説明

化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体の製造方法

【課題】紫外線吸収能に優れ、且つ透明性に優れた化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】紫外線吸収性モノマーを含むモノマー混合物を乳化重合することにより得られた微粒子から、残存するモノマー成分を除去する工程、その後に粒子組成と親和性の高い溶媒に再分散させる工程、さらにその溶媒を任意の溶媒に置き換える工程を特徴とした化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体の製造方法およびそれを用いて製造された分散体を用いた化粧料に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に配合されて紫外線を吸収するための紫外線吸収性樹脂微粒子分散体の製造方法およびそれを用いて製造された分散体を用いた化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚に対する紫外線の悪影響を抑制するために、化粧料には紫外線カット成分が添加されることが多い。紫外線カット成分には、有機系の紫外線吸収剤と無機系の紫外線散乱剤があるが、有機系の紫外線吸収剤は、無機系紫外線散乱剤に比べて高い透明性を有する一方で、皮膚刺激性があり、また、特有の臭気を有するという問題があった。こうした問題を解決するために、有機系紫外線吸収剤をマイクロカプセル化することが提案されている(例えば、特許文献1等)。しかしながら、透明性を高めるためにマイクロカプセルの粒子径を小さくすると、壁厚が薄くなるためにカプセルの機械的強度が低下し、化粧料への配合時や皮膚に塗布する際にカプセルが破裂して、皮膚刺激性のある紫外線吸収剤が放出されてしまうという問題があった。また、機械的強度を確保するためにマイクロカプセルの粒子径を大きくすると、透明性が低下し、化粧料に十分量配合できなくなって紫外線カット効率が低下するという問題があった。
【0003】
このようなことから、紫外線吸収性のモノマーから紫外線吸収性樹脂粒子を合成して、これを化粧料へ添加する試みがなされている。紫外線吸収性樹脂粒子の合成には、乳化重合が好適であるが、紫外線吸収性モノマーのほとんどは常温で固体であるため、紫外線吸収性モノマーを多く使えば使うほど乳化重合の安定性に劣り、透明性の高い粒径の小さい粒子が得られないという問題があった。換言すれば、粒径の小さい紫外線吸収性樹脂粒子を得ようとすれば、紫外線吸収性モノマーの使用量を制限せざるを得なかった。例えば、特許文献2には、ベンゾトリアゾール系化合物を、他のモノマー(アクリル系化合物および/またはスチレン化合物)100質量部に対して1〜40質量部使用することが記載されており、ベンゾトリアゾール系化合物は、たかだか約29質量%しか使用できないことが読み取れる。一方、例えば、特許文献3には、乳化重合初期に水にトルエンを添加することで反応性ベンゾトリアゾール系化合物の析出を抑える発明が開示されているが、この例でも、結局、平均粒子径が1μm以上の樹脂粒子しか得られていない。
【0004】
他方、特許文献4には、溶剤系重合を行った後、自己乳化により粒径の小さい紫外線吸収性微小樹脂粒子を得る発明が開示されている。この発明では、粒径の小さい樹脂粒子が得られるが、製造方法が煩雑であると共に、自己乳化の際に大量のアルカリを必要としており、肌によいといわれる弱酸性にすると、分散性が低下してしまう、という問題があった。
【0005】
本発明者らは、特許文献5においてベンゾトリアゾール骨格を有するモノマーを含むモノマー混合物を、乳化重合することを提案している。この発明により紫外線吸収性モノマー量を多く共重合することができるようになったため、製造方法が簡便で、紫外線吸収能に優れた化粧料用の紫外線吸収性樹脂微粒子が得られるようになった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−37713号公報
【特許文献2】特開平7−291845号公報
【特許文献3】特開平11−263717号公報
【特許文献4】特許第3202233号公報
【特許文献5】特開2010−116523
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記発明では残存したモノマーを除去する為に25℃でベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で洗浄、乾燥を行って粉体化することが必須になっている。ここで用いている溶剤はベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性モノマーと親和性が高い溶剤である為、樹脂粒子自身も溶剤により可塑化されやすく、乾燥時に粒子同士が融着しやすくなり、再分散させるのが困難になる。これを防ぐ為に特許文献5では架橋性モノマーを共重合させ、融着を防ぐ工夫がなされているが、十分ではなかった。本発明は、従来から知られるこれらの問題を解決し、分散性に優れ、紫外線吸収能に優れ、諸物性にも優れた粒径の小さい化粧料用の紫外線吸収性樹脂微粒子の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子は、下記一般式(1)で表される紫外線吸収性モノマー
【0009】
【化1】

【0010】

(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状もしくは枝分かれ鎖状のアルキレン基、−R−O−(R’は炭素数2または3の直鎖状もしくは枝分かれ鎖状のアルキレン基を表す)または水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)を含むモノマー混合物を乳化重合することにより得られた樹脂微粒子を粉体化し、その後25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で洗浄を行い、さらに25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で樹脂粒子を再分散させる際に分散剤を同時に添加し、その後任意の分散媒に分散させることを特徴とした化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体の製造方法。
【0011】
また上記製造方法は、25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で樹脂粒子を再分散させる際に分散剤を同時に添加した後に、前記溶媒を乾燥させてから任意の分散媒に分散させることが好ましい。
或いは、25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で樹脂粒子を再分散させる際に分散剤を同時に添加した後に、任意の分散媒をさらに添加し、25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤を脱揮することが好ましい。
【0012】
本発明には、上記化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子を含有することを特徴とする化粧料も含まれる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子の製造方法は非常に分散性に優れた樹脂粒子分散体を、簡便な手法で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子(以下、「化粧料用」という用語を省略することがある)を詳細に説明するが、説明の便宜上、乳化重合後、粉体化工程を経ていないものを紫外線吸収性ポリマー粒子といい、粉体化工程を経た後のものを紫外線吸収性樹脂微粒子という。
本発明の紫外線吸収性ポリマー粒子は、下記式(1)で示されるベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性モノマーを必須モノマーとして用いて合成される。
【0015】
【化2】

(式中、R、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状もしくは枝分かれ鎖状のアルキレン基、−R−O−(R’は炭素数2または3の直鎖状もしくは枝分かれ鎖状のアルキレン基を表す)または水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
上記ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかを表し、炭素数1〜8のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基(イソペンチル基)、tert−ペンチル基(2,2−ジメチルプロピル基)、n−ヘプチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基(1,1,3,3,−テトラメチルブチル基)、2−エチルヘキシル基といった直鎖状または分枝状のアルキル基やシクロヘキシル基等の脂環式アルキル基が挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基とは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシルオキシ基である。
【0016】
の炭素数1〜12のアルキレン基の具体例としては、炭素数1〜8のアルキル基に加えて、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖状または分枝状の炭素数1〜12のアルキル基から水素を1個除いた基等が挙げられる。なお、Rの「水素結合を形成し得る元素を有する基」とは、合成後のポリマー分子間で水素結合を形成し、塗膜の物性(耐屈曲性、耐水性等)を高める作用を有する基であり、具体例としては、−NH−、−CHNH−、−OCHCH(OH)CHO−、−CHCHCOOCHCH(OH)CHO−等が挙げられる。
【0017】
上記式(1)で表される化合物の具体例として、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−2H−メトキシ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル−5−(2’−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−(2’−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メトキシフェニル)−5−(3’−メタクリロイルオキシプロポキシ)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノメチル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルアミノ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−アクリロイルアミノメチル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)−5−カルボン酸−(2−メタクリロイルオキシ)エチルエステル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−2−(2−メタクリロイルオキシエトキシカルボニル)エチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−2−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシカルボニル)エチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
上記ベンゾトリアゾール系モノマーは、例えば、対応するベンゾトリアゾール(紫外線吸収剤として市販されている)に、(メタ)アクリル酸クロライドやN−メチロールアクリルアミドまたはそのアルキルエーテルを反応させる等の方法で合成することができる。また、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールは、大塚化学株式会社から「RUVA−93」として上市されており、入手可能であるため、本発明においても好適に用いることができる。
【0019】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収性モノマーは、紫外線吸収性ポリマー粒子を合成するためのモノマー混合物100質量%中、30〜95質量%の範囲で用いる。紫外線吸収性モノマーが多ければ多いほど、紫外線吸収性樹脂微粒子の紫外線吸収能が優れたものとなるからである。より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。ただし、95質量%を超えると、乳化重合の安定性が低下して、工業的製造が難しくなる。より好ましい上限は90質量%、さらに好ましい上限は85質量%である。
【0020】
また、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収性モノマーの一部(例えば、紫外線吸収性モノマーの全量100質量%中50質量%以下)を、他の紫外線吸収性モノマーに置き換えてもよい。例えば、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収性モノマーや、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−4,6−ビスジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収性モノマーを用いてもよい。これらは、単独でまたは2種以上で使用することができる。
【0021】
【化3】

【0022】

本発明の紫外線吸収性ポリマー粒子を合成するためのモノマー混合物には、1分子中に重合性不飽和基を2個以上有する架橋性モノマーを含めることが好ましい。洗浄工程や粉体化の際に粒子の融着や凝集を防ぎ、粒子形状を維持するためには、樹脂微粒子が架橋していることが望ましいからである。
【0023】
架橋性モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類が好ましい。紫外線吸収性モノマーとの共重合性に優れているからである。これらは、単独でまたは2種以上で使用することができる。
【0024】
上記架橋性モノマーは、紫外線吸収性ポリマー粒子を合成する際のモノマー混合物100質量%中、1〜30質量%が好ましい。この範囲であれば、架橋度と物性のバランスに優れた粒子が得られ、粉体化工程や洗浄工程の際に粒子の融着や凝集を防ぐことができ、粒子形状を維持することが可能となる。より好ましい架橋性モノマー量は2〜25質量%であり、さらに好ましくは3〜15質量%である。
【0025】
本発明の紫外線吸収性ポリマー粒子を合成する際には、要求特性に応じて粒子の物性を変えるために、その他のモノマーを共重合しても構わない。その他のモノマーとしては、特に限定されないが、紫外線吸収性に優れたポリマー粒子を合成することができ、ベンゾトリアゾール系モノマーとの共重合性が良好な(メタ)アクリレート類が好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、イーストマン社製「Eastman AAEM」)、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。中でも、メチルメタクリレートやシクロヘキシルメタクリレートが好ましい。
【0026】
また、その他のモノマーとして、以下の各種モノマー類も使用可能である。
酢酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
【0027】
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、へプタドデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有モノマー類。
【0028】
(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート硫酸塩、モルホリンのエチレンオキサイド付加(メタ)アクリレート、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルサクシンイミド、N−ビニルメチルカルバメート、N,N−メチルビニルアセトアミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N,N−トリメチルアンモニウムエチルアクリレート等の窒素含有モノマー類。
【0029】
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニル−n−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−n−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−n−オクタデシルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、2,2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、β−ジフルオロメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
【0030】
グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、α−メチルグリシジルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「MGMA」)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「サイロマーA400」等)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製の「サイロマーM100」等)等のエポキシ基含有モノマー類。
【0031】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製の「プラクセル(登録商標)F」シリーズ等)等のヒドロキシル基含有モノマー類。(メタ)アクリル酸、クロトン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等の酸性官能基含有モノマー類。
【0032】
これらのその他のモノマーは、紫外線吸収性ポリマー粒子を合成する際のモノマー混合物100質量%中、0〜69質量%の範囲で用いられる。より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜50質量%、もっとも好ましくは20〜40質量%である。
紫外線吸収性モノマー、および必要に応じて架橋性モノマーやその他のモノマーを後述する乳化重合することにより、本発明の紫外線吸収性ポリマー粒子が得られる。その質量平均分子量(Mw)は、5万以上が好ましい。Mwは、例えばGPC等で測定することができる。Mwが100万を超えてくると溶媒に溶解しにくくなってGPCでの測定ができなくなるが、本発明ではもちろんこのような高分子量のポリマーも使用可能である。
【0033】
また、本発明の紫外線吸収性ポリマー粒子のTg(紫外線吸収性樹脂微粒子のTgも同じである)は50℃超であることが好ましい。洗浄工程や粉体化の際に粒子の融着や凝集を防ぎ、粒子形状を維持するためである。TgはDSC(示差走査熱量計)によって求めることができる。従って、本発明の紫外線吸収性樹脂微粒子は、DSCで、昇温時のDSC曲線を測定した際に、強度1.00mW/min以上のピークが50℃以下に出現しないことが好ましい。本発明では、DSC曲線は、紫外線吸収性樹脂微粒子を3.00mg採取して容器に入れ、昇温速度20℃/minで、−30℃から180℃まで加熱することにより求める。紫外線吸収性樹脂微粒子のTgは80℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましく、180℃以上がもっとも好ましい。Tgを所望の温度に設定するためにモノマーを選択する際には、下記式によって求められる計算値を目安とすると、簡便である。
【0034】
【数1】


式中、Tgはガラス転移温度(K)を示し、W、W、・・・Wは、各モノマーの質量分率を示し、Tg、Tg、・・・Tgは、対応するモノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)を示す。なお、ホモポリマーのTgは、「POLYMER HANDBOOK」(John Wiley & Sons, Inc.発行)等の刊行物に記載されている数値を採用すればよい。
【0035】
本発明の紫外線吸収性樹脂微粒子は、前記したように架橋性モノマーの共重合によって架橋することが好ましい。樹脂微粒子が架橋されているかどうかは、光線透過率を目安にすることができる。すなわち、樹脂微粒子が架橋されている場合、テトラヒドロフランによって樹脂微粒子が膨潤するが、膨潤した樹脂微粒子の屈折率と、テトラヒドロフランのみ(膨潤した粒子が存在していない部分)の部分の屈折率とは異なるため、全体としては白濁して見える。これに対し、ほとんど架橋していない微粒子は、テトラヒドロフランに溶解し、均一な溶液を形成するので、屈折率の差異が生じず、全光線透過率が高いままとなる。本発明では、樹脂微粒子の濃度が4質量%になるようにテトラヒドロフランに分散させ、得られた分散体の全光線透過率をヘーズメーター等を用いて測定したときの全光線透過率が70%以下であれば、架橋が適切になされているといえる。全光線透過率は65%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。
【0036】
本発明の紫外線吸収性ポリマー粒子は、上記モノマー混合物を乳化重合することにより製造することができる。乳化重合法は、通常、水を媒体として乳化剤によって水中に形成されたミセル中で、水に溶けないモノマー混合物をラジカル重合し、ポリマー粒子が水中に分散した形態のエマルションを得る方法である。
【0037】
乳化重合に際しては、一括仕込み法、モノマー滴下法、プレエマルション法等の手段を用いることができるが、本発明では一括仕込み法の採用が好ましい。紫外線吸収性モノマーは常温(25℃程度)では固体状であるため、その溶解には加熱が必要であり、モノマー滴下法では、滴下ロートに加熱設備を設けなければならず、既存の重合設備を改造しなければならないが、一括仕込み法であれば既存の重合設備をそのまま使用することができるため好ましい。
【0038】
具体的には、まず、反応容器内に、重合開始剤以外の原料、すなわち、紫外線吸収性モノマー、必要に応じて、架橋性モノマー、その他のモノマー、乳化剤および水を全て仕込み、80℃以上に加温して紫外線吸収性モノマーを架橋性モノマーやその他のモノマーに溶解させる。このとき、固体(通常、粉体)である紫外線吸収性モノマー以外の原料を先に反応容器に仕込み、撹拌した後、紫外線吸収性モノマーを添加するのが好ましい。また、紫外線吸収性モノマーが、架橋性モノマーやその他のモノマーに完全に溶解したかは、反応容器内部の液体を少量サンプリングして、目視で確認すればよい。
【0039】
乳化重合に用いる乳化剤は特に限定されず、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム等のアルキルアリルポリエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基または硫酸エステル基を有するモノマーや(メタ)アクリロイル基を有する乳化剤のような反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、反応性ノニオン界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型等の両性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール等の公知の乳化剤(分散剤)を添加して行えばよい。
【0040】
上記乳化剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができ、モノマー混合物100質量部に対して10〜100質量部程度使用するとよい。乳化剤を多量に使用することで、エマルション中のポリマー粒子を微細化することができ、その後の粉体化工程で得られる紫外線吸収性樹脂微粒子の平均粒子径を500nm以下にすることができる。乳化剤の量は、モノマー混合物100質量部に対して、15〜70質量部とすることがより好ましく、20〜50質量部がさらに好ましい。なお、乳化剤は、後述する洗浄工程で除去されるため、紫外線吸収性樹脂微粒子にはほとんど残存しない。平均粒子径の測定方法は後述する。
【0041】
水とモノマーの比率は、両者の合計100質量%に対し、モノマーの合計量を5〜40質量%にするとよい。この範囲であれば、重合時の温度制御が容易になるからである。なお、重合溶媒である水の一部(例えば、4.0質量%以下)を、有機溶剤に置き換えてもよい。例えば、有機溶剤として、ジエチレングリコールや、ブチルセロソルブのような高沸点溶剤を用いると、重合時に紫外線吸収性モノマーが溶解しやすくなる。また、他に用い得る有機溶剤としては、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ダワノール(登録商標:ダウケミカル社製)等のプロピレングリコール系溶剤等が挙げられる。
【0042】
続いて、内温を75〜95℃程度に維持し、重合開始剤を添加して重合を行う。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩や過酸化水素等の無機の過酸化物;tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酢酸等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド等のアゾ化合物等が挙げられる。また、これらの重合開始剤と共に、還元剤として、亜硫酸水素ナトリウムやL−アスコルビン酸等を用いることにより、レドックス系開始剤としてもよい。重合開始剤の好適使用量は、モノマーの合計100質量部に対し、0.01〜1質量部である。重合開始剤量が少な過ぎると、モノマーに含まれている重合禁止剤にラジカルが消費されるため、重合が進行しないか、重合完結に時間がかかることがあるが、多過ぎると重合安定性・貯蔵安定性が低下するため好ましくない。
【0043】
重合開始剤添加後、重合が開始すると発熱が始まるが、そのときの初期発熱は98℃以下に抑制することが好ましい。なお、重合初期とは、重合反応の規模(モノマー量)にもよるが、大体30分程度である。その後は、75〜95℃で重合を続ける。重合反応は、pH7〜10で行うことが好ましい。反応時間は、用いるモノマー混合物の組成、界面活性剤や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が効率よく完結し得るように適宜設定すればよいが、通常、1〜10時間程度である。
【0044】
乳化重合後は、粉体化工程を行うとよい。粉体化の方法は特に限定されないが、遠心分離や濾過後に乾燥を行う方法や、スプレードライ法、凍結乾燥法等が挙げられる。中でもスプレードライ法が簡便で好ましく、この場合、ノズル式でも、回転円板式でも構わない。熱風の温度は粒子が乾燥する温度であれば特に限定されないが、例えば100〜200℃程度で乾燥を行うとよい。
【0045】
粉体化工程が終了したら、洗浄工程を行うことが好ましい。洗浄工程は、乳化重合時に、多量に用いた乳化剤を除去するために行うが、水で行うよりも、紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤を用いて行う方が、残存モノマーも除去できるため好ましい。使用可能な溶剤としては、テトラヒドロフラン、アセトン、n−ブタノール、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、クロロホルム等、あるいはこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。これらの溶剤が、紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解させることができるかどうか、25℃でチェックする。より好ましい溶解度は3質量%以上、さらに好ましい溶解度は5質量%以上である。なお、これらの溶剤には、重合後によって高分子量化した本発明の紫外線吸収性樹脂微粒子は溶解しない。
【0046】
具体的な洗浄方法は、粉体化した紫外線吸収性樹脂微粒子を洗浄溶剤に分散させた後、固液分離により上澄み液を除去する方法である。この操作を、残存乳化剤と残存モノマーが上澄み液に含まれなくなるまで、複数回繰り返すとよい。
【0047】
洗浄後は、減圧乾燥によって洗浄に用いた溶剤を除去する。これによって、紫外線吸収性樹脂微粒子の粉体が得られる。得られた粉体を紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤(以下 分散溶剤)を用いて分散させる。分散溶剤は紫外線吸収性モノマーの溶解度が高いほど、紫外線吸収性モノマーが多く共重合された樹脂粒子と親和性が高く、より細かく再分散ができる。続いてこの分散液に分散剤を添加し、均一に溶解させる。紫外線吸収性樹脂微粒子を分散溶剤に分散させる手法としては、特に限定はなく、撹拌、ディスパー、超音波、ビーズミルなどの分散手法で分散させることができる。
【0048】
こうして得られた樹脂微粒子が分散し、分散剤を溶解させた分散液を乾燥させて粉体化することで、樹脂微粒子の1次粒子表面を分散剤が覆った粉体を得ることができる。こうして得られた粉体を、最終的に化粧料の形態で使用する際に用いる任意の分散媒に分散させることで、化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体が得られる。
【0049】
乾燥方法も粉体化の方法は特に限定されないが、加熱乾燥や遠心分離、濾過後に乾燥を行う方法や、スプレードライ法、凍結乾燥法等が挙げられる。熱風の温度は粒子が乾燥する温度であれば特に限定されないが、例えば100〜200℃程度で乾燥を行うとよい。
また樹脂微粒子が分散し、分散剤を溶解させた分散液を乾燥させることなく、化粧料の形態で使用する任意の分散媒(以下化粧料用分散媒)を添加し、分散溶剤を減圧脱揮等により除去することによっても化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体が得られる。
【0050】
樹脂粒子を再分散させるための紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤としては、テトラヒドロフラン、アセトン、n−ブタノール、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、クロロホルム等、あるいはこれらの2種以上の混合溶剤等が挙げられる。これらの溶剤が、紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解させることができるかどうかは、25℃でチェックする。より好ましい溶解度は3質量%以上、さらに好ましい溶解度は5質量%以上である。
【0051】
化粧料用分散媒としては、化粧料で使用可能な分散媒であれば特に限定はないが、水、水溶性溶剤、有機溶剤、シリコーンオイルなどが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。分散溶剤に分散している樹脂粒子を粉体化せずに化粧料用分散媒を添加する場合は、分散溶剤より高い沸点を有する化粧料用分散媒を選択する必要がある。
【0052】
樹脂粒子と分散溶剤の比率は、両者の合計100質量%に対し、樹脂粒子を1〜80質量%、好ましくは5〜70%、さらに好ましくは10〜60%用いることである。樹脂粒子の量が1%以下では、有効成分量が低い為に製造効率が悪く、また80%以上では樹脂粒子の分散が不十分になる。
【0053】
化粧料用分散剤の配合量は、樹脂粒子に対して1〜200%、好ましくは2〜100%、さらに好ましくは3〜70%用いることである。1%以下では樹脂粒子の被覆が十分ではないために分散性が低下してしまい、また200%以上では、化粧料形態中の分散剤比率が増えてしまうため、化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子の含有量が低下してしまう。
樹脂粒子が分散された分散溶剤に添加する分散剤としては、最終的に化粧料用分散媒と樹脂粒子の分散安定性が保たれ、化粧料として使用可能なものであれば特に限定はない。
【0054】
本発明の紫外線吸収性樹脂微粒子の平均粒子径は500nm以下が好ましい。粒子径が小さいほど透明性が高いからである。より好ましい平均粒子径は300nm以下、さらに好ましくは100nm以下、もっとも好ましくは80nm以下である。
【0055】
本発明では、平均粒子径は、動的光散乱粒子径測定装置(大塚電子社製の「濃厚系粒径アナライザー FPAR−1000」を用い、テトラヒドロフランに固形分1質量%で分散させた状態で測定し、キュムラント解析により求められる値を採用する。紫外線吸収性樹脂微粒子は、乾燥後に測定すると、その平均粒子径は、乳化重合後の紫外線吸収性ポリマー粒子の平均粒子径よりも、少し大きくなる。ごく一部の粒子が付着(融着ではない)し合うためであると考えられるが、溶媒に再分散させることで、ほぼ、乳化重合後の紫外線吸収性ポリマー粒子の平均粒子径と同じレベルになる。このため、本発明では、上記測定方法を採用した。
【0056】
本発明の紫外線吸収性樹脂微粒子は、化粧料に配合されて使用される。化粧料としては特に限定されないが、ファンデーション、口紅、アイシャドウ、チークカラー等のメイクアップ剤;化粧水、乳液等のスキンケア剤;防虫ローション、日焼け止め乳液等の防護剤;トリートメント剤、ヘアカラー、ヘアムース等の毛髪手入れ用製剤等が挙げられる。これらは、それぞれ公知の成分で製造される。各種化粧料は、人間用のみならず、ペット用としても使用可能である。
【0057】
本発明の化粧料では、紫外線吸収性樹脂微粒子は、配合する化粧料の剤型に応じて適宜選択された形態で配合されるが、例えば、化粧料がパウダーファンデーションのような粉体剤型の場合は、粉体の形態で配合され、化粧料が口紅、油性ファンデーションのような油性剤型の場合は、粉体、および/または、水以外の分散媒を用いた分散体の形態で配合され、化粧料が乳化ファンデーション、クリーム、ジェルのような乳化型の場合には、粉体、水を分散媒に用いた水分散体、あるいは水以外の分散媒を用いた分散体の形態で配合される。分散媒に再分散させる方法としては、従来公知の分散方法から適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、撹拌機、ボールミル、サンドミル、ホモジナイザー等を用いた方法が挙げられる。
【0058】
紫外線吸収性樹脂微粒子の配合量は、化粧料の全質量に対して、通常1〜80質量%であり、化粧料の剤型に応じて適宜選択できる。すなわち、パウダーファンデーションのような粉体型では、通常40〜80質量%、口紅、油性ファンデーションのような油性剤型では、通常1〜20質量%、乳化ファンデーション、クリーム、ジェルのような乳化型では、通常1〜40質量%程度が好ましい。これらの化粧料は、常法により製造され、各々の目的のために提供される。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例および比較例において、「部」および「%」とあるのは、それぞれ質量部および質量%を表す。
【0060】
<製造例1>
撹拌装置、冷却管、窒素ガス導入管、温度計を備えたガラス製の反応容器に、イオン交換水800部、乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製;「エマルゲン(登録商標)123P」)100部、紫外線吸収性モノマーとしての2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製;「RUVA−93」)100部、架橋性モノマーとしてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)10部およびその他のモノマーとしてのメチルメタクリレート(MMA)30部を仕込み、85〜90℃で1時間撹拌し、紫外線吸収性モノマーを架橋性モノマーやその他のモノマーに溶解させた。続いて、窒素ガスを30分間導入して反応容器内を窒素置換し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(和光純薬社製;「V−50」)1部を少量のイオン交換水に溶解させた溶液を添加して、撹拌しながら85〜90℃で3時間重合反応を行い、エマルションNo.1を得た。このエマルションNo.1の固形分は22.9%であった。組成比から計算Tgは前記式を用いて計算したところ、Tgは84℃であった。なお計算の際にエチレングリコールジメタクリレートについては計算式から省略した。
【0061】
エマルションNo.1中の粒子の平均粒子径を、動的光散乱粒子径測定装置(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製;「NICOMP 380」)を用いて、Gaussiann解析の体積平均粒子径の値を測定したところ、平均粒子径は100nmであった。
上記エマルションを、スプレードライ装置(ヤマト科学社製;「pulvis GB22」)により、入口温度130℃、出口温度43℃、乾燥空気量0.43〜0.45m/min、噴霧空気圧2kgf/cmの条件で粉体化した。
【0062】
得られた粉体を、大量のテトラヒドロフランに分散させ、その後アセトンを加えて粒子を沈降させた後に、上澄み液を濾過により除去した。この操作を複数回繰り返すことで洗浄を行った。その後、減圧乾燥器により、50℃、2.67kPa(20Torr)以下で一晩乾燥を行い、紫外線吸収性樹脂微粒子粉体No.1が得られた。
得られた紫外線吸収性樹脂微粒子粉体No.1をテトラヒドロフランに固形分1質量%で分散させ、動的光散乱粒子径測定装置(大塚電子社製の「濃厚系粒径アナライザー FPAR−1000」)を用い、キュムラント解析により平均粒子径を求めたところ55nmであった。
【0063】
さらに紫外線吸収性樹脂微粒子粉体No.1を3.00mg採取し、DSC(セイコーインスツル社製;「EXTRA6000 DSC」)で、昇温時のDSC曲線を測定した。昇温速度は20℃/minとし、−30℃から180℃まで加熱したところ、強度1.00mW/min以上のピークは、50℃以下において出現しなかった。
また紫外線吸収性樹脂微粒子粉体No.1の濃度が4%になるようにテトラヒドロフランに再分散させ、10mmのセルに入れ、分散体の全光線透過率をヘーズメーター(日本電色工業社製;「NDH2000」)を用いて測定したところ、全光線透過率は70%以下であった。
【0064】
〔実施例1〕
紫外線吸収性樹脂微粒子粉体No1を30部、テトラヒドロフラン70部と、乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製;「エマルゲン(登録商標)123P」)15部を混合した溶液の中に入れ、超音波をかけて再分散させた。70℃で一晩乾燥した後、減圧乾燥器により、50℃、2.67kPa(20Torr)以下でさらに一日乾燥を行った。乾燥後粉体20部にイオン交換水80部を添加し、本発明実施例1の紫外線吸収性樹脂微粒子分散体No.1が 得られた。
【0065】
〔実施例2〕
紫外線吸収性樹脂微粒子粉体No1を30部、テトラヒドロフラン70部と、乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製;「エマルゲン(登録商標)123P」)15部を混合した溶液の中に入れ、超音波をかけて再分散させた。再分散後、脱イオン水180部を添加し、減圧脱揮により、50℃でテトラヒドロフランを除去した。その後、不揮発分を20%になるように脱イオン水を適宜添加して調整し、本発明実施例2の紫外線吸収性樹脂微粒子分散体No.2が得られた。
【0066】
〔比較例1〕
紫外線吸収性樹脂微粒子粉体No1を30部、イオン交換水180部に乳化剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製;「エマルゲン(登録商標)123P」)15部を添加した溶液を超音波にかけて再分散させ、比較例の紫外線吸収性樹脂微粒子分散体No.3が得られた。
〔化粧料配合実施例1〜2、化粧料配合比較例1〕
表2に示した組成の化粧料を調製した。まず、表2のaを容器に入れ、室温(25℃)で撹拌しながら表1のb〜fを順番に加えていき、分散させる(I相)。別途、表1のhと各実施例、比較例で得られた紫外線吸収性樹脂微粒子分散体gとを室温で撹拌溶解する(II相)。I相をディスパーで間撹拌しながら、II相を加えて1000rpmで3分間撹拌し、35℃まで冷却することで、化粧料を調製した。後述する方法によって、化粧料の特性を評価し、結果を表2に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
[透明性試験]
化粧料を、透明なガラス板に4mil(100μm)のアプリケーターを用いて塗工する。得られた塗膜を目視で観察し、透明感があるものを○、やや透明感があるものを△、透明感のないものを×とした。
[官能試験(感触)]
化粧料を腕に塗り広げ、を評価した。均一に感じるものを○、ざらつきを感じるものを×とした。
【0069】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子の製造方法は、分散性、透明性に優れ紫外線吸収性を与えることができるため、化粧料に添加した際には、優れた透明性と紫外線吸収性能を示す。また本発明の化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子の製造方法は、製法が簡便である、製造にかかるコスト抑えられる。
従って、本発明の化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体は、ファンデーション、口紅、アイシャドウ、チークカラー等のメイクアップ剤;化粧水、乳液等のスキンケア剤;防虫ローション、日焼け止め乳液等の防護剤;トリートメント剤、ヘアカラー、ヘアムース等の毛髪手入れ用製剤等へ配合されて、紫外線を吸収する化粧料として有効利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される紫外線吸収性モノマー
【化1】

(式中、R1、R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基を表し、R2は、炭素数1〜12の直鎖状もしくは枝分かれ鎖状のアルキレン基、−R’−O−(R’は炭素数2または3の直鎖状もしくは枝分かれ鎖状のアルキレン基を表す)または水素結合を形成し得る元素を有する基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す。)
を含むモノマー混合物を乳化重合することにより得られた樹脂微粒子を粉体化し、その後25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で洗浄を行い、さらに25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で樹脂粒子を再分散させる際に分散剤を同時に添加し、その後任意の分散媒に分散させることを特徴とした化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体の製造方法。
【請求項2】
25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で樹脂粒子を再分散させる際に分散剤を同時に添加した後に、前記溶媒を乾燥させてから任意の分散媒に分散させることを特徴とした請求項1に記載の化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体の製造方法。
【請求項3】
25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤で樹脂粒子を再分散させる際に分散剤を同時に添加した後に、任意の分散媒をさらに添加し、25℃で上記紫外線吸収性モノマーを1質量%以上溶解することのできる溶剤を脱揮することを特徴とした請求項1に記載の化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で製造された化粧料用紫外線吸収性樹脂微粒子分散体を含有することを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2012−36304(P2012−36304A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178227(P2010−178227)
【出願日】平成22年8月7日(2010.8.7)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】