説明

化合物

本発明は、式(I):


で示される置換3−アミノピラゾール化合物またはその医薬上許容される塩、それらを含有する医薬組成物および医薬におけるその使用に関する。特に、本発明は、SCD活性を調節するための化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ(SCD)阻害薬とされる新規クラスの化合物、該化合物を含む組成物、SCD酵素によって介在される疾患、例えば、脂質濃度の上昇に関する疾患、心臓血管疾患、糖尿病、肥満、メタボリック・シンドローム、皮膚障害、例えば、ニキビ、癌に関する疾患または病態を含む、種々の疾患の治療および/または予防ならびにアミロイドプラーク形成Aβ42ペプチド産生に関連する症状、例えば、アルツハイマー病などの治療におけるかかる化合物の合成方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アシルデサチュラーゼ酵素は、食事供給源または肝臓におけるデノボ合成のいずれか由来の脂肪酸中の二重結合の形成を触媒する。哺乳動物は、δ−9、δ−6、およびδ−5位の二重結合の付加を特に触媒する異なる鎖長の少なくとも3種の脂肪酸デサチュラーゼを合成する。ステアロイル−CoAデサチュラーゼ(SCD)は、飽和脂肪酸のC9−C10位に二重結合を導入する。酵素に対する好ましい基質は、パルミトイル−CoA(16:0)およびステアロイル−CoA(18:0)であり、それぞれパルミトレオイル−CoA(16:1)およびオレオイル−CoA(18:1)に変換される。次いで、得られた一価不飽和脂肪酸は、インビボにおける、リン脂質、トリグリセリド、およびコレステリルエステルの調製に用いられうる。
【0003】
多数の哺乳動物SCD遺伝子は、クローン化されている。例えば、2種の遺伝子は、ラットからクローン化され(SCD1、SCD2)、4種のSCD遺伝子は、マウスから単離されている(SCD1、2、3および4)。SCDの基礎生化学的役割は、1970代からラットおよびマウスにおいて知られているが(Jeffcoat,Rら,Elsevier Science(1984),Vol 4,pp.85−112;de Antueno,RJ,Lipids(1993),Vol.28,No.4,pp.285−290)、ごく最近になって、ヒト疾患過程に直接関与していた。
【0004】
単一SCD遺伝子、SCD1は、ヒトにおいて特徴付けられている。SCD1は、Brownlieら、WO01/62954に記載されている。第2のヒトSCDアイソフォームは同定されており、既知のマウスまたはラットアイソフォームとほとんど配列相同性がないので、ヒトSCD5またはhSCD5と称されている(WO02/26944)。
【0005】
理論にとらわれることは望ましくないが、インビボにおけるSCD活性の阻害が、1種または複数の疾患、例えば、脂質異常症、低αリポ蛋白血症、高βリポ蛋白血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、アンギナ、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、メタボリック・シンドローム;他の心臓血管疾患、例えば、末梢血管疾患、再かん流傷害、血管形成術後(angioplastic)再狭窄、高血圧、糖尿病の血管合併症、血栓症;脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および肝臓中の脂質の蓄積に関する他の疾患を改善および/または治療するために用いられうると考えられている。
【0006】
SCD介在性疾患または病態には、多価不飽和脂肪酸(PUFA)障害、または限定されるものではないが、湿疹、ニキビ、乾癬、ケロイド瘢痕形成または阻止を含む、皮膚障害、粘膜からの産生または分泌物、例えば、一価不飽和脂肪酸、ワックス・エステルに関する疾患なども含まれる(US2006/0205713A1、WO2007/046868、WO2007/046867)。SCDは、正常な皮膚およびまぶた機能に必要なコレステロールホメオスタシスおよびコレステロールエステル、トリグリセリドおよびワックス・エステルのデノボ生合成において生理学的役割を果たすことが知られているので、ニキビおよび他の皮膚病態の治療に有用でありうる(Makotoら.J of Nutrition(2001),131(9),2260−2268,Harrisonら.J of Investigative Dermatology(2007) 127(6),1309−1317)。
【0007】
SCD介在性疾患または病態には、限定されるものではないが、癌、新生組織形成、悪性腫瘍、転移癌、腫瘍(良性または悪性)、発癌、肝臓癌などであるかまたはそれに関する疾患または病態も含まれる(US2006/0205713A1、WO2007/046868、WO2007/046867)。最近になって、SCD−1は、ヒト腫瘍細胞生存における役割を果たすものとして同定されたので、抗癌標的としての可能性を有する(Morgan−Lappeら.2007 Cancer Res.67(9) 4390−4398)。
【0008】
培地でのヒト細胞におけるステロイル−CoAデサチュラーゼ(SCD)の過剰発現が、アミロイドプラーク形成Aβ42ペプチドの産生の特異的増加をもたらすこと、逆に、培地でのヒト細胞におけるSCD活性の減少が、Aβ42の産生の特異的減少をもたらすことが示されている。したがって、SCD阻害薬はまた、軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)またはダウン症候群(DS)に付随する認知症およびAβ42を含むアミロイドプラークの形成または蓄積によって特徴付けられる他の神経変性疾患の治療、症状の発症の遅延、または症状の進行の遅延に有用でありうる(US2007/0087363A1;Myriad Genetics)。
【0009】
WO2005/011657は、SCD活性を阻害するのに有用な特定のピペラジン誘導体を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO01/62954
【特許文献2】WO02/26944
【特許文献3】US2006/0205713A1
【特許文献4】WO2007/046868
【特許文献5】WO2007/046867
【特許文献6】US2007/0087363A1
【特許文献7】WO2005/011657
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Jeffcoat,Rら,Elsevier Science(1984),Vol 4,pp.85−112
【非特許文献2】de Antueno,RJ,Lipids(1993),Vol.28,No.4,pp.285−290
【非特許文献3】Makotoら.J of Nutrition(2001),131(9),2260−2268
【非特許文献4】Harrisonら.J of Investigative Dermatology(2007) 127(6),1309−1317
【非特許文献5】Morgan−Lappeら.2007 Cancer Res.67(9) 4390−4398
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、SCD活性を阻害するための式(I):
【化1】

[式中:
Xは、−CONH−または−NHCO−を示し;
は、−OCHまたは−OCFで置換されたフェニルを示し、さらに−C1−6アルキル、−C1−6アルコキシ、−C1−6ハロアルキル(例えば、−CF)、−OC1−6ハロアルキル(例えば、−OCF)、−C3−6シクロアルキルまたはハロゲン(例えば、クロロ、ブロモまたはフルオロ)から独立して選択される1個または2個または3個の基で所望により置換されていてもよく;
はHまたは−C2−6アルキルを示す]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0013】
前記化合物は、SCD活性を阻害することが見出されているので、脂質異常症、低αリポ蛋白血症、高βリポ蛋白血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、アンギナ、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症およびメタボリック・シンドローム;他の心臓血管疾患、例えば、末梢血管疾患、再かん流傷害、血管形成術後再狭窄、高血圧、糖尿病の血管合併症、血栓症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および肝臓中の脂質の蓄積に関する他の疾患;皮膚障害、例えば、湿疹、ニキビ、乾癬、ケロイド瘢痕形成または阻止および粘膜からの産生または分泌物に関する疾患;癌、新生組織形成、悪性腫瘍、転移癌、腫瘍(良性または悪性)、発癌、肝臓癌など;軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)またはダウン症候群(DS)に付随する認知症およびAβ42を含むアミロイドプラークの形成または蓄積によって特徴付けられる他の神経変性疾患を含む、異常血漿中脂質プロファイルに起因するかまたは付随するSCD介在性疾患または病態の治療に有用でありうる。
【0014】
本発明の1の態様において、Xは−NHCO−を示す。本発明の別の態様において、Xは−CONH−を示す。
【0015】
本発明の1の態様において、Rは、−OCHまたは−OCFで置換されたフェニルを示し、さらにハロゲン(例えば、クロロ、ブロモまたはフルオロ)から独立して選択される1または2個の基で所望により置換されていてもよい。
【0016】
本発明の別の態様において、Rは、−OCHまたは−OCFで置換されたフェニルを示し、さらにクロロで所望により置換されていてもよい。
【0017】
本発明の別の態様において、Rは、2位が−OCHまたは−OCFで置換されたフェニルを示し、さらにクロロで所望により置換されていてもよい。
【0018】
本発明の別の態様において、Rは、2位が−OCHまたは−OCFで置換されたフェニルを示し、さらに5位がクロロで所望により置換されていてもよい。
【0019】
本発明の1の態様において、Rは水素を示す。
【0020】
本発明の各態様は、特に明記しない限り、独立している。にもかかわらず、記載されている態様の全ての置換が本発明の範囲内にあることを当業者は理解するであろう。したがって、本発明が、本明細書に記載の適当で、好都合かつ例示的な基の全ての組み合わせを包含することを理解すべきである。例えば、1の態様において、本発明は、Xが−NHCO−を示し、RがHを示す、式(I)の化合物を提供する。
【0021】
式(I)の特定の化合物は、立体異性体で存在していてもよい(例えば、それらは、1個または複数の不斉炭素原子を含有していてもよい)。個々の立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマー)およびこれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。本発明はまた、式(I)の化合物の配座異性体および該化合物の任意の幾何(シスおよび/またはトランス)異性体にまで及ぶ。同様に、式(I)の化合物が、式で示されるもの以外の互変異性体で存在していてもよく、これらも本発明の範囲内に含まれることは理解される。
【0022】
式(I)のラセミ化合物が、所望により、個々のエナンチオマーに分割されていてもよいことは明らかであろう。かかる分割は、好都合なことに、当該分野にて既知の標準的方法によって達成されうる。例えば、式(I)のラセミ化合物は、キラル分取HPLCによって分割されうる。
【0023】
多形体として存在する本発明の化合物、およびその混合物が、本発明の範囲内にあることもまた明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に用いられる、「アルキル」なる語は、所定数の炭素原子を含有する直線状または分岐炭化水素鎖をいう。例えば、C1−6アルキルは、少なくとも1個、かつ最大6個の炭素原子を含有する直線状または分岐アルキルを意味する。本明細書に用いられる「アルキル」の例として、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソブチル、イソプロピル、t−ブチルおよび1,1−ジメチルプロピルが挙げられる。しかしながら、アルキルが置換基を有するように部分を定義する場合、アルキルが、アルキレン、例えば、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)およびプロピレン(−CHCHCH−)を含んでいてもよいことは文脈から当業者には明らかであろう。
【0025】
本明細書に用いられる、「アルコキシ」なる語は、所定数の炭素原子を含有する直線状または分岐アルコキシ基をいう。例えば、C1−6アルコキシは、少なくとも1個、かつ最大6個の炭素原子を含有する直線状または分岐アルコキシ基を意味する。本明細書に用いられる「アルコキシ」の例として、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、プロプ−2−オキシ、ブトキシ、ブト−2−オキシ、2−メチルプロプ−1−オキシ、2−メチルプロプ−2−オキシ、ペントキシおよびヘキシルオキシが挙げられる。結合点は、酸素または炭素原子上にあってもよい。
【0026】
本明細書に用いられる、「ハロゲン」または「ハロ」なる語は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)またはヨウ素(ヨード)原子をいう。
【0027】
本明細書に用いられる、「ハロアルキル」なる語は、少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換されている、1個または複数の炭素原子を有するアルキル基、例えば、トリフルオロメチル基などをいう。
【0028】
本明細書に用いられる、「シクロアルキル」なる語は、3〜10個の炭素環原子、例えば、3〜6個の炭素環原子を含有する飽和環状基をいう。例として、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。
【0029】
本明細書に用いられる、「置換された」なる語は、指定された置換基または複数の置換基との置換をいい、特に明記しない限り、複数の置換度が認められる。
【0030】
誤解を避けるために、「独立して」なる語は、1個以上の置換基が多数の可能な置換基から選択される場合に、それらの置換基が同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0031】
本明細書に用いられる、「医薬上許容される」なる語は、医薬用途に適している化合物を意味する。
【0032】
医薬の使用に適している式(I)の化合物の塩は、対イオンが医薬上許容されているものである。しかしながら、医薬上許容されない対イオンを有する塩は、例えば、式(I)の他の化合物またはその医薬上許容される塩の調製における中間体として用いるために、本発明の範囲内にある。
【0033】
医薬に用いるために、式(I)の塩が生理学上(すなわち、医薬上)許容される必要があることは明らかであろう。適当な生理学上許容される塩は、当業者に明らかであろうし、例えば、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸またはリン酸;および有機酸、例えば、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、酢酸、フマル酸、グルタミン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸と形成した酸付加塩を含む。他の生理学上許容されない塩、例えば、シュウ酸塩は、例えば、式(I)の化合物の単離に用いられてもよく、本発明の範囲内に含まれる。Bergeら.J.Pharm.Sci.,1977,66,1−19を参照する。
【0034】
式(I)の特定の化合物は、1当量以上の酸との酸付加塩を形成してもよい。本発明は、全ての可能なその化学量論的および非化学量論的形態をその範囲内に含む。
【0035】
式(I)の化合物の溶媒和物および式(I)の化合物の塩の溶媒和物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0036】
本明細書に用いられる、「溶媒和物」なる語は、溶質(本発明では、式(I)の化合物またはその塩)および溶媒によって形成される可変の化学量の複合体をいう。本発明の目的のかかる溶媒は、溶質の生物活性を妨げないものでありうる。適当な溶媒の例として、限定されるものではないが、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられる。本発明の1の態様において、用いられる溶媒は、医薬上許容される溶媒である。本発明の別の態様において、用いられる溶媒は、水であり、溶媒和物はまた、水和物と称されうる。
【0037】
医薬の使用に適している式(I)の化合物の溶媒和物は、溶媒が医薬上許容されるものである。しかしながら、医薬上許容されない溶媒を有する溶媒和物は、例えば、式(I)の他の化合物またはその医薬上許容される塩の調製における中間体として用いるために、本発明の範囲内にある。
【0038】
式(I)の化合物のプロドラッグは、本発明の範囲内に含まれる。
【0039】
本明細書に用いられる、「プロドラッグ」なる語は、例えば、血中加水分解によって治療効果を有するその活性型に体内で変換される化合物を意味する。医薬上許容されるプロドラッグは、T.HiguchiおよびV.Stella,Prodrugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series,ならびにEdward B.Roche,ed.,Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987ならびにD.Fleishner,S.RamonおよびH.Barba 「Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs」,Advanced Drug Delivery Reviews(1996) 19(2) 115−130に記載されている。プロドラッグは、かかるプロドラッグが患者に投与される場合にインビボで構造(I)の化合物を放出する任意の共有結合した担体である。プロドラッグは、一般的に、修飾をインビボで切断し、親化合物を得るような方法で官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグには、例えば、ヒドロキシまたはアミン基が、患者に投与される場合に、切断され、ヒドロキシまたはアミン基を形成する任意の基に結合する本発明の化合物が含まれうる。したがって、プロドラッグの具体例として、(限定されるものではないが)、式(I)の化合物のヒドロキシおよびアミン官能基のホスホネート、カルバメート、酢酸、ギ酸および安息香酸誘導体が挙げられる。
【0040】
ホスホネートおよびカルバメートは、それ自体活性であってもよく、および/またはヒト体内でインビボ条件下にて加水分解してもよい。適当な医薬上許容されるインビボ加水分解エステル基には、ヒト体内で容易に分解し、親酸またはその塩を残すものが含まれる。ホスホネートは、当該分野に既知の方法によって、亜リン(ホスホン)酸との反応により形成される。例えば、ホスホネートは、誘導体、例えば、RP(O)(OR)などであってもよい。カルバメートは、カルバミン酸のエステルである。
【0041】
本発明の1の態様において、化合物、またはその医薬上許容される塩が提供され、ここで、化合物は、
N−(5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミド、
N−(1−{[5−クロロ−2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミド、および
N−[5−メチル−1−({2−[(トリフルオロメチル)オキシ]フェニル}メチル)−1H−ピラゾール−3−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドからなる群より選択される
【0042】
本発明の他の化合物には、本明細書に具体的に例示されるものが含まれていてもよい。
【0043】
本発明の化合物は、SCD活性を阻害することが見出されているので、脂質濃度、例えば、血漿中脂質濃度の調節に有用でありうる。異常血漿中脂質プロファイルに起因するかまたは付随する疾患または病態および本発明の化合物が治療に有用でありうる疾患または病態には、脂質異常症、低αリポ蛋白血症、高βリポ蛋白血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、アンギナ、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症およびメタボリック・シンドロームが含まれる。本発明の化合物が有用である他の心臓血管疾患には、末梢血管疾患、再かん流傷害、血管形成術後再狭窄、高血圧、糖尿病の血管合併症および血栓症が含まれる。他の疾患または病態には、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および肝臓中の脂質の蓄積に関する他の疾患が含まれる。
【0044】
本発明の化合物はまた、皮膚障害、例えば、湿疹、ニキビ、乾癬、ケロイド瘢痕形成または阻止、および粘膜からの産生または分泌物に関する疾患の治療に有用でありうる。
【0045】
本発明の化合物はまた、癌、新生組織形成、悪性腫瘍、転移癌、腫瘍(良性または悪性)、発癌、肝臓癌などの治療に有用でありうる。
【0046】
本発明の化合物はまた、軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)またはダウン症候群(DS)に付随する認知症およびAβ42を含むアミロイドプラークの形成または蓄積によって特徴付けられる他の神経変性疾患の治療に有用でありうる。
【0047】
本発明の別の態様において、本発明の化合物は、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症および/または脂肪肝の治療に有用でありうる。
【0048】
本発明の文脈内において、本明細書に用いられる兆候を説明する語は、メルクマニュアル 診断と治療(the Merck Manual of Diagnosis and Therapy)、第17版および/または国際疾患分類(the International Classification of Diseases)第10版(ICD−10)で分類される。本明細書に記載の障害の種々のサブタイプは、本発明の一部として意図される。
【0049】
さらなる態様にしたがって、本発明は、薬物療法に用いるための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0050】
別の態様において、本発明は、SCD阻害薬によって改善されやすい疾患または病態の治療および/または予防のための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0051】
別の態様において、本発明は、ニキビ、癌、脂質異常症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪肝および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療および/または予防のための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、ニキビ、癌、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、インスリン抵抗性、高インスリン血症、II型糖尿病および/または脂肪肝の治療および/または予防のための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、ニキビの治療および/または予防のための医薬の製造のための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0054】
別の態様において、本発明は、ヒトを含む、哺乳動物におけるSCD阻害薬によって改善されやすい疾患または病態の治療および/または予防に用いるための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0055】
別の態様において、本発明は、ニキビ、癌、脂質異常症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪肝および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療および/または予防に用いるための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0056】
別の態様において、本発明は、ニキビ、癌、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、インスリン抵抗性、高インスリン血症、II型糖尿病および/または脂肪肝の治療および/または予防に用いるための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0057】
別の態様において、本発明は、ニキビの治療および/または予防に用いるための式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0058】
別の態様において、本発明は、SCD阻害薬によって改善されやすい疾患または病態の治療および/または予防方法であって、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を対象、例えば、ヒトを含む、哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0059】
別の態様において、本発明は、ニキビ、癌、脂質異常症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪肝および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療および/または予防方法であって、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を対象、例えば、ヒトを含む、哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0060】
別の態様において、本発明は、ニキビ、癌、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、インスリン抵抗性、高インスリン血症、II型糖尿病および/または脂肪肝の治療および/または予防方法であって、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を対象、例えば、ヒトを含む、哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0061】
別の態様において、本発明は、ニキビの治療および/または予防方法であって、治療上有効な量の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を対象、例えば、ヒトを含む、哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0062】
「治療」および「療法」への言及が、既存の症状の急性治療または予防ならびに緩和を含むことは明らかであろう。
【0063】
本発明の化合物は、医薬組成物における使用を目的とするので、それらが、各々好ましくは、実質上純粋な形態、例えば、少なくとも純度60%、より適当には少なくとも純度75%および好ましくは少なくとも85%、特に少なくとも純度98%(%は重量ベースに対する重量である)で提供されることは容易に理解されるであろう。化合物の不純調製物は、医薬組成物に用いられる多量の純粋な形態を調製するために用いられうる;これらの少量の化合物の純粋調製物は、本発明の化合物の少なくとも1%、より適当には少なくとも5%および好ましくは10〜59%を含有する必要がある。
【0064】
式(I)の化合物の調製方法は、本発明のさらなる態様を形成する。RおよびRは、特に明記しない限り、上記と同義である。本明細書を通して、一般式は、ローマ数字(I)、(II)、(III)、(IV)などで特定されている。
【0065】
場合によっては、式(I)の最終化合物は、当業者に既知の技法によって式(I)の他の化合物に変換されうる、例えば、カルボン酸置換基は、所定の技法によってエステルまたはアミドに変換されうる。
【0066】
一般法において、式(I)の化合物(式中:Xは−NHCO−を示し、RはHを示す(式(Ia)))は、反応スキーム1にしたがって、式(III)の化合物と式(IV)の化合物(式中:Pは適当な窒素保護基、例えば、Bocを示す)を反応させ、式(II)の化合物を形成することによって調製されうる。適当には、適当な溶媒、例えば、DCM(適当には室温〜還流温度で)またはDMF(適当には室温〜80℃で)中でカップリング試薬、例えば、HATU、EDCIおよび/またはHOBtの存在下において反応を実施し、次いで、塩酸またはトリフルオロ酢酸などの酸性条件下で式(I)の化合物を脱保護する。
【化2】

【0067】
したがって、本発明の1の態様において、式(Ia)の化合物またはその医薬上許容される塩の調製方法であって、式(III)の化合物を式(IV)の化合物(式中:Pは適当な窒素保護基を示す)と反応させ、次いで、式(II)の化合物を脱保護することを含む方法が提供される。
【0068】
式(I)の化合物(式中:Xは−NHCO−を示し、Rは−C2−6アルキルを示す(式(Ib)))は、反応スキーム2にしたがって、適当な溶媒、例えば、DCM(適当には室温〜還流温度で)中でカップリング試薬、例えば、HATU、EDCIおよび/またはHOBtの存在下において、式(III)の化合物と式(IVa)の化合物を反応させることによって調製されうる。
【化3】

【0069】
したがって、本発明の1の態様において、式(Ib)の化合物またはその医薬上許容される塩の調製方法であって、式(III)の化合物を式(IVa)の化合物と反応させることを含む方法が提供される。
【0070】
式(I)の化合物(式中:Xは−CONH−を示し、Rは水素を示す(式(Ic)))は、反応スキーム3にしたがって、式(VI)の化合物と式(VII)の化合物(式中:Pは適当な窒素保護基、例えば、Bocを示す)を反応させ、式(V)の化合物を形成することによって調製されうる。適当には、適当な溶媒、例えば、DCM(適当には室温〜還流温度で)またはDMF(適当には室温〜80℃で)中でカップリング試薬、例えば、HATU、EDCIおよび/またはHOBtの存在下において反応を実施し、次いで、塩酸またはトリフルオロ酢酸などの酸性条件下で式(V)の化合物を脱保護する。
【化4】

【0071】
したがって、本発明の1の態様において、式(Ic)の化合物またはその医薬上許容される塩の調製方法であって、式(VI)の化合物を式(VII)の化合物(式中:Pは適当な窒素保護基を示す)と反応させ、次いで、式(V)の化合物を脱保護することを含む方法が提供される。
【0072】
式(I)の化合物(式中:Xは−CONH−を示し、Rは−C2−6アルキルを示す(式(Id)))は、反応スキーム4にしたがって、適当な溶媒、例えば、DCM(適当には室温〜還流温度で)中でカップリング試薬、例えば、HATU、EDCIおよび/またはHOBtの存在下において、式(VI)の化合物と式(VIIa)の化合物を反応させることによって調製されうる。
【化5】

【0073】
したがって、本発明の1の態様において、式(Id)の化合物またはその医薬上許容される塩の調製方法であって、式(VI)の化合物を式(VIIa)の化合物と反応させることを含む方法が提供される。
【0074】
式(III)の化合物は、反応スキーム5にしたがって、適当な溶媒、例えば、エタノールまたはメタノール中でヒドラジン水和物またはNaOH(濃)の存在下において、式(VIII)の化合物を反応させることによって調製されうる。
【化6】

【0075】
式(VIII)の化合物は、反応スキーム6にしたがって、適当な溶媒、例えば、ジオキサン中で式(X)の化合物を無水フタル酸と反応させ、次いで、適当には還流温度で適当な溶媒、例えば、アセトニトリル中で塩基、例えば、炭酸カリウムの存在下において、式(IX)の化合物を式(XI)の化合物(式中:Lは脱離基、例えば、ハロゲンまたはトシレートを示す)でアルキル化することによって調製されうる。
【化7】

【0076】
式(VI)の化合物は、反応スキーム7にしたがって、適当には還流温度で適当な溶媒、例えば、アセトン中で塩基、例えば、炭酸カリウムの存在下において、式(XIII)の化合物を式(XI)の化合物(式中:Lは脱離基、例えば、ハロゲンまたはトシレートを示す)と反応させ、次いで、適当な溶媒、例えば、エタノール中で塩基、例えば、水酸化ナトリウムで式(XII)の化合物を鹸化することによって調製されうる。
【化8】

【0077】
式(XII)の化合物はまた、反応スキーム8にしたがって、適当には室温で溶媒、例えば、ジクロロメタン中で式(XIV)の化合物(式中:Pは適当な窒素保護基、例えば、Bocを示す)を、例えば、トリフルオロ酢酸で脱保護し、次いで、適当には還流温度で適当な溶媒、例えば、酢酸中で2,4−ジオキソペンタン酸エチル(XV)と縮合することによって調製されうる。
【化9】

【0078】
式(XIV)の化合物(式中:PはBocを示す)は、反応スキーム9にしたがって、適当な溶媒、例えば、エタノール中で式(XI)の化合物(式中:Lは脱離基、例えば、ハロゲンまたはトシレートを示す)をカルバジン酸tert−ブチルと反応させるかまたは適当な溶媒、例えば、ジクロロメタン中で還元剤、例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムおよび酢酸の存在下において、式(XVI)の化合物をカルバジン酸tert−ブチルと反応させることによって調製されうる。
【化10】

【0079】
式(IVa)の化合物は、スキーム10にしたがって、還元剤、例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下において、式(XVIII)の化合物を適当なアルデヒドで還元的アミノ化し、次いで、適当には還流温度で適当な溶媒、例えば、エタノール中で塩基、例えば、水酸化ナトリウムの存在下において、式(XVII)の化合物を鹸化することによって調製されうる。
【化11】

【0080】
式(VIIa)の化合物は、スキーム11にしたがって、還元剤、例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの存在下において、式(XX)の化合物を適当なアルデヒドで還元的アミノ化するかまたは式(XX)の化合物を適当なハロゲン化物でアルキル化し、次いで、式(XIX)の化合物のニトロ基を還元することによって調製されうる。
【化12】

【0081】
式(IV)、(VII)、(X)、(XI)、(XIII)、(XV)、(XVI)、(XVIII)および(XX)の化合物は、商業的に入手可能であるかまたは文献公知の方法もしくは当業者に既知の方法によって調製されうる、例えば、Tetrahedron,41(10),1953−1958,(1985)を参照のこと。
【0082】
式(I)の化合物の調製のさらなる詳細は、以下の実施例部分で見出される。
【0083】
本発明の化合物は、個々にまたは少なくとも2個、例えば、5〜1,000個の化合物、およびより好ましくは10〜100個の化合物を含む化合物ライブラリーとして調製されうる。本発明の化合物のライブラリーは、当業者に既知の製法によって、液相または固相化学のいずれかを用いて組み合わせ「スプリット・アンド・ミックス」法によってまたは複数のパラレル合成によって調製されうる。したがって、さらなる態様にしたがって、少なくとも2個の本発明の化合物を含む化合物ライブラリーが提供される。
【0084】
式(I)および/またはその溶媒和物の調製において、望ましくない副反応を阻止するために分子または適当な中間体における1個または複数の感受性基を保護することが必要であるおよび/または望ましいことは当業者には明らかであろう。本発明にしたがって用いるための適当な保護基は、当業者に既知であり、従来通りに用いられうる。例えば、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wutsによる「Protective groups in organic synthesis」(John Wiley & sons 1991)またはP.J.Kocienskiによる「Protecting Groups」(Georg Thieme Verlag 1994)を参照のこと。適当なアミノ保護基の例として、アシル型保護基(例えば、ホルミル、トリフルオロアセチル、アセチル)、芳香族ウレタン型保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)および置換Cbz)、脂肪族ウレタン保護基(例えば、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、イソプロピルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル)およびアルキルまたはアラルキル型保護基(例えば、ベンジル、トリチル、クロロトリチル)が挙げられる。
【0085】
限定されるものではないが、式(II)および(V)の特定の化合物を含む、上記の方法に用いられる種々の中間体化合物は、本発明のさらなる態様を構成する。
【0086】
式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩(複数)はまた、他の治療剤と組み合わせて用いられうる。したがって、本発明は、さらなる態様において、1種または複数の治療剤(複数)と一緒に式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を含む組み合わせを提供する。
【0087】
本発明の化合物は、他の治療剤と組み合わせて投与されうる。好ましい治療剤は、リスト:コレステリルエステルトランスフェラーゼ阻害薬(CETP阻害薬)、HMG−CoA還元酵素阻害薬、ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体活性化因子(PPAR)、胆汁酸再取り込み阻害薬、コレステロール吸収阻害薬、コレステロール合成阻害薬、フィブラート、ナイアシン、イオン交換樹脂、抗酸化剤、アシルCoA阻害薬:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT阻害薬)、カンナビノイド1アンタゴニスト、胆汁酸抑制剤、コルチコステロイド、ビタミンD3誘導体、レチノイド、免疫刺激剤、抗アンドロゲン、角質溶解剤、抗菌剤、白金化学療法剤、代謝拮抗剤、ヒドロキシウレア、タキサン、有糸分裂攪乱物質(mitotic disrupter)、アントラサイクリン、ダクチノマイシン、アルキル化剤またはコリンエステラーゼ阻害薬から選択される。
【0088】
式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩が第2の治療剤と組み合わせて用いられる場合、各化合物の用量は、化合物を単独で用いる場合と異なっていてもよい。適当な用量は、当業者であれば容易に分かるであろう。治療の使用に必要な本発明の化合物の量は、治療を受けている病態の性質ならびに患者の年齢および病態によって変化するであろうし、最終的にはかかりつけ医または獣医の判断によるであろう。
【0089】
上記の組み合わせは、好都合なことに、医薬処方の形態で用いるために存在しうるので、少なくとも1種の医薬上許容される担体および/または賦形剤と一緒に上記の組み合わせを含む医薬処方は、本発明のさらなる態様を含む。かかる組み合わせの個々の成分は、任意の便利な経路によって個々のまたは合した医薬処方で連続または同時のいずれかで投与されうる。
【0090】
連続投与の場合、SCD阻害薬または第2の治療剤のいずれかが最初に投与されうる。同時投与の場合、組み合わせは、同一または異なる医薬組成物中のいずれかで投与されうる。
【0091】
同一処方を合した場合、2種の化合物が安定かつ相互におよび処方の他の成分と混合可能である必要があることは分かるであろう。個々に処方される場合、それらは、好都合なことに、当該分野にてかかる化合物について既知の方法で任意の便利な処方中に提供されうる。
【0092】
本発明には、1種または複数の賦形剤と組み合わせて1種または複数の式(I)の化合物または医薬上許容される塩(複数)を含む医薬組成物も含まれる。
【0093】
本発明の化合物は、当該分野にて既知の通常の製法にしたがって本発明の化合物を標準的な医薬担体または希釈剤と合することによって調製される通常の剤形で投与されうる。これらの製法は、必要に応じて、所望の調製に成分の混合、造粒および圧縮または溶解を包含してもよい。
【0094】
本発明の医薬組成物は、任意の経路で投与するために処方されてもよく、ヒトを含む、哺乳動物に対する経口、局所または非経口投与に適した形態のものが含まれる。
【0095】
組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、ロゼンジ、クリームまたは液体製剤、例えば、経口または滅菌非経口溶液または懸濁液の形態でありうる。
【0096】
本発明の局所投与は、例えば、分散液、ローション、クリーム、ゲル、ペースト、粉末、エアロゾルスプレー、シロップまたはスポンジまたは綿棒上の軟膏、および水性液体中溶液または懸濁液、非水性液体、水中油型エマルジョン、または油中水型液体エマルジョンとして存在していてもよい。
【0097】
クリーム、ローション、または軟膏は、リンス−オフ(rinse−off)またはリ−ブ−オン(leave−on)生成物、ならびに他の皮膚洗浄または管理組成物と一緒に用いるための二段階治療生成物として調製されてもよい。組成物は、高濃度形態、例えば、ゲル中のリンス−オフ生成物、次いで、皮膚の炎症を避けるために低濃度中リーブ−オン生成物として投与されうる。本発明の医薬組成物を組み込むための剤形が容易に調製されうるような、これらの各形態は、当業者によって十分に理解される。
【0098】
軟膏は、溶解または懸濁された薬物を含有する炭化水素ベースの半固形処方である。クリームおよびローションは、半固形エマルジョン系であり、その語は、水/油または油/水の両方に適用される。ゲル処方は、液相がポリマー・マトリクス中に取り込まれる半固形系である。
【0099】
非限定的な例として、軟膏は、例えば、白色軟パラフィンもしくは他のミネラルワックス、流動パラフィン、非ミネラルワックス、長鎖アルコール、短鎖酸またはシリコーンから選択される1種または複数の疎水性担体を含有していてもよい。軟膏は、疎水性担体に加えて、例えば、適当な界面活性剤/共界面活性剤系と組み合わせたプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールから選択されるいくつかの親水性担体を含有していてもよい。クリームまたはローションの担体組成物は、典型的には、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、PEG−モノステアリン酸グリセリン、エステル、例えば、安息香酸C12−15アルキル、流動パラフィン、非ミネラルワックス、長鎖アルコール、長鎖酸、シリコーン、非シリコーン性ポリマーから選択される他の担体/成分と組み合わせて、水、白色軟パラフィンおよび適当な界面活性剤/共界面活性剤系に基づく。例として、ゲルは、適当には微量成分、例えば、1種または複数のブチレングリコールおよび湿潤剤、例えば、ポロキサマーと組み合わせて、ゲル化剤、例えば、ヒドロキシエチルセルロースとイソプロピルアルコールまたはエチルアルコール、プロピレングリコールおよび水を用いて処方されうる。
【0100】
軟膏、クリーム、ローション、ゲルなどは、保湿剤をさらに含みうる。保湿剤は、疎水性保湿剤、例えば、セラミド、ボラージオイル、トコフェロール、リノール酸トコフェロール、ジメチコーンまたはその混合物あるいは親水性保湿剤、例えば、グリセリン、ヒアルロン酸、ペルオキシリンカルボン酸ナトリウム(sodium peroxylinecarbolic acid)、小麦タンパク質、毛髪ケラチンアミノ酸、またはその混合物でありうる。
【0101】
本発明に記載の組成物はまた、皮膚用途のための通常の添加剤およびアジュバント、例えば、保存剤、pHバッファー賦形剤および抗酸化剤として用いられる酸または塩基を含みうる。
【0102】
本発明は、経皮パッチまたは経皮投与の他の形態を介する投与を包含する。適当な経皮投与用処方は、当該分野にて既知であり、本発明の方法に用いられうる。例えば、医薬化合物の投与のための適当な経皮パッチ処方は、例えば、Campbellらの米国特許第4,460,372号、Kwiatekらの米国特許第4,573,996号、Nuwayserの米国特許第4,624,665号、Eckertらの米国特許第4,722,941号,およびNelsonらの米国特許第5,223,261号に記載されている。
【0103】
本発明の方法に用いるためのある適当な種類の経皮パッチは、非浸透性であるバッキング層、浸透性表層、浸透性表層を実質的に持続して被覆する接着剤層、およびバッキング層がリザーバーの側面周辺に広がり、浸透性表層の端の浸透性表層につながるようにパッキング層と浸透性表層の間にあるかまたは挟まれたリザーバーを含む適当な経皮パッチを包含する。リザーバーは、式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を単独または組み合わせて含有し、浸透性表層と流体接触している。経皮パッチは、経皮パッチが皮膚に接着する場合に浸透性表層が皮膚と実質的に持続して接触しているように、浸透性表層上の接着剤層によって皮膚に接着する。経皮パッチが対象の皮膚に接着すると、経皮パッチのリザーバーに含有される式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩は、浸透性表層を介して、リザーバーから、接着剤層を通って、患者の皮膚に移動する。経皮パッチはまた、所望により、皮膚を介して式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の浸透を促進するリザーバー中に1種または複数の浸透促進剤を含んでいてもよい。
【0104】
バッキング層を含んでいてもよい適当な物質の例は、経皮パッチ送達の分野にて公知であり、任意の通常のパッキング層物質は、本発明の経皮パッチに用いられうる。
【0105】
適当な浸透促進剤も同様に、当該分野にて公知である。通常の浸透促進剤の例として、アルコール類、例えば、エタノール、ヘキサノールなど、炭化水素類、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、イソプロピルベンゼン;アルデヒド類およびケトン類、例えば、シクロヘキサノン、アセタミド、N,N−ジ(低級アルキル)アセタミド類、例えば、N,N−ジエチルアセタミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アセタミド、エステル類、例えば、N,N−ジ−低級スルホキシド類、精油、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、モノラウリル酸グリセロール、ミリスチン酸イソプロピル、およびオレイン酸エチル、ならびに上記のいずれかの混合物が挙げられる。
【0106】
経口投与のための錠剤およびカプセルは、単位量表示形態であってもよく、結合剤、例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、またはポリビニルピロリドン;充填剤、例えば、ラクトース、砂糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン;錠剤潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ;崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプン;または許容される湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどの通常の賦形剤を含有していてもよい。錠剤は、通常の調剤実務にて既知の方法にしたがってコーティングされうる。経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップまたはエリキシル剤の形態であってもよく、あるいは、使用前に水または他の適当なビヒクルで復元するための乾燥生成物として存在してもよい。かかる液体製剤は、通常の添加物、例えば、懸濁化剤、例えば、ソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチンまたは水素化食用脂、乳濁化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアカシア;(食用脂を含んでいてもよい)非水性ビヒクル、例えば、アーモンド油、グリセリン、プロピレングリコール、またはエチルアルコールなどの油性エステル;保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピルまたはソルビン酸、ならびに、必要に応じて、通常の香味剤または着色剤を含有していてもよい。
【0107】
経口投与用製剤は、適当には、活性化合物の制御/持続放出を得るために処方されうる。
【0108】
坐剤は、通常の坐剤基剤、例えば、ココア−バターまたは他のグリセリドを含有するであろう。
【0109】
非経口投与について、流体単位剤形は、化合物および滅菌ビヒクル、好ましくは、水を利用して調製される。用いられるビヒクルおよび濃度による、化合物は、ビヒクルで懸濁または溶解されうる。溶液の調製において、適当なバイアルまたはアンプル中に充填し、密封する前に、化合物を注射用水で溶解し、フィルターを滅菌しうる。
【0110】
有利には、局所麻酔薬、保存剤および緩衝剤などの薬剤は、ビヒクルで溶解されうる。安定性を高めるために、バイアルに充填し、真空下で水を除去した後、組成物は凍結されうる。次いで、凍結乾燥粉末をバイアル中で密封し、注射用水の付随のバイアルを、使用前に液体を復元するために供給してもよい。非経口懸濁液は、化合物を溶解する代わりにビヒクルで懸濁し、滅菌を濾過により達成できないことを除き、実質上同一の方法で調製されうる。滅菌ビヒクルで懸濁する前に、化合物は、酸化エチレンに曝すことにより滅菌されうる。有利には、化合物の均一な分布を容易にするために、界面活性剤または湿潤剤が組成物中に含まれる。
【0111】
組成物は、投与方法によって、活性成分の0.1重量%から、好ましくは、10−60重量%を含有していてもよい。組成物が用量単位を含む場合、各単位は、好ましくは、活性成分の50−500mgを含有するであろう。成人治療に用いられる用量は、好ましくは、投与の経路および頻度によって、100〜3000mg/日、例えば、1500mg/日の範囲であろう。かかる用量は、1.5〜50mg/kg/日に相当する。適当には、用量は、5〜20mg/kg/日である。
【0112】
当業者であれば、本発明の化合物の個々の用量の最適量および間隔が、治療を受けている病態の特徴および程度、投与の形態、経路および部位、および治療を受けている特定の哺乳動物によって決定されるであろうことならびにかかる最適条件が従来の技法によって決定されうることは分かるであろう。当業者であれば、最適な治療過程、すなわち、所定の日数に対する1日に投与される本発明の化合物の用量の回数が、治療決定試験の通常の過程を用いて当業者によって確認されうることも分かるであろう。
【0113】
本明細書で引用される特許および特許出願を含むがこれらに限定されないすべての刊行物は、個々の刊行物が十分に開示されているかの如く具体的かつ個別的に出典明示により本明細書の一部とすることが明示されているかのように出典明示により本明細書の一部とする。
【0114】
本発明はまた、式(I)の化合物の調製に用いられる、本明細書に記載の新規中間体にまで及ぶ。
【0115】
定義
Boc tert−ブチルオキシカルボニル
CCl 四塩化炭素
DCM ジクロロメタン
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
EDCI N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジ
イミド塩酸塩
EtOAc 酢酸エチル
EtN トリエチルアミン
EtOH エタノール
Fmoc 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HATU O−(7−アゾベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3
,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HCl 塩酸
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
NaHB(OAc) トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
NaOH 水酸化ナトリウム
NHNH ヒドラジン
【0116】
分析法LC−MS
分析的HPLCを、40℃の温度で1.1mL/分の流速にて以下の溶出勾配:0〜4分、5〜100%B;4〜5分、100%Bを用いて水中0.01M酢酸アンモニウム(溶媒A)および100%アセトニトリルで溶出する、X−terra MS C18カラム(2.5μm 3x内径30mm)上で実施した。
【0117】
質量スペクトル(MS)を、エレクトロスプレー陽性イオン化[MH分子イオンを得るためにES+ve]またはエレクトロスプレー陰性イオン化[(M−H)分子イオンを得るためにES−ve]モードを用いて微量ZQ−LC質量分析計上で記録した。
【0118】
分析法LC−HRMS
分析的HPLCを、40℃の温度で1.3mL/分の流速にて以下の溶出勾配:0〜0.5分、5%B;0.5〜3.5分、5〜100%B;3.5〜4分、100%B;4〜4.5分、100〜5%B;4.5〜5.5分、5%Bを用いて水中0,01M酢酸アンモニウム(溶媒A)および100%アセトニトリル(溶媒B)で溶出するUptisphere−hscカラム(3μm 30x内径3mm)上で実施した。
【0119】
質量スペクトル(MS)を、エレクトロスプレー陽性イオン化[MH分子イオンを得るためにES+ve]またはエレクトロスプレー陰性イオン化[(M−H)分子イオンを得るためにES−ve]モードを用いて微量LCT、質量分析計上で記録した。
【0120】
分析法GC−MS
分析的GCを、0.5ml/分のヘリウム流および3.4barの圧力ならびに勾配温度:0〜0.35分、100℃;0.35分〜6分、100℃〜250℃(80℃/分の勾配)で溶出する、DB−1msカラム(Agilent Technologies)、0.1μm 10mx内径0.1mm)上で実施した。
【0121】
質量スペクトル(MS)を、電子衝撃イオン化を用いてAgilent Technologies G5973質量分析計上で記録した。
【実施例】
【0122】
中間体1:2−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
【化13】

5−メチル−1H−ピラゾール−3−アミン(50g、515mmol)のジオキサン(800mL)中溶液に、無水フタル酸(76.2g、515mmol)を加え、反応混合物を還流温度で24時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過し、濾液を150mLに濃縮し、第2群を結晶化した。次いで、合した固体を、EtOH/ジイソプロピルエーテル(1/1)混合液中でトリチュレートし、濾過し、淡黄色固体として標記化合物を得た(100g、86%)。
LC/MS:m/z 228(M+H)、Rt:2.19分。
【0123】
中間体2:2−(5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−イル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン
【化14】

2−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(中間体1)(1g、4.4mmol)のCHCN(20mL)中溶液に、炭酸カリウム(0.73g、5.28mmol)、次いで、1−(クロロメチル)−2−(メチルオキシ)ベンゼン(0.83g、5.28mmol)を加え、反応混合物を還流温度で一晩攪拌した。冷却後、塩を濾去し、濾液を減圧下で蒸発させた。残渣を水で希釈し、DCMで抽出した。合した抽出液をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣を、DCM/EtOAc:95/5で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーに付して精製し、白色固体として標記化合物を得た(200mg、13%)。
LC/MS:m/z 348(M+H)、Rt:3.11分。
【0124】
以下の化合物を、中間体2に記載の方法と類似の方法によって同様に調製した。
【化15】

【表1】

【0125】
中間体5:5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−アミン
【化16】

2−(5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−イル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(中間体2)(0.18g、0.52mmol)のEtOH(10mL)中懸濁液に、ヒドラジン水和物(75μL、1.56mmol)を加え、反応混合物を還流温度で2時間攪拌した。冷却後、沈殿物を濾去し、濾液を減圧下で蒸発させた。残渣を水で希釈し、DCMで抽出した。合した抽出液を、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発させ、黄色油として標記化合物を得た(105mg、94%)。
LCMS:m/z 218(M+H)、Rt:2.34分。
【0126】
以下の化合物を、中間体5に記載の方法と類似の方法によって同様に調製した。
【化17】

【表2】

【0127】
中間体8:6−{[(5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]カルボニル}−3,4−ジヒドロ−2(1H)−イソキノリンカルボン酸1,1−ジメチルエチル
【化18】

5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−アミン(中間体5)(0.1g、0.46mmol)のDCM(5mL)中溶液に、2−{[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボン酸(0.15g、0.55mmol)、HOBt(0.075g、0.55mmol)およびEDCI(0.105g、0.55mmol)、EtN(130μL、0.92mmol)を加え、混合物を室温で48時間攪拌した。次いで、有機相を、HCl(0.5N)およびNaHCO飽和溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣を、DCM〜DCM/EtOAc:80/20で溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーに付して精製し、油として標記化合物を得た(115mg、52%)。
LC/MS:m/z 477(M+H)、Rt:3.52分。
【0128】
以下の化合物を、適当な中間体から同様の製法によって調製した。
【化19】

【表3】

【0129】
実施例1:N−(5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミド塩酸塩
【化20】

6−{[(5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]カルボニル}−3,4−ジヒドロ−2(1H)−イソキノリンカルボン酸1,1−ジメチルエチル(中間体8)(115mg、0.24mmol)のDCM(5mL)中溶液に、トリフルオロ酢酸(180μL)を加え、混合物を室温で4時間攪拌した。混合物を、NaHCO飽和溶液で塩基性化し、有機相をデカントし、NaOHの1N溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣をMeOHで溶解し、HClの1N溶液を加えた。蒸発させた後、得られた沈殿物を、ジイソプロピルエーテルでトリチュレートし、濾過し、乾燥し、白色固体として標記化合物を得た(45mg、45%)。
2224について算出したHRMS(M+H):377.1978 実測値:377.2007 Rt:2.31分
【0130】
以下の化合物を、適当な中間体から同様の製法によって調製した。
【化21】

【表4】

【0131】
化合物の調製が本明細書に示されているかは別として、特定群(または2もしくは複数の群の混合物)の中間体が調製の次の段階に用いられたことを導き出せるとは推測できない。実施例および中間体は、本発明の当業者の理解を助けるために、同一の調製に適している合成経路を説明することを目的としている。
【0132】
当業者であれば分かるであろう、「同様の」製法の使用について参照する場合、かかる製法は、わずかな変更、例えば、反応温度、試薬/溶媒量、反応時間、後処理条件またはクロマトグラフィー精製条件に関与しうる。
【0133】
生物学的アッセイ
本発明の化合物を、一価不飽和脂肪酸アシルCoA生成物の酵素触媒生成中に放出される、[H]HOの生成に基づくアッセイを用いてSCD活性についてインビトロで分析してもよい。96ウェル濾過プレートでアッセイを行う。アッセイに用いられる滴定基質は、[9,10−H]ステアロイルコエンザイムAである。SCD含有ラットミクロソーム(2μgタンパク質)および基質(1μM)を6分間インキュベートした後、標識脂肪酸アシル−CoA種およびミクロソームを、木炭に吸着させ、遠心分離により[H]HOから分離する。[H]HOの形成は、SCD活性の測定として用いられる。10μM〜0.1nMで開始する濃度の化合物またはビヒクル(DMSO)を、基質の添加前に、ミクロソームと5分間予めインキュベートする。濃度反応をS字型曲線に当てはめ、IC50値を得る。
【0134】
SCD活性について上記のインビトロアッセイにより試験した全ての合成例化合物(実施例1−3)は、5.5以上の平均pIC50値を示すことが見出された。
【0135】
以下の化合物を、上記と同様のプロトコールにしたがって調製し、SCD活性について上記のインビトロアッセイにより試験した場合、5−5.5の範囲の平均pIC50値を示すことが見出された。
【表5】

【0136】
以下の化合物もまた調製され、SCD活性について上記のインビトロアッセイにより試験した場合、5未満の平均pIC50値を示すことが見出された。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
Xは、−CONH−または−NHCO−を示し;
は、−OCHまたは−OCFで置換されたフェニルを示し、さらに−C1−6アルキル、−C1−6アルコキシ、−C1−6ハロアルキル、−OC1−6ハロアルキル、−C3−6シクロアルキルまたはハロゲンから独立して選択される1個または2個または3個の基で置換されていてもよく;
は、Hまたは−C2−6アルキルを示す]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
Xが−NHCO−を示す、請求項1記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項3】
が、−OCHまたは−OCFで置換されたフェニルを示し、さらにハロゲンから独立して選択される1または2個の基で置換されていてもよい、請求項1または請求項2に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項4】
が水素を示す、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項5】
N−(5−メチル−1−{[2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−1H−ピラゾール−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミド、
N−(1−{[5−クロロ−2−(メチルオキシ)フェニル]メチル}−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミド、または
N−[5−メチル−1−({2−[(トリフルオロメチル)オキシ]フェニル}メチル)−1H−ピラゾール−3−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドから選択される請求項1記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項6】
少なくとも1種の医薬担体および/または賦形剤と一緒に請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項7】
療法に用いるための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項8】
SCD阻害薬によって改善されやすい疾患または病態の治療および/または予防のための医薬の製造のための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項9】
脂質異常症、低αリポ蛋白血症、高βリポ蛋白血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、アンギナ、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症およびメタボリック・シンドローム;末梢血管疾患、再かん流傷害、血管形成術後再狭窄、高血圧、糖尿病の血管合併症、血栓症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および肝臓中の脂質の蓄積に関する他の疾患;湿疹、ニキビ、乾癬、ケロイド瘢痕形成または阻止、粘膜からの産生または分泌物に関する疾患;癌、新生組織形成、悪性腫瘍、転移癌、腫瘍(良性または悪性)、発癌、肝臓癌など;軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)またはダウン症候群(DS)に付随する認知症およびAβ42を含むアミロイドプラークの形成または蓄積によって特徴付けられる他の神経変性疾患を含む、異常血漿中脂質プロファイルに起因するかまたは付随する疾患または病態の治療および/または予防のための医薬の製造のための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項10】
ニキビ、脂質異常症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪肝および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療および/または予防のための医薬の製造のための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項11】
SCD阻害薬によって改善されやすい疾患または病態の治療および/または予防に用いるための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項12】
脂質異常症、低αリポ蛋白血症、高βリポ蛋白血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、アンギナ、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症およびメタボリック・シンドローム;末梢血管疾患、再かん流傷害、血管形成術後再狭窄、高血圧、糖尿病の血管合併症、血栓症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および肝臓中の脂質の蓄積に関する他の疾患;湿疹、ニキビ、乾癬、ケロイド瘢痕形成または阻止、および粘膜からの産生または分泌物に関する疾患;癌、新生組織形成、悪性腫瘍、転移癌、腫瘍(良性または悪性)、発癌、肝臓癌など;軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)またはダウン症候群(DS)に付随する認知症およびAβ42を含むアミロイドプラークの形成または蓄積によって特徴付けられる他の神経変性疾患を含む、異常血漿中脂質プロファイルに起因するかまたは付随する疾患または病態の治療および/または予防に用いるための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項13】
ニキビ、脂質異常症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪肝および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療および/または予防に用いるための請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項14】
SCDによって改善されやすい疾患または病態の治療および/または予防方法であって、治療上有効な量の請求項1〜5のいずれか記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を対象に投与することを含む方法。
【請求項15】
脂質異常症、低αリポ蛋白血症、高βリポ蛋白血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、アンギナ、虚血、心虚血、卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症およびメタボリック・シンドローム;末梢血管疾患、再かん流傷害、血管形成術後再狭窄、高血圧、糖尿病の血管合併症、血栓症、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および肝臓中の脂質の蓄積に関する他の疾患;湿疹、ニキビ、乾癬、ケロイド瘢痕形成または阻止、および粘膜からの産生または分泌物に関する疾患;癌、新生組織形成、悪性腫瘍、転移癌、腫瘍(良性または悪性)、発癌、肝臓癌など;軽度認識障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症(CAA)またはダウン症候群(DS)に付随する認知症およびAβ42を含むアミロイドプラークの形成または蓄積によって特徴付けられる他の神経変性疾患を含む、異常血漿中脂質プロファイルに起因するかまたは付随する疾患または病態の治療および/または予防方法であって、治療上有効な量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を対象に投与することを含む方法。
【請求項16】
ニキビ、脂質異常症、高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、肥満、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、脂肪肝および/または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療および/または予防方法であって、治療上有効な量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩を対象に投与することを含む方法。
【請求項17】
コレステリルエステルトランスフェラーゼ阻害薬(CETP阻害薬)、HMG−CoA還元酵素阻害薬、ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体活性化因子(PPAR)、胆汁酸再取り込み阻害薬、コレステロール吸収阻害薬、コレステロール合成阻害薬、フィブラート、ナイアシン、イオン交換樹脂、抗酸化剤、アシルCoA阻害薬:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT阻害薬)、カンナビノイド1アンタゴニスト、胆汁酸抑制剤、コルチコステロイド、ビタミンD3誘導体、レチノイド、免疫刺激剤、抗アンドロゲン、角質溶解剤、抗菌剤、白金化学療法剤、代謝拮抗剤、ヒドロキシウレア、タキサン、有糸分裂攪乱物質、アントラサイクリン、ダクチノマイシン、アルキル化剤またはコリンエステラーゼ阻害薬から選択される1種または複数の活性剤と組み合わせる請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその医薬上許容される塩。

【公表番号】特表2010−513401(P2010−513401A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542053(P2009−542053)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064219
【国際公開番号】WO2008/074833
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】