説明

加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器

【課題】加熱コイルを軽量化することによって、加熱コイルの慣性を小さくして、製品の落下時の衝撃を小さくすることによって、天板の損傷を防止することを目的とする。
【解決手段】加熱コイル34に銅クラッドアルミ導線39を用いることにより、加熱コイル34の重量が半減し、製品重量が軽くなると共に、誤って製品の落下した時に、加熱コイル34の衝撃による天板の損傷を防止することができるようになる。また、加熱コイル34の材料コストも大幅に低減できると共に、なんらかに理由で局部的に異常加熱した場合、加熱コイル34を早く溶断させて、通電を停止することができ、安全性の向上を図ることができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱調理容器を載置する天板の損傷を防止する構成の加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、火を使わない、燃焼ガスの出ない安全でクリーンな熱源として誘導加熱調理器が普及してきている。この誘導加熱調理器は誘導加熱のための加熱コイルと、加熱コイルに高周波電流を制御可能に供給する制御回路上に様々な電子部品とを備えている。
【0003】
前記の誘導加熱の原理は、導線に交流電流を流すと、その周りに磁力線が発生する。その近くに電気を通す物質(通常は金属)を置くとこの変化する磁力線の影響を受けて、金属の中に渦電流が流れる。
【0004】
金属には通常電気抵抗があるため、金属に電流が流れると電力=電流の2乗×抵抗分のジュール熱が発生して金属が加熱されることを利用する。
【0005】
実際の誘導加熱調理器は、高周波インバータ電源が加熱コイルに高周波電流を供給すると、加熱コイルで高周波磁界が発生し、これが鍋に加わり、鍋(金属製)が直接発熱する仕組みを用いている。
【0006】
ここで、高周波電流が加熱コイルを構成する導体を流れる時、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる現象、即ち、表皮効果が生じ、抵抗が増加して、温度上昇が大きくなり効率が低下する等の課題がある。
【0007】
この防止策として、導体の細分化によって導体表面積を大きくする方法があり、細いエナメル銅線を複数本撚り合せたリッツ線をうず巻状に巻回して加熱コイルを形成したものが主流となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
図6(a)は特許文献1に記載された従来の誘導加熱調理器の構造を示す部分破断斜視図、図6(b)は要部断面図である。
【0009】
図6(a)において、被加熱体である鉄鍋5の下側に設けられた加熱コイル2に高周波インバータ1から高周波電流を流すと、加熱コイル2から高周波磁界3が発生し、高周波磁界3により鉄鍋5の底に誘導電流9が流れ、そのジュール熱により鉄鍋5が加熱されるものである。前記加熱コイル2はスパイラル状に巻かれ、リッツ線で構成されている。
【0010】
リッツ線は、図6(b)に示すように、0.5mmの銅素線を複数本撚り合わせて構成されているものである。
【0011】
従来の誘導加熱調理器は、高周波領域での抵抗を抑えるために、加熱コイルとして上述したように直径が0.5mmの銅素線を19本撚り合わせたリッツ線を使用している。そして、このリッツ線からなる加熱コイルを20ターン巻いたものに周波数20kHzの高周波電流を流して、例えば鉄鍋などの被加熱調理容器を加熱する。
【0012】
また、誘導加熱調理器の加熱コイルの保持構成としては、簡便な方法で加熱コイルを支持する構成としたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
図7は、特許文献2に記載された他の従来の誘導加熱調理器の要部断面図である。図7に示すように、他の従来の誘導加熱調理器は、鍋等を載置する天板11はセラミックプレート等で構成されている。
【0014】
天板11の下方には、鍋を誘導加熱するための磁力線を発生させるコイル12が配置されている。コイル12は支持体13上に固定されている。支持体13の下方には、コイル12に高周波電流を供給し、駆動させるインバータ基板14が配設されている。インバータ基板14は基板支持体15上に保持されている。
【0015】
基板支持体15は、支持体13を保持するための支持ボス16を複数個有している。支持ボス16の中央に形成された柱にはスプリングで構成された弾性体17が挿入されている。保持部18は、支持体13の外周部に一体に形成され下方に開口した筒状であり、弾性体17にかぶせられている。支持体13はこれらによって保持されている。
【0016】
また、支持体13には、保持部18の上方に押し当てボス19が複数個設けられている。押し当てボス19は弾性体17に押し上げられ、天板11裏面に当たる。この構成によりコイル12と天板11との距離は常に一定に保たれている。
【0017】
また、支持体13の摺動距離Aは、弾性体17の形状と付勢力とに依存し、支持体下面20と電子部品の天面との隙間Bの最小値より小さくならないようにする必要がある。
【0018】
このような構成とすることで、天板とコイル12との距離を組み立てばらつき等なく一定にすることができる。即ち、天板に載置される被加熱調理容器とコイル12との距離を一定にすることができ、被加熱調理容器を誘導加熱する条件が安定し、加熱時のコイル12への電力供給制御等の電気性能を安定させることができる。
【0019】
しかしながら、従来の構成では、例えば梱包状態において誤って落下すると本体に衝撃が加わる。ここで、コイル12を支持する支持体13は弾性体17により保持されている。そのため、弾性体17は下方に圧縮され、支持体13も同時に下方に押し下げられ摺動する。
【0020】
その際、押し下げられた支持体13はインバータ基板14上に載っている電子部品の天面に当たるまで押し下げられる。そのため、電子部品に応力がかかり、電子部品と共にインバータ基板14も破壊される。
【0021】
このため、従来の構成においては、支持体下面20と電子部品の天面との隙間Bの最小値を大きくするか、弾性体17の付勢力を強くして電子部品に応力がかからないようにされている。隙間Bの最小値を大きくする場合には、本体内の空間に高密度に部品を実装できず製品高さが高くなり、本体のコンパクト化、薄型化の要望に対応することができない。
【0022】
一方、弾性体17の材質あるいは形状を変えて付勢力を大きくすると、押し当てボス19から天板11に加わる圧力が高くなる。そのため、製品の落下時に天板11に与えられる衝撃が大きくなり天板11が破壊される恐れが大きくなる。
【0023】
そのため、簡便な方法で加熱コイルを支持して落下等の衝撃を受けても、壊れにくく信頼性が高くなるように構成したものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0024】
図8は、特許文献3に記載された他の従来の誘導加熱調理器の要部断面図である。図8に示すように、他の従来の誘導加熱調理器は、調理容器を載置する天板21と、加熱コイ
ル22と、インバータ基板23と、支持体24と、基板支持体25と弾性体26とを有する。
【0025】
加熱コイル22は調理容器を誘導加熱する。インバータ基板23は部品を搭載し、加熱コイル22を駆動させる。支持体24はインバータ基板23上方に配置され、加熱コイル22を支持する。
【0026】
また、支持体24は、上方に押し当てボス27が設けられ、この押し当てボス27を介在させて天板21に押し当てられる。基板支持体25は、支持体24を保持する3個以上の支持ボス28を有するとともに、インバータ基板23を保持する。
【0027】
弾性体26は支持体24と支持ボス28との間に介在する。支持体24には第1摺動規制部24aが設けられ、支持ボス28には第2摺動規制部28aが設けられている。第1摺動規制部24aと第2摺動規制部28aとは、互いに当接して、支持体24下面24bと部品の天面23aとの隙間の最小値より、支持体24の摺動距離の方が小であるように制限する。
【0028】
これにより、弾性体26が圧縮され支持体24が押下げられても、インバータ基板23上の部品に支持体24が当たることがないため、落下等の衝撃を受けても、壊れにくく信頼性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開平10−321358号公報
【特許文献2】特開平09−312195号公報
【特許文献3】国際公開第2006/022275号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかしながら、前記従来の構成では、支持体24と支持ボス28との間に介在させた弾性体26によって、加熱コイル22を載置した支持体24を天板21に押し当てるようになっていて、落下高さが高くなったりするなど何らかの理由で、製品の落下時の衝撃が大きいと、やはり、加熱コイル22が上下動して天板21に与えられる衝撃が大きくなり天板11が破壊される恐れが大きくなる。
【0031】
特に、加熱コイル22はエナメル銅線を複数本撚り合せたリッツ線を使用しているため、どうしても、加熱コイル22の重量が重くなって慣性が大きくなってしまい、製品の落下時に、天板21に与えられる衝撃が大きくなり、天板21が破壊される恐れが大きくなってしまう心配があった。
【0032】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、加熱コイルを軽量化することによって、加熱コイルの慣性を小さくして、梱包状態での製品の落下時の衝撃を小さくすることによって、天板の損傷を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器は、本体の上面に設けた天板と、前記天板の下方に設けられ前記天板上の被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、前記加熱コイルを保持するコイルベースと、前記加熱コイルを駆動するインバータ駆動部等を有する制御部とを備えたものである。
【0034】
この中で、前記加熱コイルは、アルミ単体あるいはアルミ導線の周囲に異種金属を配設した複合アルミ導線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成した構成としている。
【0035】
また、本体の上面に設けた天板と、前記天板の下方に設けられ前記天板上の被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、前記加熱コイルを保持するコイルベースと、前記加熱コイルを駆動するインバータ駆動部等を有する制御部とを備え、前記加熱コイルは、銅クラッドアルミ導線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成した構成としてある。
【0036】
上記した構成により、加熱コイルはアルミ単体あるいはアルミ導線の周囲に異種金属を配設した複合アルミ導線または銅クラッドアルミ導線で形成してあるので、重量は銅線に比べおよそ半減させることができ、加熱コイルの慣性を小さくして、製品の落下時の衝撃を小さくすることによって、天板の損傷を防止することができるようになる。
【0037】
また、製品重量も軽くできるとともに、大幅にコスト低減をすることができるようになる。さらに、誘導加熱調理器は、被加熱調理容器を加熱するときに異常高温にならないように温度センサなどの安全装置が設けられている。
【0038】
万一この安全装置が故障した場合に、被加熱調理容器の温度上昇に伴って、加熱コイルも温度上昇するようになり、この場合、アルミは銅よりも溶融温度が低く、アルミ単体あるいはアルミ導線の周囲に異種金属を配設した複合アルミ導線または銅クラッドアルミ導線は銅導線よりも、低い温度で溶断するため、通電が遮断され、被加熱調理容器の加熱が停止するため、安全性が向上する。
【発明の効果】
【0039】
本発明の加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器は、加熱コイルにアルミ単体あるいはアルミ導線の周囲に異種金属を配設した複合アルミ導線または銅クラッドアルミ導線を用いることにより、加熱コイルの重量が半減し、製品重量が軽くなると共に、誤って製品の落下した時に、加熱コイルの衝撃による天板の損傷を防止することができるようになる。
【0040】
また、加熱コイルの材料コストも大幅に低減できると共に、なんらかに理由で局部的に異常加熱した場合、加熱コイルを銅導線より低い温度で早く溶断させて、通電を停止することができ、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の要部断面図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の加熱コイルの要部拡大断面図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の加熱コイルの要部拡大断面図
【図4】本発明の実施の形態1における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の要部平面図
【図5】本発明の実施の形態1における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の制御ブロック図
【図6】(a)特許文献1に記載された従来の誘導加熱調理器の構造を示す部分破断斜視図(b)特許文献1に記載された従来の誘導加熱調理器の要部断面図
【図7】特許文献2に記載された他の従来の誘導加熱調理器の要部断面図
【図8】特許文献3に記載された他の従来の誘導加熱調理器の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0042】
第1の発明は、本体の上面に設けた天板と、前記天板の下方に設けられ前記天板上の被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、前記加熱コイルを保持するコイルベースと、前記加熱コイルを駆動するインバータ駆動部等を有する制御部とを備え、前記加熱コイルは、アルミ単体あるいはアルミ導線の周囲に異種金属を配設した複合アルミ導線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成したものである。
【0043】
これによって、重量は銅線に比べおよそ半減させることができ、加熱コイルの慣性を小さくして、製品の落下時の衝撃を小さくすることによって、天板の損傷を防止することができるようになる。
【0044】
第2の発明は、本体の上面に設けた天板と、前記天板の下方に設けられ前記天板上の被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、前記加熱コイルを保持するコイルベースと、前記加熱コイルを駆動するインバータ駆動部等を有する制御部とを備え、前記加熱コイルは、銅クラッドアルミ導線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成したものである。
【0045】
これによって、加熱コイルはアルミ単体あるいはアルミ導線の周囲に異種金属を配設した複合アルミ導線または銅クラッドアルミ導線で形成してあるので、重量は銅線に比べおよそ半減させることができ、加熱コイルの慣性を小さくして、製品の落下時の衝撃を小さくすることによって、天板の損傷を防止することができるようになる。
【0046】
また、製品重量も軽くできるとともに、1kg当たりの価格は時期によって異なるが、およそ、アルミは銅の1/4から1/3程度であるため、大幅にコスト低減をすることができるようになる。
【0047】
さらに、加熱コイルがなんらかに理由で局部的に異常加熱した場合、アルミが銅より融点が低く早く溶断するため、安全性が向上する。
【0048】
第3の発明は、特に、第2の発明において、銅クラッドアルミ導線が外周に耐熱ワニス等によって絶縁処理を施したものである。
【0049】
これによって、銅クラッドアルミ導線の外周に耐熱ワニス等によって絶縁処理を施してあるので、その周囲がすべりやすく、スムーズに巻きやすくなり、加工性が向上するとともに、銅クラッドアルミ導線の表面に傷つきにくいため、導体線が擦れて導体線の粉が生じて、他の部分の電気部品に悪影響を及ぼす心配もなくなる。
【0050】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明の加熱コイルを用いた誘導加熱調理器としたものである。
【0051】
これによって、前記した第1または第2の発明の作用効果が得られ、製品重量が軽くなると共に、誤って製品の落下した時に、加熱コイルの衝撃による天板の損傷を防止することができるようになる。
【0052】
また、加熱コイルの材料コストも大幅に低減できると共に、なんらかに理由で局部的に異常加熱した場合、加熱コイルを早く溶断させて、通電を停止することができ、安全性の向上を図ることができるようになる。
【0053】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の
形態によって本発明が限定されるものではない。
【0054】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の要部断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の加熱コイルの要部拡大断面図、図3は本発明の第1の実施の形態における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の加熱コイルの要部拡大断面図である。
【0055】
図4は本発明の第1の実施の形態における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の要部平面図、図5は本発明の第1の実施の形態における加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器の誘導加熱調理器の制御ブロック図である。
【0056】
図1〜図5に示すように、本体31の天面は鍋などの被加熱調理容器32を載置する天板33で形成され、その一部に操作部33a(図4)が設けられる。
【0057】
天板33の内側には被加熱調理容器32を加熱する略円形状の加熱コイル34と、前記加熱コイル34の運転や電源供給するインバータ部35を制御する制御部36が配置されていて、制御部36が、インバータ部35のスイッチング半導体をオン、オフしてインバータ部35の高周波発振を制御するとともに発振動作の起動、停止も制御している。
【0058】
上記インバータ部35は、周波数変換装置の一つで、電源整流器、フィルタコンデンサ、共振コンデンサ、スイッチング半導体などを含み、商用電源37を高周波電流に変換し、この高周波電流を加熱コイル34に供給して、加熱コイル34は被加熱調理容器32の近傍で高周波磁界を発生し被加熱調理容器32の底を加熱するようになっている。
【0059】
また、加熱コイル34は、図2に示すように、耐熱樹脂性のコイルベース38上に載置されており、加熱コイル34を形成する素線は、図3に示すように、中心がアルミ39aで周囲が薄い層の銅39bで形成された複数の細い銅クラッドアルミ導線39からなり、それぞれの外周に耐熱ワニス等によって絶縁処理39cを施し、撚り合わせたものをうず巻状に巻回して形成してある。
【0060】
以上のように構成された加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0061】
本体31の天面に位置する天板33に鍋などの被加熱調理容器32を載置して、使用者が操作部33aを操作して、所定の条件で加熱を開始すると、制御部36が、インバータ部35を稼働させて高周波電流を加熱コイル34に供給し、加熱コイル34は被加熱調理容器32の近傍で高周波磁界を発生して、被加熱調理容器32の底を加熱するようになっている。
【0062】
そして、加熱コイル34は銅クラッドアルミ導線39であるので、殆どがアルミ部分で占められており重量は銅線のリッツ線に比べおよそ半減させることができ、加熱コイル34の慣性を小さくして、製品の落下時の衝撃を小さくすることによって、天板等の損傷を防止することができるようになる。
【0063】
ここで、銅とアルミの比較について詳述すると、導電率は、銅を100とするとアルミは61と若干アルミの方が抵抗値は高めとなってしまい、単位長さ当たりの直流抵抗値を同じに設定するには、アルミは銅の1.64倍の断面積が必要となるが、密度は銅が8.96g/cm3に対してアルミは2.70g/cm3であるため、単位長さ当たりの重量
は、アルミは銅のおよそ1/2となる。 また、1kg当たりの価格は時期によって異なるが、およそ、アルミは銅の1/4から1/3程度であるため、大幅にコスト低減をすることができるようになる。
【0064】
また、融点はアルミが660℃に対し銅が1083℃であり、溶解熱はアルミが397J/gに対し銅が209J/gでこれを体積換算すると、アルミが1071.9J/gに対し銅が1872.64J/gとなる。
【0065】
これによって、万一、誘導加熱調理器の安全装置(図示せず)この安全装置が故障した場合に、被加熱調理容器32の温度上昇に伴って、加熱コイル34も温度上昇するようになり、この場合、アルミは銅よりも溶融温度が低く、銅クラッドアルミ導線39は銅導線よりも、低い温度で溶断するため、通電が遮断され、被加熱調理容器32の加熱が停止するため、安全性が向上する。
【0066】
そして、銅クラッドアルミ導線39の外周に耐熱ワニス等によって絶縁処理39cを施してあるので、その周囲がすべりやすく、スムーズに巻きやすくなり、加工性が向上するとともに、銅クラッドアルミ導線39の表面に傷つきにくいため、導体線が擦れて導体線の粉が生じて、他の部分の電気部品に悪影響を及ぼす心配もなくなる。
【0067】
さらに、アルミ単体では、半田性が悪く、端子処理が困難であるが、アルミ導線の外周に銅をクラッドしてあるので、半田付けが可能で、経年的にも安定した品質が得られるようになる。また、ヒュージング等の半田以外の端子処理においても、銅クラッドアルミ導線39は、アルミ単体より、端子との電気接続が銅導線と同様に安定した品質を得ることができる。
【0068】
尚、銅クラッドアルミ導線39を用いた加熱コイル34で説明したが、これは、アルミ単体の導線あるいは、銅以外の異種金属クラッドアルミ導線、または、金属メッキアルミ導線でもほぼ同じような性能が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明にかかる加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器は、加熱コイルに銅クラッドアルミ導線を用いることにより、加熱コイルの重量が半減し、製品重量が軽くなると共に、誤って製品の落下した時に、加熱コイルの衝撃による天板の損傷を防止することができる。
【0070】
また、加熱コイルの材料コストも大幅に低減できると共に、なんらかに理由で局部的に異常加熱した場合、加熱コイルを早く溶断させて、通電を停止することができ、安全性の向上を図ることができるので、誘導加熱を利用した調理分野等の用途に有効である。
【符号の説明】
【0071】
2、22、34 加熱コイル
11、21、33 天板
14、23 インバータ基板
32 被加熱調理容器
35 インバータ部
36 制御部
38 コイルベース
39 銅クラッドアルミ導線
39c 絶縁処理


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の上面に設けた天板と、前記天板の下方に設けられ前記天板上の被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、前記加熱コイルを保持するコイルベースと、前記加熱コイルを駆動するインバータ駆動部等を有する制御部とを備え、前記加熱コイルは、アルミ単体あるいはアルミ導線の周囲に異種金属を配設した複合アルミ導線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成した加熱コイル。
【請求項2】
本体の上面に設けた天板と、前記天板の下方に設けられ前記天板上の被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、前記加熱コイルを保持するコイルベースと、前記加熱コイルを駆動するインバータ駆動部等を有する制御部とを備え、前記加熱コイルは、銅クラッドアルミ導線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成した加熱コイル。
【請求項3】
前記銅クラッドアルミ導線は外周に耐熱ワニス等によって絶縁処理を施した請求項2に記載の加熱コイル。
【請求項4】
請求項1または2に記載の加熱コイルを用いた誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−195059(P2012−195059A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56128(P2011−56128)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】