説明

半導体ウエハ収納容器

【課題】複数の半導体ウエハどうしの間の間隔を大きく離すことなく効率よく安全に収納することができると同時に、半導体ウエハの出し入れを良好に行うことができる半導体ウエハ収納容器を提供すること。
【解決手段】ウエハ保持ユニット20には、半導体ウエハWの外周の下端エッジ縁部分のみに当接するウエハ載置枠21と、ウエハ載置枠21に対し上下方向に相対的に可動に配置され、半導体ウエハWの外周の上端エッジ縁部分のみに当接するウエハ固定枠22と、ウエハ固定枠22がウエハ載置枠21に対し上方に退避した状態の時に上方に移動することにより、半導体ウエハWをウエハ載置枠21から上方に離脱した位置に押し上げてその状態を保持するウエハリフト部材23とを備えた単一ウエハ保持部(21〜23)が、複数上下に重ね合わせられた状態に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の半導体ウエハを外部環境から隔離された環境中に収納して輸送、保管するために使用される半導体ウエハ収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような半導体ウエハ収納容器として、開閉自在な密封容器内に、複数の半導体ウエハを一枚毎に独立して平行に並んだ状態に保持するためのウエハ保持ユニットが設けられ、各半導体ウエハを水平な向きにした状態で、半導体ウエハが一枚ずつ個別にウエハ保持ユニットに対し出し入れされるように構成されたものが少なくない(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2006−93274
【特許文献2】特開2002−222852
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の半導体ウエハ収納容器においては、複数の半導体ウエハを一枚毎に独立して平行に並んだ状態に保持するために、各半導体ウエハを差し込んで外縁部の数箇所で保持する平行溝(又は、スロット)等が複数並んで形成されている。
【0004】
そして、半導体ウエハをそこに出し入れする際には、上下に互いの間隔をあけて水平の向きに配置されて保持されている半導体ウエハが、自動操作されるロボットハンドに一枚毎に載せられて移動される。
【0005】
しかし、半導体ウエハの直径が300mmから450mm等と大きくなってくると、外縁部だけで保持されている半導体ウエハは中心部分が自重で下がって反った状態になるため、半導体ウエハをロボットハンドに安全に載せるためには半導体ウエハどうしの間隔を大きく離す必要が生じる。そのため、半導体ウエハ収納容器が半導体ウエハの径方向だけでなく軸線方向にも大型になってスペース効率が悪くなってしまう問題があった。
【0006】
本発明は、半導体ウエハの径が大きくなっても、複数の半導体ウエハどうしの間の間隔を大きく離すことなく効率よく安全に収納することができると同時に、半導体ウエハの出し入れを良好に行うことができる半導体ウエハ収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の半導体ウエハ収納容器は、開閉自在な密封容器内に、複数の半導体ウエハを一枚毎に独立して平行に並んだ状態に保持するためのウエハ保持ユニットが設けられて、少なくとも半導体ウエハがウエハ保持ユニットに対し出し入れされる際には、複数の半導体ウエハが各々水平の向きになる状態にされる半導体ウエハ収納容器において、ウエハ保持ユニットには、水平に配置された一枚の半導体ウエハの外周の下端エッジ縁部分のみに当接する状態でその半導体ウエハを載置保持するウエハ載置枠と、ウエハ載置枠に対し上下方向に相対的に可動に配置され、ウエハ載置枠に載置保持されている半導体ウエハの外周の上端エッジ縁部分のみに当接して半導体ウエハをウエハ載置枠との間に挟み込んだ状態に固定するウエハ固定枠と、ウエハ載置枠とウエハ固定枠とに挟み込まれた状態の半導体ウエハの下側に配置されて、ウエハ固定枠がウエハ載置枠に対し上方に退避した状態の時に上方に移動することにより、半導体ウエハをウエハ載置枠から上方に離脱した位置に押し上げてその状態を保持するウエハリフト部材とを備えた単一ウエハ保持部が、複数上下に重ね合わせられた状態に配置されているものである。
【0008】
ウエハ載置枠が、半導体ウエハの下端エッジ部分に斜め下方から当接する斜面を備えた環状の枠体であり、ウエハ固定枠が、半導体ウエハの上端エッジ部分に斜め上方から当接する斜面を備えた環状の枠体であってもよく、その場合、ウエハ載置枠に形成された斜面とウエハ固定枠に形成された斜面の双方により、半導体ウエハの外周部の上下両端のエッジ部分に当接するV字状の断面形状が形成されていてもよい。
【0009】
ウエハ載置枠と、そのウエハ載置枠が属する単一ウエハ保持部の下方に隣接する単一ウエハ保持部のウエハ固定枠とが一体的に連結されていてもよく、ウエハ載置枠が半導体ウエハを周方向の複数カ所に分かれた位置で載置保持し、ウエハリフト部材が半導体ウエハの外縁部のうちウエハ載置枠に載置されていない部分で半導体ウエハを押し上げるようにしてもよい。
【0010】
また、ウエハ載置枠が半導体ウエハを全周において載置保持し、ウエハリフト部材が、ウエハ載置枠による載置位置より内周寄りの位置において半導体ウエハを押し上げるようにしてもよく、ウエハリフト部材が、半導体ウエハをその周縁近傍の離散した複数位置で押し上げるように配置されていてもよい。また、ウエハリフト部材が、ウエハ固定枠と一体的に連結されていてもよい。
【0011】
また、ウエハリフト部材が、ウエハ保持ユニット外に設けられたウエハリフト駆動手段により駆動されるようにしてもよく、その場合、ウエハリフト部材が上下方向に平行移動するようにしてもよく、あるいはウエハリフト部材が支軸を中心に回動するようにしてもよい。また、ウエハリフト部材が弾力性のある材料により形成されて、半導体ウエハを下方から上方に向かって付勢していてもよい。
【0012】
また、複数の単一ウエハ保持部が各々、複数立設されたガイド柱に保持されて、そのガイド柱に沿って上下方向にスライド自在であってもよく、その場合、複数のガイド柱の中の少なくとも2本のガイド柱の間の間隔が半導体ウエハの直径より大きく形成され、その2本のガイド柱の間を通って半導体ウエハをウエハ保持ユニットに出し入れすることができるようにしてもよい。
【0013】
そして、上下に重ね合わせられた状態でガイド柱に保持された全部の単一ウエハ保持部を、ガイド柱に沿って移動可能な可動状態と移動不能な固定状態とに切り換え自在なクランプ機構が設けられていてもよく、クランプ機構が、水平に配置された回転連結軸と、その回転連結軸に取り付けられた偏心ローラとを備え、その偏心ローラの外周面をウエハ保持ユニットの上端枠面に圧接させることで複数の単一ウエハ保持部を全て固定状態にすることができるようにしてもよい。そして、ウエハ保持ユニット外に設けられたクランプ機構駆動手段をクランプ機構の回転連結軸に連結させるための連結部がクランプ機構に設けられていてもよい。
【0014】
また、ウエハ保持ユニット中の任意のウエハ固定枠を、それより上方にある全ての単一ウエハ保持部と共に、ウエハ保持ユニット外に設けられた固定枠リフト手段で上方に移動させることができてもよい。
【0015】
なお、密封容器が、下面に開口部が形成された容器本体と、その開口部に着脱自在な蓋体と、容器本体と蓋体との間の隙間を密封するシール部材とを備え、ガイド柱が蓋体に立設されていてもよく、あるいは、密封容器が、側面に開口部が形成された容器本体と、その開口部に着脱自在な蓋体と、容器本体と蓋体との間の隙間を密封するシール部材とを備え、ガイド柱が容器本体内に立設されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウエハ載置枠とウエハ固定枠とに挟み込まれた状態の半導体ウエハの下側に配置されて、ウエハ固定枠がウエハ載置枠に対し上方に退避した状態の時に上方に移動することにより、半導体ウエハをウエハ載置枠から上方に離脱した位置に押し上げてその状態を保持するウエハリフト部材が設けられていることにより、半導体ウエハの径が大きくなって出し入れの際に半導体ウエハが自重で反っても、出し入れされる対象の半導体ウエハとその下側に位置する半導体ウエハとの間隔のみを広げて半導体ウエハの出し入れを良好に行うことができ、ウエハ収納状態においては、複数の半導体ウエハどうしの間の間隔を大きく離すことなく効率よく安全に収納することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器を示しており、複数の半導体ウエハWを一枚毎に独立して平行に並んだ状態に保持するためのウエハ保持ユニット20が密封容器10内に配置されている。なお、図2は、各部の構造が一つの図面に表されるように、相違する複数の断面を合わせて図示してある。
【0018】
密封容器10は、下面以外の部分が密閉された例えばポリカーボネート樹脂等からなる容器本体11の下面の開口部に蓋体12が着脱自在に配置されて、容器本体11の開口部が開閉自在になっている。蓋体12には、容器本体11と蓋体12との隙間部分を密封する弾力性のある材料からなる環状のシール部材13が取り付けられている。14は、公知のラッチ駆動機構15により長手方向に進退するように蓋体12側に設けられたロック部材であり、容器本体11側に形成された係止孔16内にロック部材14の先端部分が差し込まれて、蓋体12を容器本体11に対し離脱しないようにロックしている。
【0019】
ウエハ保持ユニット20は、蓋体12から容器本体11内の空間に垂直に立設された4本のガイド柱25によって支持されている。26は、4本のガイド柱25の上端どうしを連結する天板フレームである。ウエハ保持ユニット20には、一枚の半導体ウエハWを載置保持するウエハ載置枠21と、その半導体ウエハWをウエハ載置枠21との間に挟み込んだ状態に固定するウエハ固定枠22と、その半導体ウエハWをウエハ載置枠21から上方に離脱した位置に押し上げるためのウエハリフト部材23とを備えた単一ウエハ保持部(21〜23)が、複数組上下に重ね合わせられた状態に配置されている。
【0020】
ウエハ載置枠21は、半導体ウエハWの下端エッジ部分に斜め下方から当接する斜面21aを備えた環状の枠体であり、ウエハ固定枠22は、半導体ウエハWの上端エッジ部分に斜め上方から当接する斜面22aを備えた環状の枠体である。そして、ウエハ載置枠21に形成された斜面21aとウエハ固定枠22に形成された斜面22aの双方により、半導体ウエハWの外周部の上下両端のエッジ部分に当接するV字状の断面形状が形成される。なお、半導体ウエハWは、直径が例えば300mm又は450mm等であって、厚さが例えば1mm程度以下の極薄のシリコン製円盤であるが、図には厚みを誇張して示してある。
【0021】
III−III断面を図示する図3(半導体ウエハWは省略)に示されるように、ウエハ載置枠21の外周の4カ所から外方に突出する突片部分には、ガイド柱25が通過する孔27が穿設されていて、その孔27には、ガイド柱25に対する摩擦抵抗が小さい例えばフッ素樹脂材等からなる円筒状の滑り軸受け28が嵌め込まれている。その結果、ウエハ載置枠21はガイド柱25に沿ってスムーズにスライドすることができる。
【0022】
斜面21aが形成されているウエハ載置枠21の内周部分には、例えば45°間隔の6カ所に切り欠き21bが形成されていて、各切り欠き21b内にウエハリフト部材23が緩く配置されている。なお、ウエハリフト部材23は、半導体ウエハWをその周縁の離散した複数位置で押し上げるように配置されていればよい。また、図3に示されるように、ガイド柱25の中の少なくとも2本のガイド柱25の間の間隔Lが半導体ウエハWの直径より大きく形成されている。その結果、その2本のガイド柱25の間を通って半導体ウエハWをウエハ保持ユニット20に出し入れすることができる。
【0023】
ウエハ固定枠22は、図2におけるIV−IV断面を図示する図4(半導体ウエハWは省略)に示されるように、ガイド柱25が通過する4カ所の孔27に、ウエハ載置枠21と同様の滑り軸受け28が嵌め込まれて、ウエハ載置枠21に対し上下方向に相対的に可動に配置され、半導体ウエハWが出し入れされない方向にはウエハ載置枠21より外方に突出する鍔部22bが形成されて、その鍔部22bを後述するリフティングアーム(固定枠リフト手段)51で持ち上げることができるようになっている。またこの実施の形態では、斜面22aが形成されているウエハ固定枠22の内周部分においてウエハリフト部材23がウエハ固定枠22と一体に連結された状態に形成されている。
【0024】
ウエハリフト部材23は、図2に示されるように、通常は半導体ウエハWに接触しないようウエハ載置枠21の斜面21aより僅かに低い位置に形成された斜面を有していて、その斜面が、ウエハ載置枠21とウエハ固定枠22とに挟み込まれた状態の半導体ウエハWの下面の下側(即ち、ウエハ載置枠21の斜面21aの直下)に配置されている。なお、ウエハ載置枠21、ウエハ固定枠22及びウエハリフト部材23等は、塵等を引き寄せる静電気発生防止のために導電性樹脂等で形成するのが望ましい。
【0025】
図5は、そのように構成された単一ウエハ保持部(21〜23)を一組だけ抜き出して示しており、ウエハ載置枠21の斜面21aが、水平に配置された一枚の半導体ウエハWの外周の下端エッジ縁部分のみに、切り欠き21b部分を除くほぼ全周で当接してその半導体ウエハWを載置保持し、ウエハ固定枠22の斜面22aが、ウエハ載置枠21に載置保持されている半導体ウエハWの外周の上端エッジ縁部分のみに全周で当接して、半導体ウエハWをウエハ載置枠21との間に挟み込んだ状態に固定している。その結果、半導体ウエハWを非常に少ない反り状態に固定することができ、ウエハリフト部材23は半導体ウエハWに接触していない。
【0026】
単一ウエハ保持部(21〜23)は各々、それらを保持する4本のガイド柱25に沿って上下方向にスライド自在であり、図6に示されるように、ウエハ固定枠22がウエハ載置枠21に対し上方に退避した状態になると、ウエハリフト部材23がウエハ固定枠22と共に上方に移動する。すると、半導体ウエハWが、その外縁部のうちウエハ載置枠21に載置されていない例えば6カ所の位置でウエハリフト部材23により押し上げられてウエハ載置枠21の斜面21aから上方に離脱し、そのままウエハリフト部材23上に載った状態が保持される。
【0027】
なお、図7に示されるように、ウエハ載置枠21と、そのウエハ載置枠21が属する単一ウエハ保持部(21〜23)の下方に隣接する単一ウエハ保持部のウエハ固定枠22Dとを一体的に連結すれば、ウエハ載置枠21とウエハ固定枠22の構成を簡素化することができる。その場合、ウエハ載置枠21が属する単一ウエハ保持部(21〜23)のウエハ固定枠22は、その上方に隣接する単一ウエハ保持部のウエハ載置枠21Uと一体的に連結されることになる。
【0028】
再び図2に戻って、ウエハ保持ユニット20の上端付近には、上下に重ね合わせられた状態でガイド柱25に保持された全部の単一ウエハ保持部(21〜23)をガイド柱25に沿って移動可能な可動状態と、移動不能な固定状態とに切り換え自在なクランプ機構30が設けられている。
【0029】
クランプ機構30は、単体の状態を図示する図8にも示されるように、水平に配置されて天板フレーム26により回転自在に支持された回転連結軸31と、その回転連結軸31に取り付けられた一対の偏心ローラ32と、回転連結軸31の外端部に取り付けられた駆動輪33とを備えている。34は、ウエハ保持ユニット20の外部に設けられた後述するクランプ機構駆動手段を連結させるための連結孔(連結部)である。
【0030】
一対の偏心ローラ32の外周面は各々、ウエハ保持ユニット20の上端枠面に圧接しており、それによって、複数の単一ウエハ保持部(21〜23)が全てガイド柱25に対して移動できない固定状態になっている。なお、この実施の形態では「ウエハ保持ユニット20の上端枠面」とは上端に位置するウエハ固定枠22の上端面であるが、上端のウエハ固定枠22が省略されている場合はウエハ載置枠21の上端面になる場合もあり、重ね合わされた枠21,22の上端位置に天井枠等が別設されていたら、その天井枠の上端面になる(以下、同様)。
【0031】
そして、駆動輪33を回転駆動すると、回転連結軸31を介して偏心ローラ32が回転し、偏心ローラ32の小径部(回転連結軸31の軸線位置から偏心ローラ32の外周面までの距離が小さな部分)がウエハ保持ユニット20の上端枠面に面する状態になると、偏心ローラ32の外周面と上端位置のウエハ固定枠22との間に隙間ができて、全ての単一ウエハ保持部(21〜23)がガイド柱25に対して上下にスライド自在な状態になる。なお、偏心ローラ32は、回転連結軸31の回転に伴って中心軸線から外周面までの距離が変化する形状であれば楕円形その他どのような形状であっても差し支えなく、本発明の偏心ローラ32は、そのようなもの全てを含む概念である。
【0032】
次に、上記実施の形態の半導体ウエハ収納容器から半導体ウエハWが取り出される際の動作について説明する。半導体ウエハWは、図2に示される収納状態では水平以外のどのような向きにされても差し支えないが、取り出し動作の際は必ず、半導体ウエハWが水平状態になるように密封容器10の向きがセットされる。
【0033】
半導体ウエハWの取り出しに際しては、先ず図9に示されるように、ラッチ駆動機構15によりロック部材14の先端を引っ込めて容器本体11と蓋体12とを分離し、次いで、図10に示されるように、ウエハ保持ユニット20外に設けられているクランプ駆動アーム(クランプ機構駆動手段)71でクランプ機構30の駆動輪33を回転駆動して、偏心ローラ32をウエハ保持ユニット20の上端枠面から上方に離れた位置に退避させる。
【0034】
続いて、図1に示されるように、ウエハ保持ユニット20の外部に設けられているリフティングアーム(固定枠リフト手段)51をウエハ固定枠22の鍔部22bの下に差し込んで、取り出し対象の半導体ウエハWを固定しているウエハ固定枠22を上方に退避させる。それによって、その位置より上方の全ての単一ウエハ保持部(21〜23)が上行し、それと同時に、取り出し対象の半導体ウエハWを固定しているウエハ固定枠22が、その半導体ウエハWが載っているウエハ載置枠21に対し上方に退避する。
【0035】
すると、そのウエハ固定枠22と一体になっているウエハリフト部材23が上行するので、半導体ウエハWがウエハ載置枠21から離れてウエハリフト部材23のみに載せられて保持された状態になり、外縁部の固定が解かれた半導体ウエハWは、図1に示されるように自重で中心部が下がった状態に反る。
【0036】
しかし、本発明においては、その半導体ウエハWは当初の固定位置より上行した位置に移動していて、その下方に隣接する半導体ウエハW′との間の隙間Δが拡大形成される。したがって、半導体ウエハWは下方に反った状態になってもその下方に隣接する半導体ウエハW′と接触せず、図11に示されるように、ウエハ保持ユニット20外に設けられているロボットハンド61を半導体ウエハWの下側に挿入する分の隙間が確保されるので、その半導体ウエハWを確実かつ安全にロボットハンド61に載せて、ウエハリフト部材23と接触しないように僅かに持ち上げた状態で移動させ、ウエハ保持ユニット20外に取り出すことができる。
【0037】
そのようにして、図12に示されるように、必要な半導体ウエハWの取り出しが終了したら、図13に示されるように、リフティングアーム(固定枠リフト手段)51により上行させたウエハ固定枠22(とそれより上方にある全部の単一ウエハ保持部21〜23)を元の位置に戻し、クランプ機構30の駆動輪33を回転駆動して、偏心ローラ32をウエハ保持ユニット20の上端枠面に圧接させることにより、全ての単一ウエハ保持部(21〜23)が固定された状態に戻り、最後に、容器本体11の下端開口部を蓋体12に係合させてロック部材14でロックすることで、収納状態になる。
【0038】
なお、図7に示されるように、ウエハ固定枠22がその上方に隣接するウエハ載置枠21Uと一体に形成されている構造が採用されている場合には、ウエハ固定枠22を上方に退避させる図1に示される動作の際に、そのウエハ載置枠21Uをリフティングアーム(固定枠リフト手段)51で上行させることになる。
【0039】
図14は、上述のような半導体ウエハWの取り出し動作を自動的に行うための処理装置を略示しており、容器本体11が通過できない孔101部分だけが開口した密閉ケース100内に、ウエハ保持ユニット20を支持して昇降する昇降台81(とその駆動装置80)や、前出のリフティングアーム51(とその駆動装置50)、ロボットハンド61(とその駆動装置60)及びクランプ駆動アーム71(とその駆動装置70)等が配置されている。90は、ウエハ保持ユニット20から取り外した半導体ウエハWを処理するための処理室である。
【0040】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、多様な実施態様を採りうるものであり、例えば図15ないし図17に略示されるように、ウエハ載置枠21が半導体ウエハWを全周で載置保持して、ウエハリフト部材23が半導体ウエハWをウエハ載置枠21による載置位置より内周寄り(即ち、縁部より内側)の複数位置(離散した複数位置)で半導体ウエハWを押し上げるようにしてもよい。その場合には、半導体ウエハWに対するウエハリフト部材23の接触面は斜面ではなく、平面又は曲面(例えば球面)等にするのが望ましい。
【0041】
また、図18に示されるように、ウエハリフト部材23をウエハ固定枠22と連結せず、ウエハ保持ユニット20外に設けられた図示されていないウエハリフト駆動手段で駆動されることにより、上下に平行移動するようにしてもよく、あるいは図19に示されるように、ウエハリフト部材23が、図示されていないウエハリフト駆動手段で駆動されて、支軸を中心に回動動作をするように構成してもよい。
【0042】
また、図20及び図21に示されるように、ウエハリフト部材23を弾力性のある材料により形成して、半導体ウエハWを下方から上方に常時押し上げるように付勢された状態に配置し、ウエハ固定枠22が上方に退避するとウエハリフト部材23がそれ自体付勢力により半導体ウエハWを押し上げるようにしてもよい。図20は、ウエハリフト部材23が半導体ウエハWの下面に当接する構成例、図21は、ウエハリフト部材23が半導体ウエハWの外周の下端エッジ部に当接する構成例である。
【0043】
また本発明は、図22に示されるように、密封容器10が、側面に開口部が形成された容器本体11と、その開口部に着脱自在な蓋体12と、その容器本体11と蓋体12との間の隙間を密封するシール部材13とを備え、ウエハ保持ユニット20のガイド柱25が容器本体11内に立設されたものであってもよい。
【0044】
この実施の形態の場合に、ウエハ保持ユニット20に対して半導体ウエハWを出し入れする際には、まず密封容器10の側面に位置する蓋体12を密封容器10から外して下方に移動させ、ウエハ保持ユニット20を密封容器10内に残した状態のままで、蓋体12が取り去られた密封容器10の側面開口部から、前述の第1の実施の形態と同様の手順で半導体ウエハWを出し入れすることになる。
【0045】
なお、この実施の形態のウエハ保持ユニット20は、ウエハ固定枠22がその上に位置するウエハ載置枠21Uと一体化された図7に示される構造を採用しているが、一体化されていない第1の実施の形態と同様の構造のウエハ保持ユニット20であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器において、ウエハ固定枠が上方に退避して半導体ウエハがウエハリフト部材上に載せられて保持された状態を示す正面断面図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における半導体ウエハ収納状態を示す正面断面図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における図2のIII−III断面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における図2のIV−IV断面図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における単一ウエハ保持部の正面断面図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における単一ウエハ保持部の動作状態を示す正面断面図である。
【図7】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器において、単一ウエハ保持部のウエハ載置枠とそのウエハ載置枠が属する単一ウエハ保持部の下方に隣接する単一ウエハ保持部のウエハ固定枠とが一体的に連結されている場合の動作状態を示す正面断面図である。
【図8】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器におけるクランプ機構単体の斜視図である。
【図9】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器において容器本体が外された状態を示す正面断面図である。
【図10】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器においてクランプ機構が開放状態(退避状態)にされた状態を示す正面断面図である。
【図11】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器において半導体ウエハが取り出される際の状態を示す正面断面図である。
【図12】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器において半導体ウエハの取り出しが終了した状態を示す正面断面図である。
【図13】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器においてクランプ機構が再びロックされた状態の正面断面図である。
【図14】本発明に係る第1の実施の形態の半導体ウエハ収納容器から半導体ウエハを自動制御により取り出すための処理装置の略示図である。
【図15】本発明に係る第2の実施の形態の単一ウエハ保持部の端面図(断面形状のみを図示した断面図)である。
【図16】本発明に係る第2の実施の形態のウエハ載置枠とウエハリフト部材の平面断面図である。
【図17】本発明に係る第2の実施の形態のウエハ固定枠とウエハリフト部材の平面図である。
【図18】本発明に係る第3の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における単一ウエハ保持部の端面図である。
【図19】本発明に係る第4の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における単一ウエハ保持部の端面図である。
【図20】本発明に係る第5の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における単一ウエハ保持部ウエハ保持ユニットの端面図である。
【図21】本発明に係る第6の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における単一ウエハ保持部の端面図である。
【図22】本発明に係る第7の実施の形態の半導体ウエハ収納容器における半導体ウエハ収納状態を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 密封容器
11 容器本体
12 蓋体
13 シール部材
20 ウエハ保持ユニット
21 ウエハ載置枠
21a 斜面
22 ウエハ固定枠
22a 斜面
23 ウエハリフト部材
25 ガイド柱
30 クランプ機構
31 回転連結軸
32 偏心ローラ
34 連結孔(連結部)
51 リフティングアーム(固定枠リフト手段)
61 ロボットハンド
71 クランプ駆動アーム(クランプ機構駆動手段)
W 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在な密封容器内に、複数の半導体ウエハを一枚毎に独立して平行に並んだ状態に保持するためのウエハ保持ユニットが設けられて、少なくとも上記半導体ウエハが上記ウエハ保持ユニットに対し出し入れされる際には、上記複数の半導体ウエハが各々水平の向きになる状態にされる半導体ウエハ収納容器において、
上記ウエハ保持ユニットには、
水平に配置された一枚の半導体ウエハの外周の下端エッジ縁部分のみに当接する状態でその半導体ウエハを載置保持するウエハ載置枠と、
上記ウエハ載置枠に対し上下方向に相対的に可動に配置され、上記ウエハ載置枠に載置保持されている半導体ウエハの外周の上端エッジ縁部分のみに当接して上記半導体ウエハを上記ウエハ載置枠との間に挟み込んだ状態に固定するウエハ固定枠と、
上記ウエハ載置枠と上記ウエハ固定枠とに挟み込まれた状態の上記半導体ウエハの下側に配置されて、上記ウエハ固定枠が上記ウエハ載置枠に対し上方に退避した状態の時に上方に移動することにより、上記半導体ウエハを上記ウエハ載置枠から上方に離脱した位置に押し上げてその状態を保持するウエハリフト部材と
を備えた単一ウエハ保持部が、複数上下に重ね合わせられた状態に配置されていることを特徴とする半導体ウエハ収納容器。
【請求項2】
上記ウエハ載置枠が、上記半導体ウエハの下端エッジ部分に斜め下方から当接する斜面を備えた環状の枠体であり、上記ウエハ固定枠が、上記半導体ウエハの上端エッジ部分に斜め上方から当接する斜面を備えた環状の枠体である請求項1記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項3】
上記ウエハ載置枠に形成された斜面と上記ウエハ固定枠に形成された斜面の双方により、上記半導体ウエハの外周部の上下両端のエッジ部分に当接するV字状の断面形状が形成される請求項2記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項4】
上記ウエハ載置枠と、そのウエハ載置枠が属する単一ウエハ保持部の下方に隣接する単一ウエハ保持部のウエハ固定枠とが一体的に連結されている請求項1、2又は3記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項5】
上記ウエハ載置枠が上記半導体ウエハを周方向の複数カ所に分かれた位置で載置保持し、上記ウエハリフト部材が上記半導体ウエハの外縁部のうち上記ウエハ載置枠に載置されていない部分で上記半導体ウエハを押し上げる請求項1ないし4のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項6】
上記ウエハ載置枠が上記半導体ウエハを全周において載置保持し、上記ウエハリフト部材が、上記ウエハ載置枠による載置位置より内周寄りの位置において上記半導体ウエハを押し上げる請求項1ないし4のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項7】
上記ウエハリフト部材が、上記半導体ウエハをその周縁近傍の離散した複数位置で押し上げるように配置されている請求項1ないし6のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項8】
上記ウエハリフト部材が、上記ウエハ固定枠と一体的に連結されている請求項1ないし7のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項9】
上記ウエハリフト部材が、上記ウエハ保持ユニット外に設けられたウエハリフト駆動手段により駆動される請求項1ないし7のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項10】
上記ウエハリフト部材が上下方向に平行移動する請求項9記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項11】
上記ウエハリフト部材が支軸を中心に回動する請求項9記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項12】
上記ウエハリフト部材が弾力性のある材料により形成されて、上記半導体ウエハを下方から上方に向かって付勢している請求項1ないし7のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項13】
上記複数の単一ウエハ保持部が各々、複数立設されたガイド柱に保持されて、そのガイド柱に沿って上下方向にスライド自在である請求項1ないし12のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項14】
上記複数のガイド柱の中の少なくとも2本のガイド柱の間の間隔が上記半導体ウエハの直径より大きく形成され、その2本のガイド柱の間を通って上記半導体ウエハを上記ウエハ保持ユニットに出し入れすることができる請求項13記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項15】
上下に重ね合わせられた状態で上記ガイド柱に保持された全部の単一ウエハ保持部を、上記ガイド柱に沿って移動可能な可動状態と移動不能な固定状態とに切り換え自在なクランプ機構が設けられている請求項13又は14記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項16】
上記クランプ機構が、水平に配置された回転連結軸と、その回転連結軸に取り付けられた偏心ローラとを備え、その偏心ローラの外周面を上記ウエハ保持ユニットの上端枠面に圧接させることで上記複数の単一ウエハ保持部を全て固定状態にすることができる請求項15記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項17】
上記ウエハ保持ユニット外に設けられたクランプ機構駆動手段を上記クランプ機構の回転連結軸に連結させるための連結部が上記クランプ機構に設けられている請求項16記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項18】
上記ウエハ保持ユニット中の任意のウエハ固定枠を、それより上方にある全ての単一ウエハ保持部と共に、上記ウエハ保持ユニット外に設けられた固定枠リフト手段で上方に移動させることができる請求項13ないし17のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項19】
上記密封容器が、下面に開口部が形成された容器本体と、その開口部に着脱自在な蓋体と、上記容器本体と上記蓋体との間の隙間を密封するシール部材とを備え、上記ガイド柱が上記蓋体に立設されている請求項13ないし18のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。
【請求項20】
上記密封容器が、側面に開口部が形成された容器本体と、その開口部に着脱自在な蓋体と、上記容器本体と上記蓋体との間の隙間を密封するシール部材とを備え、上記ガイド柱が上記容器本体内に立設されている請求項13ないし18のいずれかの項に記載の半導体ウエハ収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−218694(P2008−218694A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53870(P2007−53870)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】