説明

包装装置におけるプッシャ

【課題】被包装体の変形を防ぐことができる包装装置のプッシャ。
【解決手段】包装装置で使用するプッシャ1のヘッド部分36の前面46に空気供給口53が形成され、側部43に空気吸引口52が形成される。空気供給口53は、プッシャ1の前端部が袋2bの内側にあるときに袋2bの内側と外側とを通気状態にすることができる。空気吸引口52は、袋2bの内側においてプッシャ1の前端部が退出する方向へ動くときに袋2bの空気を吸引して開口端部にまち57が形成されるように作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、袋の開口端部から被包装体を押入して包装品を得るための包装装置において使用されるプッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
一端部が閉鎖状態にあり、その反対端部が開口状態にある袋にプッシャを使用して被包装体を押入し、しかる後にその開口状態にある端部を閉鎖状態にして包装体を得る装置は従来周知である。例えば、実開昭61−160002号公報(特許文献1)に記載の高速型包装機械では、筒状のプラスチックフィルムに対して複数個の横シーラと切断装置とを使用することによって、ヒートシールされた閉鎖端部とその反対端部である開口端部とを有する袋を作る。その袋にはプッシャを使用して所定数の被包装体を押入し、しかる後に開口端部をヒートシールして包装体を得る。また、このような包装機械において、プッシャの両側部に空気吸引口を形成しておき、被包装体を押圧しながら袋に進入したプッシャがその袋から退出するときには、空気吸引口から袋内部の空気を吸引して、袋の開口端部にまちを作り、その開口端部をヒートシールして閉鎖状態にすることも従来技術として知られている。
【特許文献1】実開昭61−160002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来技術では、プッシャが袋から退出するときに袋の内部が減圧状態になり易い。一方、被包装体が使い捨てのおむつや生理用ナプキン等の柔軟なものであって、袋もまたプラスチックフィルムや紙等の柔軟なシート材料で形成されているものであると、減圧状態になった袋が変形することに伴って被包装体も変形するということがある。その結果として、被包装体は、使用時における機能が低下したり、外観が悪くなったりするということがある。また、包装体は、形が不揃いのものになることによって、店頭等で整然と積み上げることが難しくなるということがある。
【0004】
そこで、この発明は、被包装体や包装体におけるこのような問題を解消することができるように、包装装置で使用されるプッシャに改良を施すことを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためにこの発明が対象とするのは、閉鎖端部とその反対端部である開口端部とを有する袋に前記開口端部から被包装体を押入した後、前記開口端部の両側にまちを形成しながら前記開口端部を閉鎖して前記袋と前記被包装体とから包装体を得る包装装置において使用される前記被包装体を押入するためのプッシャである。
【0006】
かかるプッシャにおいて、この発明が特徴とするところは、以下のとおりである。前記プッシャは、前記被包装体を押入する方向とその反対方向とに往復運動するものであって、前記被被包装体に圧接しながら前記袋に進入する前端部と、その反対端部である後端部と、前記前端部と前記後端部との間において前記被包装体を押入する方向へ互いに平行して延びる両側部とを有するヘッド部分を含む。前記前端部は、前記前端部が前記袋の内側にあるときに前記プッシャを介して前記袋の内側と外側とを通気状態にすることができる空気供給口を有している。前記両側部は、前記袋の内側にある前記前端部が前記反対方向へ動くときに前記袋の前記開口端部に前記まちが形成されることを可能にする空気吸引口を有している。
【0007】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記ヘッド部分の前記前端部における前記空気供給口が、前記前端部と前記後端部との間、前記後端部および前記後端部よりも後方のいずれかにおいて大気に開放されている。
【0008】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記ヘッド部分の前記前端部における前記空気供給口からは、前記袋の内部に加圧空気を供給可能である。
【0009】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記ヘッド部分の前記両側部のそれぞれは、前記前端部から前記後端部へ向かって延びるV字溝を有し、前記V字溝の底には前記空気吸引口が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るプッシャは、そのヘッド部分における前端部に空気供給口を有し、両側部に空気吸引口を有するから、ヘッド部分が被包装体の押入を終了して袋から退出するときに、袋の開口端部にまちを形成すべく空気吸引口から開口端部内側の空気を吸い込んでも、被包装体が押入されている袋の中央部分は減圧状態になり難く、まちを形成することに起因する被包装体の変形を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
添付の図面を参照して、包装装置で使用されるこの発明においてのプッシャの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0012】
図1は、この発明においてのプッシャ1(図2,3参照)の使用対象となる袋2と、袋2で包装されるべき被包装体、すなわち複数の生理用ナプキン個包装体3が形成する集合体15とを示す図である。袋2は、例えば柔軟で非通気性のプラスチックフィルムで形成されているもので、ヒートシール2dが形成されている閉鎖端部4と、閉鎖端部4の反対端部である開口端部5とを有する。閉鎖端部4と開口端部5との間には、まち6が形成されている一対の側面部7を有する。個包装体3は、生理用ナプキン(図示せず)をプラスチックフィルムや不織布等の柔軟なシート材料で形成された個袋3aに封入したもので、袋2で包装されるべき所定数のものが機械方向A(図2を併せて参照)とこれに直交する交差方向Bとに整然と並べられて集合体15を形成している。
【0013】
図2は、この発明に係るプッシャ1が使用されている包装装置10の側面図である。包装装置10は、袋2を間欠的に供給するための第1供給工程11と、個包装体3が形成する集合体15を間欠的に供給するための第2供給工程12と、袋2と集合体15とからなる包装体14(図3を併せて参照)を得るための袋詰め工程13とを含んでいる。
【0014】
図2の第1供給工程11では、まち6が形成されている袋2が開口端部5を前方にして図の左方から間欠的に供給される。袋2では、袋2の上下面8,9(図1参照)が上下一対の拡開用吸引プレート16に吸引されて開口端部5が図1の如く拡開状態となる。吸引プレート16は、矢印C方向へ水平移動して拡開している開口端部5を複数のバケット21のうちのバケット21aにかぶせた後に、開口端部5から離れて図示の位置に復帰する。バケット21は、開口端部5を拡開した状態に維持するもので、図ではバケット21のうちのバケット21aにかぶせられた袋2が、仮想線の袋2aとして示されている。バケット21はまた、時計方向または反時計方向へ間欠的に回転する円盤22に取り付けられているもので、バケット21aにかぶせられた袋2aは円盤22とともに180°回転することによって、図の上方から下方へ移動する。図2には、そのように移動した袋2aが仮想線の袋2bとして示され、バケット21aがバケット21bとして示されている。
【0015】
図2の第2供給工程12では、集合体15が搬送機17に載せられて矢印D方向へ移動して、搬送機17に含まれているリフタ18に移される。リフタ18は上下動するもので、その上に載せられた集合体15を矢印Eで示される上方へ移動させることができる。図には、そのように移動させた集合体15が集合体15aとして示されている。なお、搬送機17では、矢印D方向へ間欠的に動く無端ベルト17aに複数のピン17bが一定の間隔で取り付けられており、搬送機17における支持台(図示せず)にスライド可能に載せられている集合体15をピン17bが図の右方、すなわち矢印D方向から押圧して、集合体15を矢印D方向へ移動させる。
【0016】
図2の袋詰め工程13は、プッシャ1と、上下一対のおさえ板31と、上下一対のシール板32と、無端ベルト33とを含んでいる。プッシャ1は、機械方向Aの左方にヘッド部分36を有し、右方にロッド部分37を有していて、そのロッド部分37がプッシャ1を機械方向Aにおいて前進後退の往復運動をさせる駆動機構(図示せず)につながっており、図示のプッシャ1は後退した位置にある。袋詰め工程13において、袋2bと、その袋2bがかぶさっているバケット21bと、上方へ移動した集合体15aと、プッシャ1とは機械方向Aにおいて整列した状態にある。プッシャ1は、機械方向Aの左方に向かって前進して、ヘッド部分36が集合体15aに圧接して集合体15aをバケット21bの内側に押入する。ヘッド部分36はさらに前進し、その集合体15aを袋2bへ押入し、次いで集合体15aを介して袋2bを左方へ押してバケット21bから外し、無端ベルト33の上に載せる。その後、ヘッド部分36は袋2bから退出するように機械方向Aの右方に向かって後退する。このときに、一対のおさえ板31が上下方向において接近するように移動して、袋2bが右方へ動くことを阻止する。ヘッド部分36が袋2bから退出すると、一対の加熱されているシール板32が上下方向において接近して袋2bの開口端部5を挟んでヒートシール2e(図3参照)を形成する。その後に一対のシール板32が図示の状態に復帰すると、集合体15を含む包装体14が得られる。包装体14は、無端ベルト33によって左方へ運ばれる。
【0017】
図3は、袋詰め工程13の詳細を示す図であるが、リフタ18と円盤22との図示が省略されている。図3の(a)では、袋2bがかぶせられたバケット21bと、集合体15aと、プッシャ1とが機械方向Aにおいて整列した状態にある。プッシャ1のヘッド部分36は、前端部41とその反対端部である後端部42とを有し、前端部41と後端部42との間には一対の側面部43と一対の上下面部44,45とが形成されている。また、前端部41には、集合体15aに接触させる前面46(図4参照)が形成され、後端部42にはロッド部分37を接続可能な後面47が形成されている。側面部43には、前端部41から後端部42に向かって延びるV字溝51が形成されており、そのV字溝51の底には空気吸引口52が形成されている。空気吸引口52は、真空ポンプ等の空気吸引源(図示せず)につながっており、袋詰め工程13における所定の時期に袋2bの空気を吸引することができる。また、前面46には、空気供給口53(図4参照)が形成されている。空気供給口53は、ヘッド部分36の内側に延びる配管(図示せず)を介して大気に開放された状態にあるか、コンプレッサ等の加圧空気供給源(図示せず)につなげられた状態にある。大気に開放される場合のその配管は、ヘッド部分36の前端部41と後端部42との間、後端部42、後端部42よりも後方の部位のいずれかに開放端を有する。
【0018】
図3の(b)では、ヘッド部分36が前進して集合体15aをトンネル状のバケット21bの内側へ押入してからさらに袋2bに押入し、その袋2bがバケット21bから外れている。
【0019】
図3の(c)では、図3の(b)におけるヘッド部分36が袋2bから退出するように後退し始める一方、一対のおさえ板31が接近し始めている。また、ヘッド部分36では、空気吸引口52における吸引が始まり、袋2bの側面部7が開口端部5の近傍においてV字溝51の形状に倣うように変形することによって、まち57(図3の(e)参照)が形成され始めている。前端部41が袋2bの内側にあるときのヘッド部分36は、空気供給口53が、常に大気に開放された状態にあるか、またはヘッド部分36が後退するときに加圧空気を袋2bの内側に供給できる状態にあって、袋2bの内側と外側とを通気可能にすることができるから、ヘッド部分36の後退動作や真空吸引作用によって袋2bの中央部分が減圧状態になることを防ぐことができる。その中央部には、集合体15が押入されている。なお、個包装体3に含まれる生理用ナプキンが弾性的な圧縮回復力を有する場合であると、集合体15はプッシャ1が前進して押圧しているときには圧縮状態にあって体積が小さくなり、プッシャ1が後退したときには圧縮状態から解放されて体積が大きくなり、袋2bは減圧状態になりかねないが、プッシャ1が空気供給口53を有することによって、そのような減圧状態になることを防ぐことができる。
【0020】
図3の(d)では、ヘッド部分36が退出した後の袋2bに対して一対の加熱されたシール板32が互いに接近して開口端部5にヒートシール2e(図3の(e)参照)を形成している。
【0021】
図3の(e)は袋詰め工程13で得られた包装体14を示している。包装体14には、ヒートシール2dに加えてヒートシール2eが形成されている。包装体14における袋2の側面部7には、ヒートシール2d,2eそれぞれの近傍にまち56,57が形成されている。
【0022】
図4は、図3の(a)に示されたヘッド部分36においてのIV−IV線矢視図である。図4にはプッシャ1のヘッド部分36における前面46の一部分と側面部43のV字溝51とが示されている。その前面46には空気供給口53が形成されている。V字溝51は、横向きのV字形を画いていて、底には空気吸引口52を有している。V字溝51に沿って仮想線で示された袋2bは、空気吸引口52を介して作用する真空圧によって変形し、まち57を形成し始めている状態にある。ただし、この発明に係るプッシャ1では、袋2にまち57を形成するための真空吸引作用が始まっても、袋2の中央部分は、ヘッド部分36における空気供給口53を介して大気に開放されている状態にあるか、または加圧空気を供給されている状態にあることによって、減圧状態になることがない。それゆえ、集合体15を形成している個包装体3は、減圧状態にある袋によって圧迫されて形状が歪む、ということがない。また、包装体14それ自体も歪むことがないから、複数の包装体14を梱包したり陳列したりするときに積み上げることが容易になる。プッシャ1において、空気吸引口52を介しての空気吸引の開始と終了の時期、および空気供給口53を介しての加圧空気供給の開始と終了の時期の制御は、それらの時期についての制御機構(図示せず)を包装装置10に設置することによって可能になる。なお、プッシャ1では、図示例のV字溝51をU字溝やその他の凹状溝に代えることが可能である。
【0023】
図5は、この発明に係るプッシャ1の使用態様の一例を示す図3の(a)と同様な図である。図5の袋2bは、開口端部5がバケット21bにかぶさる一方、閉鎖端部4が機械方向Aにおける左方からバケット21bの内側に進入している。閉鎖端部4は、その内面が露出した状態にあって、集合体15aと向き合っている。集合体15aは、プッシャ1に押されてバケット21bへ進入するときに、袋2bにおける閉鎖端部4の内面に接触する。プッシャ1が前進するにつれて、集合体15aは袋2bの中に入り、やがて図3の(b)の状態になる。袋2bを図5の状態にするには、開口端部5をバケット21bにかぶせてから、閉鎖端部4の外側から袋2bに向かって加圧空気を噴射してその閉鎖端部4をバケット21bに図の左方から進入させればよい。
【0024】
図5の態様では、プッシャ1を使用して集合体15aを袋2bへ進入させるときに、集合体15aの前方において空気が袋2bの中に閉じ込められるということがなく、コンパクトな包装体14を得ることができる。
【0025】
この発明に係るプッシャ1およびそれを含む包装装置10は、生理用ナプキンや使い捨ておむつ等の柔軟で変形し易い物品の包装に好適なものであるが、変形し難い物品に対して使用することができることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】袋と被包装体との斜視図。
【図2】プッシャを使用した包装装置の側面図。
【図3】(a)〜(e)によって袋詰め工程の詳細を示す図。
【図4】図3におけるIV−IV線矢視図。
【図5】プッシャの使用態様の一例を示す図。
【符号の説明】
【0027】
1 プッシャ
2,2a,2b 袋
4 閉鎖端部
5 開口端部
10 包装装置
14 包装体
15,15a 被包装体
36 ヘッド部分
41 前端部
42 後端部
43 側部
51 V字溝
52 空気吸引口
53 空気供給口
57 まち

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖端部とその反対端部である開口端部とを有する袋に前記開口端部から被包装体を押入した後、前記開口端部の両側にまちを形成しながら前記開口端部を閉鎖して前記袋と前記被包装体とから包装体を得る包装装置において使用される前記被包装体を押入するためのプッシャであって、
前記プッシャが前記包装体を押入する方向とその反対方向とに往復運動するものであって、前記被包装体に圧接しながら前記袋に進入する前端部と、その反対端部である後端部と、前記前端部と前記後端部との間において前記被包装体を押入する方向へ互いに平行して延びる両側部とを有するヘッド部分を含み、
前記前端部は、前記前端部が前記袋の内側にあるときに前記プッシャを介して前記袋の内側と外側とを通気状態にすることができる空気供給口を有し、前記両側部は、前記袋の内側にある前記前端部が前記反対方向へ動くときに前記袋の前記開口端部に前記まちが形成されることを可能にする空気吸引口を有していることを特徴とする前記プッシャ。
【請求項2】
前記ヘッド部分の前記前端部における前記空気供給口が、前記前端部と前記後端部との間、前記後端部および前記後端部よりも後方のいずれかにおいて大気に開放されている請求項1記載のプッシャ。
【請求項3】
前記ヘッド部分の前記前端部における前記空気供給口からは、前記袋の内部に加圧空気を供給可能である請求項1記載のプッシャ。
【請求項4】
前記ヘッド部分の前記両側部のそれぞれは、前記前端部から前記後端部へ向かって延びるV字溝を有し、前記V字溝の底には前記空気吸引口が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のプッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−202915(P2009−202915A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48441(P2008−48441)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】