説明

化学療法のための標的としての癌関連遺伝子

癌関連遺伝子配列および生成アミノ酸配列が、癌関連遺伝子の発現調節に基づく潜在的な抗腫瘍物質の検定のためのプロセスと供に開示される。また、開示されたポリペプチドと反応する抗体、および、例えばin vivoで、治療物質を輸送する目的で癌細胞を標的とするために抗体を使用することによる処置等、癌状態を処置するために抗体を使用する方法が開示される。また、遺伝子配列を用いた診断の方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2002年3月7日に出願された合衆国仮出願60/362527号の優先権を主張し、その開示は全体で引用例としてここに組み込まれている。
【0002】
本発明は、癌の診断の方法としての、癌の発現および促進プロセスに関与する癌関連遺伝子および発現産物のスクリーニング方法、加えて潜在的な抗癌物質のスクリーニング方法に関し、また前記遺伝子の発現産物に対する抗体および前記抗体を含む免疫複合体を含む。
【背景技術】
【0003】
癌関連遺伝子は、ある遺伝子が癌細胞中には発現するが非癌細胞中には発現しない、あるいは前記遺伝子が正常あるいは非癌細胞とは対照的に癌細胞中で過剰にあるいは高レベルに発現するというように、癌細胞と正常細胞との間で遺伝的差異を示す点で有用である。加えて、特に同じ型の組織の癌細胞中ではなくて、正常細胞中でのそのような遺伝子の発現は、癌化プロセスにおける重要な作用を示し得る。例えば、新規薬剤のスクリーニング検定は、特定の化合物での処置に対するin vitroでのモデル細胞に基づくシステムの応答に基づく。前記遺伝子はまた、癌の診断および細胞が癌であるとの同定において有用である。遺伝子活性は、前記遺伝子によりエンコードされたRNAsやポリペプチドといった遺伝子産物の生成割合を測定することで、容易に測定される。ここで、細胞表面タンパク質をエンコードする遺伝子、細胞表面標識としての前記タンパク質の発生あるいは変化は、腫瘍性活性の指標である。前記スクリーニングの多くは、癌遺伝子(あるいは遺伝子突然変異)等の特異的遺伝子に依存する。本発明にしたがって、癌関連遺伝子が同定され、その推定アミノ酸配列が解明される。前記遺伝子は、癌の診断、抗癌物質のスクリーニングおよび前記物質を用いた癌の処置に有用であり、特にこれらの遺伝子が細胞表面標識等の標識として働くことができるポリペプチドをエンコードし、それにより抗体、好ましくはアポトーシス因子を含む細胞傷害性物質と複合体を形成する抗体等の抗腫瘍物質に対する便利な標的を提供する点で有用である。
【発明の開示】
【0004】
(発明の簡単な要約)
本発明にしたがって、ここに、特に卵巣癌に関連する癌特異的遺伝子、あるいはまた癌の発現および促進プロセスに関与する癌特異的遺伝子、および前記遺伝子から得られる多くの異なる転写産物を含む前記遺伝子のアミノ酸配列が提供される。
【0005】
一見地において、本発明は、癌関連遺伝子の活性を調節する物質を同定するためのプロセスに関し、前記プロセスは、
(a)化合物を、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドに対応する遺伝子を含む細胞と、前記遺伝子の発現を促進する条件下で接触させ、
(b)前記化合物が存在しない場合と比較した前記遺伝子の発現の差異を検出し、
それにより癌関連遺伝子の活性を調節する物質を同定することを含む。
【0006】
前記プロセスの多様な実施例において、細胞は癌細胞であり、発現の差異は発現の減少である。前記ポリヌクレオチドはまた、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列と同一の配列を持つものを含み得る。
【0007】
他の見地において、本発明は、腫瘍性活性を示す細胞を、ここに開示された検定プロセスを用いて癌関連遺伝子調節因子であると最初に同定された化合物と接触させ、前記接触がない場合と比較した前記接触後の前記腫瘍性活性の減少を検出することを含む抗腫瘍物質を同定するためのプロセスに関する。前記腫瘍性活性は、促進された細胞の複製およびまたは転移を含み得る。また、腫瘍性活性の減少は、好ましくは細胞の死、あるいは老化、最終分化若しくは成長阻害に起因する。
【0008】
本発明はまた、癌状態を示す動物に、本発明にしたがって開示された検定の一つのプロセスにしたがって最初に同定された物質の有効量を投与し、前記癌状態の減少を検出することを含む、抗腫瘍物質を同定するためのプロセスに関する。
【0009】
本発明はさらに、細胞の癌状態を判断するためのプロセスに関し、前記プロセスは、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドに対応する最低一つの遺伝子の、前記細胞中での発現レベルの増加を測定することを含み、ここで既知の非癌細胞と比較して増加した発現は、癌状態あるいは潜在的な癌状態を示唆する。前記増加した発現は、複製数の増加が原因であり得る。
【0010】
本発明は加えて、ここに開示されたポリヌクレオチド転写産物の一つによりエンコードされた、単離されたポリペプチドに関し、前記ポリペプチドは、配列番号2、4および6のポリペプチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸と相同なアミノ酸配列を含み、ここで前記アミノ酸配列と配列番号2、4および6のポリペプチド配列の配列との間の差異はもっぱら保存されたアミノ酸置換に起因し、またここで前記単離されたポリペプチドは、最低一つの免疫原性断片を含む。好ましい実施例において、本発明は配列番号2、4および6のポリペプチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸と相同なアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを含む。
【0011】
本発明はまた、ここに開示されたポリペプチド、好ましくは配列番号2、4および6のポリペプチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと反応する抗体に関する。前記抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換えあるいは合成された抗体であり得る。
【0012】
一つの実施例において、前記抗体は、細胞傷害性物質、例えばアポトーシス因子と、共有結合あるいは非共有結合で結合する。したがって、本発明は、本発明の抗体と細胞傷害性物質より成る免疫複合体に関する。好ましい実施例において、細胞傷害性物質は、カリーチアマイシン(calicheamicin)、メイタンシノイド(maytansinoid)、アドゼレシン(adozelesin)、DC1、細胞傷害性タンパク質、タキソール(taxol)、タキソティア(taxotere)あるいはタキソイド(taxoid)である。特に好ましい実施例において、カリーチアマイシンはカリーチアマイシンγ、N−アセチル ガンマ カリーチアマイシン ジメチル ヒドラジドあるいはカリーチアマイシンθであり、メイタンシノイドはDM1であり、細胞傷害性タンパク質はリシン(ricin)、アブリン(abrin)、ゲロニン(gelonin)、シュードモナス外毒素(pseudomonas exotoxin)あるいはジフテリア毒素(diphtheria toxin)であり、タキソールはパクリタキセル(paclitaxel)であり、タキソティアはドセタキセル(docetaxel)である。
【0013】
本発明はまた癌を処置するためのプロセスに関し、前記プロセスは、癌細胞を、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された遺伝子配列によりエンコードされた発現産物に対して活性を持つ物質と接触させることを含む。一つの実施例において、癌細胞はin vivoで接触させられる。他の実施例において、前記物質は前記発現産物に対する親和性を持つ。好ましい実施例において、前記物質は、本発明のポリペプチドに特異的な、あるいは選択的な、あるいはそうでなければ反応する抗体等のここに開示された抗体である。好ましい実施例において、発現産物は、配列番号2、4および6のポリペプチド配列から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0014】
本発明はさらに、ここに開示されたポリペプチドを含む免疫原性組成物を含み、加えてこれらのポリペプチドに特異的な抗体を用いて形成された組成物を含む。
【0015】
本発明はまた、前記組成物の使用法に向けられる。前記使用法は、癌に苦しむ動物における癌を処置するための方法を含み、前記方法は、一つあるいはそれ以上のここに開示されたポリペプチドの免疫原性組成物の一定量を前記動物に投与することを含み、ここで前記一定量は、本発明のポリペプチド、好ましくは配列番号2、4および6のポリペプチド配列の配列を含むポリペプチドに特異的な細胞傷害性Tリンパ球の産生を引き出すのに十分な量である。好ましい実施例において、処置される動物は、ヒト患者である。
【0016】
本発明は、抗腫瘍性活性を持つ、小有機化合物を含む物質を同定するための検定を提供し、それにより癌に苦しむ動物の癌状態を処置するためのプロセスも提供する。前記プロセスは、前記物質、好ましくは本発明の検定プロセスを用いて最初に抗腫瘍性活性を持つと同定されたものの治療上の有効量を、前記動物に投与し、続いて前記活性を確認するために、試験動物に前記物質を投与することを含む。前記物質は同様に、癌を発症する危険性のあるヒト患者等の動物を、前記疾患の発症から保護するために用いられ得る。
【0017】
(定義)
ここで用いられるように、“部位”、“分節”および“断片”という用語は、ポリペプチドに関して用いられた場合、アミノ酸残基等の残基の連続した配列を示し、この配列はより大きな配列の一部を形成する。例えば、あるポリペプチドが、トリプシンあるいはキモトリプシン等の任意の代表的なエンドペプチダーゼを用いた処理を受けた場合、その結果生じたオリゴポリペプチドは最初のポリペプチドの部位、分節あるいは断片に相当する。ポリヌクレオチドに関して用いられた場合は、前記用語は、任意の代表的なエンドヌクレアーゼを用いた前記ポリヌクレオチドの処理により産生された産物を示す。
【0018】
ここで用いられるように、“単離された”という用語は、物質が、その元の環境(例えば、その物質が自然に発生するものであれば自然環境)から移されることを意味する。この物質はまた、組換え技術により産生され、続いて精製され得る。例えば、生きている動物中に存在する自然発生ポリヌクレオチドあるいはポリペプチドは単離されていないが、自然体系における共存物質の多くあるいは全てから分離された同じポリヌクレオチドあるいはポリペプチドは単離されている。例えば組換え技術で調製されたもの等の前記ポリヌクレオチドはベクターの一部であり得る。またあるいは、前記ポリヌクレオチドあるいはポリペプチドは組成物の一部であり得る。また、このポリヌクレオチドあるいはポリペプチドは、前記ベクターあるいは組成物がその自然環境の一部でないという点で単離されている。本発明の一つの実施例において、前記の単離されたあるいは精製されたポリペプチドは、本発明を実施するための抗体の生成において有用であり、あるいはここで前記抗体は、アポトーシス因子等の細胞傷害性あるいは細胞溶解性物質に付着する。
【0019】
“パーセント同一性”あるいは“パーセント同一性の”という用語は、配列を示す場合には、配列が、比較される配列(“比較配列”)の、開示あるいは請求された配列(“参照配列”)とのアライメントの後に、請求あるいは開示された配列と比較されることを意味する。その後パーセント同一性は以下の公式にしたがって測定される:
パーセント同一性=100[1−(C/R)]
ここでCは、参照配列と比較配列との間のアライメントの全長にわたる参照配列と比較配列との間の差異の数であり、ここで(i)比較配列中に対応するアライメントされた塩基あるいはアミノ酸のない参照配列中の各塩基あるいはアミノ酸および(ii)参照配列中の各ギャップおよび(iii)比較配列中のアライメントされた塩基あるいはアミノ酸と異なる参照配列中のアライメントされた各塩基あるいはアミノ酸が差異を構成し、Rは、参照配列中に構成されたギャップも塩基あるいはアミノ酸として数に入れた、比較配列とのアライメントの全長の参照配列中の塩基あるいはアミノ酸の数である。
【0020】
アライメントが比較配列と参照配列との間に存在し、それに対する上記のように計算されたパーセント同一性が規定の最小パーセント同一性と同等あるいはそれ以上である場合には、たとえアライメントが、上記の算出されたパーセント同一性が規定のパーセント同一性以下である場合に存在したとしても、比較配列は参照配列に対して規定の最小パーセント同一性を持つ。
【0021】
この分野において知られているように、二つのポリペプチド間の“類似”は、第一のポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存されたアミノ酸置換と、第二のポリペプチドの配列との比較により測定される。
【0022】
本発明にしたがって、“DNA分節”あるいは“DNA配列”という用語は、個別の断片の形態あるいはより大きいDNA構成体の構成要素としてのDNAポリマーを示し、最低一度実質的に精製された状態、すなわち汚染内因性物質の無い状態で、および例えばクローニングベクターの使用等の標準生化学方法によって、分節およびその構成ヌクレオチド配列の同定、取り扱いおよび回収を可能にする量あるいは濃度で単離されたDNAから得られたものである。前記分節は、通常真核細胞遺伝子中に存在する内側非翻訳配列、すなわちイントロンにより中断されていない読み取り枠の状態で提供される。非翻訳DNAの配列は読み取り枠の下流に存在し得るが、ここで同じものはコード領域の取り扱いあるいは発現を妨げない。
【0023】
“コード領域”という用語は、その自然ゲノム環境において遺伝子の発現産物を自然あるいは正常にコードする遺伝子の部分、すなわちin vivoで遺伝子の自然発現産物をコードする領域を示す。コード領域は、正常、突然変異あるいは変換遺伝子から得ることができ、あるいはさらにDNA合成の分野における通常の知識を有する者によく知られた方法を用いて研究室内で完全に合成されたDNA配列、または遺伝子から得ることもできる。
【0024】
本発明にしたがって、“ヌクレオチド配列”という用語は、デオキシリボヌクレオチドのヘテロポリマーを示す。通常、本発明によって提供されるタンパク質をエンコードするDNA分節は、微生物、真核生物あるいはウイルスオペロンから得られた調節因子を含む組換え型転写ユニット中で発現することが可能な合成遺伝子を提供するために、cDNA断片およびショートオリゴヌクレオチドリンカーから、あるいは一連のオリゴヌクレオチドから組み立てられる。
【0025】
“発現産物”という用語は、遺伝子および、遺伝暗号縮重の結果として生じる同等物をコードし、したがって同じアミノ酸をコードする任意の核酸配列の自然翻訳産物であるポリペプチドあるいはタンパク質を意味する。
【0026】
“活性断片”という用語は、コード配列に関して用いられる場合には、その発現産物が完全コード領域の発現産物と同じ生物学的機能あるいは活性を本質的に保有する完全コード領域以下の領域を含む部分を意味する。
【0027】
“プライマー”という用語は、DNAの一本鎖と組み合わさり、DNAポリメラーゼがデオキシリボヌクレオチド鎖の合成を開始するフリーの3′−OH末端を提供する短核酸配列を意味する。
【0028】
“プロモーター”という用語は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼの結合に関するDNAの領域を意味する。“エンハンサー”という用語は、存在し活性化している場合に、発現している異なるDNA配列の発現を増加させ、それにより前記の異なるDNA配列から形成される発現産物の量を増加させる効力を持つDNAの領域を示す。
【0029】
“読み取り枠(ORF)”という用語は、終止コドンを除くアミノ酸をコードする一連のトリプレットを意味し、(潜在的に)タンパク質に翻訳可能な配列である。
【0030】
ここで用いられるように、“DNA配列”への言及は単鎖および二本鎖DNAの両方を含む。したがって特定の配列は、他の指示がある場合を除いて、前記配列の単鎖DNA、相補鎖を伴う前記配列の2本鎖(2本鎖DNA)および前記配列の相補鎖を示す。
【0031】
ここで用いられるように、“対応する遺伝子”は、ここに開示されたヌクレオチド配列(すなわち配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列)の1つによってエンコードされるRNAと最低90%同一、好ましくは最低95%同一、最も好ましくは最低98%同一、そして特に同一であるRNAをエンコードする遺伝子を示す。前記遺伝子はまた、任意のここに開示された配列、好ましくは配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列と同じポリペプチド配列をエンコードするが、前記アミノ酸配列との差異を含み得る。ここで前記差異は保存されたアミノ酸置換に限定され、ここで同じ3次元構造全体は維持され、したがって同じ抗原性の特徴は維持される。したがって、アミノ酸配列は本発明の範囲内のものであり、ここで前記アミノ酸配列は、配列番号2、4および6のポリペプチド配列の配列を含むポリペプチドと反応する抗体と同一の抗体と反応する。“対応する遺伝子”は、そのスプライス変異体を含む。
【0032】
本開示によって同定される遺伝子は、“癌関連”という用語がここで用いられるものとして、“癌関連”遺伝子と見なされ、正常(すなわち非癌)細胞中でのこれらの遺伝子の発現と比較して癌細胞に(例えば発現割合の増加、発現程度の増加あるいは複製数の増加に起因して)より高いレベルで発現する遺伝子を含む。ここで前記の試験細胞あるいは組織の癌状態は、以下の実施例に開示される逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)等の、この分野において知られた方法により判断される。特定の実施例において、これは、その配列が配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子に関する。
【0033】
ここで用いられるように、“保存されたアミノ酸置換”という用語は、以下の五つのグループの一つの置換としてここに定義される。
【0034】
I.小さい、脂肪族の、無極性あるいはわずかに極性のある残基:
Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;
II.有極性の、負の電荷を帯びた残基およびそのアミド:
Asp、Asn、Glu、Gln;
III.有極性の、正の電荷を帯びた残基:
His、Arg、Lys;
IV.大きい、脂肪族の、無極性残基:
Met、Leu、Ile、Val、Cys
V.大きい、芳香族残基:
Phe、Tyr、Trp

(発明の詳細な説明)
本発明は、癌、好ましくは卵巣癌の処置および診断方法において、および癌関連遺伝子の活性を減少させるのに有効な物質のスクリーニング検定およびそれによる癌状態の処置の実施において、癌関連遺伝子に対するヌクレオチド配列、前記配列によりエンコードされるポリペプチド、および前記ポリペプチドと反応する抗体を利用するためのプロセスに関する。
【0035】
ここに開示されたポリペプチドは、種々のポリヌクレオチド転写産物(配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列)を含み、また前記転写産物から得られたエンコードされたアミノ酸配列(配列番号2、4および6のポリペプチド配列)は、化学療法薬、特に前記ポリペプチドに特異的な抗体を含む抗癌物質の標的として利用できる。
【0036】
ここに開示された癌関連ポリヌクレオチド配列は、その発現が特定の細胞の癌状態の指標である遺伝子配列に対応する。前記配列は配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列と実質的に同一であり、GenBank ESTデータベースから同定された種々の転写産物に相当し、癌特異的発現を示す。本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列に対応するものである。前記配列は、GenBankデータベース、特にESTデータベース内で検索され、ここで前記ヌクレオチド配列とそこから得られるポリペプチドは、以下の関係を持つ:
転写産物1:
>名称:H53701_T_1 長さ:3559 エキソン番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、27、28、29、30、31、32

転写産物1によりエンコードされたタンパク質1
>名称:ヒト_gb124ヒト_222520 全長:1148 エンコードしている転写産物:1

転写産物2:
>名称:H53701_T_2 長さ:858 エキソン番号:26、28、29、30、31、32

転写産物2によりエンコードされたタンパク質2
>名称:ヒト_gb124ヒト_192292 全長:174 エンコードしている転写産物:2

転写産物3:
>名称:H53701_T_3 長さ:372 エキソン番号:19、20、21、23

転写産物3によりエンコードされたタンパク質3
>名称:ヒト_gb124ヒト_192293 全長:104 エンコードしている転写産物:3

本発明のプロセスにおいて用いられる、遺伝子産物としてのヌクレオチドおよびポリペプチドは、組換えポリヌクレオチドあるいはポリペプチド、自然発生ポリヌクレオチドあるいはポリペプチド、または、合成ポリヌクレオチドあるいはポリペプチド、もしくは組換えポリヌクレオチドあるいはポリペプチドを含み得る。
【0037】
ここに開示されたような前記ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの断片もまた、本発明のプロセスの実施において有用であり得る。例えば、ポリペプチド(配列番号2、4および6のポリペプチド配列)の断片、誘導体あるいは類似体は、(i)アミノ酸残基の一つあるいはそれ以上が保存されたあるいは保存されていないアミノ酸残基(好ましくは保存されたアミノ酸残基)と置き換えられ、前記置換アミノ酸残基が遺伝暗号によってエンコードされたものであるか、あるいはないもの、または(ii)アミノ酸残基の一つあるいはそれ以上が置換基グループを含むもの、あるいは(iii)成熟ポリペプチドが、ポリペプチドの半減期を延長するための化合物(例えばポリエチレングリコール)等の別の化合物と融合するもの、もしくは(iv)追加のアミノ酸が、リーダーあるいは分泌配列、または成熟ポリペプチド(ヒスチジン ヘキサペプチド)あるいはプロタンパク質配列の精製に従事する配列等の、成熟ポリペプチドに融合するものであり得る。前記断片、誘導体および類似体は、ここでの教示からこの分野における通常の知識を有する者の範囲内にあると思われる。
【0038】
他の見地において、本発明は、配列番号2、4および6のポリペプチド配列のアミノ酸配列と最低90%同一のアミノ酸配列を含む、精製ポリペプチドを含む単離されたポリペプチドに関する。好ましい実施例において、前記の単離されたポリペプチドは、配列番号2、4および6のポリペプチド配列の配列と、最低95%の配列同一性、好ましくは最低約98%の配列同一性を持つアミノ酸配列、そして特に同一のアミノ酸配列を含む。本発明はまた前記ポリペプチドの単離された活性断片を含み、ここで前記断片は、前記ポリペプチドの生物学的活性を保有するか、あるいは前記活性断片は癌の処置、予防あるいは診断のための特異的な標識として有用である。したがって、本発明は、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列のポリペプチドと反応する(すなわち選択的あるいは特異的である)抗体の産生に有用となるように、ここ開示された配列と十分な配列相同性を持つ任意のポリペプチドあるいはその断片に関し、前記ポリペプチドあるいはその断片は、これらをその表面上に発現し、それにより前記抗体と前記抗体に結合する治療薬に標的を提供する細胞に狙いを定めることにおいて有用となる。
【0039】
本発明のプロセスの実施において有用なポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、さらに単離あるいは精製された状態で獲得され得る。加えて、本発明のプロセスの実施において有用であると、ここに開示されたポリペプチドは、癌細胞等の細胞上に存在する表面タンパク質であると思われる。正確には、前記癌関連タンパク質がどのように本発明のプロセスにおいて用いられるかは、用いられる治療的手段に依存して異なり得る。例えば、レセプター等の細胞表面タンパク質は、ここに開示されたポリペプチドに対して発現させることができる細胞傷害性抗体に対する望ましい標的である。
【0040】
GenBank寄託から得られた、ここに開示された配列情報は、ペプチド合成による対応する全長ポリペプチドを調製するために、この分野における通常の知識を有する者が容易に利用することができる。本発明の方法において用いるための、ここに開示されたポリヌクレオチドあるいはポリペプチドについても同様である。
【0041】
本発明は、配列番号2、4および6のポリペプチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸配列と相同のアミノ酸配列を含む、ここに開示されたポリヌクレオチド転写産物の一つによりエンコードされた、単離されたポリペプチドに関し、ここで、単離されたポリペプチド中のアミノ酸配列と配列番号2、4および6のポリペプチド配列の配列との間の差異は、もっぱら保存されたアミノ酸置換に起因し、またここで前記単離されたポリペプチドは、最低一つの免疫原性断片を含む。好ましい実施例において、本発明は配列番号2、4および6のポリペプチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを含む。
【0042】
ここに開示されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドの調製に有用な組換え細胞およびベクターの作成方法は、分子生物学分野における通常の知識を有する者によく知られている。例えば、Sambrook, et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1989)、Wu et al,Methods in Gene Biotechnology(CRC Press,New York,NY,1997)、およびRecombinant Gene Expression Protocols,in Methods in Molecular Biology,Vol.62,(Tuan,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,1997)参照。その開示は引用例としてここに組み込まれている。
【0043】
一見地において、本発明は、癌関連遺伝子の活性を調節する物質を同定するためのプロセスに関し、前記プロセスは、
(a)化合物を、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドに対応する遺伝子を含む細胞と、前記遺伝子の発現を促進する条件下で接触させ、
(b)前記化合物が存在しない場合と比較した前記遺伝子の発現の差異を検出し、
それにより癌関連遺伝子の活性を調節する物質を同定することを含む。
【0044】
前記プロセスの特定の実施例において、細胞は癌細胞であり、発現の差異は発現の減少である。前記ポリヌクレオチドはまた、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列と同一の配列を持つものを含み得る。
【0045】
他の見地において、本発明は、腫瘍性活性を示す細胞を、ここに開示された検定プロセスを用いて癌関連遺伝子調節因子であると最初に同定された化合物と接触させ、前記接触がない場合と比較した前記接触後の前記腫瘍性活性の減少を検出することを含む抗腫瘍物質を同定するためのプロセスに関する。前記腫瘍性活性は、促進された細胞の複製およびまたは転移を含み得る。また、腫瘍性活性の減少は、好ましくは細胞の死に起因する。
【0046】
本発明はまた、癌状態を示す動物に、本発明にしたがって開示された検定の一つのプロセスにしたがって最初に同定された物質の有効量を投与し、前記癌状態の減少を検出することを含む、抗腫瘍物質を同定するためのプロセスに関する。
【0047】
本発明の特定の実施例において、本発明に有用な遺伝子は、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列から選択された配列を持つポリヌクレオチドに対応する遺伝子を含み、あるいはここに開示された任意のポリヌクレオチドの配列を含み得る(ここで後者はcDNA配列である)。
【0048】
本発明にしたがって、前記検定は、問題の遺伝子の活性を測定する方法に依存する。前記検定は、増殖培地中で培養され、単一濃度あるいは一定の濃度範囲の化合物で処理された癌細胞系、初代癌細胞あるいは癌組織サンプルを用いたモデル細胞システムに基づく。処理後特定の時間で、細胞RNAsは処理された細胞あるいは組織から適宜単離される。前記RNAsは、選択された遺伝子の発現の指標である。細胞RNAはその後分割され、特異的なRNA転写産物の存在およびまたは量を検出するディファレンシャル分析を受ける。前記転写産物はその後、例えば逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)等の標準方法を用いて、検出目的で増幅され得る。特異的RNA転写産物の存在あるいは不在、もしくは濃度レベルは、これらの測定結果から判断される。ここに開示されたポリヌクレオチド配列は、前記RNA転写産物の検出用のプローブとして容易に用いられ、したがって、遺伝子活性および発現の測定に容易に用いられる。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドは、付随の制御あるいは調節配列を持つ完全作用遺伝子、または単に対応するポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド配列あるいは活性断片もしくはその類似体を含むことができる。
【0050】
ここに開示されたポリヌクレオチド配列の発現が癌状態に特異的であるため、有用な遺伝子調節は下向き調節であり、そのため、ここでのスクリーニング検定により同定された抗腫瘍物質への露出の結果として、癌細胞の対応遺伝子は、前記物質にさらされた場合に、前記物質への接触がない場合の発現と比較して低いレベルで発現する(あるいは全く発現しない)。例えば、ここに開示された遺伝子配列(配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列)は、正常卵巣細胞よりも卵巣癌の細胞中でより高レベルに発現する遺伝子に対応する。したがって、ここで前記化学物質は、試験細胞のこの遺伝子を、対照区の同一遺伝子よりも低いレベルで発現させるため、これは下向き調節の指標であり、試験される化学物質が抗腫瘍性活性を持つことを示す。
【0051】
ここに開示された検定の実施において、相対的な抗腫瘍性活性は、特定の化学物質が癌細胞中に存在する遺伝子の発現を調節する程度により確認することができる。したがって、本発明の検定により試験された第二の化学物質よりもより大きく、癌状態に関連する遺伝子(すなわち、ここに開示されたポリヌクレオチド転写産物の一つあるいはそれ以上に対応する遺伝子)の発現を調節する第一の化学物質は、それにより前記第二の化学物質よりもより高い、あるいはより望ましい、もしくはより有利な抗腫瘍性活性を持つと思われる。
【0052】
測定される遺伝子発現は通常、RNA発現を指標として用いて検査される。したがって、検出されるRNA(例えば、メッセンジャーRNA、すなわちmRNA)のレベルが大きいほど、対応する遺伝子の発現のレベルが高くなる。したがって、絶対的あるいは相対的な遺伝子発現は、前記遺伝子によりエンコードされたRNAsの相対的な発現により測定される。
【0053】
RNAは、カオトロピック剤(例えばトリゾール)を含むフェノール溶液を用いた溶解および変性、続くイソプロパノール沈殿、エタノール洗浄および水溶液中での再懸濁;あるいは溶解および変性、続くQiagen樹脂等の固体支持材上での単離および水溶液中での再構成;もしくは非フェノール水溶液中での溶解および変性、続く酵素作用によるRNAからDNA鋳型複製への転換を含む種々の方法で、サンプルから単離することができる。
【0054】
通常、本発明のプロセスの適用に先立って、ここに開示された遺伝子および遺伝子群に対する安定状態RNA発現レベルが得られる。前記発現の安定状態レベルは、ここで測定されたように潜在的な抗腫瘍性物質により影響を受ける。前記の発現の安定状態レベルは、感度が高く特異的で正確な任意の方法により容易に測定される。前記方法は、例えば、Primer Expressソフトウェア等の任意のいくつかの市販ソフトウェアパッケージを使用するように設計された遺伝子特異的プライマープローブ結合を伴うPerkin−Elmer7700配列検出システムを用いたリアルタイム定量ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、フィルター、床あるいはマイクロチップを基礎としたアレイを含む、定量のための適切な内部制御を用いた固体支持材を基礎としたハイブリダイゼーションアレイ技術、例えば化学発光、蛍光あるいは電気化学反応に基づいた検出システムを用いた固体支持材を基礎としたハイブリダイゼーションアレイを含むが、決してこれらに限定されない。
【0055】
癌状態の指標となる遺伝子発現は、特定の組織の全ての細胞に特有のものである必要はない。したがって、ここに開示された方法は、全ての細胞が完全な傾向を示しているわけではない組織内の癌状態の存在の検出に有用である。したがって、例えば、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の一つの配列に対応する選択された遺伝子は、適切なプローブDNAあるいはRNAを用いて、腫瘍あるいは悪性組織のサンプルから得られた細胞の最低60%に存在することが見出され得る。より好ましい実施例において、前記遺伝子傾向は、癌組織から得られた細胞の最低100%に存在し、対応する正常、非癌組織サンプルの最低100%に不在であることが見出される。
【0056】
遺伝子の発現は複製数に関連し、また発現の変化は、複製数を測定することにより測定することができる。前記の遺伝子複製数の変化は、特定の遺伝子配列、特に配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の遺伝子配列によりエンコードされるメッセンジャーRNAの発現の変化を測定することにより測定することができる。また本発明にしたがって、前記遺伝子は、癌発現あるいは促進遺伝子であり得る。本発明の方法の実施において、癌促進遺伝子は、直接腫瘍形成あるいは成長を起こさず、その発現産物の作用を介す等して、癌状態の進行を誘導、増強あるいはそうでなければ促進するように作用する遺伝子であり、ここで前記遺伝子は遺伝子あるいは遺伝子発現産物に対して作用することを含み、また前記遺伝子はそうでなければ、腫瘍形成およびまたは成長を減ずる効力を持つ。
【0057】
配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列に対応する遺伝子の発現は、特定細胞の癌状態の指標となり得るが、単なる前記遺伝子の存在は、単独では悪性状態を把握するに十分ではなく、したがって、前記遺伝子の発現のレベルはまた、癌状態の獲得を確定するために重要な要素であり得る。したがって、実質的に類似する配列を含むここに開示された遺伝子の発現レベルの測定はまた、培養あるいはin situでの特定細胞、細胞集団あるいは組織の癌状態の存在を診断する別の方法として、必要なものとなる。
【0058】
配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列によりエンコードされたポリペプチドと同一あるいは類似の配列を持つポリペプチド、特にそのアミノ酸配列が配列番号2、4および6のポリペプチド配列の配列であるポリペプチド等のここに開示されたポリペプチドの発現レベルはまた、遺伝子発現の指標である。
【0059】
前記にしたがって、本発明は特に、試験される細胞の癌状態を判断するための方法を意図し、ここで前記方法は、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列と実質的に同一の配列あるいはその特徴的な断片もしくは任意の前記配列の相補体を含む配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列から選択されたヌクレオチド配列の一つを含む遺伝子の前記細胞中での発現のレベルを測定し、その後前記発現を癌でないことが分かっている細胞の発現と比較し、それにより前記発現の差異が、前記の試験される細胞が癌であることを示唆することを含む。
【0060】
本発明にしたがって、その一部に配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列の一つを含む遺伝子の遺伝子発現は、好ましくは前記ヌクレオチド配列の断片であるプローブの使用により測定されるが、プローブが前記遺伝子の異なる部分から形成され得ることは理解されるべきである。前記遺伝子の発現は、ここに開示された特異的なヌクレオチド配列以外の遺伝子の一部から転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)とハイブリッド形成するヌクレオチドプローブの使用により測定され得る。
【0061】
遺伝子が癌の過程に関連すると判断される種々の異なる状況があることは注意すべきである。したがって、いくつかの遺伝子は癌遺伝子であり、癌の過程に直接関連するタンパク質をエンコードし、それにより動物中の癌の発現を促進する。加えて、その他の遺伝子は特定の細胞あるいは細胞型における癌状態を抑制するために働き、それにより動物中の癌状態形成に逆らって働き得る。その他の遺伝子は単に癌の過程あるいは状態に直接あるいは間接的に関連し、癌状態に関して補助的な能力で働き得る。前記の遺伝子の型の全ては、ここに開示された発明にしたがって測定されるものであると思われる。したがって、本発明の前記プロセスによって測定される遺伝子は、癌遺伝子であり得る。あるいは前記プロセスによって測定される遺伝子は、癌促進遺伝子であり得る。後者は、癌状態の促進あるいは癌増殖の進行の促進もしくは癌細胞の増殖の調節に関して、in vivoあるいはex vivoで癌の過程に直接あるいは間接的に影響を与える遺伝子を含む。加えて、前記プロセスにより測定される遺伝子は、癌抑制遺伝子であり得る。前記遺伝子は癌状態の発現あるいは進行を抑制するために直接あるいは間接的に働く。前記遺伝子は間接的に働き得る。ここでその発現は、癌状態の進行の開始あるいは促進に直接的に関連するその他の複数の遺伝子あるいは遺伝子発現産物の活性を変える。例えば、野生型あるいは突然変異型のポリペプチドをエンコードし、前記ポリペプチドが癌抑制遺伝子あるいはその発現産物の抑制に働く遺伝子は、それにより腫瘍増殖を間接的に促進するように働く。
【0062】
前記のとおり、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列のいずれかと同一のタンパク質をエンコードするポリヌクレオチドはまた、前記配列のパーセント同一性に関係なく、それらがどのように別に開示されあるいは限定されるかに関係なく、前記配列のいずれかあるいは全てに依存する本発明の任意の方法によって特に意図される。したがって、任意の前記配列は、本発明にしたがって開示された任意の方法の実施での使用に利用できる。前記配列はまた、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列内に存在する、ここで定義された任意の読み取り枠を含む。
【0063】
本発明にしたがって開示された遺伝子は、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列を持つポリヌクレオチドに“対応する”ため、前記遺伝子は、指示された配列を持つポリヌクレオチドによりエンコードされ、あるいは前記ポリヌクレオチドとのハイブリッド形成等により相補的なRNAと、最低90%同一、好ましくは最低95%同一、最も好ましくは最低98%同一、そして特にまったく同一の(自然発生接合変異形および対立遺伝子を含む、処理されたあるいは処理されていない)RNAをエンコードする。加えて、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列から選択された配列と最低90%同一、好ましくは前記配列と最低約95%同一、より好ましくは前記配列と最低約98%同一の配列を含み、また最も好ましくは前記配列を含む遺伝子は、本発明の全てのプロセスにより特に意図される。これらの配列のいずれかと同一のタンパク質をエンコードする配列はまた、前記配列のパーセント同一性に関係なく、それらがどのように別に開示されあるいは限定されるかに関係なく、前記配列のいずれかあるいは全てに依存する本発明の任意の方法によって特に意図される。本発明のポリヌクレオチド配列はまた、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列のいずれかの内に存在する、ここで定義された任意の読み取り枠を含む。
【0064】
ここに開示された配列は、本質的にゲノムの配列であり、したがってヒト遺伝子等の事実上の遺伝子の配列に相当し、あるいはメッセンジャーRNA(mRNA)から得られたcDNA配列であり、したがって対応するゲノム配列から得られた連続したエキソン配列に相当し、またはそれらは本発明のプロセスを実施するために完全に合成され得る。最初のRNA転写産物の最終mRNAへの変換中に起こり得るプロセシングのために、ここに開示された配列は、全ゲノム配列より短い配列に相当し得る。これらはまたリボソームおよびトランスファーRNAsから得られた配列にも相当し得る。結果として、細胞中に存在する(そしてゲノム配列に相当する)遺伝子と、cDNA配列を含むここに開示されたポリヌクレオチド転写産物は同一であるか、あるいはcDNAが全長ゲノム配列よりも短い配列を含むものであり得る。前記遺伝子とcDNA配列は、これらが同じあるいは関連したRNA配列(すなわち、接合変異形あるいはプロセシングの異なる段階でのRNAsであるという意味で関連する)をエンコードするため、依然として(ここで定義された)“対応する遺伝子”と見なされる。したがって、限定されない例として、後により短いmRNAに加工されるRNA転写産物をエンコードする遺伝子は、前記RNAsの両方をエンコードすると考えられ、したがってcDNA(例えばここに開示された配列)に(通常のワトソン−クリック相補性法則を用いて)相補的な、あるいはそうでなければ前記cDNAによってエンコードされるRNAをエンコードする。したがって、ここに開示された配列は、癌細胞(ここでは、卵巣癌)中に含まれる遺伝子に対応し、これらが前記遺伝子によってエンコードされるRNAsと同一の配列に相当するか、あるいは相補的であるため、遺伝子活性あるいは発現の測定に用いられる。前記遺伝子はまた、本発明の方法に用いられる細胞中に生じ得る種々の対立遺伝子および接合変異形を含む。例えばここで、組換え細胞は抗腫瘍物質の検定に用いられ、前記細胞はここに開示されたポリヌクレオチドを発現するように操作されたものであり、非操作癌細胞中に発現するよりも高いレベルで前記ポリヌクレオチドを発現するように操作された細胞を含み、あるいはここで前記組換え細胞は、発現するように操作された後にのみ前記ポリヌクレオチドを発現する。前記操作は遺伝子操作を含み、例えばここで、ここに開示されたポリヌクレオチドの一つあるいはそれ以上が、前記細胞のゲノム中に挿入され、あるいはベクター中に存在する。
【0065】
前記細胞、特に哺乳類細胞はまた、本発明のポリペプチドをマスキングし、それにより細胞の癌性質の除去が可能な抗体あるいはその他の物質を用いて試験するために、その表面上に、本発明のポリペプチドの一つあるいはそれ以上を発現するように操作され得る。前記操作は、細胞の遺伝子相補体がポリペプチドを発現するように操作される遺伝子操作と、細胞が、この結果を得るために、例えば化学およびまたはその他の物質を用いた直接挿入により、原形質膜中に本発明のポリペプチドを組み込むために物理的に操作される非遺伝子操作の両方を含む。
【0066】
前記にしたがって、本発明は、in vivoあるいはex vivoで、腫瘍増大の開始、抑制あるいは促進を含む癌の過程に影響を与えるポリペプチドあるいは小化学物質である抗癌物質を含む。前記癌調節物質は、遺伝子発現を減少させる効力を持つであろう。
【0067】
したがって、本発明はまた癌を処置する方法に関し、前記方法は、癌細胞を、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列の配列等のここに開示された遺伝子配列によりエンコードされた発現産物に対して活性を持つ物質と接触させることを含む。本発明はまた癌を処置するためのプロセスに関し、前記プロセスは、癌細胞を、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された遺伝子配列によりエンコードされた発現産物に対して活性を持つ物質と接触させることを含む。一つの実施例において、癌細胞はin vivoで接触させられる。他の実施例において、前記物質は、前記発現産物に対する親和性を持つ。好ましい実施例において、前記物質は、本発明のポリペプチドに特異的な、あるいは選択的な、もしくはそうでなければ反応する抗体等の、ここに開示された抗体である。好ましい実施例において、発現産物は、配列番号2、4および6のポリペプチド配列から選択されたアミノ酸配列を組み込んだポリペプチドである。
【0068】
本発明はまた、ここに開示されたポリペプチドおよび抗体の組成物の使用法に向けられる。前記使用法は癌に苦しむ動物における癌を処置するためのプロセスを含み、前記プロセスは、一つあるいはそれ以上のここに開示されたポリペプチドの免疫原性組成物の一定量を前記動物に投与することを含み、ここで前記一定量は、本発明のポリペプチド、好ましくは配列番号2、4および6のポリペプチド配列の配列を組込むポリペプチドに特異的な細胞傷害性Tリンパ球の産生を引き出すのに十分な量である。好ましい実施例において、処置される動物は、ヒト患者である。
【0069】
癌細胞中での発現あるいは発現の増加に起因した、ここに開示された遺伝子によってエンコードされたタンパク質は、例えば細胞傷害性物質に結合する抗体等の親和性構造体を用いる“標的治療”用の非常に有益な治療用標的に相当する。前記方法論において、前記細胞表面分子に対する内因性リガンドあるいは結合相手について何も知っている必要がないことは、有利な点である。むしろ、細胞死あるいは細胞周期の遮断を引き起こすことができる因子のいくつかと結合する(人口ペプチド、代替リガンドその他同種のものを含むことができる)細胞表面分子を特異的に認識することができる抗体あるいは相当分子は、これらのタンパク質に対して治療上の期待を与える。したがって前記方法は、細胞内タンパク質に対するいわゆる自殺“弾丸”の使用を含む。例えば、モノクローナル抗体は、この分野においてよく知られた方法、例えばKohlerおよびMilsteinの方法(参照:Nature,256:495(1975))により容易に産生できる。
【0070】
分子生物学および組換え技術の方法の出現により、現在では組換え手段によって抗体分子を産生し、それにより抗体のポリペプチド構造中に見られる特異的なアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を生み出すことが可能である。前記抗体は、前記抗体のポリペプチド鎖をエンコードする遺伝子配列をクローニングすることにより産生することができ、あるいは特異的エピトープおよび抗原決定基に対する親和性を持つ活性化四量体(H)構造を形成するための、合成された鎖のin vitroでの組立を伴う、前記ポリペプチド鎖の直接合成により産生することができる。これは、異なる種および源由来の中和抗体に特有の配列を持つ抗体の迅速な産生を可能にする。
【0071】
抗体の起源に関係なく、あるいはどのように抗体が組換えにより構成され、もしくは生物反応器中で、研究室あるいは企業規模の大細胞培養を用い、ウシ、ヤギおよびヒツジ等の形質転換動物を用いて、in vitroあるいはin vivoで抗体が合成され、もしくはプロセスのどの段階にも生体を用いない直接化学合成により抗体が合成されるかに関係なく、全ての抗体は類似の全体3次元構造を持つ。この構造はしばしばHのように提示され、抗体が通常2つの軽(L)アミノ酸鎖と2つの重(H)アミノ酸鎖より成ることを示す。両鎖は構造上相補的な抗原標的と相互作用できる領域を持つ。標的と相互作用する前記領域は、“可変”あるいは“V”領域のように示され、抗原特異性の異なる抗体とアミノ酸配列が異なることを特徴とする。
【0072】
HあるいはL鎖の可変領域は、抗原標的と特異的に結合することができるアミノ酸配列を包含する。これらの配列内には、特異性の異なる抗体間での極端な可変性のために“超可変”と呼ばれる短い配列がある。前記超可変領域はまた、“相補性決定領域”あるいは“CDR”領域のように示される。これらのCDR領域は、特定の抗原決定構造に対する抗体の基本的な特異性の原因となる。
【0073】
CDRsは可変領域内のアミノ酸の不連続の配列であるが、種に関係なく、可変重鎖および軽鎖領域内のこれらの重要なアミノ酸配列の配置位置は、可変鎖のアミノ酸配列内の同様の位置をとっている。全ての抗体の可変重鎖および軽鎖は、軽(L)鎖および重(H)鎖それぞれについて、(L1、L2、L3、H1、H2、H3と称される)それぞれがその他のものと不連続である、それぞれ3つのCDR領域を持つ。対応するCDR領域はKabat et al,J.Biol.Chem.252:6609−6616(1977)により開示されている。
【0074】
全ての哺乳類種において、抗体ポリペプチドは、定常(すなわち高度に保存されている)および可変領域を含有し、後者の内部に、CDRsと、CDRs外の重鎖あるいは軽鎖の可変領域内のアミノ酸配列で構成されているいわゆる“枠組み構造領域”がある。
【0075】
本発明にしたがって開示された抗体はまた完全に合成することができる。ここで抗体のポリペプチド鎖は合成され、レセプターとしてここに開示されたポリペプチドと結合するように最適化され得る。前記抗体は、キメラあるいはヒト化抗体であり得る。また前記抗体は完全四量体構造であるかあるいは二量体であり、単重鎖および単軽鎖のみから成り得る。前記抗体はまた、レセプターとしてここに開示された任意のポリペプチドと反応し、結合することができる、FabおよびF(ab)′断片等の断片を含み得る。
【0076】
一見地において、本発明は、ここに開示されたアミノ酸配列を持つポリペプチド、好ましくは配列番号2、4および6のポリペプチド配列の一つのアミノ酸配列を持つポリペプチドと反応する、特にここで前記ポリペプチドに特異的である、ここに開示された免疫グロブリンあるいは抗体に関する。前記抗体は通常組成物、特に薬学的組成物の形態であり得る。前記抗体は、癌細胞の表面部位に結合し、それにより固定することができる点で、それのみで治療上の価値を持ち得る。ここで前記部位はいくつかの型の機能を持つ(すなわちここで、これらは表面酵素、あるいはチャネル構造、もしくはそうでなければ栄養素やその他の細胞に不可欠な物質の輸送を能動的あるいは受動的に促進する構造である)。前記栄養素は、細胞の成長と複製を促進するために働き、前記部位に結合しそれにより前記活性を妨げる分子は、前記結合の結果が前記細胞からの栄養源の除去とそれにより成長と複製を妨げる点で治療上の効力を持つことが分かる。同様に、前記結合は細胞の機能範囲から不可欠な酵素活性を除去するために働き、それにより細胞の生存能力およびまたは増殖あるいは転移する能力を妨げる。加えて、前記表面部位に結合することにより、抗体は、影響を受ける細胞あるいは細胞群に致命的であることを示すことなく、細胞が、成長、複製および転移を促進し得るサイトカイン等の環境要因と反応することを防ぎ、それによりさらに前記細胞の癌状態を減少させ、患者の癌状態を改善するように働き得る。
【0077】
本発明の方法はまた、癌細胞が、ここに開示されたポリヌクレオチド配列に対応する遺伝子の発現産物に対する親和性を持つ分子構造全体の一部を含む、あるいはその一部である物質とin vivoおよびex vivoで接触させられるプロセスを含み、好ましくはここで、発現産物は細胞表面構造であり、最も好ましくは配列番号2、4および6のポリペプチド配列のアミノ酸配列を含むもの等のここに開示されたポリペプチドである。一つの実施例において、前記発現産物に対する親和性を持つ前記部位は抗体であり、特にここで前記発現産物はポリペプチドあるいはオリゴペプチドであり、あるいはオリゴペプチド部位を含み、もしくはポリペプチドを含む。
【0078】
他の見地において、本発明はまた、ここに開示されたポリペプチド、好ましくは配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと反応する抗体に関する。前記抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換えあるいは合成されたものであり得る。一つの実施例において、前記抗体は細胞傷害性物質、例えばアポトーシス因子と、共有結合あるいは非共有結合で結合する。したがって、抗体が、ここに開示されたポリペプチドと同一でないにせよ相同なポリペプチドを発現する細胞等の癌細胞に、結合した治療物質を誘導するための標的ベクターとして働くことは、意図されている。
【0079】
ここで、細胞傷害性物質はポリペプチドであり、前記ポリペプチドは癌細胞上の表面標的に特異的な抗体に直接結合し得る。例えば、前記ポリペプチドは抗体のアミノ酸鎖が伸張したものに相当する。別の実施例において、前記分子は、長さが5から10残基のアミノ酸配列等の、長あるいは短連続のリンカー配列を介して共有結合し得る。ここで細胞傷害性物質は、小有機化合物あるいは一種のアポトーシス因子等の小有機分子であり、これは抗体分子に共有結合し得るか、あるいは疎水結合や静電結合を含むその他の非共有結合によって付着し得る。前記結合、特に共有結合を形成する方法は、この分野における通常の知識を有する者によく知られている。
【0080】
ここに開示された抗体はまた、リポソーム等の大きい構造体に対する標的ベクターとして働き得る。一つの実施例において、抗体は、リシン等の細胞傷害性物質の貯蔵所として働く膜様構造、好ましくはリポソームあるいは場合によっては一種の細胞小器官の一部であるか、あるいは結合するか、もしくは付着する。その結果、抗体は前記リポソームを動物中の癌組織に誘導するように働き、するとすぐリポソームは、充実性腫瘍あるいはその他の型の腫瘍の局所的な処置のための細胞傷害性物質源を提供する。
【0081】
本発明はさらに、ここに開示されたポリペプチドを含む免疫原性組成物およびこれらのポリペプチドに特異的な抗体を用いて形成された組成物を含む。
【0082】
処方についてこの分野においてよく知られた方法は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,(19th ed.)Ed.A.R. Gennaro,1995,Mack Publishing Company,Easton,PAに見られる。非経口投与の剤形は、例えば賦形剤、滅菌水、あるいは生理食塩水、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、植物性油、もしくは水素化ナフタレンを含み得る。生体適合性、生体分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド共重合体、あるいはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体は、化合物の放出の調節に用いることができる。本発明の作用薬のためのその他の潜在的に有用な非経口送出システムは、エチレンビニルアセテート共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み式注入システムおよびリポソームを含む。吸入用の剤形は、賦形剤あるいは例えばラクトースを含み得るか、あるいは、例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含む水溶液であり得るか、もしくは点鼻薬の形状もしくはゲルとしての投与のための油性溶液であり得る。ここで、投与される治療物質は免疫複合体であり、これらは水系溶媒中でやや不安定な化学結合を含む場合があり、したがって、投与前に、凍結乾燥粉末の形状等のより安定した環境中に格納されなければならないことは、注意すべきである。
【0083】
前記物質は、親和性部位および抗癌活性部位の両方を含む単分子構造であり得る。ここで前記部位は、分離されたときに前記活性を保有する別個の分子あるいは分子構造から得られ、またここで前記物質は前記部位を一つのより大きい分子構造中に組み込むことにより形成され、例えばここで前記部位は付加体の形態中に組み込まれる。前記抗癌部位および親和性部位は、例えば単ポリペプチドあるいはポリペプチド様構造の形状のように共有結合し、あるいは例えば疎水的相互作用あるいは静電的相互作用によるように非共有結合し得る。前記構造は、化学分野においてよく知られた方法によって形成された。あるいは、抗癌部位および親和性部位は、同じ化学構造の一部として、一つ以上の活性を示す単一の分子の別個のドメインから形成され得る。ここで活性の一つは癌細胞あるいは腫瘍形成もしくは腫瘍増殖に対するものであり、その他の活性は癌の過程あるいは癌状態に関連する遺伝子の発現により産生された発現産物に対する親和性である。
【0084】
本発明の一つの実施例において、タンパク質あるいはその他のポリペプチド等の化学物質は、癌の過程に関連する遺伝子、好ましくは本発明にしたがってここに開示された遺伝子、最も好ましくはここに開示されたポリペプチド配列によりエンコードされたポリペプチドあるいはタンパク質等の、癌細胞の発現産物に対する親和性を持つ、抗体のような物質と結合する。したがって、ここで前記発現産物の存在は腫瘍発現およびまたは増殖に不可欠であり、前記物質の前記発現産物への結合は、前記腫瘍促進活性を打ち消す効果を持つ。一つの実施例において前記物質は、細胞自殺を引き起こし、それにより癌細胞を殺し、腫瘍増殖を中止させるアポトーシス誘導因子である。
【0085】
ここに開示された遺伝子と同様の方法で調節され、したがってその発現が化合物に応じた調製において変化する癌細胞内のその他の遺伝子は、通常の代謝経路、情報伝達系、生理的あるいは機能的経路内に位置する遺伝子に相当し、したがって前記の共通して調節される遺伝子のグループ(本発明にしたがって開示された遺伝子あるいは類似配列を含むグループ)を分析し、同定することにより、(a)特定の経路に対して既知遺伝子および新規遺伝子を指定し、(b)その機能が既に特定されあるいは開示された遺伝子を伴う経路に分類された新規遺伝子の特異的な機能および機能的役割を同定することができる。例えば、10個の遺伝子のグループを同定し、その内の最低一つはここに開示された遺伝子であり、調製された方法で発現を変化し、ここに開示された配列によりエンコードされたポリペプチド等の一つの機能が既知である場合には、その後それによりその他の遺伝子は同様の機能あるいは経路で関連付けられ、したがって癌発現あるいは癌促進プロセスにおいて役割を果たし得る。同様に、遺伝子が正常細胞中で発見されるが癌細胞中で発見されないか、あるいは癌細胞に対し正常細胞中により高いレベルで発現する場合には、その結果、癌あるいはその他の疾患との関係に関しては同様の結論が出され得る。したがって、本発明にしたがって開示されたプロセスは、遺伝子に機能を与える新規方法、すなわち機能的ゲノム科学の新規方法、および特定の細胞経路に対する潜在的な治療効果を持つ化合物を同定するための方法を速やかに提供する。癌以外の種々の疾患が、影響を受ける特定の細胞経路に関連することが知られているあるいは示されている場合に、前記化合物は、前記疾患に対して治療上の関連性を持ち得る。
【0086】
ここに開示されたポリペプチド、好ましくは配列番号2、4および6のポリペプチド配列のポリペプチドはまた、ワクチンとしての使用を示し、ここでポリペプチドは癌細胞上に存在する表面タンパク質に相当し、前記ポリペプチドは、動物、特にヒト中の癌細胞に特異的であり、前記癌細胞を溶解するように働く細胞傷害性Tリンパ球(CTLs)を活性化する目的で前記動物に投与され得る。ワクチンとして用いられる場合に、前記ポリペプチドは薬学的組成物の状態で存在する。本発明はまた、配列番号2、4および6のポリペプチド配列のポリペプチドと同じあるいは同様の免疫原性特性を持つポリペプチドを用い、それにより癌を発現する危険性のある動物あるいは癌に苦しむ動物等に投与した後、同じあるいは類似した免疫原性応答を引き出すことができる。したがって、本発明にしたがって開示されたポリペプチドは、通常、免疫原性組成物としての使用を示す。
【0087】
ここに開示されたポリヌクレオチドに対応する遺伝子の発現は、正常組織における場合には、卵巣癌の発現しやすい傾向を示し得る。エンコードされたポリペプチドは、細胞溶解性抗体、あるいは、細胞傷害性もしくは細胞溶解性物質と結合する抗体等の治療分子に対する潜在的に有用な細胞表面標的を提示し得る。
【0088】
本発明は、ここに開示された遺伝子に対応するポリヌクレオチドによりエンコードされたポリペプチドに対する抗体の使用を特に意図し、そのため前記抗体は、一つあるいはそれ以上の細胞傷害性物質と結合し、それにより抗体は、充実性腫瘍等の癌活性の領域に、結合した免疫毒素を誘導する働きをする。多くの既知の細胞傷害性物質について、選択性の欠如は、悪性腫瘍の処置における治療薬としてのそれらの使用に対して欠点を提示していた。例えば、毒性サブユニット(A−鎖)に結合した結合サブユニット(すなわちB−鎖)より成る二鎖毒素のクラスは、極度の細胞傷害性を持つ。したがって、トウゴマの実から単離されたタンパク質であるリシンのような物質は、細胞中の不活化リボソームにより、非常に低い濃度(10−11M未満でも)で前記細胞を殺す(例えば、Lord et al.,Ricin:structure,mode of action、and some current applications.Faseb J,8:201−208(1994)、およびBlattler et al.,Realizing the full potential of immunotoxins.Cancer Cells,1:50−55(1989)参照)。リシンA−鎖に機能的に類似する、タンパク質毒素の単離されたA−鎖は、(10−7から10−6Mの濃度範囲での)無傷細胞に対して弱い細胞傷害性のみを持つが、これらは前記細胞内では非常に強力な細胞傷害性物質である。したがって、ジフテリア毒素のA−サブユニットの単一分子は、内部にあれば細胞を殺すことができる(参照:Yamaizumi et al.,One molecule of diphtheria toxin fragment A introduced into a cell can kill the cell. Cell,15:245−250,1978)。
【0089】
本発明は、細胞障害性物質を前記細胞に誘導するために癌細胞上にある抗原に特異的な抗体を用いることで、この選択性の問題を解決する。加えて、抗体が腫瘍に到達するまでは無毒性であり、また細胞障害性物質が抗体に結合しているため、抗体の使用は毒性を減少させ、非標的組織に損傷を引き起こす可能性を減ずることができる。
【0090】
加えて、前記抗体の単独使用は、抗体依存性細胞障害応答(ADCC)と補体仲介性細胞溶解機構を介した腫瘍に対する治療上の効果を提供することができる。
【0091】
多くの組換え免疫毒素(例えば、切断細菌毒素と融合された癌特異的抗体のFv領域より成るもの)がよく知られている(例えば、Smyth et al.,Specific targeting of chlorambucil to tumors with the use of monoclonal antibodies,J.Natl.Cancer Inst.,76(3):503−510(1986);Cho et al.,Single−chain Fv/folate conjugates mediate efficient lysis of folate−receptor−positive tumor cells,Bioconjug.Chem.,8(3):338−346(1997))。文献に示されているように、これらは、例えば毒性部分としてシュードモナス外毒素の切断型を含み得るが、毒素は、それ単独では正常ヒト細胞に結合しないが、他の全ての細胞障害の機能を保持する方法で調節される。ここで、組換え抗体断片は、調節された毒素を、例えばタンパク質合成の直接阻害により、あるいは同時に起こるアポトーシスの誘導により殺される癌細胞に誘導する。癌抗原を持たないために抗体断片に認識されない細胞は影響を受けない。培養癌細胞を用いたin vitro検定および動物腫瘍モデルにおいて、多くの組換え免疫毒素で良い活性と特異性が観察された。進行中の臨床試験から、期待できる臨床前データと試験的癌治療における好成績との相関例が得られている(例えば、Brinkmann U.,Recombinant antibody fragments and immunotoxin fusions for cancer therapy,In Vivo(2000)14:21−27参照)。
【0092】
ヒトへの免疫複合体の使用の安全性は確立されたが、in vivoでの治療上の結果はあまりよくない。ヒトへのマウスMAbsの臨床使用は、ヒト宿主による異種間抗グロブリン免疫応答の発現により制限されるため、遺伝子組換えされたキメラヒト−マウスMAbsが、マウスFc領域をヒト定常領域と置き換えることにより開発された。他の場合において、マウス抗体は、げっ歯類抗体の可変ドメインの枠組み構造領域をヒトのものと置き換えることにより“ヒト化”された。前記ヒト化および遺伝子組換え抗体はさらに、設計によって決定され、その特徴は自然界には見られない特異性とエフェクター機能を持つように構造を決めることができる。異なる結合末端を持ち、一つ以上の抗原部位が結合できる二重特異性抗体の開発は、癌細胞を標的とすることに有用であることが分かっている。したがって、前記抗体特異性は、細菌あるいは植物毒素、放射性核種あるいは細胞毒性薬およびその他の物質等の種々の物質への化学結合により改良された(例えば、Bodey,B.et al.,Genetically engineered monoclonal antibodies for direct anti−neoplastic treatment and cancer cell specific delivery of chemotherapeutic agents.Curr Pharm Des(2000)Feb;6(3):261−76参照)。また、Garnett,M.C.,Targeted drug conjugates:principles and progress.Adv.Drug Deliv.Rev.(2001 Dec 17)53(2):171−216;Brinkmann et al.,Recombinant immunotoxins for cancer therapy.Expert Opin Biol Ther.(2001)1(4):693−702参照。
【0093】
細胞障害性物質のうちで、本発明にしたがった免疫複合体として使用するために特に意図されているものは、カリーチアマイシンであり、カリーチアマイシンはMicromonospora echinospora ssp. Calichensisから単離された高毒性エネジイン抗生物質であり、二本鎖切断と細胞死を引き起こすためにDNAの副溝に結合する(参照:Lee et.al.,Calicheamicins,a novel family of antitumor antiboitics.1.Chemistry and partial structure of calichemicin g.J Am Chem Soc,109:3464−3466(1987);Zein et al.,Calicheamicin gamma 1l:an antitumor antibiotic that cleaves double−stranded DNA site specifically,Science,240:1198−1201(1988))。カリーチアマイシンの有用な誘導体は、マイロターグ(mylotarg)と138H11−Camθを含む。マイロターグはヒト化抗CD33抗体(急性骨髄性白血病を患う患者の大部分の白血病細胞中に見られるCD33)とN−アセチル ガンマ カリーチアマイシン ジメチル ヒドラジドとの免疫複合体であり、その後者は、本発明の免疫複合体を形成するために、(抗CD33の代用であるが、これもまたここに開示されているような産生の間にヒト枠組み構造領域を抗体中に置換することによりヒト化することができる)本発明の抗体と容易に結合する(参照:Hamann et al.Gemtuzumab Ozogamicin,A Potent and Selective Anti−CD33 Antibody−Calicheamicin Conjugate for Treatment of Acute Myeloid Leukemia,Bioconjug.Chem.13,47−58(2002))。138H11−Camθを伴う使用のために、138H11は、ジスルフィド結合を介してシータカリーチアマイシンを結合する抗γ−グルタミル転移酵素抗体であり、培養された腎細胞癌細胞に対して、in vitroで有用であることが分かっている(参照:Knoll et al.,Targeted therapy of experimental renal cell carcinoma with a novel conjugate of monoclonal antibody 138H11 and calicheamicin θ,Cancer Res,60:6089−6094(2000))。同じ結合は、この細胞障害性物質を本発明の抗体に結合させ、それにより卵巣癌細胞に対する標的構造を形成するために利用することができる。
【0094】
同様に、本発明の免疫複合体の形成に有益なものはDC1であり、DC1は、DNAの副溝への結合と、それに続くアデニン塩基のアルキル化により細胞を殺す、アドゼレシンのジスルフィド含有類似体である。アドゼレシンは、Streptomyces zelensisの微生物発酵から単離された抗腫瘍性抗生物質であるCC−1065の構造類似体であり、シスプラチン(cis−platin)やドキソルビシン(doxorubicin)等の他のDNA結合物質よりも、培養細胞系に対する毒性が約1000倍高い。この物質は、アドゼレシンのジスルフィド結合を介して容易に抗体に結合する(参照:Chari et al.,Enhancement of the selectivity and antitumor efficacy of a CC−1065 analogue through immunoconjugate formation,Cancer Res,55:4079−4084(1995))。
【0095】
ヒトの臨床試験においてほとんど価値がないことが分かっているshrub Maytenus serrataから単離された細胞障害性の高い微小管阻害剤であるマイタンシン(Maytansine)は、抗体への結合を促進するためのジスルフィド結合を含むDM1と示される誘導体形状においてずっと効果的であり、最大で10倍高い細胞障害性を持つ(参照:Chari et al.,Immunoconjugate containing novel maytansinoids:promising anticancer drugs,Cancer Res,52:127−131(1992))。これらの同じin vitro研究は、最大で四つのDM1分子が結合親和性を損なうことなく、単一の免疫グロブリンに結合することができたことを示した。前記複合体は、neu/HER2/erbB−2抗原等の乳癌抗原に対して用いられた(参照:Goldmacher et al.,Immunogen,Inc.,(2002)in press;またLiu,C.et al.,Eradication of large colon tumor xenografts by targeted delivery of maytansinoids,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93,8618−8623(1996)参照)。例えば、Liu et al.(1996)は、ファルマシア(Pharmacia)から市販されている、メイタンシノイド細胞毒素DM1とマウスIgG1免疫グロブリンであるC242抗体との免疫複合体の構造を開示しており、前記免疫複合体はヒト結腸直腸癌により可変的に発現されるムチン様糖タンパク質に対する親和性を持つ。後者の免疫複合体はChari et al.,Cancer Res.,52:127−131(1992)にしたがって調製され、培養大腸癌細胞に対して細胞障害性が高いこと、および最大耐量をはるかに下回る投与量でCOLO205ヒト大腸腫瘍異種移植変を皮下に移植したマウスにおいて、in vivoで抗腫瘍性効果を示すことが分かった。
【0096】
加えて、さまざまなタンパク質毒素(細胞障害性タンパク質)があり、それらは、タンパク質合成を阻害するもの、例えばリシン、アブリン、ゲロニン等の植物由来のリボソーム不活化タンパク質、多数のその他のもの、およびシュードモナス外毒素やジフテリア毒素等の細菌毒素等の多数の異なる種類を含む。
【0097】
別の有用な種類は、タキソール、タキソティアおよびタキソイドを含むものである。具体的な例として、パクリタキセル(タキソール)、その類似体のドセタキセル(タキソティア)、およびそれらの誘導体を含む。最初の二つは多数の腫瘍の治療に用いられる臨床薬であるが、タキソイドは、チューブリンの脱重合を阻害することにより細胞死を誘導するように作用する。前記物質は、結合特異性に不利な影響を与えることなく、ジスルフィド結合を介して抗体に容易に結合する。
【0098】
一つの例において、切断されたシュードモナス外毒素は抗CD22可変断片に融合し、化学療法耐性有毛細胞白血病を患う患者を処置するために成功裡に用いられた(参照:Kreitman et al.,Efficacy of the anti−CD22 recombinant immunotoxin BL22 in chemotherapy−resistant hairy−cell leukemia,N Engl J Med,345:241−247(2001))。逆に、本発明の癌関連ペプチドは、同一のあるいは類似の細胞傷害性複合体を用いて、充実性腫瘍、好ましくは卵巣組織の悪性腫瘍のものを標的とするために、適切な抗原に対する組換えあるいはその他の抗体を調製する機会を提供する。したがって、これまでに用いられた免疫複合体の多くが癌に関連する一般的な抗原部位に対する抗体を用いて形成されたのに対し、ここに開示されたペプチドを用いて形成された抗体はより特異的であり、また特定の組織あるいは器官に抗体−細胞傷害性物質を誘導し、したがってより一層毒性およびその他の望ましくない副作用を減ずる。
【0099】
加えて、ここに開示された癌関連抗原に対して調製された抗体を用いて形成された免疫複合体は、任意の型の化学結合によって形成することができる。したがって、免疫グロブリンを伴う選択された細胞傷害性物質は、本発明の免疫複合体を形成するために、静電結合を含む任意の型の化学結合、共有あるいは非共有結合により結合することができる。
【0100】
免疫複合体として用いられた場合に、本発明の抗腫瘍物質は、最初、ヒト患者等の動物に投与された時には(主に免疫複合体の安定性に起因して)比較的無毒性であるが、結合した免疫グロブリンにより癌細胞に誘導され、その後十分な毒性を示すプロドラッグ(pro−drug)の類に相当する。腫瘍関連あるいは結合抗原、好ましくはここに提示されたものは、前記抗原に特異的な(モノクローナル、組換え等の)抗体の標的として働く。最終的な結果は、免疫複合体の免疫グロブリン部位の結合後の細胞内側への活性化細胞傷害性物質の放出である。
【0101】
引用文献は、細胞傷害性物質の免疫グロブリンへの化学結合について多くの有用な方法を開示しており、ここに記された前記引用文献の全ての開示は、全体で引用例としてここに組み込まれている。その他としてGhetie et al.,Immunotoxins in the therapy of cancer:from bench to clinic,Pharmacol Ther,63:209−234(1994),Pietersz et al.The use of monoclonal antibody immunoconjugates in cancer therapy,Adv Exp Med Biol,353:169−179(1994),およびPietersz,G.A.The linkage of cytotoxic drugs to monoclonal antibodies for the treatment of cancer,Bioconjug Chem,1:89−95(1990)参照。
【0102】
したがって、本発明は、いくつかのin vitro毒性を持ち、抗体への結合に利用できる化学基を所有することが既に知られている多くの異なる細胞傷害性物質への結合のための抗体の生成に非常に有用な癌関連抗原を提供する。
【0103】
本発明はまた、前記物質(すなわち、ここに開示された検定方法にしたがって同定された治療物質)を同定するための開示されたプロセスの一つにしたがって物質を同定することを含むある産物を生み出すための方法を含むプロセスに関し、ここで前記産物は、前記同定プロセスあるいは検定の結果として前記物質に関して集められた情報であり、またここで前記情報は、前記物質の化学的特徴およびまたは構造およびまたは性質を伝えるのに十分なものである。例えば本発明は特に、本発明の検定の実施者が望ましい酵素調節活性を持つ化合物を選別するために前記検定を用い、化合物を同定し、その後、本発明にしたがって前記物質を複製し、治療あるいは研究目的でそれを投与するために情報を利用する他の実施者に情報(すなわち構造、投与量その他に関する情報)を伝達する状況を意図する。例えば、検定の実施者(実施者1)は化合物の構造あるいは特性を知らずに(例えばここで多数のコード番号が用いられ、最初の実施者はただ前記のコード番号を付されたサンプルを与えられる)多数の試験化合物を選別し、選別プロセスの実施、一つあるいはそれ以上の本発明の分析プロセスの使用の後に、その後第2の実施者(実施者2)に口頭あるいは書面もしくは同様の方法で、特定の調節活性を持つ化合物を同定するのに十分な情報(例えば対応する結果を伴うコード番号)を伝えることができる。この実施者1から実施者2への情報の伝達は、本発明によって特に意図される。
【0104】
前記の一つの実施例において、本発明は、化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生み出すための方法に関し、前記方法は、
(a)化合物を、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドに対応する遺伝子を含む細胞と、前記遺伝子の発現を促進する条件下で接触させ、
(b)前記化合物が存在しない場合と比較した前記遺伝子の発現の差異を検出し、
(c)遺伝子調節活性を示す、配列番号1、3および5に対応する測定された遺伝子の発現の減少に基づく、前記化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生み出すことを含む。
【0105】
ここに開示された本発明の方法の実施において、免疫複合体を形成するためであろうと、ここに開示された遺伝子およびポリペプチドを用いて他の抗腫瘍物質を選別するためであろうと、特定の緩衝液、培地、試薬、細胞、培養条件等についての言及は、限定することを意図するものではなく、この分野における通常の知識を有する者が、議論が提起された特定の状況において、関連するあるいは価値があると認識する全ての関連物質を含むように読まれるべきであることは注意すべきである。例えば、一つの緩衝システムあるいは培養培地を他のものに換え、同一でなくとも同様の結果を得ることがしばしば可能である。この分野における通常の知識を有する者は、必要以上の試験がなくとも、前記置換を、ここに開示された方法および手段の使用において最適にその目的を果たすようにすることができるように、前記システムおよび方法論の十分な知識を持つ。
【0106】
本発明はここで、以下の限定されない実施例を通してさらに開示される。実施例の開示の適用において、本発明にしたがって開示された方法のその他のおよび異なる実施例は、関連する分野における通常の知識を有する者に示されるであろうことは、はっきりと意図されるべきである。以下の実施例は、潜在的な抗腫瘍物質が一つあるいはそれ以上のここに開示された遺伝子を用いて同定され得る方法を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0107】
(実施例)
抗腫瘍物質の遺伝子阻害活性の測定
卵巣腫瘍細胞を、2mMのL−グルタミン(90%)および10%ウシ胎仔血清を添加したLeibovitz′s L−15培地中で、10個細胞/cmの濃度まで増殖させる。細胞は、37℃で2から5分間、0.25%トリプシン、0.02%EDTAでの処理後回収される。トリプシン処理された細胞はその後30mlの増殖培地で希釈され、96ウェルプレート中にウェルあたり50,000個の細胞濃度(100μl/ウェル)で播種される。次の日、細胞は、合成緩衝液のみあるいは試験される化学物質を含有する合成緩衝液で、24時間処理される。その後培地は除去され、細胞は溶解され、RNAはQiagenから購入したRNAeasy試薬およびプロトコルを用いて回収される。RNAは定量され、1μl中10ngのサンプルは、1×PCR緩衝液、RNAsin、逆転写酵素、ヌクレオシド三リン酸、amplitaq gold、tween20、グリセロール、ウシ血清アルブミン(BSA)および特異的PCRプライマーと参照遺伝子(18S RNA)および試験遺伝子(遺伝子X)に対するプローブを含有する24μlのTaqman反応混合に添加される。その後逆転写は、48℃で30分間実施される。その後サンプルにPerlin Elmer 7700配列検出器が用いられ、サンプルは95℃で10分間熱変性される。増幅は、60℃で15秒間のアニーリング、続く72℃で60秒間の伸長および95℃で30秒間の変性という設定を用いて、40サイクルまで実施される。その後データファイルは保存され、データは適切なベースラインウィンドウズ(登録商標)と閾値を用いて分析される。
【0108】
ここに開示された実施例について、抗腫瘍物質は通常、約10μMの濃度の培養倍地中に存在するが、前記濃度の数値は、前記物質が特に有効であるために重要なより低い濃度で、1から100μMの全範囲にわたって変えることができ、より低い濃度は正確な測定をするために必要である。
【0109】
その後標的と参照遺伝子間の量的差異は算出され、相対発現値は用いられたサンプルの全てについて測定される。このようにして、癌特異的遺伝子の活性を効果的にまた選択的に減少させる化学療法薬の能力は容易に確認される。他の化学物質に対して一つの化学物質によって調節された、癌特異的遺伝子の発現全体はまた、測定される。遺伝子活性を減少させることにおいて最も大きな効力を持つ化学物質は、したがって最も抗腫瘍性を持つと同定される。
【0110】
参照
Walter A.Blattler and Ravi Chari:Drugs to enhance the therapeutic potency of anti−cancer antibodies:antibody−drug conjugates as tumor−activated prodrugs.In Anticancer Agents−Frontiers in Cancer Chemotherapy(Iwao Ojima,Gregory D.Vite,Karl−Heinz Altmann,Eds.),American Chemical Society,pp.317−338(2001).

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【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌関連遺伝子の活性を調節する物質を同定するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、
(a)化合物を、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドに対応する遺伝子を含む細胞と、前記遺伝子の発現を促進する条件下で接触させ、
(b)前記化合物が存在しない場合と比較した前記遺伝子の発現の差異を検出し、
それにより癌関連遺伝子の活性を調節する物質を同定することを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記遺伝子が、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された配列を持つことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記細胞が癌細胞であり、前記発現の差異が発現の減少であることを特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記癌細胞が、卵巣癌細胞であることを特徴とする請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
抗腫瘍物質を同定するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、
腫瘍性活性を示す細胞を、請求項1ないし4のいずれか一つに記載のプロセスを用いて癌関連遺伝子調節因子であると最初に同定された化合物と接触させ、
前記接触がない場合と比較した前記接触後の前記腫瘍性活性の減少を検出することを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項6】
前記腫瘍性活性が、促進された細胞の複製であることを特徴とする請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記腫瘍性活性の減少が、細胞の死に起因することを特徴とする請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
抗腫瘍物質を同定するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、
癌状態を示す動物に、請求項1に記載のプロセスにしたがって最初に同定された物質の有効量を投与し、
前記癌状態の減少を検出することを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項9】
細胞の癌状態を判断するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドに対応する遺伝子の前記細胞中での発現レベルの増加を測定することを含み、ここで既知の非癌細胞と比較して増加した発現が癌状態あるいは潜在的な癌状態を示唆することを特徴とするプロセス。
【請求項10】
前記増加した発現が、複製数の増加に起因することを特徴とする請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
配列番号2、4および6のポリペプチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、ここで前記アミノ酸配列と配列番号2、4および6のポリペプチド配列の配列との間の差異がもっぱら保存されたアミノ酸置換に起因し、またここで前記単離されたポリペプチドが最低一つの免疫原性断片を含むことを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項12】
配列番号2、4および6のポリペプチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチド。
【請求項13】
配列番号2、4および6のポリペプチド配列より成るグループから選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと反応する抗体。
【請求項14】
前記抗体が組換え抗体であることを特徴とする請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
前記抗体が合成抗体であることを特徴とする請求項13に記載の抗体。
【請求項16】
前記抗体がヒト化抗体であることを特徴とする請求項13に記載の抗体。
【請求項17】
請求項13に記載の抗体と細胞傷害性物質より成る免疫複合体。
【請求項18】
前記細胞傷害性物質が、カリーチアマイシン、メイタンシノイド、アドゼレシン、細胞傷害性タンパク質、タキソール、タキソティア、タキソイドおよびDC1より成るグループから選択されたものであることを特徴とする請求項17に記載の免疫複合体。
【請求項19】
前記カリーチアマイシンが、カリーチアマイシンγ、N−アセチル ガンマ カリーチアマイシン ジメチル ヒドラジドあるいはカリーチアマイシンθであることを特徴とする請求項18に記載の免疫複合体。
【請求項20】
前記メイタンシノイドが、DM1であることを特徴とする請求項18に記載の免疫複合体。
【請求項21】
前記細胞傷害性タンパク質が、リシン、アブリン、ゲロニン、シュードモナス外毒素あるいはジフテリア毒素であることを特徴とする請求項18に記載の免疫複合体。
【請求項22】
前記タキソールが、パクリタキセルであることを特徴とする請求項18に記載の免疫複合体。
【請求項23】
前記タキソティアが、ドセタキセルであることを特徴とする請求項18に記載の免疫複合体。
【請求項24】
癌を処置するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、癌細胞を、in vivoで、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された遺伝子配列によりエンコードされた発現産物に対して活性を持つ物質と接触させることを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項25】
前記物質が、請求項13ないし16のいずれか一つに記載の抗体であることを特徴とする請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記物質が、請求項17に記載の免疫複合体であることを特徴とする請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
請求項11に記載のポリペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項28】
請求項12に記載のポリペプチドを含む免疫原性組成物。
【請求項29】
前記癌が、卵巣癌であることを特徴とする請求項24に記載のプロセス。
【請求項30】
癌に苦しむ動物における癌を処置するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、前記動物に、請求項11に記載のポリペプチドに特異的な細胞傷害性Tリンパ球の産生を引き出すのに十分な量の請求項27に記載の免疫原性組成物を投与することを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項31】
癌に苦しむ動物における癌を処置するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、前記動物に、請求項12に記載のポリペプチドに特異的な細胞傷害性Tリンパ球の産生を引き出すのに十分な量の請求項28に記載の免疫原性組成物を投与することを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項32】
癌状態に苦しむ動物における癌状態を処置するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、前記動物に、請求項8に記載のプロセスを用いて最初に抗腫瘍性活性を持つと同定された物質の治療上の有効量を投与することを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項33】
癌から動物を保護するためのプロセスであって、ここで前記プロセスが、癌を発症する危険性のある動物に、請求項8に記載のプロセスを用いて最初に抗腫瘍性活性を持つと同定された物質の治療上の有効量を投与することを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項34】
前記動物が、ヒトであることを特徴とする請求項30ないし33のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記癌が、卵巣癌であることを特徴とする請求項30ないし33のいずれか一つに記載のプロセス。
【請求項36】
化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生み出すための方法であって、ここで前記方法が、
(a)化合物を、配列番号1、3および5のポリヌクレオチド配列より成るグループから選択された配列を持つポリヌクレオチドに対応する遺伝子を含む細胞と、前記遺伝子の発現を促進する条件下で接触させ、
(b)前記化合物が存在しない場合と比較した前記遺伝子の発現の差異を検出し、
(c)遺伝子調節活性を示す、配列番号1、3および5に対応する測定された遺伝子の発現の減少に基づく、前記化合物の遺伝子調節活性に関する試験情報を生み出すことを含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2006−512044(P2006−512044A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−574130(P2003−574130)
【出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/007147
【国際公開番号】WO2003/075854
【国際公開日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【出願人】(501128379)アバロン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】