説明

剥離装置および剥離方法

【課題】本発明の実施形態は、剥離作業中に剥離の適否を知ることができる剥離装置および剥離方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、基板の膜が形成された側とは反対の側からレーザ光を照射して、前記基板から前記膜を剥離させる剥離装置であって、前記レーザ光とは異なる波長を有する検査光を出射する検査光源と、前記レーザ光の照射領域に照射された前記検査光の反射光、および、前記レーザ光が照射されることで前記膜の表層が分解される際に生じたプラズマ光の少なくともいずれかを検出する検出部と、前記検出された反射光、および、前記検出されたプラズマ光の少なくともいずれかに基づいて剥離の適否を判定する判定部と、を備えたことを特徴とする剥離装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、剥離装置および剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイア基板の表面側に窒化物半導体膜を形成し、サファイア基板の裏面側からレーザ光を照射することにより形成された窒化物半導体膜を剥離する技術が知られている。
しかしながら、この様な技術においては剥離作業中に剥離の適否を知ることができず、歩留まりや生産性などが低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−149988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、剥離作業中に剥離の適否を知ることができる剥離装置および剥離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、基板の膜が形成された側とは反対の側からレーザ光を照射して、前記基板から前記膜を剥離させる剥離装置であって、前記レーザ光とは異なる波長を有する検査光を出射する検査光源と、前記レーザ光の照射領域に照射された前記検査光の反射光、および、前記レーザ光が照射されることで前記膜の表層が分解される際に生じたプラズマ光の少なくともいずれかを検出する検出部と、前記検出された反射光、および、前記検出されたプラズマ光の少なくともいずれかに基づいて剥離の適否を判定する判定部と、を備えたことを特徴とする剥離装置が提供される。
【0006】
また、他の実施形態によれば、基板の膜が形成された側とは反対の側からレーザ光を照射して、前記基板から前記膜を剥離させる剥離方法であって、前記レーザ光とは異なる波長を有する検査光を出射する工程と、前記レーザ光の照射領域に照射された前記検査光の反射光、および、前記レーザ光が照射されることで前記膜の表層が分解される際に生じたプラズマ光の少なくともいずれかを検出する工程と、前記検出された反射光、および、前記検出されたプラズマ光の少なくともいずれかに基づいて剥離の適否を判定する工程と、を備えたことを特徴とする剥離方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施の形態に係る剥離装置を例示する模式図である。
【図2】(a)〜(d)は剥離の様子を例示するための模式工程断面図である。
【図3】金属元素を含む化合物から形成された膜と、分解により形成された金属膜との反射率の違いを例示するグラフ図である。
【図4】(a)はレーザ光の照射前の膜の様子、(b)はレーザ光の適正な照射が行われた膜の様子、(c)は過剰なエネルギーのレーザ光が照射された膜の様子を例示するための模式図である。
【図5】(a)は反射光の強度を検出する場合、(b)はプラズマ光の強度を検出する場合、(c)は反射光の強度とプラズマ光の強度とを検出する場合の模式グラフ図である。
【図6】(a)は照射範囲を移動させて膜を剥離する様子を例示するための模式図、(b)は膜が剥離された照射範囲を例示するための模式拡大図である。
【図7】半導体発光素子を構成する積層体を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る剥離装置を例示する模式図である。
なお、図1中の矢印X、Y、Zは互いに直交する三方向を表しており、X、Yは水平方向、Zは鉛直方向を表している。
図1に示すように、剥離装置1には発振部2、整形光学系3、ダイクロイックミラー4、照射光学系5、載置部6、検査部7、制御部8、反射ミラー13、反射ミラー14が設けられている。
【0009】
発振部2は、後述する被処理物100に向けてレーザ光を出射する。
発振部2としては特に限定がなく、被処理物100に形成された膜100bの表層を分解できるレーザ光を出射可能なものであればよい。
その様な発振部2としては、例えば、Nd−YAGレーザ発振器、ArFエキシマレーザ発振器、KrFエキシマレーザ発振器、YVO4レーザ発振器などを例示することができる。
また、発振部2においてパルス発振をさせる際の周波数を1Hz〜100kHz程度、パルス幅を1〜100ナノ秒程度とすることができる。
【0010】
整形光学系3は、発振部2から出射したレーザ光のビーム形状を後述する照射領域の形状に合わせて整形する。例えば、照射領域が矩形の場合には、整形光学系3は、ビーム形状が矩形となるように整形する。
ダイクロイックミラー4は、特定の波長の光を反射し、その他の波長の光を透過させる。すなわち、ダイクロイックミラー4は、整形光学系3によりビーム形状が整形されたレーザ光を反射して照射光学系5側に折り返す。また、ダイクロイックミラー4は、検査光源9から出射された光(検査光)、検査光源9から出射され後述する膜100bまたは金属膜100b1により反射された光を透過させる。また、ダイクロイックミラー4は、被処理物100に形成された膜100bの表層が分解される際に生じた光(プラズマ光)の一部を透過させる。
照射光学系5は、結像レンズなどの光学要素を備え、発振部2から出射しダイクロイックミラー4を介して入射するレーザ光を照射領域に集光させる。また、照射光学系5は、検査光源9から出射した検査光を照射領域に集光させる。
【0011】
載置部6には、基台6a、移動部6bが設けられている。
基台6aは、板状を呈し、その上面に移動部6bが設けられている。
移動部6bには、基台6aの上面に設けられ図中のY方向に往復自在な第1の移動部6b1と、第1の移動部6b1の上面に設けられ図中のX方向に往復自在な第2の移動部6b2とが設けられている。そして、第2の移動部6b2の上面が被処理物100を載置する載置面6cとなっている。また、第2の移動部6b2には、載置面6cに載置された被処理物100を保持する図示しない保持手段が設けられている。図示しない保持手段としては、例えば、静電チャックや真空チャックなどを例示することができる。
この場合、載置部6をいわゆるXYテーブルとすることができる。
【0012】
なお、載置部6に載置、保持された被処理物100の位置を移動させる場合を例示したが、照射光学系5側の位置を移動させるものとすることもできる。すなわち、載置部6に載置、保持された被処理物100の位置と、レーザ光の照射位置と、の相対的な位置関係を変化させることができるものであればよい。
【0013】
検査部7には、検査光源9、検出部10、判定部11、表示部12、反射ミラー15が設けられている。
検査光源9は、発振部2から出射されるレーザ光とは異なる波長を有する検査光を出射するものとすることができる。検査光源9は、検査光として、例えば、400nm〜1200nmの波長を有するレーザ光を出射可能なものとすることができる。
また、検査光源9から出射され被処理物100に照射される検査光のビーム形状は、発振部2から出射されたレーザ光の照射領域とほぼ同じ形状、ほぼ同じ大きさとされている。すなわち、レーザ光の照射領域に照射された検査光源9からの検査光のビーム形状は、レーザ光の照射領域と略同一となっている。そのため、レーザ光を照射している領域全体に検査光源9から出射された検査光が照射されるようになる。
【0014】
検出部10は、入射した光をその光の強度に応じた電気信号に変換する。検出部10は、例えば、フォトダイオードなどの光電変換素子などとすることができる。なお、検出部10に入射する光は、検査光源9から出射され後述する膜100bまたは金属膜100b1により反射された光、膜100bの表層が分解される際に生じた光(プラズマ光)である。すなわち、検出部10は、レーザ光の照射領域に照射された検査光源9からの検査光の反射光、および、レーザ光が照射されることで膜100bの表層が分解される際に生じたプラズマ光の少なくともいずれかを検出する。
【0015】
この場合、反射光とプラズマ光とをそれぞれ別に検出するために、検出部10などにフィルタなどを設けるようにすることができる。
【0016】
判定部11は、検出部10からの検出情報に基づいて剥離状態や剥離範囲の適否を判定する。すなわち、判定部11は、検出された反射光、および、検出されたプラズマ光の少なくともいずれかに基づいて剥離の適否を判定する。なお、剥離状態や剥離範囲の適否に関する詳細は後述する。
表示部12は、検出部10からの検出情報や判定部11における判定結果を表示する。
【0017】
反射ミラー13、反射ミラー14は、発振部2から出射したレーザ光の光路に設けられ、入射したレーザ光を反射させて方向を変換する。反射ミラー15は、検査光源9から出射した検査光の光路に設けられ、入射した光を反射させて方向を変換する。なお、反射ミラー13、反射ミラー14、反射ミラー15は必ずしも必要ではなく、発振部2、検査光源9などの配設位置などに応じて適宜設けるようにすることができる。
【0018】
制御部8は、剥離装置1に設けられた各要素の動作を制御する。例えば、発振部2におけるレーザ光の発振条件を制御したり、載置部6における位置制御をしたりすることができる。また、検出部10からの検出情報や判定部11における判定結果などを格納することもできる。また、制御部8は、判定部11における判定結果などに基づいてレーザ光の発振条件などを発振部2にフィードバックすることもできる。
【0019】
次に、剥離状態や剥離範囲の適否の判定に関してさらに例示をする。
図2は、剥離の様子を例示するための模式工程断面図である。
図2(a)に示すように、被処理物100は、基板100aと、基板100aの主面に形成された膜100bとを有する。
基板100aは、膜100bを良好に形成することができ、発振部2から出射し照射光学系5を介して入射するレーザ光を透過させることができるものとすることができる。
【0020】
また、膜100bは金属元素を含む化合物などから形成されたものとすることができる。
例えば、膜100bは窒化物半導体などから形成されたものとすることができる。この場合、窒化物半導体としては、例えば、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)などを例示することができる。
【0021】
ここで、基板100a上に膜100bを結晶成長させる場合には、膜100bと同じ材料からなる基板100aを用いるか、膜100bと格子定数および熱膨張係数の近い材料からなる基板100aを用いるようにすることが好ましい。例えば、膜100bが窒化物半導体から形成される場合には、基板100aが窒化物半導体から形成されたものとすることが好ましい。ただし、一般的には、窒化物半導体からなる適切な大きさの基板100aを形成することは困難である。そのため、窒化物半導体から形成された基板の代用としてサファイア基板、SiC基板、スピネル基板などを用いるようにすることができる。
【0022】
図2(b)に示すように、基板100aの膜100bが形成された側とは反対の側からレーザ光Lを照射すると、照射されたレーザ光Lが基板100aと膜100bとの界面において吸収される。そして、吸収されたレーザ光Lのエネルギーにより膜100bが局部的に加熱され、膜100bの表層が分解される。
【0023】
図2(c)に示すように、膜100bの表層が分解されると、膜100bが基板100aから剥離される。この際、膜100bの表層は気体と金属に分解され、この金属が、剥離されることで生じた空間の壁面に付着する。例えば、膜100bがGaN(窒化ガリウム)から形成されている場合には、レーザLが照射されることで、GaN(窒化ガリウム)からなる膜100bの表層がNガス(窒素ガス)と金属であるGa(ガリウム)に分解され、膜100bが基板100aから剥離される。また、この際、金属であるGa(ガリウム)が、剥離により生じた空間の壁面に付着する。すなわち、剥離により生じた空間の壁面に、金属(Ga(ガリウム))の膜が形成されることになる。
【0024】
図3は、金属元素を含む化合物から形成された膜と、分解により形成された金属膜との反射率の違いを例示するグラフ図である。なお、図3は、金属元素を含む化合物がGaN(窒化ガリウム)であり、金属がGa(ガリウム)の場合である。この場合、図3中のAがGa(ガリウム)の場合、図3中のBがGaN(窒化ガリウム)の場合である。
図4は、レーザ光が照射された膜の様子を例示するための模式図である。なお、図4(a)はレーザ光の照射前の膜の様子、図4(b)はレーザ光の適正な照射が行われた膜の様子、図4(c)は過剰なエネルギーのレーザ光が照射された膜の様子を例示するための模式図である。
【0025】
図3に示すように、金属であるGa(ガリウム)の場合Aの方が、金属元素を含む化合物であるGaN(窒化ガリウム)の場合Bよりも反射率が高くなる。
そのため、レーザ光が照射された膜は、図4(a)に示すような状態から図4(b)に示すような状態へと変化することになる。
【0026】
ここで、発振部2におけるレーザ出力の変動、基板100aの表面状態の分布、基板100a上の異物などがあると、適正なエネルギーが界面に照射されず剥離が不十分となる場合がある。この様な剥離が不十分な部分が存在すると、基板100aの全域における照射が完了し膜100bを基板100aから分離させる際に膜100bを破損させてしまうおそれがある。
【0027】
この場合、基板100aの全域における照射が完了した後に、剥離状態を検査するようにすれば、膜100bの破損を抑制することができる。しかしながら、この様な検査を行えば、検査工程を別途設ける必要があり生産性が低下するおそれがある。また、基板100aの全域における照射が完了した後に行う検査において不具合原因が判明したとしても、当該被処理物100における不具合の発生を防ぐことができない。そのため、歩留まりや生産性が低下するおそれがある。
【0028】
また、照射範囲が小さすぎる場合には剥離が不十分な部分が生じたり、照射範囲が大きすぎる場合には隣接する部分が加熱されすぎてクラックが発生したりするおそれがある。この様な場合、基板100aの全域における照射が完了した後に行う検査では不具合原因を特定することは難しい。
【0029】
そのため、本実施の形態においては、検査光源9から出射され膜100bまたは金属膜100b1により反射された光を検出し、検出された反射光に基づいて剥離状態や剥離範囲の適否を判定するようにしている。その様にすれば、剥離作業中に剥離の適否を知ることができる。この場合、反射率が高くなれば反射光の強度が高くなるので、反射光の強度を検出することで剥離状態や剥離範囲の適否を判定することができる。
【0030】
また、過剰なエネルギーのレーザ光が照射されると、図2(d)に示すように照射領域の周辺においてクラック100b2が発生したり、図4(c)に示すように膜100bが破損したりするおそれがある。
この様な場合には、照射領域における反射光を検出するだけでは不具合の発生を検知することが難しい場合がある。
ここで、レーザ光が照射されることで膜100bの表層が分解される際には、プラズマが発生している。そのため、本実施の形態においては、このプラズマから出射されるプラズマ光を検出し、検出されたプラズマ光に基づいて剥離状態の適否を判定するようにしている。その様にすれば、剥離作業中に剥離の適否を知ることができる。
【0031】
また、反射光とプラズマ光とに基づいて、剥離状態や剥離範囲の適否を判定することもできる。
図5は、光の強度の検出を例示するための模式グラフ図である。なお、図5(a)は反射光の強度を検出する場合、図5(b)はプラズマ光の強度を検出する場合、図5(c)は反射光の強度とプラズマ光の強度とを検出する場合である。
【0032】
前述したようにレーザ光が照射されると金属膜が形成されるので反射率が変化する。そのため、図5(a)に示すように反射光の強度も変化する。その結果、反射光の強度の変化量に基づいて剥離状態の適否を判定することができる。例えば、剥離がされていない部分があると、その分反射光の強度が低くなる。また、反射光の強度が変化した範囲に基づいて剥離範囲の適否を判定することができる。
【0033】
また、前述したようにレーザ光が照射されることで膜100bの表層が分解される際にはプラズマが発生するので、図5(b)に示すようにプラズマ光の強度も変化する。そのため、プラズマ光の強度の変化量に基づいて剥離状態の適否を判定することができる。例えば、過剰なエネルギーのレーザ光が照射されると、その分プラズマ光の強度が高くなる。そのため、例えば、図4(c)に示すような状態となることを予測することができる。
なお、反射光とプラズマ光とをそれぞれ別に検出する場合には、検出部10などにフィルタなどを適宜設けるようにすればよい。
【0034】
また、図5(c)に示すように反射光の強度とプラズマ光の強度とを検出すれば、前述した剥離状態や剥離範囲の適否を総合的に判定することができる。例えば、図5(c)中のC部分の光の強度の変化量はプラズマ光によるものであるので、C部分の光の強度の変化量に基づいて剥離状態の適否を判定することができる。例えば、過剰なエネルギーのレーザ光が照射されていないかなどを知ることができる。また、図5(c)中のD部分の光の強度の変化量は反射光によるものであるので、D部分の光の強度の変化量に基づいて剥離状態や剥離範囲の適否を判定することができる。
【0035】
次に、剥離装置1の作用について例示をする。
まず、図示しない搬送手段により、被処理物100が載置部6の載置面6c上に載置、保持される。なお、被処理物100は、基板100aと、基板100aの主面に形成された膜100bとを有し、基板100aの膜100bが形成されていない側の主面を照射光学系5側に向けて載置される。
【0036】
次に、発振部2からレーザ光を出射させ反射ミラー13、反射ミラー14を介して整形光学系3に入射させる。整形光学系3に入射したレーザ光は、ビーム形状が照射領域の形状に合わせて整形される。例えば、照射領域が矩形の場合には、整形光学系3によりビーム形状が矩形となるように整形される。
【0037】
整形光学系3によりビーム形状が整形されたレーザ光は、ダイクロイックミラー4により反射されて照射光学系5側に折り返えされる。ダイクロイックミラー4を介して照射光学系5に入射したレーザ光は被処理物100の照射領域に照射される。
被処理物100の照射領域に照射されたレーザ光は、基板100aを透過し、基板100aと膜100bとの界面において吸収される。そして、吸収されたレーザ光のエネルギーにより膜100bが局部的に加熱され、膜100bの表層が分解されて、膜100bが基板100aから剥離される。この際、分解により形成された金属が、剥離により生じた空間の壁面に付着する。すなわち、剥離により生じた空間の壁面に金属膜100b1が形成されることになる。
【0038】
一方、検査光源9から出射した検査光は、反射ミラー15により反射されてダイクロイックミラー4側に折り返えされる。ダイクロイックミラー4側に折り返えされた光は、ダイクロイックミラー4を透過して照射光学系5に入射する。照射光学系5に入射した光は、被処理物100の照射領域に照射される。なお、検査光源9から出射されレーザ光の照射領域に照射される検査光のビーム形状は照射領域とほぼ同じ形状、ほぼ同じ大きさとされている。
【0039】
被処理物100の照射領域に照射された光は、膜100bまたは金属膜100b1により反射されて、照射光学系5、ダイクロイックミラー4を透過して検出部10に入射する。検出部10に入射した反射光はその強度に応じた電気信号に変換される。判定部11においては、検出部10により光電変換された電気信号(検出情報)に基づいて剥離状態や剥離範囲の適否が判定される。
【0040】
また、膜100bの表層が分解される際に発生したプラズマからのプラズマ光も照射光学系5、ダイクロイックミラー4を透過して検出部10に入射する。検出部10に入射したプラズマ光はその強度に応じた電気信号に変換される。判定部11においては、検出部10により光電変換された電気信号(検出情報)に基づいて剥離状態の適否が判定される。この場合、検出部10により反射光とプラズマ光とを検出すれば、前述した剥離状態や剥離範囲の適否を総合的に判定することもできる。なお、反射光とプラズマ光とをそれぞれ別に検出する場合には、検出部10などに設けられたフィルタなどによりそれぞれの光に分離される。
【0041】
また、検出部10からの検出情報や判定部11における判定結果などは、表示部12に表示される。そして、検出部10からの検出情報や判定部11における判定結果などは制御部8に格納される。また、制御部8は、判定部11における判定結果などに基づいてレーザ光の発振条件などを発振部2にフィードバックするようにすることもできる。
【0042】
1つの照射範囲における膜100bの剥離が終了した場合には、次に照射がされる照射範囲が照射光学系5の直下に位置するように、被処理物100の位置が載置部6により移動される。
図6は、照射範囲を移動させて膜100bを剥離する様子を例示するための模式図である。なお、図6(a)は照射範囲を移動させて膜100bを剥離する様子を例示するための模式図、図6(b)は膜100bが剥離された照射範囲を例示するための模式拡大図である。この場合、照射範囲の形状は矩形としている。
図6(a)に示すように、レーザ光が照射されて膜100bが剥離された領域Eと、レーザ光が照射されておらず膜100bが剥離されていない領域Fとでは反射率が異なるものとなる。
前述したように、レーザ光が照射されて膜100bが剥離されると金属膜100b1が形成されるので、図6(a)、(b)に示すようにレーザ光の照射が行われた領域Eの反射率が高くなる。
【0043】
そして、前述した手順を繰り返すようにすれば、基板100aの全域における膜100bの剥離を行うことができる。
【0044】
本実施の形態においては、検査光源9から出射され膜100bまたは金属膜100b1により反射された光に基づいて剥離状態や剥離範囲の適否を判定することができる。
また、レーザ光が照射されることで膜100bの表層が分解される際に生じたプラズマ光に基づいて剥離状態の適否を判定することができる。
また、反射光とプラズマ光とに基づいて、剥離状態や剥離範囲の適否を判定することができる。
そのため、剥離作業中に剥離の適否を知ることができる。また、判定結果などに基づいてレーザ光の発振条件などを逐次フィードバックすることもできる。その結果、歩留まりや生産性の向上を図ることもできる。
【0045】
次に、本実施の形態に係る剥離方法について例示をする。
なお、一例として、サファイア基板の表面に形成された半導体発光素子を構成する積層体を剥離する場合について例示をする。また、前述した剥離装置1の構成やその作用などにおいて例示をしたものと同様の事項に関してはその説明を適宜省略する。
図7は、半導体発光素子を構成する積層体201を例示するための模式断面図である。 図7に示すように、サファイアなどからなる基板100aの一方の主面には積層体201が形成されている。
積層体201においては、窒化物半導体層202、n形窒化物半導体層203、発光層204、p形窒化物半導体層205、透光性電極206、電極207が基板100aの側からこの順で積層されている。
【0046】
窒化物半導体層202としては、例えば、窒化物半導体からなるものを例示することができる。
窒化物半導体層202は、レーザを照射することで基板100aから積層体201を剥離させる際に剥離層としての役割をはたす。また、窒化物半導体層202上に気相成長させるn形窒化物半導体層203などの層と、サファイアなどからなる基板100aとの間の格子定数および熱膨張係数の不整合を緩和する役割をもはたす。
n形窒化物半導体層203としては、n形となるようにドープされた窒化物半導体からなるものを例示することができる。
【0047】
発光層204は、正孔および電子が再結合して光を発生する井戸層と、井戸層よりも大きなバンドギャップを有する障壁層(クラッド層)と、によって構成された量子井戸構造とすることができる。
この場合、単一量子井戸(SQW;Single Quantum Well)構造としてもよいし、多重量子井戸(MQW;Multiple Quantum Well)構造としてもよい。また、単一量子井戸構造のものを複数積層するようにしてもよい。
【0048】
例えば、単一量子井戸構造のものとしては、GaN(窒化ガリウム)からなる障壁層、InGaN(窒化インジウムガリウム)からなる井戸層、GaN(窒化ガリウム)からなる障壁層がこの順で積層されたものを例示することができる。
多重量子井戸構造のものとしては、GaN(窒化ガリウム)からなる障壁層、InGaN(窒化インジウムガリウム)からなる井戸層、GaN(窒化ガリウム)からなる障壁層、InGaN(窒化インジウムガリウム)からなる井戸層、GaN(窒化ガリウム)からなる障壁層がこの順で積層されたものを例示することができる。
この場合、前述したn形窒化物半導体層203を障壁層とすることもできる。
【0049】
p形窒化物半導体層205としては、p形となるようにドープされた窒化物半導体からなるものを例示することができる。
透光性電極206としては、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)や、Ni(ニッケル)/Au(金)の二重層などからなるものを例示することができる。透光性電極206は、p形窒化物半導体層205と電極207とのオーミックコンタクト(ohmic contact)を形成させるために設けられている。
【0050】
電極207としては、Al(アルミニウム)/Ti(チタン)の二重層などの金属材料からなるものを例示することができる。
ここで、前述した窒化物半導体としては、GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)などを例示することができる。
【0051】
この様な半導体発光素子を構成する積層体201を基板100aから剥離させる場合には、基板100aの積層体201が形成された側とは反対の側からレーザ光を照射する。照射されたレーザ光は基板100aを透過して、基板100aと窒化物半導体層202との界面において吸収される。そして、吸収されたレーザ光のエネルギーにより窒化物半導体層202が局部的に加熱され、窒化物半導体層202の表層が分解される。
【0052】
窒化物半導体層202の表層が分解されると、この分解により窒化物半導体層202が基板100aから剥離される。この際、窒化物半導体層202の分解により形成された金属は、剥離により生じた空間の壁面に付着する。すなわち、剥離により生じた空間の壁面に金属膜が形成されることになる。
例えば、窒化物半導体層202がGaN(窒化ガリウム)から形成されている場合には、レーザ光が照射されることで、窒化物半導体層202がGa(ガリウム)とNガス(窒素ガス)とに分解され、窒化物半導体層202が基板100aから剥離される。また、この際、金属であるGa(ガリウム)は、窒化物半導体層202が基板100aから剥離されることにより生じた空間の壁面に付着する。すなわち、剥離により生じた空間の壁面に、金属であるGa(ガリウム)の膜が形成されることになる。
そして、必要に応じてレーザ光の照射範囲を移動させることで基板100aの全域における窒化物半導体層202の剥離、すなわち積層体201の剥離を行う。
【0053】
ここで、本実施の形態に係る剥離方法においては、レーザ光の照射範囲にレーザ光とは異なる波長を有する光を照射し、窒化物半導体層202または剥離の際に形成された金属膜により反射された光に基づいて剥離状態や剥離範囲の適否を判定するようにする。
また、レーザ光が照射されることで窒化物半導体層202の表層が分解される際に生じたプラズマ光に基づいて剥離状態の適否を判定するようにする。
また、反射光とプラズマ光とに基づいて、剥離状態や剥離範囲の適否を判定するようにする。
【0054】
すなわち、本実施の形態に係る剥離方法は、レーザ光とは異なる波長を有する光を出射する工程と、レーザ光の照射領域に照射された光の反射光、および、レーザ光が照射されることで膜の表層が分解される際に生じたプラズマ光の少なくともいずれかを検出する工程と、検出された反射光、および、検出されたプラズマ光の少なくともいずれかに基づいて剥離の適否を判定する工程と、を備えている。
【0055】
そのため、剥離作業中に剥離の適否を知ることができる。また、判定結果などに基づいてレーザ光の発振条件などを逐次フィードバックすることもできる。その結果、歩留まりや生産性の向上を図ることもできる。
【0056】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、剥離装置1が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0057】
1 剥離装置、2 発振部、3 整形光学系、5 照射光学系、6 載置部、7 検査部、8 制御部、9 検査光源、10 検出部、11 判定部、100 被処理物、100a 基板、100b 膜、201 積層体、202 窒化物半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の膜が形成された側とは反対の側からレーザ光を照射して、前記基板から前記膜を剥離させる剥離装置であって、
前記レーザ光とは異なる波長を有する検査光を出射する検査光源と、
前記レーザ光の照射領域に照射された前記検査光の反射光、および、前記レーザ光が照射されることで前記膜の表層が分解される際に生じたプラズマ光の少なくともいずれかを検出する検出部と、
前記検出された反射光、および、前記検出されたプラズマ光の少なくともいずれかに基づいて剥離の適否を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする剥離装置。
【請求項2】
前記膜は、金属元素を含む化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の剥離装置。
【請求項3】
前記レーザ光の照射領域に照射された前記検査光のビーム形状は、前記照射領域と略同一であること、を特徴とする請求項1または2に記載の剥離装置。
【請求項4】
前記判定部における判定結果に基づいて前記レーザ光の発振条件を前記レーザ光の発振部にフィードバックする制御部をさらに備えたこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の剥離装置。
【請求項5】
前記金属元素を含む化合物は、窒化物半導体であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の剥離装置。
【請求項6】
基板の膜が形成された側とは反対の側からレーザ光を照射して、前記基板から前記膜を剥離させる剥離方法であって、
前記レーザ光とは異なる波長を有する検査光を出射する工程と、
前記レーザ光の照射領域に照射された前記検査光の反射光、および、前記レーザ光が照射されることで前記膜の表層が分解される際に生じたプラズマ光の少なくともいずれかを検出する工程と、
前記検出された反射光、および、前記検出されたプラズマ光の少なくともいずれかに基づいて剥離の適否を判定する工程と、
を備えたことを特徴とする剥離方法。
【請求項7】
前記膜は、金属元素を含む化合物を含むことを特徴とする請求項6記載の剥離方法。
【請求項8】
前記レーザ光の照射領域に照射された前記検査光のビーム形状は、前記照射領域と略同一であること、を特徴とする請求項6または7に記載の剥離方法。
【請求項9】
前記剥離の適否を判定する工程における判定結果に基づいて、前記レーザ光の発振条件をフィードバックすること、を特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の剥離方法。
【請求項10】
前記金属元素を含む化合物は、窒化物半導体であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−4353(P2012−4353A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138142(P2010−138142)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】