説明

動力抽出システム

【課題】負荷需要の大幅な変化に迅速に反応する高い動力取り出し能力を提供できる動力抽出システムを有するガスタービンエンジンを提供する。
【解決手段】空気流1を加圧するように構成された前部ファン段52と、前部ファン段52からの加圧空気流2の第1の部分3を加圧するように構成された翼端ファン70を有する後部ファン段60であって、加圧空気流2の第2の部分4によって駆動される後部ファン段60と、後部ファン段60から動力を供給するように構成された動力駆動システム210とを備える動力抽出システム200とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガスタービンエンジンに関し、特に加圧空気流によって駆動されるブレードを有する中圧ファン段を含む動力抽出システムを備えたガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機のターボファンガスタービンエンジンの動作中、空気はファンモジュール、任意のブースタモジュール及び圧縮モジュール内で加圧される。ファンモジュールを通過する空気の一部はバイパス流に送られ、航行中の航空機を推進するために必要な推力を発生するのに利用される。任意のブースタモジュールと圧縮モジュールを通った空気は燃焼器内で燃料と混合し、点火されて高温燃焼ガスを生成し、これがタービン段を通って流れ、タービン段は高温燃焼ガスからファン、ブースタ及び圧縮機ロータに動力を供給するエネルギを抽出する。ファン、ブースタ及び圧縮モジュールは、一連のロータ段とステータ段とを有する。ファン及びブースタロータは、典型的には低圧タービン(LPT)によって駆動され、圧縮機ロータは高圧タービン(HPT)によって駆動される。ファン及びブースタロータは圧縮機ロータに空気力学的に結合されるが、ファンロータと圧縮機ロータは通常は異なる機械的速度で動作する。
【0003】
ファン圧力比がより高い低バイパス比エンジンの構成ブロックとして、民間航空機用高バイパスエンジン、又はファン圧力比が中程度のバイパスエンジンから圧縮機、燃焼器、高圧タービン(HPT)及び低圧タービン(LPT)を備えたエンジンコアを使用することが望ましい場合が多い。高圧圧縮機(HPC)に入るブースト圧及び温度は、通常は、高バイパス・オリジナルエンジンの場合よりも低バイパスの派生型エンジンの場合のほうがかなり高い。そのため、コアの物理的最大速度及び/又はコアの圧縮機最高吐出温度範囲に機械的制約があるので、一般的にはコア内の最大動作空気流が設計修正された空気流の全容量未満に制限される必要がある。オリジナルのエンジンコア空気流をその全潜在力で動作させる方法を見出し、さらにバイパスの流れに対するファン圧力比を大幅に高めて、派生型エンジンの潜在推力を最大限にすることが望まれる。
【0004】
従来の軍用及び民間用航空機のガスタービンエンジンは、タワーシャフト及び付属ギヤボックスを通る排気によって、高圧スプールから外部動力の抽出を行う。従来の航空機ガスタービンエンジンに必要な一般的な動力は、ピーク過渡負荷がおよそ500馬力(hp)の場合、200hp未満である。従来の航空機ガスタービンエンジンでは通常、別個の動力装置又は補助電力装置(APU)を使用して1メガワット(MW)以上の所要外部電力が満たされるであろう。電力負荷が極めて大きい場合、従来の船舶用及び工業用ガスタービンエンジンは、ガス発生器に更にタービン段を追加し、ガス発生器スプールから負荷を駆動する。他の従来のガスタービンエンジンは、ガス発生器の後ろに別個の出力タービンを追加して外部負荷を駆動する。
【0005】
新型の航空機とその任務には、従来のガスタービンエンジンが従来の方法を用いて供給できるよりも大幅に大きい外部電力が供給される必要がある。新型の航空機では外部用途に1〜5MWの範囲の電力が必要な場合もある。場合によっては、このような高い電力負荷には、エンジンの操作性を保ちつつこれらの負荷を支えるために、推進エンジンの設計に大幅な妥協が必要なことがある。ある航空機及び任務の用途では、外部負荷需要の大幅な変化に極めて迅速に反応する必要があるが、エンジンロータの慣性、及び追加動力を供給するために必要なスプール速度の変化により、従来の動力取り出し構造に順応することが困難である。高い動力を必要とするある外部システムは、推進システムからの動力供給における速度変化を最小限にする必要があり、又はそうすることが好ましい。従来の低圧スプールでは、エンジンスロットルの設定に伴いファン速度が大きく変化することがある。従来の高圧スプールは、そこからの外部動力需要が急激に変化すると所望の速度変化よりも大きい速度変化を生ずることがある。従って、外部使用のための低圧スプール又は高圧スプールからの高い動力を抽出することは、場合によっては望ましくないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、負荷需要の大幅な変化に迅速に反応する高い動力取り出し能力を提供できる動力抽出システムを有するガスタービンエンジンであることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の要求は、空気流を加圧するように構成された前部ファン段と、前部ファン段からの加圧空気流の第1の部分を加圧するように構成された翼端ファンを有し、加圧空気流の第2の部分によって駆動される後部ファン段と、後部ファン段から動力を供給するように構成された動力駆動システムとを有する動力抽出システムを備える例示的実施形態によって満たされる。
【0008】
本発明の一態様では、後部ファン段は前部ファン段とは独立して回転する。
【0009】
本発明の別の態様では、後部ファン段は加圧空気流からエネルギを抽出するように構成されたタービンエアフォイルと、空気流を加圧するように構成された翼端ファンブレードとを備えたエアタービンブレードを有する。
【0010】
本発明の別の態様では、動力抽出システムは、後部ファン段によって駆動されるシャフトを有する動力駆動システムを備える。
【0011】
例示的実施形態では、動力抽出システムは、後部ファン段によって駆動される発電機である。
【0012】
本発明と見なされる主題は、本明細書の結びの部分で具体的に挙げられ、明確に請求される。しかし、本発明は、添付図面と併せた以下の説明を参照することにより、最大限に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による動力抽出システムの例示的実施形態を有するガスタービンエンジンの一部の概略断面図である。
【図2】中間ファン段から動力を抽出するシステムの例示的実施形態を有する本発明による例示的ガスタービンエンジンの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面全体を通して同一の参照番号は同一の要素を示す。図面を参照すると、図1は本発明の例示的実施形態を組み込んだ例示的ターボファンガスタービンエンジン10を示す。例示的ガスタービンエンジン10は、エンジンの中心軸11と、周囲空気1の流入を受けるファン12と、任意のブースタ又は低圧圧縮機(LPC)(図1には図示せず)と、高圧圧縮機(HPC)18と、高圧タービン(HPT)22を通って下流に流れる燃焼ガスを発生するためにHPC18によって加圧される空気と燃料とを混合する燃焼器20と、燃焼ガスが吐出されてエンジン10から排出される低圧タービン(LPT)24とを備える。HPT22はHPTシャフト23を介してHPC18に結合され、実質的に高圧ロータ29を形成する。低圧シャフト25は、LPT24をファン12(及び存在する場合は任意のブースタ)に連結して、実質的に低圧ロータ28を形成する。第2のシャフト、すなわち低圧シャフト25は高圧ロータ29と同軸に、且つその径方向内側に回転自在に配置される。低圧ロータ28及び高圧ロータ29は空気力学的に結合されるが、機械的には結合されていないので独立して回転する。
【0015】
コアを通って流れる空気を加圧するHPC18は、縦の中心軸11を中心として回転するロータ19を有する。HPCシステムは、縦の中心軸11の周囲の円周方向に配置された複数の入口案内翼(IGV)30と複数の静翼31とを含む。HPC18は更に、ロータハブ39から径方向外側に延在する対応する動翼40、又は従来の態様の別個の円板、一体型ブリスク又は環状ドラムの形状の対応するロータを有する複数のロータ段19を含む。高圧ロータ29は、適当な軸受を使用する周知の支持方法を用いてエンジンの固定フレーム内に支持される。
【0016】
周囲方向に離隔された複数の静翼31を備える対応するステータ段が、各ロータ段19と連動する。軸流高圧圧縮機18の静翼と動翼の例示的構成を図1に示す。動翼40と静翼31とは、軸方向段内でコアの空気流8を連続的に加圧するための対応する空気力学的形状又は輪郭を有するエアフォイルを画定する。動翼40は動翼の先端を囲む環状ケーシング38内で回転する。動作時には、コア空気流8の圧力は空気が減速すると上昇し、ステータ及びロータのエアフォイルを通って拡散する。
【0017】
図1は、空気流1を加圧する前部ファン段52を備えたファンシステム50を示す。加圧空気流2は前部ファン段52から軸方向後方に流出する。中心軸11と同軸の固定環状スプリッタ46は前部ファン段52から軸方向後方に位置する。図1に示すように、環状スプリッタ46は、加圧空気流2を第1の部分3と第2の部分4とに分割する。
【0018】
ファンシステム50は、環状スプリッタ46から軸方向後方に位置する後部ファン段60(本明細書では中圧ファン段、すなわちIPFSとも呼ぶ)を有する。後部ファン段60は後部ファンロータ61を備え、後部ファンブレード62の周囲方向列を有する。後部ファン段60は中心軸11を中心に回転するが、高圧圧縮機18又は前部ファン段52とは機械的に結合されない。後部ファン段60はエンジン10の動作中に前部ファン段52及び高圧圧縮機18の前部段に空気力学的に結合されるが、後部ファン段60は低圧ロータ28及び高圧ロータ29とは機械的に独立して回転する。従って、後部ファン段60は、その上流に位置する前部ファン段52とは独立して回転する。
【0019】
図1に示すように、後部ファン段60は縦軸11の周りの周囲方向に配置された後部ファンブレード62の列を備える。各々の後部ファンブレード62は径方向内側の部分63と、外側の部分64とを有する。後部ファン段ブレード62の径方向内側部分63は、内側部分63に流入する加圧空気流7からエネルギを抽出できる空気タービンブレード82として駆動されるように構成される。後部ファンブレード62の内側部分63を構成するには周知の空気タービンエアフォイルの形状を用いることができる。空気が内側部分63を越えて流れると、空気は膨張して低圧で低温の空気の流出部分57を形成し、後部ファン段60を駆動するエネルギを後部ファンブレード62に付与する。
【0020】
図1に示すように、各後部ファンブレード62は、外側部分64と、内側部分63及び外側部分64の間のアーチ状シュラウド65とを有する。後部ファンブレード62の外側部分64は、流入空気6を加圧できる翼端ファンブレード72として構成される。アーチ状シュラウド65は翼端ファンブレード72を支持する。後部ファンブレード62の外側部分64は、流入空気6を加圧できるファンブレードの周知のエアフォイルの形状を有する。後部ファン段60の組立て状態では、各ブレード62のアーチ状シュラウド65は、周囲方向で隣接するファンブレード62のアーチ状シュラウドに当接して、環状プラットフォームと、翼端ファンブレード72を備える翼端ファン70とを形成する。一実施形態では、各後部ファンブレード62はアーチ状シュラウド65によって支持される1つの翼端ファンブレード72を有する。代替実施形態では、各後部ファンブレード62は、アーチ状シュラウド65によって支持される複数の翼端ファンブレード72(図2の項目165)を有しても良い。
【0021】
図1に示すように、後部ファン段60は、前部ファン段52からの加圧空気流2の第1の部分3を加圧するように構成された翼端ファン70を有する。翼端ファン70は、空気タービンブレード82として作用する後部ブレードの内側部分63によって駆動される。翼端ファン70を有する後部ファン段60は、加圧空気流2の第2の部分4によって駆動される。後部ファンブレード62の内側部分63は、加圧空気流からエネルギを抽出できる空気タービンブレードとして動作するように構成され、一方、後部ファンブレード62の外側部分64は、空気流を加圧できる圧縮型エアフォイルとして構成される。内側部分63は、加圧空気流からエネルギを抽出するように構成されたタービンエアフォイル84を有する空気タービンブレード82である。後部ファンブレード62の外側部分64は、本明細書では翼端ファンブレード72とも呼ぶ。翼端ファンブレード72は空気流6を加圧して、加圧された翼端流れ56(図1を参照)を生成できる。
【0022】
図1に示すように、ファンシステム50は更に、後部ファン段60の翼端ファン70の軸方向前方に位置する入口案内翼(IGV)74の周囲方向列を備える。IGV74は、更なる加圧のために翼端ファン70に適宜流入する流入空気流3の方向を転換できる周知のエアフォイル形状を有する。IGV74は内部ケーシング68(図1を参照)及び/又はスプリッタ46によって適宜支持される。後部ファン段60の動作制御を強化するために、ファンシステム50は、翼端ファン70への空気流6を修正するように構成された可変ベーンを有する入口案内翼74を有しても良い。翼端ファン70に向けられる空気流6の量や方向は、公知のアクチュエータ75を用いてIGV74の一部を適宜動かしてジグザグ配置の取り付け角度を変更することによって、変更できる。
【0023】
本明細書に記載のように、中圧ファン段(IPFS)60、160(図1及び2を参照)は、別個のスプールであり、低圧タービン24を備える低圧スプール、及び高圧タービン22を備える高圧スプールから機械的に独立する。IPFS60、160はその径方向外側の流路の翼端ファン70、170と、径方向内側の流路内の空気駆動タービン段とを組み込む。IPFSのスプールは、前部ファン段52とHPC18との間に位置する。前部ファン段52からの空気2の一部はIPFSの翼端に供給され、そこで空気圧がIPFSによって高められ、次いでバイパス通路42に送られる(図1を参照)。前部ファン段52の内側部分4はIPFS60、160の内側部分にある空気駆動タービン段の空気タービンブレード82、182に送られ、そこで膨張して翼端ファン70、170及び例えば発電機205、255などの外部負荷を駆動する動力を提供する。外部負荷の需要条件が変化するとIPFSのスプール速度を制御するように修正できる可変IGV74、174が備えられる。
【0024】
図1は、後部ファン段60から動力を供給するように構成された動力駆動システム210に結合された後部ファン段60を備えた動力抽出システム200の例示的実施形態を示す。動力駆動システム210は、図示のように、ギヤ206、207を有するシャフト204を備える。図1に示す例示的実施形態では、後部ファン段60は後部ファンロータ61と共回転し、シャフト204上のギヤと噛み合ってシャフト204を駆動するギヤ208を有する。シャフト204の他端に位置するギヤ206はギヤボックス201内の他のギヤ203と噛み合い、動力出力シャフト202を駆動する。図1及び2に示す例示的実施形態では、動力出力シャフト202は、外部負荷を駆動する電力出力209を供給する発電機205を駆動する。例えば油圧ポンプを使用するなど、出力シャフト202からの動力を利用する他の適当な方法を利用できることは当業者には理解されよう。
【0025】
エンジン10の動作中、高い動力の抽出時にIPFSの翼端ファン70からの空気流6(図1参照)は、IGV74を閉じてIPFSの翼端ファン70から空気タービンブレード82にかかる負荷を最小限にすることによって減少する。これによって後部ファン段60からの動力の大部分が、例えば発電機205などの外部負荷に供給される。外部動力需要がより少ない場合は、翼端ファン70のIGV74が開かれて(空気流6が更に加圧されるため)翼端ファン70からの空気流負荷が増大し、IPFSのハブ空気タービンへの全負荷がほぼ一定に保たれ、且つIPFSロータ61の回転速度がほぼ一定に保たれる。
【0026】
IPFSの翼端ファン70の動作ラインを修正し、主前部ファン52の排気流5とIPFSの翼端ファン70の加圧排気流56との圧力平衡を制御するために、後部可変領域バイパスインジェクタ(VABI)94を使用しても良い。そのために、当分野で公知である従来のVABIを使用しても良い。前部バイパスブロッカドア45及び前部ミキサ、すなわちVABI48を使用して、IPFSのスプール速度の付加的な制御、及び主ファンシステム50の動作ラインの制御が行われる。そのために、当分野で公知である従来のミキサ又はVABIを使用しても良い。公知の方法を用いた分析的なサイクル研究の結果、ガスタービンエンジンシステム10には、推力に及ぼす影響が最小限で、しかもIPFSのスプール速度をほぼ一定に保ちつつ、所定のエンジンスロットル設定で広範囲の外部動力を供給する能力があることが判明している。動力抽出能力の大きさと範囲は、エンジンスロットルの設定に応じて変化する。後部VABI94を使用すれば、IPFSのスプール及びファンシステム50の動作ラインの制御を強化することが可能である。そのために、当分野で公知である従来のVABIを使用しても良い。
【0027】
図2は、空気流1を加圧するように構成された複数の前部ファン段152を有する多段ファン112を備えたガスタービンエンジン110の例示的実施形態を示す。図2に示す例示的エンジン110には3つの前部ファン段152を示すが、特定用途向けに適当な数の前部ファン段を選択できる。前部ファン段は、ファンに流入する空気流1を加圧して、加圧空気流2を生成する。前部ファン段は低圧タービン124と低圧タービンシャフト125とを有する低圧ロータ128によって駆動される。ガスタービンエンジン110は更に、高圧タービン112と高圧シャフト123とを有する高圧ロータ129によって駆動される圧縮機118を備える。HPC118は、縦の中心軸11を中心に回転し、コアを通って流れる空気8を加圧するロータ19を有する。HPCシステムは、縦の中心軸11の周囲方向に配置された複数の静翼を含む(例えば図1を参照)。HPC118は更に、ロータハブ139から径方向外側に延在する対応する動翼140、又は従来の態様の別個の円板、一体型ブリスク又は環状ドラムの形状の対応するロータを有する複数のロータ段118を含む。高圧ロータ129は適当な軸受を使用する周知の支持方法を用いてエンジンの固定フレーム内に支持される。高圧タービン122及び低圧タービン124は、高温排気流92として流出する、燃焼器120内で生成される燃焼ガスによって駆動される。
【0028】
ガスタービンエンジン110の例示的実施形態は、軸方向の最後の前部ファン段152の軸方向後方に位置する環状スプリッタ146(図2を参照)を備える。スプリッタ146は、前部ファン段152から加圧空気流2を分岐させて加圧空気流2の第1の部分3と第2の部分4とを形成するように構成される。
【0029】
ガスタービンエンジン110の例示的実施形態は、図2に示すように、スプリッタ146の軸方向後方で、圧縮機118の軸方向前方に位置する後部ファン段160を備える。図2に示すように、後部ファン段160は、前部ファン段152からの加圧空気流2の第1の部分3を加圧するように構成された翼端ファン170を有する。翼端ファン170は、空気タービンブレード182として作用する後部ブレードの内側部分163によって駆動される。後部ファン段160は、翼端ファン170と共に加圧空気流2の第2の部分4によって駆動される。後部ファンブレード162の内側部分163は、加圧空気流からエネルギを抽出できる空気タービンブレードとして動作するように構成され、一方、後部ファンブレード162の外側部分164は、空気流を加圧できる圧縮型エアフォイルとして構成される。内側部分163は加圧空気流からエネルギを抽出するように構成されたタービンエアフォイル184を有する空気タービンブレード182である。後部ファンブレード162の外側部分は、本明細書では翼端ファンブレード172とも呼ぶ。翼端ファンブレード172は空気流6を加圧して、加圧された翼端流れ56(例えば図1を参照)を生成できる。後部ファン段160は、後部ファン段160を駆動する加圧空気流の圧力と温度を低減する。公知の空気タービンのエアフォイルの形状、材料及び製造方法を用いて、後部ファンブレード162の内側部分163を構成できる。空気が内側部分163を越えて流れると、空気は膨張して低圧で低温の空気の流出部分57を形成し、後部ファン段160を駆動するエネルギを後部ファンブレード162に付与する。
【0030】
図2に示す例示的ガスタービンエンジン110は更に、翼端ファンブレード172の軸方向前方に位置する入口案内翼(IGV)174の周囲方向列を備える。公知のエアフォイルの形状、材料及び製造方法を用いて、IGV174を構成できる。IGV174は、図1に示した構成と同様に翼端ファン170に流入する空気の容積を制御する。翼端ファン170への空気流の制御を強化するために、入口案内翼174は、翼端ファン70への空気流を調整するように構成された可変ベーンである。翼端ファン170に向けられる空気流の量と向きは、公知のアクチュエータ175を用いてIGV174の一部を適宜動かしてジグザグ配置の取り付け角度を変更することによって、変更できる。
【0031】
本発明の一態様では、図2(及び図1)に示す例示的ガスタービンエンジン110は更に、内側バイパス流56を流すように構成された環状の内側バイパス通路142と、外側バイパス流5を流すように構成された環状の外側バイパス通路144とを備える。外側のバイパス流5は外側のバイパス通路144を通過し、翼端ファン170によって加圧されない。内側バイパス流6(図1を参照)は翼端ファン170によって加圧され、加圧された翼端の流れ56として流出する。後部ファン段160の下流側に位置する前部ミキサ148は、より高圧の内側バイパス流56とより低圧の外側バイパス流5との混合を強化して混合バイパス流9を形成し、静圧の平衡を図るために備えられる。ミキサ148には、公知のミキサ(当分野では可変領域バイパスインジェクタ、すなわちVABIとしても知られる)を使用できる。外側のバイパス通路144の前部領域の近傍に位置する公知のブロッカドア145を用いることによって、外側のバイパス通路144への逆流を防止できる。エンジンの動作中、可変IGV144が開かれるとブロッカドアが閉鎖方向に動作して、翼端ファン170による更なる加圧を生じさせる。ガスタービンエンジン110は更に、低圧タービン24からの高温排気92と相対的に低温のバイパス空気流91との混合を強化するように構成された、低圧タービン24の下流に位置する後部ミキサ94(当分野では可変面積バイパスインジェクタ、すなわちVABIとしても知られる)を備える。この目的のために公知のミキサ(VABI)を使用できる。エンジンの動作中、前部ファン段152と後部ファン段160の操作性は、必要に応じて、公知の方法を用いて可変IGV144、ブロッカドア145、前部ミキサ148及び後部VABI194の動作スケジュールを適当に設定することによって制御できる。
【0032】
図1及び2に示すように、後部ファン段60、160(本明細書では中圧ファン段、すなわちIPFSとも呼ぶ)は、当分野で知られるコアスプールに結合されたコア駆動ファン段とは異なり、翼端ファン70、170を組み込んだ別個の、独立して回転するスプールである。更に、本明細書に記載のように、IPFSはその外側部分に翼端ファンブレード72、172を、又、内側部分に空気タービンブレード82、182を有する。IPFSスプールは前部ファン52、152とHPC18、118との間に配置され、それによりファン空気の一部がIPFSの翼端に送られ、そこでIPFSの翼端ファンブレード72、172によって空気圧が更に上昇し、次いで内側バイパス通路42、142に送られる。前部ファン流2の内側部分4は、IPFSの内側部分内のタービンブレード82、182に送られ、そこで空気流は膨張してファンの翼端を駆動する動力を供給する。タービンの出口からの流れはHPC18、118の入口に送られる。IPFSタービンブレード82、182によるエネルギの抽出は、HPC18、118に流れる空気のブースト圧及び温度を前部ファンの出口52、152での圧力及び温度未満に低減する。前部ファン52、152とIPFSの翼端ファン70、170の圧力比を適切に選択することによって、高圧圧縮機18、118への流入状態を本来の(基本ライン)エンジン設計状態に適応させることができ、派生型エンジンによるコア流れ能力を最大限にすることができる。同時に、前部ファン52、152及びIPFS60、160は、バイパス流9の所望のより高いバイパス空気圧をもたらす。
【0033】
サイクル研究の結果、同サイズのファンの空気流で混合型ターボファンの派生型よりも既存のコアの潜在推力を最大20%増大させることが可能であることが判明した。HPCへの温度レベルはオリジナルのハードウエア設計に容易に適合させることができ、オリジナルのコアの機械的な設計上の限度内で修正された流れ容量を最大限利用することが可能である。当業者であれば、IPFSの必要な搭載構造、及びファン翼端やタービンハブの空気力学的設計の特性を確立するために、公知の方法を用いて流路構成の研究を行うことができることは理解されよう。図2に示す例示的実施形態では、IPFSは好ましくはファンのフレーム構造内に実装されるので、追加のスプールを取り付けるための追加の主エンジンフレームは必要ない。
【0034】
図2は、後部ファン段160から動力を供給するように構成された動力駆動システム260に結合された後部ファン段160を備えた動力抽出システム250を有する例示的ガスタービンエンジンを示す。動力駆動システム260は、図示のようにギヤ256、257を有するシャフト254を備える。図2に示す例示的実施形態では、後部ファン段160は後部ファンロータ161と共回転し、シャフト254上のギヤと噛み合ってシャフト254を駆動するギヤ258を有する。シャフト254の他端に位置するギヤ256はギヤボックス251内の他のギヤ253と噛み合い、動力出力シャフト252を駆動する。図2に示す例示的実施形態では、動力出力シャフト252は、外部負荷を駆動する動力出力259を供給する発電機255を駆動する。例えば油圧ポンプを使用するなど、出力シャフト252からの動力を利用する他の適当な方法を利用できることは当業者には理解されよう。
【0035】
エンジン110の動作中、高い動力の抽出時にIPFSの翼端ファン170からの空気流6(図2参照)は、IGV174を閉じてIPFSの翼端ファン170から空気タービンブレード182にかかる負荷を最小限にすることによって減少する。これによって後部ファン段160からの動力の大部分が、例えば発電機255などの外部負荷に供給される。外部動力需要がより少ない場合は、翼端ファン170のIGV174が開かれて(空気流6が更に加圧されるため)翼端ファン170からの空気流負荷が増大し、IPFSのハブ空気タービンへの全負荷がほぼ一定に保たれ、且つIPFSロータ161の回転速度がほぼ一定に保たれる。
【0036】
IPFSの翼端ファン170の動作ラインを修正し、主前部ファン152の排気流5とIPFSの翼端ファン170の加圧排気流56との圧力平衡を制御するために、更に後部可変領域バイパスインジェクタ(VABI)194を使用しても良い。そのために、当分野で公知である従来のVABIを使用しても良い。前部バイパスブロッカドア145及び前部ミキサ、すなわちVABI148を使用して、IPFSのスプール速度の付加的な制御、及び主ファンシステム150の動作ラインの制御が行われる。そのために、当分野で公知である従来のミキサ又はVABIを使用しても良い。公知の方法を用いた分析的なサイクル研究の結果、ガスタービンエンジンシステム110には、推力に及ぼす影響が最小限で、しかもIPFSのスプール速度をほぼ一定に保ちつつ、所定のエンジンスロットル設定で広範囲の外部動力を供給する能力があることが判明している。動力抽出能力の大きさと範囲は、エンジンスロットルの設定に応じて変化する。後部VABI94を使用すれば、IPFSのスプール及びファンシステム150の動作ラインの制御を強化することが可能である。そのために、当分野で公知である従来のVABIを使用しても良い。
【0037】
図1及び2を参照すると、ガスタービンエンジン10、110からの動力抽出の例示的方法は以下のステップを含む。ファンシステム50、150に流入する空気流1は前部ファン段52、152内で加圧され、前部ファン段から流出する加圧空気流2を生成する。加圧空気流2は、適当な手段を用いて、例えば環状スプリッタ46、146を用いて第1の部分3と第2の部分4に分岐される。次いで加圧空気流2の第1の部分3は、後部ファン段60の翼端ファン70の方向に向けられる。加圧空気流2の一部は外側のバイパス通路44、144を通って流れ、外側のバイパス流5を生成する。後部ファン段60は前部ファン段52とは独立して回転する。加圧空気流2の第2の部分4は、後部ファン段60が加圧空気流によって駆動されるように後部ファン段60の空気タービンブレード82の周囲方向列の方向に向けられる。この時点で、後部ファン段60の内側部分63、163に流入するより高圧の流入空気7は膨張して、より低圧の流出空気流57になる。この膨張中に、後部段60、160の内側部分63、163内の膨張した空気流の温度は低下する。従って、圧縮機18、118に流入するコア流8の温度と圧力は低下する。
【0038】
動力を抽出する例示的方法は、外部負荷205を駆動するために後部ファン段60、160によって生成された動力の一部を抽出するステップを含む。動力駆動システム210、260は、図1及び2に示すように、後部ファン段60、160を利用して外部負荷205を駆動するために使用される。本明細書に記載の例示的方法は、後部ファン段60、160を利用して動力取り出しシャフト204、254を駆動するステップを含む。ある用途では、方法は更に外部負荷に結合された動力出力シャフト202を駆動するステップを含む。例えば図1及び2に図示したように、動力出力シャフト202の駆動はギヤボックス201、251内の1組のギヤ203、206を使用して行われる。方法の一例示的実施形態では、外部負荷205、255は電力出力209、259を供給する発電機である。別の例示的実施形態では、外部負荷は油圧ポンプ、又は後部ファン段60、160から抽出された動力を利用するその他の適当な方法でも良い。
【0039】
例示的方法は更に、翼端ファン70、170に流入する空気流6を加圧して、加圧された翼端流れ56を生成するステップを含む(図1及び2を参照)。翼端ファン70に流入する空気流6は、入口案内翼74、174で調整される。具体的には、翼端ファン70、170を通って流れる空気の量は、入口案内翼74、174によって別々に制御される。より具体的には、ファンの圧力比、エンジン10、110の推力及び性能要件、及び外部動力の需要に基づいて翼端ファン70、170を通って流れる空気流の量を選択的に制御するように、入口案内翼74、174のジグザグ配置が変更される。実質的にゼロである空気流と最大排出空気流との空気6の調整は、入口案内翼74、174のジグザグ配置を変更することによって必要に応じて行われる。例えば、外部動力の需要が高い状態の間は(項目209、259を参照)、入口案内翼74、174は実質的に閉じられた翼端ファン70、170に流入する空気量を制限し、ブロッカドア45、145を開く。動力需要が低い状態の間は、入口案内翼74、174はより多くの空気流が翼端ファン70、170に流入できるように開かれ、後部ファンロータ61、161からの動力を利用して翼端ファン流れ6を加圧し、加圧空気流56を生成する。前述のようにIGV74、174を使用することによって、後部ファン段60、160はほぼ一定の回転速度で動作する。このことは、発電機を駆動する際に特に有利であることが当業者には理解されよう。更に、高圧スプール及び低圧スプール又は高い慣性を有するコア駆動ファンを使用する従来の動力抽出方法とは異なり、独立して回転する後部ファン段60、160を使用すると慣性は比較的低く、外部動力の需要209、259の急激な変化により迅速に反応する。例示的実施形態では、入口案内翼74、174は公知のアクチュエータ75、175によって機械的に作動し、公知の主エンジン制御システム(図示せず)によって動作する。代替実施形態では、入口案内翼74、174はいずれかの適当な機構によって動作する。更に、例示的方法は、外側の環状バイパス通路44、144内の外側のバイパス流5を、内側バイパス通路42、142内の翼端ファン70、170からの翼端流れ56と混合して、混合バイパス流れ9を生成するステップを含む。外側のバイパス通路44、144の近傍に位置するブロッカドア45、145は、これを部分的に閉じた位置とほぼ完全に開いた位置との間で調整して外側のバイパス通路144への逆流を防止するように動作する。本明細書に示した例示的実施形態では、公知の主エンジン制御システム(図示せず)によって作動する機械的アクチュエータを使用する。本明細書に記載の方法は任意に、外側のバイパス流5と翼端流れ56との混合を制御し、適切な静圧平衡を達成するために、公知の種類の前部ミキサ48、148を動作させるステップを含む。更に、方法は、前部ファン段152と後部ファン段160の動作特性、及びエンジン10、110の性能を制御するために公知の種類の後部ミキサ94、194を動作させるステップを含む。前部ミキサ48、148、後部ミキサ94、194、ブロッカドア45、145及び入口案内翼74、174は、エンジン10、110の動作特性と性能、並びに外部動力需要209、259を最適なものにするために、エンジン制御システム(図示せず)を使用して制御された方法で動作する。
【0040】
本明細書は、実施例を使用して、最良の形態を含む本発明を開示し、更に当業者が本発明を製作且つ使用できるようにする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が想到するその他の実施例を含む。このようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する同等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲内に属することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流(1)を加圧するように構成された前部ファン段(52)と、
前記前部ファン段(52)の軸方向後方に位置し、前記前部ファン段(52)からの加圧空気流(2)の第1の部分(3)を加圧するように構成された翼端ファン(70)を有する後部ファン段(60)であって、前記加圧空気流(2)の第2の部分(4)によって駆動される後部ファン段(60)と、
前記後部ファン段(60)から動力を供給するように構成された動力駆動システム(210)と、を備える動力抽出システム(200)。
【請求項2】
前記後部ファン段(60)は前記前部ファン段(52)とは独立して回転する、請求項1に記載の動力抽出システム。
【請求項3】
前記動力駆動システム(210)は前記後部ファン段(60)によって駆動されるシャフト(204)を備える、請求項1に記載の動力抽出システム。
【請求項4】
前記シャフト(204)は動力出力シャフト(202)を駆動するように構成される、請求項3に記載の動力抽出システム。
【請求項5】
前記動力出力シャフト(202)を駆動するように構成された1組のギヤ(203、206)を有するギヤボックス(201)を更に備える、請求項4に記載の動力抽出システム。
【請求項6】
前記動力抽出手段(210)は、前記後部ファン段(60)によって駆動される発電機である、請求項1に記載の動力抽出システム。
【請求項7】
前記後部ファン段(60)は後部ファンブレード(62)の周囲方向列を備え、各々の後部ファンブレード(62)は空気タービンブレード(82)として駆動されるように構成された内側部分(63)を有する、請求項1に記載の動力抽出システム。
【請求項8】
空気流(1)を加圧するように構成された前部ファン段(152)と、
圧縮機(118)と、
前記前部ファン段(152)の軸方向後方に位置し、前記圧縮機(118)の軸方向前方に位置する後部ファン段(160)から動力を供給するように構成された動力抽出システム(250)であって、前記後部ファン段(160)は前記前部ファン段(152)からの加圧空気流(2)の第1の部分(3)を加圧するように構成された翼端ファンブレード(172)の周囲方向列を有し、前記後部ファン段(160)は前記加圧空気流(2)の第2の部分(4)によって駆動される動力抽出システムと、を備えるガスタービンエンジン(110)。
【請求項9】
前記後部ファン段(60)は前記前部ファン段(52)とは独立して回転する、請求項8に記載のガスタービンエンジン(110)。
【請求項10】
ガスタービンエンジン(110)の動作方法であって、
前部ファン段(152)を利用して空気流(1)を加圧し、加圧空気流(62)を生成するステップと、
前記加圧空気流(2)の第1の部分(3)を後部ファン段(160)の翼端ファン(70)の方向に向けるステップと、
前記後部ファン段(160)の空気タービンブレード(82)の周囲方向列内の加圧空気流(2)の第2の部分(4)を膨張させることによって、前記後部ファン段(160)を駆動するステップと、
前記後部ファン段(160)によって生成された動力の一部を抽出して外部負荷(205)を駆動させるステップと、を含む方法。
【請求項11】
前記後部ファン段(60)は前記前部ファン段(52)とは独立して回転する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記翼端ファン(70)に流入する空気流(6)を入口案内翼(174)によって調整するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−127598(P2011−127598A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277739(P2010−277739)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】