説明

加熱平面要素およびその取付方法

【課題】加熱平面要素およびその取付方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、電気接触層を有する両面結合可能な平面要素であって、電気接触層を介して自己調整的に内部加熱可能であり、同時に高い可撓性を有する平面要素を提供する。この平面要素の具体的な特徴は、保管状態での平面要素が、片側でのみ接着性をもち、したがって特に取り扱いやすいこと、および結合時に、接着剤が接触層の切欠を通過し、それにより平面要素が両面結合可能になることである。さらに、本発明は、重要なステップとして、接触層の切欠を通る接着剤の通過を含み、それにより片面接着性の平面要素を両面接着性の平面要素に変える、この平面要素の結合のための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面と裏面とを有し、加熱層と接触層とを備える平面要素であって、加熱層が、電流が通過するときに加熱される導体として設計された内部加熱可能(intrinsically heatable)な自己接着剤から構成され、接触層が、切欠を穿設された少なくとも実質的に2次元に延在する接触要素として設計され、第1の面と第2の面とを有し、接触層が、第1の面によって加熱層と接触し、加熱層と導電連絡する平面要素、およびこの平面要素の使用に関する。本発明は、さらに、そのような平面要素を結合基板に接合させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品または空間を加熱するために電気加熱システムが使用される多くの分野が存在する。電気加熱システムでは、熱エネルギーの形態での熱が、電気エネルギー(磁気エネルギーを含む)からの変換によって得られる。基本的には、電気加熱システムは、様々な技術原理に基づくことがある。容量効果または誘導効果、あるいは電磁放射に基づく熱の発生に加えて、抵抗加熱要素を含む加熱システム(抵抗加熱器として知られている)が確立されている。この種のシステムでは、電流が抵抗加熱要素を通過するときに生じる熱エネルギー(ジュール熱)が利用される。原理的には、抵抗加熱要素として、非ゼロ有限抵抗値を有する任意の導電体を使用することができる。
【0003】
抵抗加熱要素の選択は、達成すべき熱性能に基づいて行われ、熱性能は、抵抗加熱要素の抵抗値と、抵抗加熱要素を通って流れる電流とに依存し、それゆえ、オームの法則に従えば、印加電圧に依存する。したがって、抵抗加熱要素は、それが含む導電経路の性質に従って、例えばその断面積、長さ、比抵抗、および熱負荷耐性に従って選択される。
【0004】
自動車産業では、特に、例えば自動車座席、自動車窓、および自動車サイドミラーを加熱する目的での抵抗加熱器の使用が増えている。そのような用途で所望の加熱を実現するために、最も単純なシステムは、平坦に敷設された抵抗ワイヤを含む。他のシステムは、抵抗加熱要素として層状の導体、例としては導電ポリマー層を備える導体を有する。したがって、例えば、層状の抵抗加熱要素が、自動車サイドミラーのミラー・ガラスの裏面に結合され、自動車サイドミラーの取付部にある裏当てプレートにミラー・ガラスを接続させ、アルミニウムからなる導体面によって広範囲で接触される。次いで、抵抗加熱要素に電圧が印加されるとき、電流により、抵抗加熱要素が加熱される。抵抗加熱要素が発生する熱は、両面感圧接着テープを介してミラーのガラス表面に伝達され、それによりガラス表面を加熱する。このようにして、ミラーのガラス表面で45℃〜80℃の温度を達成することができる。
【0005】
導体面と内部加熱可能なインクとを有する裏当て箔からなるそのようなシステムは、加熱を達成するのに十分であるが、加熱要素の個々の構成要素を、ミラーのガラスのみならず、多くの場合にはプラスチック・アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)からなるミラーの裏当てプレートにも結合しなければならないので、比較的複雑な構成を必要とする。これらの様々な材料の接着結合は、使用すべき接着システムに特別な要件を課す。
【0006】
特定の基板の材料に起因する考慮事項に加えて、加熱要素をミラー・プレートに貼着させるために使用され、加熱要素からミラー表面に熱を伝達するこの種の感圧接着テープは、非常に高い熱伝導率を有するだけでなく、高温での熱せん断強度、ならびに低温での耐候性および感圧接着性に関しても特に適切でなければならない。これは、同様に、裏当て箔と導電性インクとを備える複合テープをミラー取付部にある裏当てプレートに貼着するために提供されることがある個別接着層にも当てはまる。
【0007】
しかし、概して、この種の複合テープは、可撓性が低く、したがって比較的剛い。複合テープは、その強度が変形に対して高い機械的抵抗を示すので、湾曲した基板には良好に接着しない。このため、加熱要素が結合基板(支持体)から局所的にまたは完全に離脱することがあり、これは、電気的に発生された熱エネルギーの結合基板への伝達を低減する、さらには妨げる。
【0008】
さらに、湾曲表面を有する結合基板に結合された複合テープでは、基板が加熱されるときに、基板と共に複合テープの接着剤が加熱され、それにより軟化するので、テープが基板から離脱することがある。その結果、従来の複合テープの高い固有剛性により、軟化された接着剤の分裂が生じることがあり、これにより接着剤が結合基板から離脱する。さらに、従来の結合可能な加熱要素の構成の剛性は、ミラーとミラー取付部など、異なる結合基板どうしの結合の機械的な低温衝撃強度に関して好ましくない。
【0009】
特に、大きな湾曲基板表面の場合、さらに、(例えばミラー・ガラスと支持プレートとの)製造公差により、表面にわたって異なる間隙寸法が生じることがあり、しばしば全面での接着結合を妨げるという問題が生じる。これらの領域に、例えば雨水や結露など、液体または気体媒体(流体)が進入することがあり、これがさらに接着結合の強度を低減することがある。
【0010】
この影響は、特に、2空間方向で湾曲された表面を有する、より広い視野の一部片ミラー(広角ミラーまたは直近ミラー(close−proximity mirror))を有する自動車バックミラーの場合に問題となる。2次元でのそのような湾曲の場合、結合可能な加熱要素へのミラーの結合は、導体面構造が上に塗布される剛性の裏当て箔によって妨げられる。導体面は、比較的剛性の金属層、導電性コーティング材料、液体インク、または印刷インクから構成され、これらは、大きく伸長または湾曲された場合に破断することがあり、したがってこれらのシステムにおける電気接触が確実には保証されなくなるので、裏当て箔に加えて導体面も、湾曲基板への結合を妨げる要素である。
【0011】
現代の自動車サイドミラー構造において生じるさらなる問題は、結合可能な加熱要素に加えて、さらなる機能(例えば、ミラーのエレクトロクロミック調光)が自動車サイドミラーで実現されることであり、その実現も、構成要素の取付深さまたは全体厚さの一因となる。所要の機能構造によって厚さがより一層増加した、ミラー・ガラス自体と支持プレートとの間でのそのような厚い機能構造および結合構造により、自動車ミラーの設計における設計者の自由度が大幅に制限され、さらに、全体として自動車サイドミラーの重量が増加する。
【0012】
この状況の改善は、1つの平面要素において加熱要素の導電構造と接着テープとの両方を実現することによって達成されている。内部加熱可能であり、加熱機能を感圧接着と組み合わせるこの種の感圧接着平面要素が、独国特許出願第10310722A1号(特許文献1)に記載されている。しかし、この構成の欠点として、接着剤を加熱できるようにするために接着剤での導電成分の比率を増加させるにつれて、接着剤が感圧接着性を大きく失うことが判明している。さらに、この構成でも、やはり平面要素の不十分な可撓性が問題であり、したがって接着結合の信頼性が大きく損なわれる。これはさらに、結合による機械的、電気的、および熱的接触の減少をもたらし、したがって、利用することができる最大熱量が低減し、熱伝達がより難しくなる。このために、穿孔された、少なくとも実質的に2次元に延在する接触要素を備える接触層を有する平面要素を使用することが提案されている。平坦であり、穿孔された接触要素の設計により、接触要素は、可撓性、したがって高い破壊抵抗を有する。同時に、この接触要素は、平面要素の主延在域(2次元延在域、主延在平面)に平行に可撓性を有し、したがって、接触要素は、主延在域に対して横方向に作用する力が加わるとき、生じる機械的応力を受けても破断せず、移動可撓性をもつ。同時に、接触要素の少なくとも実質的に2次元の延在域は、電流を導通する加熱要素を有する接触領域の断面が、広範囲の加熱を保証するのに、したがって主要機能を保証するのに十分に大きいことを保証する。この特定の設計により、本発明の平面要素は、その可撓性を低減する任意の安定化支持フィルムを有する必要はない。したがって、支持体を有さないこの種の平面要素を用いて、所望の可撓性を得ることができる。
【0013】
しかし、これらの平面要素の好適でない特徴は、位置決め性が低いこと、および再位置決め性に欠けていることである。したがって、安定な結合を事前に形成せずにこの種の可撓性平面要素を基板と接触させるのは、非常に難しい。そのため、結合前に平面要素を基板上に正確に位置合わせすることは、簡単にはできない(低い位置決め性)。さらにまた、基板に結合された、支持体を有さない平面要素は、壊れやすい接触要素構造の損壊の危険を伴わずに基板から再び取り外すことはできず、したがってその位置を後から修正することはできない(再位置決め性の欠如)。
【0014】
再位置決め性の欠如は、とりわけ、固有安定性が低下したことに起因し、これは可撓性の急激な増加を伴う。加熱要素において、平面要素の損傷は、全体として、必然的にこの平面要素の導電構造の損傷にもつながり、その結果、その加熱力に悪影響が及ぼされることがあり、さらには加熱機能が完全に失われることもあるので、低い安定性は、従来の接着テープの場合よりも問題となる。
【0015】
平面要素の損傷は、特に、結合のために平面要素を準備する際に起こる。すなわち、例えば、保護フィルムの剥離中に平面要素の破損が生じることもある。この種の保護フィルムは、典型的には、保管中に平面要素の接着領域を覆って、保管状態での偶発的な結合を防止する。保管状態(保管形態)とは、結合可能な平面要素が、後で結合を行う前に、例えば個々の積層シートや巻上げロールなどの形態で保管されている、結合可能な平面要素の状態を表す。
【0016】
結合の直前に、保護フィルムが接着領域から剥離される。このために、保護フィルムからの平面要素の取外しを容易にするために、保護フィルムの表面は、典型的には接着性低減処理される。しかし、特に、支持体を有さない平面要素は、通常はできるだけ薄くされているので、そのような接着性の低減でさえ、実用上は、平面要素の損傷を確実に防止するのに十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】独国特許出願第10310722A1号
【特許文献2】独国特許出願第2948350A1号
【特許文献3】欧州特許出願第0307205A1号
【特許文献4】欧州特許出願第0512703A1号
【特許文献5】欧州特許出願第0852801A1号
【特許文献6】欧州特許出願第0435923A1号
【特許文献7】欧州特許出願第0311142A1号
【特許文献8】米国特許出願第4775778A号
【特許文献9】欧州特許出願第04712016号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】J. Meyer、「Polymer Engineering and Science」、13(1973)、pp.462-468
【非特許文献2】Donatas Satasによる「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand, New York 1989)
【非特許文献3】T.G.Fox、Bull.Am.Phys.Soc.1(1956)123
【非特許文献4】「Chemistry and Technology of UV and EB Formulation for Coatings, Inks and Paints」Vol.1, 1991, SITA, LondonにおけるSkelhorne「Electron Beam Processing」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明の目的は、これらの欠点をなくし、保護フィルムから損傷を受けずに取り外すことができ、また、結合前に容易に位置決め可能であり、しかしまた、厚さが薄い単純な構造を有し、したがって経済面および環境面の両方の観点から好適に製造することができる両面結合可能な平面要素を提供することである。特に、一目的は、後の結合強度に損なわずに保護フィルムに対して低い接着性を示す、改良された内部加熱可能な両面結合平面要素を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、驚くべきことに、当業者に予想されていなかった様式で、冒頭で特定されたタイプの平面要素であって、接触層の第2の面が、平面要素の前面を形成し、さらに、接触要素の切欠が、接触要素の厚さにわたって貫通して設計され、少なくとも第2の面の領域で実質的に接着剤のない状態で存在する平面要素によって実現された。
【0021】
接触層の第2の面が平面要素の前面を構成することにより、保管状態では、平面要素の前面に自己接着剤がせいぜいごくわずかしか存在しないことが保証される。さらに、接触要素の切欠が、この時点では実質的に接着剤のない状態で存在するので、すなわち切欠が、少なくとも平面要素の外側前面を形成する第2の面の表面の領域では自己接着剤を含まない、または自己接着剤をせいぜいわずかしか含まないので、前面にある接着剤の量が大幅に低減される。結果的に、切欠は、平面要素の前面で、実質的に接着剤のない状態で存在し、したがって平面要素の前面にある自己接着剤の量が低減される。これにより、結合が達成される前に、平面要素を基板と接触させて、平面要素を正確に位置合わせすることができる。さらに、保護フィルムに対する付着力が低減され、その結果、平面要素の機能を損なわずに、結合前に平面要素から保護フィルムを剥離することができる。
【0022】
さらに、貫通開口としての切欠の設計により、平面要素の両面結合のために、自己接着剤が接触要素の切欠を通って接触層の第1の面から第2の面に流れることができ、そこで基板に接触することができることが保証され、その結果、保管状態では実質的に接着剤のない平面要素の前面でさえ、通過した自己接着剤により、高い結合強度が保証される。
【0023】
接着剤のない切欠を設けられ、2つの面の一方のみに自己接着剤の層を有するシート状構造からなる、非接着層を有する両面結合可能な平面要素の一般的な原理も、それ自体、発明である(接着剤の層とは、接着剤を含み、平面要素を基板に接着接合するのに適合された任意の層である)。この上位の発明(すなわち、前面と裏面とを有し、それぞれ自己接着剤の層と機能層とを備える平面要素であって、機能層が、少なくとも実質的に2次元に延在し、切欠を穿設された設計であり、かつ第1の面と第2の面とを有し、機能層が、第1の面によって自己接着剤の層と接触し、機能層の第2の面が、平面要素の前面を形成し、機能層の切欠が、機能層の厚さにわたって貫通して設計され、少なくとも第2の面の領域で接着剤のない状態で存在する平面要素)に関連して、前述の平面要素は、それ自体、接触要素が非接着層として提供される特定の実施形態を形成する。したがって、本発明の加熱平面要素に関する特定の実施形態のさらなる特徴、ならびにその一般的な例および特定的な例は、上位の発明の発展形態を説明するものであり、上位の発明の概念を、本発明の平面要素の特定の特徴と組み合わせて(すなわち、加熱平面要素)実現することも、これらの特定の特徴を伴わずに(すなわち、一般的な非加熱平面要素)実現することもできる。例として、上位概念によれば、両面結合可能な平面要素は、接着剤のない切欠を設けられたシート状構造から構成された非接着性機能層(例えば、支持体)によって実現されることもある。この場合のシート状構造は、その2つの面の一方にのみ自己接着剤の層を有することがあり、シート状構造は、前記層内に少なくとも部分的に埋め込まれる。
【0024】
本発明を実現するために、内部加熱可能な自己接着剤がポジスタであると特に好ましい。ポジスタ(PTC要素)とは、その導電領域が、その電気抵抗に関して正の温度係数(PTC)を有する材料から構成される抵抗加熱要素である。したがって、ポジスタは、電流を導通し、その抵抗が温度と共に増加する材料であり、したがって高温よりも低温で効果的に電流を導通する。抵抗加熱要素(PTC要素)としてポジスタ挙動を有するこの種の材料を使用すると、そのような加熱要素に定電圧が印加されるときに、加熱要素の過熱が防止されるという利点があり、これは、動作温度が上昇するとき、加熱要素の抵抗が増加し、その結果、オームの法則に従って、抵抗の増加に比例して電流が減少し、全体の熱出力が減少し、加熱要素が再び冷えるからである。具体的な用途に応じて、温度を制限するために、外部調整システムの代わりに、またはそれに加えて、この種の自己調整システムが使用されることがある。
【0025】
さらに、上述の設計の1つまたは複数の特徴に加えて、自己接着剤が少なくとも1種の導電性フィラーを含むと有用である。このようにすると、特定の単純であり費用対効果の高い様式で、多くの用途に関して十分に高い加熱力を提供する導電性接着剤を得ることができる。ここで、導電性フィラーは、グラファイト、カーボンナノ粒子、およびカーボンブラック、特に導電性カーボンブラックから選択されると特に有利である。そのような組成物の利点は、これらのフィラーが、ポリマーマトリックスと特に良好な結合を形成することであり、その結果、この種の接着剤は、全体として高い粘着力を有し、したがって高い機械的な負荷耐性を有する。この文脈で特に驚くべきことは、そのような粒子を含み、したがって高い粘性を有する自己接着剤の流れ挙動が、全体として、この自己接着剤が接触要素の切欠を通過して所要の流路を進むのに依然として十分であることである。
【0026】
さらに、接触層の第1の面が、内部加熱可能な自己接着剤に少なくとも部分的に埋め込まれると有利である。これにより、平面要素上の接触層が、結合状態(主に、自己接着剤が切欠を通過して平面要素の前面に進んでおり、したがって接触要素を取り囲んでいる点で、保管状態とは異なる)でのみならず、保管状態でも既に固定されることが保証され、それにより、接触要素の偶発的な外れをより効果的に防止する。しかし、この設計でも、切欠が、少なくとも第2の面の領域で少なくとも実質的に接着剤のない状態存在することを保証すべきである。
【0027】
しかし、そうではなく、接触層の第1の面が、内部加熱可能な自己接着剤の面と少なくとも実質的に平らに接することもある。このようにすると、自己接着剤と平面要素の前面との間の距離を、できるだけ大きく選択することができるので、この実施形態は、低い粘性または中程度の粘性をもつ自己接着剤の場合に特に有利である。これは、保管中に、さらにはその前に自己接着剤が前面に向かって流れる危険を低減する。
【0028】
この場合、接触要素の厚さが、50μm以下、さらには20μm以下であると有利である。そのような厚さにすると、平面要素を結合するときに、自己接着剤が接触層を通って流れ、接触要素の切欠を完全に充填し、それにより最大の結合強度を提供することが保証される。
【0029】
さらに、切欠が、接触層の第1の面の面積の少なくとも25%、好ましくは接触層の第1の面の面積の50%よりも多く、さらには接触層の第1の面の75%よりも多くを占めると有利であることが判明している。このようにすると、自己接着剤用の通路の面積が、高い結合強度を実現にするのに十分に大きい。特に高い強度が必要とされない用途では、切欠は、より小さい面積を占めることもある。例えば、弱い機械的負荷しか受けない接続の場合、切欠は、接触層の第1の面の面積の10%のみを占めることがある。
【0030】
1つの特定の実施形態によれば、穿孔された接触要素が、ブリッジ状領域を有することがある。これは、接触層の可撓性を高め、したがって主延在平面での平面要素全体の可撓性(特に、ブリッジ状領域の向きに対して横方向)も高め、同時に、高い安定性が、特にブリッジ状領域の向きに平行に、または斜め方向で保証される。さらに、接触層のブリッジ状配置により、同様に細長い形状を有する切欠が提供することができるので、切欠を通過する自己接着剤に対して接触要素が及ぼす抵抗を低減することができ、それにより、結合時に自己接着剤が通過しやすくすることができる。
【0031】
結合中の自己接着剤の通過のさらなる改善は、ブリッジ状領域が、5mm以下、さらには1mm未満の幅を有する場合に達成される。これは、結合強度をさらに高める。
【0032】
さらに、穿孔された接触要素のブリッジ状領域が、分岐された櫛型構造または指型構造であると有利であることがある。この種の形状は、小さい切欠のみを用いて、機械的な特性を大きく損なうことなく、かつ層にわたる急激な電圧降下の可能性を高めることなく、発熱のために平面要素の実質的に全ての領域を最適に利用できるようにする。櫛型構造の場合、および指型構造(交差指型構造)の場合、個々の歯または指が、主ストランドから分岐する。この場合の主ストランドは、歯または指よりも大きい断面積を有することがあり、または同じ断面積を有することもある。櫛型構造と指型構造との相違は、櫛型構造の場合は、分岐した要素が主ストランドの同じ側に配設され、一方、指型構造の場合は、それらが異なる側から分岐することである。どちらの構造も、単一または複数の分岐を有してよく、かつ定形構造と不定構造とのどちらを有してもよく、接触層内部で接触要素が単一電極として設計されるときにも、接触要素が複数の電極として設計されるときにも採用することができる。
【0033】
最後に、本発明は、この種の平面要素を少なくとも1つの結合基板に接合させるための方法であって、最初に、接触層の第2の面が結合基板の表面の領域に接し、それにより緩いプリアセンブリを形成するように、平面要素を結合基板と接触させ、次いで、内部加熱可能な自己接着剤が、接触要素の切欠を通過して、切欠を少なくとも部分的に充填し、最後に、切欠を通過した内部加熱可能な自己接着剤によって、平面要素の前面が結合基板に結合される方法を提供する。
【0034】
この種の結合方法は、本発明の平面要素に特に適合されており、本発明の平面要素の構成を特定の様式で利用し、自己接着剤が、第2のステップで初めて平面要素の前面にわたり、したがって、平面要素のこの側が、結合の時点で初めて接着性となる。この方法の採用により、特に単純な結合方法が実現され、さらに、保管形態では片面のみで接着性を有する平面要素を、さらなる接着剤の塗布を必要とせずに両面で結合させることができることが保証される。
【0035】
本発明の方法の過程で、自己接着剤は、力の作用を受けて接触要素の切欠を通過し、したがって平面要素の前面に達する。原則的には、重力、界面力、または毛細管力による粘性自己接着剤の流通など、任意の適切な力が自己接着剤の通過を促すことがある。しかし、内部加熱可能な自己接着剤が接触要素の切欠を通過するように、平面要素と結合基板とから構成されたプリアセンブリを一体に圧迫し、それにより外力として作用する力を加えることによってこのプロセスを加速することが特に有利である。この代わりに、またはこれに加えて、自己接着剤の粘性を一時的に低下させることによって通過が改善されることがある。これは、内部加熱可能な自己接着剤が接触要素の切欠を通過するように、平面要素と結合基板とから構成されるプリアセンブリが加熱される場合に、特に単純な様式で実現することができる。
【0036】
別段の指示がない限り、個々の有利な実施形態は、任意に互いに組み合わせることができ、上述した有利な効果および他の効果を達成するために使用することができる。したがって、これらの特徴もまた、それ自体、独立請求項の特徴と共に特許保護可能であると考えられる。
【0037】
以下、本発明を例示する目的で、特定の所望の特性に応じてほぼ任意に互いに組み合わせることができる本発明の部分的態様の個々の構成要素のいくつかの代表的な例の説明を含めて、本発明を概略的に説明する。
【0038】
原則的には、本発明は、前面と裏面とを有する平面要素を提供する。本明細書の趣旨での平面要素は、特に、実質的に2次元の延在域を有する全ての一般的な適切な構造を含む。それらは、平面的な結合が可能であり、様々な実施形態を取ることがあり、特に、可撓性であり、接着シート、接着テープ、接着ラベル、または形抜きの形態である。用語「前面」および「裏面」は、平面要素の主延在域に平行な平面要素の2つの表面を表し、これらの用語の選択は、2つの面の絶対的な空間的配置を表すものではなく、平面要素の両側に位置するこれら2つの面を区別するためだけのものである。したがって、前面は、空間的には後側に位置決めされた平面要素の面を表すこともあり、このとき、それに応じて、裏面は、空間的には前側に位置決めされた平面要素の面を成す。
【0039】
本発明によれば、平面要素は、2つの異なる層、すなわち加熱層と接触層とを備える。層とは、特に、主延在域を画定する2つの他の空間方向よりも1つの空間方向で寸法がかなり小さい、均一な機能をもつ系の2次元配置である。この種の層は、コンパクトであり、さらには穿孔された設計のものであってよく、1つの材料から構成することができ、または、特に様々な材料が前記層の均一機能に寄与するときには、様々な材料から構成することもできる。層は、その表面延在域全体にわたって一定の厚さを有していても、異なる厚さを有していてもよい。さらに、当然、層が、2つ以上の単一機能を有することもある。
【0040】
加熱層は、平面要素を加熱するために構成された任意の層である。接触層は、電流を良く通す導体である任意の層であり、この層の補助により、電圧を加熱層に印加することができ、かつ/または電流を、加熱層の少なくとも部分領域を流すことができる。したがって、接触層は、外部給電ラインを平面要素に接続させる(接触電極機能)。
【0041】
接触層は、切欠を穿設された少なくとも実質的に2次元に延在する接触要素として設計される。接触要素は、特に、電流を導通する材料を備える要素であり、この要素の構造は、少なくとも部分領域内に電流を連続的に導通する。「少なくとも実質的に2次元に延在する」とは、その接触層を構成する部分領域が、平面的な配置で層の内部に存在し、その際、いくつかの部分領域は、この平面的な配置から突出することもできることを意味する。接触層は、一部片で形成されることも、多部片で形成されることもある。
【0042】
接触層は、加熱層と電流源または電圧源との間の導通接続である。この構成では、接触層は、加熱層の2つの電極接続(極)の一方として形成されることがあり、あるいは両方の電極接続を形成することもある。接触層が、加熱層の2つの電極接続の一方のみを構成する場合、加熱層を通して電流を流して加熱層を加熱するためには、第2の電極接続が必要である。この第2の電極接続は、本発明の平面要素の内部に形成される(例えば、追加の第2の可撓性接触層の形態で)ことがあり、あるいは、例えばガラスの表面上の金属層として(例えば、ミラーの銀層として)、2つの結合基板の一方の上に提供されることもある。
【0043】
接触層は、第1の面と第2の面とを有する。接触層の第1の面と接触層の第2の面とは、主延在域に平行に設けられた接触層の2つの面である。
【0044】
接触層は、その全域にわたっては閉じられておらず、穿孔されており、したがってこの層は、不連続であり、切欠(窪み)を有し、これらの切欠はまた、層の主延在域に垂直な方向に延在する。
【0045】
ここで、本発明において重要なのは、層自体が、全域にわたってはコンパクトではなく、接触要素の切欠が、接触要素の厚さにわたって貫通するように、すなわち層を通って延在するように設計されることである(貫通穴)。これらの貫通切欠に加えて、接触層は、適宜、貫通せず、層厚さの一部のみに制限された他の切欠を有することもある(例えば、より良い固定のため、または接触層の厚さを局所的に低減するための凹部)。
【0046】
切欠は、幅が均一である、または幅が変化する任意の形状、例えば定形または不定形であってよく、直立、傾斜、または湾曲形状の壁部を有することなどがある。切欠は、接触層内で異なる方向に延びることも、1つの特定の好ましい方向を有することもあり、したがって接触層は、少なくとも実質的に1つの空間的方向で延びる主延在域を有する。この様式では、接触層内で、したがって平面要素内でも、一方向で特に高い可撓性を達成することができ、機械的安定性および電気接触断面積に対する悪影響は最小限である。これは、例えば、一方向で非常に湾曲されて小さな曲率半径を有する円筒形表面に平面要素を貼着しなければならないときに、特に有用であることがある。
【0047】
本発明に関連するさらなる特徴として、切欠は、少なくとも第2の面の領域で実質的に接着剤のない状態で存在する。これは、それらの全域にわたって、したがって完全に接着剤のない切欠を含み、また、第2の面のごく近傍の小さな部分領域内でのみ接着剤を有さない切欠も含む。第2の面の領域内で実質的に接着剤のない切欠とは、第2の面の領域で、したがって平面要素の前面で、せいぜい少量の自己接着剤しか含まない、好ましくは自己接着剤を全く含まない切欠である。切欠が少量の自己接着剤を含む場合、この量は、どのような場合でも、この自己接着剤が平面要素の前面に対してせいぜい非常に弱い結合作用しか及ぼさず、好ましくはそこで切欠から出ないように、少なくなければならない。ここで、完全に接着剤のない切欠としては、充填されていない切欠だけでなく、非接着性物質、すなわち大きな感圧接着性も大きなホットメルト接着性も有さない物質で完全にまたは部分的に充填された切欠も含まれる。
【0048】
切欠は、接触層の表面延在域の任意の所望の比率を成すことがある。実用上の理由から、特に、接触層の第1の面の面積の少なくとも25%、好ましくは接触層の第1の面の面積の50%よりも多い、さらには接触層の第1の面の75%よりも多い面積分率が好適とみなされる。
【0049】
窪みの具体的な実施形態に関して、穿孔された接触要素は、例えば、断続領域として、あるいは折畳みまたは分岐ワイヤ構造としてなど、様々な形態を取ることがある。これは、接触要素がブリッジ状領域を有する構造も含む。接触要素の任意の部分領域は、一方向でのその寸法(当該のブリッジ状領域の長さ)が他の2つの方向よりもかなり大きく、さらに、ワイヤ形状の構造と異なり、第2の方向でのその寸法(当該のブリッジ状領域の幅)が、第3の方向でのその寸法(当該のブリッジ状領域の厚さ)よりも大きい場合に、ブリッジ状であるとみなされる。
【0050】
ブリッジ状領域の寸法は、原則的には任意に選択することができる。それらの幅について、5mm以下、さらには1mm未満の幅が好適であることが判明している。
【0051】
この種のブリッジ状領域の縁部領域は、定形または不定に成形されることがある。したがって、例えば、ブリッジ状領域は、平坦な長方形断面、円形断面、円環断面で形成されることがあり、さらには完全に不定形状を有することもある。
【0052】
ブリッジ状形態の接触要素の部分領域から、同様にブリッジ状形態の切欠を形成することができるが、これに関して他の実施形態が適切であることもある。さらに、接触要素のブリッジ状領域は、上位構造内に、例えば1回または複数回分岐された櫛型構造または指型構造内に存在することもある。
【0053】
さらなる適切な接触要素は、例えば、穿孔された金属箔、エキスパンドメタル・グリッド、ワイヤ・グリッド、金属メッシュ、または導電性不織布である。金属酸化物(例えば、インジウム・スズ酸化物)または固有導電性ポリマーなどの非金属導体も、それらが適切に構造化されているという条件で、本発明に従って使用することができる。平面要素の可撓性を改善するために、接触層は、50μm未満、好ましくは20μm未満、さらには10μm未満の平均厚さ、さらには最大厚さを有することが好ましい。
【0054】
電流を導通する接触要素の領域は、任意の所望の設計であってよく、例えば、(全ての領域またはいくつかの領域のみが)互いに導電接続していてもよく、あるいは接触要素を介して他の領域と導電接続しない、接触要素の個別領域としてそれぞれ存在してもよい。場合によっては、いくつかの領域を互いに導電接続し、他の領域をそれぞれ個別に存在させることもできる。これは、当然、加熱層を介する導電接続を除外しない。
【0055】
穿孔された接触要素が、穿孔された接触要素を介して互いに導電接続しない2つ以上の部分領域を有する場合、接触要素の内部で、加熱層の加熱効果に必要な両方の電気接点(電極または極)を実現することができ、平面要素以外の他の導電層をなくすことができ、かつ結合基板への平面要素の最終的な組立てを容易にする。
【0056】
しかし、特に、接触要素が、互いに導通接続せずに加熱層の2つの電極リード(極)として設計される2つの領域を備えるように構成することもできる。
【0057】
接触要素全体が完全に導通している場合、接触要素は、加熱層の2つの極の一方として使用され、この場合、電流は、加熱層を通って、基本的には主延在域に垂直な方向に流れ、一方、接触要素が両方の電極接続を表す構成の場合には、垂直な電流に加えて、またはその代わりに、主延在域内部で横方向の電流が生じる。
【0058】
さらに、平面要素の個々の部分区域それぞれに異なる電圧を印加することもでき、例えば、平面要素の領域内で電圧勾配を発生し、加熱出力を特定の要件に個別に適合させる。
【0059】
本発明の平面要素の内部で、接触層は、一方の側で、加熱層の上に配設され、接触層は、第1の面によって加熱層と接触し、加熱層と導電接続される。この構成では、接触層の他方の面、すなわち第2の面が、平面要素の前面を形成する。この特定の構成により、平面要素の前面は、接着性がない、またはせいぜいわずかしか接着性がないように設計され、それにより、保管状態でその前面を覆う保護シートへの平面要素の強い付着力を防止する。
【0060】
第1の面と加熱層との直接的な接触は、任意の所望の形態を取ることができる。すなわち、例えば、接触層の第1の面は、内部加熱可能な自己接着剤の一方の面と少なくとも実質的に平らに接することができ、それにより接触層は、どの部分領域においても自己接着剤内に埋め込まれず、単に接着剤に当接する。「少なくとも実質的に」とは、接触層と自己接着剤との接触領域が概して2次元形状であることを意味し、これは、全体の形状が平坦であるという条件の下で、接触領域が部分領域で局所的に高さプロファイルを有する可能性を除外しない。
【0061】
そうではなく、接触層の第1の面を、内部加熱可能な自己接着剤中に少なくとも部分的に埋め込むこともできる。埋込みとは、自己接着剤の層の外側界面よりも内側に接触層の部分領域を配置することを表し、接触層のこれらの部分領域は、2面以上で局所的に自己接着剤に接する。これは、同様に、接触層の第1の面が、接触領域の部分領域のみで、内部加熱可能な自己接着剤内に埋め込まれ、接触領域の残りの領域では接着剤に単に接することも包含する。
【0062】
したがって、加熱層が接触層の第1の面と接触し、それゆえ、これらの2つの層は、互いに直接的に、すなわち介在なしで接する。さらに、加熱層は、接触層の第1の面に導電接続する。接続すべき部分区域の抵抗と接続の接触抵抗とに起因する接続の全体の電気抵抗が、残りの導電領域および接点の全体抵抗とせいぜい同程度であるときに、接続は特に「導電接続」と呼ばれる。接触層の第2の面は、平面要素の2つの外面の一方、すなわち平面要素の前面を形成する。
【0063】
加熱層は、電流が通過するときに熱くなる導体として設計された内部加熱可能な自己接着剤から構成される。この場合の自己接着剤は、例外なく、感圧接着剤および/またはホットメルト接着剤に基づく全ての接着剤、すなわちそれ自体、基板への永久結合が可能である接着剤を含む。「に基づく」または「をベースとする」とは、この場合、この接着剤システムの技術的特性が、この接着剤またはこれらの接着剤成分(ベース・ポリマーとも呼ばれる)の基本特性に少なくとも大部分依存することを表し、当然、接着剤システム中での改質補助剤または添加剤、あるいはさらなるポリマー接着剤の使用によってこれらの特性に及ぼされるさらなる影響を除外しない。
【0064】
感圧接着剤(PSA)は、比較的弱い印加圧力の下でさえ室温で基板への永久結合が可能な接着剤である。対照的に、ホットメルト接着剤は、高温でのみ基板と永久結合する接着剤であり、得られる結合は、後で結合が室温まで冷却されても維持される。PSAとホットメルトとの結合性はどちらも、それらの接着特性に起因する。
【0065】
接着とは、典型的には、互いに接触した2つの相が、それらの界面で、そこで生じる分子間相互作用により一体保持されるようにする物理的効果を表す。したがって、接着は、基板表面への接着剤の貼着を規定し、粘着性および結合強度として定義することができる。特定の様式で接着剤の接着性に影響を及ぼすために、接着剤に可塑剤および/または結合強度向上樹脂(粘着付与剤と呼ばれる)を添加することが一般的である。
【0066】
粘着とは、典型的には、分子間および/または分子内相互作用によって基板または組成物を内部的に一体保持する物理的効果を表す。したがって、粘着力が、接着剤の粘稠性および流動性を規定し、これらは、例えば、粘性および保持力として定義することができる。特定の様式で接着剤の粘着力を増加させるために、しばしば追加の架橋が行われ、このために、反応性(したがって架橋可能な)成分または他の化学架橋剤が接着剤に添加される、かつ/または接着剤が、後処理中に化学線(高エネルギー)放射にさらされる。
【0067】
感圧接着剤の技術的特性は、主に、接着特性と粘着特性との関係によって決定される。したがって、いくつかの用途では、例えば、使用される接着剤が非常に高い粘着力をもつ、すなわち特に強い内部一体保持をもたらすことが重要であり、他の用途では、特に高い接着性が必要とされる。
【0068】
感圧接着剤の使用により、例えば平面要素の加熱など他の操作ステップを必要とせずに、特に単純な結合が可能となり、そのため、この種の自己接着剤は、非常に不定の幾何形状を有する基板または感熱性を有する基板の場合にも使用することができる。ホットメルト接着剤を使用すると、特に高い結合強度を実現することができ、したがって、これらのシステムは、特に、結合が強い機械的負荷を受ける場合に採用される。
【0069】
さらに、加熱層の自己接着剤は、内部加熱可能な設計である。内部加熱可能な層は、それ自体、電気的に加熱可能な任意の層である。すなわち、この層は、層内にさらなる構成要素または部分を有さずに、電流が層を通過するとき、または電圧が層に印加されるときに自ら熱を生成することができ、電流または電圧が、交流電流または交流電圧であるか、あるいは直流電流または直流電圧であるかは重要でない。
【0070】
加熱層として、原則的には、この自己接着剤を通って流れる電流を実質的に分解せずに導通する全ての自己接着剤を使用することができる。加熱層内部の熱は、好ましくは、電気抵抗によって生じる電圧の降下から、この層自体の中で発生され、しかし、加熱はまた、他の効果に基づいて、例えば別の電熱変換器または電気的に開始される発熱化学反応によって実現されることもある。本発明によれば、そのような平面要素は、1回または複数回使用できるように設計することができる。同様に、発熱プロセスは、1回または複数回実施可能にすることができる。
【0071】
この種の加熱層は、主延在域に垂直に、1mm未満の(平均)厚さ、好ましくは10μm〜400μmの範囲内の厚さ、より好ましくは20μm〜200μmの範囲内の厚さを有することがある。このような加熱層の設計は、加熱層が、一方で、十分に高い加熱力を提供するのに十分に厚く、他方で、加熱層内部での高速の熱伝導、ならびに可撓性および粘着力に関して良好な機械的特性を保証するのに十分に薄いので、最適な特性を保証する。抵抗加熱器として使用される層は、好ましい場合には、一方で、層を加熱できるように十分に高く、しかし他方で、層を通る電流を確立するのに十分に低い電気抵抗を有することがある。
【0072】
また、この加熱層は、ポジスタ特性を有することもあり、すなわち、その電気抵抗に関して正の温度係数を有し、したがってPTC効果を示すことがある。その正の温度係数および実効抵抗に関して、層は、好ましくは、特定の動作電圧および特定の動作電流についてPTC効果による加熱層内部での熱の発生が制限されるように設計され、したがって、層は、熱の発生を自己調整し、特に、規定の最大温度レベルを超えない。これにより、平面要素の過熱を防止できるようになる。
【0073】
自己接着剤として、導電性材料として少なくとも1種の導電性フィラーを含むPSAまたはホットメルト接着剤を使用することが好ましい。導電性フィラーは、それ自体(すなわち、自己接着剤なしで)電流を導通する、あるいは自己接着剤との混合物の形態でのみ電流を導通する自己接着剤への混和物である。
【0074】
フィラーとして、原則的には、対象の自己接着剤と適合する全ての適切なフィラーを使用することができる。特に、この趣旨で、グラファイトおよびカーボンブラック、特に導電性カーボンブラック(例えば、Degussa社製のPrintex(登録商標)XE)、ならびにそれらの任意の所望の組合せを含む群から選択されるフィラーが使用される。加えて、または代わりに、好ましくは、他のカーボンベース・フィラー、特にナノスケールである、すなわち、少なくとも1つの空間的次元で、500nm以下、好ましくは200nm未満、さらには50nm未満の大きさを有するフィラーを使用することもでき、例としては、カーボンナノチューブ(例えば、Ahwahnee社製のCarbon NanotubesまたはHyperion Catalysis社製のCarbon Nanotube Masterbatches)、カーボンナノファイバ、フラーレンなどのカーボンナノ粒子である。
【0075】
有利には、フィラーは、自己接着剤中のフィラーの分率が、自己接着剤での十分な導電率を保証するのに十分に大きく、しかし他方で、自己接着剤の機械的な性質に対して悪影響をごくわずかしか及ぼさないように十分に低いような量で使用される。さらに、異なる種類のフィラーの組合せも有利となることがあり、特にカーボンナノチューブとカーボンブラックまたはグラファイトとの組合せの場合に、非常に低いフィラー充填率で十分な導電特性(例えば、ポジスタ特性)を実現できる。
【0076】
さらに、フィラーは、表面修飾されて使用されることもある。これにより、自己接着剤の特定の特性に特定の影響を及ぼすことができるようになり、例えば、自己接着剤中のカーボンナノチューブまたはカーボンブラックの分散性を改善する。PTC効果を高めるために、例えば、カーボンブラック粒子などの導電性フィラーの表面が、ニッケル、銀、または金などの金属で、シランで、またはホルムアミドで、部分的にまたは完全に覆われることがある。
【0077】
導電率に影響する、したがって達成可能な温度および加熱速度にも影響する因子には、導電性フィラーの充填率、すなわち自己接着剤中での導電性フィラーの質量分率が含まれる。充填率を増すことによって、より高い導電率、場合によってはより高い温度も実現することができる。したがって、自己接着剤の電気加熱可能性の効果の大きさは、充填率によって決定されることがある。充填率は、有利には、1重量%〜60重量%の間である。5重量%〜30重量%の間のフィラーを使用することが非常に好ましい。
【0078】
このようにすると、一方で、(自己接着剤を通って電流が流れるように)十分に高い導電率を有し、かつ同時に、(抵抗での電圧降下により、顕著な発熱が生じるように)十分に低い導電率を有する自己接着剤を実現することができ、それにより、これらの接着剤は、全体としては導電加熱組成物として適しており、しかし他方で、この自己接着剤は、結合強度を保証するために高い接着剤分率を有する。さらに、自己接着剤の導電率、したがって加熱可能性は、そのベース・ポリマーにも依存する。
【0079】
導電性自己接着剤を得るために、導電性フィラーを、重合前および/または重合中に自己接着剤のモノマーに混和することができ、かつ/または重合の終了後に初めてポリマーと混合することができる。好ましくは、導電性フィラーは、重合後に、自己接着剤のベース・ポリマーの溶融物に添加される。
【0080】
特に、自己接着剤が、ホットメルト・システムとして溶融物から本発明の平面要素に塗布されるとき、導電性フィラーが、溶融物中に直接導入されることが好ましい。この場合、本発明の趣旨では、フィラーの均質な組込みが望ましい。自己接着剤中でのフィラーの均質な分布は、2軸スクリュー押出機、連続混練機(例えば、Buss捏和機)、または遊星ローラ押出機内で混練することによって実現される。この操作の1つの利点は、個々のフィラーによって製造プロセスがごく短時間しか汚染されないこと、および溶媒を回避できることである。
【0081】
自己接着剤がポジスタ特性も有する場合、原則的に、適切な接着特性を有し、かつPTC効果を示す、すなわちポジスタ挙動を有する全てのポリマーを使用することができる。PTC効果の発生および大きさは、ネットワークの形成に依存し、例えば、導電性フィラー自体が凝集形態であるか否かに依存する。ここで、PTC効果は、とりわけ、自己接着剤のポリマー成分中での配向を含む因子によって補助されることがあり、配向は、例えば物理的特性および/または高分子の向きに関して異方性を導入することによって製造プロセス中に導入される。
【0082】
この種の接着結合可能な加熱要素で使用されるポジスタは、一般に、カーボンブラックを含有する部分結晶性の熱可塑性物質、例えばポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、またはテトラフルオロエチレンなどである。現況技術は、独国特許出願第2948350A1号(特許文献2)、欧州特許出願第0307205A1号(特許文献3)、欧州特許出願第0512703A1号(特許文献4)、および欧州特許出願第0852801A1号(特許文献5)に詳細に説明されており、それらの技術的な教示を明示的に本明細書に組み込む。ミラー加熱用途では、この種のポジスタは、連続導体面にインクの形態で塗布することができ、連続導体面は、電気接触電極として働き、典型的には75μm〜250μmの厚さを有する別個の裏当て箔に設けられる。インク中に含有される溶剤は、後の乾燥ステップで除去される。そのようなインクは、欧州特許出願第0435923A1号(特許文献6)に詳細に説明されている。
【0083】
導電性フィラーを含むポジスタ特性を有する自己接着剤が使用されるとき、多相システム、特にPTC効果が生じる温度範囲内で少なくとも1つの相が体積膨張する多相システムを使用することが有利であることが分かっており、この体積膨張は、加熱により生じ、現在一般的に認識される科学的な説明によれば、少なくともある程度はポジスタ挙動に影響を与える(J. Meyer、「Polymer Engineering and Science」、13(1973)、pp.462-468(非特許文献1)参照)。本発明の趣旨では、多相システムとは、導電性フィラーに加えて1種または複数種のさらなるフィラーを有するポリマーまたはポリマーブレンドに基づく自己接着剤を含むものと解釈される。
【0084】
この文脈で、部分結晶性ポリマーを有する自己接着剤の使用が特に有利であることが判明している。使用される部分結晶性ポリマー・システムは、単相システムであっても多相システムであってもよく、ホモポリマーのみならず、コポリマー、特に部分結晶性ブロックコポリマーであってもよい。部分結晶性ポリマーは、それ自体、ベース・ポリマーの一部であってよく、あるいは付加剤であってもよい。そのような部分結晶性ポリマーの結晶性の部分領域は、ポリマーマトリックスが軟化されるとき、その非晶質領域よりも熱膨張が大きい。
【0085】
加熱層内でのホットメルトおよび/またはPSAは、好ましくは、少なくとも30重量%の部分結晶性ポリマーを含み、自己接着剤中で少なくとも50重量%の部分結晶性ポリマー分率がさらに良い。特にホットメルト接着剤では、部分結晶性ポリマーの分率が増すにつれて、PTC効果の達成に対する適正が予想外に急激に高まることが判明している。対照的に、PSAは、部分結晶の分率が増すにつれて、それらの感圧接着性を失い、したがって、PSAを使用するとき、依然として十分に高い感圧接着性を保証するために、ホットメルトの場合よりも部分結晶性ポリマーの分率を低く保つべきである。
【0086】
したがって、ホットメルト接着剤は、PTC効果の利用に関して、予想以上に良く適している。この文脈で、本発明の趣旨で、自己接着剤として特に有利であることが判明しているのは、接着剤のベース・ポリマー中に100重量%存在する、または接着剤中に少なくともほぼ100重量%存在する部分結晶性ポリマーを含むホットメルト接着剤である。
【0087】
自己接着剤としてのホットメルト接着剤および/または感圧接着剤において、特に有利な部分結晶性ポリマーは、結晶化度が20%よりも大きい、さらには40%よりも大きいものである。結晶化度は、動的示差熱測定(Differential Scanning Calorimetry;DSC)を使って決定することができる。
【0088】
したがって、自己接着剤として、部分結晶性の熱可塑性物質の範囲内では、ポリオレフィン(例えば、低濃度ポリエチレン)、またはポリオレフィンのコポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレンアクリル酸(EAA)、エチレンメタクリル酸(EMAA)、エチレンエチルアクリレート、またはエチレンブチルアクリレート)、アイオノマー、ポリアミド、および/またはそれらのコポリマーを使用することができる。十分に顕著なPTC効果と共に、これらの物質は、特に有利なホットメルト接着特性も有し、したがって、ホットメルト接着剤に基づく自己接着剤におけるベース・ポリマーとして使用することができる。
【0089】
さらに、部分結晶性の熱可塑性物質の範囲内では、酸で修飾された(例えば、マレイン酸または無水マレイン酸を有する)ポリオレフィン、またはそれらのコポリマーが好ましく、この理由は、例えばカーボンブラックやカーボンナノチューブなどの導電性フィラーとの適合性が特に良いこと、さらに、これらのポリマーが使用されるとき、特に簡単にポリマーマトリックス内でフィラーを均質に分散させることができることである。
【0090】
使用される非常に好ましいブロックコポリマーは、例えば、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー)、またはSEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー)などのスチレンブロックコポリマーである。
【0091】
また、加熱中に溶融することによってPTC効果を支援するポリマーまたは無機フィラーの添加も有利である。これらは、例えば、高結晶性のポリオレフィンワックスまたはイオン液体(低融点金属塩)であってよい。また、フィラーの融点の選択により、ポジスタ挙動(PTC効果)が生じる温度を調節できる。
【0092】
以下の本文で、単に例として、原則的には本発明に従って採用することができる自己接着剤のさらなる典型的な例を提示するが、この列挙は限定的なものではない。
【0093】
したがって、第1に、原則的には、全ての一般的な適切な感圧接着剤(PSA)が、加熱層の自己接着剤としての適性を有する。適切なPSAは、原則的には、適切な感圧接着特性を有する全てのPSAシステム、すなわち感圧接着剤システムを含む。特に、PSAを調製するためのモノマーは、得られるポリマーを室温またはより高温でPSAとして使用することができるように選択される。
【0094】
接着剤は、本発明の趣旨では、Donatas Satasによる「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(van Nostrand, New York 1989)(非特許文献2)に従う感圧接着特性を有する場合に、感圧接着剤である。
【0095】
PSAに好ましいT≦25℃のポリマー・ガラス転移温度Tを実現するために、典型的には、モノマーおよびモノマー混合物の定量的組成は、それらが、Fox(T.G.Fox、Bull.Am.Phys.Soc.1(1956)123(非特許文献3)参照)によって提示される式と同様に振る舞うように選択され、したがって、得られるポリマーのガラス転移温度Tに関する所望の値は、
【0096】
【数1】

によって与えられる。この式で、nは、使用されるモノマーの通し番号を表し、wは、当該のモノマーnの質量分率(重量%)を表し、Tg,nは、当該のモノマーnのホモポリマーの当該のガラス転移温度を単位Kで表す。
【0097】
したがって、自己接着剤に適したPSAの例は、アクリレートおよび/またはメタクリレート、シリコーン、天然ゴム、および/または合成ゴムに基づくPSAである。この種のPSAは、平面要素の接着特性を、広範囲で制御することができ、したがって、例えば特定の基板または周囲条件に関して、形成すべき結合の具体的な状況に特化して調整することができるという利点を提供する。
【0098】
したがって、特に老化安定性をもち、それゆえ長期にわたって本発明の平面要素の反復加熱操作に耐えることができるので、アクリル酸および/またはメタクリル酸に基づくPSA、および/または前述の化合物のエステルに基づくPSA、あるいは水素化された天然または合成ゴムに基づくPSAを使用することができる。
【0099】
特に、例えば遊離基添加重合によって得ることができ、一般式CH=C(R(COOR))(ここで、Rは、HまたはCH基であり、Rは、Hであるか、または飽和、非分岐および分岐、置換および非置換C〜C30アクリル基からなる群から選択される)をもつ少なくとも1種のアクリルモノマーに少なくとも部分的に基づくアクリレートPSAが適している。少なくとも1種のアクリルモノマーが、PSA中で少なくとも50重量%の質量分率を有するべきである。
【0100】
1つの特に有利な実施形態によれば、さらに、以下のポリマーを使用することができる。
(a1)一般式CH=C(R)(COOR2’)(Rは、HまたはCH基であり、R2’は、飽和、非分岐および分岐、置換および非置換C〜C20アクリル基からなる群から選択される)をもつ少なくとも1種のアクリルモノマーに少なくとも部分的に基づくポリマー。
(a2)少なくとも1種のアクリルモノマーと重合可能なコモノマーであって、特に、官能基を有するビニル化合物、無水マレイン酸、スチレン、スチレン化合物、酢酸ビニル、アクリルアミド、および二重結合で官能化される光開始剤から選択することができるコモノマーに少なくとも部分的に基づくポリマー。
【0101】
好ましくは、少なくとも1つのアクリルモノマー(a1)は、ここで、65重量%から100重量%の質量分率を有し、少なくとも1つのコモノマー(a2)は、自己接着剤中で0重量%〜35重量%の質量分率を有する。
【0102】
さらに、800000g/mol以下の自己接着剤の平均分子量M(重量平均)が、特にPSAの所望の機械的特性に関して有利であることが分かっている。
【0103】
さらなる実施形態によれば、自己接着剤は、天然または合成ゴム組成物を含む、またはそれに基づくこともある。天然ゴムを含む自己接着剤に関して、天然ゴムは、自由に選択可能な分子量に分解され、その間またはその後、導電性フィラーを添加される。
【0104】
また、このための1つの特定のPSA実施形態として、EVA(エチレン酢酸ビニル)またはポリオレフィン、およびそれらのコポリマー、特にブロックコポリマーなど、部分結晶性ポリマーを自己接着剤として使用することもでき、または自己接着剤に添加することもできる。特に、PSAとしての使用の場合、これらの接着剤システムは、結晶溶融温度を超えたときに内部に生じる結晶相の体積の増加により、PTC効果をさらに補助する。
【0105】
また、アクリルエステルおよびメタクリルエステルを含む一般式CH=C(R)(COOR2’’)(R2’’基は、飽和、非分岐および分岐、置換および非置換C〜C14アクリル基、特にC〜Cアクリル基からなる群から選択される)をもつアクリルモノマーまたはメタクリルモノマーを使用することも好ましい。特定の例は、このメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、およびそれらの分岐異性体、例として、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、またはイソオクチルメタクリレートであり、この列挙は限定する意図のものではない。
【0106】
使用することができるさらなる化合物クラスは、一般式CH=C(R)(COOR2’’’) (R2’’’基は、少なくとも6つのC原子を有する架橋および非架橋シクロアルキル基の群から選択される)をもつ単官能アクリレートおよび/またはメタクリレートである。シクロアルキル基は、例えばC〜Cアルキル基、ハロゲン原子、またはシアノ基によって置換されることもある。特定の例は、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、および3,5−ジメチルアダマンチルアクリレートである。
【0107】
1つの好ましい処置では、アクリルモノマーおよび/またはコモノマーが使用され、これらは、1つまたは複数の置換基、特に極性置換基を含み、例としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、水酸基、ラクタム基、ラクトン基、N置換アミド基、N置換アミン基、カルバメート基、エポキシ基、チオール基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン基、およびエーテル基である。
【0108】
アクリルモノマー(a1)としては、以下の群から選択されるモノマーが非常に有利に適している。すなわち、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘプチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、および3,5−ジメチルアダマンチルアクリレートを含む置換および非置換化合物。
【0109】
同様に、コモノマー(a2)としては、一重または二重N−アルキル置換アミド、特にアクリルアミドなど適度に塩基性のコモノマーが適している。ここで、具体的な例は、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N−(エトキシメチル)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドであり、この列挙も包括的なものではない。
【0110】
コモノマー(a2)のさらに好ましい例は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、無水マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、グリセリジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルメタクリレート、グリセリルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、酢酸ビニル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、トリクロロアクリル酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、ジメチルアクリル酸であり、この列挙は包括的なものではない。
【0111】
さらなる好ましい処置では、ビニル化合物、特に、ビニルエステル、ビニルエチル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、α位置で芳香環および複素環を有するビニル化合物が、コモノマー(a2)として使用され、挙げることができる例としては、排他的にではなく、例えば、ビニルアセテート、ビニルホルムアミド、ビニルピリジン、エチルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、およびアクリロニトリルなどである。
【0112】
特に有利には、少なくとも1つのコモノマー(a2)は、共重合可能な二重結合を有する光開始剤であってよく、特に、ノリッシュ(Norrish)I型の光開始剤またはノリッシュII型の光開始剤、ベンゾインアクリレート、またはアクリル化ベンゾフェノンを含む群から選択される。
【0113】
さらなる好ましい処置では、上述したコモノマー(a2)が、高い静的ガラス転移温度を有する追加のモノマーと混和される。適切なそのような追加のモノマーは、例えばスチレンなど芳香族ビニル化合物を含み、この場合、好ましくは、芳香環は、C〜C18単位から構成され、また、ヘテロ原子を含むこともできる。特に好ましい例は、4−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド、メチルスチレン、3,4−ジメトキシスチレン、4−ビニル安息香酸、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、tert−ブチルフェニルアクリレート、tert−ブチルフェニルメタクリレート、4−ビフェニルアクリレート、および4−ビフェニルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、および2−ナフチルメタクリレート、ならびにこれらのモノマーの混合物であり、この列挙は、やはり包括的なものではない。
【0114】
PSAの代わりに、またはPSAに加えて、本発明の平面要素は、自己接着剤に関してホットメルト接着剤を含むことがある。適切なホットメルト接着剤は、原則的には、適切なホットメルト接着特性を有する全てのホットメルト接着剤システム、すなわちホットメルト粘着性を有するシステムを含む。本発明の目的でのホットメルト粘着性を有する平面要素は、本発明の平面要素であり、溶融形態で基板に塗布し、その後、冷却した後、ASTM D 3330−04(結合基板上で300mm/分の除去速度を有する)に従った室温での結合強度が、1N/cmよりも大きく、特に3N/cmよりも大きく、さらには5N/cmよりも大きい。
【0115】
使用することができるホットメルト接着剤は、全ての一般的な適切なホットメルト接着剤であり、例は、合成ゴム、熱可塑性材料、改質剤樹脂を有するエラストマー、アクリル酸誘導体ビニルコポリマー、およびアクリレート含有ブロックコポリマーに基づくものである。
【0116】
これらの接着剤のうち、有利であることが判明しているものは、特に、ポリオレフィンおよびポリオレフィンのコポリマー、ならびにそれらの酸で修飾された誘導体、アイオノマー、ポリアミドおよびそれらのコポリマー、ならびにスチレンブロックコポリマーなどのブロックコポリマーを含む群からのものであり、最初に、上述した部分結晶性の接着剤に言及でき、これらは当然、自己接着剤に関して採用することもできる。この種の接着剤システムにより、特に広範囲で、高い結合強度と共に、平面要素の接着特性を制御することができ、したがってそれらは、達成すべき結合の具体的な状況に特化して調整することができる。
【0117】
さらに、これらおよび他のPSAおよびホットメルトは、それらの特性をさらに適合させるために改質可能である。したがって、本発明の平面要素に関して使用される自己接着剤は、典型的にはさらに架橋され、この狙いは、高い架橋度を実現することであり、高い架橋度は、特に、とりわけPTC効果を高める効果を有し(欧州特許出願第0311142A1号(特許文献7)および米国特許出願第4775778A号(特許文献8)参照)、したがって自己接着剤に特に適する。また、架橋は、自己接着剤の融点よりも高い温度で時折観察されるNTC(負の温度係数)効果の影響をなくす、または低減する。
【0118】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、自己接着剤のベース・ポリマーは、好ましくは、少なくとも35%、特に60%よりも大きいゲル値に対応する架橋度を有する。この場合のゲル値は、ベース・ポリマーの可溶部分と不溶部分との和に対する、適切な溶媒(例えば、トルエンまたはキシレン)中で可溶でないベース・ポリマーの部分の割合である。
【0119】
高い架橋度は、例えば、電子ビームを用いた架橋ステップで得ることができる。採用することができる典型的な照射機器は、電子ビーム加速器であるという条件の下で、リニアカソード・システム、走査システム(スキャナ・システム)、またはセグメント化カソード・システム(segmented cathode system)を含む。現況技術の包括的な説明および最も重要なプロセス・パラメータは、「Chemistry and Technology of UV and EB Formulation for Coatings, Inks and Paints」Vol.1, 1991, SITA, LondonにおけるSkelhorne「Electron Beam Processing」(非特許文献4)で見られる。典型的な加速電圧は、50kV〜500kVの範囲内、好ましくは80kV〜300kVの範囲内にある。採用される散乱線量は、5kGy〜150kGy、特に20kGy〜100kGyの範囲内である。また、高エネルギー照射を可能にする他のプロセスを使用することもできる。
【0120】
さらに、本発明によれば、架橋度によって導電率、したがって熱的加熱を変化させることができる。架橋反応で作用する電子ビーム線量を増加する(したがって、架橋度を高める)ことによって、導電率を高めることができ、したがって、平面要素の加熱層を通る電流が一定である場合、自己接着剤の達成可能温度が上昇する。同様に、架橋度によって自己接着剤のポジスタ挙動を制御することができる。
【0121】
さらに、架橋反応に必要な放射線量を低減するために、自己接着剤に架橋剤および/または架橋促進剤、特に熱または電子ビームによって励起可能なものを混和することもできる。電子ビーム架橋に適した架橋剤は、例えば、二官能または多官能アクリレートまたはメタクリレート、またはトリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートを含む。混和される熱により活性可能な架橋剤は、好ましくは、二官能または多官能エポキシド、水酸化物、イソシアネート、またはシランである。
【0122】
自己接着剤は、当然、さらなる配合成分および/または付加剤、例えば、補助剤、顔料、レオロジー添加剤、接着促進添加剤、可塑剤、樹脂、エラストマー、老化防止剤(酸化防止剤)、光安定剤、UV吸収剤、ならびに他の補助剤および添加剤を含み、例としては、乾燥剤(例えば、分子ふるいゼオライトまたは酸化カルシウム)、流動剤および流動制御剤、湿潤剤、例えば表面活性剤または触媒、ならびに熱伝導性フィラー、蓄熱性フィラー、または熱によって解放される、もしくはその解放が熱によって支援される付加剤である。
【0123】
使用することができる補助剤は、全て微細に粉砕された固体添加剤であり、例えば、チョーク、カルボン酸マグネシウム、炭酸亜鉛、カオリン、硫酸バリウム、二酸化チタン、または酸化カルシウムなどである。さらなる例は、タルク、マイカ、シリカ、ケイ酸塩、または酸化亜鉛である。当然、上記の物質の混合物を使用することもできる。
【0124】
採用される顔料は、性質上、有機または無機であってよい。全ての種類の有機または無機着色顔料が適切であり、例としては、光安定性およびUV安定性を改良するための二酸化チタンなどの白色顔料、または金属顔料である。
【0125】
レオロジー添加剤の例は、フュームドシリカ、フィロシリケート(例えば、ベントナイト)、高分子量ポリアミド粉末、またはひまし油誘導体に基づく粉末である。
【0126】
接着促進添加剤の例としては、ポリアミド、エポキシド、またはシランの群からの物質を挙げられる。
【0127】
接着力を向上させるための可塑剤の例は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ホスホン酸エステル、アジピン酸エステル、および他の非環式ジカルボン酸のエステル、脂肪酸エステル、ヒドロキシカルボン酸エステル、フェノールのアルキルスルホン酸エステル、脂肪族、シクロ脂肪族、および芳香族鉱物油、炭化水素、液体または半固体ゴム(例えば、ニトリルゴムまたはポリイソプレンゴム)、ブテンおよび/またはイソブテンの液体または半固体ポリマー、アクリル酸エステル、ポリビニルエステル、また、粘着化樹脂のベースともなる原料をベースとする液体樹脂および可塑剤樹脂、羊毛脂および他のワックス、シリコーン、ならびにポリエステルやポリウレタンなどのポリマー可塑剤である。
【0128】
熱によって解放される、またはその解放が熱によって支援される付加剤は、活性物質を含むシステムであり、活性物質は、熱にさらすことで解放または活性化され、それにより、この活性物質の制御された送達を可能にする。この文脈での適切な活性物質は、熱解放または活性化の際に特定の作用を生じる任意の物質であり、例えば、色素、医療または美容活性物質、あるいは雷管(起爆剤)である。その作用は、例えば、物質の解放によって始まり(局所適用可能な活性物質の場合など)、または熱的活性化、例えば熱的に開始される化学反応(例えば、分子転位、架橋反応、または分解)、または熱的に開始される物理プロセス(例えば、吸着/脱着または相遷移)の際に始まる。熱によって解放することができる付加剤は、例えば、溶融可能マトリックス内にカプセル化された局所適用可能な医療活性物質であってよい。
【0129】
例えば、補助剤および可塑剤など、さらなる成分を有する接着剤の配合も、現況技術である。
【0130】
技術的特性を最適化するために、本発明の自己接着剤に樹脂を混和することができる。添加することができる粘着化樹脂(結合強度向上樹脂)は、文献に記載されている例外なく全ての知られている粘着化樹脂を含む。代表的なものは、ピネン樹脂、インデン樹脂、およびロジン、それらの不均化、水素化、重合化、およびエステル化誘導体および塩、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂およびテルペンフェノール樹脂、ならびにC〜Cおよび他の炭化水素樹脂である。得られる接着剤の特性を要件に応じて調節するために、これらおよびさらなる樹脂の任意の所望の組合せを使用することができる。一般に、対応するベース・ポリマーと適合する(可溶である)全ての樹脂を使用することができる。特に、全ての脂肪族、芳香族、およびアルキル芳香族炭化水素樹脂、純粋なモノマーに基づく炭化水素樹脂、水素化された炭化水素樹脂、官能性炭化水素樹脂、および天然樹脂を挙げることができる。1つの好ましい形態は、長期にわたってさえ導電率および加熱可能性が低下しない樹脂を使用する。
【0131】
平面要素のさらなる有利な実施形態は、層の少なくとも1つに蓄熱性フィラーを添加することによって実現することができる。蓄熱性フィラーは、この場合、高い熱容量、特に0.7J/gKよりも高い熱容量を有する任意のフィラーを意味する。このようにすると、これらの物質の熱緩衝効果により、加熱時に均一なプロファイルを実現することができ、また、活性発熱プロセスの終了後に、長く均一な熱の提供を実現することもできる。有利に使用することができる高い熱容量を有するフィラーは、例えば、アルミニウム、ベリリウム、ホウ素、カルシウム、鉄、グラファイト、カリウム、銅、マグネシウム、リン、または前述の物質の化合物、特に、酸化アルミニウムおよび塩化アルミニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸銅、磁鉄鉱、赤鉄鋼、炭酸マグネシウムおよび塩化マグネシウム、塩化リンまたは酸化リンを含む(また、雷管の場合のカリウムまたはリンなど、これらの物質は、平面要素内部のさらなる機能をさらに実現することができる)。
【0132】
また、少なくとも自己接着層が、特に少なくとも0.5W/m・K、非常に好ましくは1W/m・Kよりも大きい高い熱伝導率を有すると有利である。これは、例えば、電気特性に影響を及ぼさないので、熱伝導性フィラーの添加によって、特に、窒化ホウ素または酸化アルミニウムなど、電気絶縁性であるが高い熱伝導率のフィラーの添加によって実現することができる。しかし、高い熱伝導率を有する導電性フィラーを使用することもでき、例としては、銀、アルミニウム、または銅である。特定の熱伝導率を有するPSAは、ホットメルトを溶融するのに必要なエネルギーをより効果的に導入できるようにし、それにより、例えば、本発明の平面要素が結合基板に塗布されるときにサイクル時間を短縮する。
【0133】
加熱層および接触層に加えて、本発明の平面要素は、さらなる層を有することがある。すなわち、例えば、穿孔された接触要素とは逆側の加熱層の面にさらなる自己接着剤を提供することなどによって、平面要素が、接着剤のさらなる層を備えることができる。この接着剤も、任意の適切な感圧接着剤またはホットメルト接着剤であってよい。例えば、上述したベース接着剤の1つを含む自己接着剤である。これにより、平面要素の2つの面の技術的特性を互いに切り離すことができ、それにより、平面要素の自己接着面上の接着剤を特定の結合基板に合わせて個別に調節することができるので、全体として特に高い結合安定性を実現できるようにし、これは、例えばガラス状または金属接触要素とポリオレフィン結合基板との場合のように、平面要素の前面に接合すべき基板の材料が平面要素の裏面に接合すべき基板の材料と大きく異なるときに特に重要である。
【0134】
さらなる有利な実施形態では、加熱可能な平面要素の少なくとも1つの層が、平面要素の最初の加熱時に、自己接着剤および/または場合によってはさらなる自己接着剤の粘着力の増加をもたらす機構を設けられる。これは、例えば、熱的に開始される後架橋により架橋密度を増加することによって実現することができ、後架橋は、特に、平面要素自体の(自己)加熱によって開始されることがある。したがって、有利には、この種の平面要素は、初めに少なくとも1つの結合基板との結合が形成され、次いで最初の加熱が行われ、この最初の加熱中に結合が固化されるように使用される。
【0135】
平面要素は、典型的には、最小の取付深さと共に平面要素全体の最大可撓性が保証されるので、裏当てを有さない構成である。しかし、特に高い機械的安定性のために、平面要素に可撓性の永久裏当てを設けることもできる。この裏当ては、例えば、その耐穿孔性など、平面要素の機械的特性の全体的な改善を実現するために使用することもできる。この種の永久裏当てとして、金属箔および/またはプラスチック・フィルム、織物平面要素(例えば、織布、レイド生地、編物、および不織布)、またはそのような材料の組合せなど、全ての適切な裏当て材料を使用することができる。これらの永久裏当ても、その全域にわたって閉じられることがあり、または穿孔された設計であることもある。しかし、この種の永久裏当てが提供される場合、本発明によれば、この裏当てを、接触要素と直接には接触させずに、せいぜい自己接着層の上に配置するだけにする必要がある。
【0136】
この場合、永久裏当てが、その高い可撓性に加えて、高い熱伝導率、特に、少なくとも0.5W/m・K、さらには1W/m・Kよりも大きい熱伝導率も有すると有利である。特に好ましい材料は、窒化ホウ素または酸化アルミニウムなど熱伝導性フィラーで充填されたポリマーである。この種の永久裏当ては、典型的には、50μm未満、好ましくは25μm未満の厚さを有し、全体として、構成の可撓性を損なわない。特に高い熱伝導率の裏当てにより、ホットメルト接着剤を溶融するのに必要なエネルギーをより効果的に導入することができ、これは、例えば、本発明の平面要素が結合基板に塗布されるときにサイクル時間を短縮する。1つの特定の有利な実施形態では、永久裏当ては、全体としての平面要素の可撓性をほとんど損なわないのでポリマーフォームの形態である。
【0137】
さらに、平面要素は、その前面および/またはその裏面に、保護シートの形態で一時的な裏当てを有することがあり、結合前および結合中の平面要素の取扱いやすさを改善する。これは、準備、保管、および結合中の偶発的な付着を回避できるようにし、それにより、これらのステップをより簡単に実施できるようにする。この種の一時的な裏当てとして、剥離紙またはインプロセス・ライナなど、任意の剥離効果ライナ材料を使用することができ、これは、外側の自己接着剤の1つを少なくとも部分的に覆う。適切なライナ材料の例は、残渣を残さずに再び取り外すことができる剥離効果を有する全てのシリコーン化またはフッ素化されたフィルムを含む。ここで挙げることができるフィルム材料としては、単に例として、PP(ポリプロピレン)、BOPP(二軸延伸ポリプロピレン)、MOPP(一軸延伸ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PU(ポリウレタン)、PE(ポリエチレン)、PE/EVA(ポリエチレン−エチレン酢酸ビニルコポリマー)、およびEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー)である。また、さらに、剥離紙を使用することもでき、例としては、グラシン紙、クラフト紙、またはポリオレフィン被覆紙である。
【0138】
高い熱伝導率、特に少なくとも0.5W/m・K、さらには1W/m・Kよりも大きい熱伝導率をそれ自体有するライナ材料を使用すると特に有利である。特に好ましい材料は、窒化ホウ素または酸化アルミニウムなどの熱伝導性フィラーで充填されたポリマーである。特に高い熱伝導率のライナ材料により、ホットメルト接着剤を溶融するのに必要とされるエネルギーをより効果的に導入することができ、それにより、例えば、本発明の平面要素が結合基板に塗布されるときにサイクル時間を短縮する。
【0139】
したがって、平面要素は、内部で熱を発生させることができ、感圧接着剤またはホットメルト接着剤である少なくとも1つの層と、接触層の少なくとも一方の電極(一方の極)を構成する不連続導電層とを備える。ここで、接触要素が、その面の一方でのみ自己接着剤を有することが重要である。したがって、最も単純な場合には、平面要素は、上に接触層が配設された、対応する接着剤層である。
【0140】
本発明の平面要素を製造するために、例外なく、全ての既知の適切な方法を採用することができる。したがって、本発明の平面要素のポリマー感圧接着層またはホットメルト接着層は、従来技術によるポリマー平面要素を製造する周知の方法によって製造することができる。これらは、例えば、フラットフィルム押出成形、ブローフィルム押出成形、艶出し法、および溶液から、分散物から、またはポリマーのモノマーもしくはプレポリマー前駆体からなるコーティングを含む。
【0141】
一般に、平面要素を製造するために、最初に、自己接着剤が、層の形態で、永久または一時的裏当て、例えばライナ材料または製品裏当て(いわゆるインプロセス・ライナ)の上に散布され、裏当ては、プロセス中またはプロセスの終了時に平面要素から再び剥離される。この自己接着層に、接触要素が塗布される。
【0142】
また、当然、上述したものとは異なる任意の他の製造方法で、例えば、最初に一時的裏当てに接触要素を塗布し、次いで自己接着剤でそれを接合し、その後、接触要素から一時的裏当てを剥離することによって、本発明の平面要素を得ることもできる。
【0143】
接触要素を自己接着剤に、または場合によっては一時的裏当てに塗布するために、全て知られている方法、例えば、導電性ニス、導電性ペースト、または導電性インクの塗布(例えば、印刷)、ホットスタンプ法による金属シート、箔、または層(例えば金属からなるもの)からの転写、熱シール(heat sealing)、層状塗布、またはポリマーと導電性フィラーとの混合物(例えば、ポリマー/カーボンブラック化合物)の不連続塗布を使用することができ、この場合、接触要素が、内部加熱可能な自己接着剤の導電率よりも少なくとも10倍高い導電率を有する必要がある。
【0144】
そのような方法の1つの単純な実施形態では、加熱可能な自己接着剤が、導電性金属メッシュまたは金属グリッドと接触する。好ましい様式では、比較的長期にわたって腐食をほとんど示さない、または全く示さない金属が使用される。いくつかの非常に好ましい実施形態では、例えば銅またはアルミニウムが使用されるが、銀または金を用いてこの接触を行うこともできる。
【0145】
1つの好ましい実施形態では、例えば電気めっきまたは蒸着法によって、またはレーザ法によって、金属を自己接着剤に直接堆積させることができ、あるいはインプロセス・ライナから転写することによって連続または穿孔層の形態で積層させることもできる。
【0146】
導電性ニス、導電性液体インク、導電性印刷インク、固有導電性ポリマー、またはポリマー/導電性物質混合物が使用される場合、印刷法、特に例えばスクリーン印刷が好ましく、なぜなら、このようにすると、不連続接触層を特に簡単に、多様に、再現可能に塗布することができるからである。印刷は、溶液、分散物、または溶融物から行われることがある。このとき、その後、硬化ステップが提供されることがある。
【0147】
本発明の平面要素の製造の文脈では、最初に自己接着剤から接着コーティングを生成し(例えば、接着剤を一時的ライナに塗布することによって)、次いで、得られた層の上面に、穿孔された接触要素を直接塗布する方法に従って、この製造を実施することが特に有利であることがあり、場合によっては、これは、印加圧力の下で行うことができる。
【0148】
本発明によれば、2つの結合基板を互いに接続させるため、あるいは単一結合基板の2つの異なる部分領域を接続させるための平面要素が使用される。平面要素は、保管状態では片面でのみ自己接着性であるが、それにも関わらず、結合時には両面結合可能であるので、2つの結合基板の表面を互いに接着接続するのに適合される。特に、平面要素は、自動車産業での結合基板の結合に適用され、例えば、自動車、バス、鉄道、船舶、または飛行機で使用される。
【0149】
本発明の平面要素は、接着結合アセンブリの一部であることがある。この趣旨での接着結合アセンブリは、接着結合によって得られる、平面要素と少なくとも1つの結合基板との任意のアセンブリであり、結合基板は、直接、またはさらなる部分を介して、平面要素の自己接着面に結合される。結合基板として、ミラー・シート、特にミラー・シートのミラー面の裏面、あるいは透明平面要素の場合には窓パネル、例えば表示窓またはフロントガラスなどを使用することが有利である。この種のシステムでは、結合基板の高い固有重量により、取付部から結合基板が外れ、場合によっては結合基板が壊れる恐れがあることが特に問題であり、したがって、ここで特に高い結合強度を保証する必要がある。したがって、この種の接着結合アセンブリを加熱するために、本発明の平面要素を使用することができる。
【0150】
したがって、本発明の平面要素は、例えば、ミラー加熱器(外部および内部ミラー)としての使用、加熱可能インナー・ライナでの使用(固定、防音、加熱)、ウォッシャー液を加熱するための使用、または凍結防止機能を提供するための使用、タンク加熱のための使用(特にディーゼル車で)、燃料ラインを加熱するための(同時に固定具としての)使用、除氷システム用加熱器での使用(翼除氷、場合によっては固定機能を含む)、ハンドル加熱器での使用、加熱空気を温めるための使用(エンジンが低温であるときの追加の加熱)、または吸気(燃焼空気)を予熱するための使用が可能である。この列挙は、単に例示的なものであり、本発明の平面要素の用途は、これら特定の例のみには限定されない。
【0151】
さらに、例えば以下のような多くの他の用途を見い出すことができる(ここでの選択は、限定するものではない)。表面上での結露または曇り止めのための用途(例えば浴室ミラーの固定および加熱用。例えば浴室での用途では、曇り止め積層として、または加熱可能なタイル接着シートとして。さらに、矯正眼鏡またはサングラス、あるいは眼鏡ケースでの使用)、シート加熱器としての用途(例えば、シート加熱とエアバッグ用のシート占有センサとの一体化用途を含めた、自動車での使用)、バス停での着座のための用途、スポーツ・スタジアムでの用途、屋外ケータリングでの用途、または便座のための用途、電気掛け布団または敷布団での用途、保温プレートでの用途(例えば、食品および料理用。さらに、特に太陽電池の使用に関連付けて、登山用調理器具または登山用オーブンでの使用)、シューズ・ウォーマでの用途(例えば、中敷きとして)、バンド・ヒータでの用途(例えば、パイプライン用およびタンク用など)、室内暖房のための用途(例えば、壁暖房で。床暖房で。さらには折畳み可能なテント暖房として)、ウォーターベッド暖房器での用途、加熱可能な筐体での用途(例えば、ケーシングの内容物の温度を調整するためのいわゆるサーモボックスとして。または、例えばハイファイ機器において一定の温度を保証するためのペルチェ素子と協働させた、電子回路域内での使用)、オートバイのための用途(例えば、操縦管加熱器またはサドル加熱器として)、温室暖房器としての用途(例えば、広域の放射暖房器、対流暖房器として、または植物に直接的な狭域の局所暖房器として、例えば根の暖房器として)、機能的に加熱可能な衣服のための用途(例えば、オートバイ・ライダーの衣服、自動車運転者の衣服、または冬服で)、ディスプレイ・システムの加熱、場合によっては固定のための用途(例えば、LCD、OLED、および電気泳動ディスプレイの加熱用。例えば、カメラのディスプレイまたは屋外ディスプレイ用の凍結防止保護として。または、教会の時計塔で、例えば除氷のため)、加熱式外部スイッチの加熱のための用途、屋根加熱のための用途(例えば、屋根または雨樋用の解氷ユニットとして)、インキュベータ(例えば、動物の子供用の保育器、孵卵器、またはヒトの乳児用の保育器)での用途、医療用途(例えば、人体または動物の身体の表面での温熱療法で。加熱パッチとして。さらに、経皮的治療システムのため、および経皮的薬物送達のため。この場合、熱によって解放することができる、またはその解放が熱によって補助されるカプセル化された活性成分が、皮膚の表面または表皮の表面に解放され、対応する活性物質の一時的かつ定量的に制御された解放を行う)、または雷管としての用途。
【0152】
本発明の平面要素を2つの結合基板に接続させるために、任意の所望の結合法を行うことができる。しかし、平面要素の特定の形態を考慮すると、最初に、平面要素を、その裏面で第1の結合基板に接続させ、少なくとも第1の結合基板と接触させ、その後、前面を第2の結合基板に接続させる必要があり、これは、自己接着剤が、そのような処置の後に初めて平面要素の前面にわたるからである。これは、当然、結合が形成される前に最初に両方の結合基板を平面要素と接触させることを除外せず、なぜなら、この単純化された処置の場合にも、本発明の平面要素の構造により、裏面が第1の結合基板に接続された後に初めて前面の結合が行われるからである。
【0153】
したがって、平面要素を第2の結合基板に接続させる方法は、少なくとも以下のステップを含む。すなわち、接触層の第2の面が結合基板の表面の領域に接し、それにより緩いプリアセンブリを形成するように、平面要素を(第2の)結合基板と接触させ、内部加熱可能な自己接着剤が、接触要素の切欠を通過して、切欠を少なくとも部分的に充填し、切欠を通過した内部加熱可能な自己接着剤によって、平面要素の前面が第2の結合基板に結合される。
【0154】
平面要素と第2の結合基板との最初の接触の際、接触層の第2の面が結合基板の前面の領域に接し、これらの被着物は、互いに安定な接着結合を形成しない。しかし、これは、予備の固定を行うことができる可能性を除外せず、この予備の固定において、平面要素と第2の結合基板とは、再び取り外すことができるように互いに貼着し合う。その場合、平面要素と第2の結合基板とは、不安定であり、したがって緩いプリアセンブリを形成し、すなわち実際の接合前のアセンブリを形成する。
【0155】
次いで、内部加熱可能な自己接着剤が、接触要素の切欠を通過する。すなわち、接触要素の切欠を通る内部加熱可能な自己接着剤の通過が行われる。この通過は、任意の所望の方法で達成することができる。典型的には、これは、第1の結合基板を平面要素の裏面に導き、そこに結合させることによって行うことができる。第1の結合基板は、第2の結合基板の前に平面要素と接触させることもでき(これは、第1の結合基板もプリアセンブリの一部であることを意味する)、あるいは平面要素と第2の結合基板とを接触させた後に接触させることができる(第1の結合基板が、プリアセンブリの一部にならなかったことを意味する)。
【0156】
接触要素の切欠を通る内部加熱可能な自己接着剤の通過は、平面要素と結合基板とから構成されるプリアセンブリを一体に圧迫することによって支援されることがある。その代わりに、またはそれに加えて、平面要素と結合基板とから構成されるプリアセンブリを加熱することができる。このようにすると、自己接着剤は、特に迅速に接触層を通過する。
【0157】
しかし、別法として、例えば、第2の結合基板を下にしてプリアセンブリを配置し、自己接着剤が、重力の作用の下で自ら接触要素の切欠を通って流れることによって、第1の結合基板を使用することなく通過を実現することができる。しかし、これは、十分に低い粘性の接着剤および適切な切欠を前提とする。地球の重力と同様の効果を、例えば遠心力を使用することによって実現することもできる。
【0158】
最終的に、平面要素の前面が、切欠を通過した内部加熱可能な自己接着剤によって、第2の結合基板に接着し、したがってまた第2の結合基板と接着される。
【0159】
使用される特定の自己接着剤に応じて、平面要素の実際の結合は、結合基板への印加圧力の下で行われること(感圧接着剤の場合)も、熱の導入によって行われること(ホットメルト接着剤の場合)もあり、後者の場合、適宜、結合基板に向けて追加の圧力が平面要素に印加される。その場合、熱の導入は、外部から行われる。しかし、別法として、安定な結合を達成するために必要とされる熱を、加熱層内で自己発生させることもできる。
【0160】
さらなる利点および用途の可能性は、添付図面を参照して以下により詳細に説明する実施形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】第1の例示的実施形態による本発明の平面要素を通る長手方向概略断面図である。上側の図a)は、未結合状態(保管状態)での平面要素を示し、下側の図b)は、片面で結合された状態での平面要素を示す。
【図2】第2の例示的実施形態による本発明の平面要素を通る長手方向概略断面図である。上側の図a)は、未結合状態(保管状態)での平面要素を示し、下側の図b)は、片面で結合された状態での平面要素を示す。
【図3】第3の例示的実施形態による本発明の平面要素を通る長手方向概略断面図である。上側の図a)は、未結合状態(保管状態)での平面要素を示し、下側の図b)は、片面で結合された状態での平面要素を示す。
【図4】接触要素の例示的空間実施形態の平面図である。
【図5】図4に表された接触要素の平面図であり、この図では、さらにブリッジ形状の領域が指定されている。
【図6】接触要素のさらなる例示的空間実施形態の平面図である。
【図7】第1の処置に従って、平面要素を2つの結合基板に結合させる過程での様々な時点での、第1の例示的実施形態による本発明の平面要素を通る長手方向概略断面図である。
【図8】第2の処置に従って、平面要素を2つの結合基板に結合させる過程での様々な時点での、第1の例示的実施形態による本発明の平面要素を通る長手方向概略断面図である。
【図9】平面要素を2つの結合基板に結合させる前および後の、第2の例示的実施形態による本発明の平面要素を通る長手方向概略断面図である。
【図10】平面要素を2つの結合基板に結合する前および後の、第3の例示的実施形態による本発明の平面要素を通る長手方向概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0162】
以下に例として説明する各平面要素は、加熱可能な自己接着剤10と、接触要素20とを有する。
【0163】
図1は、第1の例示的実施形態による、自己接着剤10と接触要素20とを有する本発明の平面要素を示す。この平面要素は、安定化裏当てフィルムを有さない。自己接着剤10は、感圧接着性またはホットメルト接着性である。加熱層としての自己接着剤10の内部で、電流が流れるときに熱が発生する。接触要素20は、接着層の間に配設されて、自己接着剤10の接点の不連続導電層として働く。
【0164】
接触要素20は、一様な断面をもつ櫛型構造を有し、接触要素20の1つの部分領域と接触要素20の別の部分領域とが互いに連続的には接続されず、それにより、2つの部分領域は、内部加熱可能な自己接着剤10の接触電極としてそれぞれ働くことができ、したがって接触要素20が両方の接触電極(極)(任意に選択された異なる符号「+」および「−」で表される)を含み、それゆえ外部対向電極が必要とされない。接触要素20の2つの部分領域の相互作用により、自己接着剤10を通る電流が発生し、この電流は、本質的に、自己接着剤10の平面的広がりの平面内(すなわち、xy平面内)を流れ、その平面に垂直には、わずかしか流れない。
【0165】
図1の断面図a)は、未結合状態での本発明の平面要素を通る長手方向断面図を示す。平面要素は、その前面が平面要素の下面となり、したがって裏面が平面要素の上面となるように示される。平面要素の前面は、接触層の第2の面としての接触層の下面によって形成される。接触層は、櫛型構造を有する接触要素20を備え、櫛の歯は、長方形の断面領域を有する。接触要素20は、切欠を有し、切欠は、平面要素の前面から、内部加熱可能な自己接着剤10まで貫通して延在する。接触要素20は、その第1の面が、自己接着剤10を備える層と平らに接する。切欠は、接触層の厚さ全体にわたって、加熱可能な自己接着剤10を含まず、したがって充填されず、第2の面の領域で接着剤のない状態で存在する。したがって、図1の断面図a)に示される構成では、平面要素の前面は、自己接着性でない。これは、本発明の平面要素の保管状態を表す。
【0166】
図1の断面図b)は、断面図a)に示される平面要素を通る長手方向断面図を示し、しかし断面図a)に示される状況とは異なり、要素が片面で結合した状態で示され、平面要素は、その前面(平面要素の下面)で結合基板30に接続されている。このために、内部加熱可能な自己接着剤10は、接触要素20の切欠を通過して、切欠を充填する。通過した自己接着剤10が、切欠の領域で結合基板30に貼着し、このようにして平面要素と結合基板30とを接続させる。
【0167】
単に完全を期すために、本発明の文脈では、接触要素20が、2極式の接触要素20ではなく、1つの接触電極だけを有する形態で層内に存在してもよいことを指摘することができ、これにより、外部対向電極としてさらなる接触電極が配置されている結合基板と組み立てた後に初めて電流が流れる。この種の外部対向電極は、例えば、1つの結合基板の前面に金属薄層として塗布されることがある。このとき、接触要素20と外部対向電極との相互作用により、自己接着剤を通って電流が流れることができ、この電流は、自己接着剤の平面的広がりに対して本質的に垂直に(すなわち、z方向に)流れる。以下では、本発明の平面要素の例示的実施形態に関する2極の変形形態のみを説明するが、本発明の概念は、これらの実施形態の全てに関して、1極の変形形態も同様に包含する。
【0168】
第2の実施形態による、自己接着剤10と接触要素20とを有する図2に示される平面要素は、2つの相違点を除いて、上述した第1の実施形態の平面要素と同一である。図2の断面図a)に、保管状態での平面要素を通る長手方向断面図が示され、図2の断面図b)に、結合基板30と片面で結合した状態での平面要素を通る長手方向断面図が示される。
【0169】
第1の実施形態の平面要素との1つの相違点は、切欠の壁が、平面要素の平面的広がりに垂直ではなく斜めに延在することであり、したがって接触要素20の歯の断面領域は、長方形断面ではなく円形断面を有する。第1の実施形態の平面要素とのさらなる相違点は、接触要素20が、自己接着剤10と平らには接さず、一部が自己接着剤10に埋め込まれることである。
【0170】
これは、一方では、保管中に接触要素20を自己接着剤内により良好に固定できるという利点がある。さらに、結合時に自己接着剤が接触要素20の歯の周囲を流れることができるので、結合領域が増大され、したがって結合基板に対する結合の強度が改善される。さらに、接触要素20は、より好適な切欠のプロファイルにより、自己接着剤に対する流動抵抗がより低い。しかし、これにより、保管中でさえ自己接着剤が切欠を通過する可能性があり、これは、偶発的な結合をもたらすことがある。したがって、この実施形態は、好ましくは、高い粘性をもつ自己接着剤を使用するときに採用される。
【0171】
第3の実施形態による、自己接着剤10と接触要素20とを有する図3に示される平面要素は、1つの相違点を除いて、第1の実施形態の平面要素と同一である。図3の断面図a)は、保管状態での平面要素を通る長手方向断面図を示し、図3の断面図b)は、結合基板30と片面で結合した状態での平面要素を通る長手方向断面図を示す。
【0172】
第1の実施形態の平面要素との相違点は、保管状態で、接触要素20の切欠が既に自己接着剤10で部分的に充填されており、しかしながら、接触要素の厚さにわたって貫通している切欠は、接触層の第2の面の領域で接着剤のない状態で存在することである。
【0173】
この第3の実施形態でも、保管中に接触要素20を自己接着剤内により良好に固定できるという利点がある。第3の実施形態の平面要素の場合、結合操作中に結合基板30と接触するために自己接着剤10が切欠の中を進まなければならない距離が非常に小さい。それゆえ、このとき、より簡単に結合を形成でき、したがって第3の実施形態の平面要素は、内部加熱可能な自己接着剤として、高い粘性の接着剤を含むこともできる。
【0174】
図4に、接触要素の例示的な空間的実施形態の平面図が表され、この実施形態は、長方形断面をもつ均一な幅の歯を有する櫛型構造で構成される。ここで、接触要素は、2つの部分領域を備え、これらの領域は互いに連続的には接続されず、それにより、2つの部分領域は、内部加熱可能な第1の自己接着剤の接触電極としてそれぞれ機能することができ、したがって接触要素が両方の接触電極を含む(異なる符号「+」および「−」で表される)。図5は、同じ接触要素の平面図を示し、この図では、さらに、歯の幅xと切欠の幅xとが櫛型構造の内部に記されている。典型的な設計では、例えばxおよびxは、0.1mm〜10mm、特に0.5mm〜3mmの範囲内の値を取ることがあり、したがって、xが例えば3mmの値を有し、xが例えば1.5mmの値を有することがある。
【0175】
図5に示される接触要素の空間的構成の変形が、図6に平面図として表される。この場合、接触要素の主ストランドが、右側で、加熱可能領域を超えて延長されており、そこに、平面要素を外部接続リードに接続するために提供される2つの接触舌部が形成される。
【0176】
本発明の平面要素は、1つの結合基板または2つの結合基板に接合される。接合の方法は、任意の適切な様式で実施することができる。図7に、第1の手順に従って、自己接着剤10と接触要素20とを有する図1に示される本発明の平面要素を2つの結合基板、すなわち第1の結合基板31と第2の結合基板32とに結合させる際の様々なステップが、概略的に示される。
【0177】
図7a)は、2つの結合基板31および32に接合する前の、したがって結合基板から離れた平面要素を示す。次いで、図7b)に示される第1の接合ステップで、第1の結合基板31が、自己接着剤10が存在する平面要素の裏面と接触する。自己接着剤10が感圧接着剤である場合、平面要素は、第1の結合基板31に結合される。自己接着剤10がホットメルト接着剤である場合、第1の結合基板31への平面要素の結合は、手順に応じて、この段階で既に行われることがあり、あるいは後で、平面要素の前面を第2の結合基板32と接触させた後に、例えば統合式の結合ステップの様式で行われることもある。
【0178】
図7c)に示されるように、平面要素の前面が、第2の結合基板32と接触される。この時点では、自己接着剤10が接触要素20と第2の結合基板32との接合平面内にないので、そこで結合はまだ生じない。図7d)に示される後続のステップで、自己接着剤10が、接触要素20の切欠を通過し、第2の結合基板32と接触し、その結果、この時点で、そこに結合を形成することができる。
【0179】
自己接着剤10と接触要素20とを有する図1に示される本発明の平面要素を第1の結合基板31と第2の結合基板32とに結合する際の図7に示される手順に対する代替方法が、図8に示される。ここで、図8a)は図7a)と同一であり、図8c)は図7c)と同一であり、図8d)は図7d)と同一であり、この手順は、図8b)に示される第1の接合ステップにおいて、平面要素を第1の結合基板31と接触させる前に、最初に第2の結合基板32を平面要素の前面と接触させる点で異なる。平面要素の前面には接触要素20のみがあり、自己接着剤10はないので、この場合、結合がまだ生じず、緩いプリアセンブリが形成される。
【0180】
緩いプリアセンブリを保った状態で、次いで、平面要素の裏面を第1の結合基板31と接触させ(図8c))、自己接着剤10が切欠を通過し、2つの結合基板31および32が平面要素に結合される(図8d))。言わば図7に示される手順と逆順で行われるこの方法の代わりに、第1の結合基板31と第2の結合基板32とを同時に平面要素と接触させることもできる。
【0181】
図9は、第2の例示的実施形態による本発明の平面要素を示し、図10は、平面要素を2つの結合基板31および32に結合する前および結合した後の、第3の例示的実施形態による本発明の平面要素を示す。どちらの接合方法でも、最初に第1の結合基板31を、次いで第2の結合基板32を平面要素と接触させることができ、または最初に第2の結合基板32を、次いで第1の結合基板31を平面要素と接触させることができ、当然、両方の結合基板31および32を同時に平面要素と接触させることもできる。
【0182】
したがって、内部で熱を発生させることができる少なくとも1つの感圧接着層またはホットメルト接着層と、接触電極の少なくとも一方の極を表す不連続導電層とを有する平面要素から始めて、例えば、最初に平面要素を第2の結合基板(例えば、車両ミラーの裏面)と接触させ、次いで、緩いプリアセンブリとして第1の結合基板上に配置することができ、または最初に第2の結合基板に接合させて、その後、第1の結合基板(例えば、ミラー取付プレート)と接触させることができる。
【0183】
このようにして得られた、本発明の平面要素と2つの結合基板とから構成される少なくとも部分的に緩いプリアセンブリを、次いで様々な方法ステップで組み合わせて、固定アセンブリを形成することができる。例えば、加熱ダイを使用して、ある時間にわたってプリアセンブリを一体に圧迫することによって、接触要素の切欠を通る接着剤の通過と、第1の結合基板の外面への結合とを実現することができる。ダイが取り外され、アセンブリが冷却された後、加熱可能な平面要素を介して互いに接合された2つの結合基板を備える最終製品が得られる。
【0184】
しかし、代わりに他の方法を採用することもできる。すなわち、例えば、切欠を通る自己接着剤の通過を加速させるために、プリアセンブリの上に錘が置かれることがある。代わりに、または加えて、プリアセンブリは、規定の時間にわたって、加熱室(例えば、オーブン室)内に入れられることがある。ここで、基板と平面要素とのアセンブリを取り出して冷却した後および/または錘を取り除いた後、最終製品が得られる。錘または加圧ダイの代わりに、別法として、任意の所望の他の適切な手法でプリアセンブリに力を加えることができる。さらに、加熱室内に入れるのではなく、例えば規定の時間にわたって接触層に外部電圧を印加することによって、平面要素自体によって熱が発生されることもある。この場合、同様に、力を加えるのを終えた後および/または得られたアセンブリを冷却した後に、最終製品が得られる。
【0185】
車両ミラーが結合対象である場合、最初に平面要素をミラー取付プレート上に配置することが有利となることがある。得られたミラー取付プレートと平面要素との緩いプリアセンブリにおいて、平面要素の上にミラー・ガラスを配置し、次いで、特定の時間にわたって加熱ダイをミラー・ガラス側からアセンブリに作用させることによって、得られたミラー取付プレートと平面要素とミラー・ガラスとの積層を結合させる。ダイを取り外し、冷却した後、ミラー取付プレートと平面要素とミラー・ガラスとのアセンブリの形態で最終製品が得られる。
【0186】
以下、本発明を、例として選択する個々の試料によって説明するが、それらの具体的な選択によって不必要に限定する意図はない。
【0187】
本発明による原理を実施するための例として、自己接着剤として感圧接着剤またはホットメルト接着剤を有する平面要素が製造された。
【0188】
試料1は、図5に示される接触要素を有する図1に示される構成を有し、ここで自己接着剤は、内部加熱可能な感圧接着剤であった。
【0189】
内部加熱可能な感圧接着剤について、最初に、欧州特許出願第04712016号(特許文献9)での開示に従って、44.5重量%の2−エチルヘキシルアクリレートと、44.5重量%のn−ブチルアクリレートと、8重量%のアクリル酸メチルと、3重量%のアクリル酸とからなるコモノマー組成を有するベース接着剤が生成された。分子量の測定から、平均分子量Mは650000g/molであり、多分散性M/Mが7.0であった。得られたベースPSAが、40重量%のグラファイト(Timcal Timrex KS6)を有する溶液中に混合され、次いで、コーティング・バーによってシリコーン化グラシン剥離紙(Laufenberg社製)に塗布された。120℃で10分間乾燥させた後、得られたPSA層の厚さは、100μmであった。
【0190】
その後、このPSAが、電子衝撃によって架橋された。この電子衝撃は、Electron Crosslinking AB社(スウェーデン、ハルムスタード)製の器具を用いて行われた。被覆されたPSAテープが、加速器のレナード窓の下にある標準装備された冷却ロールの上に送られた。衝撃区域で、純粋な窒素を流すことによって、大気酸素が排気された。ベルト速度は、10m/分であった。ここで、試料1について、電子ビーム線量は、180kVの加速電圧で50kGyであった。
【0191】
このようにして得られた架橋PSA層に、印加圧力を軽く加えながら接触要素が塗布され、接触要素は、厚さ0.03mmの銅箔から切断された(図5参照、x=3mmおよびx=1.5mm)。加熱可能な領域は、大きさが180cmであった。
【0192】
試料2について、内部加熱可能なホットメルト接着剤を自己接着剤として使用し、櫛型の2部片の銅箔接触要素を使用して、図1に示される構成が使用された。
【0193】
内部加熱可能なホットメルト接着剤について、使用されたベース接着剤は、28重量%の酢酸ビニル含有量を有するEscorene Ultra FL 00728(ExxonMobil)タイプのエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)であった。このベース・ホットメルト接着剤に、Haake Rheomix測定押出機を使用して、温度140℃、回転速度120回/分で、45分にわたって14重量%の導電性カーボンブラック(Printex XE2;Degussa社)が混練された。得られたポリマー化合物から、真空プレスを使用して、厚さ200μmの平面要素が生成された。
【0194】
得られた感圧接着剤の層に、接触要素が塗布され、接触要素は、厚さ0.03mmの銅箔から切断された(図5参照、x=3mmおよびx=1.5mm)。このために、接触要素の導体トラックが、温度140℃でホットメルト接着剤にシールされた。加熱可能な領域は、大きさが180cmであった。
【0195】
このようにして得られた平面要素は、接触要素が配置された側で、第1の結合基板としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンプラスチック(ABS)からなるプレートの上に配置された。その後、そのようにして得られた緩いプリアセンブリの上に、厚さ2mmのガラス・シートが配置された。両方の結合基板への結合が、単一の接合ステップで行われ、この接合ステップは、熱の作用および圧力の印加により行われ、そのために、加熱圧延ロールが使用された。
【0196】
結合が行われた後、このようにして得られた各アセンブリは、その結合強度を定量的に検査された。それぞれ、結合基板が互いに固く接合されたことが判明した。さらに、アセンブリの外部接続に電圧が印加されたとき、このようにして得られた接着アセンブリが所望の加熱機能を有したことが判明した。
【0197】
上述した例示的な実験は、安定した加熱可能な接着結合を達成するために本発明の可撓性平面要素が非常に良く適していることを実証する。
【符号の説明】
【0198】
10 自己接着剤
20 接触要素
30 結合基板
31 第1の結合基板
32 第2の結合基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面と裏面とを有し、加熱層と接触層とを備える平面要素であって、
前記加熱層が、電流が通過するときに加熱される導体として設計された内部加熱可能な自己接着剤(10)から構成され、
前記接触層が、切欠を穿設された少なくとも実質的に2次元に延在する接触要素(20)として設計され、第1の面と第2の面とを有し、前記接触層が、前記第1の面によって前記加熱層と接触し、前記加熱層と導電連絡し、
この際、
前記接触層の前記第2の面が、前記平面要素の前面を形成すること、
前記接触要素(20)の切欠が、前記接触要素(20)の厚さにわたって貫通して設計され、少なくとも前記第2の面の領域で接着剤のない状態で存在すること
を特徴とする平面要素。
【請求項2】
前記内部加熱可能な自己接着剤(10)が、ポジスタであることを特徴とする請求項1に記載の平面要素。
【請求項3】
前記接触層の前記第1の面が、前記内部加熱可能な自己接着剤(10)内に少なくとも部分的に埋め込まれることを特徴とする請求項1または2に記載の平面要素。
【請求項4】
前記接触層の前記第1の面が、前記内部加熱可能な自己接着剤(10)の一面に少なくとも実質的に平らに接することを特徴とする請求項1または2に記載の平面要素。
【請求項5】
前記接触要素(20)の厚さが、50μm以下、さらには20μm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項6】
前記切欠が、前記接触層の前記第1の面の面積の少なくとも25%、好ましくは前記接触層の前記第1の面の面積の50%よりも多く、さらには前記接触層の前記第1の面の75%よりも多くを占めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項7】
前記穿孔された接触要素(20)が、ブリッジ状領域を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項8】
前記ブリッジ状領域が、5mm以下、さらには1mm未満の幅を有することを特徴とする請求項7に記載の平面要素。
【請求項9】
前記穿孔された接触要素(20)の前記ブリッジ状領域が、分岐された櫛型構造または指型構造であることを特徴とする請求項7または8に記載の平面要素。
【請求項10】
前記内部加熱可能な自己接着剤(10)が、少なくとも1種の導電性フィラーを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の平面要素。
【請求項11】
前記導電性フィラーが、グラファイト、カーボンナノ粒子、およびカーボンブラック、特に導電性カーボンブラックを含む群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の平面要素。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一つに記載の平面要素を少なくとも1つの結合基板(30、32)に接合させる方法であって、
前記接触層の前記第2の面が前記結合基板(30、32)の表面の領域に接し、それにより緩いプリアセンブリを形成するように、前記平面要素を結合基板(30、32)と接触させるステップと、
前記内部加熱可能な自己接着剤(10)が、前記接触要素(20)の前記切欠を通過して、前記切欠を少なくとも部分的に充填するステップと、
前記切欠を通過した前記内部加熱可能な自己接着剤(10)によって、前記平面要素の前面が前記結合基板(30、32)に結合されるステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記接触要素(20)の前記切欠を通る前記内部加熱可能な自己接着剤(10)の通過のために、平面要素と結合基板(30、32)とから構成されるプリアセンブリが一体に圧迫されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記接触要素(20)の前記切欠を通る前記内部加熱可能な自己接着剤(10)の通過のために、平面要素と結合基板(30、32)とから構成されるプリアセンブリが加熱されることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記プリアセンブリが、前記内部加熱可能な自己接着剤(10)に電流を流すことによって加熱されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
結合基板を加熱するための、請求項1〜11のいずれか一つに記載の平面要素の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−147024(P2010−147024A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−285959(P2009−285959)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】