説明

化学分析装置

【課題】デッドボリュームが極めて小さいマイクロバルブを有するバルブ装置を用いた化学分析装置を提供する。
【解決手段】流体が移動可能な複数の第1の流路21を有する第1の部材11、第1の部材11に隣接し、複数の第1の流路21に連通可能な第2の流路22を有する第2の部材21、第2の部材12に隣接し、複数の第2の流路22のそれぞれに連通可能な第3の流路23を有する第3の部材13を備え、第1〜第3の部材11、12、13が相対的に移動することにより、複数の第1の流路21の一つと複数の第2の流路22の一つを連通させるバルブ装置と、第3の部材13において第3の流路23に連結され、複数の第1の流路21の一つから複数の第2の流路22の一つを通って第3の流路23内を流れる流体に物理的あるいは化学的処理を行う反応部25とを備えることを特徴とする化学分析装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量な化学物質の反応や合成分析を行うマイクロチップとして用いられる、バルブ装置を用いた化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康や環境などの分析に用いるサンプルや試薬量の極小化、反応の高速化が可能なことからマイクロチップにおけるマイクロ空間で化学反応を行うことが注目を集めている。また、反応や分析の更なる高度化のためにマイクロチップへのバルブの搭載が望まれている。
【0003】
これまでに、マイクロチップへのバルブの実装形態として、いくつかの方法が提案されている。その中の1つに、メンブレンを変形させることによりマイクロチップ中の微細流路を塞ぐ方法が開発されている(例えば、非特許文献1参照。)。メンブレン方式では、PDMSなどの耐薬品性が高く軟らかい材料からなるメンブレンを、微細流路を塞ぐように空圧などで押し当てることにより、微細流路を流れる流体の流れを止めることが可能である。
【0004】
また、その他のマイクロチップへのバルブの実装形態として、スライドゲート方式も開発されている(例えば、非特許文献2参照。)。スライドゲート方式では、微細流路にゲートとなる部材を挿入することにより微細流路を流れる流体の流れを止めることが可能である。
【非特許文献1】ウィリアム・エイチ・グロヴァー(William H. Grover)、他4名、「微小液体分析装置に使用されるLSIにおける実用的なバルブ及びポンプ」(“Practical Valves and Pumps for Large-Scale Integration into Microfluidic Analysis Devices”)、μTAS2002(2002)、pp.136-138
【非特許文献2】アルベルト・ピー・ピサノ(Albert P. Pisano)、他1名、「低漏水マイクロゲートバルブ」(”Low-Leakage Micro Gate Valve”)、 Transducers‘03、Berkley USA、2003年6月11日、pp.143-146
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、メンブレン方式のバルブでは、メンブレンを変形させるために、微細流路周辺にメンブレン及びメンブレンを駆動させるための機構を設置する必要があり、このため、微細流路中に、流体の流れに対して不必要に流路幅が広くなった部分(以下において、「デッドボリューム」という。)が発生する。このデッドボリュームが存在することにより、異種の液体を流す場合にコンタミネーションの原因となってしまう。また、メンブレンが変形して微細流路を塞ぐ際に、微細流路に液体を押し流してしまったり、メンブレンが変形して微細流路を解放する際に、微細流路の流れを引き戻してしまったりする現象が発生することがあり、微細流路内の流れを制御する際の障害となっていた。
【0006】
一方、スライドゲート式のバルブでは、ゲート開閉による微細流路を流れる液体の流れの停止(ストップバルブ)の機能しか実現することができない。また、ゲートを開けた際には、微細流路を流れる流体がゲート部分に流れ込むため、この部分がデッドボリュームとなり、異種の液体を流す際にコンタミネーションを発生させる問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑み、デッドボリュームが極めて小さいマイクロバルブを有するバルブ装置を用いた化学分析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、(イ)流体が移動可能な複数の第1の流路を有する第1の部材、第1の部材に隣接し、複数の第1の流路に連通可能な第2の流路を有する第2の部材、第2の部材に隣接し、第2の流路に連通可能な第3の流路を有する第3の部材を備え、第1の部材、第2の部材及び第3の部材が相対的に移動することにより、複数の第1の流路の一つと複数の第2の流路の一つを連通させ、また、複数の第1の流路のそれぞれを流れる流体の流れを第2の部材の第1の部材との第1の隣接面により停止させ、複数の第2の流路のそれぞれを流れる流体の流れを第3の部材の第2の部材との第2の隣接面により停止させるバルブ装置と、(ロ)第3の部材において第3の流路に連結され、複数の第1の流路の一つから複数の第2の流路の一つを通って第3の流路内を流れる流体に物理的あるいは化学的処理を行う反応部とを備える化学分析装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、デッドボリュームが極めて小さいマイクロバルブを有するバルブ装置を用いた化学分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
(バルブ装置)
本発明の実施形態に係るバルブ装置1は、図1に示すように、流体が移動可能な第1の微細流路21を有する第1の部材11と、第1の部材11に隣接し、第1の流路11に連通可能な第2の微細流路22を有する第2の部材12と、第2の部材12に隣接し、第2の微細流路22に連通可能な第3の微細流路23を有する第3の部材13と備える。そして、第1の部材11と第2の部材12とが相対的に移動することにより、第1の微細流路21と第2の微細流路22を連通させ、また、第1の微細流路21を流れる流体の流れを第2の部材12の第1の隣接面により停止させるようにする。また、第2の部材12と第3の部材13とが相対的に移動することにより、第2の微細流路22と第3の微細流路23を連通させ、また、第2の微細流路22を流れる流体の流れを第3の部材13の第2の隣接面により停止させるようにする。
【0012】
図1に示すバルブ装置1の大きさは、概ね数〜数十mmオーダであり、いわゆるマイクロチップと呼ばれる。第1の部材11、第2の部材12及び第3の部材の材質としては、石英等のガラス材料やポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコンゴムあるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂などが使用可能である。更に、ガラスエポキシ樹脂、ポリプロピレン(PP)やポリテトラフロロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、シリコン等の半導体材料、金属等でも構わない。
【0013】
第1の部材11上には、試料導入孔5、第1の微細流路21が設けられ、第2の部材12上には、第2の微細流路22が設けられ、第3の部材13上には、第3の微細流路23、試料導出孔6が設けられる。微細流路の幅、深さは1μm〜5mmが好ましい。5mm以上の幅としてもよいが、集積密度が低下し、マイクロチップとしての機能が薄くなる。加工技術が許せば、1μm以下の幅も可能であるが、混合、反応、分析を行う上での操作性や分析感度の点から現実的ではない。従って、微細流路の幅、深さは、マイクロチップとしての集積密度、分析感度や製造の容易性を考慮すれば20μm〜1mm程度にすればよい。第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13が、図1の平面に対して上下方向に相対移動することにより、第1の微細流路21と第2の微細流路22、第2の微細流路22と第3の微細流路23は、それぞれ分離したり結合したりする。以下の説明において、「上下方向」など方向を指し示す記述は、説明に用いる図面に対しての移動方向を指す。第1の微細流路21、第2の微細流路22、第3の微細流路23が結合している場合は、試料導入孔5より導入された試料は、第1の微細流路21、第2の微細流路22及び第3の微細流路23を通過し、試料導出孔6から排出される。第1の微細流路21と第2の微細流路22が分離されている場合は、試料導入孔5より導入された試料は、第1の微細流路21を通過し、第2の部材22の側面部においてその流れを止められる。また、第2の微細流路22と第3の微細流路23が分離されている場合は、第2の微細流路22を通過した試料は、第3の部材23の側面部においてその流れを止められる。第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13は、スライド移動することにより流体の流れを止めるスライドバルブ(マイクロバルブ)の役割を果たす。このように、第1部材11、第2の部材12及び第3の部材13が上下方向に相対移動することにより、第1の微細流路21、第2の微細流路22及び第3の微細流路23が分離・結合し、微細流路内の流体の流れを制御することができる。
【0014】
また、図1(b)は、図1(a)の長辺方向における断面図である。図1(a)において、平面に対して上下方向にスライド移動すると説明したが、図1(b)に示すように、断面に対して上下方向にスライド移動するとしても、第1の微細流路21、第2の微細流路22及び第3の微細流路23の分離・結合が可能であり、微細流路内の流体の流れを制御することができる。
【0015】
また、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図2に示すように、第1の部材11は、第2の部材12の周囲を囲む形状であり、第2の微細流路22を流れる流体の流れを第1の部材11の第3の隣接面により停止する構造としてもよい。
【0016】
第1の部材11上には、試料導入孔5、試料導出孔6、第1の微細流路21が設けられ、第2の部材12上には、第2の微細流路22が設けられている。第1の部材11、第2の部材12が、図2の平面に対して上下方向に相対移動することにより、第1の微細流路21及び第2の微細流路22は、分離したり結合したりする。例えば、図2(a)に示すように、第1の微細流路21と第2の微細流路22が結合されている場合は、試料導入孔5より導入された試料は、第1の微細流路21及び第2の微細流路22を通過し、試料導出孔6から排出される。第1の部材11上に設けられ、第2の微細流路22と試料導出孔6を連結する流路を「第4の微細流路」という。一方、図2(b)に示すように、第1の微細流路21と第2の微細流路22が分離されている場合は、試料導入孔5より導入された試料は、第1の微細流路21を通過し、第2の部材22の第1の隣接面においてその流れを止められる。このように、第1部材11、第2の部材12が上下方向に相対移動することにより、第1の微細流路21、第2の微細流路22が分離・結合し、微細流路内の流体の流れを制御することができる。
【0017】
また、図2(a)では、第2の部材12の中央部に第2の微細流路22を設け、第2の部材12が第1の部材11の中央に位置したときに、第1の微細流路21と第2の微細流路22が連結されるが、第2の微細流路22を第2の部材の中央より端に近い部分に設け、第2の部材22が図2(b)に示す位置に移動したときに、第1の微細流路21と第2の微細流路22が連結されるものとしてもよい。
【0018】
また、図2(c)に示すように、マイクロチップ1は、孔部15の上側面側に第2の部材12が移動した際に、上側の第1の微細流路21と上側の第2の微細流路22が接続される形状とし、孔部15の下側面側に第2の部材12が移動した際に、下側の第1の微細流路21と下側の第2の微細流路22が接続される形状としてもよい。
【0019】
更に、図2(d)に示すように、第2の部材12は四側面が第1の部材11により囲まれる必要はなく、三側面が囲まれる形状としても構わない。
【0020】
また、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図3に示すように、第2の部材12が回転移動することにより、第1の微細流路11を流れる流体の流れを第2の部材12の側面により停止する構造としてもよい。
【0021】
第1の部材11上には、試料導入孔5、試料導出孔6、第1の微細流路21が設けられ、第2の部材12上には、第2の微細流路22が設けられている。図3では、図1で説明した部材の相対移動が、上下方向のスライド移動ではなく、回転移動である場合を示す。第2の部材12が第1の部材11に対し回転することにより、微細流路の分離・結合が可能であり、微細流路内の流体の流れを制御することができる。
【0022】
(バルブ装置の平行度、間隙、粗さ)
次に、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1の部材間の平行度、間隙、粗さなどについて説明する。
【0023】
本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図4に示すように、第2の部材12の第2の微細流路22断面を有する1組の側面が平行であることが望ましい。また、この平行度は、1分以下が望ましい。平行度が悪いと、第2の部材12を上下方向にスライド相対移動させた場合に、第2の部材12が第1の部材11と第3の部材13に噛み合ってしまい、動かなくなる不具合が生じる可能性がある。また、平行度が悪いと、第2の部材12を上下方向にスライド相対移動させた場合に、第2の部材12と第1の部材11、第3の部材13の間の間隙が広がり、微細流路を流れる液体が間隙部に漏れてしまう不具合が生じる可能性がある。
【0024】
また、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図5に示すように、第1の部材11と第2の部材12の相対移動時に最も近接している側面の最小間隙Lが10nm〜3μmであることが望ましい。相対移動する部材は間隙が大きすぎると相対移動させるための力が小さくてすむが、微細流路を流れる流体の漏れが大きくなる。逆に間隙が小さいと漏れ量は少なくなるが、相対移動に必要な力が大きくなり、場合によっては部材を破壊してしまう可能性がある。そこで、相対移動する部材の間の間隙Lは、10nm〜3μm程度が望ましい。
【0025】
図5では横方向についての間隙について記したが、縦方向についての間隙についても同様である。即ち、後述する図7(c)における第2の部材12とガイド機構31間の間隙についても、10nm〜3μm程度が望ましい。
【0026】
また、図7(b)に示したように膜を備える場合には、部材間の間隙は、10nm〜30μm程度が望ましい。間隙が広くなると、微細流路を流れる流体が第2の部材12と第1の部材11、第3の部材13の間隙部に漏れてしまう不具合が生じる可能性がある。但し、部材表面上に膜を備え、膜を押しつぶす方向に部材を加圧した場合は、部材間の間隙をなくしても構わない。
【0027】
また、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図6に示すように、第1の部材11と第2の部材12の相対移動時に最も近接している側面の表面粗さが、算術平均粗さをRaとして、0.01μm≦Ra≦3μmであることが望ましい。摺動する部分の表面粗さは小さいほど液体の漏れ量が少なくなる。しかし、表面粗さが小さいと材料によっては部材同士が固着するスティクションが発生してしまう。そのため摺動する部分には適当な表面粗さが必要であり、算術平均粗さRaは、0.01〜3μm程度が望ましい。また、表面粗さ加工は、摺動する両面に行ってもよく、片面に行ってもよい。尚、図7において後述するように膜を備えた場合は、この表面粗さは必要ない場合もある。
【0028】
(バルブ装置の部材表面上への膜の具備)
次に、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1の部材の面上に弾性体からなる膜を備えた例について説明する。
【0029】
図7(b)は、図7(a)の断面図であり、第2の部材12の周囲に弾性体の膜30を備えた場合について示している。第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13をガラスなどの脆性材料で製作した場合、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の間隙を狭くして流体の漏れを少なくすることには限界があるため、若干の漏れやそれに起因する流路間のクロスコンタミネーションが生じてしまう可能性がある。そこで、第2の部材12の周囲に1〜100μm程度の弾性体からなる膜を備え、第1の部材11、第3の部材13にて第2の部材12の周りに備えられた膜30を押しつぶすことによりシールし、漏れを少なくすることができる。
【0030】
図7(c)は、第2の部材12の上下方向のギャップを調整するために膜30を備えた場合の例を示している。スライド移動させるために第2の部材12と第1の部材11、第3の部材13との間には、第2の部材12の高さが、第1の部材11、第3の部材13の高さよりも小さいことが必要である。そこで、第1の部材11と第3の部材13、あるいは第1の部材11、第3の部材13を固定する部分に1〜100μm程度の弾性体の膜30を備え、膜を備えた分だけをギャップとすることができる。
【0031】
図7(d)は、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13と上下に配置したガイド機構31間に膜30を備えた場合の例を示している。図7(d)に示す構成とすると、ガイド機構31となるガイド用ガラス板とマイクロチップ1の間に液体が流れ込み、クロスコンタミネーションの原因となることを防止する。また、第2の部材12の上下方向への漏れを防止し、摺動性を向上させることができる。
【0032】
(バルブ装置の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1の製造方法について、図8、図9を用いて説明する。
【0033】
(イ)まず、図8(a)に示すように、微細流路を内部に含む基板を並行切断する。切断方法はダイシングなどが考えられる。そして、端面を並行研磨する。研磨方法は両面および片面のラッピング、ポリッシングが考えられる。このようにして、基板は、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13に分けられる。図8(b)は、図8(a)を上から見た図である。また、切断・研磨時には内部の微細流路に切断粉、研磨粉が入り込まないように微細流路内に詰め物をしてから切断・研磨加工を行ってもよい。内部に詰める材料としては切断・研磨時に外部に流れ出さない粘性のものが望ましい。あるいは、熱により溶解し粘性が小さくなる性質の物質を高温で微細流路に流し込み、切断・研磨加工を行い、切断加工や研磨加工が終了してから高温状態にして内部の詰め物を除去してもよい。
【0034】
(ロ)次に、図8(c)に示すように、切断した第1の部材11と第3の部材13をガイド機構31となる上下の板で挟み、第2の部材12との間隙が所望の間隙となるように位置を調整して固定する。このとき、各部材を接着や熱融着により固定する他、クランプ部材によってクランプする、あるいは、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13をバラバラな状態で装置にセットすることなどにより固定しても構わない。図8(d)は、図8(c)を上から見た図である。
【0035】
(ハ)次に、図8(e)に示すように、第1の部材11、第3の部材13、ガイド機構31で囲まれた空隙に切断した第2の部材12を挿入する。図8(f)は、図8(e)を上から見た図である。第2の部材12をスライド移動することにより、内部の微細流路の分離・結合が可能となる。第2の部材12は上下方向についても所望の間隙としなければならないため、上下方向は所望の間隙になるように研磨を行うか、あるいは第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13に膜を備えてもよい。
【0036】
このように、1枚の微細流路を有する基板を切断・研磨することにより、第1の部材11・第3の部材13と第2の部材12において、上下方向の高さが同一となり、微細流路の分離・結合部分において流れの乱れやデッドボリュームの発生が抑えられる。
【0037】
尚、図8では、微細流路が彫られた板と孔が空いた板を貼り合わせたマイクロチップを切断しているが、微細流路が彫られた板と孔が空いた板を貼り合わせる前に切断・研磨加工し、所望の大きさにしてから、それらを貼り合わせてもよい。後から貼り合わせを行った方が、切断・研磨時に微細流路に入り込んだ切断粉、研磨粉の除去がしやすい。
【0038】
次に、異種の基板を切断・研磨加工してマイクロチップを製造する方法について図9を用いて説明する。図9に示す基板の寸法L1〜L13は例示であり、これに限るわけではない。
【0039】
(イ)まず、図9(a)に示すように、第1の部材11及び第3の部材13となる基板を用意する。基板の長辺の長さL1は、70mm程度、短辺の長さL2は、30mm程度とする。この基板を切断・研磨加工することにより、図9(b)に示すように、第1の部材11、第3の部材13を作成する。第1の部材11の長辺の長さL3は、41±0.1mm程度、第3の部材13の長辺の長さL4は、26±0.1mm程度である。第1の部材11と第3の部材の間L5には、3mm程度の部材が作成されるが、この部材は使用しない。
【0040】
(ロ)次に、図9(c)に示すように、第2の部材12となる基板を用意する。この基板を切断・研磨加工することにより、図9(d)に示すように、複数の第2の部材12を作成する。第2の部材の幅L7は、3±0.1mm程度であり、彫られた微細流路の切り替え幅L6、切り替え位置までの幅L8、L9は、1±0.1mm程度である。
【0041】
(ハ)次に、図9(b)に示す第1の部材11、第3の部材13、図9(d)に示す第2の部材12の1つを組み合わせると、図9(e)に示すように、マイクロチップが出来上がる。第1の部材11の長さL11は、41±0.1mm程度であり、第2の部材12の長さL13は、3±0.1mm程度であり、第3の部材13の長さL12は、26±0.1mm程度であり、マイクロチップの短辺の長さL10は、30±0.1mm程度となる。
【0042】
第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13を相対移動させることにより、微細流路の分離・結合を行い、微細流路内部の流体の流れを制御することができる。
【0043】
尚、このような製造方法において、第1の部材11(第3の部材13)となる基板と、第2の部材12となる基板は、同じ高さの物を用いることが望ましい。
【0044】
(バルブ装置の機能)
次に、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1の機能について説明する。
【0045】
本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図10に示すように、スライド移動による定量液体の切り取りあるいはインジェクション機能を有する。本発明の実施形態に係るマイクロチップ1の第1の部材11は、複数の第1の微細流路21を有し、第3の部材13は、複数の第3の微細流路23を有し、複数の第1の微細流路21の1つと複数の第3の微細流路23の1つは、第2の微細流路22によって同時に連結され、第1の部材11、あるいは第2の部材12、あるいは第3の部材13が移動することにより、複数の第1の微細流路21の別の1つと複数の第3の微細流路23の別の1つは、第2の微細流路22によって同時に連結される。このとき、第2の微細流路22は一つでも複数でも構わない。
【0046】
例えば、上側の試料導入孔5からサンプル液を、下側の試料導入孔5からキャリアー液を流すために加圧する。第2の部材12を上側にスライド移動させ、微細流路1Aと微細流路3Aとを連結させれば、上側の微細流路上をサンプル液が流れることとなる。続いて、第2の部材12を下側にスライド移動させ、微細流路1A、微細流路3Aと第2の微細流路22とを分離すると、微細流路1A及び微細流路3A中の流体の流れは止まり、第2の微細流路22中にサンプル液が一定量だけ切り取られる。更に、第2の部材12をスライド移動させ、微細流路1Bと微細流路3Bと第2の微細流路22を連結させれば、下側の微細流路上をキャリアー液が流れ、キャリアー液中に第2の部材22によって切り取られたサンプル液が定量的にインジェクションされる。
【0047】
次に、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図11に示すように、スライド移動による流路切り替え機能を有する。本発明の実施形態に係るマイクロチップ1の第1の部材11は、複数の第1の微細流路21を有し、第2の部材12は、複数の第2の微細流路22を有し、第1の部材11、あるいは第2の部材12、あるいは第3の部材13が移動することにより、複数の第1の微細流路21の1つと第3の微細流路23は、複数の第2の微細流路22の1つによって連結される。
【0048】
例えば、図11において、第1の部材11内の試料導入孔5にそれぞれ上から洗浄液、純水、サンプル液を流すために圧力をかける。第2の微細流路22の位置により、第3の微細流路23と連結した第1の微細流路21内に充填された洗浄液が、第3の部材13に流れ込む。そして、スライド移動により、第3の微細流路23と連結した第1の微細流路22内に充填された純水が、第3の部材13に流れ込む。そして、スライド移動により、第3の微細流路23と連結した第1の微細流路23内に充填されたサンプル液が、第3の部材13に流れ込む。
【0049】
このような構造のためには、図11に示すように、第2の部材12の微細流路の流路間隔は、(第2の微細流路22cと第2の微細流路22dの右側の流路間隔A)=(第1の微細流路21dと第2の微細流路22dの左側の流路間隔A’)、(第2の微細流路22cと第2の微細流路22eの右側の流路間隔B)=(第1の微細流路21eと第2の微細流路22eの左側の流路間隔B’)となっていることが望ましい。
【0050】
次に、スライド移動による流路切り替え機能を有する、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1の別の構造を、図12に示す。本発明の実施形態に係るマイクロチップ1の第1の部材11は、複数の第1の微細流路21を有し、第2の部材12は、複数の第2の微細流路22を有し、第3の部材13は、複数の第3の微細流路23を有し、第1の部材11、あるいは第2の部材12、あるいは第3の部材13が移動することにより、複数の第1の微細流路21の1つと複数の第3の微細流路23の1つは、複数の第2の微細流路22の1つによって連結される。
【0051】
例えば、図12は、第1の部材11内部の複数の微細流路21と、第3の部材13内部の複数の微細流路23とを第2の部材12内部の複数の微細流路22によって切り替える場合について示している。第2の部材12をスライド移動させることにより、第1の部材11と第3の部材13の内部にある複数の微細流路を任意に連結することができる。
【0052】
このように、第2の部材12内の微細流路22形状を変更することにより、上から下へなど一方向のスライド移動により、シーケンシャルに流体を制御することも可能となる。
【0053】
(位置センサ、動力源、加圧機構)
次に、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1に備えられる機構について説明する。
【0054】
本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図13に示すように、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の相対移動位置を検出する位置センサ35を備える。
【0055】
相対移動する第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の内部にある微細流路を分離、結合するためには相対移動の量を把握しなければならない。そこで、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の位置を測定するセンサを付け、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の位置を測定することが必要である。
【0056】
位置センサ35は、図13(a)に示すように、第2の部材12の外側に設けられてもよく、第2の部材12上に成膜などにより設けられてもよい。位置センサ35は、図13(a)に示すように、接触式によるものでもよく、図13(b)に示すように、レーザー光などによる非接触式によるものでもよい。位置センサ35としては、部材に成膜することにより作成することが可能な微小電極や、電磁誘導、光干渉、レーザー干渉などを用いることができる。また、位置の検知としては、相対移動量を検知してもよく、絶対移動量を検知してもよい。
【0057】
また、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図14に示すように、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13を移動させるための動力源36を備える。
【0058】
部材を相対移動させるためには部材を移動させるための動力源36が必要である。動力源36と部材11、12、13は直接接合しても構わないし、接合のための接合治具を介して接合しても構わない。動力源としては、モータ、電磁ソレノイド、静電駆動、圧電、超音波駆動、熱膨張、バイメタル、形状記憶合金などが使用できる。
【0059】
また、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図15、16に示すように、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13移動方向を制限するガイド機構31を備える。
【0060】
相対移動により部材内部の微細流路を分離、結合するためには、移動方向を制御する必要がある。このため、ガイド機構31を備えることが必要となる。
【0061】
図15(a)は、第2の部材12の移動方向をガイドするために、上下に板を配置したガイド機構31を示し、図15(b)は、図15(a)の断面図を示す。
【0062】
また、図16(a)は、第2の部材12の移動方向をガイドするために、第2の部材12を移動可能なガイド機構31に固定した例を示し、図16(b)は、図16(a)の断面図を示す。ガイド機構31は、リニアスライド機構38に接続されることにより、第2の部材12の移動を容易に行うことができる。
【0063】
また、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、図17〜19に示すように、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の部材の間隙を小さくするように加圧する加圧機構を備える。
【0064】
図8(c)(e)に示す上下板の接着、熱融着による固定によって、図5に示す間隙Lは、現実的には1μm程度が限界である。流路を流れる流体の圧力が低い場合には1μm程度の間隙でも流体を止めることができる。あるいは、漏れによるクロスコンタミネーションが発生しても分析などで許容できる範囲内とすることができる。
【0065】
しかし、後述する図22に示すような、流路上に多数の機能を含め、流路長さを長くした場合や、流路後段にカラム分離など高い流体圧が必要な機能を配置した場合には、スライド流路にかかる圧力が高くなる。このような場合には、1μm程度の間隙ではスライド部から液体が漏れる問題が発生する。このため、内部を流れる流体の圧力が高圧の場合においても、漏れ量を少なくするためには、図5に示す間隙Lを小さくすることが考えられ、間隙を小さくする方法の1つとして間隙の両側から加圧する方法を用いることができる。このように、両側を加圧することにより1μm以下の間隙が容易に得られる。
【0066】
図17は、相対移動する部材の間から液体が漏れることを防止するために相対移動する部材に対して、流体が漏れ出さない方向に力Fを加えることを示している。図17では微細流路は左右方向にあり、液体の漏れを少なくするためには、バネや油圧機構などの加圧機構を設け、第1の部材11、第3の部材13を両側から抑えることが望ましい。
【0067】
この具体例を、図18に示す。図18は、図17に示した両側からの押し付けによる流体の漏れを減少させる方法を示している。スライドあるいは相対移動により流路の分離、再結合を行うためには第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の位置を管理することが必要である。そこで第2の部材12をスライド移動させるためには第1の部材11、第3の部材13を横方向に位置管理可能なリニアスライド機構38などに固定する。固定方法はチップ1を直接固定してもよいし、リニアスライド機構38に固定されたチップ保持部材39により固定してもよい。
【0068】
図18に示したように、上下方向にスライド移動させる場合には液体の漏れ量を減少させるためには左右方向に第2の部材12を押しつぶす方向に力をかければよい。力をかける材料としてバネや空圧、油圧などが考えられる。力を加える方法は直接チップにこれらの部材から力を与えてもよいし、チップを固定したチップ保持部材39に力を加えてもよい。
【0069】
次に、上述した、位置センサ35、動力源36、加圧機構43をマイクロチップ1上に搭載した例について、図19を用いて説明する。
【0070】
図19(a)に示すように、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1は、可動する第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13、位置センサ35、動力源36、加圧機構43を備える。図19(b)は、図19(a)の断面図を示す。第1の部材11と第3の部材13は、横方向にのみ可動できるように上下方向には間隙を数μmとしている。マイクロチップ1内には板バネなど力を加えることができる加圧機構43があり、これらに連結した第1の部材11と第3の部材13は第2の部材12を締め付ける方向に力を加えることができる。動力源36や位置センサ35により、第2の部材12は図19(a)における平面の上下方向にスライド移動する。これにより、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の内部に配置された微細流路が分離・結合を行い、微細流路内部の流体の流れを制御することが可能となる。
【0071】
(バルブ装置内部の流体の処理あるいは検出)
次に、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1に備えられる流体の処理部及び検出部について説明する。
【0072】
本発明の実施形態に係る化学分析装置3は、図20〜23に示すように、第1の微細流路21、第2の微細流路22、第3の微細流路23内を流れる流体に、物理的あるいは化学的処理、あるいは流体の物理的あるいは化学的性質の検出を行う手段を備える。
【0073】
図20及び図21は、図1〜3において説明したスライドバルブの前後に、物理的・化学的な処理部を配置した例を示す。
【0074】
図20では、左上に配置された2本の流路のY字型合流構造により異種類の流体の混合を行うことができる。また、第2の部材12を上にスライド移動させ、上側の第1の微細流路21と上側の第3の微細流路23とを第2の微細流路22により連結すれば、上側の流路構造により混合反応を行うことができる。即ち、第1の部材11上の試料導入孔5より導入された試料は、混合部7において混合され、混合された試料は、第2の微細流路22、上側の第3の微細流路23を通過し、試料導出孔6へ排出される。
【0075】
この状態において、第2の部材12を下にスライド移動させ、下側の第1の微細流路21と下側の第3の微細流路23とを第2の微細流路22によって連結させる。このとき、第2の微細流路22中には、混合液が充填されている。そして、下側の第1の微細流路21へキャリアー液を流すことにより、第2の微細流路22内に充填された流体をキャリアー液中に定量的に切取り、下側の第3の微細流路23へとインジェクションすることができる。そして、下側の第3の微細流路23に設けられた検出部8によって、第2の微細流路22によって定量された流体に対しての検出を行うことが可能となる。
【0076】
また、図21では、第2の部材12を上下にスライド移動させることにより、第1の部材11内部の微細流路21と第3の部材23内部の微細流路23を一組ずつ連結することができる。例えば、第1の部材11のそれぞれの試料導入孔5から、洗浄液、純水、試料、反応液などを流すように圧力をかけておけば、第2の微細流路22のスライド移動により第3の部材23に連結する流路を変えることにより、第3の微細流路23に連結された反応部25及び検出部8にこれらの流体を切り替えて流すことが可能となる。
【0077】
図21では、スライドバルブ後に反応部25及び検出部8を示したが、物理的・化学的な処理部はこの二つに限らず、その配置についてもスライドバルブの前においても構わない。
【0078】
図22は、相対的なスライド移動とその前後に配置された物理的・化学的な処理や検出が概平面上に配置したマイクロチップ1を示している。図22に示すように、第1の部材11及び第2の部材12上には、混合部7、検出部8、加熱部9、カラム分離10が概平面上に配置されている。概平面上に配置することにより、マイクロチップ1間で流体を移動させる際に、コネクタ部分や連結チューブ部分で生じるデッドボリュームを極力抑えることが可能となる。また、図23に示すように、物理的あるいは化学的な処理部や検出部は、スライド移動する第2の部材12に配置されていてもよい。
【0079】
(マイクロチップ間の接続)
次に、本発明の実施形態に係るマイクロチップ1を連結した例について、図24及び図25を用いて説明する。
【0080】
図24では、上側に配置されたマイクロチップ1は、第1の部材11、第2の部材12及び第3の部材13を有し、これらの部材のスライド移動により流体を制御し、下側に配置されたマイクロチップ1は、検出部8を有する。上側に配置されたマイクロチップ1には下側に、下側に配置されたマイクロチップ1には上側にそれぞれ位置が管理された試料貫通孔26を設け、これらを貼り合わせることにより上下のマイクロチップ1の間で流体の流通を行う。上下のマイクロチップ1間の流体の導通はコネクタを介して行ってもよいことは勿論である。このような立体構造をとることにより、流体の制御、反応、検出など処理のマイクロチップ1を組み合わせて全体の処理を構築することができる。
【0081】
また、図25は複数のマイクロチップ1を連結した別の例を示している。図24では、複数のマイクロチップ1を立体的に縦方向に貼り合わせることにより連結したが、図25に示すように、複数のマイクロチップ1を並列に配置することにより、任意の方向で連結しても構わない。連結方法としては、コネクタ、チューブによって接続してもよく、複数に配置するマイクロチップ1のうちスライド移動をさせないものについてはホルダーなどに納めて並列に配置することにより接続しても構わない。
【0082】
(化学分析システム)
次に、上述したマイクロチップ、位置センサ、動力源などを含む化学分析システムについて説明する。図19などでは、マイクロチップ1上に、位置センサ35、動力源36、加圧機構46を設けたが、これらはマイクロチップ1外に設けられてもよい。
【0083】
本発明の実施形態に係る化学分析システム2は、図26に示すように、マイクロチップ1と、位置センサ35と、動力源36と、位置センサ35の情報を元に、動力源36の動作を制御する制御部37とを備える。相対移動により部材内部の微細流路の分離、結合を行うためには相対移動量を制御する必要がある。そこで絶対移動量、相対移動量を検知する位置センサとそれに連結した制御部とそれに連結した動力源を用意する。位置センサからの情報を元に制御部で相対移動させるために必要な動力を計算し、動力源に伝え、相対移動量を制御する。
【0084】
また、本発明の実施形態に係る化学分析システム2は、第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13の移動方向を制限するガイド機構や、部材間の間隙を小さくするように加圧する加圧機構とを備えてもよい。
【0085】
また、図27は、基材42上に化学分析システム2を装置として構築した場合の例を示す。基材42の上に相対移動させるマイクロチップ1を保持するチップ保持部材39を設け、この上にマイクロチップ1を固定する。相対移動で移動させる第2の部材12には基材42に固定された動力源36を連結する。尚、相対移動で移動させる部材が第2の部材12以外の場合には、他の部材に動力源36とを連結する。また、動力源36と移動させる部材(ここでは第2の部材12)とは移動に適切な連結部材41により連結される。また、必要があれば移動部材の位置が測定できる位置センサ35を設置し、移動部材の位置を測定する。
【0086】
(本実施形態に係るバルブ装置、化学分析装置及び化学分析システムの作用及び効果)
本発明の実施形態に係るバルブ装置(マイクロチップ)1によると、デッドボリュームが極めて少ないマイクロバルブを実現することができる。
【0087】
また、マイクロチップ内の微細流路の一部をマイクロチップ毎に、相対移動させることにより、微細流路の分離・結合を行い、微細流路内の流れを制御することができる。
【0088】
更に、相対移動する部材の形状、相対移動する部材内部の流路構造を変えることにより、微細流路内の流体の切り替え、微細流路による切取りインジェクションなどの機能を実現することが可能となる。
【0089】
(その他の実施の形態)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0090】
例えば、図2において、第1の部材11、第2の部材12は、それぞれ1本の微細流路(第1の微細流路21、第2の微細流路22)しか有しないが、これらの部材中に含まれる微細流路の本数、構造は任意で構わない。他の図面に示された微細流路についても同様である。
【0091】
また、図1において、マイクロチップ1は、3つの部材(第1の部材11、第2の部材12、第3の部材13)からなり、主に第2の部材12がスライド移動する例について記したが、部材の個数も、移動する部材の個数も多数あって構わない。
【0092】
なお、図面などの説明をした際に、マイクロチップ1などの大きさや高さを記述したが、これは例示として挙げた数値であり、この数値に限られるわけではないことは勿論である。
【0093】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本実施形態に係るマイクロチップの模式図である(その1)。
【図2】本実施形態に係るマイクロチップの模式図である(その2)。
【図3】本実施形態に係るマイクロチップの模式図である(その3)。
【図4】本実施形態に係るマイクロチップの平行度を示す図である。
【図5】本実施形態に係るマイクロチップの部材間の間隙を示す図である。
【図6】本実施形態に係るマイクロチップの表面粗さを示す図である。
【図7】本実施形態に係るマイクロチップに備えられた膜を示す図である。
【図8】本実施形態に係るマイクロチップの製造方法を示す図である(その1)。
【図9】本実施形態に係るマイクロチップの製造方法を示す図である(その2)。
【図10】本実施形態に係るマイクロチップの流路切り替え機能を示す図である(その1)。
【図11】本実施形態に係るマイクロチップの流路切り替え機能を示す図である(その2)。
【図12】本実施形態に係るマイクロチップの流路切り替え機能を示す図である(その3)。
【図13】本実施形態に係るマイクロチップの位置センサを示す図である。
【図14】本実施形態に係るマイクロチップの動力源を示す図である。
【図15】本実施形態に係るマイクロチップのガイド機構を示す図である(その1)。
【図16】本実施形態に係るマイクロチップのガイド機構を示す図である(その2)。
【図17】本実施形態に係るマイクロチップの加圧機構を示す図である(その1)。
【図18】本実施形態に係るマイクロチップの加圧機構を示す図である(その2)。
【図19】本実施形態に係るマイクロチップの加圧機構を示す図である(その3)。
【図20】本実施形態に係る化学分析装置の検出部を示す図である。
【図21】本実施形態に係る化学分析装置の反応部を示す図である。
【図22】本実施形態に係る化学分析装置の処理部及び検出部示す図である(その1)。
【図23】本実施形態に係る化学分析装置の処理部及び検出部示す図である(その2)。
【図24】本実施形態に係るマイクロチップの連結例である(その1)。
【図25】本実施形態に係るマイクロチップの連結例である(その2)。
【図26】本実施形態に係る化学分析システムを示す模式図である(その1)。
【図27】本実施形態に係る化学分析システムを示す模式図である(その2)。
【符号の説明】
【0095】
1 バルブ装置(マイクロチップ)
2 化学分析システム
3 化学分析装置
5 試料導入孔
6 試料導出孔
7 混合部
8 検出部
9 加熱部
10 カラム分離
11 第1の部材
12 第2の部材
13 第3の部材
21 第1の微細流路
22 第2の微細流路
23 第3の微細流路
25 反応部
26 試料貫通孔
30 膜
31 ガイド機構
33 バネ
35 位置センサ
36 動力源
37 制御部
38 リニアスライド機構
39 チップ保持部材
41 連結部材
42 基材
43 加圧機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が移動可能な複数の第1の流路を有する第1の部材、該第1の部材に隣接し、前記複数の第1の流路に連通可能な第2の流路を有する第2の部材、該第2の部材に隣接し、前記第2の流路に連通可能な第3の流路を有する第3の部材を備え、前記第1の部材、前記第2の部材及び前記第3の部材が相対的に移動することにより、前記複数の第1の流路の一つと前記複数の第2の流路の一つを連通させ、また、前記複数の第1の流路のそれぞれを流れる流体の流れを前記第2の部材の前記第1の部材との第1の隣接面により停止させ、前記複数の第2の流路のそれぞれを流れる流体の流れを前記第3の部材の前記第2の部材との第2の隣接面により停止させるバルブ装置と、
前記第3の部材において前記第3の流路に連結され、前記複数の第1の流路の一つから前記複数の第2の流路の一つを通って前記第3の流路内を流れる流体に物理的あるいは化学的処理を行う反応部
とを備えることを特徴とする化学分析装置。
【請求項2】
流体が移動可能な複数の第1の流路を有する第1の部材、該第1の部材に隣接し、前記複数の第1の流路に連通可能な第2の流路を有する第2の部材、該第2の部材に隣接し、前記第2の流路に連通可能な第3の流路を有する第3の部材を備え、前記第1の部材、前記第2の部材及び前記第3の部材が相対的に移動することにより、前記複数の第1の流路の一つと前記複数の第2の流路の一つを連通させ、また、前記複数の第1の流路のそれぞれを流れる流体の流れを前記第2の部材の前記第1の部材との第1の隣接面により停止させ、前記複数の第2の流路のそれぞれを流れる流体の流れを前記第3の部材の前記第2の部材との第2の隣接面により停止させるバルブ装置と、
前記第3の部材において前記第3の流路に接続され、前記複数の第1の流路の一つから前記複数の第2の流路の一つを通って前記第3の流路内を流れる流体に物理的あるいは化学的処理を行うカラム分離
とを備えることを特徴とする化学分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−255717(P2007−255717A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167030(P2007−167030)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【分割の表示】特願2003−317557(P2003−317557)の分割
【原出願日】平成15年9月9日(2003.9.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国などの委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率マイクロ化学プロセス技術」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)」
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】