説明

医療用容器

【課題】医療用容器の主薬剤室とは別に設けられた薬剤収納室内に収納された薬剤の混合忘れを防止することでき、かつ、薬剤収納室内に収納された薬剤のみが投与される危険性がなく、投与準備も容易である医療用容器を提供する。
【解決手段】医療用容器は、薬剤室を備える軟質容器本体2と、排出ポート3を備える。排出ポート3は、筒状本体部31と封止部32と筒状本体部31内に薬剤室および封止部側空間と連通しない薬剤収納室51aを形成する薬剤収納室区画部51と、収納部区画部に取り付けられ薬剤室内に延び、容器本体の表面側シート部2aの内面に固定された第1の固定部59a、裏面側シート部2bの内面に固定された第2の固定部59bを有する牽引部58を備える。容器本体2は、第1の固定部と第2の固定部間の離間を規制する離間規制部11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部において輸液などの薬液に薬剤の調製や配合を行うことができる輸液用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者に輸液を行うに先だって、輸液剤の入ったバイアル瓶やソフト軟質バッグ等に、予め輸液剤に配合することが困難な薬剤、例えば、ビタミン剤、抗生物質等の薬剤を混合、溶解させ、薬液を調製することが行われている。
このような薬液の調製は、液体状の薬剤の場合はそのまま、固体状の薬剤の場合は注射器で溶解液を加え溶解したのち、注射器に吸引し輸液剤が充填されたバイアル瓶もしくは軟質バッグに注入混合して行われている。
しかし、このような薬液の調製は、操作手順が煩雑であるという欠点があり、迅速な輸液を必要とする場合等には特に不便である。また、上記のような薬液の調整は、一旦輸液剤の一部を取り出し、別の容器内で混合・溶解させるため汚染された雰囲気や器具に接触する可能性があり、薬液の細菌による汚染や異物混入のおそれがあった。
【0003】
このような問題を解決するために、破断可能な連通規制部材を容器に配置し、内部の薬剤を混合する必要が出た際に、連通規制部材を容器の外部から指で押し、連通規制部材の膜体を破壊し、2つの部屋を連通させ、薬剤を混合するタイプのものが考案されている(特許文献1)。
しかしながら、このタイプの輸液用容器においては、2つの容器を連通させる前に輸液取出口(排出ポート)7から薬剤容器5内の薬剤を投与するおそれがある。この場合、薬剤容器4内の薬剤のみが高濃度で投与され薬剤本来の適正使用がされない恐れがある。
そこで、本願出願人は、上記問題点を解決するものとして、特開2005−95604号公報(特許文献2)を提案している。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2555143号公報
【特許文献2】特開2005−95604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2のものは、従来技術の問題点を解消しており、十分な効果を有する。しかし、特許文献2の医療用容器では、薬剤収納室内の薬剤の軟質バッグ内への流入および排出ポートによる薬液の排出を可能とするためには、軟質バッグ越しの連通規制部の破断作業が必要であり、より容易に薬剤収納室内の薬剤混合操作が行われるものが求められるようになった。また、運搬時、投与準備時などにおける医療用容器への衝撃(例えば、落下による衝撃)が、連通規制部に付与された場合、連通規制部に予定外の開通が生じることがある。この場合、どの時点における開通なのか不明なため、使用できないものとなる。
そこで、本発明の目的は、医療用容器の主薬剤室とは別に設けられた薬剤収納室内に収納された薬剤の混合忘れを防止することでき、かつ、薬剤収納室内に収納された薬剤のみが投与される危険性がなく、さらに、軟質容器越しの連通規制部の破断作業の必要がなく、投与準備がより容易に行うことができかつ、運搬時などにおいて医療用容器衝撃は付与されても、薬剤収納室内に収納された薬剤の主薬剤室への流出がない医療用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 可撓性材料により作製され、表面側シート部および裏面側シート部と、上端部および下端部を有し、内部に薬剤室を備える軟質容器本体と、前記容器本体の下端部に固定された排出ポートと、前記薬剤室に収納された薬剤とを備える医療用容器であって、
前記排出ポートは、筒状本体部と、該筒状本体部の下端部を封止するとともに薬剤投与部材を接続可能な封止部と、前記筒状本体部内に前記薬剤室および前記封止部側空間と連通せずかつ前記薬剤投与部材が侵入不能な薬剤収納室を形成する薬剤収納室区画部と、前記薬剤収納室に収納された前記薬剤室に収納されている薬剤と異なる薬剤と、前記薬剤収納室区画部に取り付けられるとともに、所定長前記薬剤室内の上端方向に延び、前記表面側シート部の内面に固定された第1の固定部および前記裏面側シート部の内面に固定された第2の固定部を備え、前記容器本体の圧迫時の前記第1の固定部と前記第2の固定部間の離間により、前記薬剤収納室区画部を前記薬剤室内の上端方向に牽引し、該薬剤収納室区画部を前記筒状本体部より離脱させるための牽引部とを備え、
前記軟質容器本体は、前記第1の固定部と前記第2の固定部間の離間を規制する剥離可能な離間規制部を備えている医療用容器。
【0007】
(2) 前記薬剤収納室区画部は、前記筒状本体部内を液密状態にて摺動する薬剤収納室区画部材である上記(1)に記載の医療用容器。
(3) 前記薬剤収納室区画部材は、前記筒状本体部内を液密状態にて連動して摺動可能な2つの摺動性シール部を有し、2つの前記摺動性シール部と前記筒状本体部内面により前記薬剤収納室を形成するものである上記(2)に記載の医療用容器。
(4) 前記薬剤収納室区画部材は、前記筒状本体部の上部開口部内をシールする第1の摺動性シール部と該第1の摺動性シール部より所定距離前記封止部側に位置する第2の摺動性シール部と、前記第1の摺動性シール部と第2の摺動性シール部とを連結する連結部を備えている上記(2)または(3)に記載の医療用容器。
(5) 前記排出ポートは、前記筒状本体部の上部開口部より所定距離前記封止部側にて前記筒状本体部内を仕切るとともに開口を有する仕切壁部を備え、前記薬剤収納室区画部材は、前記筒状本体部の上部開口部内をシールするとともに該筒状本体部内を液密状態にて摺動可能な摺動性シール部と、該摺動性シール部と連結され、前記仕切壁部の開口をシールする封鎖部とを備えている上記(1)に記載の医療用容器。
(6) 前記牽引部は、帯状もしくは線状の牽引部材であり、前記薬剤収納室区画部は、前記牽引部材を貫通させる牽引部材取付部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器。
(7) 前記容器本体は、前記薬剤室を第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有しており、前記第1の薬剤室には、第1の薬剤が収納され、前記第2の薬剤室には、第2の薬剤が収納されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の医療用容器。
(8) 前記仕切部は、前記離間規制部の上方となる位置に設けられている上記(7)に記載の医療用容器。
(9) 前記医療用容器は、前記第1の薬剤室もしくは前記第2の薬剤室を押圧することにより、前記仕切部が剥離し、該仕切部の剥離と同時もしくは続いて前記離間規制部が剥離するものである上記(7)または(8)に記載の医療用容器。
(10) 前記離間規制部および前記仕切部は、熱シールにより作製されている上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の医療用容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医療用容器では、前記排出ポートは、筒状本体部と、該筒状本体部の下端部を封止するとともに薬剤投与部材を接続可能な封止部と、前記筒状本体部内に前記薬剤室および前記封止部側空間と連通しない薬剤収納室を形成するとともに前記薬剤投与部材が侵入不能な薬剤収納室区画部と、前記薬剤収納室に収納された前記薬剤室に収納されている薬剤と異なる薬剤と、前記薬剤収納室区画部に取り付けられるとともに、所定長前記薬剤室内の上端方向に延び、前記表面側シート部の内面に固定された第1の固定部および前記裏面側シート部の内面に固定された第2の固定部を備え、前記容器本体の圧迫時の前記第1の固定部と前記第2の固定部間の離間により、前記薬剤収納室区画部を前記薬剤室内の上端方向に牽引し、該薬剤収納室区画部を前記筒状本体部より離脱させるための牽引部とを備え、前記軟質容器本体は、前記第1の固定部と前記第2の固定部間の離間を規制する剥離可能な離間規制部を備えている。
このため、軟質容器本体の上部側を手で押圧するなどして容器本体を圧迫するこれにより、離間規制部が剥離するとともに第1の固定部と第2の固定部間が離間し、薬剤収納室区画部が牽引部により、薬剤室内の上端方向に牽引される。これにより、薬剤収納室区画部は、排出ポートの筒状本体部より離脱し、薬剤収納室内に収納されていた薬剤は、薬剤室内に流入するとともに、封止部を用いた薬剤投与が可能となる。よって、本発明の医療用容器によれば、医療用容器の主薬剤室とは別に設けられた薬剤収納室内に収納された薬剤の混合忘れを防止することでき、かつ、薬剤収納室内に収納された薬剤のみが投与される危険性がなく、さらに、軟質容器越しの連通規制部の破断作業の必要がなく、投与準備をより容易に行うことができ、さらに、運搬時などに医療用容器に衝撃が負荷されても薬剤収納室内の薬剤の薬剤室への流出がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の医療用容器について、図面に示す実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。図2は、図1のA−A線断面図である。図3は、図1に示す医療用容器の排出ポートの拡大正面図である。図4は、図3に示す排出ポートの断面図である。図5は、図3のB−B線断面図である。図6は、図2の医療用容器の排出ポート付近の拡大断面図である。
図7は、本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
なお、図中の上側を「上端」、下側を「下端」として説明する。
本発明の医療用容器1は、可撓性材料により作製され、表面側シート部2aおよび裏面側シート部2bと、上端部5および下端部6を有し、内部に薬剤室20を備える軟質容器本体2と、容器本体2の下端部6に固定された排出ポート3と、薬剤室に収納された薬剤とを備える。
【0010】
そして、排出ポート3は、筒状本体部31と、筒状本体部31の下端部を封止するとともに薬剤投与部材を接続可能な封止部32と、筒状本体部31内に薬剤室20および封止部32側空間と連通せずかつ薬剤投与部材が侵入不能な薬剤収納室51aを形成する薬剤収納室区画部51と、薬剤収納室51aに収納された薬剤室に収納されている薬剤と異なる薬剤と、薬剤収納室区画部51に取り付けられるとともに、所定長薬剤室20内の上端方向に延び、表面側シート部2aの内面に固定された第1の固定部59aおよび裏面側シート部2bの内面に固定された第2の固定部59bを備え、容器本体2の圧迫時の第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間により、薬剤収納室区画部51を薬剤室20内の上端方向に牽引し、薬剤収納室区画部51を筒状本体部31より離脱させるための牽引部58とを備える。さらに、軟質容器本体2は、第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間を規制する剥離可能な離間規制部11を備えている。
なお、図1に示す実施例の医療用容器では、容器本体2は、薬剤室20が剥離可能な仕切部9により第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区分されており、第1の薬剤室21には、第1の薬剤21aが収納され、第2の薬剤室22には、第2の薬剤22aが収納されている。
【0011】
しかし、本発明の医療用容器としては、図14に示す医療用容器10のように、仕切部を備えないものであってもよい。
この実施例の医療用容器1は、図1に示すように、シート部状筒状体により形成された容器本体2を備え、この容器本体2には、内部収納部を区画する仕切部9が形成されており、収納部は、第1の薬剤室21と第2の薬剤室22に区画されている。
また、図1に示すように、容器本体2は上端部5および下端部6を備える。この例では。上端部5は、上端シール部5により形成され、下端部6は、下端シール部6により構成されている。なお、上端部および下端部は、シール部でなくてもよい。そして、この実施例の医療用容器1では、第1の薬剤室21側に設けられた薬剤排出ポート3を備えている。さらに、この実施例の医療用容器1では、第2の薬剤室22側に設けられた薬剤注入ポート4を備えている。
【0012】
そして、この実施例の医療用容器1の排出ポート3では、図3、図4、図5および図6に示すように、薬剤収納室区画部は、筒状本体部31内を液密状態にて摺動する薬剤収納室区画部材51により構成されている。具体的には、排出ポート3は、筒状本体部を構成する筒状本体部材31と、筒状本体部材31の下端部を封止するとともに薬剤投与部材を接続可能な封止部32と、この封止部32を下端部に収納するとともに、筒状本体部材31の下端開口部に固定されたキャップ部材33と、筒状本体部材31内に収納されるとともに筒状本体部材31の内面を液密状態にて摺動する薬剤収納室区画部材51と、この薬剤収納室区画部材51に取り付け、牽引部を構成する牽引部材58を備えている。
【0013】
そして、薬剤収納室区画部材51は、図2ないし図6に示すように、筒状本体部材31内を液密状態にて連動して摺動可能な2つの摺動性シール部52、55を有している。そして、薬剤収納室51aは、2つの摺動性シール部52,55と筒状本体部材31の内面間により形成されている。また、薬剤収納室区画部材51は、筒状本体部材31の上部開口部31a内をシールする第1の摺動性シール部52と第1の摺動性シール部52より所定距離封止部32側に位置する第2の摺動性シール部55と、第1の摺動性シール部52と第2の摺動性シール部55とを連結する連結部57を備えている。第1の摺動性シール部52は、円盤状の本体部と、本体部の側面に設けられ、筒状本体部材31の内面に液密状態にて接触するとともに摺動可能なシール部53を備える。同様に、第2の摺動性シール部55も、円盤状の本体部と、本体部の側面に設けられ、筒状本体部材31の内面に液密状態にて接触するとともに摺動可能なシール部56を備える。具体的には、摺動性シール部52、55は、円盤状の本体部と、本体部の側面に設けられた溝に、シール部53、56が部分的に収納されるとともに固定されている。シール部53,56としては、いわゆる弾性Oリングが使用される。また、第2の摺動性シール部55は、封止部32に接続される一般的な薬剤投与部材(いわゆる輸液用針管)が刺入不能なものとなっている。このため、図1,図2および図6に示す状態において、輸液用針管が封止部32に穿刺されたとしても、その先端が、薬剤収納室51a内に刺入しない。
【0014】
そして、第1の摺動性シール部52と第2の摺動性シール部55の離間距離は、筒状本体部の内径によっても相違するが、2.5〜70mmが好ましく、特に、5〜50mmが好ましい。また、筒状本体部31の内径としては、5〜20mmが好ましく、特に、4〜15mmが好ましい。また、薬剤収納室51aの容量としては、0.5〜50mlが好ましく、特に、3〜30mlが好ましい。また、第2の摺動性シール部55の位置は、封止部32に接続される一般的な輸液用針管が封止部32に穿刺されたとしても、その先端が、到達しない位置に配置することが好ましい。また、第1の摺動性シール部52の位置は、筒状本体部31の開口端31aより、若干封止部32側に位置することが好ましい。第1の摺動性シール部52と筒状本体部31の開口端31a間の距離としては、1〜5mmが好ましい。
【0015】
薬剤収納室区画部材51の形成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン(低密度〜高密度)、ポリ塩化ビニル(軟質〜硬質)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系樹脂等が挙げられる。
シール部53,56の形成材料としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴムのような各種ゴム材料等の弾性材料、あるいはこれらのうちの任意の2以上を組み合わせたもの(ブレンド、積層体等)、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体等のポリオレフィン、あるいは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド等の高分子材料を配合したものが挙げられる。
【0016】
また、薬剤収納室51aを形成する内面(具体的には、薬剤収納室51aを形成する筒状本体部の内面および薬剤収納室51aを形成する薬剤収納室区画部材51の表面)には、低薬剤吸着性物質を被覆してもよい。低薬物吸着性物質としては、従来からシリンジ用ラミネートガスケットに使用されている公知のものが使用できる。具体的に、ポリパラキシリレン、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン等が好ましく、フッ素系樹脂としては、四フッ化エチレン−パーフルオロエトキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。
また、薬剤収納室区画部材51が摺動する部分の筒状本体部31の内面には、低摩擦性物質を被覆してもよい。低摩擦性物質としては、四フッ化エチレン−パーフルオロエトキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等などのフッ素系樹脂、シリコーン、ダイヤモンドライクカーボンなどが好ましい。
また、薬剤収納室51a内に収納される薬剤としては、輸液剤に配合・溶解させるものであって、例えば抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活剤等が挙げられる。
【0017】
そして、薬剤収納室区画部材51には、牽引部材58が取り付けられている。この実施例では、薬剤収納室区画部材51は、第1の摺動性シール部52の上面に、側面に貫通孔を有する牽引部材取付部54を備えている。そして、牽引部材58は、この牽引部材取付部54の貫通孔を貫通することにより、薬剤収納室区画部材51に取り付けられている。牽引部材58は、所定長薬剤室20内の上端方向に延び、一端側が、第1の固定部59aにより容器本体2の表面側シート部2aの内面に固定され、他端側が第2の固定部59bにより容器本体2の裏面側シート部2bの内面に固定されている。また、薬剤収納室区画部材51の牽引部材取付部54から第1の固定部59aおよび第2の固定部59bまでの牽引部材58の長さは、20〜120mmが好ましく、特に、30〜80mmが好ましい。
【0018】
牽引部材58としては、帯状部材、糸状部材などどのようなものでもよい。好ましくは、帯状部材である。帯状部材としては、牽引時に延伸しない樹脂製フィルム部材が好ましい。そのようなフィルム部材としては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどが好ましい。また、牽引部材の形成材料としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマーなど、また、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好適である。さらに、牽引部材58は、第1の固定部59aおよび第2の固定部59bとなる部分に、牽引部材58の形成材料より融点が低い低融点樹脂層を有することが好ましい。このような低融点樹脂層を設けることにより、容器本体への固定が容易となる。低融点樹脂層としては、低融点ポリエチレン、EVA(エチレンビニルアセテート)などが好適である。牽引部材58の形成材料は、上記の低融点樹脂よりもある程度高い融点のものであることが好ましい。
この例では、牽引部材58は、薬剤収納室区画部材51に固定されていないが、牽引部材は、薬剤収納室区画部材51に固定されていてもよい。また、上述の例では、牽引部材58は、一端部に第1の固定部59aを有し、他端部に第2の固定部59bを有し、牽引部材取付部54にて折り返す1本のものとなっている。しかし、牽引部材58は、一端部に第1の固定部59aを有し他端が薬剤収納室区画部材51に固定された第1の牽引部材と、一端部に第2の固定部59bを有し他端が薬剤収納室区画部材51に固定された第2の牽引部材とからなるものであってもよい。
【0019】
この実施例の医療用容器1の作用を図6および図7を用いて説明する。
この実施例の医療用容器では、容器本体2を圧迫しない状態では、図6の状態となっている。この状態では、牽引部材58に実質的に牽引力は負荷されておらず、薬剤収納室区画部材51も安定した状態となっている。そして、軟質容器本体2の上部側を手で押圧するなどして容器本体2を圧迫すると、図7に示すように、離間規制部11が剥離し、これに続き、表面側シート部2aと裏面側シート部2b間が広がり、第1の固定部59aと第2の固定部59b間が離間する。第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間により、薬剤収納室区画部材51が牽引部材58により、薬剤室20(第1の薬剤室21)内の上端方向に牽引される。牽引の開始とともに、薬剤収納室区画部材51の第1の摺動性シール部52と第2の摺動性シール部55は連動して筒状本体部材31内を上方に摺動し、やがて、筒状本体部材31より離脱する。これにより、排出ポート3内の薬剤収納室51aに収納されていた薬剤は、第2の摺動性シール部55により筒状本体部材31より、容器本体2内の薬剤室内に押し出されるとともに、排出ポートを用いた薬剤の投与も可能となる。
【0020】
また、この医療用容器1では、図7に示すように、容器本体2の圧迫時における第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間に起因する牽引部材58の薬剤収納室区画部材51との取付部58aの移動距離L1は、筒状本体部材31の開口端から薬剤収納室区画部材51の下端(この実施例では、第2の摺動性シール部55の下面)までの距離L2より長いものとなっている。
【0021】
また、本発明の医療用容器における排出ポートの構成は、上述したものに限定されるものではない。例えば、図10および図11に示すような排出ポート30であってもよい。図10は、本発明の他の実施例の医療用容器の排出ポート付近の拡大断面図である。図11は、図10のC−C線断面より容器本体2を省略した図である。
この実施例における排出ポート30は、筒状本体部材31の上部開口部31aより所定距離封止部32側にて筒状本体部材31内を仕切るとともに開口31dを有する仕切壁部31cを備えている。そして、薬剤収納室区画部材51は、筒状本体部31の上部開口部31a内をシールするとともに、筒状本体部材31内を液密状態にて摺動可能な摺動性シール部52と、摺動性シール部52と連結され、仕切壁部31cの開口31dをシールする封鎖部57aを備えている。封鎖部57aは、連結部57により摺動性シール部52と連結されている。また、開口31dには、図11に示すように、薬剤投与具(図示せず)の侵入を阻止する侵入規制部31eが形成されている。この例では、侵入規制部31eは、網状に形成されている。
【0022】
この実施例における排出ポート30では、軟質容器本体2の上部側を手で押圧するなどして容器本体2を圧迫することにより、離間規制部11が剥離され、これに続き、表面側シート部2aと裏面側シート部2b間が広がり、第1の固定部59aと第2の固定部59b間が離間する。第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間により、薬剤収納室区画部材51が牽引部材58により、薬剤室20(第1の薬剤室21)内の上端方向に牽引される。牽引の開始とともに、薬剤収納室区画部材51の封鎖部57aは、筒状本体部材31の仕切壁部31cの開口31dより離脱し、さらに牽引されることにより、薬剤収納室区画部材51は、筒状本体部材31より離脱する。これにより、排出ポート3内の薬剤収納室51aに収納されていた薬剤は、容器本体2内の薬剤室内の流入可能となるとともに、排出ポートを用いた薬剤の投与も可能となる。なお、上述した部分以外については、上述した実施例の医療用容器1と同じである。
また、この実施例のものでは、容器本体2の圧迫時における第1の固定部59aと第2の固定部59b間が離間に起因する牽引部材58の薬剤収納室区画部材51との取付部58aの移動距離は、筒状本体部材31の開口端から薬剤収納室区画部材51の下端(この実施例では、封鎖部57aの下面)までの距離より長いことが好ましいが、短いものであってもよい。
【0023】
また、本発明の医療用容器における排出ポートの構成は、例えば、図12に示すような排出ポート40であってもよい。
この実施例における排出ポート40は、筒状本体部材31の上部開口部31aより所定距離封止部32側にて筒状本体部31内を仕切る仕切壁部31cを備えている。さらに、筒状本体部材31は、仕切壁部31cより開口部31a側に延びる連結部31fと、連結部31fの仕切壁部31c側の開始端部分を取り囲むように設けられた環状破断可能部31gを有する。環状破断可能部31gは、環状溝により形成されている。環状破断可能部31gにより取り囲まれた部分31iは、連結部31fが牽引されることにより、破断し、仕切壁部31cに開口を形成する。また、環状破断可能部31gにより取り囲まれた部分31iの下面側部分は、凹部31hとなっている。
そして、薬剤収納室区画部材51は、筒状本体部31の上部開口部31a内をシールするとともに、筒状本体部31内を液密状態にて摺動可能な摺動性シール部52を備える。そして、摺動性シール部52は、上述した筒状本体部材31の仕切壁部31cより延びる連結部31fと連結されている。
【0024】
この実施例における排出ポート40では、軟質容器本体2の上部側を手で押圧するなどして容器本体2を圧迫することにより、離間規制部11が剥離し、第1の固定部59aと第2の固定部59b間が離間する。第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間により、薬剤収納室区画部材51が牽引部材58により、薬剤室20(第1の薬剤室21)内の上端方向に牽引される。薬剤収納室区画部材51の牽引により、薬剤収納室区画部材51と連結部31fにより連結されている筒状本体部材31の仕切壁部31cは、環状破断可能部31gにおいて破断し、仕切壁部31cに開口が形成される。さらに、薬剤収納室区画部材51が、牽引されることにより、薬剤収納室区画部材51および連結部31fおよび環状破断可能部31gにより切り取られた部分31iは、筒状本体部材31より離脱する。これにより、排出ポート3内の薬剤収納室51aに収納されていた薬剤は、容器本体2内の薬剤室内に流入可能となるとともに、排出ポートを用いた薬剤の投与も可能となる。なお、上述した部分以外については、上述した実施例の医療用容器1と同じである。
また、この実施例のものでは、容器本体2の圧迫時における第1の固定部59aと第2の固定部59b間が離間に起因する牽引部材58の薬剤収納室区画部材51との取付部58aの移動距離は、筒状本体部材31の開口端から環状破断可能部31gにより取り囲まれた部分31iの下面までの距離より長いことが好ましいが、短いものであってもよい。
【0025】
また、本発明の医療用容器における排出ポートの構成は、例えば、図13に示すような排出ポート50であってもよい。
この実施例における排出ポート50は、筒状本体部材31の上部開口部31aより所定距離封止部32側にて筒状本体部31内を仕切る仕切壁部31cを備えている。さらに、筒状本体部材31は、仕切壁部31cより開口部31a側に延びる連結部31fと、連結部31fの仕切壁部31c側の開始端部分を取り囲むように設けられた環状破断可能部31gを有する。環状破断可能部31gは、環状溝により形成されている。環状破断可能部31gにより取り囲まれた部分31iは、連結部31fが牽引されることにより、破断し、仕切壁部31cに開口を形成する。また、環状破断可能部31gにより取り囲まれた部分31iの下面側部分は、凹部31hとなっている。
【0026】
そして、薬剤収納室区画部材51は、筒状本体部31の上部開口部31a内をシールする閉塞部を有する筒状部材により構成されている。具体的には、筒状本体部材31の先端部は、内径が拡径した内径拡径部を備えており、この内径拡径部に、筒状部材である薬剤収納室区画部材51が収納され、固定されている。そして、薬剤収納室区画部材51の閉塞部には、環状破断可能部62が設けられている。また、閉塞部の下面には、上述した連結部31fとの係合部63が設けられている。この係合部63内に形成される凹部内に連結部31fの先端部が収納され固定されている。
【0027】
この実施例における排出ポート50では、軟質容器本体2の上部側を手で押圧するなどして容器本体2を圧迫することにより、離間規制部11が剥離し、第1の固定部59aと第2の固定部59b間が離間する。第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間により、薬剤収納室区画部材51が牽引部材58により、薬剤室20(第1の薬剤室21)内の上端方向に牽引される。薬剤収納室区画部材51の牽引により、薬剤収納室区画部材51の閉塞部は、環状破断可能部62において破断し、薬剤収納室区画部材51に開口が形成される。また、薬剤収納室区画部材51の閉塞部と連結部31fにより連結されている筒状本体部材31の仕切壁部31cも環状破断可能部31gにおいて破断し、仕切壁部31cに開口が形成される。さらに、薬剤収納室区画部材51が牽引されることにより、環状破断可能部62において破断された薬剤収納室区画部材51および連結部31fおよび環状破断可能部31gにより切り取られた部分31iは、筒状本体部材31より離脱する。これにより、排出ポート3内の薬剤収納室51aに収納されていた薬剤は、容器本体2内の薬剤室内の流入可能となるとともに、排出ポートを用いた薬剤の投与も可能となる。
【0028】
また、この実施例のものでは、容器本体2の圧迫時における第1の固定部59aと第2の固定部59b間が離間に起因する牽引部材58の薬剤収納室区画部材51との取付部58aの移動距離は、筒状本体部材31の開口端から環状破断可能部31gにより取り囲まれた部分31iの下面までの距離より長いことが好ましいが、短いものであってもよい。
そして、本発明の医療用容器1は、図1に示すように、牽引部材58との第1の固定部59aと第2の固定部59b付近に設けられ、第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間を規制する剥離可能な離間規制部11を備えている。この実施例の医療用容器1では、離間規制部11は、第1の固定部59aと第2の固定部59bの上方を取り囲む形状となっている。なお、離間規制部11は、容器本体2の第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間を規制するものであれば、どのような形態であってもよく、上記の形態に限定されるものではない。例えば、離間規制部11は、その下端が下端側シール部6に到達するものであってもよい。また、離間規制部11は、第1の固定部59aと第2の固定部59bの上方に一つ設けられた矩形状、多角形状もしくは円状のものであってもよい。さらに、離間規制部11としては、第1の固定部59aと第2の固定部59bの上方を取り囲むように矩形状、多角形状もしくは円状のものが複数設けられたものであってもよい。なお、離間規制部11は、離間規制用弱シール部により形成することが好ましい。離間規制用弱シール部は、容器本体2を帯状に熱シール(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成される。この離間規制部11は、軟質容器本体2を圧迫することにより、剥離する。離間規制部11の強度(初期の剥離強度)は、0.1〜25N/10mmであることが好ましい。また、離間規制部11の幅(帯幅)は、2〜20mm、特に、3〜18mmであることが好ましい。
【0029】
そして、医療用容器1の容器本体2は、軟質合成樹脂により形成されている。容器本体2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、容器本体2は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法などの種々の方法により製造されたものでもよい。また、容器本体2は、上記のような筒状体の外周部の全周(4辺)をシールしたもの、2枚のシート部材を重ねその外周部全周をシールしたもの、一枚のシート部を2つ折りし、折り曲げ部以外の3辺をシールしたものなどの袋状物であってもよい。また、容器本体2の上端シール部5のほぼ中央部には、医療用容器1をハンガー等に吊り下げるための孔25が設けられている。
容器本体2は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JIS K7129(A法)に記載の方法により測定される。
このように容器本体2が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0030】
このような容器本体2の形成材料として、ポリオレフィン類が含有されるとき、本発明の有用性が大きいものとなる。したがって、本発明においては、容器本体2の形成材料として、ポリオレフィン類を含むものであるのが好ましい。容器本体2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン類に、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体,プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を用いてもよい。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
さらに、上記のブレンド樹脂を用いる場合には、2種以上の融点の異なる材料を用いることになり、容器本体2の上端シール部5や下端シール部6、離間規制部11および後述する仕切部9の各シール条件の設定、各シール部分のシール強度の安定化を容易かつ良好に図ることができる。
【0031】
また、容器本体は、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、容器本体2の耐衝撃性を向上させたり、耐ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、容器本体2のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与したりすることができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、容器本体2の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。なお、容器本体2が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
容器本体2を構成するシート部材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜550μm程度であるのが好ましく、200〜400μm程度であるのがより好ましい。
【0032】
また、この実施例の医療用容器1では、容器本体2は、剥離可能な仕切部9により、2室に区分されている。そして、仕切部は、仕切用弱シール部により形成されている。仕切用弱シール部9は、第1の弱シール部9aと第1の弱シール部9aの両側に設けられた第1の弱シール部より剥離しにくいもしくは剥離不能な第2の弱シール部9bとを備えている。第1の弱シール部9aが剥離可能な仕切部を実質的に構成している。
このような構成により、第2の薬剤室22を押圧することにより、第1の弱シール部9aが剥離する。そして、剥離部(剥離した第1の弱シール部)より液体等の流体(具体的には、薬液および気体)が第1の薬剤室21に流入する。この液体等の流体の流入により第1の薬剤室21が押し広げられるとともに第2の薬剤室22の押圧の継続により第1の薬剤室の内圧も上昇する。液体等の流体の流入時には、第1の弱シール部9aが剥離部となり、弱シール部9の全体が剥離しない。このため、第1の薬剤室21はその容量があまり増加しない状態において、液体等の流体の流入を受けることになる。よって、第1の薬剤室21は確実に押し広げられ、これに従って、離間規制部11の剥離および牽引部材58の第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間が生じる。
【0033】
また、本発明の医療用容器1では、第1の薬剤室21もしくは第2の薬剤室22を押圧することにより、仕切部9が剥離し、仕切部9の剥離と同時もしくは続いて離間規制部11が剥離するものであることが好ましい。上記の構成は、例えば、離間規制部11のシール強度を仕切部9の仕切強度より高いものとすること、また、仕切部9と離間規制部11の配置形態などにより形成することができる。
離間規制部11のシール強度を仕切部9の仕切強度より高いものとする場合には、離間規制部11のシール強度は、剥離可能な仕切部(第1の弱シール部)のシール強度(初期の剥離強度)より、1〜25N/10mm程度高いことが好ましい。
【0034】
そして、第1の弱シール部9a(剥離可能な仕切部)は、図1に示すように、容器本体2の中央付近に設けられ、その両側から容器本体2の側辺もしくは側辺付近まで第2の弱シール部9bが形成されている。この実施例において第1の弱シール部9aは、離間規制部11の上方、具体的には、鉛直上方に設けられている。このような位置に第1の弱シール部9a(剥離可能な仕切部)を設けることにより、第1の弱シール部が剥離した際、離間規制部11の剥離および第1の固定部59aと第2の固定部59b間の離間が確実に発現する。
具体的には、剥離可能な仕切部(第1の弱シール部)のシール強度(初期の剥離強度)は、0.1〜5N/10mm、特に、0.3〜3N/10mmであることが好ましい。シール強度がこの範囲内であれば、輸送や保管中等に誤って第1の弱シール部が剥離することがなく、また、第1の弱シール部を剥離する作業も容易である。第2の弱シール部のシール強度(初期の剥離強度)は、3N/10mm以上、特に、4N/10mm以上であることが好ましい。
第2の弱シール部のシール強度(初期の剥離強度差)は、第1の弱シール部のシール強度(初期の剥離強度)より、3〜30N/10mm、特に、4〜25N/10mm大きいものであることが好ましい。このようにすることにより、いずれかの薬剤室を押圧した際、仕切用弱シール部の全体が一気に剥離することを抑制し、少なくとも第1の弱シール部からの剥離を確実なものとできる。
【0035】
なお、本件出願におけるシール強度の具体的な測定方法としては、以下のようにして行うことができる。
医療用容器を各測定対象シール部を含む部分を容器の幅方向に10mmの長さに切断して、それぞれのシール強度部分に含まれる切断片を引張速度300mm/分で測定した値の各シール強度部分の平均値である。
また、医療用容器1の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、第1の薬剤室の容積が、50〜3000mL程度であることが好ましく、第2の薬剤室の容積が、50〜3000mL程度であることが好ましい。第1の薬剤室21と第2の薬剤室22の容積比は1:1〜1:5であることが好ましい。
【0036】
このように薬剤室を第1の薬剤室21と第2の薬剤室22の2つに区分することにより、反応等による変質、劣化を生じる物質を含有する液体を使用するまでは別々に保存でき、使用に際し、両液を混合することが好ましいとき等に適用することができる。それぞれの薬剤室に収納される薬剤としては、薬液、散剤などが考えられる。特に、本発明の医療用容器では、第1の薬剤21aは、薬液であることが好ましい。第2の薬剤22aは、薬液もしくは散剤いずれであってもよい。好ましくは、薬液である。第1の薬剤21aおよび第2の薬剤22aの組合せとしては、例えば、輸液剤では、メーラード反応による着色を防止するために、アミノ酸電解質液とブドウ糖液との組合せとしたり、他に、ブドウ糖液と重曹液等の組み合わせ、また、腹膜透析液剤としてブドウ糖が配合される側のpHを3〜5とし、他方の電解質液を混合後、投薬時にほぼ中性域のpHとなるように調整したものなどが挙げられる。また、容器本体2は、第1の薬剤室21への薬剤注入部29を備えておいる。薬剤注入部29は、第1の薬剤室21内に薬剤を注入した後に形成されたシール部16によりシールされている。
なお、本発明において、第1の薬剤21aおよび第2の薬剤22aは、特に限定されず、例えば、生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、アミノ酸輸液、脂肪輸液、注射用水、腹膜透析液、経口・経腸栄養剤等、いかなるものであってもよい。
【0037】
また、薬剤注入ポート4は、容器本体2内に薬剤を注入するためのものである。この実施例における注入ポート4は、図1に示すように、下端(第2の薬剤室側端部)が開口した筒状部材41と、筒状部材の上端側に液密に取り付けられた薬剤注入用針により連通可能な連通部を備えている。連通部は、キャップ部材43と、その後端開口を封止するとともに薬剤注入用針の刺通が可能な弾性部材42とを備えている。連通部としては、このような形態のものに限定されるものではない。
弾性部材42および上述した排出ポート3の弾性部材32は、瓶針、カヌラ針等の針管(図示せず)を刺通可能なものであり、必要時にこの針管を刺通して、容器本体2内からの薬剤の排出もしくは容器本体2内への薬剤等の添加を行うことができる。また、弾性部材は、自己閉塞性を有し、針管を弾性部材から抜き取った後は、その穿刺孔が瞬時に閉塞し、薬剤の漏れを防止する。弾性部材の構成材料としては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴムのような各種ゴム材料等の弾性材料、あるいはこれらのうちの任意の2以上を組み合わせたもの(ブレンド、積層体等)、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体等のポリオレフィン、あるいは、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド等の高分子材料を配合したものが挙げられる。
【0038】
薬剤排出ポート3の筒状部材31およびキャップ部材33ならびに薬剤注入ポート4の筒状部材41およびキャップ部材43の構成材料としては、その用途や機能に応じた条件、例えば硬度、強度、靭性、耐薬品性、透明性、その他の条件を有する材料が用いられ、比較的硬質な材料で構成されているのが好ましく、これらの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン(低密度〜高密度)、ポリ塩化ビニル(軟質〜硬質)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、フッ素系樹脂等が挙げられ、前述したような条件に応じ、また、筒状部材31およびキャップ部材33、筒状部材41およびキャップ部材43と容器本体2との固定手段を考慮して適宜選択して用いることができる。
【0039】
次に、本発明の医療用容器の排出ポート取付方法について、図面を用いて説明する。
図8および図9は、本発明の医療用容器の製造過程を説明するための説明図である。
離間規制部11および排出ポート取付部を有する軟質容器本体2を準備する。また、薬剤収納室に薬剤が収納された排出ポート3を準備する。なお、排出ポート3の準備は、例えば、図3および図4に示すような筒状本体部材31、弾性部材32およびキャップ部材33が固定されたものを準備し、筒状本体部材31の開口部より連結部57が取り付けられた第2の摺動性シール部55を挿入し、適宜位置に配置する。そして、第2の摺動性シール部55上に薬剤を注入する。そして、筒状本体部材31の開口部より牽引部材58が取り付けられた第1の摺動性シール部52を挿入し、連結部57に固定する。このようにして、薬剤を収納した排出ポート3が準備される。
そして、図8に示すように、容器本体2の排出ポート取付部に、排出ポート3を牽引部材側より、牽引部材58は、離間規制部11付近となるまで挿入し、図9に示す状態とする。そして、容器本体2の外面より、牽引部材58の2つの向かい合う端部分にシーラー45を当て、牽引部材58同士が接着されることなく、牽引部材58の向かい合う一方の端部が、表面側シート部2aに固定され、牽引部材58の向かい合う他方の端部が、裏面側シート部2bに固定されるように熱シールする。そして、容器本体2の排出ポート取付部の外面より加熱し、排出ポート3の筒状本体部材31を容器本体2に固定する。このようすることにより、容器本体2に排出ポート3が取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す医療用容器の排出ポートの拡大正面図である。
【図4】図4は、図3に示す排出ポートの断面図である。
【図5】図5は、図3のB−B線断面図である。
【図6】図6は、図2の医療用容器の排出ポート付近の拡大断面図である。
【図7】図7は、本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図8】図8は、本発明の医療用容器の製造過程を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の医療用容器の製造過程を説明するための説明図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施例の医療用容器の排出ポート付近の拡大断面図である。
【図11】図11は、図10のC−C線断面より容器本体を省略した図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施例の医療用容器の排出ポート付近の拡大断面図である。
【図13】図13は、本発明の他の実施例の医療用容器の排出ポート付近の拡大断面図である。
【図14】図14は、本発明の他の実施例の医療用容器の正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 医療用容器
2 容器本体
3 排出ポート
4 薬剤注入ポート
5,6 シール部
9 仕切用弱シール部
11 離間規制部
20 薬剤室
21 第1の薬剤室
22 第2の薬剤室
31 筒状本体部
32 封止部
51a 薬剤収納室
51 薬剤収納室区画部
58 牽引部
59a 第1の固定部
59b 第2の固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料により作製され、表面側シート部および裏面側シート部と、上端部および下端部を有し、内部に薬剤室を備える軟質容器本体と、前記容器本体の下端部に固定された排出ポートと、前記薬剤室に収納された薬剤とを備える医療用容器であって、
前記排出ポートは、筒状本体部と、該筒状本体部の下端部を封止するとともに薬剤投与部材を接続可能な封止部と、前記筒状本体部内に前記薬剤室および前記封止部側空間と連通せずかつ前記薬剤投与部材が侵入不能な薬剤収納室を形成する薬剤収納室区画部と、前記薬剤収納室に収納された前記薬剤室に収納されている薬剤と異なる薬剤と、前記薬剤収納室区画部に取り付けられるとともに、所定長前記薬剤室内の上端方向に延び、前記表面側シート部の内面に固定された第1の固定部および前記裏面側シート部の内面に固定された第2の固定部を備え、前記容器本体の圧迫時の前記第1の固定部と前記第2の固定部間の離間により、前記薬剤収納室区画部を前記薬剤室内の上端方向に牽引し、該薬剤収納室区画部を前記筒状本体部より離脱させるための牽引部とを備え、
前記軟質容器本体は、前記第1の固定部と前記第2の固定部間の離間を規制する剥離可能な離間規制部を備えていることを特徴とする医療用容器。
【請求項2】
前記薬剤収納室区画部は、前記筒状本体部内を液密状態にて摺動する薬剤収納室区画部材である請求項1に記載の医療用容器。
【請求項3】
前記薬剤収納室区画部材は、前記筒状本体部内を液密状態にて連動して摺動可能な2つの摺動性シール部を有し、2つの前記摺動性シール部と前記筒状本体部内面により前記薬剤収納室を形成するものである請求項2に記載の医療用容器。
【請求項4】
前記薬剤収納室区画部材は、前記筒状本体部の上部開口部内をシールする第1の摺動性シール部と該第1の摺動性シール部より所定距離前記封止部側に位置する第2の摺動性シール部と、前記第1の摺動性シール部と第2の摺動性シール部とを連結する連結部を備えている請求項2または3に記載の医療用容器。
【請求項5】
前記排出ポートは、前記筒状本体部の上部開口部より所定距離前記封止部側にて前記筒状本体部内を仕切るとともに開口を有する仕切壁部を備え、前記薬剤収納室区画部材は、前記筒状本体部の上部開口部内をシールするとともに該筒状本体部内を液密状態にて摺動可能な摺動性シール部と、該摺動性シール部と連結され、前記仕切壁部の開口をシールする封鎖部とを備えている請求項1に記載の医療用容器。
【請求項6】
前記牽引部は、帯状もしくは線状の牽引部材であり、前記薬剤収納室区画部は、前記牽引部材を貫通させる牽引部材取付部を備えている請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項7】
前記容器本体は、前記薬剤室を第1の薬剤室と第2の薬剤室に区分する剥離可能な仕切部を有しており、前記第1の薬剤室には、第1の薬剤が収納され、前記第2の薬剤室には、第2の薬剤が収納されている請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用容器。
【請求項8】
前記仕切部は、前記離間規制部の上方となる位置に設けられている請求項7に記載の医療用容器。
【請求項9】
前記医療用容器は、前記第1の薬剤室もしくは前記第2の薬剤室を押圧することにより、前記仕切部が剥離し、該仕切部の剥離と同時もしくは続いて前記離間規制部が剥離するものである請求項7または8に記載の医療用容器。
【請求項10】
前記離間規制部および前記仕切部は、熱シールにより作製されている請求項7ないし9のいずれかに記載の医療用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−267877(P2007−267877A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96082(P2006−96082)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】