説明

労作時の心筋虚血の検出のための方法および装置

本発明の様々な方法の実施形態は、生理学的労作を表す患者の内圧測定値を感知することと、患者の内圧測定値に基づき生理学的労作の1つ以上の定常状態期間を識別することと、生理学的労作の前記1つ以上の定常状態期間に対応する心臓外応答データおよび心臓応答データを感知することと、前記1つ以上の定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報および心臓応答情報と、心臓外応答データおよび心臓応答データとをそれぞれ比較することと、心臓外応答データと心臓外応答情報との比較結果および心臓応答データと心臓応答情報との比較結果に基づき前記1つ以上の定常状態期間中に心筋虚血が発生した可能性を判定することと、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に植込型医療装置に関し、より詳細には、労作エピソード中の心筋虚血の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血とは、一般に血液供給における制限を言う。心筋虚血は、心臓の筋肉への血液供給が不十分なことを特徴とする、虚血の一種である。一般的には、2つの種類の心筋虚血が存在する。第1のものは需要虚血であり、心筋における代謝の増大による酸素需要の増大に関連している。第2は供給虚血であり、冠状動脈における血流の制限による酸素供給の減少に関連している。要求虚血は物理的な労作または感情的なストレス時や、重篤な場合では、休息時にも起こることがある。
【0003】
虚血性心疾患は幾つもの問題を示す場合がある。そのような1つの問題が狭心症であり、心筋虚血はとりわけ労作中、寒冷時、感情的な場面、あるいは冠状動脈の血管攣縮により自然発生的に、人が経験する胸痛として現れる。労作を控え、寒さを避け、気を鎮めることによって、胸痛の発現に対処できることも時々ある。
【0004】
心筋虚血はさらに、急性胸痛、肉体的能力の低下、不安定狭心症、および心筋梗塞(心臓発作)としても現れる。そのような場合、心筋虚血は、ストレス源を除去したり患者を休息させたりしても軽減されないことが多い。また、虚血のエピソードが十分に重篤であったり長引いたりする場合、急性の心臓損傷も生じることがある。心筋虚血の進行は心不全に至ることがあり、それは、呼吸困難、疲労、循環が不十分なことによる手足の浮腫、死亡に関連している。
【0005】
心筋虚血に対しては、幾つかの治療選択肢が存在する。禁煙、身体活動の増進、体重の最適化など、生活様式を変化させることで、心臓疾患に関連した心筋虚血の進行が抑えられることがある。また、薬剤も、狭心症などの症状を和らげたり、疾病の進行を遅らせたりするために用いられる。糖尿病など他の疾病に対処することで、患者の心臓病も改善されることがある。例えば、アスピリンまたはベータ遮断剤の日常服用によって進行を遅らせられる場合や、特定のエピソードに対処するためにニトログリセリンが用いられることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一般に心電図信号によって検出されるような心筋虚血と労作との間の関係を監視し、その関係に基づき警報の提供や治療の指示を行うためのシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本発明の一部の方法の実施形態には、生理学的労作を表す患者の内圧測定値を取得することと、患者の内圧測定値に基づき生理学的労作の定常状態期間を識別することと、識別された定常状態期間の各々について生理学的労作の強度を評価することと、が含まれる。
【0008】
そのような方法には、識別された生理学的労作の定常状態期間中、心臓外応答データを感知することと、識別された生理学的労作の定常状態期間に対応する心臓外応答データを、等価な強度に関連した心臓外応答情報と比較することと、心臓外応答データと心臓外応
答情報との比較結果に基づき各定常状態期間について心臓外応答データの正常性を判定することと、がさらに含まれてよい。
【0009】
方法には、識別された生理学的労作の定常状態期間中、心臓応答データを感知することと、識別された生理学的労作の定常状態期間に対応する心臓応答データを、等価な強度に関連した心臓応答情報と比較することと、心臓応答データと心臓応答情報との比較結果に基づき各定常状態期間について心臓応答データの正常性を判定することと、が含まれてよい。
【0010】
そのような方法には、識別された生理学的労作の定常状態期間のうちの1つ以上に心筋虚血が発生した可能性を判定することがさらに含まれてよく、1つ以上の定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間中に感知された心臓外応答データおよび心臓応答データの両方が異常であると判定される場合、相対的に高いと判定され、1つ以上の定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間中に感知された心臓外応答データおよび心臓応答データのうちの一方のみが異常であると判定される場合、相対的に中位であると判定され、1つ以上の定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間中に感知された心臓外応答データおよび心臓応答データのいずれも異常であると判定されない場合、相対的に低いと判定される。虚血の定常状態期間は、安定狭心症、不安定狭心症、または血管攣縮として、さらに分類されることが可能である。
【0011】
一部のシステムの実施形態には、患者の静的労作に応答する労作信号を出力するように構成された植込型の静的労作センサであって、労作信号は静的労作データを含む、センサと、心臓パラメータに応答する心臓信号を出力するように構成された植込型心臓パラメータセンサであって、心臓信号は心臓応答データを含む、センサと、心臓外パラメータに応答する心臓外信号を出力するように構成された植込型心臓外パラメータセンサであって、心臓外信号は心臓外応答データを含む、センサと、が含まれる。
【0012】
そのようなシステムの実施形態には、プロセッサであって、メモリに記憶されたプログラム命令を実行してシステムに、静的労作データに基づき生理学的労作の定常状態期間を識別し、定常状態期間の各々に複数の労作強度レベルのうちの1つを割り当てることと、心臓応答データおよび心臓外応答データがそれぞれ出力された識別された生理学的労作の定常状態期間について、該識別された生理学的労作の定常状態期間の割り当てられた労作強度レベルにしたがって心臓応答データおよび心臓外応答データを編成することと、心臓外応答データおよび心臓応答データから編成された該1つ以上の定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報および心臓応答情報と、心臓外応答データおよび心臓応答データとをそれぞれ比較することと、心臓外応答データと心臓外応答情報との比較結果および心臓応答データと心臓応答情報との比較結果に基づき該1つ以上の期間中に心筋虚血が発生した可能性を判定することと、を行わせるプロセッサがさらに含まれてよい。
【0013】
一部の方法の実施形態には、生理学的労作を表す労作測定値を取得することと、労作測定値に基づき生理学的労作の1つ以上の定常状態期間を識別することと、生理学的労作の該1つ以上の定常状態期間に対応する心臓外応答データおよび心臓応答データを感知することと、該1つ以上の定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報および心臓応答情報と、心臓外応答データおよび心臓応答データとをそれぞれ比較することと、心臓外応答データと心臓外応答情報との比較結果および心臓応答データと心臓応答情報との比較結果に基づき該1つ以上の定常状態期間中に心筋虚血が発生した可能性を判定することと、が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の様々な実施形態による、識別された労作の定常状態期間の虚血の可能性を判定する方法を示すフローチャート。
【図2】本発明の様々な実施形態による、識別された労作の定常状態期間の虚血の可能性を判定する方法を示すフローチャート。
【図3】本発明の様々な実施形態による、労作に対する応答の性質を決定する方法を示すフローチャート。
【図4】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓外応答データおよび心臓応答データのテーブルの例を示す図。
【図5】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓外応答データおよび心臓応答データのテーブルの例を示す図。
【図6】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図7】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図8】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図9】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図10】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図11】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図12】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図13】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図14】本発明の様々な実施形態による、労作レベルの範囲を通じた心臓応答データおよび心臓外応答データのプロットを示す図。
【図15】本発明の様々な実施形態により用いられ得る患者植込型装置を示す図。
【図16】本発明の様々な実施形態による、呼吸の性質を決定するために用いられ得るインピーダンスのプロットを示す図。
【図17】本発明の様々な実施形態により用いられる、患者植込型医療装置および外部装置のブロック回路図。
【図18】本発明の様々な実施形態により用いられ得る、患者植込型装置とのインタフェースを行うためのプログラム装置を示す図。
【図19】本発明の様々な実施形態により用いられ得る最新型の患者管理システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は様々な修飾形態および代替形態に適用可能であるが、それらのうち特定のもののみを図面に例として示すとともに、以下に詳細に説明する。しかしながら、記載の特定の実施形態へ本発明を限定する意図ではないことが理解される。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲の内にある全ての修飾形態、均等物、および代替形態を含むものであることが意図される。
【0016】
以下の図示した実施形態に関する記載では、その一部をなす添付の図面を参照するが、それは本発明が実施され得る様々な実施形態を例示として示しているものである。他の実施形態が利用され得ること、本発明の範囲から逸脱することなく構造的および機能的な変更がなされ得ることが理解される。
【0017】
本明細書に提供される説明および図示は代表的な形式によって与えられており、一部の実施形態が本発明の様々な態様を与えるように記載および図示されている。本発明による、システム、装置、または方法は、本明細書に記載の特徴、構造、方法、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでよい。例えば、装置またはシステムは、本明細書に記載の有利な特徴および/または処理のうちの1つ以上を含むように実装され得る。本発明による装置またはシステムは、別個の実施例および/または図示に説明および/または図示された複数の特徴および/または態様を含むように実装されてよい。そのような装置またはシステムは、本明細書に記載の特徴のすべてを含む必要はなく、有用な構造、システム、および/または機能を提供する選択された特徴を含むように実装されることが意図される。
【0018】
心筋虚血エピソードの重症度は広範に変化する。軽微な場合、患者は、心筋虚血またはその結果の発現に気付かない場合がある。患者は、心筋虚血のより重篤な場合では、中位から重度の胸痛(狭心症)、動悸、息苦しさ(呼吸困難)、疲労、発汗、および吐気を経験する場合がある。
【0019】
心筋虚血は、常にではないものの多くの場合、身体運動に関連している。例えば、患者は、労作の期間中に心筋虚血を経験する可能性が高い場合がある。身体運動の増大に関連した狭心症は、安定狭心症に関連している。身体運動には幾つかの形態があり、程度が異なる。庭仕事、階段を昇ること、歩行、雪掻き、およびサッカーをすることはすべて、労作に関連した身体活動の形態であり、一部の人々にとっては、心筋虚血のリスクの増大である。そうした活動は、動的な労作形態である。動的な労作は、一般に、随意骨格筋の収縮によって生じる身体の運動に関連しており、内圧の静的な増大には関連していない。
【0020】
しかしながら、患者は、労作の期間を経験するのに、運動による(すなわち随意骨格筋を主に用いる)必要はない。例えば、患者は、排便中、重量の支持、または感情的なストレスの増大時に、静的労作期間を経験する。静的労作とは、一般的な肢体運動と関連しない労作を言う。労作が存在しない時の胸痛は、不安定狭心症に関連している。
【0021】
患者は、活発な肢運動のないストレスを労作と関連付けないため、静的労作中の心筋虚血の期間を認識し、そのようなエピソードを医者に報告することが困難な場合がある。そのため、静的労作期間中の心筋虚血の識別および分類を行うことは、動的労作期間と比較して、より困難であり、このことによって、心筋虚血の監視が複雑になることがある。
【0022】
例えば、胸痛のエピソードは、患者がそのエピソード中の有意な身体運動を報告しなかった(または、そうした身体運動が何らかの理由によって感知されなかった)場合、不安定狭心症として分類され得る。しかし、この胸痛は、その胸痛のエピソード中に測定可能な静的労作活動の増大が患者にあった場合、安定狭心症(不安定狭心症でなく)として、より正確に識別され得る。
【0023】
静的労作および動的労作の期間を区別し、各々に関連した心筋虚血を検出するための方法および装置を、本明細書に開示する。
静的労作によって、胸および/または腹腔ならびに空間に、圧力上昇が生じることがある。静的労作に関連した圧力増大は、閉じた声門に対する腹筋(例えば、横隔膜)および/または胸部の筋肉(例えば、胸筋)の活発で安定な収縮によって生じることがある。監視装置(患者植込型医療装置など)は、それらの圧力変化を測定および解析し、静的労作の定常状態期間を識別して、静的労作に対する心臓応答および心臓外応答の性質を決定することが可能である。静的労作圧力は、胸部の肺および血管系の外部において測定可能である(例えば、循環系以外の位置に配置された1つ以上の植込型圧力センサ)。一部の実
施形態では、静的労作圧力センサは、内圧および静的労作レベルの性質を決定するために循環系に配置されることが可能である。例えば、肺および静脈血の圧力は静的労作による内圧の上昇に伴って上昇することがあるので、肺および静脈血系の近傍の位置のセンサは静的労作の増大を感知可能である。
【0024】
また、静的労作は、歪みゲージおよび/または圧電素子によって胸筋、靭帯、および/または他の筋骨格系の要素における緊張を感知することでも感知可能である。また、静的労作は、静的労作に関連した胸部または腹部の1つ以上の筋肉(例えば、横隔膜または胸筋)の筋電図活動を感知することによっても感知可能である。
【0025】
動的労作は、加速度計、または他の種類の活動モニタの身体の運動(例えば、歩行/ランニング、階段を昇ること)に対応する測定によって評価可能である。加速度計または他の種類の活動モニタは、患者の胸部その他の領域に植え込まれた患者植込型医療装置に配置可能である。
【0026】
静的労作および動的労作の両方の分類を見ることは、心筋虚血の検出において特に有用なことがある。例えば、患者は、加速度計単独では記録されない労作の期間を経験する場合があり(例えば、浴室へ向かう)、加速度計は偽陽性(例えば、自動車による移動中)を与えることがあり、両方の分類に含まれ得る活動も存在する(例えば、雪掻き)。加速度計を圧力センサと共に用いることは、圧力の増大が静的労作に関連している(対応する加速度の増大がない場合)か、動的労作に関連している(対応する加速度計における活動の増大がある場合)かを判定可能であるため、特に有用である。
【0027】
本発明による心筋虚血の検出は、心筋虚血の無症候性エピソードを識別し、心臓疾患の進行を追跡記録するのに有用なことがある。心筋虚血は、幾つかの段階を通じて進行することがある。心筋虚血およびその段階を識別することは、疾病診断、患者の特定のストレス源の識別や、治療選択肢を選ぶことの助けとなる。本発明の方法および装置によって、様々な種類の労作中の無症候性エピソードの発生にもかかわらず、労作に関連した心筋虚血の検出および性質決定を行う(例えば、労作に関連した虚血、労作に関連しない虚血、および休息時虚血を識別する)ことが可能となり、安定心筋虚血または不安定心筋虚血として心筋虚血を分類することが可能である。方法および実施形態によって、胸痛のエピソードを分類することが可能となる(例えば、安定狭心症、不安定狭心症、または血管攣縮)。
【0028】
幾つかの計量値および計量値のカテゴリを用いて、心筋虚血を評価することが可能である。例えば、患者の労作に対する心臓外応答は、心筋虚血の1つ以上のインジケータとして用いられる。患者の労作に対する心臓外応答の計量値には、次に限定されないが、動脈血酸素飽和度、静脈血酸素飽和度、血液pHレベル、呼吸速度、分時換気量、体幹温、肺血管圧力、および一回換気量が含まれる。これらの計量値における増大その他の変化には、患者の労作に対する心臓外応答が反映される。
【0029】
患者の労作に対する応答を評価するための別のカテゴリの計量値は、患者の労作に対する心臓応答に関する。例えば、患者の労作に対する心臓応答には、次に限定されないが、心拍数、ST部(例えば、偏位および/またはスロープ)、ECGモルフォロジ相関性(保存されているテンプレートと比較した、特徴相関係数(FCC)など)、心室性期外収縮(PVC)の発生、心房細動率(AF%)、QRS幅(心電図(ECG)の)、QT間隔延長、心房レート、心室レート、T波振幅、T波極性、および、QRS群のR波振幅が含まれる。上に示したように、患者の労作に対する心臓応答を評価するための一部の計量値は労作に対する電気心臓応答のパラメータであり、また一部の計量値は労作に対する非電気心臓応答のパラメータである。様々なパラメータ(FCCなど)は米国特許第7,3
19,900号明細書に記載されており、その全体を引用によって本明細書に援用する。本発明とともに数々の電気心臓計量値が使用可能であるため、1つ以上のECG信号を処理するために広帯域フィルタを用いることが望ましい場合がある。
【0030】
本明細書に記載の方法およびシステムでは、心筋虚血および他の症状の性質を決定するために、労作に対する心臓応答データまたは労作に対する心臓外応答データのいずれかが用いられることが可能である。しかしながら、本発明の様々な実施形態では、心筋虚血を検出するために、患者の労作に対する心臓外応答および労作に対する心臓応答の両方が用いられる。労作に対する心臓外応答と労作に対する心臓応答とのうちの1つしか用いないことに代えて、心筋虚血を検出するために患者の労作に対する心臓外応答および労作に対する心臓応答を両方とも用いることによって、以下に説明するように、心筋虚血の検出および狭心症の分類において特有の利点が提供される。
【0031】
心筋虚血は心臓に直接的に影響を与えるので(例えば、心筋虚血の期間中の酸素送達の減少)、労作に対する心臓応答パラメータは心筋虚血の影響を受け易い。心筋虚血は心臓外の組織には直接的に影響を与えない場合があるので、心臓外応答パラメータは心筋虚血によって直接的には影響を受けない場合がある。例えば、横隔膜に対する酸素可給性(availability)は、心筋虚血のエピソードによって必ずしも損なわれない(しかしながら、これによって死亡に至る重篤な心不全を起こす場合がある)。しかしながら、それにもかかわらず、心臓外応答パラメータが心筋虚血の影響を受け易い場合がある。例えば、心筋虚血によって心臓の収縮能およびポンピング効率の低下に至ることがあり、このことによって心拍出量の減少が生じることがある。心拍出量の減少は、別の組織の働きに影響を与えるのに充分なほど、それらの臓器への酸素送達を減少させることがある。肺の系における血流の減少によって、肺における血液のガス交換が制限され、血液中の酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が上昇することがある。血中二酸化炭素濃度が高くなると、神経系は呼吸強度を高くする(例えば、呼吸を速める)。このように、心筋虚血に関連した酸素送達の減少は、呼吸の高まり息切れ、および/またはより多くの空気を求めての喘ぎとして現れることがある。加えて、心筋虚血は(主として迷走神経を介して)呼吸努力を刺激する一定の神経反射を引き起こすことが知られている。
【0032】
一部の環境では、心筋虚血に関連した心拍出量の減少は、心臓パラメータによって正確に感知されない場合があるが、それにもかかわらず、心臓外パラメータの監視によって検出可能な場合がある。この理由および他の理由のため、一部の場合には、心筋虚血は心臓応答パラメータに影響を与えるが心臓外応答パラメータには与えないことがあり、また他の場合には、心臓外応答パラメータには影響を与えるが心臓応答パラメータには与えないことがある。
【0033】
上述のように、心筋虚血の期間は、様々な機構を通じて心臓外応答パラメータおよび心臓応答パラメータに影響を与えることがある(例えば、労作に対する心臓応答パラメータに直接的に影響を与えたり、労作に対する心臓外応答パラメータに神経系を通じて間接的に影響を与えたり)。本発明の実施形態では、心臓外応答パラメータおよび心臓応答パラメータの両方を調査し、それらの間で比較を行うことによって、複数の心臓外応答パラメータ(または心臓応答パラメータ)では行わない手法により、情報を与え、傾向を識別することが可能である。さらに、心臓外応答と心臓応答パラメータとの間の正常性を比較することによって、単に心臓外応答パラメータや心臓応答パラメータについて独立に調査するのと比べ、心筋虚血の検出および性質決定が向上する。
【0034】
本発明の実施形態による心臓外応答および心臓応答パラメータの比較では、したがって、心筋虚血の様々な一過性のサインが評価され、労作応答パラメータの他の集合を測定するよりも大きな確信をもって心筋虚血を検出する方法が提供されることが可能である。さ
らに、心臓応答および心臓外応答を組み合わせることによって、検出の陽性的中率を向上させる、すなわち、偽警報を減少させることが補助される。
【0035】
図1には、本発明の様々な実施形態による、労作中の心筋虚血を検出する方法100を示す。方法100は、生理学的労作を表すデータを感知する工程(101)を含む。生理学的労作を表す感知(101)されたデータには、静的労作の尺度としての患者の内圧のデータおよび/または動的労作の尺度としての加速度計データが含まれ得る。生理学的労作の定常状態期間は、次いで、感知された生理学的労作を表すデータに基づき識別される(102)。
【0036】
本発明の一部の実施形態では、生理学的労作の定常状態期間は、労作を追跡記録する計量値が労作のサインを持続的に示す期間によって識別される。例えば、患者の内圧が生理学的労作を表すパラメータである場合、内圧の上昇する3秒以上の期間は生理学的労作の定常状態期間として識別される。加速度計が用いられる場合、定常状態期間を識別するために、比較的長い期間(例えば、20秒間の持続)の加速度上昇が示す活動を用いてもよい。生理学的労作の定常状態期間を識別するのにより長く持続する加速度計活動の期間を必要とすることによって、過渡的な活動(座ったり、横たわったりなど)を動的労作の定常状態期間として誤識別することを回避することが補助される。
【0037】
識別(102)された生理学的労作の定常状態期間の各々は、各定常状態期間の生理学的労作の強度を判定するために評価される(103)。例えば、1つの計量値範囲(例えば、胸膜腔の内圧)は、様々な副範囲(例えば、0〜10mmHg、10〜20mmHg、20〜30mmHgなど)を用いて確立される。特定の定常状態期間の強度は、例えば、その定常状態期間中に測定された最大のパラメータ値、その定常状態期間中に測定された最小のパラメータ値、またはその定常状態期間中の平均のパラメータ値に基づき評価される。定常状態期間中の生理学的労作の強度を評価することには、定常状態期間を副範囲の間に分類することが含まれ、評価された強度は副範囲に当てはめられる。例えば、労作の定常状態期間の平均圧力が21mmHgである場合、その定常状態期間は20〜29mmHgの副範囲内に分類されてよい。このようにして、データは、収集されるにしたがって、副範囲に対応する様々なビンへ分類されることが可能である。米国特許出願公開第2007/0021678号明細書(その全体を引用によって本明細書に援用する)には、いかにして定常状態期間を識別しデータをビンに編成するかについて示されている。
【0038】
方法100は、いずれも工程103,110に繋がる2つの平行なトラック(104−105−106,107−108−109)を示す。2つのトラックのうち、トラック104−105−106のみを実行すること、またはトラック107−108−109のみを実行することが可能である。しかしながら、本発明の好適な実施形態では、両方のトラックが実行される。本明細書に説明するように、両方のトラックを実行することには、トラックの1つのみを実行することを越えて虚血の検出および分類を向上させる、特有の相乗的な利点がある。トラック104−105−106および107−108−109の工程は、同時に、連続的に、または連続的でない順番で、実行可能である。
【0039】
トラック104−105−106には、識別された生理学的労作の定常状態期間中、心臓外応答データを感知する工程(104)が含まれる。心臓外応答データを感知する工程(104)には、他の心臓外応答パラメータや組み合わせに加え、特に、一回換気量など単一のパラメータのデータ、または分時換気量および呼吸数など複数のパラメータのデータを感知することが含まれる。
【0040】
感知(104)された心臓外応答データは、次いで、心臓外応答情報と比較される(105)。この工程では、識別(102)された生理学的労作の定常状態期間に対応する(
例えば、その期間に得られた)心臓外応答データを、等価な生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報と比較する(105)。そのため、特定の定常状態期間について強度が評価(103)されたレベルによって、感知(104)された心臓外応答データをどの心臓外応答情報と比較するかを判定可能である。
【0041】
例えば、特定の定常状態期間について強度が評価(103)されたレベルによって、定常状態期間中の生理学的労作データが平均15mmHgであると判定され、その定常状態期間が10〜20mmHgの副範囲に分類される場合、その定常状態期間中に感知(104)された心臓外応答データは、10〜20mmHgの副範囲に関連した以前の労作の定常状態期間中に収集された特定の定常状態期間に関連した心臓外応答情報と比較(105)されてよい。
【0042】
このような比較を行うことによって、例えば、患者の心臓外応答データを等価な強度の労作に関連した心臓外応答情報と比較することが可能となる。これによって、相対的に軽微な労作の心臓外応答データを以前に収集された相対的に軽微な労作の心臓外応答データと比較する、より中位の労作の心臓外応答データを以前に収集された相対的に中位の労作の心臓外応答データと比較する、より高いレベルの労作のデータをより高いレベルの労作のデータと、など、似たもの同士の比較が可能となる。このような比較によって、一部のレベルにおいて生じる応答の変化(例えば、中位のレベルの労作の時間を通じて上昇しかしないPVCレート)を依然として追跡記録することが可能であるように、複数の労作レベルの各々について患者の労作に対する応答を追跡記録することが可能となる。これらの概念は、労作に対する電気生理学的応答に関する方法の工程にも適用される。
【0043】
方法100は、心臓外応答データと心臓外応答情報との比較結果に基づき各定常状態期間について心臓外応答データの正常性を判定する工程(106)をさらに含む。この工程がどのように実行されるかは、心臓外応答情報の性質に応じて異なることがある。心臓外応答情報には、他の種類の情報に加え、特に、認識された個人の傾向、認識された集団の傾向、閾値、ベースライン、および/または範囲が含まれる。
【0044】
例えば、感知(104)された心臓外応答情報が呼吸速度である場合、この心臓外応答情報は特定のレベルの強度における呼吸速度のベースラインであり得る。比較(105)によって、特定のレベルの強度を有する定常状態期間の呼吸速度を、その特定のレベルの強度におけるベースライン呼吸速度と比較してもよい。少なくとも定常状態期間の労作の強度レベルについての心臓外応答データにしたがって、比較(105)に基づき、心臓外応答が異常である程度まで呼吸速度がベースラインから乖離していると判定(106)してもよい。本明細書に説明する労作応答の正常性に関する他の種類の比較および決定は、そのような方法に対して想定される。一部の実施形態では、生理学的労作の上昇に伴い強度が上昇する直線傾向に従わない(例えば、応答が労作強度レベルを通じて不定であるかまたは予想外に大きい)場合、心臓または心臓外の応答データは異常である。
【0045】
トラック107−108−109を見ると、心臓応答データは、識別された生理学的労作の定常状態期間中に感知される(107)。心臓応答データを感知する工程(107)には、患者のECGを感知することが含まれ、ECGには、とりわけ、ST偏位およびQRS幅などのパラメータが含まれる。
【0046】
感知(107)された心臓応答データは、次いで、心臓応答情報と比較される(108)。この工程では、識別(102)された生理学的労作の定常状態期間に対応する(例えば、その期間に得られた)心臓応答データを、等価な強度に関連した心臓応答情報と比較する(108)。そのため、特定の定常状態期間について強度が評価(103)されたレベルによって、感知(107)された心臓応答データをどの心臓外応答情報と比較するか
を判定可能である。例えば、特定の定常状態期間について強度が評価(103)されたレベルによって、定常状態期間中の生理学的労作データが平均5mmHgであると判定され、その定常状態期間が5〜10mmHgの副範囲に分類される場合、その定常状態期間中に感知(107)された心臓応答データは、5〜10mmHgの副範囲に関連した以前の労作の定常状態期間に関連した心臓応答情報と比較(108)されてよい。このような比較を行うことによって、例えば、患者の労作に対する心臓応答を等価な強度の労作に関連した応答情報と比較することが可能となる。これによって、相対的に軽微な労作の心臓応答を以前の相対的に軽微な労作の心臓応答と比較する、より中位の労作の心臓応答を以前の相対的に中位の労作の心臓応答と比較する、より高いレベルの労作対データをより高いレベルの労作対データと、など、似たもの同士の比較が可能となる。
【0047】
方法100は、心臓応答データと心臓応答情報との比較結果に基づき各定常状態期間について心臓応答データの正常性を判定する工程(109)をさらに含む。この工程がどのように実行されるかは、心臓応答情報の性質に応じて異なることがある。心臓応答情報には、他の種類の情報に加え、特に、認識された個人の傾向、認識された集団の傾向、閾値、ベースライン、および/または範囲が含まれる。
【0048】
例えば、感知(107)された心臓応答情報が心室性期外収縮の数またはレートである場合、労作に対する心臓応答情報は特定のレベルの強度における心室性期外収縮のベースライン数またはレートであり得る。比較(108)によって、特定のレベルの強度を有する定常状態期間の心室性期外収縮レートを、その特定のレベルの強度におけるベースライン心室性期外収縮レートと比較してもよい。比較(107)に基づき、定常状態期間中の労作に対する心臓応答が異常である程度まで、心室性期外収縮レートがベースラインから乖離していると判定(109)してもよい。本明細書に説明する労作応答の正常性に関する他の種類の比較および決定は、そのような方法に対して想定される。
【0049】
心臓外応答データおよび心臓応答データの正常性に関する判定(106,109)に基づき、虚血の可能性が判定される(110)。定常状態期間における虚血の可能性は、その定常状態期間における心臓外応答データおよび心臓応答データの両方が異常であると判定される(106,109)場合、相対的に高いと判定される(110)。定常状態期間における虚血の可能性は、心臓外応答データおよび心臓応答データのうちの一方のみが異常であると判定される(106,109)場合、相対的に中位であると判定される(110)。定常状態期間における虚血の可能性は、心臓外応答データおよび心臓応答データのうちのいずれも異常でないと判定される(106,109)場合、相対的に低いと判定される(110)。
【0050】
図2には、本発明の様々な実施形態による、労作中の心筋虚血を検出する方法200を示す。方法200は、生理学的労作を表す患者の内圧測定値を感知する工程(201)を含む。この方法は、感知(201)された患者の内圧測定値に基づき生理学的労作の1つ以上の定常状態期間を識別する工程(202)を、さらに含む。定常状態期間の識別は、患者の内圧における上昇または上昇した圧力の持続期間に基づくことが可能である。1つ以上の識別(202)された定常状態期間に対応して、心臓外応答データおよび心臓応答データが感知される(203)。
【0051】
一部の実施形態では、圧力、心臓外応答データ、および/または心臓応答データが、連続的に感知および記録される。このデータは、先入れ先出しバッファ上に一時的に記録可能であり、該バッファにおいて、労作の定常状態期間が検出されない場合、データは最終的に置き換えられ、労作の定常状態期間が検出されたとき、データはより永続的に記憶される(メモリに移動される)。したがって、定常状態期間が既に開始するまで、または既に終了するまで、労作の定常状態期間が識別(202)されない場合、その定常状態期間
に対応して感知(203)された心臓外応答データおよび心臓応答データ(例えば、定常状態期間の開始時に開始し、定常状態期間の終了時まで継続する)は、依然としてアクセスされることが可能である。
【0052】
方法200は、1つ以上の定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報および心臓応答情報と、心臓外応答データおよび心臓応答データとをそれぞれ比較する工程(204)を、さらに含む。このようにして、労作の特定の定常状態期間の心臓外応答データは、定常状態期間の強度レベルに等価なレベルの労作強度に関連した心臓外応答情報と比較される。また、労作の特定の定常状態期間の心臓応答データは、定常状態期間の強度レベルに等価なレベルの労作強度に関連した心臓応答情報と比較される。
【0053】
労作のレベルに沿って心臓外応答情報および心臓応答情報を比較する工程(204)によって、患者の労作に対する応答をより深いレベルで調査することと、パターン認識を向上させることとが可能となる。例えば、患者の全体的な労作に対する呼吸速度の応答が時間を通じて変化する場合があるが、以前の労作定常状態期間と比較して、低い労作における呼吸速度は予想外に変化せず、中位のレベルおよび高いレベルにおいてのみ呼吸速度が変化したと知ることは重要なことがある。患者の労作に対する心臓応答および心臓外応答における時間を通じた労作のレベルの変化に沿ったスペクトルを知ることによって、患者の心筋虚血進行について、より理解することが可能となる。さらに、どの特定の労作のレベルが危険な状態を導くかを知ることによって、患者/医師に対する警告および/または治療調節をより正確に行うことが可能となる。
【0054】
方法200は、心臓応答データが正常であるかを判定する工程(205)を、さらに含む。そのような判定は、1つ以上の定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作に関連した心臓応答データと心臓応答情報との比較(204)を用いて行われることが可能である。正常性は、心臓応答データにおいて、とりわけ、1つ以上の以前の定常状態期間のデータ、ベースライン、閾値、パターン、または傾向からの偏位を識別することによって判定可能である。心臓応答データが正常であると判定(205)された場合、方法200は工程209に移動する。心臓応答データが正常であると判定(205)されなかった場合、方法200は工程206に移動する。
【0055】
工程206の結果によって、心臓外応答データが正常であるか否かが判定(206)されてもよい。そのような判定は、1つ以上の定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作に関連した心臓外応答データと心臓外応答情報との比較(204)を用いて行われることが可能である。正常性は、心臓外応答データにおいて、とりわけ、1つ以上の以前の定常状態期間のデータ、ベースライン、閾値、パターン、または傾向からの偏位を識別することによって判定可能である。心臓外応答データが正常であると判定(206)されなかった場合、方法200は、労作に対する心臓応答および心臓外応答のデータインジケータが両方とも心筋虚血を示したので、心筋虚血の可能性は相対的に高いと結論付ける(207)。心臓外応答データが正常であると判定(206)された場合、方法200は、労作に対する心臓応答データインジケータのみが心筋虚血を示し、労作に対する心臓外応答データインジケータが心筋虚血を示さなかったので、心筋虚血の可能性は相対的に中位であると結論付ける(208)。
【0056】
工程206の結果によって、心臓外応答データが正常であるか否かが判定(209)されてもよい。そのような判定は、1つ以上の定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作に関連した心臓外応答データと心臓外応答情報との比較(204)を用いて行われることが可能である。心臓外応答データが正常であると判定(209)されなかった場合、方法200は、労作に対する心臓外応答データインジケータのみが心筋虚血を示し、労作に対
する心臓応答データインジケータが心筋虚血を示さなかったので、心筋虚血の可能性は相対的に中位であると結論付ける(208)。心臓外応答データが正常であると判定(209)された場合、方法200は、労作に対する心臓応答および心臓外応答のデータインジケータが両方とも心筋虚血を示さなかったので、心筋虚血の可能性は相対的に低いと結論付ける(210)。
【0057】
図3には、本発明の様々な実施形態による、労作中の心筋虚血を検出する方法300を示す。方法300は、労作に対する心臓応答と労作に対する心臓外応答との正常範囲を確立(301)する工程を含む。そのような範囲は、例えば、患者の以前の労作の定常状態期間、一般的なまたは特定の集団のデータに基づき確立されるか、医者によって指定され得る。そのような範囲はメモリに記憶可能である。範囲内のそれぞれの副範囲について、複数の正常範囲が確立(301)されてよい。そのような範囲は、定期的にまたは新たなデータの到着時に更新可能である。
【0058】
次いで、定常状態の労作が感知されるか否かが判定(302)される。労作は静的労作であっても動的労作であってもよい。さらに、とりわけ、植込型圧力センサ、加速度計、植込型筋電図(EMG)センサを用いて、労作が感知されてもよい。持続した労作活動の期間は、実施形態および労作パラメータ間で異なってよい。例えば、一実施形態では、定常状態の静的労作として認められるには2秒間の胸腔内圧の増大が必要とされ、定常状態の動的労作として認められるには60秒間の持続した加速度計活動が必要とされるが、全ての実施形態がそのように限定される訳ではない。別の実施形態では、定常状態の静的労作として認められるには10秒間の肺動脈圧の増大が必要とされ、定常状態の動的労作として認められるには10秒間の持続した下肢EMG活動が必要とされる。
【0059】
定常状態労作が検出(302)されない場合、方法300は工程302に戻り、定常状態労作のエピソードの監視を継続する。定常状態労作が発生している、または発生していたと判定(302)されると、その定常状態労作に対する心臓応答および心臓外応答が計算(303)される。そのような計算303は、定常状態労作のエピソードに関連した、感知された心臓応答データおよび心臓外応答データに基づくことが可能である。
【0060】
労作に対する心臓応答および労作に対する心臓外応答のテーブルならびにプロットが、次いで、更新および評価される(304)。そのようなテーブルの例を図4および図5に提供し、そのようなプロットの例を図6〜9に提供する。それらのテーブルおよび/またはプロットを用いて、定常状態労作に対する心臓応答および心臓外応答が正常であったか否かを判定することが可能である(305)。一部の実施形態では、直線傾向を示すことが正常である一方、応答データと労作との間に全体的な非直線的な関係は異常であり、心筋虚血を表す。例えば、定常状態労作に対する心臓応答および心臓外応答は、それらが等価な労作レベルについてのテーブルのデータにフィットする(例えば、最小二乗法回帰傾向フィッティング)場合、正常である。一部の実施形態では、定常状態労作に対する心臓応答および心臓外応答は、それらが等価な労作レベルについてのテーブルの1つ以上の傾向に従わない場合、異常である。一部の実施形態では、定常状態労作に対する心臓応答および/または心臓外応答は、関連するデータが所定の閾値を超えるか、不安定性を表す不定なパターンを示す場合、異常である。
【0061】
定常状態労作に対する心臓応答および心臓外応答が正常であると判定された場合(305)、方法300は工程302に戻り、定常状態労作のさらなる期間を監視する。定常状態労作に対する心臓応答および心臓外応答が正常であると判定されなかった場合(305)、そのイベントは虚血のイベントとして分類され、ログが更新される(306)。そのようなイベントの分類は、本明細書に説明するイベント分類の方法に従って行われることが可能である。一部の実施形態では、分類されたイベントが危険なまたは緊急の性質であ
る場合、患者および/または介護者に警告が与えられる。一部の実施形態では、方法300は工程302に戻り、定常状態労作のさらなる期間を監視する。
【0062】
図4および図5には、労作データに対する心臓外応答(図4)および心臓応答(図5)のサンプルのテーブルを示す。テーブルの労作に対する応答のデータは、加速度計によってミリ重力(mg、重力加速度(3.81m/s)の1000分の1)単位で測定された動的労作(401,501)の副範囲にしたがって配置されている。他の種類の心臓外応答データに加え、とりわけ、インピーダンスによって感知される分時換気量(402)は、労作の副範囲レベル(401)毎に判定される。心臓応答データについて、ST偏位502、特徴相関係数503、心室性期外収縮の発生504、および心房細動率505は、労作の副範囲レベル501に沿って編成されるように判定される。
【0063】
心臓応答データから分かるように、心房細動率504は、30〜50mgの間で増加し、60〜70mgの間で減少し、80〜120mgの間でまた増加する。この挙動は単なる内挿では示されない傾向を示すので、医師には特に興味深いものである。この傾向にフィットする心臓応答データの続くサンプルは正常であると判定され得るが、この知見なしでは、30〜50mg付近のAF%におけるスパイクは、80〜120mgに通常見られるAF%の上昇が早まったものと誤って解釈され、病理学的な変化であると誤って結論付けられ得る。
【0064】
図6〜9は、労作に対する心臓応答のプロットを示す。労作に対する心臓応答および心臓外応答の正常性は、これらのプロットから判定可能である。例えば、図6には、動的労作の増大とともに心拍数が着実に上昇することが示されている。そのような直線関係は、労作に対する心臓応答が正常であることを示し得る。図8の特徴相関係数データは、活動とFCCとの間の非直線的な関係を示しており、FCCは高い活動レベルにおいてのみ低下する。図7のST部および図9の心房細動率は、動的労作の増大に対しより不定な関係を示すが、高い労作レベルでは両方とも一般に上昇する。これらのパラメータはすべて、労作に対する心臓応答が異常であることを示し得る。複数の心臓パラメータおよび/または複数の心臓外パラメータは、労作に対する生理学的応答の正常性を判定して心筋虚血を検出および分類するために比較される。
【0065】
図6〜9のプロットは、以前に取得した応答データを表すことが可能であり、正常性を判定するために後続の応答データのプロットと比較される(とりわけ、傾向からの偏位、回帰分析、および特徴フィッティング)。
【0066】
一部の実施形態では、心機能を監視し定常状態期間の正常性を評価するために、ベースラインの静的および/または動的労作/生理学的応答の関係を確立することが有用である。このようにして、臨床設定時に、および/または定期的(例えば、毎日の自発試験)に、装置が較正され得る。較正は、例えば、患者にバルサルバ法または排便を行わせ、静的労作に対する応答を判定することが含まれる。較正は、患者に10,20,30mmHgの負荷圧力でバルサルバ法を行わせることによって実行可能であり、各試験中に心臓応答信号および心臓外応答信号が測定される。同様に、患者に様々なレベルの強度で体力テスト(例えば、歩行)を行い、労作強度のレベルを通じて標準的な労作に対する心臓応答および心臓外応答を判定してもよい。発生したセンサ信号は、次いで、異常な心機能および心筋虚血を表すことの可能な偏位を後に評価するための較正標準(例えば、ベースライン)として使用するために表にされてよい。
【0067】
本明細書に図示および/または記載するテーブル、プロット、および方法を用いて、心筋虚血を分類し、心筋虚血の発生を予測し、警告を提供するおよび/または治療を提供することが可能である。心筋虚血の前の期間を用いて、心筋虚血に関連した生理学的な合併
症が超えそうな労作の閾値(例えば、胸腔内圧および/または加速度計活動によって測定されるものなど)を確立することが可能である。様々な種類の生理学的な合併症について、複数の閾値を確立することが可能である(例えば、呼吸困難に対する1つの労作の閾値、動悸に対する別の閾値)。
【0068】
例えば、パターンは過去の定常状態期間に基づき認識され、この場合、患者の静的労作強度(例えば、胸膜腔圧力)が一定のレベルに到達する場合、患者はPVC、または他の心臓の合併症を経験する可能性が高い。患者の静的労作がその閾値を超えることを装置が感知し、異常な心臓応答および/または心臓外応答が観察される場合、装置は、行動的および環境的なストレス源に対処するように、患者および/またはその症状の保健専門家に警告を与えてよい。一部の実施形態では、ペースメーカーおよび/または薬剤送達装置などの装置が適切な動作を行ってよい(例えば、労作レベルに関連した特定の心臓状態を補償する、または心筋虚血に対処する薬剤を送達するように調整された、電気的な心臓の治療を送達する)。
【0069】
そのような実施形態は、静的労作を考慮すると特に有利である(患者は一般に非歩行姿勢と循環系にストレスを与えて心筋虚血に至り得る行動とを関連付けない場合があるので)。そのため、本発明の態様によって、他の場合には心筋虚血に関連付けられない行動的および環境的なストレスを患者が認識し、避けることが補助される。さらに、植込型装置は心筋虚血に対してより高感度になり、労作および心筋虚血に関連した生理学的な問題を想定し対処することが可能である。
【0070】
図10〜14は、労作に対する心臓応答と労作に対する心臓外応答との様々なプロットを示す。これらの図では、とりわけ、正常性、パターン、偏位、フィッティング、適合などをどのように判定可能であるかを説明する。例えば、図10に示す労作に対する心臓応答データのパターンでは、心臓応答はステップ関数に従う(一定の活動レベルで明らかな増大を示す)。心臓応答レベルは、異なる2つのレベルの心臓応答において十分に一定であり、一方のレベルは傾向線1001によって示されている。一実施形態では、データがST部を示す場合、正常応答は平坦なパターン(例えば、一貫したレベル)を有することが期待される。しかしながら、例えば、図10の2段のパターンは、異常なST部応答を示す。
【0071】
図10〜14は、さらに、心筋虚血を労作に関連する虚血または労作に関連しない虚血として性質決定するために用いられる。さらに、胸痛のエビデンス(例えば、患者が告した)と組み合わされると、そのような方法は、狭心症を安定、不安定、および血管攣縮として性質決定することが可能である。心臓応答データに基づき、活動の閾値1002は、2つの心臓応答のレベル間のステップ遷移にて確立され得る。労作に対する心臓応答データの後続のセットが図10のパターンのうちの1つ以上にフィットしない場合(心臓応答データが応答レベル(例えば、1401)から外れない、または同じ閾値1402のレベル間で遷移しない場合など)、そのデータは、労作に関連しない心筋虚血、また胸痛が存在する場合には不安定狭心症を表すものと判定される。図12は、図10の傾向にフィットせず、データが生理学的応答および労作強度の間の比例関係を示さないので、労作に関連しない虚血(および不安定狭心症)を表す、不定なデータの一例である。
【0072】
一部の実施形態では、生理学的応答と労作強度と間の比例関係(例えば、心臓および/または心臓外応答データによって示される)の存在によって、心筋虚血が労作に関連するものであるか関連しないものであるかが示される。例えば、労作の増大が心筋虚血を表す生理学的パラメータにおいて比例的な変化を示す場合、その心筋虚血は労作に関連するものとして分類される。しかしながら、生理学的パラメータが労作強度に対する関係を示さない場合(例えば、データが不定なデータである)、心筋虚血は労作に関連していない。
【0073】
図11に示す労作に対する心臓外応答のパターンでは、2つのスロープ傾向1101,1102と、それらの間の閾値1103とが識別可能である。図11に示したデータは、2つの異なるスロープ110,1102のため、異常であると判定され得る(心臓外応答および労作レベルの間のより一貫した相関性とは対照的に)。これらの傾向にフィットしない後続のデータ(2つのスロープを有するもの、または異なるスロープ値を有するものなど)は、不安定狭心症であると判定され得る。図13に示す不定な労作に対する心臓外応答データは、図11の傾向にフィットしないことを根拠として、不安定狭心症を示すと判定され得る。
【0074】
遷移閾値1002,1103は、狭心症閾値にも相当することがあり、その場合、狭心症は閾値1002,1103を越えた労作のレベル(閾値未満で示された傾向が破れる)で経験される。そのため、閾値1002,1103および本明細書に記載の方法は、狭心症のエピソードを予測および分類するために用いることが可能である。患者のフィードバックを用いて、胸痛または他の症状が狭心症閾値の超過に対応して経験されたことを確認することが可能である。狭心症閾値は、前のエピソード、労作強度のレベルが狭心症閾値に近付くおよび/または超過するとき後続のエピソード中に患者および/または医者が労作の警告をされたことに基づき、確立され得る。そのような場合、自動的な薬剤送達または心臓電気治療の送達などの治療動作が開始されること、または狭心症閾値に近付くもしくは狭心症閾値を超える現在のレベルの労作に基づき変更されることが可能である。
【0075】
一貫したパターンまたは不定なパターンの心臓外応答および/または心臓応答に基づき、虚血エピソードは、安定狭心症、不安定狭心症、または血管攣縮にさらに分類されることが可能である。心臓外応答および心臓応答がはっきりした転換点を有する2部分様の直線関係を示す場合、そのエピソードは安定狭心症である可能性が高く、転換点の労作レベルが狭心症の労作閾値である。心臓外応答または心臓応答が短期間(例えば、2,3分間)の異常値が頻繁に発生する不定なパターンを示す場合、そのエピソードは不安定狭心症である可能性が高い。異常な応答が静的労作中に観察される場合、そのエピソードは血管攣縮である可能性が高い。
【0076】
図10および図11は、安定狭心症の例であり、応答データは1001,1002,1101,1102の傾向にフィットする。図12および13は不安定狭心症の例であり、応答データは1001,1002,1101,1102の傾向にフィットせず、一般に不定である。一部の実施形態では、安定狭心症のエピソードは、傾向との比較からではなく、不安定狭心症から区別され得るが、しかしながら数々の外れた応答測定値を含む散乱したデータを有する。例えば、図12に示すように、労作に対する心臓応答データが労作に対する心臓応答について3つ以上の外れた測定値を有する場合、狭心症は不安定であると言われる。
【0077】
静的労作に対する心臓応答および心臓外応答は、労作に基づく次のパラメータ(静的および動的)や応答測定値(心臓および心臓外)を調べることによって評価することが可能である:とりわけ、最大値、信号のスロープ(例えば、最大の信号値に対するスロープおよび生理学的な回復に対するスロープ、1101)、利得(最大労作/最大心臓外応答)、回復オーバーシュート、労作に対する心臓応答および/または心臓外応答の位相(例えば、遅延)。
【0078】
上述のテーブルおよびプロットを用いて、診断および治療の開始および/または調節に有用なパターンを認識することが可能である。例えば、所与の労作レベルにおける異常に高い心拍数および/または呼吸レベルは、虚血を示唆し、さらに治療またはアラームのトリガを行うことがある。一回換気量の減少は浅促呼吸の発現を示す場合があり、虚血のイ
ンジケータになり得る。静脈血酸素飽和度は、心臓外パラメータとして、虚血を示す場合がある(例えば、相対的に低い静脈血酸素飽和度が低い労作レベルで検出されるとき)。所与の労作レベルにおける拍出量の減少は、虚血を示す場合がある。
【0079】
図15に示す植込型装置1500には、本明細書に記載の虚血検出技術を実装可能な回路が用いられる。植込型装置1500は、植込型ハウジング1501で囲まれた心臓リズム管理(CRM)回路を備える。CRM回路は、心臓内リードシステム1510に電気的に接続されている。図15には心臓内リードシステム1510を示すが、これに加えて、またはこれに代えて、様々な他の種類のリード/電極システムが用いられてよい。例えば、リード/電極システムは、心臓ソックス、心外膜パッチなど、心臓および/または心臓血管の外に電極を備える心外膜リード/電極システムを含んでもよく、皮膚表面下でかつ胸郭外に植え込まれた電極を有する皮下システムを含んでもよく、その両方を含んでもよい。
【0080】
心臓内リードシステム1510の一部は患者の心臓へ挿入される。リードシステム1510は、患者の心臓からの電気信号を感知するおよび/または心臓にペーシングパルスを送達するための、1つ以上の心房室中、上、または付近に配置された心臓ペース/感知電極1551〜1556を備える。心臓内感知/ペース電極1551〜1556(図15において示すものなど)を用いて、左心室、右心室、左心房、および/または右心房を含む心臓の1つ以上の房室の感知および/またはペーシングを行うことができる。CRM回路は、電極1551〜1556を介して送達される電気刺激パルスの送達を制御する。電気刺激パルスは、血行動態的に充分なレートで心臓が鼓動することを保証するために用いられてもよく、心拍の同時性を改善するために用いられてもよく、心拍の強度を高めるために用いられてもよく、および/または所定の治療と矛盾しない心機能を支持する他の治療目的のために用いられてもよい。
【0081】
リードシステム1510は、心臓に除細動/電気除細動パルスを送達するための除細動電極1541,1542を備える。
左心室リード1505は、左心室に隣接した冠状静脈系内の様々な場所に、複数の電極1554a〜1554dおよび1555を配置する。左心室の複数の場所または1つの選択した場所で心室を刺激することによって、例えば、鬱血性心不全(CHF)に苦しむ患者の心拍出量を増加させること、および/または他の利益を与えることができる。電気刺激パルスは、心機能を向上させるタイミングシーケンスおよび出力構成にしたがって、選択された電極を介して送達されてよい。図15には複数の左心室電極を示すが、他の構成では、これに代えて、またはこれに加えて、複数の電極が、右心房、左心房、および右心室のうちの1つ以上に提供されてよい。
【0082】
植込型装置1500は、胸膜腔内に配置され静圧を測定するように構成された圧力センサ1599を備えることが可能である。1つ以上の圧力センサは、これに加えて、またはこれに代えて、リードシステム1510およびハウジング1501上に配置されることが可能である。
【0083】
植込型装置1500のハウジング1501の部分は、随意で、1つ以上の複数の缶電極1581または不関電極1582として働くことができる。ハウジング1501は、ヘッダ1589を含むように示されている。ヘッダ1589は、1つ以上のリード線とハウジング1501との間の着脱可能な取り付けを行うように構成されてよい。植込型装置1500のハウジング1501は、1つ以上の缶電極1581を備えてよい。植込型装置1500のヘッダ1589は、1つ以上の不関電極1582を備えてよい。容器電極1581および/または不関電極1582は、心臓のペーシング刺激および/または除細動刺激を送達するために、および/または心臓の電気的な心臓信号を感知するために用いられても
よい。
【0084】
通信回路は、CRM回路と患者外の装置(外部プログラム装置または最新型患者管理(APM)システムなど)との間の通信を容易にするためにハウジング1501内に配置される。また、植込型装置1500は、患者の代謝要求を感知するための、および心臓に送達されたペーシングパルスを調節すること、および/または患者の代謝要求に応じるように電極の組み合わせの選択を更新することのためのセンサおよび適切な回路も備えてよい。
【0085】
一部の実装では、APMシステムは、本明細書に説明した処理(とりわけ、評価、推定、比較、選択、および更新を含む)のうちの一部を実行するために用いられてもよい、本明細書に記載の方法、構造、および/または技術は、次の引用文献のうちの1つ以上に記載のものを含め、他の様々な構造、特徴、および方法を含んでよい:米国特許6,221,011号明細書、米国特許第6,270,457号明細書、米国特許第6,277,072号明細書、米国特許第6,280,380号明細書、米国特許第6,312,378号明細書、米国特許第6,336,903号明細書、米国特許第6,358,203号明細書、米国特許第6,368,284号明細書、米国特許第6,398,728号明細書、および米国特許第6,440,066号明細書。そのそれぞれの全体を各々引用によって本明細書に援用する。
【0086】
一定の実施形態では、植込型装置1500は、心臓の不整頻拍の検出と、除細動治療および/または不整頻拍治療ペーシング(ATP)による治療とを行うための回路を備える。除細動性能を提供する構成は、不整頻拍を終了させるまたは軽減するべく心臓に高エネルギーパルスを送達するための除細動コイル1541,1542の使用を利用してもよい。
【0087】
複数の電極を用いるCRM装置(本明細書に示したものなど)は、心周期中、心房および/または心室の複数の部位にペーシングパルスを送達可能である。一定の患者は、心室の異なる領域にポンピング負荷および/または脱分極シーケンスを分散させるために、様々な時間に心房室の一部(心室など)を活性化させることで利益を得る場合がある。多電極ペースメーカーは、異なる心周期中における心房室内の選択した電極の組み合わせの間でペーシングパルスの出力を切り替える性能を有する。
【0088】
植込型装置1500は、呼吸に関連した様々な症状を感知するために用いられ得る運動検出器を組み込む場合がある。例えば、運動検出器は、例えば、活動レベルおよび/または胸壁の移動(呼吸努力に関連し得る)に対して構成されてよい。運動検出器は、植込型装置1500のハウジング1501中または上に配置された加速度計として実装されてもよい。
【0089】
植込型装置1500のリードシステム1510は、患者の呼吸波形または呼吸に関連した他の情報を得るために用いられ得る1つ以上の経胸インピーダンスセンサを含んでよい。経胸インピーダンスセンサは、例えば、心臓の1つ以上の房室中に配置された1つ以上の心臓内電極1541,1542,1551〜1556を備えてよい。心臓内電極1541,1542,1551〜1556は、植込型装置1500の筐体内に配置されたインピーダンス駆動/感知回路に接続されてよい。
【0090】
一実施形態では、インピーダンス駆動/感知回路は、インピーダンス駆動電極1551とハウジング1501上の缶電極との間の組織を通じて流れる電流を発生させる。缶電極に対するインピーダンス感知電極1552の電圧は、患者の経胸インピーダンスが変化するにつれて変化する。インピーダンス感知電極1552と缶電極との間で生じた電圧信号
は、インピーダンス感知回路によって検出される。他の場所および/またはインピーダンス感知および駆動電極の組み合わせも可能である。
【0091】
インピーダンス感知電極1552において生じた電圧信号は、患者の経胸インピーダンスに比例しており、患者の呼吸波形を表す。経胸インピーダンスは呼吸の吸気時に増大し、呼吸の呼気時に減少する。経胸インピーダンスのピーク間遷移は、1つの呼吸において移動した空気の量に比例し、一回換気量を表す。分当たりに移動した空気の量は、分時換気量を表す。正常な「休息時」の呼吸パターン(例えば、ノンレム睡眠中)には、ほぼ中断のない規則的でリズミカルな吸気−呼気サイクルが含まれる。
【0092】
図16には、例えば、図15の植込型装置1500の電極を用いて取得され得る、インピーダンスベースの呼吸信号を示す。
図16には、インピーダンス信号1600を示す。インピーダンス信号1600は、本明細書に説明されるように、例えば、植込型装置と組み合わされているインピーダンス感知電極から生じてよい。インピーダンス信号1600は、経胸インピーダンス(図16のグラフの左側の縦軸上にインピーダンス1630として示す)に比例する。
【0093】
インピーダンス1630は呼吸の吸気時1620に増大し、呼吸の呼気時1610に減少する。インピーダンス信号1600は、図16のグラフの右側の縦軸上に示す一回換気量1640によって表される、吸い込まれた空気の量にも比例する。呼吸中のインピーダンスの変動(インピーダンス信号1600のピーク間変動として識別可能)は、呼吸の一回換気量1640を判定するために用いられてよい。一回換気量1640は、1つの呼吸(すなわち、呼気1610および吸気1620からなる1つのサイクル)において移動した空気の体積に相当する。また、分時換気量も判定されてよく、図16のグラフの横軸上に示す時間1650の1分間当たりに移動した空気の量に相当する。
【0094】
図17は、本発明の実施形態にしたがって心筋虚血を検出するための回路を含み得る、植込型装置1700のブロック図である。植込型装置1700は、心臓にペーシングパルスを送達するペーシング治療回路1730を備えてよい。植込型装置1700は、随意で、危険な不整頻拍を終了させるために心臓に高エネルギー除細動または電気除細動刺激を送達するように構成された、除細動/電気除細動回路1735を備えてよい。
【0095】
ペーシングパルスは、心臓内の複数の場所および/または皮下の胸郭以外の場所に配置された複数の電極1705(電極の組み合わせ)を介して心臓に送達される。1つ以上の電極が1つの心房室内に配置されてもよい。電極1705は、電極制御プロセッサ1740および/または植込型装置1700の他の部品に対し、様々なペーシング構成の電極1705を選択的に接続するために用いられる、スイッチマトリクス1725回路に接続される。
【0096】
制御プロセッサ1740は、電極1705、労作センサ1715、および心臓外センサ1716から受信した情報を用いて、他の機能に加え、とりわけ、心筋虚血を検出および分類することが可能である。
【0097】
労作センサ1715は、1つ以上の圧力センサ1717および1つ以上の活動センサ1718を含むことが可能である。圧力センサ1717は、他の圧力感知手段に加え、とりわけ、圧電素子を含むことが可能である。
【0098】
活動センサ1718は、他の感知手段に加え、とりわけ、傾斜センサ、姿勢モニタ、および/または加速度計を備えることが可能である。
様々な心臓外パラメータは、心臓外センサ1716および/または電極1705を用い
て監視可能である。例えば、インピーダンスは電極1705を用いて感知可能であり、このインピーダンスを用いて、他のパラメータに加え、とりわけ、呼吸速度、一回換気量、および/または分時換気量が判定される。心臓外センサ1716は、pHセンサ、酸素飽和度センサ、音響センサ、電気信号センサ、圧力センサ、歪みゲージ、荷重トランスデューサ、筋電図測定電極などを備えることが可能である。
【0099】
植込型装置1700は、通常、外部装置のプログラム装置(プログラマ)1760または外界センサ1761など他の患者外の装置と通信を行うための、バッテリ電源(図示せず)および通信回路1750を備える。データ、パラメータ、測定値、パラメータ評価値、パラメータ推定値、および/またはプログラム命令などの情報は、装置プログラマ1760、外界センサ1761、患者管理サーバ1770、植込型装置1700、および/または他の外部システムとの間で転送可能である。一部の実施形態では、制御プロセッサ1740は、装置プログラマ1760、患者管理サーバ1770、または他の患者外システムの部品であってよい。
【0100】
CRM装置1700は、制御プロセッサ1740によって、また制御プロセッサ1740プロセッサを通じてアクセスされるプログラム命令および/またはデータを記憶するためのメモリ1745を備える。様々な構成において、メモリ1745は、本明細書に記載の様々な方法および機能の植込型装置1700による実行を容易にするための活性化閾値、パラメータ、指令、測定値、プログラム命令などに関連した情報を記憶するために用いられる。
【0101】
本発明の一部の実施形態は、患者に警報を与えるためのスピーカまたは他のノイズ生成装置を含んでよい。本発明の一部の実施形態は、警報を与えるための振動部品を備えてよい。警報も、通信回路1750を用いて植込型医療装置1700との直接的または間接的な通信を行う外部の装置によって提供されてよい(例えば、ノイズ、振動、表示)。警報は、本明細書に説明した様々な症状下にある患者に対し提供されてもよい(例えば、心筋虚血のエピソードが発生するまたは発生した可能性があると判定される)。
【0102】
図18は、植え込まれた医療装置と解析者(医師など)または患者が対話することを可能とするように構成されたユーザインタフェースを提供する、患者外装置1800を示す。患者外装置1800はCRMプログラマとして記載されているが、本発明の方法は、携帯電話装置、リモートシステムと共に用いられるコンピュータまたは患者情報サーバなど、他の種類の装置上でも動作可能である。プログラマ1800は、プログラムヘッド1810を備える。プログラムヘッド1810は、CRMとプログラム装置1800との間のテレメトリリンクを確立するために患者の身体の上において植え込まれた装置の植込部位近傍に配置される。テレメトリリンクは、植込型装置によって収集されたデータがプログラマ1800に対しダウンロードされることを可能とする。ダウンロードされたデータは、プログラマメモリ1865に記憶される。
【0103】
プログラマ1800は、グラフィックス、プロット、テーブル、英数字記号、および/または他の情報を表示することの可能なグラフィック表示画面1820(例えば、液晶ダイオード表示画面)を備える。例えば、プログラマ1800は、CRMからダウンロードした図4〜5のテーブルおよび/または図6〜14のプロットのうちの1つ以上をスクリーン1820上にグラフィック表示する。表示画面1820はタッチ感知機能を備え、使用者がスタイラス1830または使用者の指を用いて表示画面1820に触れることによって情報またはコマンドを入力可能であってもよい。これに代えて、またはこれに加えて、使用者はキーボード1840またはマウス1850を介して情報またはコマンドを入力してもよい。
【0104】
プログラマ1800は、プログラマ1800のメモリ1865に記憶されているプログラム命令を用いて本明細書に開示される方法を実行するための、ソフトウェアおよび/またはハードウェアを含むデータプロセッサ1860を備える。一実施形態では、感知されたデータは、プログラマ1800の通信回路1866を介してCRMから受信され、メモリ1865に記憶される。データプロセッサ1860は、感知されたデータ(静的労作、動的労作、心臓活動、および/または心臓外活動に関連したデータ含んでよい)を評価する。
【0105】
ここで図19を参照すると、本発明の患者植込型医療装置(PIMD)はAPMシステム1900の構造内で用いられてもよい。APMシステム1900は、医師および/または他の臨床家が遠隔的および自動的に生理学的機能や他の患者症状を監視することを可能とする。一例では、心臓ペースメーカー、除細動器、再同期装置、薬剤ポンプまたは、または神経刺激器として実装されるPIMDは、リアルタイムな患者のデータ収集、解析、診断、および治療を可能とする様々な電気通信および情報技術を備えてよい。
【0106】
本明細書に記載される様々なPIMDの実施形態は、最新の患者管理と共に用いられてもよい。本明細書に記載の方法、構造、および/または技術(遠隔的な患者/装置の監視、診断、治療、または他のAPMに関連した方法を提供するように適合され得る)は、次の引用文献のうちの1つ以上の特徴を含んでよい:米国特許第6,221,011号明細書、米国特許第6,270,457号明細書、米国特許第6,277,072号明細書、米国特許第6,280,380号明細書、米国特許第6,312,378号明細書、米国特許第6,336,903号明細書、米国特許第6,358,203号明細書、米国特許第6,368,284号明細書、米国特許第6,398,728号明細書、および米国特許第6,440,066号明細書。これらを引用によって本明細書に援用する。
【0107】
図19に示すように、APMシステム1900は、本発明の実施形態によるパラメータ監視、診断、労作評価、患者治療、治療選択、および/または治療制御を実装するために用いられてもよい。医療システム1900は、例えば、1つ以上の患者内医療装置1910(PIMDなど)と、1つ以上の患者外医療装置1920(モニタまたは信号表示装置など)とを備えてもよい。患者内医療装置1910および患者外医療装置1920の各々は、1つ以上の患者監視ユニット1912,1922、診断ユニット1914,1924、および/または治療ユニット1916,1926を備えてもよい。
【0108】
患者外医療装置1920は、監視、診断、および/または患者の外で(すなわち、患者の身体内に侵襲性に植え込まれずに)治療機能を実行する。患者外医療装置1920は、本明細書に説明した様々なパラメータを外部で測定するために患者上に配置されても、患者の近傍に配置されてもよく、患者の外の任意の場所に配置されてよい。
【0109】
患者内医療装置および患者外医療装置1910,1920は、1つ以上のセンサ1941,1942,1945,1946、患者入力/トリガ装置1943,1947、および/または他の情報取得装置1944,1948に接続されてよい。センサ1941,1942,1945,1946、患者入力/トリガ装置1943,1947、および/または他の情報取得装置1944,1948は、患者内医療装置および患者外医療装置1910,1920の監視、診断、および/または治療の機能に関連して症状を検出するために用いられ得る。例えば、患者入力/トリガ装置1943,1947、および/または他の情報取得装置1944,1948は、患者によって経験された吐気、軽い目眩、胸痛、および疲労など、心筋虚血の診断に関連し得る症状に関する情報を入力するために、患者によって用いられ得る。
【0110】
医療デバイス1910,1920は各々、患者内に完全にまたは部分的に植え込まれた
、1つ以上の患者内センサ1941,1945に接続されてよい。また、医療デバイス1910,1920は、患者上、患者付近、または患者に対して遠隔的な位置に配置された、患者外センサにも接続されてよい。患者内センサおよび患者外センサは、患者に影響を与える条件(生理学的または環境的な条件など)を感知するために用いられる。
【0111】
患者内センサ1941は、1つ以上の内部リード1953を通じて患者内医療デバイス1910に接続されてよい。なおも図19を参照すると、1つ以上の患者内センサ1941は、1つ以上の患者内センサ1941と患者内医療デバイス1910および/または患者外医療装置1920との間の無線通信をサポートするためのトランシーバ回路を備えてよい。患者内センサ1945は、無線接続1959を通じて、および/または患者内医療デバイス1910と患者外医療装置1920との間の通信を用いて、患者外医療装置1920に接続されてもよく、ワイヤまたは他の通信チャネルを用いて接続されてもよい。
【0112】
患者外センサ1942は、1つ以上の内部リード1955を通じて患者内医療デバイス1910に接続されてもよい。患者外センサ1942は、患者内医療デバイス1910と無線通信を行ってもよい。患者外センサ1942は、1つ以上のリード線1957を通じて、または無線リンクを通じて、患者外医療装置1920に接続されてもよい。
【0113】
様々な実施形態では、患者外医療装置1920は、心臓外信号と心臓信号とを同時に表示するように、および/または図4〜5のテーブルおよび/または図6〜14のプロットのうちの1つ以上を表示するように構成された、視覚的表示部を備える。
【0114】
なおも図19を参照すると、医療デバイス1910,1920は、医療デバイス1910,1920の監視、診断、または治療の機能に関連して有用な情報を記憶するデータベースなど、1つ以上の情報取得装置1944,1948に接続されてもよい。例えば、医療デバイス1910,1920のうちの1つ以上は、ネットワークを通じて患者情報サーバ1930に接続されてもよい。
【0115】
入力/トリガ装置1943,1947は、医師、臨床家、および/または患者が手動でトリガを行うこと、および/または医療デバイス1910,1920へ情報を転送することおよび/またはAPMシステム1940および/または患者外医療装置1920から患者内装置1910へ戻すように情報を転送することを可能とするために用いられる。入力/トリガ装置1943,1947は、知覚された心臓イベント、疲労、胸痛、患者はどれくらい気分が良いか、または医療デバイス1910,1920によっては自動的に感知や検出されない他の情報など、患者認知に関する情報を入力するために特に有用な場合がある。例えば、患者は、心臓イベントを知覚すると、入力/トリガ装置1943のトリガを行ってもよい。このトリガが、次いで、患者内装置1910において心臓信号および/または他のセンサ信号の記録を開始する。その後、臨床家が入力/トリガ装置1947のトリガを行い、表示および診断のため、患者内装置1910から患者外装置1920へ記録された心臓信号および/または他の信号の転送を開始させてもよい。
【0116】
一実施形態では、患者内医療デバイス1910および患者外医療装置1920は、医療装置1910,1920の間の無線リンクを通じて通信を行ってよい。例えば、患者内装置および患者外装置1910,1920は、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11、および/または専用の無線プロトコルなど、短距離無線リンクを通じて接続されてよい。この通信リンクによって、患者内装置1910と患者外装置1920との間の単方向または双方向通信が可能となる。データおよび/または制御信号は、医療装置1910,1920の機能を調整するために、患者内医療装置1910と患者外医療装置1920との間で送信されてよい。
【0117】
別の実施形態では、患者のデータは、医療装置のうちの1つ以上から定期的にまたは命令時にダウンロードされ、患者情報サーバ1930に記憶されてよい。医師および/または患者は、例えば、患者データを取得するため、または記録および/または治療の開始、終了、または変更を行うために、医療装置および患者情報サーバ1930と通信を行ってよい。
【0118】
患者情報サーバ1930上に記憶されたデータは、1つ以上の端末1950(例えば、患者の家または医師の事務所に配置されたリモートコンピュータ)を通じて患者および患者の医師によってアクセス可能であってよい。患者情報サーバ1930は、患者内医療装置および患者外医療装置1910,1920のうちの1つ以上と通信を行って医療装置1910,1920の監視、診断、および/または治療機能の遠隔制御を行うために用いられてもよい。
【0119】
一実施形態では、患者の医師は、医療装置1910,1920から患者情報サーバ1930に送信された患者データにアクセスを行ってよい。患者データの評価後、患者の医師は、APMシステム1940を通じて患者内装置1910または患者外装置1920のうちの1つ以上と通信を行い、患者内医療システム1910および/または患者外医療システム1920の監視、診断、および/または治療機能の開始、終了、または変更を行ってもよい。
【0120】
別の実施形態では、患者内医療装置および患者外医療装置1910,1920は、直接的な通信を行わず、APMシステム1940を通じて間接的に通信を行ってよい。この実施形態では、APMシステム1940は、2つ以上の医療装置1910,1920の間の仲介装置として動作してよい。例えば、データおよび/または制御情報は、医療装置1910,1920のうちの一方からAPMシステム1940に転送されてよい。APMシステム1940は、医療装置1910,1920のうちの他方にデータおよび/または制御情報を転送してよい。
【0121】
一実施形態では、APMシステム1940は、患者内医療装置1910および/または患者外医療装置1920と直接的に通信を行ってよい。別の実施形態では、APMシステム1940は、各医療装置1910,1920とそれぞれ関連した医療装置プログラマ1960、1970を通じて患者内医療装置1910および/または患者外医療装置1920と通信を行ってよい。上述のように、患者内医療デバイス1910は、植込型PIMDの形態を取ってもよい。
【0122】
本発明の様々な実施形態では、図に記載したまたは示した全てのまたは一部の態様/特徴を用いることが可能である。例えば、図15の植込型装置は、図17の回路を含み、図18のプログラマとインタフェースを行い、図19の患者内医療デバイスとして働き、本明細書に説明した各方法(例えば、図1〜3)を実行し、図4〜14のテーブルおよびプロットを生成する。
【0123】
本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の好適な実施形態に対し、様々な修正および追加を施すことが可能である。したがって、本発明の範囲は上述の特定の実施形態によって限定されるべきでなく、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ規定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
労作中の虚血を検出する方法であって、
静的な生理学的労作を表す静的労作測定値を取得する工程と、
静的労作測定値に基づき生理学的労作の定常状態期間を識別する工程と、
識別された定常状態期間の各々について生理学的労作の強度を評価する工程と、
識別された生理学的労作の定常状態期間中、心臓外応答データを感知する工程と、
識別された生理学的労作の定常状態期間中、心臓応答データを感知する工程と、
識別された生理学的労作の定常状態期間に対応する心臓外応答データを、等価な生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報と比較する工程と、
心臓外応答データと心臓外応答情報との比較結果に基づき各定常状態期間について心臓外応答データの正常性を判定する工程と、
識別された生理学的労作の定常状態期間に対応する心臓応答データを、等価な生理学的労作強度に関連した心臓応答情報と比較する工程と、
心臓応答データと心臓応答情報との比較結果に基づき各定常状態期間について心臓応答データの正常性を判定する工程と、
識別された生理学的労作の定常状態期間のうちの1つ以上に心筋虚血が発生した可能性を判定する工程と、を備え、
1つ以上の定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間中に感知された心臓外応答データおよび心臓応答データの両方が異常であると判定される場合、相対的に高いと判定され、
1つ以上の定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間中に感知された心臓外応答データおよび心臓応答データのうちの一方のみが異常であると判定される場合、相対的に中位であると判定され、
1つ以上の定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間中に感知された心臓外応答データおよび心臓応答データのいずれも異常であると判定されない場合、相対的に低いと判定される、方法。
【請求項2】
静的労作測定値を取得する工程は、患者の内圧測定値を取得する工程を含み、
生理学的労作の定常状態期間を識別する工程は、患者の内圧測定値に基づき労作の定常状態期間を識別する工程を含み、
識別された定常状態期間について生理学的労作の強度を評価する工程は、患者の複数の内圧範囲のうちの1つに各期間を分類する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
識別された生理学的労作の定常状態期間中に加速度計データを感知する工程と、
識別された生理学的労作の定常状態期間のうちの1つ以上を静的な労作期間および動的な労作期間のいずれかとして分類する工程であって、加速度計データによって示される物理的な運動において対応する増加がなく静的労作測定値の増加が感知される場合、該1つ以上の期間は静的な労作として分類され、静的労作測定値の増加が加速度計データによって示される物理的な運動の増加に対応する場合、該1つ以上の期間は動的な労作として分類される、工程と、をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項4】
心臓外応答データの正常性を比較および判定する工程、ならびに心臓応答データの正常性を比較および判定する工程は、動的な労作期間として分類された労作の定常状態期間についてのみ実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
心臓外応答データ、心臓応答データ、および静的または動的な労作期間分類を用いて、狭心症の1つ以上のエピソードを安定狭心症、不安定狭心症または血管攣縮として分類する工程であって、
狭心症の1つ以上のエピソードに対応する労作の1つ以上の定常状態期間が動的な労作
として分類され、心臓外応答データおよび心臓応答データのいずれかが狭心症閾値を越えた労作強度に比例しない生理学的応答を示し、狭心症閾値未満では、心臓外応答データまたは心臓応答データは労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、狭心症の同1つ以上のエピソードは安定狭心症として分類され、
心臓外応答データおよび心臓応答データのいずれかが、狭心症閾値のない労作強度に比例しない生理学的応答を示し、狭心症閾値未満では心臓外応答データまたは心臓応答データが労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、狭心症の同1つ以上のエピソードは不安定狭心症として分類され、
狭心症の1つ以上のエピソードに対応する労作の1つ以上のエピソードが静的な労作として分類され、心臓外応答データおよび心臓応答データのいずれかが狭心症閾値を越えた労作強度に比例しない生理学的応答を示し、狭心症閾値未満では、心臓外応答データまたは心臓応答データは労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、狭心症の同1つ以上のエピソードは血管攣縮として分類される、工程をさらに備える請求項3に記載の方法。
【請求項6】
心臓外応答情報および心臓応答情報は各々、傾向の取られた以前に収集された患者データを含み、心臓外応答データおよび心臓応答データの正常性を判定する工程は、心臓外応答データおよび心臓応答データを傾向の取られた以前に収集された患者データとそれぞれ比較して、心臓外応答データおよび心臓応答データが以前に収集された患者データの傾向に対応するか否かを判定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
心臓外応答情報および心臓応答情報は各々、以前に判定されたベースラインを含み、心臓外応答データおよび心臓応答データの正常性を判定する工程は、前記ベースラインからの心臓外応答データおよび心臓応答データの偏位を評価する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
識別された定常状態の生理学的労作の期間のうちの1つ以上について虚血の相対的に高い可能性が判定されることに基づき治療を変更する工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
心臓外応答データを感知する工程は、分時換気量、一回換気量、肺血管圧力、体幹温、静脈血酸素飽和度、および呼吸速度のうちの1つ以上を感知する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
心臓応答データを比較し、心臓応答データの正常性を判定する工程は、電気的な心臓データを電気的な心臓情報と比較する工程を含み、電気的な心臓データは、心拍数、ST偏位、STスロープ、FCC、PVC、AF%、QRS幅、T波振幅、T波極性、およびR波振幅のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
識別された生理学的労作の定常状態期間のうちの1つ以上心筋虚血を、労作に関連した心筋虚血または労作に関連しない心筋虚血として分類する工程であって、
1つ以上の定常状態期間中に感知された心臓外応答データまたは心臓応答データが、閾値を越えた労作強度に比例しない生理学的応答を示し、閾値未満では、心臓外応答データまたは心臓応答データが労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、心筋虚血は労作に関連した心筋虚血として分類され、
1つ以上の定常状態期間中に感知された心臓外応答データまたは心臓応答データが、閾値のない労作強度に比例しない生理学的応答を示し、閾値未満では、心臓外応答データまたは心臓応答データが労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、心筋虚血は労作に関連しない心筋虚血として分類される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
心筋虚血の性質を決定するためのシステムにおいて、
患者の静的労作に応答する労作信号を出力するように構成された植込型の静的労作センサであって、労作信号は静的労作データを含む、植込型の静的労作センサと、
生理学的パラメータに応答する生理学的信号を出力するように構成された1つ以上の植込型の生理学的パラメータセンサであって、生理学的信号は生理学的労作応答データを含む、植込型の生理学的パラメータセンサと、
メモリと、
プロセッサであって、メモリに記憶されたプログラム命令を実行してシステムに、
静的労作データに基づき生理学的労作の定常状態期間を識別し、定常状態期間の各々に複数の労作強度レベルのうちの1つを割り当てることと、
生理学的労作応答データがそれぞれ出力された識別された生理学的労作の定常状態期間について、該識別された生理学的労作の定常状態期間の割り当てられた労作強度レベルにしたがって生理学的労作応答データを編成することと、
生理学的労作応答データから編成された定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作強度に関連した記憶された生理学的応答情報と生理学的労作応答データとを比較することと、
生理学的応答情報と生理学的労作応答データとの比較結果に基づき前記期間のうちの1つ以上に心筋虚血が発生した可能性を判定することと、を行わせるように構成されたプロセッサと、
を含むシステム。
【請求項13】
前記1つ以上の植込型の生理学的パラメータセンサは、
心臓外パラメータに応答する心臓外信号を出力するように構成された植込型心臓外パラメータセンサであって、心臓外信号は心臓外応答データを含む、センサと、
心臓パラメータに応答する心臓信号を出力するように構成された植込型心臓パラメータセンサであって、心臓信号は心臓応答データを含む、センサと、
を含み、
プロセッサの、生理学的応答データの編成は、心臓外応答データおよび心臓応答データがそれぞれ出力された識別された生理学的労作の定常状態期間について、該識別された生理学的労作の定常状態期間の割り当てられた労作強度レベルにしたがってそれぞれの心臓外応答データおよび心臓応答データを編成することを含み、
プロセッサの、生理学的労作応答データと記憶された生理学的応答情報との比較は、心臓外応答データおよび心臓応答データから編成された定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報および心臓応答情報と、心臓外応答データおよび心臓応答データとをそれぞれ比較することを含み、
心臓外応答データおよび心臓応答データと心臓外応答情報および心臓応答情報との比較結果に基づき前記期間のうちの1つ以上に心筋虚血が発生した可能性を判定することを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記期間の心臓外応答データおよび心臓応答データの両方が心臓外応答情報および心臓応答情報の傾向から偏位している場合、識別された定常状態期間の期間に心筋虚血が発生した可能性は相対的に高いと判定され、
前記期間の心臓外応答データおよび心臓応答データのうちの一方のみが心臓外応答情報および心臓応答情報の傾向から偏位している場合、前記期間に心筋虚血が発生した可能性は相対的に中位であると判定され、
前記期間の心臓外応答データおよび心臓応答データのいずれも心臓外応答情報および心臓応答情報の傾向から偏位していない場合、前記期間に心筋虚血が発生した可能性は相対的に低いと判定される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
植込型の静的労作センサは、患者の内圧を感知して患者の静的労作に応答する圧力信号を出力するように構成されており、圧力信号は静的労作データを含み、プロセッサは、圧
力信号に基づき生理学的労作の定常状態期間を識別すべく、記憶されたプログラム命令を実行するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
患者の運動に応答する動的な労作信号を出力するように構成された加速度計であって、動的な労作信号は動的な労作データを含む、加速時計をさらに含み、動的な生理学的労作の定常状態期間は動的な労作データに基づきさらに識別される、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
プロセッサは、記憶されたプログラム命令を実行し、システムに生理学的労作の定常状態期間のうちの1つ以上を静的な労作期間または動的な労作期間のいずれかとして分類させるように構成されており、動的な労作データによって示される物理的な運動において対応する増加がなく患者の内圧における増加が感知される場合、前記1つ以上の定常状態期間は静的な労作として分類され、患者の内圧の増加が動的な労作データによって示される物理的な運動の増加に対応する場合、該1つ以上の定常状態期間は動的な労作として分類される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
プロセッサは、記憶されたプログラム命令を実行し、システムに心臓外応答データ、心臓応答データ、および静的または動的な労作期間分類を用いて、狭心症のエピソードを安定狭心症、不安定狭心症または血管攣縮として分類させるように構成されており、
対応する労作の期間が動的な労作として分類され、生理学的労作応答データが狭心症閾値を越えた労作強度に比例しない生理学的応答を示し、狭心症閾値未満では、生理学的労作応答データが労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、狭心症のエピソードは安定狭心症として分類され、
生理学的労作応答データが狭心症閾値のない労作強度に比例しない生理学的応答を示し、行き地味何では、生理学的労作応答データが労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、狭心症のエピソードは不安定狭心症として分類され、
対応する労作の期間が静的な労作として分類され、生理学的労作応答データが狭心症閾値を越えた労作強度に比例しない生理学的応答を示し、狭心症閾値未満では、生理学的労作応答データが労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、狭心症のエピソードは血管攣縮として分類される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
プロセッサは、記憶されたプログラム命令を実行し、システムに識別された定常状態の生理学的労作の期間について虚血の相対的に高い可能性が判定されることに基づき治療を変更させるように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
患者の内部心臓外パラメータセンサは、プロセッサが分時換気量、一回換気量、肺血管圧力、体幹温、静脈血酸素飽和度、および呼吸速度のうちの1つ以上を判定することの可能なデータを感知するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
患者の内部心臓センサは、プロセッサが電気的な心臓パラメータを判定することの可能なデータを感知するように構成されており、プロセッサは電気的な心臓パラメータを心臓応答情報と比較して心筋虚血の可能性を判定するべく、記憶されたプログラム命令を実行するように構成されており、電気的な心臓パラメータは、心拍数、ST偏位、STスロープ、FCC、PVC、AF%、QRS幅、T波振幅、T波極性、およびR波振幅のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項22】
プロセッサは、記憶されたプログラム命令を実行し、システムに識別された生理学的労作の定常状態期間のうちの1つ以上心筋虚血を、労作に関連した心筋虚血または労作に関連しない心筋虚血として分類させるように構成されており、
1つ以上の定常状態期間中に感知された生理学的労作応答データが、閾値を越えた労作
強度に比例しない生理学的応答を示し、閾値未満では、生理学的労作応答データが労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、心筋虚血は労作に関連した心筋虚血として分類され、
1つ以上の定常状態期間中に感知された生理学的労作応答データが、閾値のない労作強度に比例しない生理学的応答を示し、閾値未満では、生理学的労作応答データが労作強度に比例した生理学的応答を示す場合、心筋虚血は労作に関連しない心筋虚血として分類される、請求項12に記載のシステム。
【請求項23】
心筋虚血を検出する方法において、
生理学的労作を表す労作測定値を取得する工程と、
労作測定値に基づき生理学的労作の1つ以上の定常状態期間を識別する工程と、
生理学的労作の前記1つ以上の定常状態期間に対応する心臓外応答データおよび心臓応答データを感知する工程と、
前記1つ以上の定常状態期間の等価なレベルの生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報および心臓応答情報と、心臓外応答データおよび心臓応答データとをそれぞれ比較する工程と、
心臓外応答データと心臓外応答情報との比較結果および心臓応答データと心臓応答情報との比較結果に基づき前記1つ以上の定常状態期間中に心筋虚血が発生した可能性を判定する工程と、を含む方法。
【請求項24】
労作測定値を取得する工程は、静的な労作を表す非循環系の患者の内圧測定値を取得する工程を含み、
生理学的労作の前記1つ以上の定常状態期間を識別する工程は、非循環系の患者の内圧測定値に基づき前記1つ以上の定常状態期間を識別する工程を含み、
心臓応答データを感知する工程は、電気的な心臓応答データを感知する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
労作中の虚血を検出するためのシステムであって、
生理学的労作を表す患者の内圧測定値を取得するための手段と、
患者の内圧測定値に基づき生理学的労作の定常状態期間を識別するための手段と、
識別された定常状態期間の各々について生理学的労作の強度を評価するための手段と、
識別された生理学的労作の定常状態期間中、心臓外応答データを感知するための手段と、
識別された生理学的労作の定常状態期間中、心臓応答データを感知するための手段と、
識別された生理学的労作の定常状態期間に対応する心臓外応答データを、等価な生理学的労作強度に関連した心臓外応答情報と比較するための手段と、
心臓外応答データと心臓外応答情報との比較結果に基づき各定常状態期間について心臓外応答データの正常性を判定するための手段と、
識別された生理学的労作の定常状態期間に対応する心臓応答データを、等価な生理学的労作強度に関連した心臓応答情報と比較するための手段と、
心臓応答データと心臓応答情報との比較結果に基づき各定常状態期間について心臓応答データの正常性を判定するための手段と、
識別された生理学的労作の定常状態期間の1つ以上における虚血の可能性を判定するための手段と、を含み、
1つ以上の定常状態期間の各定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間における心臓外応答データおよび心臓応答データの両方が異常であると判定される場合、相対的に高いと判定され、
1つ以上の定常状態期間の各定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間における心臓外応答データおよび心臓応答データのうちの一方のみが異常であると判定される場合、相対的に中位であると判定され、
1つ以上の定常状態期間の各定常状態期間における虚血の可能性は、同1つ以上の定常状態期間中における心臓外応答データおよび心臓応答データのいずれも異常であると判定されない場合、相対的に低いと判定される、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図19】
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【公表番号】特表2011−529726(P2011−529726A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521205(P2011−521205)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/051579
【国際公開番号】WO2010/014497
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】