかしながら、元画像データ100が300画素×300画素でない場合には、元画像データ100を拡大したり、縮小したりして、画素構成(縦の画素数及び横の画素数)を単位領域の構成(縦の単位領域数及び横の単位領域数)に一致させる必要がある。
【0045】
そこで、色データ400を作成するための色用画像データ200を元画像データ100から作成する。具体的には、まず、元画像データ100のコピーを複写色用画像データ210として作成する。そして、単位領域の構成に合わせた画素構成に拡大又は縮小した画像データであるサイズ調整色用画像データ220が作成される。これらの複写色用画像データ210及びサイズ調整色用画像データ220を総称して色用画像データ200と呼ぶこととする。例えば、元画像データ100が150画素×150画素であった場合には、元画像データ100をそのままコピーして複写色用画像データ210が作成される。この複写色用画像データ210は150画素×150画素である。そして、この複写色用画像データ210が300画素×300画素に拡大される(サイズ調整色用画像データ220)。
【0046】
次に、線分データ600の作成について説明する。線分データ600は、元画像データ100がそのままコピーされた角度用画像データ300の各画素について算出された角度情報500に基づいて作成される。ここで、角度情報500を構成する角度特徴及び角度特徴強度について説明する。角度特徴及び角度特徴強度は、画素ごとに算出される値であり、角度特徴はその画素の色を周囲の画素の色と比較した際に、どの方向(角度)に色が連続しているかを示しており、角度特徴強度はその連続性の高さを示している。この角度特徴は、隣接した画素のみとの色の連続性でなく、より広い領域における色の連続性を捉えている。つまり、人間が遠めに画像を見たときに、色が連続していると感じる方向を数値化したものである。そして、ある画素の線分を作成する際に、その線分の傾きは角度特徴の示す角度とされる。また、角度特徴強度は、当該画素の線分の示す刺繍を行うか、それとも線分を削除して刺繍を行わないかを決定する際に、周囲の画素の角度特徴強度と比較して用いられる。なお、この計算方法の一例については、後述する。
【0047】
この角度情報500は、図5に示すように、二次元配列として角度情報記憶エリア125に記憶されている。図5は、角度情報記憶エリア125の構成を示す模式図である。角度情報記憶エリア125では、縦側の次元には縦の画素数だけ配列が設けられ、横側の次元には横の画素数だけ配列が設けられている。そして、二次元配列の要素として「角度特徴」欄と「角度特徴強度」欄が設けられており、1つの配列要素に1つの画素についての角度特徴及び角度特徴強度が記憶される。よって、画素の数だけ角度特徴及び角度特徴強度を記憶することができる。
【0048】
本実施の形態の刺繍データ作成装置1では、まず、元画像データ100と同じ画像データである角度用画像データ300の各画素について角度特徴及び角度特徴強度が算出される。例えば、元画像データ100が150画素×150画素の画像データであるとすると、角度用画像データ300も150画素×150画素であり、まずは、角度情報記憶エリア125は150×150の二次元配列として作成されて、150画素×150画素のみについて角度特徴及び角度特徴強度が算出される。これが初期角度情報510である。しかしながら、単位領域の構成が300個×300個である場合には、それぞれの単位領域についても角度特徴及び角度特徴強度を算出する必要がある。そこで、角度情報記憶エリア125の領域が拡大されて300×300の二次元配列とされ、初期角度情報510に基づいて300画素×300画素分の角度情報が再算出される。これが再算出角度情報530である。
【0049】
なお、単位領域の構成と画素構成が同じサイズである調整色用画像データ220から角度特徴強度を算出するのではなく、元画像データ100と同じ画像データである角度用画像データ300から初期角度情報510を作成し、初期角度情報510に基づいて再算出角度情報530を作成することにより、単位領域の構成と構成の角度特徴強度を算出している。このことが本発明の要部である。そして、300画素×300画素の各画素について算出された再算出角度情報530に基づいて線分が決定され、線分データ600が作成される。なお、元画像データ100の画素構成と単位領域の構成が一致している場合には、初期角度情報510から再算出角度情報530を作成する必要はないので、初期角度情報510から線分データ600が作成される。
【0050】
次に、図6を参照して、元画像データ100から刺繍データ700を作成する処理手順について説明する。図6は、処理手順を示すフローチャートであり、図6に示すフローチャートの処理は、刺繍データ作成装置1のCPU101において、刺繍データ作成プログラムが動作することにより行われる。
【0051】
図6に示すように、刺繍データ700を作成する元画像データ100が入力される(S1)。この元画像データ100の入力は、イメージスキャナ装置25を動作させて画像を取り込まれたり、外部記憶装置やハードディスク装置120に記憶されている画像データのファイルが指定されたりすることにより行われ、元画像データ記憶エリア121に記憶される。この元画像データ100は複数の画素により構成されており、各画素が色合いの指標である色相、明るさの指標である明度、あざやかさの指標である彩度などの情報を有している。そして、各画素がマトリクス状に配置されることにより画像を形成している。
【0052】
刺繍データ700を作成する元画像データ100が入力され、元画像データ記憶エリア121に記憶されたら(S1)、刺繍サイズの指定の入力が受け付けられる(S2)。この入力は、ユーザにより刺繍の縦横の長さを入力させてもよいし、予め登録されているサイズから選択させてもよい。指定された刺繍サイズは、RAM102に設けられる刺繍サイズ記憶エリア(図示外)に記憶される。なお、予め刺繍のサイズが決められている刺繍ミシン3の刺繍データ700を作成する場合には刺繍サイズの入力受付の処理は行われず、予め定められているサイズが刺繍サイズ記憶エリアに記憶される。
【0053】
次いで、元画像データ100から角度用画像データ300が作成され、角度用画像データ記憶エリア123に記憶される(S3)。具体的には、元画像データ100のコピーが角度用画像データ300として、角度用画像データ記憶エリア123に記憶される。そして、同様に元画像データ100のコピーが色用画像データ200として色用画像データ記憶エリア122に記憶される(S4)。このS3の処理を行うCPU101が「角度用画像データ作成手段」として機能する。このS4の処理を行うCPU101が「色用画像データ作成手段」として機能する。
【0054】
そして、角度用画像データ300の各画素の角度特徴及び角度特徴強度が算出され角度情報500(初期角度情報510)が作成される(S5、図7参照)。ここで、この角度特徴及び角度特徴強度の算出方法について、図7乃至図11を参照して、具体的に説明する。図7は、角度情報算出処理のフローチャートであり、図8は、ある画素とその周囲の画素の輝度値を示す模式図590であり、図9は、各画素について右方向の画素データとの差の絶対値を算出した結果を示す模式図591であり、図10は、各画素について右下方向の画素データとの差の絶対値を算出した結果を示す模式図592であり、図11は、各画素について下方向の画素データとの差の絶対値を算出した結果を示す模式図593であり、図12は、各画素について左下方向の画素データとの差の絶対値を算出した結果を示す模式図594である。
【0055】
まず、入力された画像データがグレースケール化される(S21)。これは、カラー画像をモノクロ画像に変換する処理であり、ここでは、RGBの3原色成分からなる画像データを構成している各画素データ(R、G、B)のうち、最大値と最小値の和の1/2が、その画素の明るさの指標である輝度値として設定されている。例えば、ある画素のRGB値が(200、100、50)である場合の輝度値は、(200+50)÷2=125となる。なお、画像データをグレースケール化する方法は、上述した方法に限定されるものではなく、例えば、各画素データ(R、G、B)の最大値を輝度値として設定することも可能である。
【0056】
次に、S21において、グレースケール化された画像データに対して、周知のハイパスフィルタによる変換処理が行われる(S22)。そして、S22において得られたハイパスフィルタによる変換画像に基づいて、画像を構成する各画素についての角度特徴と角度特徴の強度が算出される(S23)。具体的な算出方法は以下に示すとおりである。まず、画像を構成するある画素に注目し、この注目画素の周囲Nドットの画素を参照しながら、その注目画素の画素データが有する角度特徴を計算する。ここでは、簡単のために、N=1(Nは参照する周囲の画素の注目画素からの距離、つまり、N=1の場合には注目画素に隣接している画素のみを参照し、N=2の場合には注目画素に隣接している画素及びさらにそれを取り囲む画素まで参照される。)の場合について説明する。
【0057】
例えば、注目画素を中心とした3×3の画素について、それぞれの画素データが、図8の模式図590に示すような輝度値を有しているとする。ここで、輝度値は、0〜255の範囲の数値によって特定され、輝度値が「0」の場合が「黒」、輝度値が「255」の場合が「白」である。注目画素の輝度値は「100」であり、その周囲の画素は左上から右回りに順に、「100」、「50」、「50」、「50」、「100」、「200」、「200」、「200」である。
【0058】
まず、各画素データについて、右方向の画素データとの差の絶対値をそれぞれ計算する。この結果が図9に示す模式図である。この場合、一番右側の3つの画素については、右方向の画素が存在しないので計算されず、「*」で示されている。注目画素についてみると、注目画素の輝度値は「100」、右の画素の輝度値は「50」なので、その差の絶対値は「50」となっている。次いで、右下方向、下方向及び左下方向についても、同様に差の絶対値が計算される。これらの結果がそれぞれ、図10に示す模式図592、図11に示す模式図593、図12に示す模式図594である。これらの計算結果に基づいて、領域中の画素値の不連続性が高い方向に相当する「角度特徴の法線方向の角度」が求められる。そして、この「角度特徴の法線方向の角度」に90度を加えた角度が求める「角度特徴」とされる。
【0059】
具体的には、まず、各方向の計算結果に基づいて、それぞれの計算結果の和Tb、Tc、Td、Teが求められる。右方向の計算結果の和をTb、右下方向の計算結果をTc、下方向の計算結果をTd、左下方向の計算結果をTeとすると、Tb=300、Tc=0、Td=300、Te=450となる。そして、和Tb、Tc、Td、Teから、水平成分及び垂直成分の和がそれぞれ求められ、アークタンジェントが計算される。このとき、右下方向の水平・垂直成分と、左下方向の水平・垂直成分とはうち消し合うと考える。
【0060】
右下方向(45度方向)の和Tcが、左下方向(135度方向)の和Teよりも大きいとき(Tc>Te)、結果として得たい値は0〜90度であるので、右下方向を水平・垂直成分における+(プラス)成分、左下方向を水平・垂直成分における−(マイナス)成分と考え、水平成分の和はTb+Tc−Te、垂直成分の和はTd+Tc−Teとされる。
【0061】
逆に、右下方向の和Tcが、左下方向の和Teよりも小さいとき(Tc<Te)は、結果として得たい値が90〜180度であるので、左下方向を水平・垂直成分における+(プラス)成分、左上方向を水平・垂直成分における−(マイナス)成分と考え、水平成分の和はTb−Tc+Te、垂直成分の和はTd−Tc+Teとされる。このときは、結果として得たい値は90〜180度であるので、アークタンジェントを計算する前に全体を「−1」が掛けられる。
【0062】
例えば、図9乃至図12に示す場合はTc<Teであるので、結果として得たい値は90〜180度となる。水平成分の和はTb−Tc+Te=300−0+450=750、垂直成分の和は300−0+450=750となり、アークタンジェントを計算する前に全体に−1を掛けて、arctan(−750/750)=−45度となる。この角度が、求めようとしている「角度特徴の法線方向の角度」となる。計算結果として算出されたこの角度は、注目領域内における画素データの不連続性が高い方向を示しているということである。従って、この場合の注目画素の角度特徴としては、−45+90=45度となる。ここで、右下方向を水平・垂直成分における+成分と考えているので、ここで求めた45度は、右下方向ということになる。上述の例では、注目した画素の周りの画素が有する色情報との違いにより、角度特徴を求めていると言える。この場合、色情報としては各画素に対応した明るさ(輝度値)を用いているが、あざやかさや色合いを用いても同様の結果が得られる。
【0063】
また、このようにして算出された角度特徴の強度は、数1に示す数式を用いて計算する。この場合、差の総和は、和Tb、Tc、Td、Teの和であるので、(300+0+300+450)×(255−100)÷255÷16=39.9となる。ここで、角度特徴は明るさの変化の方向、角度特徴の強度は明るさの変化の大きさを示している。
【数1】

【0064】
なお、本実施形態では、画像を構成する各画素についての角度特徴及びその強度を周知のPrewittのオペレータやSobelのオペレータをグレースケール化された画像データに対して適用することで、画像を構成する各画素についての角度特徴及びその強度を求めることも可能である。例えば、Sobelのオペレータを用いる場合、座標(x、y)において、水平オペレータを適用した結果をsx、垂直オペレータを適用した結果をsyとすると、座標(x、y)における角度特徴及びその強度は、数2に示す数式によって計算することができる。
【数2】

【0065】
以上のようにして、角度用画像データ300の各画素に対応した角度特徴及び角度特徴強度が算出され、初期角度情報510として角度情報記憶エリア125に記憶される(図6、S5)。ここで、元画像データ100のサイズが150画素×150画素であった場合には、角度情報記憶エリア125は150×150の配列で角度特徴及び角度特徴強度が記憶されている。なお、このS5の処理を行うCPU101が「角度情報算出手段」として機能する。
【0066】
次いで、図6における処理にて初期角度情報510が作成された後には、サイズの調整が必要か否かの判断が行われる(S6)。具体的には、RAM102の刺繍サイズ記憶エリアに記憶されているサイズ及び糸密度により決定される単位領域の構成と、元画像データ100の画素構成が比較される。ここで、単位領域の構成と元画像データ100の画素構成が同じであれば、サイズの調整は必要でないと判断され(S6:NO)、S9へ進み、色用画像データ200の拡大や縮小をすることなく、角度情報500の再算出を行うこともなく、初期角度情報510から線分データ600が作成される(S9)。
【0067】
一方、単位領域の構成と元画像データ100の画素構成が同じでなければ、サイズ調整が必要であるとして(S6:YES)、周知の画像拡大技術や画像縮小技術で色用画像データ200の伸縮が行われる(S7)。この処理を行うCPU101が「画像データ拡大縮小手段」として機能する。例えば、元画像データ100及び複写色用画像データ210が150画素×150画素であり、単位領域の構成が300個×300個であった場合には、周知の画像拡大技術で画素が追加されて倍に拡大され、元画像データ100及び複写色用画像データ210が300画素×300画素であり、単位領域の構成が150個×150個であった場合には、周知の画像縮小技術で画素が削除されて半分に縮小される。
【0068】
そして、角度情報500が再算出される(S8)。具体的には、角度情報記憶エリア125に記憶されている初期角度情報510の配列構成が、単位領域の構成に合わせた数、すなわち、サイズ調整色用画像データ220の画素構成に調整され、サイズ調整色用画像データ220の各画素に対応した角度特徴及び角度特徴強度が算出される(この処理を行うCPU101が「角度情報再算出手段」として機能する。)。そして、この再算出後の再算出角度情報530が角度情報記憶エリア125へ記憶される(この処理を行うCPU101が「角度情報記憶制御手段」として機能する。)。
【0069】
そこで、図13乃至図26を参照して、角度情報500の再算出処理について具体的に説明する。ここでは、拡大の際の再算出方法について第一の拡大再算出方法、第二の拡大再算出方法、第三の拡大再算出方法を説明し、縮小の際の再算出方法について第一の縮小再算出方法、第二の縮小再算出方法を説明するが、拡大、縮小各々いずれの方法を用いてもよい。
【0070】
まず、第一の拡大再算出方法について、図13乃至図15を参照して説明する。図13は、拡大前の初期角度情報510の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図511であり、図14は、図13に示した模式図511を倍に拡大した再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図521であり、図15は、第一の拡大算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図531である。ここでは、150画素×150画素の元画像データ100から、単位領域の構成が300個×300個の刺繍データ700を作成する場合を考える。
【0071】
元画像データ100が150画素×150画素なので、図13に示すように、初期角度情報510では、角度特徴強度は各画素に対応して、縦1〜150、横1〜150の配列に記憶されている。なお、初期角度情報510の縦「1」、横「2」の角度特徴強度を示す際には初期角度情報(1,2)と記載することとし、再算出角度情報530の縦「1」、横「2」の角度特徴強度を示す際には再算出角度情報(1,2)と記載することとする。ここでは、簡単のために初期角度情報(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)の角度特徴強度に注目して説明する。初期角度情報(1,1)=10、初期角度情報(1,2)=15、初期角度情報(2,1)=80、初期角度情報(2,2)=100である。
【0072】
150画素×150画素の元画像データ100から作成された初期角度情報510を300個×300個の刺繍データ700に合わせるためには、配列の要素を倍にする必要があるので、図14に示すように、縦1〜300、横1〜300の配列に拡大されている。具体的には、初期角度情報(1,1)が再算出角度情報(1,1)とされ、再算出角度情報(1,2)、(2,1)、(2,2)が追加され、初期角度情報(1,2)が再算出角度情報(1,3)とされ、再算出角度情報(1,4)、(2,3)、(2,4)が追加され、初期角度情報(2,1)が再算出角度情報(3,1)とされ、再算出角度情報(3,2)、(4,1)、(4,2)が追加され、初期角度情報(2,2)が再算出角度情報(3,3)とされ、再算出角度情報(3,4)、(4,3)、(4,4)が追加されている。
【0073】
そして、第一の拡大算出方法では、追加された画素に対応する配列の要素の値が、追加の元となった画素に対応する配列の要素の値と同じ値とされる。したがって、図15に示すように、初期角度情報(1,1)に対して追加された再算出角度情報(1,2)、(2,1)、(2,2)には、初期角度情報(1,1)と同じ値である「10」が記憶される。そして、初期角度情報(1,2)に対して追加された再算出角度情報(1,4)、(2,3)、(2,4)には、初期角度情報(1,2)と同じ値である「15」が記憶される。そして、初期角度情報(2,1)に対して追加された再算出角度情報(3,2)、(4,1)、(4,2)には、初期角度情報(2,1)と同じ値である「80」が記憶される。そして、初期角度情報(2,2)に対して追加された再算出角度情報(3,4)、(4,3)、(4,4)には、初期角度情報(2,2)と同じ値である「100」が記憶される。また、角度情報の角度特徴についても同じように、再算出角度情報530における追加された画素に対応する配列の角度特徴欄の値は、初期角度情報510における追加の元となった画素に対応する配列の角度特徴欄の値と同じ値とされる。
【0074】
他の画素についても同様の処理が行われ、追加画素の値を元の画素の値と同じ値とすることにより初期角度情報510から再算出角度情報530が作成され、刺繍データ700の単位領域の構成と同じ構成の角度特徴強度及び角度特徴が求められる。
【0075】
次に、第二の拡大算出方法について、図13、図14及び図16を参照して説明する。図16は、第二の拡大算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図532である。第二の拡大算出方法では、第一の拡大算出方法と同様に、150画素×150画素の元画像データ100から300個×300個の刺繍データ700を作成する場合を考える。第一の拡大算出方法と同様に図13に示す初期角度情報510の150個×150個の配列が、図14に示す再算出角度情報520の300個×300個の配列に拡大される。そして、第二の拡大算出方法では、図15に示すように、追加された画素(追加画素)に対応する配列の要素の値を全て「0」とする。他の画素についても同様の処理が行われ、追加画素の値を「0」とすることにより、初期角度情報510から再算出角度情報530が作成され、刺繍データ700の単位領域の構成と同じ構成の角度特徴強度が求められる。また、角度情報の角度特徴については、追加画素の角度特徴強度の値は「0」とされるため、角度特徴がどのような角度であっても線分データ600を作成する際に影響がない。そこで、追加画素の角度特徴は特に設定しないとする。例えば、再算出情報の追加画素に対応した配列の角度特徴欄に初期値の「0」が記憶される。
【0076】
ただし、この方法では、複写色用画像データ210からサイズ調整色用画像データ220への拡大率が2倍程度であれば、「0」とされる追加画素の周囲に元の画素が存在し、角度特徴強度が「0」でない画素が存在することになるので、有意な線分データ600が得られ、有意な刺繍データ700が得られるが、拡大率が3倍、4倍と大きくなると、追加画素の周囲に角度特徴強度が「0」でない画素が存在せずに有意な線分データ600が得られず、有意な刺繍データ700が得られない。よって、この第二の拡大算出方法は、拡大率が3倍未満で用いることが望ましい。
【0077】
次に、図17乃至図20を参照して、第三の拡大算出方法について説明する。図17は、拡大前の初期角度情報510の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図513であり、図18は、第三の拡大算出方法による再算出の計算途中の角度特徴強度の一部を表示した計算過程配列の構成を示す模式図523であり、図19は、第三の拡大算出方法による計算途中の角度特徴強度の一部を表示した計算過程配列の構成を示す模式図524であり、図20は、第三の拡大算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図533である。ここでは、200画素×200画素の元画像データ100から300個×300個の刺繍データ700を作成する場合を考える。
【0078】
元画像データ100が200画素×200画素なので、図17に示すように、初期角度情報510では、角度特徴強度は各画素に対応して、縦1〜200、横1〜200の配列に記憶されている。なお、計算過程配列の縦「1」、横「2」の角度特徴強度を示す際には計算過程配列(1,2)と記載することとする。ここでは、簡単のために初期角度情報(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)の角度特徴強度に注目して説明する。初期角度情報(1,1)=10、初期角度情報(1,2)=15、初期角度情報(2,1)=80、初期角度情報(2,2)=100である。
【0079】
第三の拡大算出方法では、まず初期角度情報513を3倍した600個×600個の計算過程配列を作成し、追加された画素に対応する配列の値を、元となる画素に対応した配列の値と同じ値とする。ここで、計算過程配列を600×600とするのは、元画像データ100の200個と刺繍データ700の300個との最小公倍数が600であるためである。この状態が図18に示す模式図523である。
【0080】
図18に示すように、初期角度情報(1,1)に対応する計算過程配列(1,1)には「10」が記憶されており、初期角度情報(1,1)に対して追加された計算過程配列(1,2)、(1,3)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(3,1)、(3,2)、(3,3)には、初期角度情報(1,1)と同じ値である「10」が記憶される。そして、初期角度情報(1,2)に対応する計算過程配列(1,4)には「15」が記憶されており、初期角度情報(1,2)に対して追加された計算過程配列(1,5)、(1,6)、(2,4)、(2,5)、(2,6)、(3,4)、(3,5)、(3,6)には、初期角度情報(1,2)と同じ値である「15」が記憶される。そして、初期角度情報(2,1)に対応する計算過程配列(4,1)には「80」が記憶されており、初期角度情報(2,1)に対して追加された計算過程配列(4,2)、(4,3)、(5,1)、(5,2)、(5,3)、(6,1)、(6,2)、(6,3)には、初期角度情報(2,1)と同じ値である「80」が記憶される。そして、初期角度情報(2,2)に対応する計算過程配列(4,4)には「100」が記憶されており、初期角度情報(2,2)に対して追加された計算過程配列(4,5)、(4,6)、(5,4)、(5,5)、(5,6)、(6,4)、(6,5)、(6,6)には、初期角度情報(2,2)と同じ値である「100」が記憶される。また、角度情報の角度特徴についても同じように、再算出角度情報530における追加された画素に対応する配列の角度特徴欄の値は、初期角度情報510における追加の元となった画素に対応する配列の角度特徴欄の値と同じ値とされる。
【0081】
そして、図18に示す、の3個×3個の配列が、2×2で配置されて4つ集まった6個×6個の配列を、図19に示すように、2個×2個の配列が3×3で配置されて9個集まった配列として捉えなおす。計算過程配列は600個×600個なので、2個×2個の配列のまとまりは300個×300個となる。また、図20に示すように、再算出角度情報530は刺繍データ700のサイズと同じ300個×300個の配列とされている。そこで、計算過程配列の2個×2個の配列のまとまりの各要素の平均値が求められ、計算過程配列の対応する要素に記憶される。具体的には、計算過程配列(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)の各要素の平均値が求められ「(10+10+10+10)/4=10」、再算出角度情報(1,1)に記憶される。なお、本実施の形態では、小数点以下は四捨五入されているが、四捨五入の位置は小数点以下に限らず、小数点一位以下であってもよく、また切り捨ててもよい。
【0082】
そして、計算過程配列(1,3)、(1,4)、(2,3)、(2,4)の各要素の平均値が求められ「(10+15+10+15)/4=13」、再算出角度情報(1,2)に記憶される。そして、計算過程配列(1,5)、(1,6)、(2,5)、(2,6)の各要素の平均値が求められ「(15+15+15+15)/4=15」、再算出角度情報(1,3)に記憶される。そして、計算過程配列(2,1)、(2,2)、(2,1)、(2,2)の各要素の平均値が求められ「(10+10+80+80)/4=45」、再算出角度情報(2,1)に記憶される。そして、計算過程配列(2,3)、(2,4)、(2,3)、(2,4)の各要素の平均値が求められ「(10+15+80+100)/4=51」、再算出角度情報(2,2)に記憶される。そして、計算過程配列(2,5)、(2,6)、(2,5)、(2,6)の各要素の平均値が求められ「(15+15+100+100)/4=58」、再算出角度情報(2,3)に記憶される。そして、計算過程配列(3,1)、(3,2)、(2,1)、(2,2)の各要素の平均値が求められ「(80+80+80+80)/4=80」、再算出角度情報(3,1)に記憶される。
【0083】
そして、計算過程配列(3,3)、(3,4)、(2,3)、(2,4)の各要素の平均値が求められ「(80+100+80+100)/4=90」、再算出角度情報(3,2)に記憶される。そして、計算過程配列(3,5)、(3,6)、(2,5)、(2,6)の各要素の平均値が求められ「(100+100+100+100)/4=100」、再算出角度情報(3,3)に記憶される。
【0084】
なお、角度情報の角度特徴については、次のように計算される。具体的には、計算過程配列のある画素の角度特徴θ、角度特徴強度αとして、「X=cos(θ)×α」,「Y=sin(θ)×α」が全ての画素について計算される。そして、2個×2個の配列のまとまりごとにXの和(Xsum)、Yの和(Ysum)が求められる。そして、求めたXsum,Ysumからアークタンジェントが求められる。この「atan(Ysum/Xsum)」が、再算出角度情報の画素の角度特徴になる。
【0085】
例えば、角度特徴について、初期角度情報(1,1)=45、初期角度情報(1,2)=30、初期角度情報(2,1)=50、初期角度情報(2,2)=15であるとすると、これらの角度特徴が、計算過程配列のそれぞれ対応する配列に記憶される。つまり、計算過程配列(3,3)=45、計算過程配列(3,4)=30、計算過程配列(4,3)=50、計算過程配列(4,4)=15となる。これらの4つの配列を2個×2個の配列のまとまりとすると、「Xsum=cos(45)×10+cos(30)×15+cos(50)×80+cos(15)×100≒168」、「Xsum=sin(45)×10+sin(30)×15+sin(50)×80+sin(15)×100≒102」となる。そして、「atan(Ysum/Xsum)≒31」となる。この「31」が角度特徴として、再算出角度情報(1,1)の角度特徴欄に記憶される。なお、小数点以下は四捨五入されている。
【0086】
他の画素についても同様の処理が行われ、初期角度情報510から、周囲の画素の値に基づいて再算出角度情報530が作成され、刺繍データ700の単位領域の構成と同じ構成の角度特徴強度及び角度特徴が求められる。
【0087】
次に、第一の縮小算出方法について、図21及び図22を参照して説明する。図21は、縮小前の初期角度情報510の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図516であり、図22は、第一の縮小再算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図536である。ここでは、600画素×600画素の元画像データ100から300個×300個の刺繍データ700を作成する場合を考える。
【0088】
元画像データ100が600画素×600画素なので、図21に示すように、角度特徴強度が各画素に対応して、縦1〜600、横1〜600の配列に記憶されている。ここでは、簡単のために初期角度情報(1,1)、(1,2)、(1,3)、(1,4)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(2,4)、(3,1)、(3,2)、(3,3)、(3,4)、(4,1)、(4,2)、(4,3)、(4,4)の16個の配列の要素に注目して説明する。初期角度情報(1,1)=10、初期角度情報(1,2)=10、初期角度情報(1,3)=15、初期角度情報(1,4)=15、初期角度情報(2,1)=10、初期角度情報(2,2)=10、初期角度情報(2,3)=15、初期角度情報(2,4)=15、初期角度情報(3,1)=80、初期角度情報(3,2)=80、初期角度情報(3,3)=100、初期角度情報(3,4)=100、初期角度情報(4,1)=80、初期角度情報(4,2)=80、初期角度情報(4,3)=100、初期角度情報(4,4)=100である。
【0089】
そして、初期角度情報510を1/2に縮小して再算出角度情報530を作成する必要があるので、第一の縮小算出方法では、初期角度情報516の配列の要素を2個×2個で1まとまりにして考える。すると、初期角度情報516に2個×2個のまとまりは、300個×300個となる。そして、図21の例では、2個×2個のまとまりの要素の値は全て同じ値となっているので、その値を対応する再算出角度情報の配列の要素の値とされる。具体的には、初期角度情報(1,1)、(1,2)、(2,1)、(2,2)の要素の値は全て「10」であり、再算出角度情報(1,1)に「10」が記憶される。そして、初期角度情報(1,3)、(1,4)、(2,3)、(2,4)の要素の値は全て「15」であり、再算出角度情報(1,2)に「10」が記憶される。そして、初期角度情報(3,1)、(3,2)、(4,1)、(4,2)の要素の値は全て「80」であり、再算出角度情報(2,1)に「10」が記憶される。そして、初期角度情報(3,3)、(3,4)、(4,3)、(4,4)の要素の値は全て「100」であり、再算出角度情報(2,2)に「10」が記憶される。
【0090】
なお、本例では2個×2個のまとまりの要素の値は全て同じ値となっているので、再算出角度情報の値を、初期角度情報の値と同じ値としたが、まとまりの要素の値が全て同じでない場合には、まとまりの値の平均値を取ることとしたり、最大値を取ることとしたり、最小値を取ることとしたりしてもよい。また、本例では、初期角度情報510を1/2に縮小して再算出角度情報530を作成したので、2個×2個のまとまりとしたが、1/3に縮小する場合には、3個×3個のまとまりを作って考えればよく、縮小比率に合わせてまとまりの個数を決定すればよい。
【0091】
他の画素についても同様の処理が行われ、初期角度情報510から、周囲の画素の値に基づいて再算出角度情報530が作成され、刺繍データ700の単位領域の構成と同じ構成の角度特徴強度が求められる。
【0092】
次に、第二の縮小算出方法について、図23乃至図26を参照して説明する。図23は、縮小前の初期角度情報510の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図517であり、図24は、第二の縮小算出方法による再算出の計算途中の計算過程配列の構成を示す模式図527であり、図25は、第二の縮小算出方法による再算出の計算途中の計算過程配列の構成を示す模式図528であり、図26は、第二の縮小算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図537である。ここでは、300画素×300画素の元画像データ100から200個×200個の刺繍データ700を作成する場合を考える。
【0093】
元画像データ100が300画素×300画素なので、図21に示すように、角度特徴強度が各画素に対応して、縦1〜300、横1〜300の配列に記憶されている。ここでは、簡単のために初期角度情報(1,1)、(1,2)、(1,3)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(3,1)、(3,2)、(3,3)の9個の配列の要素に注目して説明する。初期角度情報(1,1)=10、初期角度情報(1,2)=89、初期角度情報(1,3)=15、初期角度情報(2,1)=63、初期角度情報(2,2)=37、初期角度情報(2,3)=25、初期角度情報(3,1)=80、初期角度情報(3,2)=4、初期角度情報(3,3)=100である。
【0094】
まず、初期角度情報513を2倍した600個×600個の計算過程配列を作成し、追加された画素に対応する配列の値を、元となる画素に対応した配列の値と同じ値とする。ここで、計算過程配列を600×600とするのは、元画像データ100の300個と刺繍データ700の300個との最小公倍数が600であるためである。この状態が図24に示す模式図527である。
【0095】
図24に示すように、初期角度情報(1,1)に対応する再算出角度情報(1,1)には「10」が記憶されており、初期角度情報(1,1)に対して追加された計算過程配列(1,2)、(2,1)、(2,2)には、初期角度情報(1,1)と同じ値である「10」が記憶される。そして、初期角度情報(1,2)に対応する計算過程配列(1,3)には「89」が記憶されており、初期角度情報(1,2)に対して追加された計算過程配列(1,4)、(2,3)、(2,4)には、初期角度情報(1,2)と同じ値である「89」が記憶される。そして、初期角度情報(1,3)に対応する計算過程配列(1,5)には「15」が記憶されており、初期角度情報(1,3)に対して追加された計算過程配列(1,6)、(2,5)、(2,6)には、初期角度情報(1,2)と同じ値である「15」が記憶される。
【0096】
そして、初期角度情報(2,1)に対応する計算過程配列(3,1)には「63」が記憶されており、初期角度情報(2,1)に対して追加された計算過程配列(3,2)、(4,1)、(4,2)には、初期角度情報(2,1)と同じ値である「63」が記憶される。そして、初期角度情報(2,2)に対応する計算過程配列(3,3)には「37」が記憶されており、初期角度情報(2,2)に対して追加された計算過程配列(3,4)、(4,3)、(4,4)には、初期角度情報(2,2)と同じ値である「37」が記憶される。そして、初期角度情報(2,3)に対応する計算過程配列(3,5)には「25」が記憶されており、初期角度情報(2,3)に対して追加された計算過程配列(3,6)、(4,5)、(4,6)には、初期角度情報(1,2)と同じ値である「25」が記憶される。
【0097】
そして、初期角度情報(3,1)に対応する計算過程配列(5,1)には「80」が記憶されており、初期角度情報(3,1)に対して追加された計算過程配列(5,2)、(6,1)、(6,2)には、初期角度情報(2,1)と同じ値である「80」が記憶される。そして、初期角度情報(3,2)に対応する計算過程配列(5,3)には「4」が記憶されており、初期角度情報(3,2)に対して追加された計算過程配列(5,4)、(6,3)、(6,4)には、初期角度情報(2,2)と同じ値である「4」が記憶される。そして、初期角度情報(3,3)に対応する計算過程配列(5,5)には「100」が記憶されており、初期角度情報(3,3)に対して追加された計算過程配列(5,6)、(6,5)、(6,6)には、初期角度情報(1,2)と同じ値である「100」が記憶される。
【0098】
そして、図24に示す、2個×2個の配列が、3×3で配置されて9個集まった6個×6個の配列を、図25に示すように3個×3個の配列が、2×2で配置されて9個集まった配列として捉えなおす。計算過程配列は600個×600個なので、3個×3個の配列のまとまりは200個×200個となる。また、図26に示すように、再算出角度情報530は刺繍データ700のサイズと同じ200個×200個の配列とされている。計算過程配列の3個×3個の配列のまとまりの各要素の平均値が求められ、計算過程配列の対応する要素に記憶される。具体的には、計算過程配列(1,1)、(1,2)、(1,3)、(2,1)、(2,2)、(2,3)、(3,1)、(3,2)、(3,3)の各要素の平均値が求められ「(10+10+89+10+10+89+63+63+37)/4=42」、再算出角度情報(1,1)に記憶される。なお、本実施の形態では、小数点以下は四捨五入される。
【0099】
そして、計算過程配列(1,4)、(1,5)、(1,6)、(2,4)、(2,5)、(2,6)、(3,4)、(3,5)、(3,6)の各要素の平均値が求められ「(89+15+15+89+15+15+37+25+25)/4=36」、再算出角度情報(1,2)に記憶される。そして、計算過程配列(4,1)、(4,2)、(4,3)、(5,1)、(5,2)、(5,3)、(6,1)、(6,2)、(6,3)の各要素の平均値が求められ「(63+63+37+80+80+4+80+80+4)/4=46」、再算出角度情報(2,1)に記憶される。そして、計算過程配列(4,4)、(4,5)、(4,6)、(5,4)、(5,5)、(5,6)、(6,4)、(6,5)、(6,6)の各要素の平均値が求められ「(37+25+25+4+100+100+4+100+100)/4=55」、再算出角度情報(2,2)に記憶される。以上のようにして、刺繍データ700の単位領域の構成と同じ構成の角度特徴強度が求められる。なお、角度特徴については、3個×3個の配列のまとまりに対して前記第三の拡大算出方法と同様の計算方法で求められ、再算出角度情報の対応する配列の角度特徴欄に記憶される。
【0100】
他の画素についても同様の処理が行われ、初期角度情報510から、周囲の画素の値に基づいて再算出角度情報530が作成され、刺繍データ700の単位領域の構成と同じ構成の角度特徴強度及び角度特徴が求められる。
【0101】
以上のようにして、図6のS6において、単位領域の構成と元画像データ100の画素構成が同じでなく、サイズ調整が必要であると判断された場合に(S6:YES)、色用画像データ200の伸縮が行われた後に(S7)、角度情報500が再算出されて、刺繍データ700の単位領域の構成に一致した再算出角度情報530が角度情報記憶エリア125に記憶される(S8)。
【0102】
次いで、角度情報記憶エリア125に記憶されている再算出角度情報530から線分データ600が作成され、線分データ記憶エリア126に記憶される(S9)。ここでは、まず、各画素について角度成分及び長さ成分を有する線分情報が作成される。角度情報500から作成された線分情報の集合が線分データ600である。角度成分については、角度情報記憶エリア125に記憶されている再算出角度情報530に記憶されている角度特徴がそのまま設定されることになるが、長さ成分については、予め設定された固定値又はユーザが入力した入力値が設定されることになる。具体的には、図27に示すように、注目画素を中心に、設定された角度成分及び長さ成分を有する線分が配置されるような線分情報が作成される。なお、図27は、角度成分が45度の場合を示している。
【0103】
ここで、画像を構成する全ての画素に対して線分情報を作成すると、この線分データ600に基づいて作成される刺繍データ700に従って刺繍縫製を行うとき、針数が極端に多くなったり、同じところを何度も縫うことになって縫製品質が損なわれることになったりすると共に、角度特徴強度の小さい画素についても一律に線分情報が作成されることになるので、画像全体としての特徴が効果的に反映されない刺繍データ700が作成されることになる。そこで、画像を構成する各画素が左から右へ、上から下へと順に走査され、当該画素の角度特徴強度が所定の閾値より場合についてのみ、線分情報が作成される。なお、「角度特徴の強度の閾値」としては、予め設定した固定値又はユーザが入力した入力値が設定される。
【0104】
次に、角度特徴の強度が所定の閾値より小さい画素であって、既に作成された線分情報によって特定される線分に重なり合わない画素について、以下のようにして線分情報を作成する。まず、注目画素の周囲の画素を走査し、角度特徴の強度が前記閾値よりも大きい画素について、角度特徴のcos値と角度特徴の強度の積の和T1、角度特徴のsin値と角度特徴の強度の積の和T2をそれぞれ求める。そして、T2/T1のアークタンジェント値を新たな角度特徴として角度成分を決定し、上述した長さ成分を有する線分データを作成する。角度特徴の強度が小さい画素については、その角度特徴が線分データに的確に反映されているとは言い難いので、上述したように、周囲の画素の角度特徴を加味して算出された新たな角度特徴に基づいて線分情報を作成することによって、違和感のない画像を再現可能な刺繍データ700が作成される。
【0105】
このようにして線分データ600が作成されると(S9)、後に行われる刺繍データ700の作成において不適切又は不必要な線分の線分情報が線分データ記憶エリア126に記憶されている線分データ600から削除される(S10)。具体的には、画像を構成する全ての画素を左上から順に走査し、線分情報が作成された全ての画素について以下の処理が行われる。
【0106】
まず、注目画素を中心に、その注目画素について作成された線分情報によって特定される線分の延長線上の所定範囲内に存在する全ての画素が走査され、注目画素の角度特徴に近似した角度特徴を有し、かつ、その角度特徴の強度が注目画素の角度特徴の強度より小さい画素が存在すれば、その画素について作成された線分情報が削除される。逆に、注目画素の角度特徴に近似した角度特徴を有し、しかも、その角度特徴の強度が注目画素の角度特徴の強度より大きい画素が存在すれば、注目画素について作成された線分情報が削除される。なお、ここでは、注目画素について作成された線分情報の長さ成分のn倍の範囲を走査範囲とするが、走査範囲を決定する「n値」や角度特徴の近似範囲「±θ」については、予め設定した固定値を採用してもよく、ユーザが入力した入力値を採用してもよい。
【0107】
このようにして、不必要な線分情報が削除されると(S10)、次に、各線分に対しての色データ400が作成される(S11)。この色データ400を作成するに際には、サイズ調整色用画像データ220が使用される。ただし、サイズ調整が行われなかった場合には複写色用画像データ210が使用されるが、ここでは、サイズ調整色用画像データ220を用いて説明する。
【0108】
なお、色成分を決定するに際しては、使用する刺繍糸の糸色の設定を行う必要がある。この設定においては、使用する刺繍糸の糸色数の入力、糸色数分の刺繍糸の糸色情報(RGB値)とカラーコードの入力が行われる。そして、入力された内容から糸色対応テーブルが作成される。また、このとき糸色の縫い順の設定も行われる。なお、刺繍糸の糸色の設定及び糸色の縫い順は、予め設定しておいてもよく、入力画面に従って、ユーザが入力するようにしてもよい。また、予め糸色対応テーブルが作成されている糸色の中からユーザが使用する糸色を選択するようにしてもよい。
【0109】
まず、サイズ調整色用画像データ220においての色を参照する範囲を決定するための反映参照高が設定される。参照範囲の一例としては、線分を挟む2本の平行線と、線分の両端への2本の垂線とで囲まれる領域である。そして、この反映参照高は、線分情報によって特定される線分から平行線までの距離を示す量(例えば、画素数又は刺繍結果の長さ)である。そして、線分を描画するために、サイズ調整色用画像データ220と同じサイズの画像が変換画像としてRAM102の変換画像記憶エリア(図示外)に作成される。なお、サイズ調整色用画像の色を参照する範囲は予め設定しておいてもよく、ユーザが入力するようにしてもよい。
【0110】
次に、ある注目画素について作成された線分情報によって特定される線分を変換画像上に描画する際に参照領域が設定され、この参照領域内に含まれる全ての画素について、それぞれのR・G・B値の和Cs1が求められる。また、この和Cs1を算出するために用いた画素数はd1とされる。ただし、このとき線分が描画されていない(通っていない)画素及びこれから描画しようとする線分が通る画素については、計算に含めないこととする。
【0111】
一方、サイズ調整色用画像データ220の該当する参照領域についても、その参照領域内に含まれる全ての画素について、それぞれのR・G・B値の和Cs2が求められる。また、その参照領域内の画素数はd2とされる。
【0112】
そして、これから描画しようとする線分の画素数はslとされ、(Cs1+CL×sl)÷(sl+d1)=Cs2÷d2となるCLが算出される。これは、即ち、これから描画しようとする線分に色CLを設定したとき、その参照領域内の線分の色の平均値と、元画像の該当する参照領域内の色の平均値が等しくなるということである。
【0113】
最後に、入力した糸色の中で、線分の色CLにRGB空間で最も距離の近い糸色が求められ、これが線分の色成分として色データ記憶エリア124に記憶される。なお、RGB空間での距離dは、算出した色CLのRGB値をr0、g0、b0、入力した糸色のRGB値をrn、gn、bnとすると、数3に示す数式に基づいて算出される。
【数3】

【0114】
このようにして色データ400が作成されると、色成分を加味した状態で各線分情報を再度分析し、線分データ600において線分情報の併合及び削除が行われる(S12)。まず、各線分データによって特定される線分のうち、同一線上に重なり合う同色の線分が存在している場合、即ち、角度成分及び色成分が同一で、部分的に重なり合う複数の線分が存在している場合は、それらの線分データが1つの線分データに併合される。このように、複数の線分データを1つの線分データに併合することによって、最終的に縫い目の数を減らすことができるので、縫製品質を損なうことなく、効率よく刺繍縫製を行うことができる刺繍データを作成することが可能となる。
【0115】
また、S5において設定した縫い順に従って線分を配置したとき、ある色成分を有する線分が、後から配置される他の色成分を有する線分によって部分的に隠される場合、他の色成分を有する線分によって隠された状態におけるその線分の表出率を算出し、この表出率が所定の閾値(最低表出率)より小さくなるような線分が存在する場合は、その線分データを削除する。このように、表出率の小さいあまり意味のない線分データを削除することによって、最終的に縫い目の数を減らすことができるので、縫製品質を損なうことなく、効率よく刺繍縫製を行うことができる刺繍データを作成することが可能となる。なお、閾値(最低表出率)は、予め設定された固定値を採用してもよく、ユーザが入力した入力値を採用してもよい。
【0116】
以上のようにして画像を構成する複数の画素に対して作成された、線分データ600及び色データ400に基づいて刺繍データ700が作成される(S13)。線分データ600及び色データ400に基づく刺繍データの作成は、基本的には、同一色成分毎に、各線分データによって特定される各線分の始点、終点及び色成分を、縫い目(ステッチ)の始点、終点及び色に変換することによって行われる。ただし、全ての線分を独立した縫い目に変換すると、線分の数だけ渡り縫い部分が発生し、それぞれに留め縫いが入ると、縫製品質も悪くなるので、できる限り各線分を連続した縫い目に変換するために、以下に示すような処理を行う。
【0117】
まず、各線分データによって特定される全体の線分群を、色成分毎の線分群に分割する。次に、ある色成分の線分群について、最も左上に位置する端点を有する線分を検索し、その端点をその線分(開始線分)の始点とし、その線分のもう一方の端点を終点とする。そして、この終点から最も近い端点を有する他の線分を検索し、この端点を次の線分の始点とし、その線分のもう一方の端点を終点とする。この処理を繰り返すことによって、その色成分の線分群についての縫製順序を決定し、これを全ての色成分の線分群に対して行う。なお、この処理を行う場合、既に順序が決定された線分については、それ以降の順序決定の検索から除外することは言うまでもない。
【0118】
以上のようにして、元画像データ100から刺繍データ700が作成される。刺繍のサイズに合わせた刺繍データ700を作成するために、刺繍の糸密度と刺繍サイズとから刺繍データ700の作成に必要な画素数が決定され、元画像データ100をそのまま複写した複写色用画像データ210を、刺繍データ700の作成に必要な画素数の画像データであるサイズ調整色用画像データ220に伸縮させている。しかしながら、サイズ調整色用画像データ220が複写色用画像データ210から拡大した画像である場合には、複写色用画像データ210よりもサイズ調整色用画像データ220の方が全体的にぼやけた画像となる。また、サイズ調整色用画像データ220が複写色用画像データ210から縮小した画像である場合には、サイズ調整色用画像データ220の細部が潰れてしまうことがある。よって、サイズ調整色用画像データ220に基づいて角度情報500を作成してしまうと、全体的に拡大された場合には角度特徴強度が低いものとなってしまい、縮小された場合には全体的に角度特徴強度が高いものとなってしまう。
【0119】
そこで、本発明の刺繍データ作成装置1では、上述したように、まず、元画像データ100を複写した角度用画像データ300から初期角度情報510を作成し、その初期角度情報510に基づいて刺繍データ700の作成に必要な画素構成の角度情報を再算出し、再算出角度情報530が作成される。そして、再算出角度情報530から線分データ600が作成され、サイズ調整色用画像データ220及び線分データ600から色データ400が作成されて、これらの線分データ600及び色データ400から刺繍データ700が作成される。
【0120】
したがって、サイズ調整色用画像データ220が拡大された画像である場合にも、拡大後のぼやけたサイズ調整色用画像データ220から角度情報を作成しないので、角度特徴強度が低くなってしまうことがなく、元の元画像データ100よりもぼやけた縫い上がり状態となってしまうことなく、元の元画像データ100により近い縫い上がり状態を得ることができる。
【0121】
なお、図6に示すS9,S10,S12の処理を行うCPU101が「線分データ作成手段」に相当し、S11の処理を行うCPU101が「色データ作成手段」に相当し、S13の処理を行うCPU101が「刺繍データ作成手段」として機能する。
【0122】
尚、本発明の刺繍データ作成装置、刺繍データ作成プログラム、及び、刺繍データ作成プログラムを記録した記録媒体は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0123】
上記実施の形態では、図6に示す角度情報再算出の処理(S8)において、拡大の場合の算出方法として、第一の拡大再算出方法、第二の拡大再算出方法、第三の拡大再算出方法を説明し、縮小の際の再算出方法について第一の縮小再算出方法、第二の縮小再算出方法を説明し、拡大、縮小各々いずれの方法を用いてもよいとしている。しかしながら、ユーザに計算方法を選択させてもよい。選択の方法としては、計算方法の設定を行う設定画面を設け、ハードディスク装置120に設定情報を記憶する記憶エリアを設けて、使用する計算方法を示す値を記憶させておき、その値を読み出して指定されている計算方法で計算するようにしてもよい。また、本処理を実施する都度、計算方法を指定させるようにしてもよい。
【0124】
また、それぞれの計算方法で作成された再算出角度情報530を用いて、刺繍の縫い上がりのプレビュー用の画像を作成して、図28に示すような角度特徴調整選択画面901を表示させて、ユーザに選択させても良い。図28は、角度特徴調整選択画面901を示す図である。具体的には、それぞれの方法で再算出角度情報530が再算出され、角度情報記憶エリア125にそれぞれの再算出角度情報530が記憶される。そして、それぞれの再算出角度情報530からそれぞれ線分データ600が作成されて線分データ記憶エリア126に記憶される。そして、それぞれの線分データ600に対して、色データ400が作成されて色データ記憶エリア124に記憶される。そして、作成されたそれぞれの線分データ600及び色データ400から刺繍データ700が作成される。そして、それらの刺繍データ700により行われる刺繍の縫い上がり状態を示すプレビュー表示用の画像が作成される。そして、それらのプレビュー表示用の画像が角度特徴調整選択画面901に配置されて、ディスプレイ24に表示される(この処理を行うCPU101が「プレビュー表示制御手段」及び「第一複数プレビュー表示制御手段」として機能する。)。
【0125】
なお、図28に示す角度特徴調整選択画面901は、サイズ調整にて拡大が行われた場合の画面であり、左から第一の拡大再算出方法、第二の拡大再算出方法、第三の拡大再算出方法の順で縫い上がり状態のプレビュー画像9011が示されている。そして、それぞれのプレビュー画像9011の下にはラジオボタン9012が設けられており、画像を選択することにより算出方法を選択可能となっている。そして、画面中央下にはOKボタン及びキャンセルボタンが設けられており、OKボタンが選択されると、ラジオボタン9012にて選択されている算出方法が選択されることとなる。なお、キャンセルボタンが選択されると、デフォルトの算出方法(例えば、第三の拡大算出方法)が選択される。そして、選択された計算方法で算出された再算出角度情報530に基づいて作成された刺繍データ700が使用される。
【0126】
なお、図28に示した角度特徴調整選択画面901のように、プレビュー表示と共に算出方法を選択させてもよいが、プレビュー表示をするのみで、算出方法の設定は他の設定画面にて行うようにしてもよい。
【0127】
また、上記実施の形態では、図6に示すフローチャートのS11において色用画像データ200と線分データ600とから色データ400を作成しているが、この色用画像データ200の色合いをユーザにより調整可能としてもよい。例えば、図29に示すような輝度調整画面902をディスプレイ24に表示させる。図29は、輝度調整画面902を示す図である。輝度調整画面902には、刺繍の縫い上がり状態を示すプレビュー画像9023が表示されている。そして、その下には、輝度を指示するバー9021が設けられており、スライダ9022を移動させることにより、輝度を指定することができる。図29に示す例では、左側であるほど輝度が低く暗くなり、右側であるほど輝度が高く明るくなる。そして、スライダ9022の移動に伴い、プレビュー画像9023の色合いが変化する。
【0128】
具体的には、色用画像データ200がスライダ9022により指定されている輝度に変更され(この処理を行うCPU101が「色用画像変化手段」として機能する。)、変更後の画像データと、線分データ記憶エリア126の記憶されている線分データ600とから刺繍データ700が作成される。そして、作成された刺繍データ700に基づいてプレビュー画像9023をディスプレイ24に表示させるためのデータが作成され、ディスプレイ24に表示される(この処理を行うCPU101が「プレビュー表示制御手段」及び「第二プレビュー表示制御手段」として機能する。)。また、画面中央下にはOKボタン及びキャンセルボタンが設けられており、OKボタンが選択されると、スライダ9022で指定されている輝度が設定され、キャンセルボタンが選択されると、デフォルトの輝度が選択される。
【0129】
なお、図29に示すようなバー9021及びスライダ9022を使用せずに、輝度を入力させるようにしてもよい。また、予め定められているいくつかの輝度で色合いを調整した色用画像データ200を作成し、それぞれの画像データと線分データ600とから色データ400を作成し、それぞれについてプレビュー画像を表示して、その中から一番好ましい画像を選択させてもよい。また、色合いの調整として「輝度」だけでなく、色相、彩度、コントラスト、RGB値などその他の色合いに関する値を変化させて、色合いを調整するための、図29に示したような調整画面を表示させて、ユーザに色合いを調整させるようにしてもよい。また、色合いを調整させる値としては「輝度」のみ、「色相」のみというように1つの値を変化させるだけでなく、複数の値を変化させるようにして、それぞれの指定された値に基づいて色用画像データ200からプレビュー画像を作成するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0130】
従来であれば、画像全体を明るくした後、変更後の画像データから角度特徴を算出すると、画像の濃淡が少なくなり、角度特徴の強度が全体的に小さくなってしまった。しかしながら、本発明の刺繍データ作成装置1では、色データ400を作成するための色用画像データ200と、角度情報500を算出するための角度用画像データ300とが別々の画像であるので、色合いの調整のために色用画像データ200を変更しても、角度情報500に影響を与えない。また、このように画像データの色合いを変更する場合、1つの画像データから色データ400及び角度情報500を作成している場合には、画像データの色合いを変更した後に、変更後の画像データから角度情報を再度算出する必要があるので処理に時間がかかる。しかしながら、本発明の刺繍データ作成装置1では、色データ400を作成するための色用画像データ200と、角度情報500を算出するための角度用画像データ300とが別々の画像であるので、色合いの調整のために色用画像データ200を変更しても、角度情報500を再度算出する必要がない。
【0131】
また、上記実施の形態では、図6に示すフローチャートのS9において、算出された角度特徴強度をそのまま使用して、線分データ600が作成されているが、角度特徴強度を補正した後に線分データ600を作成してもよい。
【0132】
例えば、線分データ600を作成する際に、全ての画素の角度特徴強度の値が所定の閾値よりも小さいか否かの判断を行い、全ての画素の角度特徴強度の値が所定の閾値よりも小さい場合に補正を行うと判断する(この処理を行うCPU101が「補正判断手段」として機能する。)。なお、角度特徴強度は0から100までの値をとり、所定の閾値とは、例えば50である。なお、角度特徴強度の値がこのような条件を満たすのは、元画像データ100の画像がぼやけている場合である。
【0133】
また、全ての画素の角度特徴の値の中に、外れ値が存在する場合には、外れ値を除いた角度特徴強度に対して補正を行うようにしてもよい。全ての値の中のごく少ない割合(例えば、5%)の値のみが他の値とかけ離れた値をもっている場合に、このかけ離れた値を「外れ値」という。例えば、全体の98%が30以下の値である場合に、その中の2%のみが90以上の値を取っているような場合、90以上の値が外れ値と判断される。そこで、線分データ600を作成する際に、全ての画素の角度特徴強度の値が所定の閾値よりも小さいか否かの判断を行うのではなく、先に外れ値があるか否かの判断を行い、外れ値がある場合には外れ値を除いた値が所定の値よりも小さいか否かの判断を行い、外れ値以外の値が所定の閾値よりも小さい場合に補正を行うと判断してもよい(この処理を行うCPU101が「補正判断手段」として機能する。)。
【0134】
そして、補正を行うと判断された場合には、角度特徴強度の値が大きくなるように、各値に補正が行われて、補正した結果が角度情報記憶エリア125の角度情報500の角度特徴欄にそれぞれ記憶される(この処理を行うCPU101が「補正角度情報記憶制御手段」として機能する。)。
【0135】
ここで、図30乃至図33を参照して、角度特徴強度の補正の具体的な方法について、第一の方法から第四の補正の方法まで説明する。図30は、所定の値を足すことにより補正する場合(第一の補正方法)の模式図であり、図31は、下限値よりも大きい値について所定の値を足すことにより補正する場合(第二の補正方法)の模式図であり、図32は、所定の値を掛けることにより補正する場合(第三の補正方法)の模式図であり、図33は、下限値よりも大きい値について所定の値を掛けることにより補正する場合(第四の補正方法)の模式図であり、図34は、外れ値を除く角度特徴強度が閾値よりも小さい場合に、第一の補正の方法により外れ値を除く値に所定の値を足すことにより補正する場合の模式図である。なお、図30乃至図34における閾値を「50」とし、図31及び図33における下限値を「15」とし、図34における外れ値を「90〜95」のいずれかの値とする。なお、角度特徴強度の最小値は「0」、最大値は「100」である。
【0136】
まず、図30を参照して、第一の補正方法である、所定の値を足すことにより補正する場合について説明する。この場合には、閾値である「50」を最大値である「100」に補正するように、加算する所定の値を決定される。即ち、「100−50=50」である。閾値が「40」であれば、加算する所定の値は「100−40=60」となる。このように、全ての値に所定の値「50」を足しこむことにより、全体の角度特徴強度が大きくなるので、元画像データ100がぼやけた画像であったとしても、自然な色合いの刺繍結果を得ることができる。
【0137】
次に、図31を参照して、第二の補正方法である、下限値よりも大きい値について所定の値を足すことにより補正する場合について説明する。この場合においても、閾値である「50」を最大値である「100」に補正するように、加算する所定の値が決定される。この場合には、下限値より小さい角度特徴強度については補正が行われず、特に第一の補正方法のように角度特徴強度が「0」であるものや小さいものに対しても所定の値を加算することがないので、本来角度特徴強度が小さい画素について必要以上に補正してしまうことがなく、ノイズが少なくなる。
【0138】
次に、図32を参照して、第三の補正方法である、所定の値を掛けることにより補正する場合について説明する。ここでは、最大値「100」を閾値である「50」で割った値「2」が、掛ける所定の値とされる。すなわち、閾値「50」に所定の値を掛けると最大値「100」となる。この場合、角度特徴強度が引き伸ばされる結果となるので、それぞれ画素の角度特徴強度の比率を崩すことなく補正することができるので、バランスの良い刺繍結果を得ることができる。また、角度特徴強度が「0」のものは「0」のままなので、本来角度特徴強度のない画素に角度特徴強度を持たせてしまうことがない。
【0139】
次に、図33を参照して、第四の補正方法である、下限値よりも大きい値について所定の値を掛けることにより補正する場合について説明する。ここでは、最大値「100」から下限値「15」を引いた値を、閾値「50」から下限値「15」を引いた値で割った値が掛ける所定の値とされる。「(100−15)/(50−15)=85/35=17/7」である。ただし、例えば、「49」という値を補正すると、49×(17/7)=119となり、最大値「100」よりも大きな値となってしまう。このように最大値「100」よりも大きな値は全て最大値「100」とする。この場合には、下限値より小さい角度特徴強度については補正が行われないので、本来角度特徴強度が小さい画素について必要以上に補正してしまうことがない。
【0140】
次に、図34を参照して、外れ値がある場合について第一の補正方法を例にあげて説明する。図34に示すように、外れ値がある場合には、外れ値以外の値に対して所定の値が加算される。なお、第二の補正方法、第三の補正方法、第四の補正方法においても同様である。また、外れ値に対しても所定の値を足したり、掛けたりしてよい。この場合には、計算結果が最大値「100」よりも大きな値となるので、外れ値の値は全て最大値の「100」とされる。
【0141】
以上のような第一〜第四の補正の方法のいずれの方法を用いて角度特徴強度を補正してもよいが、ユーザにより補正方法を設定させてもよい。また、図35に示す角度特徴強度補正選択画面903のように、複数の補正の方法による補正結果により作成される刺繍データ700のプレビュー画像を表示し、ユーザに選択させるようにしてもよい。図35は、角度特徴強度補正選択画面903を示す図である。図35に示す例では、第一〜第四の補正の方法による補正を行った角度特徴強度に基づいて作成される刺繍データのプレビュー画像9031が左から順に表示されている。そして、それぞれのプレビュー画像9031の下にはラジオボタン9032が設けられており、画像を選択することにより補正方法を選択可能となっている。そして、画面中央下にはOKボタン及びキャンセルボタンが設けられており、OKボタンが選択されると、ラジオボタン9032にて選択されている補正方法が選択されることとなる。なお、キャンセルボタンが選択されると、デフォルトの算出方法(例えば、第四の補正方法)が選択される。そして、選択された補正方法による補正を行った角度特徴強度に基づいて作成された刺繍データ700が使用される。
【0142】
また、上記第一の補正方法〜第四の補正方法では、角度特徴強度に加算したり、掛けたりする所定の値を刺繍データ作成装置1において決定している。しかし、この所定の値をユーザに指定させるようにしてもよい。また、図36に示すような角度特徴強度の補正量設定画面904をディスプレイ24に表示させる。図36は、角度特徴強度の補正量設定画面904を示す図である。角度特徴強度の補正量設定画面904には、刺繍の縫い上がり状態を示すプレビュー画像9043が表示されている。そして、その下には、補正量を指示するバー9041が設けられており、スライダ9042を移動させることにより、所定の値を指定することができる。図36に示す例では、左側であるほど所定の値が小さくなり、右側であるほど所定の値が大きくなる。そして、スライダ9042の移動に伴い、プレビュー画像9043が変化する。所定の値が大きい方がくっきりとした画像となる。
【0143】
なお、この角度特徴強度の補正は、線分データ600を作成する直前に行ってもよいが、初期角度情報510を作成した後、再算出角度情報530を作成する前に行ってもよい。
【0144】
また、上記実施の形態では、元画像データ100のコピーをそのまま角度用画像データ300としているが、角度用画像データ300を作成せずに、元画像データ100からそのまま初期角度情報510を作成してもよい。また、複写色用画像データ210を作成せずに、元画像データ100から直接サイズ調整色用画像データ220を作成してもよい。
【0145】
また、刺繍データ作成プログラムはCD−ROM114に記憶されているが、この記録媒体はCD−ROMに限らず、フレキシブルディスクやDVDなど他の記録媒体であってもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】刺繍ミシン3の外観図である。
【図2】刺繍データ作成装置1の物理的構成を示す全体構成図である。
【図3】刺繍データ作成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】刺繍データ700作成の際に使用される情報とそれらの関係を示した情報関係図である。
【図5】角度情報記憶エリア125の構成を示す模式図である。
【図6】元画像データ100から刺繍データ700を作成する処理手順を示すフローチャートである。
【図7】角度情報算出処理のフローチャートである。
【図8】ある画素とその周囲の画素の輝度値を示す模式図590である。
【図9】各画素について右方向の画素データとの差の絶対値を算出した結果を示す模式図591である。
【図10】各画素について右下方向の画素データとの差の絶対値を算出した結果を示す模式図592である。
【図11】各画素について下方向の画素データとの差の絶対値を算出した結果を示す模式図593である。
【図12】画素について左下方向の画素データとの差の絶対値を算出した結果を示す模式図594である。
【図13】拡大前の初期角度情報510の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図511である。
【図14】模式図511を倍に拡大した再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図521である。
【図15】第一の拡大算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図531である。
【図16】第二の拡大算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図532である。
【図17】拡大前の初期角度情報510の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図513である。
【図18】第三の拡大算出方法による再算出の計算途中の角度特徴強度の一部を表示した計算過程配列の構成を示す模式図523である。
【図19】第三の拡大算出方法による計算途中の角度特徴強度の一部を表示した計算過程配列の構成を示す模式図524である。
【図20】第三の拡大算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図533である。
【図21】縮小前の初期角度情報510の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図516である。
【図22】第一の縮小再算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図536である。
【図23】縮小前の初期角度情報510の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図517である。
【図24】第二の縮小算出方法による再算出の計算途中の計算過程配列の構成を示す模式図527である。
【図25】第二の縮小算出方法による再算出の計算途中の計算過程配列の構成を示す模式図528である。
【図26】第二の縮小算出方法による再算出角度情報530の角度特徴強度のみについて一部表示した模式図537である。
【図27】角度成分が45度の場合の画素と線分の関係を示す模式図である。
【図28】角度特徴調整選択画面901の図である。
【図29】輝度調整画面902の図である。
【図30】所定の値を足すことにより補正する場合(第一の補正方法)の模式図である。
【図31】下限値よりも大きい値について所定の値を足すことにより補正する場合(第二の補正方法)の模式図である。
【図32】所定の値を掛けることにより補正する場合(第三の補正方法)の模式図である。
【図33】下限値よりも大きい値について所定の値を掛けることにより補正する場合(第四の補正方法)の模式図である。
【図34】外れ値を除く角度特徴強度が閾値よりも小さい場合に、第一の補正の方法により外れ値を除く値に所定の値を足すことにより補正する場合の模式図である。
【図35】角度特徴強度補正選択画面903の図である。
【図36】角度特徴強度の補正量設定画面904の図である。
【符号の説明】
【0147】
1 刺繍データ作成装置
3 刺繍ミシン
21 マウス
22 キーボード
34 針
100 元画像データ
101 CPU
120 ハードディスク装置
121 元画像データ記憶エリア
122 色用画像データ記憶エリア
123 角度用画像データ記憶エリア
124 色データ記憶エリア
125 角度情報記憶エリア
126 線分データ記憶エリア
127 刺繍データ記憶エリア
128 プログラム記憶エリア
200 色用画像データ
210 複写色用画像データ
220 サイズ調整色用画像データ
300 角度用画像データ
400 色データ
500 角度情報
510 初期角度情報
513 初期角度情報
516 初期角度情報
520 再算出角度情報
530 再算出角度情報
600 線分データ
700 刺繍データ
901 角度特徴調整選択画面
902 輝度調整画面
9021 バー
9022 スライダ
9023 プレビュー画像
903 角度特徴強度補正選択画面
904 角度特徴強度補正量設定画面
9041 バー
9042 スライダ
9043 プレビュー画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素の集合体からなり任意の画像を形成する画像データに基づいて、ミシンで刺繍を行うための刺繍データを作成する刺繍データ作成装置において、
色の連続性の高い方向を示す角度特徴及び連続性の強さを示す角度特徴強度を画素ごとに決定するための角度用画像データを前記画像データから作成する角度用画像データ作成手段と、
前記ミシンで使用される糸色を決定するための色用画像データを前記画像データから作成する色用画像データ作成手段と、
前記角度用画像データ作成手段により作成された角度用画像データの各画素についての前記角度特徴及び前記角度特徴強度を算出する角度情報算出手段と、
当該角度情報算出手段により算出された角度特徴及び角度特徴強度を角度情報として記憶する角度情報記憶手段と、
作成する刺繍データの大きさに応じて、前記色用画像データを構成する画素数を追加又は削除することにより、当該色用画像データの大きさを拡大又は縮小する画像データ拡大縮小手段と、
当該画像データ拡大縮小手段により拡大又は縮小された色用画像データの大きさと前記角度用画像データの大きさとが異なる場合に、当該色用画像データの各画素について角度情報を再算出する角度情報再算出手段と、
当該角度情報再算出手段により算出された角度特徴及び角度特徴強度を前記角度情報記憶手段に再記憶する角度情報記憶制御手段と、
前記角度情報記憶手段に記憶されている角度情報に基づいて、各画素上に配置される糸の軌跡である線分を示す線分データを作成する線分データ作成手段と、
前記色用画像データに基づいて、前記線分データ作成手段により作成された線分データの各線分の糸色を示す色データを作成する色データ作成手段と、
前記線分データ作成手段により作成された線分データ及び前記色データ作成手段により作成された色データに基づいて前記刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と
を備えたことを特徴とする刺繍データ作成装置。
【請求項2】
各画素の角度特徴及び角度特徴強度の再算出の計算方法が異なる複数の前記角度情報再算出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項3】
前記角度情報再算出手段は、
前記画像データ拡大縮小手段により前記画像データが拡大された場合に、
前記画像データ拡大縮小手段により追加された画素である追加画素の角度特徴及び角度特徴強度を元となる画素の角度特徴及び角度特徴強度と同じ値とする、
前記追加画素の角度特徴及び角度特徴強度をゼロとする、又は、
前記追加画素の角度特徴及び角度特徴強度を当該画素の周囲の画素の前記角度特徴及び前記角度特徴強度に基づいて計算する
うちの少なくとも1つの方法で前記角度特徴及び前記角度特徴強度を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項4】
前記角度情報再算出手段は、
前記画像データ拡大縮小手段により縮小された場合に、
前記画像データ拡大縮小手段により画素を削除されることにより前記画像データが縮小され、残った画素である残存画素の角度特徴及び角度特徴強度を、元となる画素の角度特徴及び角度特徴強度と同じ値とする、及び、
前記残存画素の角度特徴及び角度特徴強度を当該画素の周囲の角度特徴及び角度特徴強度に基づいて計算する
うちの少なくとも一方の方法で前記角度特徴及び前記角度特徴強度を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項5】
画像を表示する表示手段と、
前記刺繍データ作成手段により作成された前記刺繍データに基づいて刺繍を行った場合の縫い上がり状態を前記表示手段に表示するプレビュー表示制御手段と、
それぞれの前記角度情報再算出手段により再算出された角度特徴及び角度特徴強度を用いて作成されたそれぞれの刺繍データの縫い上がり状態を前記プレビュー表示制御手段の制御により前記表示手段に表示する第一複数プレビュー表示制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項6】
前記色用画像データ作成手段により作成された色用画像データの色を変化させる色用画像色変化手段と、
前記色データ作成手段は、前記色用画像色変化手段により色の変化された色用画像データに基づいて前記色データを作成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項7】
前記色用画像色変化手段は、色相、彩度、色の明るさ、色のコントラスト、色を指定する値のうちの少なくとも1つを変化させることにより色を変化させることを特徴とする請求項6に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項8】
前記色用画像色変化手段による前記色用画像データの色の変化度合いを指定する色変化指定手段を備え、
前記色用画像色変化手段は、前記色変化指定手段の指定に基づいて前記色用画像データの色を変化させることを特徴とする請求項6又は7に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項9】
画像を表示する表示手段と、
前記刺繍データ作成手段により作成された前記刺繍データに基づいて刺繍を行った縫い上がり状態を前記表示手段に表示するプレビュー表示制御手段と、
前記色用画像色変化手段により前記色用画像データに異なる色変化を行った複数の色用画像データに基づいて、前記色データ作成手段によりそれぞれの前記色データを作成し、それぞれの前記色データを用いて作成されたそれぞれの刺繍データの縫い上がり状態を前記プレビュー表示制御手段の制御により前記表示手段に表示する第二複数プレビュー表示制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項10】
前記角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度において、全画素の値が所定の閾値よりも小さいか否かにより前記角度特徴強度を補正するか否かを判断する補正判断手段と、
当該補正判断手段により補正すると判断された場合に前記角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度を補正する補正手段と、
当該補正手段により補正された角度情報を前記角度情報記憶手段に記憶する補正角度情報記憶制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の刺繍データ作成装置。
【請求項11】
前記補正判断手段は、前記角度情報記憶手段に記憶されている角度情報の角度特徴強度において外れ値を取る画素がある場合には、当該外れ値を取る画素以外の画素の値が前記所定の閾値よりも小さい場合に補正をすると判断することを特徴とする請求項10に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項12】
前記補正手段は、前記角度特徴強度に対して所定の値を加算すること、又は、前記角度特徴強度に対して所定の値を掛けることにより補正を行い、計算の結果が前記角度特徴強度の最大値よりも大きな値となった場合には最大値を補正後の値とすることを特徴とする請求項10又は11に記載の刺繍データ作成装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の刺繍データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させるための刺繍データ作成プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の刺繍データ作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図28】
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【図29】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2007−275105(P2007−275105A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101601(P2006−101601)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】