加熱乾燥装置
【課題】インクジェット法により塗工した直後の未乾燥インク中の溶剤除去を溶剤雰囲気をリッチ状態にして行っても、天板に付着した溶剤が基板上に落下しない加熱乾燥装置を提供する。
【解決手段】密閉可能なチャンバー27、チャンバー内に設けられた基板を載置する加熱部20、加熱部の上方に設けられた天板30で構成され、加熱により蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段を設けたこと。密閉可能なチャンバー内の溶剤蒸気を排出する排気手段21を設けたこと。溶剤を除去する手段が傾斜をもたせた天板、天板下面を覆うウイック状材料33、或いは多孔質材料40からなる天板である。
【解決手段】密閉可能なチャンバー27、チャンバー内に設けられた基板を載置する加熱部20、加熱部の上方に設けられた天板30で構成され、加熱により蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段を設けたこと。密閉可能なチャンバー内の溶剤蒸気を排出する排気手段21を設けたこと。溶剤を除去する手段が傾斜をもたせた天板、天板下面を覆うウイック状材料33、或いは多孔質材料40からなる天板である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により塗工した直後の未乾燥インク中の溶剤除去に用いる加熱乾燥装置に関するものであり、特に、液晶用カラーフィルタや有機半導体による発光表示器等、基板上の隔壁内への精密塗工を可能とする加熱乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット法でカラーフィルタなどを形成する場合、フラットベットステージにガラスなどの基板を置き、インクジェットヘッドのノズルから塗工液(インク粒)を吐出させ基板に直接塗工液を塗工しカラーフィルタなどを形成していた。
以下に、液晶ディスプレイや白色スイッチング表示器(サーフェースエミッションディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等)のカラーフィルタを形成する際の塗工について述べる。
【0003】
図1は、基板5上に予め形成したブラックマトリックス1を隔壁として利用し、その内部にインクジェットヘッド4からインク粒3を吐出させ色材層2を得る方法を例示したものである。図1にて、インクジェットヘッド4若しくは基板(ブラックマトリックス1を含む基板)5の走査方向は、符号Sで示す方向である。
【0004】
一般に、インクジェットヘッドのノズル(図示せず)は、100〜500μmの間隔で設けられている。一方、例えば、30〜40インチTVの1画素の寸法は、隔壁長手方向(図1中、符号Sの直角方向)で数百μmであるので、複数のインクジェットヘッドにて隔壁の内部に塗工液を塗工する。図1は、2本のインクジェットヘッド4を並列に設けた例である。
【0005】
図2は、隔壁として利用したブラックマトリックス1の内部に塗工液(インク粒)が充填された基板5の、走査方向Sでの断面図である。隔壁であるブラックマトリックス1の内部にインクジェットから吐出されたインク粒が塗工された直後の状態を表したものである。
図2に示すように、ブラックマトリクス1の高さH1は2μm程度であるが、塗工直後の未乾燥インク10の高さH2は10〜15μm程度であり、ブラックマトリクス1の5〜7倍も高くなっている。この際、ブラックマトリクスよりも高くインク粒を塗工することが出来るのは、ブラックマトリックスの上面の表面張力を下げるために、その上面には撥液処理9が施されているからである。
【0006】
インク粒の塗工後は、後の工程で各々のインクが混じる合う、いわゆる混色不良を生じさせないように、未乾燥インク10中の溶剤を除去するプリベーク処理を行う。塗工された直後の未乾燥インク10は隔壁高さに対して5〜7倍も高いウェット状態であるが、このプリベーク処理を行うことによって、インクの硬化工程や検査工程などに進む際、搬送系の振動や加速度の影響を排除することが出来る。
【0007】
このプリベーク処理としては、旧来のフォトリソグラフィ工程で用いられている真空乾燥による溶剤除去法も利用できるが、先述したように、隔壁に比べて数倍の高さでインク粒を塗工していることから、塗工されたインク内の微少気泡や溶存ガスが突沸して混色不良を発生させてしまうことが多い。特に近年、液晶ディスプレイや白色有機への3色表示で使用されるカラーフィルタは、高コントラスト,高色純度が求められていることからして、形成する色材層2の高さは高くなる傾向にあり、プロセスマージンを鑑みると真空乾燥はあまり良い方法とは言えない。
【0008】
上記真空乾燥による溶剤除去法に代わるプリベーク処理としては、ホットプレートを用いた溶剤除去法が挙げられる。しかし、ホットプレートを用いたプリベーク処理は、図3にその断面を示すように、プリベーク処理後のインク10−2は、その上部が凸型状になりやすい。
図4は、ホットプレートを用いたプリベーク処理後のインク10−2の上部が凸型になる原理の説明図である。この詳しい原理は解明されているわけでは無いが、図4に示す未乾燥インク10の中央部(T)は、微少体積当たりの表面積が小さいのに対して隔壁近傍(E)の表面積が大きい。
本来、コーヒーステイン現象等と呼ばれる中央部の凹みが発生するが、それ以上にウェット状態の凸型状が激しいため、溶剤除去後も凸型状が維持されるものと考えられる。
【0009】
さて、本発明者は、ホットプレートなどを用いた加熱乾燥によるプリベーク処理で、密閉した加熱容器中で溶剤雰囲気をリッチ状態にすると、溶剤除去後のインクの上部の凸型化が弱められることを発見した。これは、図5に示すように、溶剤雰囲気のリッチ状態(A)は、溶剤の蒸発を緩慢にし、中央の微少部分と隔壁近傍の微少部分の表面積の違いによる蒸発の差異を少なくし、ゆっくりと体積を減らすことになり、図6に示すように、プリベーク処理後のインク10−3では、その上部の凸型化を図3に示すインク10−2の上部に比較し弱めることができる。
【0010】
しかし、この方法では、蒸発した溶剤が基板に再付着してしまうなどの問題がある。図7は、ホットプレートを用いた加熱乾燥装置であって、装置のチャンバーを密閉にして加熱乾燥を行うことができ、また、排気をしながら加熱乾燥を行うことができる加熱乾燥装置の一例の断面図である。
例えば、加熱乾燥装置の開閉弁25、26を閉じ、溶剤雰囲気をリッチ状態(A)にした場合、図7に示すように、ホットプレート20に載置した基板23上の未乾燥インク24から蒸発した溶剤が天板22に付着し、その溶剤滴Dが落下し基板上に再付着してしまうといった問題がある。
【0011】
また、加熱乾燥装置の開閉弁25、26を調節し、天板に溶剤が付着しない程度に排気ダクト21から溶剤の排気を実施すると、加熱中の溶剤雰囲気のリッチ状態(A)が得られず、インクの上部の凸型化が弱まることに寄与しないといった問題がある。
【特許文献1】特開2001−305516号公報
【特許文献2】特開2006−26463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、基板上に予め設けられた隔壁の内部にインクジェット法により塗工した直後の未乾燥インク中の溶剤除去を加熱により除去するプリベーク処理を、溶剤雰囲気をリッチ状態にして行っても、ホットプレート上方の天板に付着した溶剤が基板上に落下することのない加熱乾燥装置を提供することを課題とするものである。
また、本発明は、上記加熱乾燥装置において、排気ダクトから溶剤の排気を行っても、溶剤雰囲気をリッチ状態に保ことのできる加熱乾燥装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板上に設けられた隔壁の内部にインクジェット法によりインク粒を吐出した、吐出直後の未乾燥インク中の溶剤を加熱により除去するプリベーク処理に用いる加熱
乾燥装置において、
1)前記加熱乾燥装置は、少なくとも、密閉可能なチャンバー、該チャンバー内に設けられ、基板を載置する加熱部、該加熱部の上方に設けられた天板で構成され、
2)加熱により蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0014】
また、本発明は、上記発明による加熱乾燥装置において、前記加熱部が、ホットプレートであることを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0015】
また、本発明は、請求項1又は請求項2に記載の加熱乾燥装置において、前記密閉可能なチャンバー内の結露を防止するため溶剤蒸気を排出する排気手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0016】
また、本発明は、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、傾斜をもたせた天板であり、天板の傾斜下に集まる天板下面に付着した溶剤を回収することを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0017】
また、本発明は、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、天板下面を覆うウイック状材料であり、ウイック状材料から伝わる溶剤を回収することを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0018】
また、本発明は、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、多孔質材料からなる天板であり、多孔質材料の下面からの溶剤蒸気を上面から排出する排気手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0019】
また、本発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載する加熱乾燥装置において、前記密閉可能なチャンバー内に、チャンバー内の溶剤雰囲気を満たすための溶剤放出部材を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0020】
また、本発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載する加熱乾燥装置において、前記加熱部の温度が90℃以下であることを特徴とする加熱乾燥装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、密閉可能なチャンバー、チャンバー内に設けられた基板を載置する加熱部、該加熱部の上方に設けられた天板で構成され、加熱により蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段を設けた加熱乾燥装置であるので、基板上に予め設けられた隔壁の内部にインクジェット法により塗工した直後の未乾燥インク中の溶剤除去を加熱により除去するプリベーク処理を、溶剤雰囲気をリッチ状態にして行っても、ホットプレート上方の天板に付着した溶剤が基板上に落下することのない加熱乾燥装置となる。
【0022】
また、本発明は、密閉可能なチャンバー内の結露を防ぐため溶剤蒸気を排出する排気手段を設けた加熱乾燥装置であるので、排気ダクトからの溶剤の排気を行っても、溶剤雰囲気をリッチ状態に保ことのできる加熱乾燥装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図8は、本発明による加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図8に示すように、加熱乾燥装置は、密閉可能なチャンバー27、チャンバー内に設けられた基板を載置する加熱部20、加熱部の上方に設けられた天板30で構成されており、密閉可能なチャンバー27の側部には、開閉弁25を内蔵する排気手段21、底分には、開閉弁26を内蔵する吸気手段28が設けられている。
【0024】
この加熱乾燥装置には、加熱により未乾燥インク中から蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段が設けられている。溶剤を除去する手段として、傾斜をもたせた天板30が用いられた例である。加熱部20としては、例えば、ホットプレートが用いられる。この加熱乾燥装置は、基板23上に設けられた隔壁の内部にインクジェット法によりインク粒を吐出した、吐出直後の未乾燥インク24中の溶剤を加熱により除去するプリベーク処理に用いる加熱乾燥装置である。この加熱乾燥装置を用いたプリベーク処理後に、基板には硬化処理が施される。
【0025】
この加熱乾燥装置における溶剤を除去する手段は、傾斜角θとして3°〜10°の傾斜をもたせた天板30であるので、天板に付着した溶剤は基板に滴下することなく、図8中、天板の右方端の傾斜下に溶剤は集まり、ガーター31に滴下し排出チューブ32を経て外部に回収される。
【0026】
また、本発明による加熱乾燥装置は、密閉可能なチャンバー内の結露を防止するため溶剤蒸気を排出する排気手段21を設けたことを特徴としている。結露を防止するため溶剤蒸気を排出することによって、基板上の未乾燥インク中の溶剤の蒸発が遅くなりタクトタイムが延びたり、溶剤雰囲気が強すぎて基板が濡れてしまうようなトラブルを防止する事が出来る。また、溶剤雰囲気の程度を監視するセンサーと併用すれば、溶剤雰囲気のコントロールが更に容易となる。
【0027】
また、図9は、請求項5に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図9に示す加熱乾燥装置は、溶剤を除去する手段が天板30下面を覆うウイック状材料33である。例えば、耐熱繊維や細かい溝等、保液性のある所謂ウィックと呼ばれる液輸送部を天板30に被覆し、このウィックから伝わる余剰溶剤を回収することが、天板に傾斜をもたせることなる出来る。この溶剤を除去する手段は、密閉したチャンバー内の溶剤雰囲気をリッチ状態に維持することが容易なものとなる。
【0028】
天板30の下面には保液性のある耐熱フェルト(例えば、ヒメロン(商品名))や、細かな溝を設けた板など、ヒートポンプの内面と同じウィック状材料33で被覆している。従って、毛細管現象等により、ウィック状材料33は、その部分で液量の多いところから液量の少ないところに移動するのでガーター31に集める事が出来る。この場合、滴状にガーター内に溶剤が落下しにくい場合はガーターを真空吸引すれば効率良く排出出来る。よって、天板はいつも適度な溶剤が保たれているので、密閉したチャンバー内の溶剤雰囲気をリッチ状態に保つことが出来る。
【0029】
また、図10は、請求項6に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図10に示す加熱乾燥装置は、溶剤を除去する手段が、多孔質材料からなる天板であり、多孔質材料の下面からの溶剤蒸気を上面から排出する排気手段を設けたものである。多孔質材料としては、例えば、ステンレスやセラミックス等の多孔質(ポーラス)材料が用いられる。その上面に負圧排気を設けて、天板から溶剤が滴下しない程度に吸出・排出するので、天板には溶剤滴を付着させず効率良く排出することが出来る。
図10に示すように、天板の上面にダクト41とファンモータ42を設けてあるので、排気流量を調節することで一定量の溶剤を排出することができ、溶剤の滴下を防ぐことができる。
【0030】
また、図11は、請求項7に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図11に示す加熱乾燥装置は、密閉可能なチャンバー27内に、チャンバー内の溶剤雰囲気を満たすための溶剤放出部材45を設けたことを特徴としている。溶剤放出部材45は、
密閉したチャンバー内の溶剤雰囲気を意図的に満たすために、例えば、トレーに入れた溶剤や、吸液性のある耐熱フェルト等の部材に溶剤をしみ込ませたものなど、上記密閉したチャンバー内に設けているので溶剤リッチな環境を基板からの蒸発溶剤に頼らず意図的に作ることが出来る。
【0031】
これにより、溶剤の放出(発生)と排気のバランスをとり、チャンバー内を所望する溶剤雰囲気に保つことができる。例えば、ポリアミドやポリプロピレンなど、100℃以上の温度に耐え、溶剤耐性の強い樹脂繊維に溶剤をしみ込ませたもので、絶えず、ホットプレートから伝わる熱により溶剤が蒸発しているものを設ける。
【0032】
また、本発明による加熱乾燥装置は、加熱部の温度を90℃以下で使用しているので、被加熱物の基板に対する加熱中の接触部(テーブル部材やリフトピン等)等との温度差が少なく、乾燥ムラが発生しにくい。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。
インクジェット法にてカラーフィルタを形成する際に、プリベーク処理に本発明による加熱乾燥装置を用いた実施例をあげる。また、比較例として、プリベーク処理に本発明の加熱乾燥装置を用いない例を挙げる。
【0034】
(ブラックマトリックスの作製)
ブラックマトリックスはフォトリソグラフィ法を用いて作製した。基板として無アルカリガラスを用いた。基板上の全面に、フッ素樹脂を含む感光性樹脂組成物を膜厚2μmに塗布した。格子状のパターンを有するフォトマスクを用いた露光、アルカリ液による現像の後、この基板をオーブンに入れ熱硬化処理を行いブラックマトリックスを作製した。このブラックマトリックスのOD値(光学濃度)を測定したところ、充分な遮光性を有することから光遮光層として使用できることを確認した。
【0035】
(インクの調製)
溶剤を除くインクの全固形分の合計質量に占める顔料の割合が50質量%で、インクとして必要な分光特性となるように調整し、インクに占める全固形分濃度が30質量%となるように溶剤を調整した。
【0036】
(インクジェット塗工機の構成)
図13を用いて、インクジェット塗工機の説明をする。インクジェット塗工機において使用されるインク51は、供給タンク52に貯蔵されており、チューブ53を通って大気開放55のサブタンク54へと送られ、その後、インクはチューブ56を通って、インクジェットヘッドに分岐しているマニホールド57へと送られ、マニホールド57からインクジェットヘッド58へと送られる。
【0037】
サブタンク54での液面高さとインクジェットヘッドとの水頭差を確保して、各ノズルのインク面がメニスカス面となる状態でインク供給が行われるようにすることで、インクジェットヘッドの各ノズルでのインク面をメニスカス状態とすることができ、インクを適正な流量のインク粒とすることができる。
上記ブラックマトリックスを形成した基板59を載せた可動ステージ60はテーブル61上に配置されており、テーブル61上方に設けられたインクジェットヘッド58の各ノズルからのインク粒を精度良く塗工を行うため、可動ステージ60とインクジェットヘッド58は同期しており、隔壁として利用するブラックマトリックスの内部にインク粒を吐出するよう制御盤62で制御されている。
【0038】
図12は、実際の塗工機の概略の斜視図である。ヘッドユニット70には先述のインクジェットヘッド58の複数が並列にヘッドユニット内に配置しており、更に3色分のインクジェットヘッドが1つのヘッドユニット内に納めてあることから、3色同時に基板上に塗工することが出来る。
また、図12に示すように、第一ヘッドユニット70−1及び第二ヘッドユニット70−2の2基のヘッドユニットを備えているので、1方のヘッドユニットが調整・整備などで休止しても、他方のヘッドユニットで塗工出来ることから、生産性に優れている。
【0039】
(加熱乾燥装置)
加熱乾燥装置は、図11に示すように、天板40をステンレスの多孔質材料とし、その上面にダクト41、ファンモータ42といった排気手段を設けて、50kPaの圧力で常に排気を行うようにした。また、チャンバー内には、インクの調製に用いた溶剤を入れたトレーを溶剤放出部材45として配置することで、チャンバー内を溶剤雰囲気とした。
【0040】
(カラーフィルタの作製)
上記によりブラックマトリックスを形成した基板に、上記インクジェット塗工機を用いて赤、青、緑からなる着色インクの吐出を行い、着色インクの塗工直後に、基板の加熱温度が90℃になるように、上記加熱乾燥装置を用いて密閉したプリベーク処理を行った。プリベーク処理後に、基板を240℃、20分オーブンで熱処理する硬化工程を行うことで、吐出された着色インクの上部が平坦なカラーフィルタの画素を得た。カラーフィルタの画素の膜厚は1.7μmで、画素内段差は、0.4μm程度であった。
【比較例】
【0041】
加熱乾燥装置として、多孔質材料を用いない天板が備えられ、ダクト41、ファンモータ42といった排気手段が設けられておらず、溶剤放出部材45が配置されていない密閉式の加熱乾燥装置を用いた。
得られたカラーフィルタの画素は、インクの上部が凸型状となり、平坦な画素を得ることができなかった。この凸型状は、図14に示すように、硬化工程後の画素(インク)10−4の上部と下部との高さの差(画素内段差ΔH)にて、0.4〜0.8μmであった。
【0042】
尚、以下の塗工条件にて塗工した画素では、上記画素内段差が0.2〜0.6μmへと良化したことを確認した。
・インクジェットヘッド(単一)幅:50mm
・塗工解像度 :600dpi(約42.3μmピッチ)
・総塗工幅 :500mm(ヘッド10組)
・塗工速度 :200mm/sec
・ブラックマトリックス線幅 :20〜80μm
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】インクジェットヘッドからインク粒を吐出させ色材層を得る方法を例示した説明図である。
【図2】隔壁として利用したブラックマトリックスの内部に塗工液(インク粒)が充填された基板の走査方向での断面図である。
【図3】プリベーク処理後のインク上部の凸型状の断面図である。
【図4】プリベーク処理後のインク上部が凸型になる原理の説明図である。
【図5】チャンバー内での溶剤雰囲気のリッチ状態
【図6】プリベーク処理後のインクの説明図である。
【図7】ホットプレートを用いた加熱乾燥装置の一例の断面図である。
【図8】本発明による加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図9】請求項5に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図10】請求項6に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図11】請求項7に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図12】実際の塗工機の概略の斜視図である。
【図13】インクジェット塗工機の説明図である。
【図14】画素(インク)の上部と下部との高さの差(画素内段差)の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・ブラックマトリックス(隔壁)
2・・・色材層
3・・・インク粒
4、58・・・インクジェットヘッド
5、23、59・・・基板
9・・・撥液処理
10、24・・・塗工された直後の未乾燥インク
10−2・・・ホットプレートを用いたプリベーク処理後のインク
10−3・・・溶剤雰囲気がリッチ状態でのプリベーク処理後のインク
10−4・・・硬化工程後の画素(インク)
20・・・加熱部(ホットプレート)
21・・・排気手段
22・・・天板
25、26・・・開閉弁
27・・・密閉可能なチャンバー
28・・・吸気手段
30・・・本発明における天板
31・・・ガーター
32・・・排出チューブ
33・・・ウイック状材料
41・・・ダクト
42・・・ファンモータ
45・・・溶剤放出部材
51・・・インク
52・・・供給タンク
53、56・・・チューブ
54・・・サブタンク
57・・・マニホールド
60・・・可動ステージ
61・・・テーブル
62・・・制御盤
70−1、70−2・・・第一、第二ヘッドユニット
A・・・溶剤雰囲気のリッチ状態
D・・・溶剤滴
ΔH・・・画素内段差
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により塗工した直後の未乾燥インク中の溶剤除去に用いる加熱乾燥装置に関するものであり、特に、液晶用カラーフィルタや有機半導体による発光表示器等、基板上の隔壁内への精密塗工を可能とする加熱乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット法でカラーフィルタなどを形成する場合、フラットベットステージにガラスなどの基板を置き、インクジェットヘッドのノズルから塗工液(インク粒)を吐出させ基板に直接塗工液を塗工しカラーフィルタなどを形成していた。
以下に、液晶ディスプレイや白色スイッチング表示器(サーフェースエミッションディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等)のカラーフィルタを形成する際の塗工について述べる。
【0003】
図1は、基板5上に予め形成したブラックマトリックス1を隔壁として利用し、その内部にインクジェットヘッド4からインク粒3を吐出させ色材層2を得る方法を例示したものである。図1にて、インクジェットヘッド4若しくは基板(ブラックマトリックス1を含む基板)5の走査方向は、符号Sで示す方向である。
【0004】
一般に、インクジェットヘッドのノズル(図示せず)は、100〜500μmの間隔で設けられている。一方、例えば、30〜40インチTVの1画素の寸法は、隔壁長手方向(図1中、符号Sの直角方向)で数百μmであるので、複数のインクジェットヘッドにて隔壁の内部に塗工液を塗工する。図1は、2本のインクジェットヘッド4を並列に設けた例である。
【0005】
図2は、隔壁として利用したブラックマトリックス1の内部に塗工液(インク粒)が充填された基板5の、走査方向Sでの断面図である。隔壁であるブラックマトリックス1の内部にインクジェットから吐出されたインク粒が塗工された直後の状態を表したものである。
図2に示すように、ブラックマトリクス1の高さH1は2μm程度であるが、塗工直後の未乾燥インク10の高さH2は10〜15μm程度であり、ブラックマトリクス1の5〜7倍も高くなっている。この際、ブラックマトリクスよりも高くインク粒を塗工することが出来るのは、ブラックマトリックスの上面の表面張力を下げるために、その上面には撥液処理9が施されているからである。
【0006】
インク粒の塗工後は、後の工程で各々のインクが混じる合う、いわゆる混色不良を生じさせないように、未乾燥インク10中の溶剤を除去するプリベーク処理を行う。塗工された直後の未乾燥インク10は隔壁高さに対して5〜7倍も高いウェット状態であるが、このプリベーク処理を行うことによって、インクの硬化工程や検査工程などに進む際、搬送系の振動や加速度の影響を排除することが出来る。
【0007】
このプリベーク処理としては、旧来のフォトリソグラフィ工程で用いられている真空乾燥による溶剤除去法も利用できるが、先述したように、隔壁に比べて数倍の高さでインク粒を塗工していることから、塗工されたインク内の微少気泡や溶存ガスが突沸して混色不良を発生させてしまうことが多い。特に近年、液晶ディスプレイや白色有機への3色表示で使用されるカラーフィルタは、高コントラスト,高色純度が求められていることからして、形成する色材層2の高さは高くなる傾向にあり、プロセスマージンを鑑みると真空乾燥はあまり良い方法とは言えない。
【0008】
上記真空乾燥による溶剤除去法に代わるプリベーク処理としては、ホットプレートを用いた溶剤除去法が挙げられる。しかし、ホットプレートを用いたプリベーク処理は、図3にその断面を示すように、プリベーク処理後のインク10−2は、その上部が凸型状になりやすい。
図4は、ホットプレートを用いたプリベーク処理後のインク10−2の上部が凸型になる原理の説明図である。この詳しい原理は解明されているわけでは無いが、図4に示す未乾燥インク10の中央部(T)は、微少体積当たりの表面積が小さいのに対して隔壁近傍(E)の表面積が大きい。
本来、コーヒーステイン現象等と呼ばれる中央部の凹みが発生するが、それ以上にウェット状態の凸型状が激しいため、溶剤除去後も凸型状が維持されるものと考えられる。
【0009】
さて、本発明者は、ホットプレートなどを用いた加熱乾燥によるプリベーク処理で、密閉した加熱容器中で溶剤雰囲気をリッチ状態にすると、溶剤除去後のインクの上部の凸型化が弱められることを発見した。これは、図5に示すように、溶剤雰囲気のリッチ状態(A)は、溶剤の蒸発を緩慢にし、中央の微少部分と隔壁近傍の微少部分の表面積の違いによる蒸発の差異を少なくし、ゆっくりと体積を減らすことになり、図6に示すように、プリベーク処理後のインク10−3では、その上部の凸型化を図3に示すインク10−2の上部に比較し弱めることができる。
【0010】
しかし、この方法では、蒸発した溶剤が基板に再付着してしまうなどの問題がある。図7は、ホットプレートを用いた加熱乾燥装置であって、装置のチャンバーを密閉にして加熱乾燥を行うことができ、また、排気をしながら加熱乾燥を行うことができる加熱乾燥装置の一例の断面図である。
例えば、加熱乾燥装置の開閉弁25、26を閉じ、溶剤雰囲気をリッチ状態(A)にした場合、図7に示すように、ホットプレート20に載置した基板23上の未乾燥インク24から蒸発した溶剤が天板22に付着し、その溶剤滴Dが落下し基板上に再付着してしまうといった問題がある。
【0011】
また、加熱乾燥装置の開閉弁25、26を調節し、天板に溶剤が付着しない程度に排気ダクト21から溶剤の排気を実施すると、加熱中の溶剤雰囲気のリッチ状態(A)が得られず、インクの上部の凸型化が弱まることに寄与しないといった問題がある。
【特許文献1】特開2001−305516号公報
【特許文献2】特開2006−26463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、基板上に予め設けられた隔壁の内部にインクジェット法により塗工した直後の未乾燥インク中の溶剤除去を加熱により除去するプリベーク処理を、溶剤雰囲気をリッチ状態にして行っても、ホットプレート上方の天板に付着した溶剤が基板上に落下することのない加熱乾燥装置を提供することを課題とするものである。
また、本発明は、上記加熱乾燥装置において、排気ダクトから溶剤の排気を行っても、溶剤雰囲気をリッチ状態に保ことのできる加熱乾燥装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板上に設けられた隔壁の内部にインクジェット法によりインク粒を吐出した、吐出直後の未乾燥インク中の溶剤を加熱により除去するプリベーク処理に用いる加熱
乾燥装置において、
1)前記加熱乾燥装置は、少なくとも、密閉可能なチャンバー、該チャンバー内に設けられ、基板を載置する加熱部、該加熱部の上方に設けられた天板で構成され、
2)加熱により蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0014】
また、本発明は、上記発明による加熱乾燥装置において、前記加熱部が、ホットプレートであることを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0015】
また、本発明は、請求項1又は請求項2に記載の加熱乾燥装置において、前記密閉可能なチャンバー内の結露を防止するため溶剤蒸気を排出する排気手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0016】
また、本発明は、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、傾斜をもたせた天板であり、天板の傾斜下に集まる天板下面に付着した溶剤を回収することを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0017】
また、本発明は、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、天板下面を覆うウイック状材料であり、ウイック状材料から伝わる溶剤を回収することを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0018】
また、本発明は、請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、多孔質材料からなる天板であり、多孔質材料の下面からの溶剤蒸気を上面から排出する排気手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0019】
また、本発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載する加熱乾燥装置において、前記密閉可能なチャンバー内に、チャンバー内の溶剤雰囲気を満たすための溶剤放出部材を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置である。
【0020】
また、本発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載する加熱乾燥装置において、前記加熱部の温度が90℃以下であることを特徴とする加熱乾燥装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、密閉可能なチャンバー、チャンバー内に設けられた基板を載置する加熱部、該加熱部の上方に設けられた天板で構成され、加熱により蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段を設けた加熱乾燥装置であるので、基板上に予め設けられた隔壁の内部にインクジェット法により塗工した直後の未乾燥インク中の溶剤除去を加熱により除去するプリベーク処理を、溶剤雰囲気をリッチ状態にして行っても、ホットプレート上方の天板に付着した溶剤が基板上に落下することのない加熱乾燥装置となる。
【0022】
また、本発明は、密閉可能なチャンバー内の結露を防ぐため溶剤蒸気を排出する排気手段を設けた加熱乾燥装置であるので、排気ダクトからの溶剤の排気を行っても、溶剤雰囲気をリッチ状態に保ことのできる加熱乾燥装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図8は、本発明による加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図8に示すように、加熱乾燥装置は、密閉可能なチャンバー27、チャンバー内に設けられた基板を載置する加熱部20、加熱部の上方に設けられた天板30で構成されており、密閉可能なチャンバー27の側部には、開閉弁25を内蔵する排気手段21、底分には、開閉弁26を内蔵する吸気手段28が設けられている。
【0024】
この加熱乾燥装置には、加熱により未乾燥インク中から蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段が設けられている。溶剤を除去する手段として、傾斜をもたせた天板30が用いられた例である。加熱部20としては、例えば、ホットプレートが用いられる。この加熱乾燥装置は、基板23上に設けられた隔壁の内部にインクジェット法によりインク粒を吐出した、吐出直後の未乾燥インク24中の溶剤を加熱により除去するプリベーク処理に用いる加熱乾燥装置である。この加熱乾燥装置を用いたプリベーク処理後に、基板には硬化処理が施される。
【0025】
この加熱乾燥装置における溶剤を除去する手段は、傾斜角θとして3°〜10°の傾斜をもたせた天板30であるので、天板に付着した溶剤は基板に滴下することなく、図8中、天板の右方端の傾斜下に溶剤は集まり、ガーター31に滴下し排出チューブ32を経て外部に回収される。
【0026】
また、本発明による加熱乾燥装置は、密閉可能なチャンバー内の結露を防止するため溶剤蒸気を排出する排気手段21を設けたことを特徴としている。結露を防止するため溶剤蒸気を排出することによって、基板上の未乾燥インク中の溶剤の蒸発が遅くなりタクトタイムが延びたり、溶剤雰囲気が強すぎて基板が濡れてしまうようなトラブルを防止する事が出来る。また、溶剤雰囲気の程度を監視するセンサーと併用すれば、溶剤雰囲気のコントロールが更に容易となる。
【0027】
また、図9は、請求項5に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図9に示す加熱乾燥装置は、溶剤を除去する手段が天板30下面を覆うウイック状材料33である。例えば、耐熱繊維や細かい溝等、保液性のある所謂ウィックと呼ばれる液輸送部を天板30に被覆し、このウィックから伝わる余剰溶剤を回収することが、天板に傾斜をもたせることなる出来る。この溶剤を除去する手段は、密閉したチャンバー内の溶剤雰囲気をリッチ状態に維持することが容易なものとなる。
【0028】
天板30の下面には保液性のある耐熱フェルト(例えば、ヒメロン(商品名))や、細かな溝を設けた板など、ヒートポンプの内面と同じウィック状材料33で被覆している。従って、毛細管現象等により、ウィック状材料33は、その部分で液量の多いところから液量の少ないところに移動するのでガーター31に集める事が出来る。この場合、滴状にガーター内に溶剤が落下しにくい場合はガーターを真空吸引すれば効率良く排出出来る。よって、天板はいつも適度な溶剤が保たれているので、密閉したチャンバー内の溶剤雰囲気をリッチ状態に保つことが出来る。
【0029】
また、図10は、請求項6に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図10に示す加熱乾燥装置は、溶剤を除去する手段が、多孔質材料からなる天板であり、多孔質材料の下面からの溶剤蒸気を上面から排出する排気手段を設けたものである。多孔質材料としては、例えば、ステンレスやセラミックス等の多孔質(ポーラス)材料が用いられる。その上面に負圧排気を設けて、天板から溶剤が滴下しない程度に吸出・排出するので、天板には溶剤滴を付着させず効率良く排出することが出来る。
図10に示すように、天板の上面にダクト41とファンモータ42を設けてあるので、排気流量を調節することで一定量の溶剤を排出することができ、溶剤の滴下を防ぐことができる。
【0030】
また、図11は、請求項7に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図11に示す加熱乾燥装置は、密閉可能なチャンバー27内に、チャンバー内の溶剤雰囲気を満たすための溶剤放出部材45を設けたことを特徴としている。溶剤放出部材45は、
密閉したチャンバー内の溶剤雰囲気を意図的に満たすために、例えば、トレーに入れた溶剤や、吸液性のある耐熱フェルト等の部材に溶剤をしみ込ませたものなど、上記密閉したチャンバー内に設けているので溶剤リッチな環境を基板からの蒸発溶剤に頼らず意図的に作ることが出来る。
【0031】
これにより、溶剤の放出(発生)と排気のバランスをとり、チャンバー内を所望する溶剤雰囲気に保つことができる。例えば、ポリアミドやポリプロピレンなど、100℃以上の温度に耐え、溶剤耐性の強い樹脂繊維に溶剤をしみ込ませたもので、絶えず、ホットプレートから伝わる熱により溶剤が蒸発しているものを設ける。
【0032】
また、本発明による加熱乾燥装置は、加熱部の温度を90℃以下で使用しているので、被加熱物の基板に対する加熱中の接触部(テーブル部材やリフトピン等)等との温度差が少なく、乾燥ムラが発生しにくい。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。
インクジェット法にてカラーフィルタを形成する際に、プリベーク処理に本発明による加熱乾燥装置を用いた実施例をあげる。また、比較例として、プリベーク処理に本発明の加熱乾燥装置を用いない例を挙げる。
【0034】
(ブラックマトリックスの作製)
ブラックマトリックスはフォトリソグラフィ法を用いて作製した。基板として無アルカリガラスを用いた。基板上の全面に、フッ素樹脂を含む感光性樹脂組成物を膜厚2μmに塗布した。格子状のパターンを有するフォトマスクを用いた露光、アルカリ液による現像の後、この基板をオーブンに入れ熱硬化処理を行いブラックマトリックスを作製した。このブラックマトリックスのOD値(光学濃度)を測定したところ、充分な遮光性を有することから光遮光層として使用できることを確認した。
【0035】
(インクの調製)
溶剤を除くインクの全固形分の合計質量に占める顔料の割合が50質量%で、インクとして必要な分光特性となるように調整し、インクに占める全固形分濃度が30質量%となるように溶剤を調整した。
【0036】
(インクジェット塗工機の構成)
図13を用いて、インクジェット塗工機の説明をする。インクジェット塗工機において使用されるインク51は、供給タンク52に貯蔵されており、チューブ53を通って大気開放55のサブタンク54へと送られ、その後、インクはチューブ56を通って、インクジェットヘッドに分岐しているマニホールド57へと送られ、マニホールド57からインクジェットヘッド58へと送られる。
【0037】
サブタンク54での液面高さとインクジェットヘッドとの水頭差を確保して、各ノズルのインク面がメニスカス面となる状態でインク供給が行われるようにすることで、インクジェットヘッドの各ノズルでのインク面をメニスカス状態とすることができ、インクを適正な流量のインク粒とすることができる。
上記ブラックマトリックスを形成した基板59を載せた可動ステージ60はテーブル61上に配置されており、テーブル61上方に設けられたインクジェットヘッド58の各ノズルからのインク粒を精度良く塗工を行うため、可動ステージ60とインクジェットヘッド58は同期しており、隔壁として利用するブラックマトリックスの内部にインク粒を吐出するよう制御盤62で制御されている。
【0038】
図12は、実際の塗工機の概略の斜視図である。ヘッドユニット70には先述のインクジェットヘッド58の複数が並列にヘッドユニット内に配置しており、更に3色分のインクジェットヘッドが1つのヘッドユニット内に納めてあることから、3色同時に基板上に塗工することが出来る。
また、図12に示すように、第一ヘッドユニット70−1及び第二ヘッドユニット70−2の2基のヘッドユニットを備えているので、1方のヘッドユニットが調整・整備などで休止しても、他方のヘッドユニットで塗工出来ることから、生産性に優れている。
【0039】
(加熱乾燥装置)
加熱乾燥装置は、図11に示すように、天板40をステンレスの多孔質材料とし、その上面にダクト41、ファンモータ42といった排気手段を設けて、50kPaの圧力で常に排気を行うようにした。また、チャンバー内には、インクの調製に用いた溶剤を入れたトレーを溶剤放出部材45として配置することで、チャンバー内を溶剤雰囲気とした。
【0040】
(カラーフィルタの作製)
上記によりブラックマトリックスを形成した基板に、上記インクジェット塗工機を用いて赤、青、緑からなる着色インクの吐出を行い、着色インクの塗工直後に、基板の加熱温度が90℃になるように、上記加熱乾燥装置を用いて密閉したプリベーク処理を行った。プリベーク処理後に、基板を240℃、20分オーブンで熱処理する硬化工程を行うことで、吐出された着色インクの上部が平坦なカラーフィルタの画素を得た。カラーフィルタの画素の膜厚は1.7μmで、画素内段差は、0.4μm程度であった。
【比較例】
【0041】
加熱乾燥装置として、多孔質材料を用いない天板が備えられ、ダクト41、ファンモータ42といった排気手段が設けられておらず、溶剤放出部材45が配置されていない密閉式の加熱乾燥装置を用いた。
得られたカラーフィルタの画素は、インクの上部が凸型状となり、平坦な画素を得ることができなかった。この凸型状は、図14に示すように、硬化工程後の画素(インク)10−4の上部と下部との高さの差(画素内段差ΔH)にて、0.4〜0.8μmであった。
【0042】
尚、以下の塗工条件にて塗工した画素では、上記画素内段差が0.2〜0.6μmへと良化したことを確認した。
・インクジェットヘッド(単一)幅:50mm
・塗工解像度 :600dpi(約42.3μmピッチ)
・総塗工幅 :500mm(ヘッド10組)
・塗工速度 :200mm/sec
・ブラックマトリックス線幅 :20〜80μm
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】インクジェットヘッドからインク粒を吐出させ色材層を得る方法を例示した説明図である。
【図2】隔壁として利用したブラックマトリックスの内部に塗工液(インク粒)が充填された基板の走査方向での断面図である。
【図3】プリベーク処理後のインク上部の凸型状の断面図である。
【図4】プリベーク処理後のインク上部が凸型になる原理の説明図である。
【図5】チャンバー内での溶剤雰囲気のリッチ状態
【図6】プリベーク処理後のインクの説明図である。
【図7】ホットプレートを用いた加熱乾燥装置の一例の断面図である。
【図8】本発明による加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図9】請求項5に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図10】請求項6に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図11】請求項7に係わる加熱乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図12】実際の塗工機の概略の斜視図である。
【図13】インクジェット塗工機の説明図である。
【図14】画素(インク)の上部と下部との高さの差(画素内段差)の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1・・・ブラックマトリックス(隔壁)
2・・・色材層
3・・・インク粒
4、58・・・インクジェットヘッド
5、23、59・・・基板
9・・・撥液処理
10、24・・・塗工された直後の未乾燥インク
10−2・・・ホットプレートを用いたプリベーク処理後のインク
10−3・・・溶剤雰囲気がリッチ状態でのプリベーク処理後のインク
10−4・・・硬化工程後の画素(インク)
20・・・加熱部(ホットプレート)
21・・・排気手段
22・・・天板
25、26・・・開閉弁
27・・・密閉可能なチャンバー
28・・・吸気手段
30・・・本発明における天板
31・・・ガーター
32・・・排出チューブ
33・・・ウイック状材料
41・・・ダクト
42・・・ファンモータ
45・・・溶剤放出部材
51・・・インク
52・・・供給タンク
53、56・・・チューブ
54・・・サブタンク
57・・・マニホールド
60・・・可動ステージ
61・・・テーブル
62・・・制御盤
70−1、70−2・・・第一、第二ヘッドユニット
A・・・溶剤雰囲気のリッチ状態
D・・・溶剤滴
ΔH・・・画素内段差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた隔壁の内部にインクジェット法によりインク粒を吐出した、吐出直後の未乾燥インク中の溶剤を加熱により除去するプリベーク処理に用いる加熱乾燥装置において、
1)前記加熱乾燥装置は、少なくとも、密閉可能なチャンバー、該チャンバー内に設けられ、基板を載置する加熱部、該加熱部の上方に設けられた天板で構成され、
2)加熱により蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項2】
前記加熱部が、ホットプレートであることを特徴とする請求項1記載の加熱乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の加熱乾燥装置において、前記密閉可能なチャンバー内の結露を防止するため溶剤蒸気を排出する排気手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、傾斜をもたせた天板であり、天板の傾斜下に集まる天板下面に付着した溶剤を回収することを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、天板下面を覆うウイック状材料であり、ウイック状材料から伝わる溶剤を回収することを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項6】
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、多孔質材料からなる天板であり、多孔質材料の下面からの溶剤蒸気を上面から排出する排気手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載する加熱乾燥装置において、前記密閉可能なチャンバー内に、チャンバー内の溶剤雰囲気を満たすための溶剤放出部材を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載する加熱乾燥装置において、前記加熱部の温度が90℃以下であることを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項1】
基板上に設けられた隔壁の内部にインクジェット法によりインク粒を吐出した、吐出直後の未乾燥インク中の溶剤を加熱により除去するプリベーク処理に用いる加熱乾燥装置において、
1)前記加熱乾燥装置は、少なくとも、密閉可能なチャンバー、該チャンバー内に設けられ、基板を載置する加熱部、該加熱部の上方に設けられた天板で構成され、
2)加熱により蒸発し、天板下面に付着した溶剤を除去する手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項2】
前記加熱部が、ホットプレートであることを特徴とする請求項1記載の加熱乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の加熱乾燥装置において、前記密閉可能なチャンバー内の結露を防止するため溶剤蒸気を排出する排気手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、傾斜をもたせた天板であり、天板の傾斜下に集まる天板下面に付着した溶剤を回収することを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項5】
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、天板下面を覆うウイック状材料であり、ウイック状材料から伝わる溶剤を回収することを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項6】
請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の加熱乾燥装置において、前記溶剤を除去する手段が、多孔質材料からなる天板であり、多孔質材料の下面からの溶剤蒸気を上面から排出する排気手段を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載する加熱乾燥装置において、前記密閉可能なチャンバー内に、チャンバー内の溶剤雰囲気を満たすための溶剤放出部材を設けたことを特徴とする加熱乾燥装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載する加熱乾燥装置において、前記加熱部の温度が90℃以下であることを特徴とする加熱乾燥装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−137120(P2010−137120A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313015(P2008−313015)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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