説明

化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法

【課題】広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与える新しい化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表される2価の基を含む化合物。[Q〜Qは、−CR=又は−N=を表す。Tは、−O−、−S−、−C(=O)−又は−NR−を表す。Yは、単環系芳香族炭化水素基、単環系芳香族複素環等を表す。D及びDは、単結合又は2価の連結基を表す。G及びGは、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基等で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換わっていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、光学フィルム及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板などの光学フィルムを用いた部材が含まれている。光学フィルムには、たとえば、下記式で表される重合性化合物(商品名;LC242、BASF社製)を溶剤に溶かして得られる溶液を、支持基材に塗布した後、重合して得られる光学フィルムが知られている。該光学フィルムは、偏光変換を行うことが知られているが、広い波長域において一様の偏光変換を行うことについては、知られていない。

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Cordula Mock-Knoblauch, Olivier S. Enger, Ulrich D. Schalkowsky、“L-7 Novel Polymerisable Liquid Crystalline Acrylates for the Manufacturing of Ultrathin Optical Films”、SID Symposium Digest of Technical Papers、2006年、37巻、p.1673
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広い波長域において一様の偏光変換を行う光学フィルムを与える重合性化合物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明である。
1. 式(1)で表される2価の基を含む化合物。

[式(1)中、
、Q、Q、及びQは、それぞれ独立に、−CR=又は−N=を表す。
は、−O−、−S−、−C(=O)−又は−NR−を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい単環系芳香族炭化水素基、単環系芳香族複素環、多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基を表す。
及びDは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換わっていてもよい。]
【0006】
2. 式(2)で表される2価の基を含む1.記載の化合物。

[式(2)中、Q、Q、Q、Q、T、Y、D、D、G及びGは、上記と同じ意味を表す。
及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びBは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。該炭素数1〜4のアルキル基及び該炭素数1〜4アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。]
【0007】
3. 式(3)で表される1.又は2.記載の化合物。

[式(3)中、Q、Q、Q、Q、T、Y、D、D、G、G、E、E、B、B、A、A、k及びlは、上記と同じ意味を表す。
及びFは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。P及びPのうち少なくとも一方が重合性基である。]
【0008】
4. Yが式(Y−1)〜式(Y−3)のいずれかで表される基である1.〜3.のいずれか記載の化合物。


[式(Y−1)〜式(Y−3)中、*印は結合手を表し、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシキド基、スルホン基、スルホキシド基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基又は炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基を表す。
は、−CO−、−NR−、−SO−、又は16族元素を表す。
〜Wは、それぞれ独立に、−CR=又は−N=を表す。
ただし、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、C、S、N、O又はSeを含む基を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
aは、0〜5の整数を表す。
bは、0〜3の整数を表す。]
【0009】
5. Yが式(Y−1)〜式(Y−6)のいずれかで表される基である1.〜4.のいずれか記載の化合物。


[式(Y−1)〜式(Y−6)中、Z、a、b、V、V及びW〜Wは、上記と同じ意味を表す。]
【0010】
6. Q、Q、Q、及びQが−CR=である1.〜5.のいずれかに記載の化合物。
【0011】
7. G及びGが、トランス−1,4−シクロヘキシレン基である1.〜6.のいずれか記載の化合物。
【0012】
8. A及びAが、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基であり、該1,4−フェニレン基及び1,4−シクロヘキシレン基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、トリフルオロメチル基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい2.〜7.のいずれか記載の化合物。
【0013】
9. B及びBのうち、A又はAのみと結合しているB及びBが、それぞれ独立に、−CH−CH−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−O−CH−、−CH−O−又は単結合であり、
及びBのうち、F又はFと結合しているB及びBが、それぞれ独立に、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−又は単結合である2.〜8.のいずれか記載の化合物。
【0014】
10. P及びPが、それぞれ独立に、水素原子、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基(ただし、P及びPのうち少なくとも1つは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す)である3.〜9.のいずれか記載の化合物。
【0015】
11. 1.〜10.のいずれか記載の化合物と、式(20)で表される化合物とを含有する組成物。
11−E11−(B11−A11−B12−G (20)
[式(20)中、A11は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は複素環基を表し、該芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び複素環基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、ニトロ基、ニトリル基又はメルカプト基で置換されていてもよい。
11及びB12は、それぞれ独立に、−CR1415−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR16−、−NR16−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR16−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−又は単結合を表す。R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R14及びR15が連結して炭素数4〜7のアルキレン基を構成してもよい。R16は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
11は、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
11は、重合性基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のアルキルアミノ基、ニトリル基、ニトロ基であるか、炭素数1〜12のアルキレン基を介して結合する重合性基を表し、該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
tは、1〜5の整数を表す。]
【0016】
12. さらに重合開始剤を含有する11.記載の組成物。
【0017】
13. 1.〜10.のいずれか記載の化合物を重合してなる光学フィルム。
【0018】
14. 11.又は12.のいずれか記載の組成物を重合してなる光学フィルム。
【0019】
15. 波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113〜163nmのλ/4板用である13.又は14.記載の光学フィルム。
【0020】
16. 波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250〜300nmのλ/2板用である13.又は14.記載の光学フィルム。
【0021】
17. 13.〜16.のいずれか記載の光学フィルム及び偏光フィルムを含む偏光板。
【0022】
18. 13.〜16.のいずれか記載の光学フィルムを含むカラーフィルタ。
【0023】
19. 18.記載のカラーフィルタを含む液晶表示装置。
【0024】
20. 17.記載の偏光板を含む液晶パネルを備えるフラットパネル表示装置。
【0025】
21. 17.記載の偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機EL表示装置。
【0026】
22. 1.〜10.のいずれか記載の化合物を含む溶液を支持基材に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【0027】
23. 1.〜10.のいずれか記載の化合物を含む溶液を、支持基材上に形成された配向膜上に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【0028】
24. 22.又は23.記載の未重合フィルムの製造方法で得られた未重合フィルムを、重合により硬化させる光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換を行う光学フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るカラーフィルタ1を示す概略図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置5を示す概略図である。
【図3】本発明に係る偏光板30を示す概略図である。
【図4】本発明に係る液晶表示装置の液晶パネル20と偏光板30との貼合品21を示す概略図である。
【図5】本発明に係る有機EL表示装置の有機ELパネル23を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の化合物(以下「化合物(1)」という場合がある)は、式(1)で表される2価の基を含む。
【0032】

【0033】
[式(1)中、
、Q、Q、及びQは、それぞれ独立に、−CR=又は−N=を表す。
は、−O−、−S−、−C(=O)−又は−NR−を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい単環系芳香族炭化水素基、単環系芳香族複素環、多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基を表す。
及びDは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換わっていてもよい。]
【0034】
、Q、Q、及びQとしては、合成が容易であること、溶解性に優れること、化学的に安定であることから−CR=が好ましく、−CH=がより好ましい。
【0035】
としては、合成が容易であること、液晶相の温度範囲が比較的低温であることから−O−又は−S−が好ましい。
【0036】
として、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。
【0037】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0038】
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0039】
炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec−ブチルスルフィニル基、tert−ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、ヘキシル基スルフィニル等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルフィニル基がより好ましく、メチルスルフィニル基が特に好ましい。
【0040】
炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基がより好ましく、メチルスルホニル基が特に好ましい。
【0041】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0042】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0043】
炭素数1〜6のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルチオ基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルチオ基がより好ましく、メチルチオ基が特に好ましい。
【0044】
炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−イソブチルアミノ基、N−sec−ブチルアミノ基、N−tert−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基等が挙げられ、炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基がより好ましく、N−メチルアミノ基が特に好ましい。
【0045】
炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基等が挙げられ、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基がより好ましく、N,N−ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0046】
炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基としては、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−イソプロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−イソブチルスルファモイル基、N−sec−ブチルスルファモイル基、N−tert−ブチルスルファモイル基、N−ペンチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基等が挙げられ、炭素数1〜4のN−アルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルスルファモイル基がより好ましく、N−メチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0047】
炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−メチル−N−エチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジイソプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジイソブチルスルファモイル基、N,N−ジペンチルスルファモイル基、N,N−ジヘキシルスルファモイル基等が挙げられ、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルスルファモイル基がより好ましく、N,N−ジメチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0048】
は、光学特性に優れることから、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルチオ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチルスルファモイル基又はN,N−ジメチルスルファモイル基であることがより好ましく、合成が容易であることから、Rは水素原子、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、N,N−ジメチルアミノ基がより好ましく、原料が安価に入手できることから、Rは水素原子、ハロゲン原子、メチル基が特に好ましい。
【0049】
は、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基を表す。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、又は芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、又は芳香環集合に由来する基をいう。Yは、例えば、式(Y−1)〜式(Y−5)で表される基であることが好ましく、式(Y−1)、式(Y−2)又は式(Y−3)で表される基であることがより好ましく、式(Y−1)又は式(Y−2)で表される基であることが特に好ましい。
【0050】

【0051】
[式(Y−1)〜式(Y−5)中、*は結合手を表し、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシキド基、スルホン基、スルホキシド基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基又は炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基を表す。
及びVは、それぞれ独立に−CO−、−NR−、−SO−、又は16族元素を表す。
〜Wは、それぞれ独立に、−CR=又は−N=を表す。
ただし、V、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、C、S、N、O又はSeを含む基を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
aは、0〜5の整数を表す。
bは、0〜3の整数を表す。]
【0052】
16族元素としては、S、O及びSeが挙げられる。
【0053】
式(Y−1)〜式(Y−5)で表されるいずれかの基は、例えば式(Y−1)〜式(Y−7)で表されるいずれかの基であることが好ましく、式(Y−1)〜式(Y−6)で表されるいずれかの基であることがより好ましく、式(Y−1)又は式(Y−3)で表される基であることが特に好ましい。
【0054】

【0055】
[式(Y−1)〜式(Y−7)中、Z、a、b、V、V及びW〜Wは、上記と同じ意味を表す。]
【0056】
としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられ、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホン基、ニトロキシキド基、カルボキシル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、チオメチル基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
【0057】
ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基及び炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、前記したものと同様のものが挙げられる。
【0058】
及びVは、それぞれ独立に、−S−、−NH−又は−O−であることが好ましい。
【0059】
〜Wは、それぞれ独立に、−CR=又は−N=であることが好ましい。
【0060】
、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、S、N又はOを含む基を表すことが好ましい。
【0061】
aは0〜2であることが好ましい。bは0又は1であることが好ましい。
【0062】
及びDの2価の連結基としては、例えば、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−、−S−、−NR−、−CR=CR−等が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0063】
及びDが、−O−CO−*、−O−C(=S)−*、−O−CR−*、−NR−CR−*又は−NR−CO−*(*はG又はGとの結合手を表す。)であることが好ましい。D及びDが、−O−CO−*、−O−C(=S)−*又は−NR−CO−*であることがより好ましい。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0064】
及びGとしては、式(g−1)〜式(g−10)で示されるヘテロ原子を含んでもよい脂環式炭化水素基が挙げられ、5員環又は6員環の脂環式炭化水素基であることが好ましい。
【0065】

【0066】
上記式(g−1)〜(g−10)で示される基は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等等の炭素数1〜4のフルオロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0067】
及びGとしては、式(g−1)で表される6員環からなる脂環式炭化水素基であることが好ましく、1,4−シクロヘキシレン基であることがさらに好ましく、trans−1,4−シクロへキシレン基であることが特に好ましい。
【0068】
化合物(1)は、式(2)で表される2価の基を含む化合物であることが好ましい。
【0069】

【0070】
[式(2)中、Q、Q、Q、Q、T、Y、D、D、G及びGは、上記と同じ意味を表す。
及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びBは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。該炭素数1〜4のアルキル基及び該炭素数1〜4アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。]
【0071】
及びEの2価の連結基としては、例えば、−CR10−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−O−CH−、−CH−O−、−S−CH−、−CH−S−、−NR11−、−CR=CR10−等が挙げられる。R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R11は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0072】
及びEは、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−CH−O−、−CH−S−又は単結合がより好ましく、−CO−O−が特に好ましい。
【0073】
及びBの2価の連結基としては、例えば、−CR10−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−O−CH−、−CH−O−、−S−CH−、−CH−S−、−NR11−、−CR=CR10−等が挙げられる。R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R11は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0074】
及びBは、同じ種類の2価の基であると、化合物(1)の製造が容易なことから好ましい。さらに化合物(1)の製造がより容易なことから、B及びBのうち、A及びAのみと結合しているB及びBが、それぞれ独立に、−CH−CH−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−O−CH−、−CH−O−又は単結合であることが好ましく、特に高い液晶性を示すことから、−CO−O−又は−O−CO−が好ましい。B及びBのうち、E又はEと結合しているB及びBが、それぞれ独立に、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−又は単結合であることがより好ましい。
【0075】
及びAにおける2価の脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基としては、上記式(g−1)〜式(g−10)で表される5員環又は6員環などからなる脂環式炭化水素基や、式(a−1)〜式(a−8)で表される炭素数6〜20程度の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0076】

【0077】
上記式(a−1)〜式(a−8)で表される基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、i−プロピル基又はt−ブチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基;メトキシ基又はエトキシ基などの炭素数1〜4程度のアルコキシ基;トリフルオロメチル基;トリフルオロメチルオキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子又は臭素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0078】
及びAとしては、特に、いずれも同種類の基であると、化合物(1)の製造が容易であることから好ましい。またA及びAとしては、単環の1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基であると好ましく、化合物(1)の製造が容易なことから、特に1,4−フェニレン基が好ましい。
【0079】
k及びlは、液晶性の観点から、それぞれ独立に、0〜3の整数を表すことが好ましく、k及びlは0〜2であることがより好ましい。k及びlの合計は、2〜5が好ましく、2〜4がより好ましい。特に合成が容易で光学特性に優れることからkとlが1であることが特に好ましい。
【0080】
化合物(1)は、式(3)で表される2価の基を含む化合物であることが好ましい。
【0081】

【0082】
[式(3)中、Q、Q、Q、Q、T、Y、D、D、G、G、E、E、B、B、A、A、k及びlは、上記と同じ意味を表す。
及びFは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれるメチレン基は、−O−又は−CO−で置換されていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。]
【0083】
及びFは、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH−、−(CH10−、−(CF−、−(CF−、−(CF−がより好ましく、−(CH−、−(CH−が特に好ましい。
【0084】
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。P及びPのうち少なくとも1つは、重合性基であることが好ましく、P及びPが両方とも重合性基であると、得られる光学フィルムの膜硬度が優れる傾向があることからより好ましい。
重合性基とは、本発明の化合物(1)を重合させることのできる置換基であり、具体的には、ビニル基、p−スチルベン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基又はチオイソシアネート基などが例示される。また重合性基には、上記例示の基とE及びEを結合するために、B及びBとして示される基が含まれていてもよい。たとえば光重合させるのに適した、ラジカル重合性、カチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上、製造も容易であることからアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。P及びPがいずれも重合性基であると、得られる光学フィルムの膜硬度が優れる傾向があることからより好ましい。
【0085】
−D−G−E−(A−B−F−P及び−D−G−E−(A−B−F−Pの具体的例としては、式(R−1)〜式(R−132)で表される基が挙げられる。*(アスタリスク)は、式(1)、式(2)、あるいは式(3)中のN、T、Q、及びQと結合するベンゼン環との結合手を表す。式(R−1)〜式(R−132)中、いずれのシクロヘキサン環もシス−トランス体の混合物又はトランス体であるが、シス−トランス体の混合物である場合、トランス体の含有量が51%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であると特に好ましい。
【0086】

【0087】

【0088】

【0089】

【0090】

【0091】

【0092】

【0093】

【0094】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】

【0099】

【0100】

【0101】
化合物(1)としては、、式(A1−1)〜式(A64−8)で表される化合物が挙げられる。*は結合手を表し、例えば式(A1−1)で表される化合物は、下記のように表される化合物である。

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】

【0109】

【0110】

【0111】

【0112】

【0113】

【0114】

【0115】

【0116】

【0117】

【0118】

【0119】

【0120】

【0121】

【0122】

【0123】

【0124】

【0125】

【0126】

【0127】

【0128】

【0129】

【0130】

【0131】

【0132】

【0133】

【0134】

【0135】

【0136】

【0137】

【0138】

【0139】

【0140】

【0141】

【0142】

【0143】

【0144】

【0145】

【0146】

【0147】

【0148】

【0149】

【0150】

【0151】

【0152】

【0153】

【0154】

【0155】

【0156】

【0157】

【0158】

【0159】

【0160】

【0161】

【0162】

【0163】

【0164】

【0165】

【0166】
化合物(1)の製造方法について説明する。
化合物(1)は、Methoden der Organischen Chemie、Organic Reactions、Organic Syntheses、Comprehensive Organic Synthesis、新実験化学講座等に記載されている公知の有機合成反応(例えば、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、アルドール反応など)を、その構造に応じて、適宜組み合わせることにより、製造することができる。
【0167】
例えば、D及びDが−O−CO−*(*はG又はGとの結合手を表す。)である化合物(1)の場合には、式(11−1)
【0168】

(式中、Arは、式(1)中のD及びDと結合する芳香環を表す。)
で示される化合物と式(11−2)
【0169】

(式中、G、E、A、B、F、P及びkは上記と同一の意味を表す。)
で示される化合物とを反応させることにより、式(11−3)
【0170】

(式中、Ar、G、E、A、B、F、P及びkは上記と同一の意味を表す。)
で示される化合物を得、得られた式(11−3)で示される化合物と式(11−4)
【0171】

(式中、G、E、A、B、F、P及びlは上記と同一の意味を表す。)
で示される化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0172】
式(11−1)で示される化合物と式(11−2)で示される化合物との反応及び式(11−3)で示される化合物と式(11−4)で示される化合物との反応は、エステル化剤の存在下に実施することが好ましい。
【0173】
さらに、D及びDが−O−CO−*(*はG又はGとの結合手を表す。)である化合物(1)の場合で、GとG、EとE、AとA、BとB、FとF、PとP及びkとlが全て同じである場合には、式(11−1)で示される化合物と二当量以上の式(11−2)化合物とをエステル化反応させることにより、一段階で化合物(1)を製造することができる。
【0174】
エステル化剤(縮合剤)としては、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−パラ−トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(一部水溶性カルボジイミド:WSCとして市販されている)、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、N、N’−ジイソプロピルカルボジイミド、などのカルボジイミド、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1(4−ニトロベンゼンスルフォニル)−1H−1、2、4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N−カルボベンゾキシスクシンイミド、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブロモ−1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステル、が挙げられる。反応性、コスト、使用できる溶媒の点から、縮合剤としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、N、N’−ジイソプロピルカルボジイミド、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾールがより好ましい。
【0175】
本発明の組成物(以下「組成物(1)」という場合がある)は、化合物(1)と、液晶化合物(ただし、化合物(1)とは異なる、以下「液晶化合物」という場合がある)とを含有する組成物である。
【0176】
液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物が挙げられる。
液晶化合物として、異なる複数の化合物を併用してもよい。
【0177】
化合物(1)にさらに液晶化合物を混合させると、波長分散値、位相差値などの光学特性、熱物性を所望の値に調節することができる。
【0178】
液晶化合物としては、例えば、式(20)で表される化合物(以下「化合物(20)」という場合がある)等が挙げられる。
【0179】
11−E11−(B11−A11−B12−G (20)
[式(20)中、A11は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は複素環基を表し、該芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び複素環基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、ニトロ基、ニトリル基又はメルカプト基で置換されていてもよい。
11及びB12は、それぞれ独立に、−CR1415−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR16−、−NR16−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR16−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−又は単結合を表す。R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R14及びR15が連結して炭素数4〜7のアルキレン基を構成してもよい。R16は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
11は、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
11は、重合性基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のアルキルアミノ基、ニトリル基、ニトロ基であるか、炭素数1〜12のアルキレン基を介して結合する重合性基を表し、該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
tは、1〜5の整数を表す。]
【0180】
特に、P11及びGにおける重合性基としては、化合物(1)と重合することができる基であればよく、ビニル基、ビニルオキシ基、p−スチルベン基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシル基、アセチル基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、ホルミル基、−N=C=O又は−N=C=S等が挙げられる。なかでも、光重合に適するという点で、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易で、液晶化合物の製造も容易であるという点で、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基又はビニルオキシ基が好ましい。
【0181】
また、A11の芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び複素環基の炭素数は、それぞれ、例えば3〜18であり、5〜12であることが好ましく、5又は6であることが特に好ましい。
【0182】
化合物(20)としては、例えば、式(20−1)及び式(20−2)で表される化合物が挙げられる。
【0183】
P11-E11-(B11-A11)t1-B12-E12-P12 (20−1)
P11-E11-(B11-A11)t2-B12-F11 (20−2)
[式(20−1)及び式(20−2)中、P11、E11、B11、A11、B12は上記と同義である。
11は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のアルキルアミノ基、ニトリル基、ニトロ基を表す。
12は、E11と同義である。
12は、P11と同義である。
及びtはtと同義である。]
【0184】
さらに、これら式(20−1)及び(20−2)で表される化合物として、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)又は式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0185】
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-A15-B16-E12-P12 (I)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-A14-B15-E12-P12 (II)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-E12-P12 (III)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-A13-B14-F11 (IV)
P11-E11-B11-A11-B12-A12-B13-F11 (V)
[式(I)〜式(V)中、A12〜A15は、A11と同義であり、B13〜B16は、B11と同義である]。
【0186】
なお、式(20−1)、式(20−2)、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)及び式(V)で表される化合物においては、P11とE11との組み合わせを適宜選択することにより、さらにP12とE12との組み合わせを適宜選択することにより、両者がエーテル結合又はエステル結合を介して結合されていることが好ましい。
【0187】
液晶化合物の具体例としては、たとえば以下の式(I)の例として式(I−1)〜式(I−8)、式(B1−1)〜式(B20−8)、式(C1−1)〜式(C4−8)、式(II)の例として式(II−1)〜式(II−12)、式(III)の例として式(III−1)〜式(III−35)、式(IV)の例として式(IV−1)〜式(IV−24)、式(V)の例として式(V−1)〜式(V−8)で表される化合物などが挙げられる。ただし、式中kは、1〜11の整数を、*は結合手を表す。これらの液晶化合物であれば、合成が容易であり、市販されているなど、入手が容易であることから好ましい。
【0188】

【0189】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】

【0194】

【0195】

【0196】

【0197】

【0198】

【0199】

【0200】

【0201】

【0202】

【0203】

【0204】

【0205】

【0206】

【0207】

【0208】

【0209】

【0210】

【0211】

【0212】

【0213】

【0214】

【0215】

【0216】

【0217】

【0218】

【0219】

【0220】

【0221】

【0222】

【0223】

【0224】

【0225】

【0226】

【0227】

【0228】

【0229】

【0230】
また液晶化合物の使用量は、たとえば液晶化合物と化合物(1)との合計100重量部に対して、90重量部以下である。
【0231】
組成物(1)は、さらに重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。
【0232】
重合開始剤としては、たとえばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152及びアデカオプトマーSP−170(以上、全て株式会社ADEKA製)などを挙げることができる。
【0233】
また重合開始剤の使用量は、たとえば化合物(1)と液晶化合物との合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは、0.5重量部〜10重量部である。
【0234】
組成物(1)は、さらに、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤及び有機溶剤などを含むことが好ましい。
【0235】
〔重合禁止剤〕
重合禁止剤としては、たとえばハイドロキノン及びアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類並びにβ−ナフトール類等を挙げることができる。
【0236】
重合禁止剤を用いることにより、化合物(1)の重合を制御することができ、得られる光学フィルムの安定性を向上させることができる。また重合禁止剤の使用量は、たとえば化合物(1)と液晶化合物との合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
【0237】
〔光増感剤〕
光増感剤としては、たとえばキサントン及びチオキサントン等のキサントン類、アントラセン又はアルキルエーテルなどの置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン並びにルブレンを挙げることができる。
【0238】
光増感剤を用いることにより、化合物(1)等の重合を高感度化することができる。また光増感剤の使用量としては、化合物(1)と液晶化合物との合計100重量部に対して、たとえば0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
【0239】
〔レベリング剤〕
レベリング剤としては、たとえば放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング株式会社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、塗料添加剤(信越化学工業株式会社製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)及びフッ素系添加剤(大日本インキ化学工業株式会社製:F−445、F−470、F−479)などを挙げることができる。
【0240】
レベリング剤を用いることにより、光学フィルムを平滑化することができる。さらに光学フィルムの製造過程で、組成物(1)の流動性を制御したり、化合物(1)等を重合して得られる光学フィルムの架橋密度を調整したりすることができる。またレベリング剤の使用量は、たとえば化合物(1)と液晶化合物との合計100重量部に対して、0.1重量部〜30重量部であり、好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
【0241】
〔有機溶剤〕
有機溶剤としては、化合物(1)などを溶解し得る有機溶剤であり、重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ又はプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート又は乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン又はメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン又はヘプタンなどの非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン又はフェノールなどの非塩素系芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;クロロホルム又はクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;などが挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。組成物(1)は相溶性に優れ、アルコール、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、非塩素系脂肪族炭化水素溶剤及び非塩素系芳香族炭化水素溶剤などにも溶解し得ることから、クロロホルムなどの塩素系溶媒を用いなくとも、溶解して塗工させることができる。
【0242】
組成物(1)の粘度は、塗布しやすいように、たとえば10Pa・s以下、好ましくは0.1〜7Pa・s程度に調整されることが好ましい。
【0243】
また組成物(1)における固形分の濃度は、たとえば5〜50重量%である。固形分の濃度が5%以上であると、光学フィルムが薄くなりすぎず、液晶パネルの光学補償に必要な複屈折率が与えられる傾向がある。また50%以下であると、組成物(1)の粘度が低いことから、光学フィルムの膜厚にムラが生じにくくなる傾向があることから好ましい。
【0244】
本発明の光学フィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折などを意味する。光学フィルムの一種である位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる。
【0245】
本発明の光学フィルムの波長分散特性は、光学フィルムにおける化合物(1)に由来する構造単位の含有量によって、決定することができる。光学フィルムにおける化合物(1)に由来する構造単位の含有量を増加させると、よりフラットな波長分散特性、さらには逆波長分散特性を示す。
【0246】
具体的には、組成物(1)について、化合物(1)に由来する構造単位の含有量が異なる組成物を2〜5種類程度調製し、それぞれの組成物について後述するように、同じ膜厚の光学フィルムを製造して得られる光学フィルムの位相差値を求め、その結果から、化合物(1)に由来する構造単位の含有量と光学フィルムの位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、上記膜厚における光学フィルムに所望の位相差値を与えるために必要な化合物(1)に由来する構造単位の含有量を決定すればよい。
【0247】
本発明の光学フィルムの製造方法について、以下に説明する。
まず、化合物(1)に、必要に応じて、液晶化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤又は有機溶剤などの添加剤を加えて、組成物(1)を調製する。特に成膜時に成膜が容易となること有機溶剤を含むことが好ましく、得られた光学フィルムを硬化する働きをもつことから重合開始剤を含むことが好ましい。
【0248】
続いて支持基材に、組成物(1)を塗布し、乾燥、重合させて、支持基材上に目的の光学フィルムを得ることができる。
【0249】
[未重合フィルム調製工程]
支持基材の上に、組成物(1)を塗布し、乾燥すると、未重合フィルムが得られる。未重合フィルムがネマチック相などの液晶相を示す場合、得られる光学フィルムは、モノドメイン配向による複屈折性を有する。未重合フィルムは0〜120℃程度、好ましくは、25〜80℃の低温で配向することから、配向膜として上記に例示したような耐熱性に関して必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。また、配向後さらに30〜10℃程度に冷却しても結晶化することがないため、取扱いが容易である。
【0250】
なお組成物(1)の塗布量や濃度を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように膜厚を調製することができる。化合物(1)の量が一定である組成物(1)の場合、得られる光学フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(7)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、膜厚dを調整すればよい。
【0251】
Re(λ)=d×Δn(λ) (7)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
また波長分散特性は、通常、ある波長λにおける位相差値Re(λ)を550nmにおける位相差値Re(550)で除した値(Re(λ)/Re(550))で表され、(Re(λ)/Re(550))が1に近い波長域や、[Re(450)/Re(550)]<1かつ[Re(650)/Re(550)]>1の逆波長分散性を示す波長域では、一様の偏光変換が可能である。
【0252】
支持基材への塗布方法としては、たとえば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法及びダイコーティング法などが挙げられる。またディップコーター、バーコーター及びスピンコーターなどのコーターを用いて塗布する方法などが挙げられる。
【0253】
上記支持基材としては、たとえばガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム及び透光性フィルムを挙げることができる。なお上記透光性フィルムとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルムなどが挙げられる。
【0254】
たとえば本発明の光学フィルムの貼合工程、運搬工程、保管工程など、光学フィルムの強度が必要な工程でも、支持基材を用いることにより、破れなどなく容易に取り扱うことができる。
【0255】
また、支持基材上に配向膜を形成して、配向膜上に組成物(1)を塗工することが好ましい。配向膜は、組成物(1)の塗工時に、組成物(1)に溶解しない溶剤耐性を持つこと、溶剤の除去や液晶の配向の加熱処理時に、耐熱性をもつこと、ラビング時に、摩擦などによる剥がれなどが起きないことが好ましく、ポリマーを含有することが好ましい。
【0256】
上記ポリマーとしては、たとえば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上混ぜたり、共重合体したりして用いてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミンなどによる重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0257】
またこれらのポリマーは、溶剤に溶解して、塗布することができる。溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ又はプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート又は乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン又はメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン又はヘプタンなどの非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;トルエン又はキシレンなどの非塩素系芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒;クロロホルム又はクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;などが挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0258】
また配向膜を形成するために、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業株式会社製)又はオプトマー(登録商標、JSR株式会社製)などが挙げられる。
【0259】
このような配向膜を用いれば、延伸による屈折率制御を行う必要がないため、複屈折の面内ばらつきが小さくなる。それゆえ、支持基材上にフラットパネル表示装置(FPD)の大型化にも対応可能な大きな光学フィルムを提供できるという効果を奏する。
【0260】
上記支持基材上に配向膜を形成する方法としては、たとえば上記支持基材上に、市販の配向膜材料や配向膜の材料となる化合物を溶液にして塗布し、その後、アニールすることにより、上記支持基材上に配向膜を形成することができる。
【0261】
このようにして得られる配向膜の厚さは、たとえば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。上記範囲とすれば、化合物(1)等を該配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
【0262】
またこれら配向膜は、必要に応じてラビングもしくは偏光UV照射を行うことができる。これらにより化合物(1)等を所望の方向に配向させることができる。
【0263】
配向膜をラビングする方法としては、たとえばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている配向膜に接触させる方法を用いることができる。
【0264】
上記の通り、未重合フィルム調製工程では、支持基材の上に積層した配向膜上に未重合フィルム(液晶層)を積層する。それゆえ、液晶セルを作製し、該液晶セルに液晶化合物を注入する方法に比べて、生産コストを低減することができる。さらにロールフィルムでのフィルムの生産が可能である。
【0265】
溶剤の乾燥は、重合を進行させるとともに行ってもよいが、重合前にほとんどの溶剤を乾燥させることが、成膜性の点から好ましい。
【0266】
溶剤の乾燥方法としては、たとえば自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥などの方法が挙げられる。具体的な加熱温度としては、10〜120℃であることが好ましく、25〜80℃であることがさらに好ましい。また加熱時間としては、10秒間〜60分間であることが好ましく、30秒間〜30分間であることがより好ましい。加熱温度及び加熱時間が上記範囲内であれば、上記支持基材として、耐熱性が必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
【0267】
[未重合フィルム重合工程]
未重合フィルム重合工程では、上記未重合フィルム調製工程で得られた未重合フィルムを重合し、硬化させる。これにより化合物(1)の配向性が固定化されたフィルム、すなわち重合フィルムとなる。したがってフィルムの平面方向に屈折率変化が小さく、フィルムの法線方向に屈折率変化が大きい重合フィルムを製造することができる。
【0268】
未重合フィルムを重合させる方法は、化合物(1)の種類に応じて、決定されるものである。化合物(1)に含まれる重合性基が光重合性であれば光重合、該重合性基が熱重合性であれば熱重合により、上記未重合フィルムを重合させることができる。本発明では、特に光重合により未重合フィルムを重合させることが好ましい。光重合によれば低温で未重合フィルムを重合させることができるので、耐熱性の面から支持基材の選択幅が広がる。また工業的にも製造が容易となる。また成膜性の観点からも光重合が好ましい。光重合は、未重合フィルムに可視光、紫外光又はレーザー光を照射することにより行う。取り扱い性の観点から、紫外光が特に好ましい。光照射は、化合物(1)が液晶相をとる温度に加温しながら行ってもよい。この際、マスキングなどによって重合フィルムをパターニングすることもできる。
【0269】
本発明の光学フィルムは、配向膜と光学フィルムとの密着性が良好であるから、製造が容易である。また、本発明の光学フィルムは、ポリマーを延伸することによって位相差を与える延伸フィルムと比較して、薄膜である。
【0270】
本発明の光学フィルムの製造方法において、上記工程に続いて、支持基材を剥離する工程を含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られる積層体は、配向膜と光学フィルムとからなるフィルムとなる。また上記支持基材を剥離する工程に加えて、配向膜を剥離する工程をさらに含んでいてもよい。このような構成とすることにより、光学フィルムを得ることができる。
【0271】
かくして得られた光学フィルムは、透明性に優れ、様々なディスプレイ用フィルムとして使用される。形成される層の厚みは、上記のとおり、得られる光学フィルムの位相差値によって、異なるものである。本発明では、上記厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.5〜3μmであることがさらに好ましい。
【0272】
配向膜を用いて複屈折性を有する場合には、たとえば位相差値としては、50〜500nm程度であり、好ましくは100〜300nmである。
【0273】
このような薄膜でより広い波長域において一様の偏光変換が可能なフィルムは、すべての液晶パネルや有機ELなどのFPDにおいて、光学補償フィルムとして用いることができる。
【0274】
本発明の光学フィルムを広帯域λ/4板又はλ/2板として使用するためには、化合物(1)に由来する構造単位の含有量を適宜選択する。λ/4板の場合には、得られる光学フィルムのRe(550)を113〜163nm、好ましくは135〜140nm、特に好ましくは約137.5nm程度に膜厚を調整すればよく、λ/2板の場合には、得られる光学フィルムのRe(550)を250〜300nm、好ましくは273〜277nm、特に好ましくは約275nm程度となるように、膜厚を調整すればよい。
【0275】
本発明の光学フィルムをVA(Vertical Alingment)モード用光学フィルムとして使用するためには、化合物(1)に由来する構造単位の含有量を適宜、選択する。Re(550)を好ましくは40〜100nm、より好ましくは60〜80nm程度となるように膜厚を調整すればよい。
【0276】
化合物(1)を少量添加するだけで、光学フィルムの波長分散特性を1に近い値へとシフトさせることができ、所望の波長分散特性を簡便な方法で調製することができる。
【0277】
本発明の光学フィルムは、アンチリフレクション(AR)フィルムなどの反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルム及び透過型液晶ディスプレイの視野角補償用光学補償フィルムなどに利用することができる。また本発明の光学フィルムは1枚でも優れた光学特性を示すが、複数枚を積層させてもよい。
【0278】
また他のフィルムと組み合わせてもよい。具体的には偏光フィルムに本発明の光学フィルムを貼合させた楕円偏光板、該楕円偏光板にさらに本発明の光学フィルムを広帯域λ/4板として貼合させた広帯域円偏光板などが挙げられる。
【0279】
本発明の光学フィルムは、配向膜上に塗布、紫外線照射で重合させることによって形成させることができるため、図1に示すように従来よりも簡便にカラーフィルタ上に広帯域の例えばλ/4板やλ/2板を形成させることができる。
【0280】
図1は、本発明に係るカラーフィルタ1を示す概略図である。
カラーフィルタ1は、本発明の光学フィルム2が、配向膜3を介して該カラーフィルタ層4上に形成されてなるカラーフィルタである。
【0281】
上記構成のカラーフィルタ1の製造方法の例を記載する。まず、カラーフィルタ層4の上に配向性のポリマーを印刷し、ラビング処理を施して、配向膜3を形成する。
次に得られた配向膜3上に所望の波長分散特性をもつように、組成物(1)を調製し、所望の位相差値になるよう厚みを調製しながら塗布して、光学フィルム2を形成する。
【0282】
一方、上記カラーフィルタ1を用いれば、光学フィルム2の数を減らした薄型の液晶表示装置を製造することが可能となる。その一例として、図2に示した、一対の基板に液晶層が挟持され形成されてなる液晶表示素子において少なくとも一方の基板の液晶層側に形成された、薄型液晶表示装置が挙げられる。
【0283】
図2は、本発明に係る液晶表示装置5を示す概略図である。
図2に示す液晶表示装置5では、偏光板6上に例えばガラス基板などのバックライトと対向する基板7が接着剤を介して固定されており、基板7上に作成されたカラーフィルタ層4’上に配向膜3’を介して光学フィルム2’が形成されている。さらに光学フィルム2’上に対向電極8が形成され、対向電極8上に液晶層9が形成されている。バックライト側は、偏光板10にガラス基板などの基板11が接着剤を介して固定されており、さらに基板11には液晶層をアクティブ駆動させるための薄膜トランジスタ(TFT)及び絶縁層12が形成され、さらにTFT上にAg、Al又はITO(Indium Tin Oxide)による透明電極13及び/又は反射電極13’が形成されている。図2に示す液晶表示装置5の構成は、従来の液晶表示装置と比較して、光学フィルムの枚数を減らすことができ、より薄型の液晶表示装置の製造を可能とする。
【0284】
以下にカラーフィルタ1’が一方の基板の液晶層側に形成された液晶表示装置5の製法の一例を記載する。バックライト側の基板上にはホウケイ酸ガラス上に、MoやMoW等からなるゲート電極、ゲート絶縁膜、及びアモルファスシリコンを堆積・パターニングそして、アモルファスシリコンをエキシマレーザでアニールすることによって結晶化してなる半導体薄膜を形成し、その後、ゲート電極両脇の領域にP、Bなどをドープさせ、nチャンネル、pチャンネルのTFTを形成させることができる。さらにSiOからなる絶縁膜を形成させることにより、バックライト側の基板が得られる。さらにバックライト側基板11上にITOをスパッタさせることによりバックライト側基板上に全透過型表示装置用の透明電極13を積層させることができる。また、同じくITOの換わりにAg、Al等を用いることにより全反射型表示装置用の反射電極13’が得られる。さらに反射電極、透明電極を適宜組み合わせることにより、半透過型の液晶表示装置用のバックライト側の電極も得られる。
【0285】
一方、対向する基板7に、カラーフィルタ層4’を形成させる。R,G、Bのカラーフィルタを併用することにより、フルカラーの液晶表示装置も得られる。次にカラーフィルタ層4’上に配向性ポリマーを塗布し、ラビングすることにより、配向膜3’を形成させる。この配向膜3’上に組成物(1)を塗布して、液晶相をとる温度範囲に加熱しながら、紫外線照射によって重合、光学フィルム2’を形成させる。光学フィルム形成後、ITOをスパッタさせることにより対向電極8を形成させることができる。さらに該対向電極上に配向膜を生成させ、液晶層9を形成させ、最後に上記バックライト側の基板とあわせて組み立てることにより、液晶表示装置5を作成することができる。また、本発明の化合物(1)の[Re(450)/Re(550)]及び[Re(650)/Re(550)]の値は1に近い或いは1より小さいので、組成を変化させることにより所望の波長分散特性を得ることができ、膜厚から位相差値を制御できることから、光学フィルムの積層も省略することができる。
【0286】
さらに本発明の光学フィルムは、反射型液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイの位相差板並びに該位相差板や上記光学フィルムを備えるFPDにも利用することができる。上記FPDは、特に限定されるものではなく、たとえば液晶表示装置(LCD)や有機ELを挙げることができる。
【0287】
このように本発明に係るフィルムは、広範囲な用途が考えられる。たとえばこのうち本発明に係る光学フィルム及び偏光フィルムを積層してなる偏光板並びに該偏光板を備えるFPDについて、以下説明する
本発明に係る偏光板は、偏光機能を有するフィルム、すなわち偏光フィルムの片面もしくは両面に直接、又は接着剤もしくは粘着剤を用いて前記光学フィルムを張り合わせることにより得られるものである。なお以下の図3〜図5の説明では、接着剤及び粘着剤を総称して接着剤と呼ぶ場合がある。
【0288】
図3(a)〜図3(e)は、本発明に係る偏光板1を示す概略図である。
図3(a)に示す偏光板30aは、積層体14と、偏光フィルム15とが直接貼り合わされており、積層体14は、支持基材16、配向膜17及び光学フィルム18からなる。偏光板30aは、支持基材16、配向膜17、光学フィルム18、偏光フィルム15の順に積層されている。
【0289】
図3(b)に示す偏光板30bは、積層体14と偏光フィルム15とが、接着剤層19を介して貼り合わされている。
【0290】
図3(c)に示す偏光板30cは、積層体14と積層体14’とが直接貼り合わされ、さらに積層体14’と偏光フィルム15とが直接貼り合わされている。
【0291】
図3(d)に示す偏光板30dは、積層体14と積層体14’とが接着剤層19を介して貼り合わされ、さらに積層体14’上に偏光フィルム15が直接貼り合わされている。
【0292】
図3(e)に示す偏光板30eは、積層体14と積層体14’とを接着剤層19を介して貼り合わせ、さらに積層体14’と偏光フィルム15とを接着剤層19’を介して貼り合せた構成を示す。
【0293】
本発明の偏光板とは、偏光フィルムと本発明の光学フィルムを含む積層体とを張り合わせたものである。積層体14及び積層体14’の代わりに、積層体14から支持基材16及び配向膜17を剥離した、光学フィルム18を用いてもよいし、積層体14から支持基材16を剥離した、配向膜17及び光学フィルム18からなるフィルムを用いてもよい。
【0294】
本発明の偏光板は、積層体を複数積層してもよく、その複数の積層体は、全て同一であっても、異なっていてもよい。
【0295】
偏光フィルム15は、偏光機能を有するフィルムであればよく、たとえばポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸してヨウ素や二色性色素を吸着させたフィルムなどが挙げられる。
【0296】
接着剤層19及び接着剤層19’に用いられる接着剤は、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、たとえばアクリル系、エポキシ系又はウレタン系接着剤などが用いられる。
【0297】
本発明のフラットパネル表示装置は、本発明の光学フィルムを備えるものであり、たとえば本発明の偏光フィルムと液晶パネルとが貼り合わされた貼合品を備える液晶表示装置や、本発明の偏光フィルムと、発光層とが貼り合わされた有機ELパネルを備える有機EL表示装置を挙げることができる。
【0298】
本発明にかかるフラットパネル表示装置の実施形態として、液晶表示装置と、有機EL表示装置とについて、以下詳細に述べる。
【0299】
〔液晶表示装置〕
図4は、本発明に係る液晶表示装置の液晶パネル20と偏光板30との貼合品21を示す概略図である。
【0300】
液晶表示装置としては、たとえば図2に示すような液晶パネル20と偏光板30との貼合品21を備える液晶表示装置などが挙げられる。貼合品21は、本発明の偏光板30と液晶パネル20とが、接着層22を介して貼り合わされてなるものである。図示しない電極を用いて、液晶パネル20に電圧を印加することにより、液晶分子が駆動し、光シャッター効果を奏する。
【0301】
〔有機EL表示装置〕
図5は、本発明に係る有機EL表示装置の有機ELパネル23を示す概略図である。
【0302】
有機EL表示装置としては、図5に示す有機ELパネル23を備える有機EL表示装置などが挙げられる。有機ELパネル23は、本発明の偏光フィルム30と、発光層24とを、接着層25を介して貼り合わせてなるものである。
【0303】
上記有機ELパネルにおいて、偏光フィルム30は、広帯域円偏光板として機能する。また上記発光層24は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層である。
【実施例】
【0304】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、重量%及び重量部である。
【0305】
(実施例1)
<化合物(A1−1)の合成例>
化合物(A1−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0306】

【0307】
[化合物(A1−a)の合成例]
純水560g、硫化ナトリウム九水和物34.48g(143.5mmol)、水酸化ナトリウム0.012g(0.29mmol)を混合し、窒素雰囲気下で90℃まで昇温した。90℃で15分攪拌した後、得られた混合液に2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン20g(96.3mmol)を加えた。90℃で20分攪拌し、溶液が均一な濃紺色になった後、ベンズアルデヒド13.55g(127.6mmol)を加えた。90℃で5分攪拌し、溶液が茶褐色に変化したら氷浴で5℃まで冷却させた。冷却後、酢酸10.5gを滴下しpH6に調節した。析出した黄緑色の沈殿を濾取した。沈殿を水で濾液に着色がなくなるまで洗浄し、さらにヘプタン、ヘプタン−トルエン(ヘプタン1体積部、トルエン1体積部)で洗浄、真空乾燥させることにより、化合物(A1−a)を27.4g得た。収率は2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン基準で98%であった。
【0308】
[化合物(A1−b)の合成例]
化合物(A1−a)1.00g(3.4mmol)、トルエン10g、水酸化ナトリウム0.41g(10.3mmol)及び純水50gを混合させた。窒素雰囲気で10分攪拌後、得られた混合溶液に、亜二チオン酸ナトリウム2.39g(13.7mmol)を加えて室温、窒素雰囲気下で一時間攪拌した。均一な水層が得られたら、氷冷下で2N−塩酸を滴加しpHを6〜7に調製した。生成した黄色沈殿を濾過し、亜二チオン酸ナトリウムで洗浄することにより還元体である化合物(A1−b)を主成分とする黄色粉末を得た。化合物(A1―b)は空気中で速やかに酸化してしまうので、亜ニチオン酸ナトリウム水溶液で湿らせた状態で、全量を速やかに次工程に使用した。
【0309】
[化合物(A1−1)の合成例]
化合物(A)3.02g(7.2mmol)、ジメチルアミノピリジン0.04g(0.3mmol)、クロロホルム−トルエン混合溶媒40mL(クロロホルム1体積部、トルエン1体積部)及び、無水硫酸マグネシウム15gを混合した。得られた混合液にN、N’−ジイソプロピルカルボジイミド(PCI)1.04g(8.0mmol)を氷冷下で加えて、窒素雰囲気下で一時間攪拌させた。得られた混合溶液に、前工程で得られた化合物(A1−b)を速やかに加えて激しく攪拌して、室温で30分反応させた。反応溶液を濾過し、減圧濃縮し残渣をクロロホルムに再溶解させた。1gのシリカゲルを加えて濾過したのち、濾液を減圧濃縮した。残渣にエタノールを加えて結晶化させた。淡黄色粉末を濾取、真空乾燥して化合物(A1−1)を淡黄色粉末として2.0g得た。収率は化合物(A1−a)基準で二工程で53%であった。
【0310】
化合物(A1−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜2.03(m、24H)、2.38〜2.70(m、10H)、2.90〜3.00(m、2H)、3.93〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.79〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.18(m、2H)、6.37〜6.43(m、2H)、6.87〜7.02(m、8H)、7.50〜7.59(m、5H)、7.85〜7.89(m、1H)、8.05〜8.10(m、3H)
【0311】
得られた化合物(A1−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A1−1)は、昇温時において、180℃から188℃まで粘性の高い相を呈し、188℃から195℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、165℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0312】
(実施例2)
<化合物(A25−1)の合成例>
化合物(A25−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0313】

【0314】
[化合物(A25−a)の合成例]
純水560g、硫化ナトリウム九水和物34.48g(143.5mmol)、水酸化ナトリウム0.012g(0.29mmol)を混合し、窒素雰囲気下で90℃まで昇温した。90℃で15分攪拌した後、得られた混合液に2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン20g(96.3mmol)を加えた。90℃で20分攪拌し、溶液が均一な濃紺色になった後、2−チオフェンアルデヒド14.32g(127.6mmol)を加えた。90℃で5分攪拌し、溶液が茶褐色に変化したら氷浴で5℃まで冷却させた。冷却後、酢酸10.5gを滴下しpH6に調節した。析出した赤褐色色の沈殿を濾取した。沈殿を水で濾液に着色がなくなるまで洗浄し、さらにヘプタン、ヘプタン−トルエン(ヘプタン1体積部、トルエン1体積部)で洗浄した。沈殿を熱クロロホルムで抽出し、不溶成分を濾過により除去した。濾液を減圧濃縮し、ヘプタンで結晶化させた。生成した赤褐色沈殿を濾取、真空乾燥させることにより、化合物(A25−a)を23.1g得た。収率は2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン基準で81%であった。
【0315】
[化合物(A25−b)の合成例]
化合物(A25−a)1.00g(3.4mmol)、トルエン10g、水酸化ナトリウム0.40g(10.1mmol)及び純水50gを混合させた。窒素雰囲気で10分攪拌後、得られた混合溶液に、亜二チオン酸ナトリウム2.34g(13.5mmol)を加えて室温、窒素雰囲気下で一時間攪拌した。均一な水層が得られたら、氷冷下で2N−塩酸を滴加しpHを6〜7に調製した。生成した黄色沈殿を濾過し、亜二チオン酸ナトリウムで洗浄することにより還元体である化合物(A25−b)を主成分とする黄色粉末を得た。化合物(A25―b)は空気中で速やかに酸化してしまうので、亜ニチオン酸ナトリウム水溶液で湿らせた状態で、全量を速やかに次工程に使用した。
【0316】
[化合物(A25−1)の合成例]
化合物(A)2.96g(7.1mmol)、ジメチルアミノピリジン0.04g(0.3mmol)、クロロホルム−トルエン混合溶媒40mL(クロロホルム1体積部、トルエン1体積部)及び、無水硫酸マグネシウム15gを混合した。得られた混合液にN、N’−ジイソプロピルカルボジイミド(PCI)1.02g(8.0mmol)を氷冷下で加えて、窒素雰囲気下で一時間攪拌させた。得られた混合溶液に、前工程で得られた化合物(A25−b)を速やかに加えて激しく攪拌して、室温で30分反応させた。反応溶液を濾過し、減圧濃縮し残渣をクロロホルムに再溶解させた。1gのシリカゲルを加えて濾過したのち、濾液を減圧濃縮した。残渣にエタノールを加えて結晶化させた。淡黄色粉末を濾取、真空乾燥して化合物(A25−1)を淡黄色粉末として1.67g得た。収率は化合物(A25−a)基準で二工程で45%であった。
【0317】
化合物(A25−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜2.00(m、24H)、2.37〜2.70(m、10H)、2.83〜3.02(m、2H)、3.92〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.80〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.18(m、2H)、6.37〜6.44(m、2H)、6.87〜7.03(m、8H)、7.13〜7.16(dt、1H)、7.54〜7.58(m、3H)、7.66〜7.68(dd、1H)、7.83〜7.87(dd、1H)、8.04〜8.07(dd、1H)
【0318】
得られた化合物(A25−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A25−1)は、昇温時において、165℃から176℃まで粘性の高い相を呈し、176℃から195℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、167℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0319】
(実施例3)
<化合物(A13−1)の合成例>
化合物(A13−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0320】

【0321】
[化合物(A13−a)の合成例]
2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン80g(385mmol)、安息香酸クロリド162.5g(1156mmol)、を混合し、室温窒素雰囲気下で15分攪拌した。室温で硫酸を一滴加えてから、100℃に昇温して8時間反応させた。原料のナフトキノンの消失を薄層クロマトグラフィーにて確認後、150℃で72時間反応させた。反応液を室温まで放冷後、析出した濃暗褐色沈殿を濾取した。沈殿をヘプタン、トルエンーヘプタン混合溶媒(トルエン1体積部、ヘプタン1体積部)で洗浄した。残渣をクロロホルムに溶解させて、活性炭3gを加えて攪拌後、シリカゲル30g加えてセライトを通して濾過した。濾液を回収し、減圧濃縮した。残渣をトルエンで洗浄し、濾取後、真空乾燥させることにより、橙色粉末として化合物(A25−a)を34.6g得た。収率は2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン基準で33%であった。
【0322】
[化合物(A13−b)の合成例]
化合物(A13−a)1.00g(3.4mmol)、トルエン10g、水酸化ナトリウム0.44g(10.39mmol)及び純水50gを混合させた。窒素雰囲気で10分攪拌後、得られた混合溶液に、亜二チオン酸ナトリウム2.53g(14.5mmol)を加えて室温、窒素雰囲気下で一時間攪拌した。均一な水層が得られたら、氷冷下で2N−塩酸を滴加しpHを6〜7に調製した。生成した黄色沈殿を濾過し、亜二チオン酸ナトリウムで洗浄することにより還元体である化合物(A13−b)を主成分とする黄色粉末を得た。化合物(A13―b)は空気中で速やかに酸化してしまうので、亜ニチオン酸ナトリウム水溶液で湿らせた状態で、全量を速やかに次工程に使用した。
【0323】
[化合物(A13−1)の合成例]
化合物(A)3.19g(7.6mmol)、ジメチルアミノピリジン0.04g(0.3mmol)とクロロホルム−トルエン混合溶媒40mL(クロロホルム1体積部、トルエン1体積部)及び、無水硫酸マグネシウム20gを混合した。得られた混合液にN、N’−ジイソプロピルカルボジイミド(PCI)1.10g(9.0mmol)を氷冷下で加えて、窒素雰囲気下で一時間攪拌させた。得られた混合溶液に、前工程で得られた化合物(A13−b)を速やかに加えて激しく攪拌して、室温で30分反応させた。反応溶液を濾過し、減圧濃縮し残渣をクロロホルムに再溶解させた。溶離液としてクロロホルム、クロロホルムーアセトン(クロロホルム90体積部、アセトン10体積部)を用いてカラムクロマトグラフィーにて生成した。溶出した目的成分を含む溶液を減圧濃縮し、エタノールで結晶化した。生成した淡黄色粉末を濾取、真空乾燥して化合物(A13−1)を淡黄色粉末として2.14g得た。収率は化合物(A13−a)基準で二工程で55%であった。
【0324】
化合物(A13−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜2.00(m、24H)、2.37〜2.42(br、d、4H)、2.55(br、4H)、2.64〜2.68(m、2H)、2.91〜3.03(m、2H)、3.93〜3.97(t、4H)、4.16〜4.20(t、4H)、5.80〜5.84(dd、2H)、6.08〜6.18(m、2H)、6.37〜6.43(m、2H)、6.88〜7.03(m、8H)、7.54〜7.57(m、5H)、7.97〜8.03(dt、2H)、8.25〜8.28(dd、2H)
【0325】
得られた化合物(A13−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A13−1)は、昇温時において、183℃から187℃まで粘性の高い相を呈し、187℃から195℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、177℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0326】
(実施例4)
<化合物(A37−1)の合成例>
化合物(A37−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0327】

【0328】
[化合物(A37−a)の合成例]
[化合物(A37−a)の合成例]
2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン47g(226mmol)及び2−テノイル酸クロリド99.56g(679mmol)を混合し、室温窒素雰囲気下で15分攪拌した。室温で硫酸を一滴加えてから、100℃に昇温して8時間反応させた。原料のナフトキノンの消失を薄層クロマトグラフィーにて確認後、150℃で72時間反応させた。反応液を室温まで放冷後、析出した濃暗褐色沈殿を濾取した。沈殿をヘプタン、トルエンーヘプタン混合溶媒(トルエン1体積部、ヘプタン1体積部)で洗浄した。残渣をクロロホルムに溶解させて、活性炭3gを加えて攪拌後、シリカゲル30g加えてセライトを通して濾過した。濾液を回収し、減圧濃縮した。残渣をトルエンで洗浄し、濾取後、真空乾燥させることにより、濃い橙色粉末として化合物(A37−a)を17.0g得た。収率は2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン基準で28%であった。
【0329】
[化合物(A37−b)の合成例]
化合物(A37−a)0.60g(2.1mmol)、トルエン10g、水酸化ナトリウム0.26g(6.4mmol)、純水50gを混合させた。窒素雰囲気で10分攪拌後、得られた混合溶液に、亜二チオン酸ナトリウム1.49g(8.5mmol)を加えて室温、窒素雰囲気下で一時間攪拌した。均一な水層が得られたら、氷冷下で2N−塩酸を滴加しpHを6〜7に調製した。生成した黄色沈殿を素早く濾過し、亜二チオン酸ナトリウムで洗浄することにより還元体である化合物(A37−b)を主成分とする黄色粉末を得た。化合物(A37―b)は空気中で速やかに酸化してしまうので、亜ニチオン酸ナトリウム水溶液で湿らせた状態で、全量を速やかに次工程に使用した。
【0330】
[化合物(A37−1)の合成例]
化合物(A)1.87g(4.5mmol)、ジメチルアミノピリジン0.03g(0.2mmol)、クロロホルム−トルエン混合溶媒40mL(クロロホルム1体積部、トルエン1体積部)及び、無水硫酸マグネシウム15gを混合した。得られた混合液にN、N’−ジイソプロピルカルボジイミド(PCI)0.65g(5.0mmol)を氷冷下で加えて、窒素雰囲気下で一時間攪拌させた。得られた混合溶液に、前工程で得られた化合物(A37−b)を速やかに加えて激しく攪拌して、室温で30分反応させた。反応溶液を濾過し、減圧濃縮し残渣をクロロホルムに再溶解させた。反応溶液を濾過し、減圧濃縮し残渣をクロロホルムに再溶解させた。溶離液としてクロロホルム、クロロホルムーアセトン(クロロホルム90体積部、アセトン10体積部)を用いてカラムクロマトグラフィーにて生成した。溶出した目的成分を含む溶液を減圧濃縮し、エタノールで結晶化した。淡赤色粉末を濾取、真空乾燥して化合物(A37−1)を淡赤色粉末として0.47g得た。収率は化合物(A37−a)基準、二工程で20%であった。
【0331】
化合物(A37−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜1.98(m、24H)、2.37〜2.41(br、d、4H)、2.53(br、4H)、2.64〜2.72(m、2H)、2.93〜2.97(m、2H)、3.93〜3.98(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.80〜5.84(dd、2H)、6.08〜6.18(m、2H)、6.37〜6.44(m、2H)、6.88〜7.03(m、8H)、7.19〜7.22(m、1H)、7.53〜7.57(m、2H)、7.62〜7.64(dd、1H)、7.96〜8.00(m、3H)。
【0332】
得られた化合物(A37−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A37−1)は、昇温時において、170℃から187℃まで粘性の高い相を呈し、187℃から195℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、178℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0333】
(実施例5〜11、比較例1)
<光学フィルムの製造例>
ガラス基板に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2重量%水溶液を塗布し、乾燥後、厚さ89nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施し、ラビング処理を施した面に、表1の組成の組成物をスピンコート法により塗布し、表2に記載の乾燥温度で1分間乾燥した。次いで表2に記載の光照射時の温度まで加温しながら、表2に記載の積算光量の紫外線を照射して、表3に記載の膜厚の光学フィルムを形成させた。
表1中、組成物を100重量%とした重量%を意味する。
【0334】
【表1】

【0335】
LC242:BASF社より市販されている下記式の液晶化合物
重合開始剤:イルガキュア819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
レベリング剤:BYK361N(ビックケミージャパン製)
溶剤:シクロペンタノン
【0336】

【0337】
【表2】

【0338】
<光学特性の測定>
光学フィルムの正面位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて測定した。尚、基材に使用したガラス基板には、複屈折性が無いため、ガラス基板付きフィルムを測定機で計測することにより、ガラス基板上に作製した光学フィルムの正面位相差値を得ることができる。得られた光学測定正面位相差値は、波長450.9nm、549.4nm、及び627.8nmにおいて、それぞれ測定し、[Re(450.9)/Re(549.4)](αとする)及び[Re(627.8)/Re(549.4)](βとする)を算出した。また、光学フィルムの膜厚d(μm)をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス社製)を用いて測定した。結果を表3に示す。Δnは、Re(549.4)の値を膜厚で割って算出した(Δn=Re(549.4)/d)。
【0339】
【表3】

【0340】
実施例5〜11の光学フィルムは、[Re(450.9)/Re(549.4)](表中α)の値が1以下であった。つまり、屈折率の波長依存性がより逆波長分散性を示すため、広い波長域においてより一様の偏光変換が可能であり、液晶パネルに利用すれば、光学補償により優れた特性を有する。さらに実施例8〜11より、化合物(1)を液晶化合物と混合するだけで、波長分散性を制御できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0341】
本発明の化合物によれば、広い波長域において一様の偏光変換が可能な光学フィルムを与えることができる。
【符号の説明】
【0342】
1,1’ カラーフィルタ
2,2’ 光学フィルム
3,3’ 配向膜
4,4’ カラーフィルタ層
5 液晶表示装置
6,10 偏光板
7,11 基板
8 対向電極
9 液晶層
12 TFT、絶縁層
13 透明電極
13’ 反射電極
30,30a,30b,30c,30d,30e 偏光板
14,14’ 積層体
15 偏光フィルム
16,16’ 支持基材
17,17’ 配向膜
18,18’ 光学フィルム
19,19’,22,25 接着剤層
20 液晶パネル
21 貼合品
23 有機ELパネル
24 発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される2価の基を含む化合物。

[式(1)中、
、Q、Q、及びQは、それぞれ独立に、−CR=又は−N=を表す。
は、−O−、−S−、−C(=O)−又は−NR−を表す。
は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい単環系芳香族炭化水素基、単環系芳香族複素環、多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基を表す。
及びDは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフルオロアルキル基、炭素数1〜4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換わっていてもよい。]
【請求項2】
式(2)で表される2価の基を含む請求項1記載の化合物。

[式(2)中、Q、Q、Q、Q、T、Y、D、D、G及びGは、上記と同じ意味を表す。
及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びBは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。該炭素数1〜4のアルキル基及び該炭素数1〜4アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。]
【請求項3】
式(3)で表される請求項1又は2記載の化合物。

[式(3)中、Q、Q、Q、Q、T、Y、D、D、G、G、E、E、B、B、A、A、k及びlは、上記と同じ意味を表す。
及びFは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。P及びPのうち少なくとも一方が重合性基である。]
【請求項4】
が式(Y−1)〜式(Y−3)のいずれかで表される基である請求項1〜3のいずれか記載の化合物。


[式(Y−1)〜式(Y−3)中、*印は結合手を表し、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシキド基、スルホン基、スルホキシド基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基又は炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基を表す。
は、−CO−、−NR−、−SO−、又は16族元素を表す。
〜Wは、それぞれ独立に、−CR=又は−N=を表す。
ただし、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、C、S、N、O又はSeを含む基を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
aは、0〜5の整数を表す。
bは、0〜3の整数を表す。]
【請求項5】
が式(Y−1)〜式(Y−6)のいずれかで表される基である請求項1〜4のいずれか記載の化合物。


[式(Y−1)〜式(Y−6)中、Z、a、b、V、V及びW〜Wは、上記と同じ意味を表す。]
【請求項6】
、Q、Q、及びQが−CR=である請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
及びGが、トランス−1,4−シクロヘキシレン基である請求項1〜6のいずれか記載の化合物。
【請求項8】
及びAが、それぞれ独立に、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基であり、該1,4−フェニレン基及び1,4−シクロヘキシレン基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、トリフルオロメチル基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい請求項2〜7のいずれか記載の化合物。
【請求項9】
及びBのうち、A又はAのみと結合しているB及びBが、それぞれ独立に、−CH−CH−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−O−CH−、−CH−O−又は単結合であり、
及びBのうち、F又はFと結合しているB及びBが、それぞれ独立に、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−又は単結合である請求項2〜8のいずれか記載の化合物。
【請求項10】
及びPが、それぞれ独立に、水素原子、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基(ただし、P及びPのうち少なくとも1つは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表す)である請求項3〜9のいずれか記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか記載の化合物と、式(20)で表される化合物とを含有する組成物。
11−E11−(B11−A11−B12−G (20)
[式(20)中、A11は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基又は複素環基を表し、該芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び複素環基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、ニトロ基、ニトリル基又はメルカプト基で置換されていてもよい。
11及びB12は、それぞれ独立に、−CR1415−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=S)−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR16−、−NR16−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−NR16−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−又は単結合を表す。R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R14及びR15が連結して炭素数4〜7のアルキレン基を構成してもよい。R16は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
11は、炭素数1〜12のアルキレン基を表す。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
11は、重合性基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のアルキルアミノ基、ニトリル基、ニトロ基であるか、炭素数1〜12のアルキレン基を介して結合する重合性基を表し、該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。
tは、1〜5の整数を表す。]
【請求項12】
さらに重合開始剤を含有する請求項11記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか記載の化合物を重合してなる光学フィルム。
【請求項14】
請求項11又は12のいずれか記載の組成物を重合してなる光学フィルム。
【請求項15】
波長550nmにおける位相差値(Re(550))が113〜163nmのλ/4板用である請求項13又は14記載の光学フィルム。
【請求項16】
波長550nmにおける位相差値(Re(550))が250〜300nmのλ/2板用である請求項13又は14記載の光学フィルム。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか記載の光学フィルム及び偏光フィルムを含む偏光板。
【請求項18】
請求項13〜16のいずれか記載の光学フィルムを含むカラーフィルタ。
【請求項19】
請求項18記載のカラーフィルタを含む液晶表示装置。
【請求項20】
請求項17記載の偏光板を含む液晶パネルを備えるフラットパネル表示装置。
【請求項21】
請求項17記載の偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンスパネルを備える有機EL表示装置。
【請求項22】
請求項1〜10のいずれか記載の化合物を含む溶液を支持基材に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【請求項23】
請求項1〜10のいずれか記載の化合物を含む溶液を、支持基材上に形成された配向膜上に塗布し、乾燥させる未重合フィルムの製造方法。
【請求項24】
請求項22又は23記載の未重合フィルムの製造方法で得られた未重合フィルムを、重合により硬化させる光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−42606(P2011−42606A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190838(P2009−190838)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】