説明

動力機付き二輪車および電力受信装置

【課題】送電効率を高めることができる動力機付き二輪車および電力受信装置を提供する。
【解決手段】自転車1は、充電池114と、受電用のコイル101a、101bと、受電用のコイル101a、101bから電力を取り出すためのコイル102a、102bと、コイル102a、102bにより取り出された電力を充電池114に充電するための制御回路112と、を備える。受電用のコイル101a、101bは、互いに向きが異なるように配置され、制御回路112は、受電用のコイル101a、101bがそれぞれ受電した電力を加算して、充電回路113に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電池を備えた動力機付き二輪車およびそれに装備されて好ましい電力受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータにより駆動力を補助する、いわゆるアシスト自転車が商品化され普及している。かかるアシスト自転車には、電動モータに電力を供給するための充電池が装備される。充電池は、着脱可能となっており、適宜、商用電源を用いて充電される。充電は、専用のアダプターを用いて行われる。
【0003】
通常、充電は、家庭において行われるが、アシスト自転車が駐輪場に駐輪されたようなときに充電が行われると便利である。たとえば、駐輪場にワイヤレス電力伝送システムを配置することで、別途、充電のための作業を伴うことなく、アシスト自転車側の充電池に充電を行うことができる。
【0004】
かかる充電のためのシステムとして、たとえば、共鳴法による電力伝送システムを用いることができる(特許文献1)。このシステムでは、送電側のコイルと受電側のコイルとの間の磁気共鳴を利用して電力が送られる。2つのコイルがある程度離れていても、送電側から受電側に電力を送ることができる。このため、駐輪場におけるアシスト自転車の駐輪位置をそれほど厳格に管理せずとも、充電池に対する充電が円滑に行われ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記電力伝送システムでは、アシスト自転車側に受電用のコイルを配置する必要がある。この場合、受電用のコイルが送電用のコイルに対して正対するほど、送電効率が高くなる。しかし、アシスト自転車の置き方によっては、受電用のコイルが送電用のコイルに正対しないことも起こり得る。この場合、送電効率が低下する。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、送電効率を高めることができる動力機付き二輪車および電力受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、動力機付き二輪車に関する。本態様に係る動力機付き二輪車は、充電池と、第1の受電用コイルと、第2の受電用コイルと、前記第1の受電用コイルおよび前記第2の受電用コイルによりそれぞれ受電した電力を前記充電池に充電するための充電制御回路と、を備える。前記第1の受電用コイルと前記第2の受電用コイルは、互いに向きが異なるように配置される。前記充電制御回路は、前記第1の受電用コイルと前記第2の受電用コイルがそれぞれ受電した電力を前記充電池に導くための回路部を有する。
【0009】
本発明の第2の態様は、電力受信装置に関する。本態様に係る電力受信装置は、充電池と、第1の受電用コイルと、第2の受電用コイルと、前記第1の受電用コイルおよび前記第2の受電用コイルによりそれぞれ受電した電力を前記充電池に充電するための充電制御回路と、を備える。前記第1の受電用コイルと前記第2の受電用コイルは、互いに向きが
異なるように配置される。前記充電制御回路は、前記第1の受電用コイルと前記第2の受電用コイルがそれぞれ受電した電力を前記充電池に導くための回路部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の受電用コイルが向きを変えて配置されるため、これら受電用コイルにより、効率的に電力を受け取ることができる。よって、送電効率を高めることができる動力機付き二輪車および電力受信装置を提供することができる。
【0011】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明の一つの実施形態であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態により何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る自転車の構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る前かごの構成を示す図である。
【図3】実施の形態に係る給電システムの構成を示す図である。
【図4】実施の形態に係る給電システムの回路構成を示す図である。
【図5】実施の形態に係る制御回路の構成を示す図である。
【図6】実施の形態に係る送電開始時の処理を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態の変更例1に係る制御回路の構成を示す図である。
【図8】変更例1に係る受電時の処理を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態の変更例2に係る制御回路の構成を示す図である。
【図10】変更例2に係る受電時の処理を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態の他の変更例に係る制御回路の構成を示す図である。
【図12】他の変更例に係る受電時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態は、アシスト自転車(以下、自転車という)に本発明を適用したものである。
【0014】
自転車1は、本体フレーム10と、前輪21と、後輪22と、サドル30と、ペダル40と、モータ50と、バッテリーユニット60と、前かご70と、前照灯80と、ハンドル90を備えている。
【0015】
モータ50には、バッテリーユニット60から電力が供給される。この電力によりモータ50が駆動されると、モータ50の駆動力がペダルクランク軸に伝達される。これにより、ペダル40を踏む力より大きな推進力で、自転車1を走行させることができる。なお、バッテリーユニット60の電力は、モータ50以外にも、前照灯80などの他の電気部品に供給される。
【0016】
バッテリーユニット60は、着脱可能となっている。ユーザは、取り外したバッテリーユニット60に対し、所定のアダプターを用いて、充電を行うことができる。充電は、バッテリーユニット60に配された回路ユニット61によって制御される。
【0017】
本実施の形態では、かかる充電形態の他に、電力伝送による充電が可能となっている。すなわち、前かご70に受電用のコイルが配置され、このコイルと、送電側のコイルとの磁気共鳴を利用して、電力伝送が行われる。送電された電力は、回路ユニット61に送られ、バッテリーユニット60内の充電池に蓄電される。
【0018】
受電用のコイルは、前かご70の前面と左側面にそれぞれ配置される。各コイルを覆う
ように、カバー71、72が前かご70の前面と左側面に装着される。
【0019】
図2(a)は、前かご70と、前かご70の前面に装着される受電用コイルの概略構成を示す分解斜視図、図2(b)は、前かご70にコイル101a、102aおよび基板103aと、カバー71とを取り付けた状態の斜視図である。
【0020】
図2(a)を参照して、前かご70の前面には、2つのコイル101a、102aと、基板103aと、カバー71が装着される。領域S1は、カバー70の装着領域を示している。領域S1には、2つのコイル101a、102aと基板103aが装着される。さらに、これら2つのコイル101a、102aと基板103aを覆うように、カバー71が前かご70の前面に取り付けられる。カバー71は、前かご70側に開口71aが形成された有底箱形状を有している。
【0021】
コイル101aは、両端が非接続のLC共振コイルであり、送電時に、送電側のコイルとの間で磁気共鳴が生じるように設計されている。すなわち、コイル101aは、送電時に、送電側のコイルと、磁場の共鳴により磁気的に結合される。
【0022】
コイル102aは、磁気共鳴によりコイル101aに生じた磁界を、電磁誘導により、電力として取り出すよう構成されている。コイル102aには、コイル101aにより生じる磁界の変化に応じて、電流(交流)が流れる。コイル102aの両端は、基板103a上の整流回路(後述)に接続されている。電磁誘導によりコイル102aに流れた電流(交流)は、基板103a上の整流回路によって直流の電流に変換され、図1に示すバッテリーユニット60の回路ユニット61に送られる。なお、図2(a)には、基板103aから回路ユニット61に向かう配線が図示省略されている。
【0023】
本実施の形態では、2つのコイル101a、102aは、方形状に巻回されている。2つのコイル101a、102aは、方形状の他、円形状に巻回されても良い。ただし、コイル101aは、その輪郭がなるべく大きい方が望ましい。コイル101aの輪郭が大きいほど、共振周波数が低くなり、送電距離を長くできるためである。
【0024】
なお、図2には図示省略したが、前かご70の左側面にも、上記と同様にして、コイル101b、102bおよび基板103bと、カバー72が装着される。領域S2は、カバー70の装着領域を示し、この領域S2に、コイル101b、102bおよび基板103bが装着される。
【0025】
前かご70は、全体が、プラスチック(合成樹脂)により形成されている。前かご70は、縦フレームと横フレームが格子状に交差した枠組み構造となっている。縦フレームと横フレームの間には、フレームのない隙間が網目状に存在している。
【0026】
なお、磁気共鳴方式の電力伝送では、コイル101b、102bにより、磁界の他、交流(高周波)の電界が発生する。この電界が誘電体に作用することにより、損失が生じる(誘電体損)。コイル101b、102bは、かかる誘電体損を抑制可能なように前かご70に装着されるのが望ましい。たとえば、前かご70の領域S1、S2の枠組み構造を、他の領域の枠組み構造よりも疎とし、あるいは、コイル101b、102bを多数の気泡を有する低誘電率体で被覆するような構成が採られ得る。
【0027】
図3は、給電システムの構成を示す図である。同図の給電システムは、たとえば、駐輪場に設置されている。
【0028】
給電システムは、送電部2と、支柱3と、回路ユニット4とを有する。送電部2には、
送電側のコイルが収容されている。支柱3は、送電部2が地面から前かご70付近の高さになるように、送電部2を支持する。回路ユニット4には、送電部2を介して送電を行うための回路が収容されている。
【0029】
図3に示す如く前輪21が支柱3に対向するように自転車1を駐輪すると、前かご70の前面が送電部2に向き合う。この場合、前かご70の前面に装着されたコイル101aに対する送電効率が、前かご70の左側面に装着されたコイル101bに対する送電効率よりも高くなる。図3の状態からハンドル90が右に切られた状態で自転車1が駐輪されると、前かご70の左側面が送電部2に向くようになる。この場合、前かご70の左側面に装着されたコイル101bに対する送電効率が、前かご70の前面に装着されたコイル101aに対する送電効率よりも高くなる。
【0030】
本実施の形態では、これら2つのコイル101a、101bを用いて、電力伝送が行われる。以下、そのための回路構成および制御処理について説明する。
【0031】
図4は、給電システムの回路構成を示すブロック図である。
【0032】
図4において、コイル101a、102aは、図2に示すように、前かご70の前面に装着されており、整流回路111aは、図2の基板113aに配置されている。また、コイル101b、102bは、上記のように前かご70の左側面に装着され、整流回路111bは、前かご70の左側面に装着される基板に配置されている。
【0033】
制御回路112、充電回路113、電源回路115、通信装置116は、図1の回路ユニット61に配置され、充電池114は、図1のバッテリーユニット60内に配置されている。さらに、発信器211から通信装置215は、図3の回路ユニット4内に配置されている。送電側のコイル201、202は、図3の送電部2に収容されている。
【0034】
コイル201とコイル101a、101bは、数MHz〜数10MHzの周波数帯域で共振が起こるように構成されている。コイル201とコイル101a、101bは、略同じ形状と大きさを有する。コイル202は、コイル201とコイル101a、101bとの間で共振(磁気共鳴)が起こるよう、電磁誘導により、電力をコイル201に与える。
【0035】
発振器211は、商用電源や太陽電池からの電力を、コイル201とコイル101a、101bとの間で共振が起こる周波数(以下、「目標共振周波数」という)の電流信号に変換してコイル202に与える。カプラ212は、発振器211からコイル202に供給される電気信号の一部を検波器213に供給する。検波器213は、供給された電気信号をA/D変換し、変換後のデジタル信号を制御回路214に供給する。
【0036】
制御回路214は、検波器213から供給されたデジタル信号に基づいて、発振器211からコイル202に供給されている電流信号の周波数と振幅を検出する。そして、制御回路214は、検出した周波数と振幅に基づき、コイル202に供給される電流信号が、目標共振周波数と振幅になるよう、発振器211を制御する。なお、電流信号の振幅は、伝送される電力の大きさに応じて調整される。この他、制御回路214は、ネットワーク(図示せず)を介して、送電側のサーバと通信可能となっている。
【0037】
整流回路111a、111bは、それぞれ、コイル102a、102bにより受電された交流の電力(交流電流)を直流の電力(直流電流)に変換し、制御回路112に供給する。制御回路112は、充電回路113、電源回路115および通信装置116を制御する。充電回路113は、充電池に対する充電を行う。充電は、商用電源から供給された電力、または、整流回路111から供給された電力を用いて行われる。電源回路115は、
充電池114に蓄積された電力を、制御回路112による制御に応じて、各部に供給する。通信装置116は通信装置215との間で通信を行う。
【0038】
電力伝送時において、発振器211からコイル202に電流信号が供給されると、コイル202に磁界が発生し、この磁界に基づく電磁誘導によりコイル201に高周波電力が発生する。この高周波電力は、コイル201とコイル101a、101bとの間の磁気共鳴によって、コイル101a、101bに伝送される。こうして伝送された電力は、電磁誘導により、コイル101a、101bからコイル102a、102bに受電される。
【0039】
コイル102a、102bは、それぞれ、受電した電力を整流回路111a、111bに出力する。整流回路111a、111bは、受電した交流の電力(交流電流)を整流して直流の電力(直流電流)に変換し、制御回路112に供給する。制御回路112は、供給された電力を充電回路113に供給し、充電回路113に充電を行わせる。充電回路113は、供給された電力を充電池114に充電する。
【0040】
かかる充電の際に、制御回路112は、充電池114に対する充電状況を監視し、送電すべき電力に関する情報を、通信装置116を介して通信装置215に送信する。通信装置215は、受信した情報を制御回路214に送る。制御回路214は、制御回路112から要求された電力になるよう、発振器211の振幅を調整する。
【0041】
充電池114が満充電になると、制御回路112は、その旨を示す情報を、通信装置116を介して通信装置215に送信する。通信装置215は、受信した情報を制御回路214に送る。これを受けて、制御回路214は、発振器211を停止させる。これにより、電力伝送が終了する。
【0042】
図5は、制御回路112の構成を示す図である。同図には、制御回路112の構成のうち電力伝送に関するもののみが示されている。同図において、電圧検出回路121a、121b、定電圧回路122a、122b、CPU123、メモリ124が制御回路112に含まれる。
【0043】
電圧検出回路111a、111bは、それぞれ、整流回路111a、111bから出力される直流電圧の大きさを検出しCPU123に出力する。定電圧回路122a、122bは、それぞれ、整流回路111a、111bから出力される直流電圧を所定の電圧に変換して出力する。定電圧回路122a、122bから出力される電圧は互いに等しく設定される。定電圧回路122bの出力ラインは、接続部Pにおいて、定電圧回路122aの出力ラインに並列接続される。これにより、定電圧回路122bからの出力は、定電圧回路122aからの出力に加算される。こうして加算された直流電圧が充電回路113に供給される。
【0044】
CPU123は、メモリ124に記憶されたプログラムに従って各部を制御する。メモリ124は、前記プログラムを格納するとともに、CPU123のワークメモリとしても機能する。
【0045】
図6は、送電開始時における送電側と受電側の処理を示すフローチャートである。送電側の処理に関する制御は、図4の制御回路214により行われ、受電側の処理に関する制御は、図4の制御回路112によって行われる。
【0046】
図6を参照して、送電側の制御回路214は、自転車1が駐輪されたかを確認するための確認信号を、通信装置215を介して、一定の間隔で、送信する(S101)。制御回路214は、確認信号を送信した後、所定の期間内に自転車1側から応答信号を受信しな
ければ(S102:NO)、送電対象の自転車1が駐輪されなかったとして、次の確認信号の送信タイミングを待つ。
【0047】
受電側の制御回路112は、通信装置116を介して送電側から確認信号を受信したかを判別する(S201)。そして、確認信号を受信すると(S201:YES)、制御回路112は、自己のID情報を含む応答信号を、通信装置116を介して送信する(S202)。かかるID情報は、たとえばインターネット経由で、送電側のサーバに登録されている。また、登録されたID情報は、図5のメモリ124に格納されている。制御回路112は、応答信号を送信した後、所定の期間内に送電側から送電準備信号を受信しなければ(S203:NO)、送電を受けられないとして、処理を終了する。
【0048】
送電側の制御回路214は、自転車1側から応答信号を受信すると(S102:YES)、この応答信号に含まれるID情報を参照し、このID情報が予め登録されているかを確認する(S103)。具体的には、制御回路214は、応答信号に含まれるID情報を、ネットワークを介して、サーバに送信し、サーバに対し、当該ID情報が登録されているかを問い合わせる。その後、サーバからの応答により、当該ID情報がサーバに登録されていなければ、当該ID情報は不適正であるとして(S103:NO)、処理を終了し、次の確認信号の送信タイミングを待つ。
【0049】
他方、当該ID情報がサーバに登録されていると、制御回路214は、当該ID情報は適正であるとして(S103:YES)、通信装置215を介して、送電準備信号を送信する(S104)。制御回路214は、送電準備信号を送信した後、所定の期間内に自転車1側から受入信号を受信しなければ(S105:NO)、送電不可として、次の確認信号の送信タイミングを待つ。
【0050】
受電側の制御回路112は、通信装置116を介して送電側から送電準備信号を受信すると(S203:YES)、各部を受電可能な状態に設定し、その後、通信装置116を介して受入信号を送信する(S204)。
【0051】
送電側の制御回路214は、自転車1側から受入信号を受信すると(S105:YES)、図4のコイル201により送電を開始する(S106)。こうして送電か開始されると、コイル101a、101bにより電力が受け取られ、充電池114に対する充電が開始される(S206)。
【0052】
充電が開始された後、CPU123は、定期的に、電圧検出回路121a、121bによる検出結果を参照し、送電電力が、充電のための所定の電力範囲にあるかを判別する。そして、CPU123は、その判別結果に応じて、送電電力の加減要求を、通信装置116を介して、送電側に送信する。これにより、送電側において、送電電力が加減される。
【0053】
以上、本実施の形態によれば、2つのコイル101a、101bにより電力が受け取られるため、自転車1の駐輪状態に拘らず効率的に、送電部2からの電力を受電して、充電池114に充電することができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、自転車の荷かごに受電用のコイル101a、101bが配置されるため、コイル101a、101bの形状を大きくとることができ、電力伝送可能な距離を長くすることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、前かご70の前面と左側面に受電用のコイル101a、101bを配置したが、さらに、前かご70の右側面にも受電用のコイルを配置し、このコイルによって受電した電力を、受電用のコイル101a、101bにて受電した電力に加算
して、充電池114に充電を行っても良い。この場合、前かご70の右側面に配置されたコイルについて、図5に示す整流回路と、電圧検出回路と、定電圧回路とからなる回路部が設けられ、この回路部の定電圧回路からの出力ラインが、定電圧回路122a、122bからの出力回路に並列接続される。こうすると、一層、送電効率を上げることができる。
【0056】
さらに、自転車1に後かごが装着される場合には、後かごにも受電用のコイルを配置し、このコイルによって受電した電力を、他の受電用のコイルにて受電した電力に加算して、充電池114に充電を行っても良い。
【0057】
<変更例1>
上記実施の形態では、コイル101a、101bにて受電した電力を加算し、加算した電力を充電回路113に導くようにした。これに対し、本変更例では、コイル101a、101bのうち受電効率の高い方のみを使用して、受電が行われる。
【0058】
図7は、この場合の回路構成を示す図である。本変更例では、図5に比べ、コイル102a、102bを短絡可能なスイッチ125a、125bが配置され、定電圧回路122a、122bからの出力のうち何れか一方のみを充電回路113に導くための切替回路126が設けられている。スイッチ125a、125bのON/OFFおよび切替回路126における切替は、CPU123による制御によって行われる。
【0059】
スイッチ125aが短絡されると、コイル101aにて受電された電力は、スイッチ125aよりも後段側の回路(負荷)によって消費されない。この場合、コイル101aにて受電された電力は、コイル201に戻り、コイル101bへの送電に充てられる。同様に、スイッチ125bが短絡されると、コイル101bにて受電された電力は、スイッチ125bよりも後段側の回路(負荷)によって消費されずに、コイル201に戻って、コイル101aへの送電に充てられる。
【0060】
図8は、本変更例における受電側の処理を示すフローチャートである。この処理における制御は、図6のステップS206にて受電が開始された後に、受電側の制御回路112によって行われる。
【0061】
制御回路112は、まず、スイッチ125a、125bが共にOFFの状態から、スイッチ125bをON(短絡)に設定し(S211)、そのときの電圧検出回路121aの検出結果(受電電圧Va)を取得する(S212)。次に、制御回路112は、スイッチ125bをOFF、スイッチ125aをON(短絡)に設定し(S213)、そのときの電圧検出回路121bの検出結果(受電電圧Vb)を取得する(S214)。なお、受電電圧Va、Vbは、たとえば、電圧検出回路121a、121bから所定時間の間に供給される検出結果を平均したものとされる。
【0062】
しかる後、制御回路112は、取得した受電電圧Va、Vbの何れが大きいかを判別する(S215)。そして、制御回路112は、Va>Vbであると、スイッチ125a、125bが共にOFFの状態からスイッチ125bをONに設定し(S216)、Va>Vbでなければ、スイッチ125a、125bが共にOFFの状態からスイッチ125aをONに設定する(S217)。
【0063】
さらに、制御回路112は、切替回路126を制御する(S218)。すなわち、制御回路112は、Va>Vbの場合は、定電圧回路122aからの出力が充電回路113に導かれるよう切替回路126を制御し、Va>Vbでなければ、定電圧回路122bからの出力が充電回路113に導かれるよう切替回路126を制御する。
【0064】
本変更例では、コイル101a、101bのうち受電効率の高い方のみを使用して、受電が行われる。こうすると、受電効率の低い方のコイルに供給されて消費される電力を、受電効率の高いコイルの方に供給できるため、電力をより効率的に、受電側に送ることができる。よって、自転車1の駐輪状態に拘らず効率的に、送電部2からの電力を受電して、充電池114に充電することができる。
【0065】
なお、図8に示す処理は、送電開始時に実行される他、さらに、送電開始時から所定時間が経過する毎に行われても良い。こうすると、たとえば駐輪場の係員等により自転車の駐輪状態が変えられたような場合にも、その都度、受電効率の高いコイルを用いた受電を行うことができる。
【0066】
また、本変更例では、コイル101a、101bのうち受電効率の高い方のみを使用するようにしたが、受電効率の高い方のコイルのみを使用するよりも、両方のコイルを使用した方が、充電効率が高ければ、両方のコイルを用いて充電を行うようにしても良い。
【0067】
この場合、CPU123は、スイッチ125a、125bを共にOFFとした状態で、電圧検出回路121a、121bからそれぞれ検出値を取得し、取得した2つの検出値を加算して、コイル101a、101bの両方を用いたときの受電電圧V0を取得する。そして、CPU123は、上記のように取得した受電電圧Va、Vbと、受電電圧V0とを比較し、受電電圧V0が受電電圧Va、Vbよりも大きい場合に、スイッチ125a、125bを共にOFFに設定する。
【0068】
この場合、切替回路126は、上記のように定電圧回路122a、122bからの出力のうち何れか一方のみを充電回路113に導く切替形態の他、図5のように定電圧回路122a、122bの出力ラインを並列接続する切替形態を備える構成とされる。そして、CPU123は、受電電圧V0が受電電圧Va、Vbよりも大きい場合に、定電圧回路122a、122bの出力ラインを並列接続するよう、切替回路126を制御する。
【0069】
なお、本変更例でも、上記本実施の形態と同様、前かご70の前面と左側面の他、右側面にも受電用のコイルを配置してもよく、さらに、自転車1に後かごが装着される場合には、後かごにも受電用のコイルを配置しても良い。この場合、上記と同様、各コイルに短絡用のスイッチが配されるとともに、最も受電効率の高いコイルが判定され、そのコイルのみを用いた送電が行われる。なお、送電に用いないコイルをOFF状態にする方法は、上記のように短絡用のスイッチをONする方法の他、コイルから整流回路へと向かうラインに開閉スイッチを設け、このスイッチをオープンにすることで、このラインを遮断する方法を用いることもできる。
【0070】
<変更例2>
上記実施の形態では、コイル101a、101bにて受電した電力を加算し、加算した電力を充電回路113に導くようにした。これに対し、本変更例では、さらに、受電用のコイル101a、101bと電力取り出し用のコイル102a、102bの結合状態が調整され、これにより、電力の取り出し効率が高められる。なお、本変更例におけるコイル102aとコンデンサ127aは、請求項3における第1の整合回路に相当し、コイル102bとコンデンサ127bは、請求項3における第2の整合回路に相当する。
【0071】
図9は、本変更例の回路構成を示す図である。本変更例では、図5に比べ、容量可変のコンデンサ127a、127bがコイル102a、102bに並列に接続されている。コンデンサ127a、127bの容量の調節は、CPU123による制御によって行われる。
【0072】
コンデンサ127aの容量が変化すると、受電用のコイル101aとコイル102aと間の結合状態が変わる。同様に、コンデンサ127bの容量が変化すると、受電用のコイル101bとコイル102bと間の結合状態が変わる。本変更例では、受電用のコイル101aとコイル102aと間の結合状態と、受電用のコイル101bとコイル102bと間の結合状態が最適となるように、コンデンサ127a、127bの容量が調節される。
【0073】
図10は、本変更例における受電側の処理を示すフローチャートである。この処理における制御は、図6のステップS206にて受電が開始された後に、受電側の制御回路112によって行われる。
【0074】
制御回路112は、まず、コンデンサ126bを予め決められた容量に固定する(S221)。その後、制御回路112は、コンデンサ126aの容量を変えながら、電圧検出回路121aから入力される受電電圧Vaを監視し、受電電圧Vaが最大となるときのコンデンサ126aの容量(最適容量Ca:コンデンサ126aの調節値)を取得する(S222)。
【0075】
次に、制御回路112は、コンデンサ126aをS222で取得した最適容量Caに設定し(S223)、コンデンサ126bの容量を変えながら、電圧検出回路121bから入力される受電電圧Vbを監視して、受電電圧Vbが最大となるときのコンデンサ126bの容量(最適容量Cb:コンデンサ126bの調節値)を取得する(S224)。そして、制御回路112は、コンデンサ126bをS225で取得した最適容量Cbに設定する(S225)。こうして、コンデンサ126a、126bが、それぞれ、最適容量Ca、Cbに設定された状態で、電力の受電が行われる。
【0076】
本変更例では、このようにコンデンサ126a、126bが、それぞれ、最適容量Ca、Cbに設定され、これにより、受電用のコイル101a、101bと電力取り出し用のコイル102a、102bの結合状態が最適な状態に調節されるため、上記実施形態よりも電力の取り出し効率を高め得る。よって、より効率的な送電を実現することができる。
【0077】
なお、図10に示す処理は、送電開始時に実行される他、さらに、送電開始時から所定時間が経過する毎に行われても良い。こうすると、たとえば駐輪場の係員等により自転車の駐輪状態が変えられたような場合にも、その都度、受電効率の高いコイルを用いた受電を行うことができる。
【0078】
また、上記実施の形態と同様、前かご70の前面と左側面の他、さらに、前かご70の右側面や後かごにも受電用のコイルが配置される場合には、前かご70の右側面および後かごの受電用のコイルから電力を取り出す各コイルにも、図9と同様の形態にて、容量可変のコンデンサが接続され、電力の取り出し効率が最大になるように、各コンデンサの容量が調節される。
【0079】
<変更例3>
さらに、図11に示すように、上記変更例1のコイル102a、102bに容量可変のコンデンサ127a、127bを接続し、受電用のコイル101a、101bと電力取り出し用のコイル102a、102bの結合状態が最適となるようにコンデンサ127a、127bを調節するようにしても良い。この場合、図8のフローチャートは図12のように変更される。図12のフローチャートは、図8のフローチャートのステップS212、214、216、217が、それぞれ、ステップS212a、214a、216a、217aに変更されている。
【0080】
ステップS212aでは、コンデンサ127aの容量を変化させながら、電圧検出回路121aにより検出される受電電圧の最大値(最大受電電圧Va)とそのときのコンデンサ127aの容量(最適容量Ca:コンデンサ127aの調節値)が取得される。また、ステップS214aでは、コンデンサ127bの容量を変化させながら、電圧検出回路121bにより検出される受電電圧の最大値(最大受電電圧Vb)とそのときのコンデンサ127bの容量(最適容量Cb:コンデンサ127bの調節値)が取得される。そして、ステップS216aでは、スイッチ125bがONに設定されるとともに、コンデンサ127aが最適容量Caに設定される。また、ステップS217aでは、スイッチ125aがONに設定されるとともに、コンデンサ127bが最適容量Cbに設定される。
【0081】
図11および図12のように変更例2を修正すると、受電用のコイル101a、101bと電力取り出し用のコイル102a、102bの結合状態が最適な状態に調節されるため、電力の取り出し効率を高めることができる。よって、より効率的な送電を実現することができる。なお、3つ以上の受電用コイルを用いる場合は、追加されるコイルの受電系に対し図11および図12と同様の構成および処理が適用される。
【0082】
以上、本発明の実施の形態および変更例について説明したが、本発明は、上記実施の形態および変更例に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記の他に種々の変更が可能である。
【0083】
たとえば、上記実施の形態では、整流回路が設置された基板103を前かご70に配置したが、整流回路は、バッテリーユニット60内の回路ユニット61に配置しても良い。
【0084】
また、前かご70は、枠組み構造でなくても良く、たとえば、板状の部材に多数の孔が設けられたような構造でも良い。ただし、誘電体損を低下させるためには、受電用のコイルが装着される領域は、枠組み構造であるのが望ましい。
【0085】
また、コイル102を省略して、コイル101から直接、電力を取り出すようにしても良い。また、図5、7、9、11に記載の回路構成は、適宜、修正可能であり、図6、8、10、12に示す処理フローチャートもまた、適宜、修正可能である。
【0086】
さらに、上記実施の形態および変更例は、アシスト自転車に本発明を適用したものであったが、原動機つき自転車やオートバイ等、アシスト自転車以外の動力機付き二輪車に本発明を適用することも可能である。
【0087】
なお、上記実施の形態および変更例では、送電側における送電制御については特に言及しなかったが、たとえば、自転車1に配置されたコイルの数やコイルの配置位置等、コイルに関する情報を自転車から送電側に通知し、この情報に基づいて、より送電効率が向上するように、送電側の送電制御を動的に変えるようにしても良い。この場合、上記変更例2、3における処理は、送電側の送電制御の変更に応じて、送電側と共働して行われるに修正される余地が有る。
【0088】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 … 自転車
60 … バッテリーユニット(充電池)
61 … 回路ユニット(充電制御回路)
70 … 前かご(荷かご)
101a、101b … コイル(第1の受電用コイル、第2の受電用コイル)
102a、102b … コイル(第1の整合回路、第2の整合回路)
111a、111b … 整流回路(回路部)
121a、121b … 電圧検出回路(回路部)
122a、122b … 定電圧回路(回路部、加算部)
125a、125b … スイッチ(受電選択部)
126 … 切替回路(受電選択部)
127a、127b … コンデンサ(第1の整合回路、第2の整合回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電池と、
第1の受電用コイルと、
第2の受電用コイルと、
前記第1の受電用コイルおよび前記第2の受電用コイルによりそれぞれ受電した電力を前記充電池に充電するための充電制御回路と、を備え、
前記第1の受電用コイルと前記第2の受電用コイルは、互いに向きが異なるように配置され、
前記充電制御回路は、前記第1の受電用コイルと前記第2の受電用コイルがそれぞれ受電した電力を前記充電池に導くための回路部を有する、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の動力機付き二輪車において、
前記回路部は、前記第1の受電用コイルにより受電した電力と前記第2の受電用コイルにより受電した電力を加算して前記充電池に導くための加算部を有する、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項3】
請求項1に記載の動力機付き二輪車において、
前記回路部は、
前記第1の受電用コイルにより受電される電力と前記第2の受電用コイルにより受電される電力とを比較し、受電される電力が大きい方の受電コイルのみを用いて受電を行うよう制御する受電選択部を有する、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項4】
請求項2または3に記載の動力機付き二輪車において、
前記回路部は、
前記第1の受電用コイルから電力を取り出すための第1の整合回路と、
前記第1の整合回路により取り出される電力が最大となるように調整する第1の整合調整部と、
前記第2の受電用コイルから電力を取り出すための第2の整合回路と、
前記第2の整合回路により取り出される電力が最大となるように調整する第2の整合調整部と、を有する、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の動力機付き二輪車において、
前記第1のコイルは、前記動力機付き二輪車に設置された方形状の荷かごの第1の側面に装着され、前記第2のコイルは、前記荷かごの前記第1の側面に隣り合う第2の側面に装着される、
ことを特徴とする動力機付き二輪車。
【請求項6】
電力受信装置において、
充電池と、
第1の受電用コイルと、
第2の受電用コイルと、
前記第1の受電用コイルおよび前記第2の受電用コイルによりそれぞれ受電した電力を前記充電池に充電するための充電制御回路と、を備え、
前記第1の受電用コイルと前記第2の受電用コイルは、互いに向きが異なるように配置され、
前記充電制御回路は、前記第1の受電用コイルと前記第2の受電用コイルがそれぞれ受
電した電力を前記充電池に導くための回路部を有する、
ことを特徴とする電力受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−34487(P2012−34487A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171924(P2010−171924)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】