説明

力覚提示装置およびそれを備えたパワーアシストシステム

【課題】流体圧シリンダを用いる力覚提示装置において、シリンダを交換しなくても伝達の増幅率の変化を可能とする。
【解決手段】力覚提示装置1は、第1圧力室21および第2圧力室22を有する第1シリンダ11と、第3圧力室23および第4圧力室24を有する第2シリンダ12と、第2圧力室22と第3圧力室23とを連通させる第1連通路31と、第1圧力室21と第4圧力室24とを連通させる第2連通路32と、第1容器41および第2容器42と、第1容器41と第1連通路31とを連通させる第3連通路33と、第2容器42と第2連通路32とを連通させる第4連通路34と、第3連通路33に設けられた第1電磁弁51と、第4連通路34に設けられた第2電磁弁52と、第1容器41の内部圧力を制御する第1圧縮機61と、第2容器42の内部圧力を制御する第2圧縮機62と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚提示装置およびそれを備えたパワーアシストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されたバイラテラル位置・力伝達装置のように、アクチュエータとしてマスタ側シリンダおよびスレーブ側シリンダを備え、いずれか一方のシリンダから他方のシリンダに力または位置変化(変位)を伝達するようにした装置が知られている。
【0003】
また、特許文献2に記載されたマスタ・スレーブ型遠隔操作システムのように、アクチュエータとしてマスタ側のACサーボモータおよびスレーブ側のACサーボモータを備え、いずれか一方のサーボモータから他方のサーボモータに力または変位を伝達するようにした装置も知られている。
【特許文献1】特開2001−140802号公報
【特許文献2】特開2006−167845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装置では、マスタ側とスレーブ側との間における変位の伝達の増幅率、例えば、マスタ側シリンダのピストンロッドを所定長さ動かしたときにスレーブ側シリンダのピストンロッドがどの程度動くかは、マスタ側およびスレーブ側のシリンダの内径によって一義的に決定される。そのため、伝達の増幅率を変化させようとすると、マスタ側およびスレーブ側の少なくとも一方のシリンダを、内径の異なる他のシリンダに交換する必要がある。ところが、シリンダの交換には時間と手間がかかる。したがって、上記装置は、例えばレスキュー現場等のように、短時間の間に増幅率の変化が必要となる場面では、利用することが困難であった。
【0005】
一方、特許文献2に記載された装置は、アクチュエータとしてACサーボモータを用いるものであるため、機械的な要素により構成された力覚提示装置に比べ、円滑性に欠ける。また、マスタ側およびスレーブ側のアクチュエータとして流体圧シリンダを用いる装置に対して適用することはできない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流体圧シリンダを用いる力覚提示装置において、シリンダを交換しなくても伝達の増幅率の変化を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る力覚提示装置は、往復移動可能な第1ピストンロッドを有し、前記第1ピストンロッドによって第1圧力室と第2圧力室とが区画形成された第1シリンダと、往復移動可能な第2ピストンロッドを有し、前記第2ピストンロッドによって第3圧力室と第4圧力室とが区画形成された第2シリンダと、前記第2圧力室と前記第3圧力室とを連通させる第1連通路と、前記第1圧力室と前記第4圧力室とを連通させる第2連通路と、第1容器および第2容器と、前記第1容器と前記第1連通路、前記第2圧力室、または前記第3圧力室とを連通させる第3連通路と、前記第2容器と前記第2連通路、前記第1圧力室、または前記第4圧力室とを連通させる第4連通路と、前記第3連通路に設けられた第1流路開閉手段と、前記第4連通路に設けられた第2流路開閉手段と、前記第1容器の内部圧力および前記第2容器の内部圧力を制御する圧力制御手段と、を備えたものである。
【0008】
上記力覚提示装置によれば、シリンダを交換しなくても変位の伝達の増幅率を変化させることが可能となる。
【0009】
前記圧力制御手段は、前記第1容器に連通した第1圧縮機と、前記第2容器に連通した第2圧縮機と、を有していてもよい。
【0010】
このことにより、第1圧縮機、第2圧縮機によって、第1容器、第2容器の内部圧力をそれぞれ制御することができる。
【0011】
あるいは、前記圧力制御手段は、圧縮機と、前記圧縮機と前記第1容器とを連通させる第5連通路と、前記圧縮機と前記第2容器とを連通させる第6連通路と、前記第5連通路に設けられた第1圧力調整弁と、前記第6連通路に設けられた第2圧力調整弁と、を有していてもよい。
【0012】
このことにより、第1圧力調整弁、第2圧力調整弁によって、第1容器、第2容器の内部圧力をそれぞれ制御することができる。
【0013】
少なくとも前記第1圧力室、前記第2圧力室、前記第3圧力室、および前記第4圧力室の内部圧力は、常に大気圧以上に保たれることが好ましい。
【0014】
このことにより、第1容器および第2容器の内部圧力を大気圧よりも低くする必要がなくなり、第1容器および第2容器の圧力制御が比較的簡単となる。
【0015】
前記力覚提示装置は、前記第3圧力室、前記第4圧力室の内部圧力をそれぞれ直接または間接的に検出する第3圧力センサ、第4圧力センサをさらに備え、前記圧力制御手段は、前記第1流路開閉手段および前記第2流路開閉手段を開いた状態で前記第1ピストンロッドが前記第1圧力室側から前記第2圧力室側に、あるいは、前記第2圧力室側から前記第1圧力室側に移動したときに、前記第1容器の内部圧力を前記第3圧力室の内部圧力と等しくなるように制御し、前記第2容器の内部圧力を前記第4圧力室の内部圧力と等しくなるように制御してもよい。
【0016】
これにより、第1ピストンロッドが第1圧力室側から第2圧力室側に移動すると、第2圧力室内の流体は、第3圧力室だけでなく、第1容器にも流入する。また、第1圧力室には、第4圧力室からだけでなく、第2容器からも流体が流入する。その結果、第2ピストンロッドのストローク量は第1ピストンロッドのストローク量よりも小さくなり、第1シリンダから第2シリンダに伝達される変位は減少する。
【0017】
第1ピストンロッドが第2圧力室側から第1圧力室側に移動すると、第1圧力室内の流体は、第4圧力室だけでなく、第2容器にも流入する。また、第2圧力室には、第3圧力室からだけでなく、第1容器からも流体が流入する。その結果、第2ピストンロッドのストローク量は第1ピストンロッドのストローク量よりも小さくなり、第1シリンダから第2シリンダに伝達される変位は減少する。
【0018】
前記力覚提示装置は、前記第1圧力室、前記第2圧力室の内部圧力をそれぞれ直接または間接的に検出する第1圧力センサ、第2圧力センサをさらに備え、前記圧力制御手段は、前記第1流路開閉手段および前記第2流路開閉手段を開いた状態で前記第1ピストンロッドが前記第1圧力室側から前記第2圧力室側に、あるいは、前記第2圧力室側から前記第1圧力室側に移動したときに、前記第1容器の内部圧力を前記第2圧力室の内部圧力と等しくなるように制御し、前記第2容器の内部圧力を前記第1圧力室の内部圧力と等しくなるように制御してもよい。
【0019】
これにより、第1ピストンロッドが第1圧力室側から第2圧力室側に移動すると、第3圧力室には、第2圧力室からだけでなく、第1容器からも流体が流入する。また、第4圧力室内の流体は、第1圧力室だけでなく、第2容器にも流入する。その結果、第2ピストンロッドのストローク量は第1ピストンロッドのストローク量よりも大きくなり、第1シリンダから第2シリンダに伝達される変位は増幅される。
【0020】
第1ピストンロッドが第2圧力室側から第1圧力室側に移動すると、第4圧力室には、第1圧力室からだけでなく、第2容器からも流体が流入する。また、第3圧力室内の流体は、第2圧力室だけでなく、第1容器にも流入する。その結果、第2ピストンロッドのストローク量は第1ピストンロッドのストローク量よりも大きくなり、第1シリンダから第2シリンダに伝達される変位は増幅される。
【0021】
本発明に係るパワーアシストシステムは、人によって操作される操作装置と、前記操作装置に入力される操作力を増幅させて出力する出力装置と、前記力覚提示装置と、を備え、前記第1ピストンロッドが前記出力装置に連結され、前記第2ピストンロッドが前記操作装置に連結されているものである。
【0022】
上記パワーアシストシステムによれば、シリンダを交換しなくても、出力装置から操作装置に対する変位の増幅率を変化させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、流体圧シリンダを用いる力覚提示装置において、シリンダを交換しなくても伝達の増幅率を変化させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<実施形態1>
(力覚提示装置の構成)
図1に示すように、本実施形態に係る力覚提示装置1は、流体圧シリンダからなる第1シリンダ11および第2シリンダ12を備えている。ここで、流体圧シリンダとは、流体の圧力差を駆動力として作動するアクチュエータであり、例えば、油圧シリンダ、水圧シリンダ、エアシリンダ等である。第1シリンダ11は第1ピストンロッド13を備え、第2シリンダ12は第2ピストンロッド14を備えている。第1ピストンロッド13には力覚を発生させるものが接続され、第2ピストンロッド14には力覚の提示を受けるものが接続されている。例えば、人間がロボットハンドを操作する際に、ロボットハンドから人間の手に力覚が提示される場合、第1ピストンロッド13にはロボットハンドが連結され、第2ピストンロッド14には、人間の手によって握られるハンドル等が連結される。
【0025】
第1シリンダ11の内部は、第1ピストンロッド13によって、第1圧力室21と第2圧力室22とに区画されている。同様に、第2シリンダ12の内部は、第2ピストンロッド14によって、第3圧力室23と第4圧力室24とに区画されている。
【0026】
第2圧力室22と第3圧力室23とは、第1連通路31を介して連通している。第1圧力室21と第4圧力室24とは、第2連通路32を介して連通している。なお、第1連通路31および第2連通路32の具体的構成は特に限定されず、例えば、管やチューブ等を好適に用いることができる。
【0027】
第1連通路31の中途部には、第3連通路33の一端側が接続されている。第3連通路33の他端側には、第1容器41が接続されている。第3連通路33には、第1電磁弁51が設けられている。第1容器41には、第5連通路35を介して第1圧縮機61が接続されている。第1圧縮機61には、インバータ等の容量可変装置(図示せず)が設けられており、第1圧縮機61は容量制御が可能に構成されている。これにより、第1容器41は、第1圧縮機61によって圧力調整が可能となっている。
【0028】
同様に、第2連通路32の中途部には、第4連通路34の一端側が接続されている。第4連通路34の他端側には第2容器42が接続され、第4連通路34には第2電磁弁52が設けられている。第2容器42には、第6連通路36を介して第2圧縮機62が接続されている。第2圧縮機62にもインバータ等の容量可変装置(図示せず)が設けられており、第2圧縮機62は容量制御が可能に構成されている。これにより、第2容器42は、第2圧縮機62によって圧力調整が可能となっている。
【0029】
本実施形態では、第1シリンダ11、第2シリンダ12、第1連通路31、第2連通路32、第3連通路33、第4連通路34、第1容器41、および第2容器42は、閉ループの流体圧回路を構成している。この流体圧回路には、所定の流体が充填されている。なお、流体の種類は特に限定されないが、例えば、油、水、空気等を好適に用いることができる。本実施形態では、上記流体圧回路の内部圧力は、常に大気圧以上に保たれている。言い換えると、流体圧回路の内部圧力は、いわゆる正圧となっている。
【0030】
第2連通路32における第1圧力室21の近傍部分には、第1圧力室21の内部圧力を検出する第1圧力センサ71が接続されている。第1連通路31における第2圧力室22の近傍部分には、第2圧力室22の内部圧力を検出する第2圧力センサ72が接続されている。第1連通路31における第3圧力室23の近傍部分には、第3圧力室23の内部圧力を検出する第3圧力センサ73が接続されている。第2連通路32における第4圧力室24の近傍部分には、第4圧力室24の内部圧力を検出する第4圧力センサ74が接続されている。なお、本実施形態では、シリンダ11,12自体に圧力センサ71,72,73,74を取り付けることは困難であることから、その取付を避けるため、圧力センサ71,72,73,74を連通路31,32に取り付け、第1圧力室21〜第4圧力室24の内部圧力を間接的に検出することとした。このような構成であっても、実質的に第1圧力室21〜第4圧力室24の内部圧力を検出することが可能である。ただし、シリンダ11,12に圧力センサ71,72,73,74を適宜取り付け、第1圧力室21〜第4圧力室24の内部圧力を直接検出してもよいことは勿論である。
【0031】
力覚提示装置1は、コントローラ5を備えている。第1圧縮機61、第2圧縮機62、第1電磁弁51、および第2電磁弁52は、コントローラ5に接続されており、コントローラ5によって制御される。また、コントローラ5は、第1圧力センサ71、第2圧力センサ72、第3圧力センサ73、および第4圧力センサ74に接続されている。これらの圧力センサ71〜74によって、第1圧力室21〜第4圧力室24の内部圧力の値がコントローラ5に送信される。
【0032】
なお、第1電磁弁51および第2電磁弁52は、開閉自在な弁であれば足り、必ずしも電磁弁である必要はない。すなわち、第1流路開閉手段および第2流路開閉手段には、公知の各種の弁を用いることができる。
【0033】
(力覚提示装置の動作)
次に、力覚提示装置1の動作について説明する。力覚提示装置1は、第1シリンダ11の第1ピストンロッド13に加えられる力および変位を、第2シリンダ12の第2ピストンロッド14に伝達する。本実施形態に係る力覚提示装置1によれば、第1ピストンロッド13から第2ピストンロッド14に伝わる変位を増減させることができる。以下では、第1ピストンロッド13から第2ピストンロッド14に伝わる変位の増幅率が1の場合の運転、増幅率が1未満の運転、増幅率が1より大きな運転を順に説明する。
【0034】
−増幅率が1の場合の運転−
始めに、増幅率が1の場合の運転、すなわち、第1シリンダ11の第1ピストンロッド13の変位を増幅させることなく第2シリンダ12の第2ピストンロッド14に伝える場合の運転を説明する。この運転の際には、第1電磁弁51および第2電磁弁52は閉鎖され、第1圧縮機61および第2圧縮機62の運転は停止される。この状態で、第1ピストンロッド13が第1圧力室21側から第2圧力室22側へ移動すると(言い換えると、第1シリンダ11の第1ピストンロッド13が収縮すると)、第2圧力室22内の流体は第2圧力室22から押し出され、第1連通路31を通じて第3圧力室23に流入する。その結果、第2シリンダ12の第2ピストンロッド14が第3圧力室23側から第4圧力室24側へ押され、第2ピストンロッド14が伸張する。それに伴い、第4圧力室24内の流体が第2ピストンロッド14によって押し出され、第2連通路32を通じて第1圧力室21内に流れ込む。
【0035】
一方、第1ピストンロッド13が第2圧力室22側から第1圧力室21側へ移動すると(言い換えると、第1シリンダ11の第1ピストンロッド13が伸長すると)、第1圧力室21内の流体は第1圧力室21から押し出され、第2連通路32を通じて第4圧力室24に流入する。その結果、第2シリンダ12の第2ピストンロッド14が第4圧力室側から第3圧力室23側へ押され、第2ピストンロッド14が収縮する。それに伴い、第3圧力室23内の流体が第2ピストンロッド14によって押し出され、第1連通路31を通じて第2圧力室22内に流れ込む。
【0036】
このようにして、第1シリンダ11の第1ピストンロッド13の変位は、第2シリンダ12の第2ピストンロッド14の変位となって伝達される。本運転では、第1ピストンロッド13のストローク量(変位量)SAは、第2ピストンロッド14のストローク量(変位量)SBと等しくなる。
【0037】
−増幅率が1未満の運転−
増幅率が1未満の運転とは、第1シリンダ11の第1ピストンロッド13の変位を減少させて第2シリンダ12の第2ピストンロッド14に伝える運転であり、具体的には、第1ピストンロッド13のストローク量SAに対する第2ピストンロッド14のストローク量SBの比(=SB/SA)が1未満となる運転である。すなわち、SA>SBとなる運転である。
【0038】
本運転では、コントローラ5により、第1電磁弁51および第2電磁弁52が開放される。また、コントローラ5は、第1容器41の内部圧力が第3圧力室23の内部圧力と等しくなるように第1圧縮機61を制御し、第2容器42の内部圧力が第4圧力室24の内部圧力と等しくなるように第2圧縮機62を制御する。
【0039】
図2に示すように、第1ピストンロッド13が第1圧力室21側から第2圧力室22側へ移動すると、第1容器41と第3圧力室23との内部圧力が等しいことから、第2圧力室22内の流体は、第3圧力室23だけでなく第1容器41にも流入する。そのため、第3圧力室23に流入する流体は、第2圧力室22から流出する流体の一部となる。また、第2容器42と第4圧力室24との内部圧力が等しいことから、第4圧力室24から流出する流体に加えて、第2容器42内の流体も第1圧力室21に流入する。これにより、第2ピストンロッド14のストローク量SBは、第1ピストンロッド13のストローク量SAよりも小さくなる。すなわち、変位の増幅率は1未満となる。
【0040】
図3に示すように、第1ピストンロッド13が第2圧力室22側から第1圧力室21側へ移動すると、第1容器41と第3圧力室23との内部圧力が等しいことから、第3圧力室23内の流体だけでなく、第1容器41内の流体も第2圧力室22に流入する。また、第2容器42と第4圧力室24との内部圧力が等しいことから、第1圧力室21から流出する流体は、第4圧力室24だけでなく第2容器42にも流入する。すなわち、第4圧力室24に流入する流体は、第1圧力室21から流出する流体の一部となる。これにより、この場合も第2ピストンロッド14のストローク量は第1ピストンロッド13のストローク量よりも小さくなり、変位の増幅率は1未満となる。
【0041】
−増幅率が1よりも大きな運転−
増幅率が1よりも大きな運転とは、第1シリンダ11の第1ピストンロッド13の変位を増幅させて第2シリンダ12の第2ピストンロッド14に伝える運転であり、具体的には、第1ピストンロッド13のストローク量SAに対する第2ピストンロッド14のストローク量SBの比が1よりも大きくなる運転である。すなわち、SA<SBとなる運転である。
【0042】
本運転においても、コントローラ5により、第1電磁弁51および第2電磁弁52が開放される。本運転では、コントローラ5は、第1容器41の内部圧力が第2圧力室22の内部圧力と等しくなるように第1圧縮機61を制御し、第2容器42の内部圧力が第1圧力室21の内部圧力と等しくなるように第2圧縮機62を制御する。
【0043】
図4に示すように、第1ピストンロッド13が第2圧力室22側から第1圧力室21側へ移動すると、第1容器41と第2圧力室22との内部圧力が等しいことから、第3圧力室23内の流体は、第2圧力室22だけでなく第1容器41にも流入する。そのため、第2圧力室22に流入する流体は、第3圧力室23から流出する流体の一部となる。また、第2容器42と第1圧力室21との内部圧力が等しいことから、第1圧力室21から流出する流体に加えて、第2容器42内の流体も第4圧力室24に流入する。これにより、第2ピストンロッド14のストローク量SBは、第1ピストンロッド13のストローク量SAよりも大きくなる。すなわち、変位の増幅率は1よりも大きくなる。
【0044】
図5に示すように、第1ピストンロッド13が第1圧力室21側から第2圧力室22側へ移動すると、第1容器41と第2圧力室22との内部圧力が等しいことから、第2圧力室22内の流体だけでなく、第1容器41内の流体も第3圧力室23に流入する。また、第2容器42と第1圧力室21との内部圧力が等しいことから、第4圧力室24から流出する流体は、第1圧力室21だけでなく第2容器42にも流入する。すなわち、第1圧力室21に流入する流体は、第4圧力室24から流出する流体の一部となる。これにより、第2ピストンロッド14のストローク量は、第1ピストンロッド13のストローク量よりも大きくなり、変位の増幅率は1よりも大きくなる。
【0045】
(実施形態の効果)
以上のように、本実施形態に係る力覚提示装置1によれば、第1シリンダ11および第2シリンダ12を交換することなく、第1シリンダ11の第1ピストンロッド13の変位を増幅または減少させて第2シリンダ12の第2ピストンロッド14に伝達することが可能となる。したがって、例えばレスキュー現場等のように、短時間の間に増幅率の変化が必要となる用途に対しても、好適に利用することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、流体圧回路に与圧が加えられ、少なくとも第1圧力室21、第2圧力室22、第3圧力室23、および第4圧力室24の内部圧力は、常に大気圧以上に保たれる。そのため、第1容器41および第2容器42の内部圧力を大気圧未満にする必要がなく、いわゆる負圧にする必要がない。したがって、第1圧縮機61および第2圧縮機62によって第1容器41および第2容器42の圧力を比較的容易に制御することができ、構成および制御の簡単化を図ることができる。なお、流体として油等の液体を用いる場合、第1シリンダ11内または第2シリンダ12内に空気が混入する場合がある。しかし、本実施形態のように、第1圧力室21、第2圧力室22、第3圧力室23、および第4圧力室24の内部圧力を高く維持することにより、空気溜まりの体積を小さく抑えることができ、空気溜まりによる悪影響を抑制することができる。
【0047】
<変形例>
上記実施形態では、第1容器41および第2容器42の内部圧力を制御する圧力制御手段は、第1圧縮機61および第2圧縮機62の2つの圧縮機を備えていた。すなわち、上記実施形態では、第1容器41および第2容器42の各々に対して圧縮機が配置されていた。しかし、圧力制御手段の構成は上記実施形態の構成に限定されるわけではない。例えば、図6に示すように、第1容器41および第2容器42に対して、共通の圧縮機63を配置するようにしてもよい。本変形例では、第1容器41は第5連通路35を介して圧縮機63に接続され、第2容器42は第6連通路36を介して圧縮機63に接続されている。第5連通路35には第1圧力調整弁81が設けられ、第6連通路36には第2圧力調整弁82が設けられている。第1圧力調整弁81および第2圧力調整弁82は、コントローラ5に接続されている。その他の構成は上記実施形態と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0048】
この変形例では、第1容器41の内部圧力は、圧縮機63および第1圧力調整弁81によって調整される。一方、第2容器42の内部圧力は、圧縮機63および第2圧力調整弁82によって調整される。
【0049】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例によれば、圧縮機の台数が1台で済み、上記実施形態と比べて圧縮機の台数を削減することができる。
【0050】
<その他の変形例>
前記実施形態および変形例では、第3連通路33は、第1容器41と第1連通路31とを連通させていた。しかし、第3連通路33は、第1容器41と第2圧力室22とを連通させる流路であってもよく、第1容器41と第3圧力室23とを連通させる流路であってもよい。また、前記実施形態および変形例では、第4連通路34は、第2容器42と第2連通路32とを連通させていた。しかし、第4連通路34は、第2容器42と第1圧力室21とを連通させる流路であってもよく、第2容器42と第4圧力室24とを連通させる流路であってもよい。
【0051】
第1シリンダ11の内径と第2シリンダ12の内径とは、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。また、第1シリンダ11の長さと第2シリンダ12の長さとは、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0052】
<パワーアシストシステム>
本発明に係る力覚提示装置は、種々の装置および種々の用途に利用することができる。以下に説明する実施の形態は、前記力覚提示装置1をパワーアシストシステム100に利用したものである。
【0053】
図7に示すように、パワーアシストシステム100は、操作者の力を増幅させて作業を行うシステムであり、本実施形態では所謂パワーアシストアームを構成している。パワーアシストシステム100は、台101と、台101に固定された支柱102と、支柱102に支持された旋回アーム103と、旋回アーム103の先端側に配置された伸縮アーム104とを備えている。また、パワーアシストシステム100は、伸縮アーム104の先端側に配置された回転機構113と、回転機構113に取り付けられたアーム105と、アーム105の先端側に取り付けられたハンド106とを備えている。なお、回転機構113には、回転駆動モータ112が配置されている。また、図示は省略するが、ハンド106には、当該ハンド106を開閉させるモータが設けられている。
【0054】
旋回アーム103には、前後方向(図7の左右方向)に延びるガイドレール107が固定され、ガイドレール107には操作基部108がスライド自在に取り付けられている。操作基部108には6軸力覚センサ110が固定され、6軸力覚センサ110には操作ハンドル109が取り付けられている。
【0055】
伸縮アーム104には、当該伸縮アーム104を伸縮させる駆動モータ111が配置されている。操作者が操作ハンドル109を前方(図7の左方)に押し出すと、力覚センサ110が操作ハンドル109に加えられた力を検出し、駆動モータ111が上記力を増幅させて伸縮アーム104を伸張する。一方、操作者が操作ハンドル109を後方(図7の右方)に引っ張ると、力覚センサ110が操作ハンドル109に加えられた力を検出し、駆動モータ111が上記力を増幅させて伸縮アーム104を収縮させる。
【0056】
操作基部108および操作ハンドル109は、人によって操作される操作装置を構成している。伸縮アーム104および駆動モータ111は、上記操作装置に入力される操作力を増幅させて出力する出力装置を構成している。
【0057】
力覚提示装置1の第1シリンダ11の第1ピストンロッド13は、伸縮アーム104に連結されている。そのため、第1ピストンロッド13は、伸縮アーム104の伸縮に従って伸縮する。第2シリンダ12の第2ピストンロッド14は、操作基部108に連結されている。そのため、操作基部108上の操作ハンドル109は、第2ピストンロッド14の伸縮に従って前後にスライド移動する。これにより、伸縮アーム104の力覚は、力覚提示装置1を介して操作者に伝達される。
【0058】
本パワーアシストシステム100によれば、前述の力覚提示装置1を備えているので、伸縮アーム104の変位を増幅または減少させて操作ハンドル109に伝えることができる。したがって、本パワーアシストシステム100は、例えばレスキュー現場等のように、短時間の間に大出力が必要な大きな動作や繊細な作業等により力覚提示の増幅率の変化が必要となる用途に対して、特に有用である。
【0059】
本実施形態によれば、作業環境や作業内容に応じて操作感覚を変更することができるため、操作性を向上させることができる。本実施形態によれば、操作者の好みによって操作感覚を変更することができる。また、位置の伝達の増幅または縮小を変更する際にかかる時間を短縮することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、操作ハンドル109の可動範囲を狭くすることができるので、例えば人間1人が動くほどの余裕がないくらいの狭い操縦席においても、操作者の動きに追従するようにアーム104を動かすことができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、位置の伝達の増幅または縮小を熟知していれば、操作者は小さな動きでアーム104を操作することができるので、操作に伴う体力の消耗を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明は、力覚提示装置およびそれを備えたパワーアシストシステムについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】力覚提示装置の構成図である。
【図2】変位の増幅率が1未満の運転を説明するための図である。
【図3】変位の増幅率が1未満の運転を説明するための図である。
【図4】変位の増幅率が1よりも大きな運転を説明するための図である。
【図5】変位の増幅率が1よりも大きな運転を説明するための図である。
【図6】変形例に係る力覚提示装置の構成図である。
【図7】力覚提示装置を備えたパワーアシストシステムの構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1 力覚提示装置
5 コントローラ
11 第1シリンダ
12 第2シリンダ
13 第1ピストンロッド
14 第2ピストンロッド
21 第1圧力室
22 第2圧力室
23 第3圧力室
24 第4圧力室
31 第1連通路
32 第2連通路
33 第3連通路
34 第4連通路
35 第5連通路
36 第6連通路
41 第1容器
42 第2容器
51 第1電磁弁(第1流路開閉手段)
52 第2電磁弁(第2流路開閉手段)
61 第1圧縮機
62 第2圧縮機
71 第1圧力センサ
72 第2圧力センサ
73 第3圧力センサ
74 第4圧力センサ
100 パワーアシストシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復移動可能な第1ピストンロッドを有し、前記第1ピストンロッドによって第1圧力室と第2圧力室とが区画形成された第1シリンダと、
往復移動可能な第2ピストンロッドを有し、前記第2ピストンロッドによって第3圧力室と第4圧力室とが区画形成された第2シリンダと、
前記第2圧力室と前記第3圧力室とを連通させる第1連通路と、
前記第1圧力室と前記第4圧力室とを連通させる第2連通路と、
第1容器および第2容器と、
前記第1容器と前記第1連通路、前記第2圧力室、または前記第3圧力室とを連通させる第3連通路と、
前記第2容器と前記第2連通路、前記第1圧力室、または前記第4圧力室とを連通させる第4連通路と、
前記第3連通路に設けられた第1流路開閉手段と、
前記第4連通路に設けられた第2流路開閉手段と、
前記第1容器の内部圧力および前記第2容器の内部圧力を制御する圧力制御手段と、
を備えた力覚提示装置。
【請求項2】
前記圧力制御手段は、前記第1容器に連通した第1圧縮機と、前記第2容器に連通した第2圧縮機と、を有している、
請求項1に記載の力覚提示装置。
【請求項3】
前記圧力制御手段は、圧縮機と、前記圧縮機と前記第1容器とを連通させる第5連通路と、前記圧縮機と前記第2容器とを連通させる第6連通路と、前記第5連通路に設けられた第1圧力調整弁と、前記第6連通路に設けられた第2圧力調整弁と、を有している、
請求項1に記載の力覚提示装置。
【請求項4】
少なくとも前記第1圧力室、前記第2圧力室、前記第3圧力室、および前記第4圧力室の内部圧力は、常に大気圧以上に保たれる、
請求項1〜3のいずれか一つに記載の力覚提示装置。
【請求項5】
前記第3圧力室、前記第4圧力室の内部圧力をそれぞれ直接または間接的に検出する第3圧力センサ、第4圧力センサをさらに備え、
前記圧力制御手段は、前記第1流路開閉手段および前記第2流路開閉手段を開いた状態で前記第1ピストンロッドが前記第1圧力室側から前記第2圧力室側に、あるいは、前記第2圧力室側から前記第1圧力室側に移動したときに、前記第1容器の内部圧力を前記第3圧力室の内部圧力と等しくなるように制御し、前記第2容器の内部圧力を前記第4圧力室の内部圧力と等しくなるように制御する、
請求項1〜4のいずれか一つに記載の力覚提示装置。
【請求項6】
前記第1圧力室、前記第2圧力室の内部圧力をそれぞれ直接または間接的に検出する第1圧力センサ、第2圧力センサをさらに備え、
前記圧力制御手段は、前記第1流路開閉手段および前記第2流路開閉手段を開いた状態で前記第1ピストンロッドが前記第1圧力室側から前記第2圧力室側に、あるいは、前記第2圧力室側から前記第1圧力室側に移動したときに、前記第1容器の内部圧力を前記第2圧力室の内部圧力と等しくなるように制御し、前記第2容器の内部圧力を前記第1圧力室の内部圧力と等しくなるように制御する、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の力覚提示装置。
【請求項7】
人によって操作される操作装置と、
前記操作装置に入力される操作力を増幅させて出力する出力装置と、
請求項1〜6のいずれか一つに記載の力覚提示装置と、を備え、
前記第1ピストンロッドが前記出力装置に連結され、前記第2ピストンロッドが前記操作装置に連結されている、パワーアシストシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−236214(P2009−236214A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82956(P2008−82956)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】