説明

医用画像収集装置

【課題】カテーテル術における治療時間の低減や治療精度の向上を可能とする医用画像収集装置の提供。
【解決手段】前方視IVUSプローブ12は、超音波を送受信する。超音波走査部13は、前方視IVUSプローブ12を介して、空間的に一部重複する2つの3次元領域を第1走査時刻と第1走査時刻よりも遅い第2走査時刻とにおいてそれぞれ超音波で走査する。3次元超音波画像発生部16は、前方視IVUSプローブ12からの超音波信号に基づいて、第1時刻に関する3次元超音波画像のデータと第2時刻に関する3次元超音波画像のデータとを発生する。移動量・移動方向算出部23は、第1走査時刻に関する3次元超音波画像のデータと第2走査時刻に関する3次元超音波画像のデータとに基づいて第1走査時刻から第2走査時刻までの前方視IVUSプローブ12の移動量と移動方向とを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル術を支援するための医用画像収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターベンション(intervention)等のカテーテル術が治療に利用されている。インターベンションは、X線診断装置を用いて行なわれている。しかし、術者は、カテーテルの進行方向にある血管の性状をX線画像上で視認できない場合がある。これは、治療部位が慢性完全閉塞(CTO:chronic total occlusion)等の場合、特に顕著である。この場合、術者はカテーテルの進行方向等を把握するために試行錯誤を繰り返すため、治療時間が延びたり、治療精度の悪化を招いたりしている。また、X線診断装置を利用した場合、被検体や術者は、被爆してしまう。
【0003】
一方、インターベンション等のカテーテル術のために、前方視IVUS(intra-vascular ultrasound system:血管内超音波システム)等の3次元超音波画像収集装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001―238885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、カテーテル術における治療時間の低減や治療精度の向上を可能とする医用画像収集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る医用画像収集装置は、超音波を送受信する超音波プローブと、前記超音波プローブを介して、空間的に一部重複する2つの3次元領域を第1時刻と前記第1時刻よりも遅い第2時刻とにおいてそれぞれ超音波で走査する超音波走査部と、前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記第1時刻に関する第1超音波画像のデータと前記第2時刻に関する第2超音波画像のデータとを発生する発生部と、前記第1超音波画像のデータと前記第2超音波画像のデータとに基づいて前記第1時刻から前記第2時刻までの前記超音波プローブの移動量と移動方向とを算出する算出部と、を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カテーテル術における治療時間の低減や治療精度の向上を可能とする医用画像収集装置を提供することが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る医用画像収集装置の構成を示す図。
【図2】図1のカテーテルと前方視IVUSプローブとの概略構造を示す図。
【図3】図1の移動量・移動方向算出部による移動量・移動方向の算出処理の概要を示す図。
【図4】図1の前方視IVUSプローブと走査領域との位置関係を示す図。
【図5】図1の前方視IVUSプローブと走査領域との位置関係を示す図。
【図6】図1の画像合成部による画像合成部処理を説明するための図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る医用画像収集装置のネットワーク環境を示す図。
【図8】図7の医用画像収集装置の構成を示す図。
【図9】本発明の第3実施形態に係る医用画像収集装置の構成を示す図。
【図10】図9の3次元位置同定部により行なわれる基準位置の同定処理を説明するための図。
【図11】CTO(慢性完全閉塞)における閉塞領域を示す図。
【図12】本発明の第4実施形態に係る表示部により表示される硬さ画像の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる医用画像収集装置を説明する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、医用画像収集装置1の構成を示す図である。図1に示すように、医用画像収集装置1は、前方視IVUS10と3次元画像処理装置20とを有する。前方視IVUS10と3次元画像処理装置20とは、例えば、ファイバーチャネルケーブル等のケーブルを介して接続される。
【0011】
前方視IVUS10は、血管壁の性状を観察するための装置である。前方視IVUS10は、カテーテル11を有する。カテーテル11の先端には、図2に示すように、前方視IVUS用の超音波プローブ(以下、前方視IVUSプローブと呼ぶことにする)12が取り付けられている。前方視IVUSプローブ12の直径は、例えば、約2mm程度である。前方視IVUSプローブ12は、術者によりカテーテル11を介して血管内に挿入される。前方視IVUSプローブ12は、その前面に円周状に配列された複数の振動子を有する。振動子は、超音波走査部13(送信部14)からの駆動パルスを受けて超音波を送信する。送信された超音波は、音響インピーダンスの不連続面で次々に反射される。反射された超音波は、振動子に受信される。受信された超音波は、振動子により電気信号(超音波信号)に変換される。超音波信号の振幅は、超音波が反射された不連続面を挟んで隣り合う生体組織等の音響インピーダンスの差に依存する。超音波信号は、超音波走査部13(受信部15)に供給される。
【0012】
超音波走査部13は、前方視IVUSプローブ12を介して血管内の3次元的な走査領域を超音波で繰り返し3次元走査する。走査領域は、前方視IVUSプローブ12の前方(例えば、6mm程度)に位置する。第1の走査時刻に関する走査領域と、第1の走査時刻よりも遅い第2の走査時刻に関する走査領域とは、空間的に一部重複する。3次元走査により超音波走査部13からは、走査領域に関するエコー信号が出力される。より詳細には、超音波走査部13は、送信部14と受信部15とを有する。送信部14は、複数の振動子のうちの送信用の振動子(発信器)に駆動パルスを供給する。受信部15は、複数の振動子のうちの受信用の振動子(受信器)からの超音波信号を増幅し、増幅された超音波信号をデジタル変換する。デジタル変換された超音波信号は、3次元超音波画像発生部16に供給される。
【0013】
3次元超音波画像発生部16は、超音波走査部13からの超音波信号に基づいて走査領域に関する3次元超音波画像のデータ(ボリュームデータ)を発生する。具体的には、3次元超音波画像発生部16は、走査領域に関する超音波信号に前方視IVUSのための再構成処理を施して3次元超音波画像のデータを再構成する。第1の走査時刻に関する3次元超音波画像と第2の走査時刻に関する3次元超音波画像とは、空間的に一部分重複している。発生された3次元超音波画像のデータは、インターフェース17と3次元画像処理装置20のインターフェース21とを介して3次元画像処理装置20に供給される。
【0014】
3次元画像処理装置20は、インターフェース21、記憶部22、移動量・移動方向算出部23、画像合成部24、表示画像発生部25、表示部26、操作部27、及びシステム制御部28を有する。
【0015】
記憶部22は、前方視IVUS10からの3次元超音波画像のデータを走査時刻に関連付けて記憶する。また、記憶部22は、後述する画像合成部24により生成された合成画像のデータや、表示画像発生部25により発生された種々の表示画像のデータを記憶する。
【0016】
移動量・移動方向算出部23は、第1走査時刻に関する3次元超音波画像と第2走査時刻に関する3次元超音波画像とに基づいて、第1走査時刻から第2走査時刻までの超音波プローブの移動量と移動方向とを算出する。移動量と移動方向との算出には、第1走査時刻に関する3次元超音波画像と第2走査時刻に関する3次元超音波画像との重複領域が利用される。
【0017】
画像合成部24は、移動量と移動方向とに基づいて第1走査時刻に関する3次元超音波画像と第2走査時刻に関する3次元超音波画像とを位置整合して合成することによって合成画像のデータ(ボリュームデータ)を発生する。
【0018】
表示画像発生部25は、合成画像のデータに基づいて2次元の表示画像(以下、表示合成画像と呼ぶことにする)のデータを発生する。例えば、表示画像発生部25は、3次元合成画像のデータに仮想内視鏡表示処理(血管内に視点が設定され、血管の進行方向を観察するための画像)やボリュームレンダリング、MPRを施して表示合成画像のデータを発生する。また、表示画像発生部25は、3次元超音波画像のデータに基づいて2次元の表示画像(以下、表示単体画像と呼ぶことにする)のデータを発生してもよい。
【0019】
表示部26は、種々の表示画像を表示する。また、表示部26は、前方視IVUSプローブ12の移動量や移動方向を種々の表示画像上に表示する。表示部26としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が利用可能である。
【0020】
操作部27は、術者等の操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部27としては、キーボードやマウス、スイッチ等が利用可能である。
【0021】
システム制御部28は、3次元画像処理装置20の中枢として機能する。例えば、システム制御部28は、カテーテル術の支援のための各種の処理を行なうために各部を制御する。
【0022】
以下、第1実施形態に係る医用画像収集装置1の動作例を、移動量・移動方向算出処理と画像合成処理とに分けて説明する。なお、以下の動作例は、前方視IVUSプローブ12が取り付けられたカテーテル11を治療部位に到達させるというカテーテル術のもとで行なわれるとする。このようなカテーテル術は、図示しないX線診断装置によりカテーテル11をX線透視しながら行われる。術者は、X線透視により生成されるX線透視画像を観察しながら、目的の治療部位までカテーテル11を進める。
【0023】
[移動量・移動方向算出処理]
カテーテル術中において、カテーテル11の先端に取り付けられた前方視IVUSプローブ12は、血管内に挿入される。超音波走査部13は、前方視IVUSプローブ12を介して一定時間毎に前方の走査領域を超音波で3次元走査し、超音波信号を生成する。3次元超音波画像発生部16は、生成された超音波操作信号に基づいて走査領域に関する3次元超音波画像のデータを発生する。発生された3次元超音波画像のデータは、リアルタイムにファイバーチャネルケーブルを介して3次元画像処理装置20に供給される。
【0024】
図3は、移動量・移動方向の算出処理の概要を示す図である。図3に示すように、走査時刻tにおいて前方視IVUSプローブ12の先端は、位置P1に位置するとする。この時、超音波走査部13は、位置P1の前方に位置する走査領域SR1を前方視IVUSプローブを介して走査する。典型的には、前方視IVUSプローブ12と走査領域SRとの間隔は、6mm程度である。この状態から前方視IVUSプローブ12は、期間Δt中に術者により直進移動され、走査時刻t+Δtにおいて位置P2に位置するとする。走査時刻t+Δtにおいて超音波走査部13は、位置P2の前方に位置する第2の走査領域SR2を前方視IVUSプローブ12を介して走査する。換言すれば、走査領域は、走査時刻tから走査時刻t+Δtにかけて平行移動する。本実施形態においては、隣り合う走査時刻に関する走査領域SR1と走査領域SR2とは、移動量と移動方向との算出のため、重複領域SROを有している。従って、術者は、少なくとも隣り合う走査領域SR1とSR2とが重複領域SROを有するように、すなわち3次元超音波画像のフレームレートを考慮して、カテーテル11を移動させる必要がある。なお、図3において走査領域は、2次元で表現されているが、実際には3次元である。
【0025】
ここで、図3の(b)に示すように、走査領域SR1に関する第1の3次元超音波画像をU(x,y,z,θ,θ,θ)と表現し、図3の(c)に示すように、走査領域SR2に関する第2の3次元超音波画像をUt+Δt(x,y,z,θ,θ,θ)と表現する。なお各3次元超音波画像は、XYZ直交座標系により規定されており、各3次元超音波画像の座標系は独立であるとする。θ、θ、及びθは、それぞれ原点を中心としたX軸、Y軸、及びZ軸からの回転角度である。
【0026】
まず、画像U(x,y,z,θ,θ,θ)のデータが前方視IVUS10から3次元画像処理装置20に供給されると、システム制御部28は、供給された画像U(x,y,z,θ,θ,θ)のデータを記憶部22に記憶する。次に、システム制御部28は、Ut+Δt(x,y,z,θ,θ,θ)のデータが前方視IVUSから3次元画像処理装置20に供給されると、供給された画像Ut+Δt(x,y,z,θ,θ,θ)のデータを記憶部22に記憶する。これと略同時にシステム制御部28は、画像U(x,y,z,θ,θ,θ)のデータと画像Ut+Δt(x,y,z,θ,θ,θ)のデータとを記憶部22から読み出し、移動量・移動方向算出部23に供給する。
【0027】
移動量・移動方向算出部23は、画像U(x,y,z,θ,θ,θ)と画像Ut+Δt(x,y,z,θ,θ,θ)とに以下の(1)を適用し、重複領域に基づいて画像U(x,y,z,θ,θ,θ)と画像Ut+Δt(x,y,z,θ,θ,θ)との位置ずれ量と位置ずれ角度とを算出する。
【数1】

【0028】
より詳細には、移動量・移動方向算出部23は、Δx、Δy、Δz、Δθ、Δθ、及びΔθの各々の値を変えながら繰り返し(1)式を計算する。そして移動量・移動方向算出部23は、C(Δx、Δy、Δz、Δθ,Δθ,Δθ)を最小にするΔx、Δy、Δz、Δθ、Δθ、及びΔθの組み合わせを同定する。C(Δx、Δy、Δz、Δθ,Δθ,Δθ)を最小にするΔx、Δy、Δz、Δθ、Δθ、及びΔθがそれぞれΔx、Δy、Δz、Δθx0、Δθy0、及びΔθz0の場合、走査時刻tから走査時刻t+Δtまでの間に前方視IVUSプローブ12が(Δx0,Δy0,Δz)だけ移動し、(Δθx0,Δθy0,Δθz0)だけ回転していることを示している。このような対応関係を考慮して移動量・移動方向算出部23は、(Δx0,Δy0,Δz)に基づいて走査領域の位置ずれ量を算出し、(Δθx0,Δθy0,Δθz0)に基づいて走査領域の位置ずれ角度を算出する。算出された位置ずれ量は、走査時刻tから走査時刻t+Δtまでの間の前方視IVUSプローブ12の移動量に対応する。移動量(位置ずれ量)は、例えば、ベクトルの長さとして算出される。また、算出された位置ずれ方向は、走査時刻tから走査時刻t+Δtまでの間の前方視IVUSプローブ12の移動方向(前方視IVUSプローブ12の傾き角度)に対応する。移動方向(位置ずれ方向)は、例えば、ベクトルの方向及び向きとして算出される。
【0029】
以上で移動量と移動方向との算出処理が終了する。
【0030】
図4と図5とは、走査領域が回転する場合における、前方視IVUSプローブ12と走査領域との位置関係を示す図である。図4において前方視IVUSプローブ12は、走査時刻tにおいて位置P1に位置し、期間Δt中に位置P3に移動するものとする。また、カテーテル11の先端部分の向きが変更されているものとする。この場合、時刻t+Δtに関する走査領域SR3は、走査領域SR1を、その端を回転軸として回転されたものである。また、図5において前方視IVUSプローブ12は、走査時刻tにおいて位置P1に位置し、期間Δt中に位置P4に移動するものとする。また、カテーテル11の先端部分の向きが変更されているものとする。この場合、時刻t+Δtに関する走査領域SR4は、走査領域SR1の位置と角度とが移動し、回転されたものである。移動量・移動方向算出部23は、このような走査領域が移動及び回転する場合にも上述の(1)式を画像U(x,y,z,θ,θ,θ)と画像Ut+Δt(x,y,z,θ,θ,θ)とに適用して、時刻tから時刻t+Δtまでの前方視IVUSプローブ12の移動量と移動方向とを算出することができる。
【0031】
[画像合成処理]
上述の移動量と移動方向との算出処理が終了するとシステム制御部28は、算出された移動量のデータと移動方向のデータとを画像合成部24に供給する。また、システム制御部28は、移動量と移動方向との算出処理がなされた2つの3次元超音波画像のデータを画像合成部24に供給する。
【0032】
図6は、画像合成部24による画像合成処理を説明するための図である。なお図6において3次元超音波画像U及びUt+Δtは、説明の簡単のため2次元で表現されているが、実際には3次元である。また、図6における体内領域は、便宜的に複数の画素で分割して表現されている。図6の(a)は、走査時刻tにおける体内領域内での前方視IVUSプローブ12と3次元超音波画像(走査領域)との位置関係を示す図である。図6の(b)は、走査時刻t+Δtにおける体内領域内での前方視IVUSプローブ12と3次元超音波画像(走査領域)との位置関係を示す図である。図6の(a)と(b)とに示すように、移動量・移動方向算出部23により前方視IVUSプローブ12が画像上右方向(+Z方向)に1画素分、下方向(−Y方向)に1画素分だけ移動された、すなわち、移動量がルート2(2の平方根)画素分、移動方向が右下であると算出されたとする。
【0033】
画像合成部24は、算出された移動量と移動方向とに基づいて画像U(x,y,z,θ,θ,θ)と画像Ut+Δt(x,y,z,θ,θ,θ)とを位置整合して合成し、図6の(c)に示すような、合成画像のデータを生成する。
【0034】
以上で画像合成処理が終了する。
【0035】
リアルタイムに前方視IVUS10から供給される3次元超音波画像に対して繰り返し画像合成処理が行なわれることにより、前方視IVUSプローブ12が通過した血管とその周囲とに関する合成画像が生成される。その後、表示画像発生部25は、合成画像に基づいて2次元の表示合成画像のデータを発生し、表示部26は、表示合成画像を表示する。術者は、表示合成画像を観察し、治療部位への経路を確認したり、治療部位を観察したりする。
【0036】
[効果]
画像合成処理により3次元超音波画像を組み合わせることで前方視IVUSプローブ12の視野を大幅に拡大することができる。画像合成処理の後、前方視IVUSプローブ12が取り付けられたカテーテル11とは異なる他のカテーテル(例えば、治療用カテーテル)が挿入され、治療部位まで進められる。治療用カテーテルを進める際には、既に合成画像により、血管の分岐点の位置や分岐方向等の血管の3次元構造が判明されている。従って術者は、合成画像に基づく表示合成画像を観察しながら治療用カテーテルを進めることにより、容易に治療用カテーテルを治療部位まで進めることができる。また、術者は、人体内でのカテーテル11の先端部分(前方視IVUSプローブ12)の位置や角度を容易に把握し、また、人体内での3次元超音波画像の向きを容易に把握できる。
【0037】
また、再度、前方視IVUSプローブ12が取り付けられたカテーテル11を血管内に挿入する場合、移動量・移動方向算出部23は、前の挿入において生成された合成画像と今回の挿入において生成された合成画像とに対して(1)式の相関演算を行なうことにより、今回挿入されている前方視IVUSプローブ12の位置や角度をリアルタイムにすることができる。このため、図示しないX線診断装置によるX線透視で前方視IVUSプローブ12の位置や角度を常に確認する必要がなくなる。すなわち、前方視IVUSプローブ12の挿入時におけるX線透視のフレームレートを大幅に低下させることができる。あるいは、X線診断装置によりX線透視を行なう必要がなくなる。これによりカテーテル術における被検体の被爆量を従来に比して低減できる。
【0038】
(変形例1)
例えば、腹部や心臓は、呼吸・拍動等による周期運動をする。周期運動による影響が及ぶ体内領域に対して単に本実施形態を適用する場合、周期運動による前方視IVUSプローブ12の動きを誤検出してしまうことがある。以下、第1実施形態に係る変形例に係る医用画像収集装置による、前方視IVUSプローブ12の動きの誤検出の防止に関する2つの動作例を示す。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0039】
第1の動作例:第1の動作例は、予め周期運動による影響が及ぶ領域を移動量・移動方向算出処理の処理対象外に設定する方法である。まず、術者は、操作部27を介して3次元超音波画像の中から、周期運動による影響が及ぶ領域、又は周期運動による影響が及ばない領域を指定する。周期運動による影響が及ぶ領域が指定された場合、移動量・移動方向算出部23は、指定された領域を処理対象外領域に設定し、指定された領域以外の領域を処理対象領域に設定する。そして移動量・移動方向算出部23は、設定された処理対象領域について上記の移動量・移動方向算出処理を行なう。一方、周期運動による影響が及ばない領域が指定された場合、移動量・移動方向算出部23は、指定された領域を処理対象領域に設定する。そして移動量・移動方向算出部23は、設定された処理対象領域について上記の移動量・移動方向算出処理を行なう。第1の動作例によれば、周期運動による影響が及ばない処理対象領域が操作部27を介して設定されるので、周期運動による前方視IVUSプローブ12の動きの誤検出を防止することができる。
【0040】
第2の動作例:第2の動作例は、操作部27介した領域指定を必要としない。例えば、医用画像収集装置1は、誤検出を防止するために、周期運動計測器(図示せず)を有する。周期運動計測器は、被検体による周期運動を計測する。周期運動計測器としては、例えば、心臓の鼓動の位相を検出する心電計や呼吸の位相を検出する呼吸センサの少なくとも一方が利用される。以下、説明を具体的に行なうため周期運動計測器は、心電計であるとする。心電計は、被検体に関する心電波形のデータを繰り返し生成する。心電波形のデータは、3次元画像処理装置20に供給される。移動量・移動方向算出部23は、心電計からの心電波形のデータを利用する。具体的には、移動量・移動方向算出部23は、心電波形の中から所定の心電位相(例えば、R波等)を検出する。そして移動量・移動方向算出部23は、リアルタイムに発生される3次元超音波画像のうちの同一の心電位相の3次元超音波画像のみに対して移動量・移動方向算出処理を行なう。第2の動作例によれば、同一の心電位相に関する3次元超音波画像のみを処理対象とするので、周期運動による前方視IVUSプローブ12の動きの誤検出を防止することができる。
【0041】
(変形例2)
上述の実施形態において、超音波プローブ12はカテーテルに取り付けられた前方視IVUSプローブであるとした。しかしながら第1実施形態は、これに限定する必要はない。例えば、超音波プローブ12は、超音波診断装置に取り付けられるタイプのもの、すなわち体表から超音波走査するタイプのものであっても良い。この場合も移動量・移動方向算出部23により第1の走査時刻と第2の走査時刻との間の超音波プローブ12の移動量と移動方向とを算出でき、従って第1の走査時刻に関する3次元超音波画像と第2の走査時刻に関する3次元超音波画像とを位置整合して合成することができる。従って超音波プローブ12による3次元超音波走査の視野を従来に比して大幅に広くすることができる。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る医用画像収集装置は、前方視IVUSプローブの3次元空間上における位置を同定することによって、カテーテル術における治療時間の低減や治療精度の向上を実現する。以下に第2実施形態に係る医用画像収集装置について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0043】
図7は、本発明の第2実施形態に係る医用画像収集装置2のネットワーク環境を示す図である。図7に示すように、医用画像収集装置2は、ネットワークインターフェース201を介して院内ネットワーク等のネットワークに接続されている。ネットワークには、X線コンピュータ断層撮影装置203や磁気共鳴イメージング装置205、PACS(picture archiving and communication system)207が接続されている。医用画像収集装置2は、ネットワークインターフェース201を介してX線コンピュータ断層撮影装置203や磁気共鳴イメージング装置205、PACS207からCT画像のデータやMRI画像のデータ等の3次元医用画像のデータ(ボリュームデータ)を収集する。
【0044】
図8は、第2実施形態に係る医用画像収集装置2の構成を示す図である。図8に示すように、医用画像収集装置2の3次元画像処理装置30は、さらに3次元位置同定部31と関連付け部32とを有している。
【0045】
3次元位置同定部31は、3次元医用画像上における前方視IVUSプローブ12の位置を同定する。これにより前方視IVUSプローブ12の3次元空間上における位置を同定する。具体的には、3次元位置同定部31は、例えば、操作部27を介して入力された3次元医用画像上の位置を、第1の走査時刻における3次元医用画像上での前方視IVUSプローブ12の3次元位置として同定する。さらに3次元超音波画像に含まれる解剖学構造上の2点と、3次元医用画像に含まれる同一解剖学構造上の2点とを同定する。これにより3次元医用画像の3次元座標と3次元超音波画像の3次元座標とを関連付けることができる。第1の走査時刻における3次元位置は、それ以後の走査時刻に関する前方視IVUSプローブ12の3次元位置の同定処理の基準となる。次に、3次元位置同定部31は、第1の走査時刻から第2の走査時刻までの移動量及び移動方向と第1の走査時刻に関する3次元位置とに基づいて、3次元医用画像上での第2の走査時刻における3次元位置を同定する。
【0046】
関連付け部32は、3次元医用画像上の3次元位置の画素と、その3次元位置に前方視IVUSプローブ12が位置する時に生成された3次元超音波画像のデータとを関連付ける。
【0047】
以下、第2実施形態に係る医用画像収集装置2の動作例を3次元位置同定処理と関連付け処理とに分けて説明する。以下の動作例は、第1実施形態と同様に、前方視IVUSプローブ12が取り付けられたカテーテル11を治療部位に到達させるというカテーテル術のもとで行なわれるとする。
【0048】
[3次元位置同定処理]
まず、3次元位置同定部31は、カテーテル術の開始時等において、前方視IVUSプローブ12の3次元医用画像上における基準位置を同定する。具体的には、まず、術者は、操作部27を介して3次元医用画像上における現在の前方視IVUSプローブ12の位置を指定する。より詳細には、表示画像発生部25により発生された、3次元医用画像に基づく表示画像(以下、表示医用画像と呼ぶことにする)上において前方視IVUSプローブ12の位置が指定される。指定された位置は、基準時刻における前方視IVUSプローブ12の3次元位置(基準位置)として3次元位置同定部31により同定される。
【0049】
さらに術者は、操作部27を介して3次元超音波画像に含まれる解剖学構造上に最低2点を指定する。より詳細には、表示画像発生部25により発生された、3次元超音波画像に基づく前方視IVUS画像(表示合成画像や表示単体画像)上において2点を指定する。次いで術者は、操作部27を介して3次元医用画像上に、3次元超音波画像上で指定された構造と全く解剖学的に一致する構造を2点指定する。これにより3次元医用画像の3次元座標と3次元超音波画像の3次元座標とを関連付けることができる。
【0050】
次に、術者は、前方視IVUSプローブ12を治療部位まで進める。この期間中、移動量・移動方向算出部23は、上述の移動量・移動方向算出処理を行い、前方視IVUSプローブ12の移動量と移動方向とをリアルタイムに繰り返し算出する。算出された移動量と移動方向とのデータは、システム制御部28により走査時刻に関連付けられて3次元位置同定部31に供給される。
【0051】
移動量と移動方向とのデータが供給されると3次元位置同定部31は、3次元医用画像上における前方視IVUSプローブ12の位置を更新する。より詳細には、3次元位置同定部31は、1つ前の走査時刻に関する3次元位置と現在の走査時刻に関する移動量及び移動方向とに基づいて、3次元医用画像上における前方視IVUSプローブ12の3次元位置をリアルタイムに同定する。例えば、基準時刻の次の走査時刻(現在の走査時刻)に関する移動量(現在の移動量)と移動方向(現在の移動方向)とのデータが、3次元位置同定部31に供給されるとする。この場合、3次元位置同定部31は、基準位置から現在の移動方向に沿って現在の移動量だけ離れた位置を現在の走査時刻に関する3次元位置に同定する。さらに次の走査時刻に関する移動量と移動方向とが供給された場合、3次元位置同定部31は、同定された現在の走査時刻に関する3次元位置を基準時刻の3次元位置として同様の処理を行なうことにより3次元位置を更新する。
【0052】
3次元位置が同定されると表示部26は、表示医用画像や表示合成画像上に3次元位置を表示する。3次元位置の表示例として、例えば、表示医用画像や表示合成画像上に3次元位置を指し示すマークが表示される。また、表示部26は、表示医用画像や表示合成画像上に移動量と移動方向とを表示してもよい。また、3次元医用画像に血管情報(例えば、造影剤により造影された血管に関する画素領域)が含まれる場合、表示画像発生部31は、この3次元医用画像のデータに基づいて仮想内視鏡画像(透視投影法により血管内に視点が設定された画像)のデータや血管に関するボリュームレンダリング画像のデータを発生してもよい。この場合、表示部26は、仮想内視鏡画像上に3次元位置や移動量、移動方向を表示する。さらに表示部26は、仮想内視鏡画像と血管に関するボリュームレンダリング画像とを同時に表示し、これら画像上に現在の3次元位置を表示する。これにより術者は、前方視IVUSプローブ12の現在位置と血管との位置関係を視覚的に明瞭に確認できる。
【0053】
なお、基準時刻以降の3次元位置の位置精度を向上させるため、同定された3次元位置を補正してもよい。例えば、3次元位置同定部31は、3次元医用画像上の解剖学的形状の特徴量に基づいて3次元位置を補正する。解剖学的形状の特徴量は、例えば、血管の分岐点、狭窄部位、血管に付着している物質(カルシウム等)の少なくとも1つである。
【0054】
[関連付け処理]
3次元位置が同定されると関連付け部32は、関連付け処理を行なう。関連付け処理において関連付け部32は、同定された現在の走査時刻に関する3次元位置の3次元医用画像上の画素と、前方視IVUSプローブがこの3次元位置に位置する時に発生された3次元超音波画像(換言すれば、現在の走査時刻に関する3次元超音波画像)のデータとを関連付ける。画素と3次元超音波画像との関連付け情報は、記憶部22に記憶される。
【0055】
表示医用画像を表示する際、表示部26は、3次元超音波画像のデータが関連付けられた画素を明示する。システム制御部28は、術者により操作部27を介して画素が指定されることを契機として、指定された画素に関連付けられた3次元超音波画像のデータを記憶部22から読み出す。そしてシステム制御部28は、読み出された3次元超音波画像のデータを表示画像発生部25に供給する。表示画像発生部25は、供給された3次元超音波画像に基づいて表示単体画像のデータを発生する。そして表示部26は、表示単体画像を表示する。
【0056】
[効果]
第2実施形態に係る医用画像収集装置2は、前方視IVUSプローブ12の3次元位置を3次元医用画像上でリアルタイムに同定する。そして医用画像収集装置2は、同定された3次元位置を表示医用画像や表示合成画像上に表示する。また、医用画像収集装置2は、表示医用画像や表示合成画像上に前方視IVUSプローブ12の移動量や移動方向を表示する。これらの表示により術者は、人体内での前方視IVUSプローブ12の位置、移動量、及び移動方向を容易に確認することができる。また、従来のようにX線診断装置によりX線透視を行なうことで前方視IVUSプローブ12の人体内での位置を確認していた場合に比して、X線透視のフレームレートを低減できたり、あるいはX線透視をする必要がなくなったりする。これに伴いカテーテル術における被検体の被爆量を従来に比して低減できる。また、関連付け処理により術者は、表示させたい位置における表示単体画像をより直感的に選択し、表示させることができる。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る医用画像収集装置は、X線撮影により発生されたX線画像を利用して前方視IVUSプローブ12の3次元空間上における位置を同定することによって、カテーテル術における治療時間の低減や治療精度の向上を実現する。以下に第3実施形態に係る医用画像収集装置について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0058】
図9は、本発明の第3実施形態に係る医用画像収集装置3の概略的な構成を示す図である。図9に示すように、医用画像収集装置3は、3次元画像処理装置40に加え、さらにX線診断装置50を有している。すなわち、3次元画像処理装置40は、ファイバーチャネル転送系をさらにもう1系統有しており、ファイバーチャネルケーブルを介してX線診断装置50と接続されている。
【0059】
X線診断装置50は、X線撮影機構51とX線撮影制御部52とインターフェース53とを有する。
【0060】
X線撮影機構51は、アームを有する。アームは、X線管とX線検出器とを回転可能に支持する支持機構である。X線管は、X線を発生する。X線検出器は、X線管から発生され被検体を透過してX線を検出し、X線画像のデータを発生する。X線撮影機構51は、X線撮影制御部52による制御に従って、カテーテル術中に複数の撮影角度で被検体をX線撮影し、複数の撮影角度に関する複数のX線画像のデータを発生する。複数のX線画像のデータは、ファイバーチャネルケーブルを介して3次元画像処理装置40に供給される。X線撮影制御部52は、X線条件に従ってX線撮影機構51を制御し、被検体をX線撮影する。
【0061】
第3実施形態に係る3次元画像処理装置40は、さらに3次元位置同定部41と2次元位置同定部42とを有している。
【0062】
3次元位置同定部41は、複数の撮影角度に関する複数のX線画像に基づいて、第1の走査時刻に関する前方視IVUSプローブ12の3次元位置を同定する。複数のX線画像に基づいて同定された3次元位置は、それ以後の前方視IVUSプローブ12の3次元位置同定処理の基準位置となる。3次元位置同定部41は、第2実施形態と同様に、移動量・移動方向算出部23により算出された移動量・移動方向と基準位置とに基づいて、第2の走査時刻に関する前方視IVUSプローブ12の3次元位置を同定する。
【0063】
2次元位置同定部42は、同定された3次元位置を複数のX線画像の各々に投影し、各X線画像上における前方視IVUSプローブ12の位置(2次元位置)を同定する。
【0064】
以下、第3実施形態に係る医用画像収集装置3の動作例を3次元位置同定処理と2次元位置同定処理とに分けて説明する。以下の動作例は、第1実施形態と同様に、前方視IVUSプローブ12が取り付けられたカテーテル11を治療部位に到達させるというカテーテル術のもとで行なわれるとする。
【0065】
[3次元位置同定処理]
まず、X線撮影機構51は、カテーテル術の開始時等において、例えば正面方向と側面方向との2方向(2つの撮影角度)から被検体をX線撮影し、2つの撮影角度に関する2つのX線画像のデータを発生する。発生された2つのX線画像のデータは、3次元画像処理装置40に供給される。
【0066】
次に3次元位置同定部41は、2つのX線画像に基づいて前方視IVUSプローブ12の基準位置を同定する。図10は、基準位置の同定処理を説明するための図である。まず、術者は、図10に示すように、操作部27を介して2つのX線画像IAとX線画像IBとに現在の前方視IVUSプローブ12の位置をそれぞれ指定する。例えば、カテーテルの先端(前方視IVUSプローブ)の位置と、先端から数mm分手元側の位置とが指定されるとよい。ここで、X線画像IA上に点P1Aと点P2Aとが指定され、X線画像IB上に点P1Bと点P2Bとが指定されたとする。この位置指定により前方視IVUSプローブ12の位置が各X線画像上において指定されることとなる。
【0067】
2つのX線画像IA,IB上の各々に前方視IVUSプローブ12の位置P1A,P2A,P1B,P2Bが指定されると3次元位置同定部41は、図10に示すように、位置P1A,P2A,P1B,P2Bにエピポーラ幾何理論を適用し、前方視IVUSプローブ12の3次元位置P1,P2を同定する。同定された3次元位置P1は、例えば、前方視IVUSプローブ12の先端位置をX線撮影機構51における3次元座標系上で規定し、さらにP2からP1への方向ベクトルが前方視IVUSプローブ12の進行方向をX線撮影機構51における3次元座標系上で規定する。次に術者は、前方視IVUS画像診断装置(表示合成画像や表示単体画像)上で、人体前面方向を示す方向を同定する。これにより3次元超音波画像における3次元座標系とX線撮影機構51における3次元座標系とを一致させることができる。3次元超音波画像における人体前面方向の同定は、血管の分岐など解剖学的な位置関係で既知の位置で実施するのが容易である。同定された3次元位置と方向とが以降の3次元位置同定処理の基準位置となる。
【0068】
次に、術者は、前方視IVUSプローブ12を治療部位まで進める。この期間中、移動量・移動方向算出部23は、第1実施形態の移動量・移動方向算出処理を行い、前方視IVUSプローブ12の移動量と移動方向とをリアルタイムに繰り返し算出する。算出された移動量と移動方向とのデータは、システム制御部28により走査時刻に関連付けられて3次元位置同定部41に供給される。
【0069】
移動量と移動方向とのデータが供給されると3次元位置同定部41は、第2実施形態と同様の方法で、前方視IVUSプローブ12の3次元位置を更新する。
【0070】
[2次元位置同定処理]
前方視IVUSプローブ12の3次元位置が同定される2次元位置同定部42は、同定された3次元位置を2つのX線画像上に投影する。これにより各X線画像上における前方視IVUSプローブ12の位置が同定される。表示部26は、同定された前方視IVUSプローブ12の位置を強調してX線画像を表示する。また、表示部26は、前方視IVUSプローブ12の移動量と移動方向とを各X線画像上に表示してもよい。
【0071】
[効果]
上述のように第3実施形態によれば、X線透視をし続けることなくX線画像上に前方視IVUSプローブの位置をリアルタイムに表示できる。従ってX線撮影の時間間隔(X線画像のフレームレート)を大幅に低減できる。例えば、撮影領域(発生予定のX線画像)上の端(カテーテル11の挿入部に近いほうの端)に前方視IVUSプローブ12が描出される時にX線撮影をし、X線画像を表示する。そして術者は、治療部位に向けてカテーテルを進める。この間X線撮影をする必要は無く、移動量・移動方向算出部23によりカテーテル11の先端部分(すなわち前方視IVUSプローブ12)の位置をリアルタイムに追跡する。前方視IVUSプローブ12の位置は、既に表示されているX線画像上に重ねてリアルタイムに表示される。そして前方視IVUSプローブ12がX線画像の他端(治療部位に近いほうの端)に到達する頃に、アームや寝台を移動させて、新たな撮影領域でX線撮影を行なう。この操作を繰り返すことにより、被爆量を大幅に低減した上で前方視IVUSプローブ12の位置をX線画像上にリアルタイムに表示することができる。
【0072】
(変形例)
第3実施形態の変形例に係る医用画像収集装置3は、上述の方法とは異なるX線撮影タイミングでX線撮影する。以下、第3実施形態の変形例に係る医用画像収集装置3について説明する。なお以下の説明において、第3実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0073】
例えば、X線撮影制御部52は、前方視IVUSプローブ12の解剖学的な位置に応じてX線撮影機構51を制御する。具体的には、X線撮影制御部52は、3次元画像処理装置40からの前方視IVUSプローブ12の3次元位置の解剖学的位置に応じてX線撮影タイミングを制御する。例えばX線撮影制御部52は、X線画像上において前方視IVUSプローブ12の3次元位置が血管の分岐点に到達した場合、X線撮影機構51にX線撮影を行わせるとよい。
【0074】
X線撮影の他のタイミングとしては、典型的なX線透視のフレームレートよりも大幅に低いフレームレートで自動的にX線撮影されてもよい。また、前方視IVUSプローブ12のある位置からの移動量が一定値に到達したことを契機として、X線撮影が行われてもよい。また。アームや寝台が移動されたことを契機として、X線撮影が行われてもよい。このように第3実施形態の変形例によれば、従来のようにX線透視を行なっていた場合に比して、被爆量を低減することができる。
【0075】
(第4実施形態)
第4実施形態は、CTOに対する治療のためのカテーテル術を臨床応用例に挙げて説明する。図11は、CTOにおける閉塞領域を示す図である。図11に示すように、閉塞領域は、例えば、カルシウム化された硬い部分とカルシウム化されていない軟らかい部分とを含んでいる。閉塞領域において血管は、完全に塞がっており、血液が流れない。従って血管に造影剤を注入した状態でX線撮影をした場合であっても、X線画像に描出されない。そのため、閉塞領域を挟んでカテーテル11とは反対側の血管を造影剤で造影してX線画像を生成し、このX線画像をもとに閉塞領域の位置を予想する。そして予想した閉塞領域にカテーテル11(あるいはガイドワイヤ)を移動させ、閉塞領域にカテーテル11を抜き差ししながら軟らかい部分を突き破ることにより、閉塞領域を貫通させる。しかし、反対側から造影するには、小さい血管(側副血行路:完全閉塞部以降に血液が通らないために緊急的に人体により形成された血管)にカテーテルを通す必要があり、術者に高度の技術が要求され、また、この作業は時間がかかる。また、完全閉塞部の位置はあくまでも予想であるため、この予想に従ってカテーテル11を進めても血管内腔を突き破ってしまい、危険な事態を引き起こしてしまう危険性がある。
【0076】
第4実施形態に係る医用画像収集装置は、このような危険性を低減することを主目的としている。以下、第4実施形態に係る医用画像収集装置について説明する。なお以下の説明において、第1実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0077】
第4実施形態に係る医用画像収集装置の構成は、第1実施形態と同様である。
【0078】
第4実施形態に係る表示画像発生部25は、3次元超音波画像のデータに基づいて硬さ画像のデータを発生する。以下、硬さ画像について説明する。3次元超音波画像の画素値は、生体組織間の音響インピーダンス差に応じて決定されるので、3次元超音波画像は、生体組織の硬さを反映した画像であるということができる。硬さ画像のデータは、例えば、以下のように発生される。まず表示画像発生部25は、3次元超音波画像に所定投影方向に沿って投影処理を実行し、MIP画像等の投影画像のデータを発生する。所定投影方向は、例えば、血管の傾きや、カテーテル11の傾き、ガイドワイヤの傾き、血管芯線に沿う方向、移動量・移動方向算出部23により算出された移動方向等に設定される。そして表示画像発生部25は、画素値に応じた色情報を投影画像の画素に割り付ける。この色情報が割り付けられた投影画像が硬さ画像である。硬さ画像は、表示部26により表示される。
【0079】
図12は、硬さ画像ICの表示例を示す図である。図12に示すように、硬さ画像ICは、生体組織の硬さに応じて色づけされた(図12においてはハッチングで示されている)画素領域を有している。また、硬さ画像ICの横には、硬さ(画素値)と色との関係を示す表IDが表示される。硬さ画像ICは、硬さ画像上の解剖学的位置を容易に把握可能にするため、例えば、硬さ画像と同じ視線方向に関する表示単体画像等に重ねて表示されるとよい。
【0080】
[効果]
図12に示すように、硬さ画像ICは、生体組織の硬さに応じて色分けされているといえる。従った硬さ画像を観察することで術者は、血管中の軟らかい部分と硬い部分とを視覚的に容易に判別することができる。軟らかい部分と硬い部分とを判別できることにより、術者は、適切にカテーテル11やガイドワイヤの進行方向を決定することができる。
【0081】
(変形例)
第4実施形態の変形例に係る表示画像発生部25は、硬さ画像の画素各々について、画素に対応する前方視IVUSプローブ12の位置と血管壁との間の前方視IVUSプローブ12の移動方向に沿う距離間隔を計算する。そして表示画像発生部25は、計算された距離に応じた輝度を硬さ画像の画素に割り付ける。この硬さ画像を観察することで術者は、生体組織の硬さだけでなく、生体組織までの距離を視覚的に容易に判別するこができる。従って術者は、より容易に、より迅速に、より正確にカテーテル11やガイドワイヤの進行方向を決定することができる。
【0082】
かくして本実施形態によれば、カテーテル術における治療時間の低減や治療精度の向上を可能とする医用画像収集装置を提供することができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上本発明によれば、カテーテル術における治療時間の低減や治療精度の向上を可能とする医用画像収集装置の提供が実現する。
【符号の説明】
【0085】
1…医用画像収集装置、10…前方視IVUS、11…カテーテル、12…前方視IVUSプローブ、13…超音波走査部、14…送信部、15…受信部、16…3次元超音波画像発生部、17…インターフェース、20…3次元画像処理装置、21…インターフェース、22…記憶部、23…移動量・移動方向算出部、24…画像合成部、25…表示画像発生部、26…表示部、27…操作部、28…システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して、空間的に一部重複する2つの3次元領域を第1時刻と前記第1時刻よりも遅い第2時刻とにおいてそれぞれ超音波で走査する超音波走査部と、
前記超音波プローブからの出力に基づいて、前記第1時刻に関する第1超音波画像のデータと前記第2時刻に関する第2超音波画像のデータとを発生する発生部と、
前記第1超音波画像のデータと前記第2超音波画像のデータとに基づいて前記第1時刻から前記第2時刻までの前記超音波プローブの移動量と移動方向とを算出する算出部と、
を具備する医用画像収集装置。
【請求項2】
前記第1超音波画像のデータと前記第2超音波画像のデータとを前記移動量と前記移動方向とに基づいて位置整合して合成することによって合成画像のデータを発生する合成部、をさらに備える請求項1記載の医用画像収集装置。
【請求項3】
前記超音波プローブは、前方視IVUSプローブである、請求項1記載の医用画像収集装置。
【請求項4】
前記第1時刻における前記超音波プローブの3次元的な第1の位置と、前記第1位置と前記移動量と前記移動方向とに基づいて前記第2時刻における前記超音波プローブの3次元的な第2位置を同定する同定部、をさらに備える請求項1記載の医用画像収集装置。
【請求項5】
前記同定部は、X線コンピュータ断層撮影装置又は磁気共鳴イメージング装置により予め発生された3次元医用画像に基づいて前記第1位置を同定する、請求項4記載の医用画像収集装置。
【請求項6】
前記3次元医用画像上の前記第2位置の画素と前記第2超音波画像のデータとを関連付ける関連付け部、をさらに備える請求項5記載の医用画像収集装置。
【請求項7】
前記同定部は、X線診断装置により発生された複数の撮影角度に関する複数のX線画像に基づいて前記第1の位置を同定する、請求項4記載の医用画像収集装置。
【請求項8】
前記被検体にX線撮影を行い、X線画像のデータを発生するX線撮影機構と、
前記X線画像上における前記超音波プローブの前記第2の位置が血管分岐点に到達したことを契機としてX線撮影機構を制御し、X線撮影を行わせるX線撮影制御部と、
をさらに備える請求項4記載の医用画像収集装置。
【請求項9】
前記第1超音波画像、前記第2超音波画像、又は前記合成画像に基づいて投影画像を発生し、前記投影画像上の画素に画素値に応じた色情報を割り付けることによって第1色画像のデータを発生する発生部と、
前記第1色画像を表示する表示部と、
をさらに備える請求項2記載の医用画像収集装置。
【請求項10】
前記発生部は、前記第1色画像の画素各々に対して、前記画素に対応する前方視IVUSプローブの位置と血管壁との間の距離を割り付けることによって、第2色画像のデータを発生し、
前記表示部は、前記第2色画像を表示する、
請求項9記載の医用画像収集装置。
【請求項11】
前記移動量と移動方向との少なくとも一方を表示する表示部、をさらに備える請求項1記載の医用画像収集装置。
【請求項12】
前記算出部は、術者により前記第1超音波画像と前記第2超音波画像とに指定された注目領域に基づいて前記移動量と前記移動方向とを算出する、請求項1記載の医用画像収集装置。
【請求項13】
心臓の鼓動の位相と呼吸の位相との少なくとも一方に関する位相を繰り返し検出する検出部をさらに備え、
前記算出部は、前記検出された位相のうちの同一位相に関する前記第1超音波画像と前記第2超音波画像とに基づいて前記移動量と前記移動方向とを算出する、
請求項1記載の医用画像収集装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−156086(P2011−156086A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19198(P2010−19198)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】