説明

化粧料容器

【課題】ブローボトルのように開口部内径が胴体部内径よりも小さく、ガラス瓶のように厚肉で、且つ落下等の衝撃にも強い、耐久性と美しい外観を備えた化粧料容器を提供すること。
【解決手段】容器本体10は、化粧料の抽出口となる首部材12と、首部材12を連結する開口部を有し、開口部の最小内径が首部材12の最大内径よりも大きい胴体部材11と、2つの部材をつなぐための連結部材30とからなり、胴体部材11の上端部には、首部材12を嵌入するための嵌入溝11bと、嵌入溝11bの周縁に胴体部材の側壁の面方向に突出する胴体凸部11cが形成され、首部材12には胴体部材11に嵌入したときに胴体凸部11cと隣接するように首凸部12cが形成され、胴体部材11と首部材12とは、胴体凸部11cと首凸部12cをまたいで胴体部材の上端部に対して溶融樹脂が射出されて形成される連結部材30によって溶着固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体と容器本体とを有する化粧料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
落下してもガラス瓶のように割れることのない樹脂製の化粧料容器に、ガラス瓶のような重厚感や高級感を持たせるため、透明樹脂による厚肉射出成形法がしばしば用いられる。しかしながら、射出成形で対応できる容器の形状は、一般的に容器の開口部内径と胴体部の内径が等しいものである。容器開口部内径が胴体部の内径より小さな形状、いわゆるボトル型の厚肉樹脂容器を造るためにはブロー成形法を用いなければならないが、ブロー成形法で歪みなく美しい形状が保てる肉厚は2mm程度が限界であった。
【0003】
これに対し、射出成形によって2mmを超える十分な肉厚の容器胴体部と、開口部を含む容器首部とを別々に成形し、これらを連結することによって形状が安定し、容器開口部内径が胴体部の内径より小さな厚肉容器を得ることができる。
【0004】
連結部から液体などの内容物が漏れないように、また外観上美しく容器胴体部と容器首部を確実に連結する手段としては、超音波溶着、スピンウェルディング、レーザー溶着、射出溶着等の樹脂溶着法が考えられる。このうち、超音波溶着、スピンウェルディング、レーザー溶着については、まれに未溶着部分が発生した場合にそれを検出することが極めて困難である。また、例えば容器を首部から落下させたとき、中味が充填された厚肉容器では過大な重量が首部にかかるため、連結部が外れてしまうおそれがある。一方、射出溶着法で溶着が不完全になるケースは、例えば溶着樹脂がショートショットになった場合であるが、これは成形品の重量測定で容易に検知することができる。更に、容器胴体部と首部との間を別部材をもって溶着すれば、連結部を補強できるため他の溶着法よりも高い耐久性を確保することができる。
【0005】
2つの部材を別部材を使用した射出溶着法により連結する方法は特許文献1で既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−59454
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように2つの樹脂製部材を繋げて内部に空間を形成し、その側面から別部材を射出溶着させる方法においては、別部材の成形圧力によって2つの十分な溶着力が得られないという問題がある。
【0008】
即ち本発明の目的は、ブローボトルのように開口部内径が胴体部内径よりも小さく、ガラス瓶のように厚肉で、且つ落下等の衝撃にも強い、耐久性と美しい外観を備えた化粧料容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の化粧料容器の第1の構成は、化粧料を入れる容器本体と、前記容器本体の抽出開口を覆う蓋体と、を有する化粧料容器であって、前記容器本体は、化粧料の抽出口となる首部材と、前記首部材を連結する開口部を有し、前記開口部を形成する側壁の上端部の厚みが最も厚い箇所で2mm以上であり、前記開口部の最小内径が前記首部材の最大内径よりも大きい胴体部材と、前記2つの部材をつなぐための連結部材とからなり、前記胴体部材の前記上端部には、前記首部材を嵌入するための嵌入溝と、前記嵌入溝の周縁に前記胴体部材の前記側壁から立設する方向に突出する胴体凸部が形成され、前記首部材には前記胴体部材に嵌入したときに前記胴体凸部と隣接するように首凸部が形成され、前記胴体部材と前記首部材とは、前記胴体凸部と前記首凸部をまたいで前記胴体部材の上端部に対して溶融樹脂が射出されて形成される前記連結部材によって溶着固定されることを特徴とする。
【0010】
化粧料容器の第2の構成は、射出溶着によって前記胴体凸部と前記首凸部を覆う前記連結部材の溶着高さが、最低箇所でも前記胴体凸部の高さの1.5倍以上であり、前記胴体凸部と前記首凸部を覆う前記連結部材の幅が、最小箇所でも前記胴体凸部と前記首凸部の幅の和の1.5倍以上であることを特徴とする。
【0011】
化粧料容器の第3の構成は、射出溶着によって前記胴体凸部と前記首凸部を覆う前記連結部材の溶着高さが、最低箇所でも前記胴体凸部の幅の1.5倍以上であり、前記胴体凸部と前記首凸部を覆う前記連結部材の幅が、最小箇所でも前記胴体凸部と前記首凸部の幅の和の1.5倍以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成とすることで、ブローボトルのように開口部内径が胴体部内径よりも小さく、ガラス瓶のように厚肉で、且つ落下等の衝撃にも強い、耐久性と美しい外観を備えた化粧料容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る胴体部材及び首部材の説明図。
【図2】第1実施形態に係る容器本体の説明図。
【図3】第1実施形態の容器本体の製造方法の説明図。
【図4】第2実施形態の容器本体の製造方法の説明図。
【図5】他の実施形態の容器本体の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
(化粧料容器の構成)
図1及び図2を用いて化粧料容器1の構成を説明する。図1は第1実施形態に係る胴体部材11及び首部材12の説明図であり、(a)は胴体部材の上面図及び断面図、(b)は首部材の上面図及び断面図である。図2は第1実施形態に係る容器本体10の説明図であり、(a)は胴体部材及び首部材を溶着したときの容器本体の上面図及び断面図、(b)は容器本体の肩部(図2(a)の円で囲まれた部分)の拡大断面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、化粧料容器1は、胴体部材11に首部材12を組み付けて一体的に構成される容器本体10と、首部材12に取り付けられ、首部材12の抽出開口12aを覆う蓋体20とを有する。以下、各部を詳細に説明する。
【0017】
図1(a)に示すように、胴体部材11は、化粧料を入れる容器内部11aと、首部材12の周縁下部を嵌入するために胴体部材の上端部に形成された嵌入溝11bと、嵌入溝11bの周縁で且つ胴体部材側面の側壁から立設する方向に突出する胴体凸部11cとを有する。胴体部材11は厚肉の樹脂製部材であり、厚肉とすることで質感と光の屈折により高級感のあるガラスのような外観の容器となる。厚肉樹脂製部材は耐久性があり、実際のガラスのように割れやすくはない。このため、容器として好ましい。尚、本実施形態の胴体部材11の肉厚は樹脂の射出の多重成形により超肉厚化を行っている。
【0018】
尚、胴体部材11は、上述のように首部材12を連結する部分(開口部11d)が形成されるが、開口部11dを形成する側壁の上端部の厚みW1は最も厚い箇所で2mm以上である。また、開口部11dの最小内径D1は、首部材12の抽出開口12aの最大内径D2よりも大きいように構成される。
【0019】
図1(b)に示すように、化粧料の抽出口となる首部材12は、化粧料を抽出する抽出開口12aと、嵌入溝11bに嵌入する周縁部12bと、周縁部12bから立ち上がるように形成される首凸部12cとを有する。
【0020】
図2(a)に示すように、容器本体10は、胴体部材11と首部材12とが連結部材30により溶着固定されて構成される。2つの部材(胴体部材11と首部材12)をつなぐための連結部材30による結合についての詳細を次に拡大図を用いて説明する。
【0021】
図2(b)の拡大図に示すように、胴体部材11の嵌入溝11bには、首部材12の周縁部12bが嵌入固定されている。首部材12が胴体部材11に対して嵌入した状態において、胴体部材11の胴体凸部11cと首部材12の首凸部12cとは隣接して当接している。この隣接した胴体凸部11cと首凸部12cをまたぐようにU字状に連結部材30が溶着固定されている。嵌入溝11bがあることで、射出成形時の充填圧力を受けることができる(図示しないがゲートの位置が側面方向などでも可能)。
【0022】
このように、胴体凸部11cと首凸部12cにまたいで連結部材30が形成されると、従来のように平面に射出樹脂が射出されて溶着される場合に比べ、連結部材30が胴体部材11及び首部材12に溶着する表面積が大きくなる。このため、厚肉の樹脂製部材であっても、十分に密閉性を有する状態で互いに確実に結合する。従って、厚肉で密封性のある化粧料容器1を得ることができる。
【0023】
次に、胴体凸部11c及び首凸部12cと連結部材30の大きさの関係を説明する。本実施形態では、図2(b)に示すように、首凸部12cの幅A、首凸部12cの側面を覆う溶着幅B、胴体凸部11cの幅C、胴体凸部11cの側面を覆う溶着幅D、胴体凸部11c及び首凸部12cのそれぞれの上面を覆う連結部材30の溶着高さEとすると、溶着幅B、溶着幅D、溶着高さEは、それぞれ幅A又は幅Cの1倍以上3倍以下である。このように、胴体凸部11c又は首凸部12cの幅を基準として、所定範囲の比率で溶着幅及び溶着高さを決定することで、より確実に溶着が行われる。
【0024】
(化粧料容器の製造方法)
化粧料容器1の製造方法を、図3を用いて説明する。図3は第1実施形態の容器本体10の製造方法の説明図である。本実施形態の製造方法は、胴体部材11と首部材12を金型内にインサートした後に溶融樹脂を射出するインサート成形である。インサート成形の基本的な方法は公知であるので、説明を省略する。
【0025】
図3に示すように、金型として可動金型51及び固定金型52を用いる。固定金型52には、不図示の射出装置から射出された溶融樹脂が入り込むキャビティ52aが形成される。キャビティ52aは、連結部材30を形成するための形状をしている。
【0026】
まず、嵌入溝11bと胴体凸部11cを有する胴体部材11を可動金型51に固定する。次に、首部材12を嵌入溝11bに嵌入させることで、胴体凸部11cと隣接するように首凸部12cを配置する。
【0027】
上述のように胴体部材11と首部材12を可動金型51にセットし、型締めを行うと図3のように、胴体凸部11cと首部材12の首凸部12cが当接された状態で、キャビティ52aの内部に入り込む。
【0028】
ここで、射出装置から溶融樹脂を射出する。射出された溶融樹脂は、スプルー52bを通じてゲート52cからキャビティ52aに対して射出される。キャビティ52a内の溶融樹脂は、胴体凸部11c及び首凸部12cをまたぐように射出されて連結部材30を形成する。連結部材30は、熱により胴体部材11及び首部材12に対しても溶着する。更に、連結部材30はU字状で、胴体凸部11c及び首凸部12cを挟みこむような形状をしている。このため、冷却されて固化した連結部材30は胴体部材11と首部材12が離間するのを防ぎ、胴体部材11と首部材12を強く結合させる。
【0029】
尚、図2(b)に示すように、射出溶着によって胴体凸部11cと首凸部12cを覆う連結部材30の溶着全高さh1は、最低箇所でも胴体凸部11c及び首凸部12cの高さh0の1.5倍以上であることが好ましい。または、連結部材30の溶着高さEは、最低箇所でも胴体凸部11cの幅の1.5倍以上であることが好ましい。
【0030】
また、胴体凸部11cと首凸部12cを覆う連結部材30の幅(A+B+C+D)は、最小箇所でも胴体凸部11cの幅Cと首凸部12cの幅Aの和の1.5倍以上であることが好ましい。
【0031】
最後に可動金型51及び固定金型52を開いて、容器本体10を取り出すことで、製品となる。
【0032】
〔第2実施形態〕
図4を用いて第2実施形態の説明をする。図4は第2実施形態の容器本体10の製造方法の説明図であり、容器本体の肩部の拡大断面図である。本実施形態が前述の実施形態と異なるところは、連結部材の形状である。その他の構成は前述の実施形態と同様であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
【0033】
図4に示すように、本実施形態においては、胴体部材11の嵌入溝11bの径と首部材12の周縁部12bの径に幅Fの間隙が形成される。このため、前述の同様の金型を用いて連結部材30を射出すると、胴体凸部11cと首凸部12cとの間に幅Fの脚部31が形成される。
【0034】
このように連結部材30に脚部31を形成すると、胴体部材11及び首部材12に対して連結部材30が溶着する表面積が大きくなる。このため、前述の実施形態の効果に加え、更に効果的に胴体部材11と首部材12とを結合させることができる。
【0035】
〔他の実施形態〕
前述の実施形態においては、胴体部材を円筒形のものとしたが、これに限るものではない。例えば、断面が三角形や四角形等の多角形の筒状としてもよい。
【0036】
前述の実施形態においては、上面から見たときに首部材12と連結部材30との間に隙間がある構成であったが、これに限るものではない。図5は他の実施形態の容器本体の製造方法の説明図である。図5に示すように、固定金型52のキャビティ52aの構成を、首部材12の一側面12dと当接するように構成すると、首部材12と連結部材30との間に隙間がない構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、蓋体と容器本体とを有する化粧料容器及び化粧料容器の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…化粧料容器、10…容器本体、11…胴体部材、11a…容器内部、11b…嵌入溝、11c…胴体凸部、11d…開口部、12…首部材、12a…抽出開口、12b…周縁部、12c…首凸部、12d …一側面、20…蓋体、30…連結部材、31…脚部、51…可動金型、52…固定金型、52a…キャビティ、52b…スプルー、52c…ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を入れる容器本体と、前記容器本体の抽出開口を覆う蓋体と、を有する化粧料容器であって、
前記容器本体は、化粧料の抽出口となる首部材と、
前記首部材を連結する開口部を有し、前記開口部を形成する側壁の上端部の厚みが最も厚い箇所で2mm以上であり、前記開口部の最小内径が前記首部材の最大内径よりも大きい胴体部材と、
前記2つの部材をつなぐための連結部材とからなり、
前記胴体部材の前記上端部には、前記首部材を嵌入するための嵌入溝と、
前記嵌入溝の周縁に前記胴体部材の前記側壁から立設する方向に突出する胴体凸部が形成され、
前記首部材には前記胴体部材に嵌入したときに前記胴体凸部と隣接するように首凸部が形成され、
前記胴体部材と前記首部材とは、前記胴体凸部と前記首凸部をまたいで前記胴体部材の上端部に対して溶融樹脂が射出されて形成される前記連結部材によって溶着固定されることを特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
射出溶着によって前記胴体凸部と前記首凸部を覆う前記連結部材の溶着全高さが、最低箇所でも前記胴体凸部の高さの1.5倍以上であり、
前記胴体凸部と前記首凸部を覆う前記連結部材の幅が、最小箇所でも前記胴体凸部と前記首凸部の幅の和の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料容器。
【請求項3】
射出溶着によって前記胴体凸部と前記首凸部を覆う前記連結部材の溶着高さが、最低箇所でも前記胴体凸部の幅の1.5倍以上であり、
前記胴体凸部と前記首凸部を覆う前記連結部材の幅が、最小箇所でも前記胴体凸部と前記首凸部の幅の和の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−280089(P2010−280089A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133684(P2009−133684)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】