説明

加工穴を洗浄する装置と方法

【課題】 雌ねじ部が形成された加工穴をきれいに洗浄することができる技術を提供する。
【解決手段】 ワーク12をロボット8によって支持し、ワーク12に形成される加工穴14と洗浄ノズル22を対向させて、洗浄ノズル22から洗浄流体を噴射する。このとき、洗浄ノズル22は、加工穴14の内壁に形成されたねじ溝36に向けて洗浄流体を斜めに噴射し、加工穴14の内部にねじ溝36に沿って旋回する洗浄流体の旋回流を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部に雌ねじ部が形成された加工穴を洗浄する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン部品であるシリンダブロック等のワークは、加工穴が形成された後に、シャワー洗浄等の手法によって洗浄される。しかしながら、ワーク全体を洗うシャワー洗浄では、加工穴の内部に存在する切粉等の異物を完全に除去することができない。
上記の問題に関し、特許文献1には、加工穴の内部を洗浄するための技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、加工穴に向けて洗浄液を噴射するノズルを扁平に形成し、その扁平なノズルを回転させながら加工穴を横断するように移動させている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−24269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工穴に雌ねじ部が形成されている場合、切粉や油分等の微細な異物がねじ溝内に残存しやすく、洗浄処理においても十分に除去できないことがある。例えば特許文献1の技術では、加工穴の軸と平行に、即ち、加工穴の底面に向けて洗浄液を噴射している。この手法では、加工穴に噴射された洗浄液が、加工穴から排出される噴射液と衝突してしまう。この場合、加工穴の内部に洗浄液の強い流れを発生させることができず、ねじ溝内に残存する異物を除去することは困難となる。
本発明は、雌ねじ部が形成された加工穴をきれいに洗浄することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、加工穴に噴射した洗浄流体が加工穴の内部で形成する流れに着目し、加工穴のねじ溝に沿って洗浄流体の流れ形成することができれば、ねじ溝内に残存する異物を効果的に除去することができることを見出した。本発明は、このような知見と着想に基づいて創作されたものである。
【0006】
本発明は、少なくとも一部に雌ねじ部が形成された加工穴を洗浄する装置に具現化される。この装置は、加工穴が形成されたワークを支持する支持手段と、ワークの加工穴に洗浄流体を噴射する洗浄ノズルを備えている。洗浄ノズルは、加工穴の側面に向けて洗浄流体を斜めに噴射することによって、加工穴の内部にねじ溝に沿って螺旋状に旋回する洗浄流体の旋回流を発生させる。
【0007】
ワークには、ねじ溝を有する加工穴が形成されている。ねじ溝は、加工穴の内壁に形成され、加工穴の開口からその奥へとらせん状に連続して伸びる溝である。加工穴のねじ溝は、加工穴に挿入されるねじのねじ山と嵌合する。
【0008】
この装置では、気体及び/又は液体の洗浄流体が、加工穴の側面に向けて斜めに噴射される。即ち、洗浄流体を噴射する方向が、加工穴の軸に平行でなく、加工穴の軸と交わる方向でもなく、加工穴の軸とねじれの関係にある。加工穴の側面に向けて洗浄流体を斜めに噴射すると、加工穴の内部にねじ溝に沿って旋回する洗浄流体の旋回流を発生させることができる。加工穴の内部に洗浄液の強い流れを発生させることができ、ねじ溝内に残存する異物を効果的に除去することができる。
この装置によると、雌ねじ部が形成された加工穴をきれいに洗浄することができる。
【0009】
上記の装置において、洗浄ノズルは、雌ねじ部の外部から雌ねじ部の側面に向けて洗浄流体を噴射することが好ましい。
この構成によると、加工穴に噴射された洗浄流体は、加工穴の側面に沿って旋回しながら加工穴の底面へと進む。加工穴の底面に到達した洗浄流体は、加工穴の軸に沿って加工穴の開口へと戻り、排出される。加工穴の内部に安定した洗浄流体の流れを実現することができ、加工穴の内部に洗浄液の強い流れを発生させることができる。
【0010】
その一方において、洗浄ノズルは、加工穴の底面に対向する位置で雌ねじ部の側面に向けて洗浄流体を噴射することも好ましい。
この構成によると、洗浄流体は、洗浄ノズルを通って加工穴の底面付近まで導入される。そして、洗浄ノズルから噴射された洗浄流体は、加工穴の側面に沿って旋回しながら加工穴の開口へと進み、排出される。この構成によっても、加工穴の内部に安定した洗浄流体の流れを実現することができ、加工穴の内部に洗浄液の強い流れを発生させることができる。
【0011】
上記した構成のように、洗浄ノズルを加工穴の底面に対向する位置に配置する場合、洗浄ノズルは、雌ねじ部の側面に向けて洗浄流体を斜めに噴射する第1噴射口と、加工穴の底面に向けて洗浄流体を加工穴の軸と平行に噴射する第2噴射口を備えていることが好ましい。
この構成によると、第1噴射孔から噴射された洗浄流体が、加工穴の側面に沿って旋回する流れを形成するとともに、第2噴射孔から噴射された洗浄流体が、加工穴の底面から加工穴の開口へと進む流れを形成する。それにより、ねじ溝内から除去された異物が確実に外部へ排出される流れを形成することができる。
【0012】
上記した構成のように、洗浄ノズルに第1噴射孔と第2噴射孔を形成する場合、第1噴出口の開口面積は、第2噴出口の開口面積よりも大きいことが好ましい。
この構成によると、第2噴出口から噴射される洗浄流体の流量が比較的に小さくなり、加工穴の内部に発生した旋回流が乱されることを防止することができる。
【0013】
本発明に係る装置は、ワークと洗浄ノズルの少なくとも一方を移動させ、ワークと洗浄ノズルの相対位置を調整する手段をさらに備えることが好ましい。
それにより、ワークに形成された加工穴の位置や形状に応じて、洗浄流体を加工穴に対して適切に噴射することが可能となる。
【0014】
本発明に係る装置は、液体を貯留する洗浄槽をさらに備えることが好ましい。この場合、支持手段は洗浄槽の液体中で前記ワークを支持し、洗浄ノズルは洗浄槽の液体中で洗浄流体を噴射することが好ましい。
ここで、洗浄槽に貯留する液体と、洗浄ノズルから噴射する洗浄流体は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。例えば、洗浄槽の液体中に支持されたワークの加工穴に対して、洗浄ノズルから同じ液体を噴射してもよいし、空気等の気体を噴射してもよい。
この構成によると、加工穴から除去された異物が洗浄槽の液体中に拡散するので、異物が加工穴の内部に再度進入することを防止することができる。
【0015】
本発明は、少なくとも一部に雌ねじ部が形成された加工穴を洗浄する方法に具現化することもできる。この方法は、加工穴が形成されたワークを支持する支持工程と、ワークの加工穴に洗浄流体を噴射する洗浄工程を備えている。洗浄工程では、加工穴の側面に向けて洗浄流体を斜めに噴射し、加工穴の内部にねじ溝に沿って旋回する洗浄流体の旋回流を発生させる。
この方法によると、加工穴の内部に洗浄液の強い流れを発生させることができ、雌ねじ部が形成された加工穴をきれいに洗浄することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、雌ねじ部を有する加工穴をきれいに洗浄することができ、洗浄不良による不良品の発生を有意に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(特徴1) 洗浄ノズルが洗浄流体を噴射する方向は、加工穴の軸と平行でなく、加工穴の軸と交差もしない位置関係にある。即ち、洗浄ノズルが洗浄流体を噴射する方向は、加工穴の軸とねじれの位置関係にある。
(特徴2) 洗浄ノズルが洗浄流体を噴射する方向は、加工穴の軸に垂直な水平面に対して斜めに傾けられている(即ち、垂直でない)。
(特徴3) 洗浄ノズルが洗浄流体を噴射する方向は、加工穴の軸に垂直な水平面において、加工穴の径方向と角度を成す(平行でない)。即ち、洗浄ノズルが洗浄流体を噴射する方向は、洗浄流体が噴射される加工穴の側面における接平面に対して、斜めに傾けられている(即ち、垂直でない)。
(特徴4) 洗浄ノズルの径と、洗浄ノズルの噴射口と洗浄流体を噴射する加工穴の側面との距離の少なくとも1つを調整して、加工穴の内部にねじ溝に沿って旋回する洗浄流体の旋回流を発生させる。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、第2,第3実施例において第1実施例と共通する構成についての説明は省略する。
【0019】
(第1実施例)
図1に、洗浄装置2の概略構成を表わす図を示す。洗浄装置2は、洗浄液6を貯留する洗浄槽4と、洗浄槽4にワーク12を浸漬するロボット8と、洗浄ノズル22,26を備えている。ロボット8は、洗浄槽4の洗浄液6中でワーク12を支持する。洗浄ノズル22,26は、洗浄槽4の洗浄液6中で洗浄流体(本実施例では、洗浄液6)をワーク12に向けて噴射する。
洗浄槽4の内壁にはガイドレール18が設けられている。ガイドレール18には、洗浄ノズル22,26が、ノズル駆動部20,24によってそれぞれスライド可能に配設されている。ノズル駆動部20,24は、図示しないアクチュエータによって、洗浄ノズル22,26を液中で上下方向に移動することができる。また、ノズル駆動部20,24は、洗浄ノズル22,26を回転させることができる。ノズル駆動部20,24は、図示しない制御装置によって制御されており、ノズル22と26をそれぞれ個別に駆動する。洗浄液供給管28は洗浄ノズル22,26と連通しており、洗浄槽4内の洗浄液6を洗浄ノズル22,26に供給することができる。洗浄ノズル22,26の上流側には、ポンプ30とフィルタ32が設けられている。ポンプ30が動作することによって、洗浄液6が排水口34から洗浄液供給管28に導入される。導入された洗浄液6はフィルタ32によってろ過され、洗浄ノズル22,26から噴射される。
【0020】
ロボット8は、アーム9と、ワーク支持部10を備えている。アーム9は、その上肢側端が図示しない関節に接続されており、下肢側端がワーク支持部10に接続されている。ワーク支持部10は、ワーク12の上部を把持してワーク12を支持する。ロボット8は、図示しない制御装置によって制御されており、ワーク支持部10によって支持するワークを移動させることができる。ワーク12には、加工穴14,16が形成されている。加工穴14,16は、内部に雌ねじ構造を有している。
【0021】
本実施例では、ノズル駆動部20,24とロボット8を連動して動作させることができる。ワーク12と洗浄ノズル22,26の両方を移動させて、ワーク12と洗浄ノズル22,26の相対位置を調整することができる。例えば、ノズル駆動部20,24を制御する制御装置とロボット8を制御する制御装置が通信可能に接続されていてもよい。
【0022】
以下に、洗浄装置2を用いて、ワーク12の加工穴14,16を洗浄する場合について説明する。図2は洗浄時の加工穴14の内部の様子を表わす断面図であり、図3は洗浄時の加工穴14の内部の様子を表わす平面図である。なお、加工穴14,16は同一の構造を有している。このため、以下では加工穴14を例にとって説明するが、加工穴16についても、同様の手法によって、加工穴14と同時に洗浄がなされる。
【0023】
図2に示すように、ワーク12の加工穴14の内壁全部には、ねじ溝36が形成されている。ねじ溝36は、加工穴14の開口からその奥(即ち、ワーク12の表面から加工穴14の底部38へと向かう方向)へとらせん状に連続して伸びている。加工穴14のねじ溝36には、ワーク12の全体を洗浄する処理を行った後にも、雌ねじ形成加工時に発生する細かな切粉や、ワーク12のその他の加工工程等において付着する微量の油分等の異物50が付着して残存してしまうことがある。
【0024】
そこで、本実施例では、ロボット8によってワーク12を支持し、洗浄槽4内の洗浄液6に浸漬した状態で、洗浄ノズル22から噴射される洗浄流体によって加工穴14を洗浄する。このとき、洗浄ノズル22は、液体の洗浄流体を加工穴14のねじ溝36が形成された側面に向けて、ねじ溝36が螺旋を描く方向へ、斜めに噴射する。即ち、洗浄流体を噴射する方向は、加工穴14の軸に平行でなく、加工穴14の軸に対して角度を成すように傾けられている。従って、洗浄流体を噴射する方向と、加工穴14の軸に垂直な水平面とが成す角は、鋭角を成す(図2のθ1を参照)。この角度θ1は、例えば、ねじ溝36の傾斜角度(リード角)に基づいて設定することができる。
さらに、洗浄流体を噴射する方向は、加工穴14の加工面において加工穴14の軸と交わらない。即ち、図3に示す平面視において、洗浄流体が加工穴14の側面に衝突する点における接平面と、洗浄流体を噴射する方向とが成す角度は、鋭角を成す(図3のθ2を参照)。この角度θ2は、例えば、加工穴14の直径に基づいて設定することができる。
【0025】
加工穴14の軸とねじれの関係にある上記の方向から、ねじ溝36に向けて洗浄流体が噴射されると、洗浄流体はねじ溝36に沿って加工穴14の内部へと導入される。このことにより、図2,3に矢印で示すように、加工穴14の内部に、ねじ溝36に沿って旋回する洗浄流体の旋回流を発生させることができる。加工穴14の内部には、ねじ溝36に沿って洗浄液6の強い流れが発生し、ねじ溝36に残存する異物50を効率よく除去することができる。加工穴14の底部38にまで到達すると、洗浄流体は、加工穴14の軸に沿って、旋回流の中央部分を上昇していく。ねじ溝36に沿って形成される旋回流を乱すことなく、除去した異物50を加工穴14の外部へと放出することができる。
【0026】
上述したように、洗浄ノズル22が配置されている位置は、加工穴14の軸とねじれの関係にある。このことから、洗浄ノズル22は、旋回流の中央部分を上昇してきた洗浄流体がねじ穴14の外部へと放出されることを妨げない。加工穴14の内部に安定した流れを発生させることができる。
また、本実施例では、ねじ穴14と洗浄ノズル22を液面に平行な方向で対向させて洗浄を行っている。このため、洗浄液6中に放出された異物50は洗浄槽4の下部へと沈殿し、再び加工穴14に入ってしまうことがない。洗浄装置2によると、雌ねじ部が形成された加工穴14をきれいに洗浄することができる。
【0027】
上述した角度θ1、θ2に加えて、洗浄ノズル22の径dの大きさと噴射口22aから噴射する洗浄流体の圧力との関係や、洗浄ノズル22の径dの大きさとねじ溝36のフランクの大きさの関係や、洗浄ノズル22の噴射口22aと洗浄流体の噴射位置との距離l等の条件を調整することにより、加工穴14の内部にさらに安定した強い旋回流を発生させることができる。それにより、加工穴14をより効果的に洗浄することができる。
【0028】
(第2実施例)
図4に、第2の実施形態を示す。本実施例の加工穴44は、底部38側の一部にのみ雌ねじ構造を有している。例えば、図4に示す加工穴44のように、加工穴44の開口部分とねじ溝36が形成されている部分との間に距離があることがある。このような場合、加工穴44の外側に洗浄ノズルを配置して、加工穴44の加工面側の内壁40に向けて洗浄流体を噴射しても、ねじ溝36の充分な洗浄効果を得られないおそれがある。このような場合には、図4に示すように、加工穴44の内部に洗浄ノズル42を挿入して、洗浄流体を噴射するとよい。この実施形態においても、洗浄ノズル42は、液体の洗浄流体を加工穴44のねじ溝36が形成される側面に向けて、ねじ溝36が螺旋を描く方向へ、斜めに噴射する。洗浄流体を噴射する方向は、上述した洗浄ノズル22の場合と同様に、加工穴44の軸に平行でなく、また、加工穴44の軸と交わらない。即ち、洗浄流体を噴射する方向は加工穴44の軸とねじれの関係にある。洗浄ノズル42は、上記の角度条件を具現化するために、先端部が角度を有して形成されていてもよい(図4を参照)。
この洗浄ノズル42によっても、図4に矢印で示すように、加工穴44の内部に、ねじ溝36に沿って旋回する洗浄流体の旋回流を発生させることができる。雌ねじ部が形成された加工穴44をきれいに洗浄することができる。
【0029】
(第3実施例)
図5に、第3の実施形態を示す。加工穴14の内壁全部には、第1実施例と同様に、ねじ溝36が形成されている。例えば、加工穴14の奥行きが深い場合、加工穴14の外側に洗浄ノズルを配置して洗浄流体を噴射するだけでは、底部38側のねじ溝36の充分な洗浄効果を得られない場合がある。このような場合には、図5に示すように、加工穴14の内部に洗浄ノズル52を挿入して、洗浄流体を噴射するとよい。
【0030】
洗浄ノズル52には、第1噴射口52aと、第2噴射口52bが形成されている。加工穴14に洗浄ノズル52が挿入されると、第1噴射口52aは、ねじ溝36に向けて洗浄流体を斜めに噴射する。第2噴射口52bは、底部38に向けて洗浄流体を加工穴14の軸と平行に噴射する。この構成によると、第1噴射孔52aから噴射された洗浄流体が、加工穴14のねじ溝36に沿って旋回する流れを形成するとともに、第2噴射孔52bから噴射された洗浄流体が、加工穴14の底部38から加工穴14の開口へと進む流れを形成する。この実施形態においても、第1噴射口52aは、加工穴14の底部38側から、液体の洗浄流体を加工穴14のねじ溝36が形成される側面に向けて、ねじ溝36が螺旋を描く方向へ、斜めに噴射する。上述した第1実施例及び第2実施例とは噴出した洗浄流体が形成する旋回方向が逆になるものの、本実施例の洗浄ノズル52の第1噴射口52aから洗浄流体を噴射する方向は、第1実施例及び第2実施例と同様に、加工穴14の軸とねじれの関係にある。
また、第1噴出口52aの開口面積は、第2噴出口52bの開口面積よりも大きく形成されている。このため、第2噴出口52bから噴射される洗浄流体の流量が比較的に小さくなり、加工穴の内部に発生した旋回流が乱されることが防止される。
【0031】
本実施例では、洗浄ノズル52から噴射された洗浄流体は、加工穴14の側面に形成されるねじ溝36に沿って旋回しながら加工穴14の開口へと進み、排出される。本実施例の構成によっても、加工穴14の内部に安定した洗浄流体の流れを実現することができ、加工穴14の内部に洗浄液の強い流れを発生させることができる。雌ねじ部が形成された加工穴14をきれいに洗浄することができる。
【0032】
上記の実施例では、ロボット8により、ノズル22,26に対するワーク12の相対位置を調整することができるとともに、ノズル駆動部20,24により、ワーク12に対するノズル22,26の相対位置を調整することができる。このことにより、ワークに形成された加工穴の位置や形状に応じて、洗浄流体を加工穴に対して適切に噴射することが可能な位置関係を適宜実現可能となる。また、ワーク12の加工穴14,44の洗浄は、洗浄槽4の液中で実行される。このことから、加工穴14,44から除去された異物50が洗浄槽4の液体中に拡散するので、異物50が加工穴14,44の内部に再度進入することを防止することができる。
本発明によると、雌ねじ部を有する加工穴14,44をきれいに洗浄することができ、洗浄不良による不良品の発生を有意に防止することができる。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、上記した実施例では、洗浄ノズル22から洗浄流体として洗浄液6を噴射しているが、洗浄ノズル22から洗浄流体として他の液体や空気等の気体を噴射してもよい。
また、上記した実施例では、ワーク12を液体中(洗浄液6中)に配置して加工穴14の洗浄を行っているが、ワーク12を気体中(例えば大気中)に配置して加工穴14の洗浄を行ってもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】洗浄装置の概略構成を表わす図である。
【図2】洗浄時の加工穴の内部の様子を表わす断面図である。
【図3】洗浄時の加工穴の内部の様子を表わす平面図である。
【図4】第2実施例における洗浄時の加工穴の内部の様子を表わす断面図である。
【図5】第3実施例における洗浄時の加工穴の内部の様子を表わす断面図である。
【符号の説明】
【0035】
2:洗浄装置
4:洗浄槽
6:洗浄液
8:ロボット
9:アーム
10:ワーク支持部
12:ワーク
14,16,44:加工穴
18:ガイドレール
20,24:ノズル駆動部
22,26,42,52:洗浄ノズル
22a,42a:噴出口
28:洗浄液供給管
30:ポンプ
32:フィルタ
34:排水口
36:ねじ溝
38:底部
40:内壁
50:異物
52a:第1噴出口
52b:第2噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に雌ねじ部が形成された加工穴を洗浄する装置であり、
加工穴が形成されたワークを支持する支持手段と、
ワークの加工穴に洗浄流体を噴射する洗浄ノズルを備え、
洗浄ノズルは、加工穴の側面に向けて洗浄流体を斜めに噴射し、加工穴の内部にねじ溝に沿って旋回する洗浄流体の旋回流を発生させることを特徴とする加工穴を洗浄する装置。
【請求項2】
前記洗浄ノズルは、雌ねじ部の外部から雌ねじ部の側面に向けて洗浄流体を噴射することを特徴とする請求項1に記載の加工穴を洗浄する装置。
【請求項3】
前記洗浄ノズルは、加工穴の底面に対向する位置で雌ねじ部の側面に向けて洗浄流体を噴射することを特徴とする請求項1に記載の加工穴を洗浄する装置。
【請求項4】
前記洗浄ノズルは、雌ねじ部の側面に向けて洗浄流体を斜めに噴射する第1噴射口と、加工穴の底面に向けて洗浄流体を加工穴の軸と平行に噴射する第2噴射口を備えていることを特徴とする請求項3に記載の加工穴を洗浄する装置。
【請求項5】
前記第1噴出口の開口面積は、前記第2噴出口の開口面積よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の加工穴を洗浄する装置。
【請求項6】
前記ワークと前記洗浄ノズルの少なくとも一方を移動させ、前記ワークと前記洗浄ノズルの相対位置を調整する手段をさらに備えることを特徴とする1から5のいずれか一項に記載の加工穴を洗浄する装置。
【請求項7】
液体を貯留する洗浄槽をさらに備え、
前記支持手段は、前記洗浄槽の液体中で前記ワークを支持し、
前記洗浄ノズルは、前記洗浄槽の液体中で洗浄流体を噴射することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の加工穴を洗浄する装置。
【請求項8】
少なくとも一部に雌ねじ部が形成された加工穴を洗浄する方法であり、
加工穴が形成されたワークを支持する支持工程と、
ワークの加工穴に洗浄流体を噴射する洗浄工程を備え、
洗浄工程では、加工穴の側面に向けて洗浄流体を斜めに噴射し、加工穴の内部にねじ溝に沿って旋回する洗浄流体の旋回流を発生させることを特徴とする加工穴を洗浄する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−279564(P2009−279564A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137016(P2008−137016)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】