説明

半導体レジスト用重合体の重合方法及び半導体レジスト用重合体

【課題】ラクトン骨格含有(メタ)アクリル系化合物を単量体として用いる重合体の重合方法において、欠陥の原因となりやすい分子量の非常に高い成分の生成を限りなく抑制した半導体レジスト用重合体の重合方法及びその方法により得られる半導体レジスト用重合体を提供する。
【解決手段】本発明の半導体レジスト用重合体の重合方法は、原料単量体として、ラクトン骨格を含有する(メタ)アクリル系単量体(A)、及びラクトン骨格を含有しない単量体(B)が用いられ、前記単量体(A)及び前記単量体(B)を含む単量体溶液(i)を、反応系に30分間以上かけて加えながら重合し、該重合の開始から30分間以上経過した後に、前記単量体(A)を含む単量体溶液(ii)を、反応系に更に加えて重合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レジスト用重合体の重合方法及び半導体レジスト用重合体に関する。更に詳しくは、溶剤に対する溶解性に優れる半導体レジスト用重合体の重合方法及び半導体レジスト用重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、最近では0.10μm以下のレベルでの微細加工が可能なリソグラフィ技術が必要とされている。しかし、従来のリソグラフィプロセスでは、一般に放射線としてi線等の近紫外線が用いられているが、この近紫外線では、サブクオーターミクロンレベルの微細加工が極めて困難であると言われている。そこで、0.10μm以下のレベルでの微細加工を可能とするために、より波長の短い放射線の利用が検討されている。
このような短波長の放射線としては、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、電子線等を挙げることができるが、これらのうち、特にKrFエキシマレーザー(波長248nm)或いはArFエキシマレーザー(波長193nm)が注目されている。
【0003】
このようなエキシマレーザーによる照射に適したレジストとして、酸解離性官能基を有する成分と、放射線の照射(以下、「露光」という。)により酸を発生する成分(以下、「酸発生剤」という。)と、による化学増幅効果を利用したレジスト(以下、「化学増幅型レジスト」という。)が数多く提案されている。
この化学増幅型レジストとしては、例えば、カルボン酸のt−ブチルエステル基又はフェノールのt−ブチルカーボナート基を有する重合体と酸発生剤とを含有するレジストが提案されている。このレジストは、露光により発生した酸の作用により、重合体中に存在するt−ブチルエステル基或いはt−ブチルカーボナート基が解離して、該重合体がカルボキシル基或いはフェノール性水酸基からなる酸性基を有するようになり、その結果、レジスト被膜の露光領域がアルカリ現像液に易溶性となる現象を利用したものである。
【0004】
このようなリソグラフィプロセスにおいては、今後は更に微細なパターン形成(例えば、線幅が45nm程度の微細なレジストパターン)が要求される。このような45nmより微細なパターン形成を達成させるためには、前記のように露光装置の光源波長の短波長化や、レンズの開口数(NA)を増大させることが考えられる。
しかしながら、光源波長の短波長化には新たな高額の露光装置が必要となる。また、レンズの高NA化では、解像度と焦点深度がトレードオフの関係にあるため、解像度を上げても焦点深度が低下するという問題がある。
【0005】
最近、このような問題を解決可能とするリソグラフィ技術として、液浸露光(リキッドイマージョンリソグラフィ)法という方法が報告されている。この方法は、露光時に、レンズと基板上のレジスト被膜との間の少なくとも前記レジスト被膜上に所定厚さの純水又はフッ素系不活性液体等の液状屈折率媒体(液浸露光用液体)を介在させるというものである。この方法では、従来は空気や窒素等の不活性ガスであった露光光路空間を屈折率(n)のより大きい液体、例えば純水等で置換することにより、同じ露光波長の光源を用いてもより短波長の光源を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様に、高解像性が達成されると同時に焦点深度の低下もない。このような液浸露光を用いれば、現存の装置に実装されているレンズを用いて、低コストで、より高解像性に優れ、且つ焦点深度にも優れるレジストパターンの形成を実現できるため、大変注目されている。
【0006】
微細なパターンを形成するためのレジスト用重合体には、優れた解像性及び焦点深度が得られるという点から、ラクトン含有(メタ)アクリル系化合物が多く用いられている。ラクトン骨格を有しない重合体を用いたレジストでは、ラクトン骨格を有するものに比べ焦点深度が劣る。
ところが、ラクトン骨格含有(メタ)アクリル系化合物を用いる場合、リソグラフィ性能では優れた特性を示す一方で、欠陥性能ではラクトン骨格を有しないものに比べて劣ることが多かった。一般的に、欠陥の原因の一つに、本来であれば現像液へ溶解するべき成分がアルカリ現像液への溶解性が低いために現像不良が起こり、欠陥として基板上に残ってしまうこと挙げられる。レジスト用重合体では、分子量の非常に高い成分がレジスト溶剤への溶解性が低いために、化学増幅型レジストでは酸解離性官能基を有する成分の解離不良が起こり、アルカリ現像液への溶解性が十分に得られずアルカリ現像時に溶け残ってしまうことが考えられる。特に、リソグラフィ性能としては優れた特性が得られるラクトン骨格を含有する(メタ)アクリル系重合体は、ラクトン骨格を有する繰り返し単位の比率が増えるに従い、レジスト溶剤への溶解性が悪化する。これは、ラクトン骨格がレジスト溶剤への溶解性を悪化させること、及びラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体の重合活性が比較的高く、分子量が非常に高い成分を生成しやすいことに起因する。
【0007】
欠陥性能を加味した製法を用いた重合体として、例えば、特許文献1〜3に記載の樹脂が提案されている。しかしながら、これらの樹脂は、より微細なパターンを形成するためのラクトン骨格含有(メタ)アクリル系化合物に焦点が当てられていなかったり、微細なパターンでは欠陥となり得る、非常に分子量が高くゲルパーミエーションクロマトグラフィーでは検出できない程微量な成分に関して考慮されていない。
そのため、微細なパターンを形成するために、解像性、焦点深度等のリソグラフィ性能の観点から必要とされるラクトン骨格含有(メタ)アクリル系化合物を用いた系において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでは検出できない程に微量で且つ非常に分子量の高い成分が少なく、レジスト溶剤への溶解性が良好な樹脂が得られる、欠陥の少ない樹脂製法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−201856号公報
【特許文献2】特開2004−269855号公報
【特許文献3】特開2004−355023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、微細パターン形成時において優れた解像度及び焦点深度が得られるラクトン骨格含有(メタ)アクリル系化合物を単量体として用いる重合体の重合方法に関して、欠陥の原因となりやすい分子量の非常に高い成分の生成を限りなく抑制した半導体レジスト用重合体の重合方法及びその方法により得られる半導体レジスト用重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の通りである。
[1]半導体レジスト用重合体の重合方法であって、
原料単量体として、ラクトン骨格を含有する(メタ)アクリル系単量体(A)、及びラクトン骨格を含有しない単量体(B)が用いられ、
前記単量体(A)及び前記単量体(B)を含む単量体溶液(i)を、反応系に30分間以上かけて加えながら重合し、該重合の開始から30分間以上経過した後に、前記単量体(A)を含む単量体溶液(ii)を、反応系に更に加えて重合を行うことを特徴とする半導体レジスト用重合体の重合方法。
[2]前記単量体溶液(i)に含まれる前記単量体(B)の量は、重合すべき単量体(B)の全量である前記[1]に記載の半導体レジスト用重合体の重合方法。
[3]前記単量体溶液(ii)に含まれる単量体(A)の割合は、前記単量体溶液(i)及び(ii)に含まれる単量体(A)の合計を100質量%とした場合に、50質量%以下である前記[1]又は[2]に記載の半導体レジスト用重合体の重合方法。
[4]前記単量体溶液(ii)の供給が、前記単量体溶液(i)の供給が終了した後に開始される前記[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の半導体レジスト用重合体の重合方法。
[5]前記単量体(B)が、下記一般式(M−b1)〜(M−b6)で表される化合物のうちの少なくとも1種である前記[1]乃至[4]のうちのいずれかに記載の重合方法。
【化1】

〔一般式(M−b1)〜(M−b6)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基を示す。〕
[6]前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の重合方法にて製造された半導体レジスト用重合体であって、
ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1000〜50000であり、且つ、前記Mwと前記GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)とで求められる分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜2.5であることを特徴とする半導体レジスト用重合体。
[7]前記[1]乃至[5]のいずれかに記載の重合方法にて製造された半導体レジスト用重合体であって、
下記一般式(b1)〜(b6)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする半導体レジスト用重合体。
【化2】

〔一般式(b1)〜(b6)のにおいて、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基を示す。〕
【発明の効果】
【0011】
本発明の特定の重合方法によれば、微細パターン形成時において優れた解像度及び焦点深度が得られる(メタ)アクリル系ラクトン化合物を単量体として用いる重合において、欠陥の原因となりやすい、分子量が非常に高くゲルパーミエーションクロマトグラフィーでは検出できない程微量な成分の生成を限りなく抑制することができる。更には、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位が、重合体の高分子量成分に偏って多く導入されることがなく、レジスト溶剤への溶解性を向上させることができる。
また、本発明の半導体レジスト用重合体は、レジスト溶剤への溶解性に優れ、感放射線性樹脂組成物(半導体レジスト用組成物)における重合体成分として好適に用いることができる。更に、この半導体レジスト用重合体を、樹脂成分として用いることで、感度及び露光余裕に優れる感放射線性樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のGPC−IRチャート図である。
【図2】実施例2のGPC−IRチャート図である。
【図3】比較例1のGPC−IRチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0014】
本発明の半導体レジスト用重合体の重合方法では、原料単量体として、ラクトン骨格を含有する(メタ)アクリル系単量体(A)、及びラクトン骨格を含有しない単量体(B)が用いられる。
【0015】
<ラクトン骨格を含有する(メタ)アクリル系単量体(A)>
前記ラクトン骨格を含有する(メタ)アクリル系単量体(A)[以下、「単量体(A)」ともいう。]は、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体であり、微細パターン形成時において、優れた解像度及び焦点深度が得られるラクトン骨格を有する繰り返し単位[以下、「繰り返し単位(A)」ともいう。]を与えるものであれば特に限定されない。このラクトン骨格を有する繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(a1)〜(a5)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0016】
【化3】

〔一般式(a1)〜(a5)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキル基を示し、Rは水素原子又はメトキシ基を示す。Zは、−O−(CO)−、又は、−(CO)−O−を示す。mは1〜3の整数を示し、nは0又は1である。〕
【0017】
前記一般式(a1)におけるRの炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0018】
また、前記一般式(a1)〜(a5)で表される繰り返し単位のなかでも、一般式(a3)で表され且つnが0である繰り返し単位が特に好ましい。
【0019】
前記一般式(a1)〜(a5)で表される繰り返し単位を与える単量体としては、例えば、下記一般式(M−a1)〜(M−a5)で表される化合物等を挙げることができる。
【0020】
【化4】

〔一般式(M−a1)〜(M−a5)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数1〜4の置換基を有してもよいアルキル基を示し、Rは水素原子又はメトキシ基を示す。Zは、−O−(CO)−、又は、−(CO)−O−を示す。mは1〜3の整数を示し、nは0又は1である。〕
【0021】
前記一般式(M−a1)におけるRは、前述の一般式(a1)におけるRの説明をそのまま適用することができる。
【0022】
尚、本発明の重合方法においては、前記単量体(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
<ラクトン骨格を含有しない単量体(B)>
前記ラクトン骨格を含有しない単量体(B)[以下、単量体(B)ともいう。]は、ラクトン骨格を有しておらず、ラクトン骨格を有していない繰り返し単位[以下、「繰り返し単位(B)」ともいう。]を与えるものであれば特に限定されない。
特に、この単量体(B)としては、酸解離性基を有しており、重合させた際に、酸解離性基を含有する繰り返し単位[以下、「繰り返し単位(B1)」ともいう。]を与えるものが用いられることが好ましい。
この繰り返し単位(B1)としては、例えば、下記一般式(b1)〜(b6)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0024】
【化5】

〔一般式(b1)〜(b6)のにおいて、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基を示す。〕
【0025】
前記一般式(b1)〜(b6)で表される各繰り返し単位を与える、酸解離性基を含有する単量体としては、例えば、下記一般式(M−b1)〜(M−b6)で表される化合物等を挙げることができる。
【0026】
【化6】

〔一般式(M−b1)〜(M−b6)のにおいて、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基を示す。〕
【0027】
また、前記単量体(B)としては、酸解離性基を含有する単量体以外にも、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリル酸、メチルメタクリル酸、3−ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、3−ヒドロキシアダマンチルアクリレート、3−(2−ヒドロキシ)エチル−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−ヘキサヒドロフタロイルエチルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル=メタクリラート、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルメタクリレート、p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、α−メチル−p−アセトキシスチレン、p−ベンジロキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−tert−ブトキシカルボニロキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、t−ブチル(メタ)アクリレート、4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−トリフルオロメチル−1−ブチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の酸解離性基を含有しない単量体を用いることができる。
【0028】
尚、本発明の重合方法においては、前記単量体(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
<重合方法>
本発明の重合方法においては、前記単量体(A)及び前記単量体(B)を含む単量体溶液(i)を、反応系に30分間以上かけて加えながら重合し、該重合の開始から30分間以上経過した後に、前記単量体(A)を含む単量体溶液(ii)を、反応系に更に加えて重合を行う。
【0030】
前記単量体溶液(i)は、前述の単量体(A)及び単量体(B)を重合溶媒に溶解させて得られるものである。
前記単量体溶液(ii)は、前述の単量体(A)を重合溶媒に溶解させて得られるものである。
また、単量体溶液(i)及び(ii)に用いられる各単量体の量は、各単量体の重合活性等に応じて適宜調整される。尚、前述の単量体(B)は単量体溶液(ii)にも溶解されていてもよいが、単量体溶液(i)に、重合すべき単量体(B)の全量、即ち、重合に用いられる単量体(B)の全量が溶解されていることがより好ましい。
【0031】
前記単量体溶液(i)及び(ii)に含まれる単量体(A)の合計〔即ち、重合すべき単量体(A)の全量〕を100質量%とした場合、単量体溶液(ii)における単量体(A)の含有割合は、50質量%以下(0質量%は含まない)であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。即ち、単量体溶液(i)における単量体(A)の含有割合は、50質量%以上(100質量%は含まない)であることが好ましく、より好ましくは70〜95質量%である。単量体溶液(ii)における単量体(A)の含有割合が50質量%を超えると、重合体の低分子量成分にラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位が多くなり、レジスト溶剤への溶解性が低下するおそれがある。
【0032】
また、前記単量体(B)は、前述のように、単量体溶液(ii)にも含まれていてもよいが、単量体溶液(i)にのみ含まれていることがより好ましい。即ち、重合に用いられる単量体(B)の全量が単量体溶液(i)に溶解されていることが好ましい。この場合、単量体溶液(i)中に含まれる単量体(A)の単量体(B)に対する相対量が小さくなり、重合体の高分子量成分にラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位を低く制御することができる観点から好ましい。
尚、単量体(B)が単量体溶液(i)及び(ii)の両方に含まれる場合は、これらの単量体溶液に含まれる単量体(B)の合計を100質量%とした際に、単量体溶液(ii)における単量体(B)の含有割合が、30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは20質量%以下である。
【0033】
前記重合溶媒としては、前記単量体や、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤等の他の添加剤を溶解できる有機溶剤が用いられる。
前記有機溶剤としては、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、非プロトン系極性溶剤、エステル系溶剤、芳香族系溶剤、線状又は環状脂肪族系溶剤等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、アセトン等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、例えば、メトキシメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のアルコキシアルキルエーテルが挙げられる。非プロトン系極性溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイド等が挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル等の酢酸アルキルが挙げられる。芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等のアルキルアリール溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族溶剤が挙げられる。脂肪族系溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。更には、他の溶剤として、乳酸エチルやガンマブチロラクトン等も用いることができる。
また、これらの重合溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、単量体溶液(i)及び(ii)に用いられる重合溶媒の量は、単量体の種類等により適宜調整される。
【0034】
本発明の重合方法において、前記単量体溶液(i)を用いた重合は、通常、反応容器内に、前述の重合溶媒、又はこの重合溶媒に重合開始剤を溶解させた重合開始剤溶液が存在する反応系において行われる。具体的には、例えば、重合釜に、重合開始剤溶液又は重合溶媒を予め仕込んでおき、重合温度まで加熱する。その後、重合釜に、単量体溶液(i)及び重合開始剤溶液をそれぞれ供給して重合を行う。尚、重合開始剤及び単量体溶液(i)のいずれもが重合釜に滴下等により供給開始された時点を重合開始とする。
この際、(1)重合開始剤溶液の一部を予め重合釜に仕込んでおき、重合温度まで加熱した後、単量体溶液(i)及び重合開始剤溶液をそれぞれ滴下等により供給し、重合開始から一定時間(例えば、1〜40分間、特に5〜30分間)、重合釜に重合開始剤が単量体に対して過剰に存在させてもよいし、(2)重合釜に重合溶剤の一部を予め仕込んでおき、重合温度まで加熱した後、先に重合開始剤溶液を供給し、重合釜に重合開始剤が存在している状態で単量体溶液を供給してもよい。
【0035】
本発明においては、前記単量体溶液(i)を前述の反応系に30分間以上かけて加えながら重合する。
単量体溶液(i)の反応系への供給は30分間以上かけることが必要であり、20時間以内で終わらせることが好ましく、特に10時間以内が好ましい。この供給にかける時間が30分未満である場合、得られる共重合体の比較的低分子量側の成分の組成において、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位(A)の割合が、他の繰り返し単位に比べ過多となり、欠陥性能やリソグラフィ性能を悪化させることがある。一方、供給時間が長すぎると、生産性が悪くなったり、単量体や重合開始剤の劣化が生じるおそれがある。
【0036】
前記重合開始剤は、一般的にラジカル発生剤として用いられているものであれば特に限定されない。例えば、熱重合開始剤、レドックス重合開始剤、光重合開始剤等が挙げられる。具体的には、パーオキシドやアゾ化合物等の重合開始剤が挙げられる。これらのなかでも、ジアゾ化合物が好ましく、特に、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)等が好ましい。尚、この重合開始剤は、重合体の末端に組み込まれるため、必要とするリソグラフィ性能に応じて適宜選択される必要がある。
【0037】
前記単量体溶液(i)の反応系への供給速度は、供給開始から供給終了まで一定、若しくは重合初期に遅く重合後期に早いことが好ましい。
また、前記開始剤溶液の供給速度は、供給開始から供給終了まで一定、若しくは重合初期に早く重合後期に遅いことが好ましい。
本発明における重合方法においては、重合初期に高分子量体が生成し、重合後期に低分子量体が生成するため、重合初期では開始剤量が多く(即ち、単量体量が少なく)、重合後期では開始剤量が少ない(即ち、単量体量が多い)場合には、Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)の小さな重合体の生成につながる。また、重合後は、通常、得られた重合体から低分子量成分や不純物を除く精製を施すが、Mw/Mnの小さな重合体では除かれる低分子量成分が少なくなり収率を向上させることができる。
【0038】
また、重合開始剤溶液の滴下等による供給時間は、重合時間より短いことが好ましく、より好ましくは1〜10時間である。供給時間が短すぎると、重合活性の高い単量体である(メタ)アクリル系ラクトン化合物のブロックが生成し、レジスト溶剤への溶解性が悪くなるおそれがある。一方、供給時間が長すぎると、生産性が悪くなったり、単量体や重合開始剤の劣化が生じるおそれがある。
【0039】
前記重合開始剤の使用量は、用いられる全ての原料単量体の合計を100モル%とした場合に、0.1〜30モル%であることが好ましく、より好ましくは1〜15モル%である。
【0040】
また、前記重合溶媒の使用量は、用いられる全ての原料単量体の合計を100質量%とした場合に、50〜2000質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜1000質量%である。
【0041】
前記重合反応においては、更に連鎖移動剤を用いることができる。この連鎖移動剤の使用量は、ラジカル重合開始剤と連鎖移動剤との質量比(ラジカル重合開始剤:連鎖移動剤)が、1:0.01〜1:1であることが好ましく、より好ましくは1:0.1〜1:1である。
【0042】
また、前記単量体溶液(ii)を用いた重合は、前述の単量体溶液(i)を用いた重合開始から30分間以上経過した後に、前記反応系に更に供給して行われる。
このように、単量体溶液(i)を用いた重合の開始から30分間以上経過した後に、単量体溶液(ii)を反応系に更に滴下等により供給して重合することにより、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系単量体(A)の濃度を、高分子量体が生成されやすい重合開始から30分間の間低くくし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでは検出できない程微量の非常に分子量の高い成分の生成を限りなく抑制することができる。
【0043】
単量体溶液(ii)の反応系への供給の開始は、前記単量体溶液(i)を用いた重合開始から30分間以上経過した後であれば、単量体溶液(i)の反応系への供給が行われている最中であってもよいし、供給終了後であってもよい。特に、単量体溶液(ii)の供給開始は、単量体溶液(i)の供給終了後であることが好ましく、単量体溶液(i)の供給終了後から30分以内であることがより好ましい。単量体溶液(ii)の供給開始が、単量体溶液(i)の供給終了後である場合には、1つのタンク及びポンプを用いて各単量体溶液を供給することができるため、操作性や生産性に優れる。
尚、単量体溶液(ii)の供給が、単量体溶液(i)の供給終了後から30分を超えて開始される場合には、得られる重合体の低分子量成分にラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位(A)が多くなり、レジスト溶剤への溶解性が低下するおそれがある。
【0044】
また、単量体溶液(ii)の反応系への供給速度は、供給開始から供給終了まで一定であることが好ましい。
更に、単量体溶液(ii)の供給は、20分以上かけて行うことが好ましく、20分間〜3時間かけて行うことがより好ましく、20分間〜2時間かけて行うことが更に好ましい。この供給時間が20分未満の場合、重合温度の著しい低下を招き品質が安定しなかったり、得られる重合体の低分子量成分にラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位(A)が多くなり、レジスト溶剤への溶解性が低下するおそれがある。一方、供給時間が長すぎると、生産性が悪くなったり、単量体や重合開始剤の劣化が生じるおそれがある。
【0045】
本発明の重合方法において、単量体溶液(i)及び(ii)の供給が共に終了した後は、一定時間、重合温度を保持しながら、重合を継続することが単量体のコンバージョンを向上させる観点から好ましい。
【0046】
本発明の重合方法における重合温度は、通常、20〜120℃であり、好ましくは50〜110℃、更に好ましくは60〜100℃である。
重合する際の雰囲気は、重合が可能な限り限定されず、通常の大気雰囲気下でもよいし、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下でもよい。特に、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
重合時間は、通常、144時間以内であり、好ましくは1.5〜72時間、より好ましくは2〜24時間である。
【0047】
本発明の重合方法により得られる重合体は、ハロゲン、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が既定値以下、例えばHPLCによる分析で0.1質量%以下であることが好ましい。その場合、レジストとしての感度、解像度、プロセス安定性、パターン形状等を更に改善できるだけでなく、液中異物や感度等の経時変化が少ないレジストとして使用できる感放射線性樹脂組成物に好適に用いることができる。
【0048】
また、重合体の精製法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
金属等の不純物を除去する方法としては、ゼータ電位フィルターを用いて重合体溶液中の金属を吸着させる方法や蓚酸やスルホン酸等の酸性水溶液で重合体溶液を洗浄することで金属をキレート状態にして除去する方法等が挙げられる。
また、残留単量体やオリゴマー成分を規定値以下に除去する方法としては、水洗や適切な溶剤を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、重合体溶液を貧溶媒へ滴下することで重合体を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した重合体スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法がある。また、これらの方法を組み合わせることもできる。
前記再沈澱法に用いられる貧溶媒としては、精製する重合体の物性等に左右され一概には例示することはできないが、当業者であれば重合体の物性等に合わせて適宜選定することができる。
【0049】
また、得られた精製後の重合体中のゲルパーミエーションクロマトグラフィーでは検出できない程微量の非常に分子量の高い成分量の大小を分析する手法として、以下の方法が挙げられる。
重合体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のレジスト溶剤に溶解させて溶液とした後、ヘキサン等の貧溶剤を重合体溶液が曇りだすまで加える。そして、この際に加えた貧溶剤量の大小によりレジスト溶剤への溶解性の大小が比較可能である。
尚、貧溶剤量は析出温度、組成比、分子量等に依存するため、比較として析出温度等を同じ条件にして組成比、分子量が近い重合体を用いる必要がある。
【0050】
また、得られた精製後の重合体中のラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位が、重合体の高分子量成分や低分子量成分に偏って多く導入されていないかを分析する手法として、以下の方法が挙げられる。
重合体を分子量の大きさで分けて分取し、NMRやGPC−IR測定によりラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位の導入量を求める。GPC−IRは、NMRに比べ分子量の幅が小さい重合体を分取することが可能であるため、より精密に分子量毎のラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位の大小を比較することが可能である。但し、IRの強度は試料の量に依存するため、試料の量が少ない重合体中の高分子量体及び低分子量体中のラクトン骨格を有する(メタ)アクリル系繰り返し単位の量に関する情報の信頼性が低いことは考慮されるべきである。
【0051】
<半導体レジスト用重合体>
本発明の重合方法により得られる重合体は、前述のラクトン骨格を有する繰り返し単位(A)、及び、ラクトン骨格を含有しない繰り返し単位(B)を含有する。特に、この重合体は、繰り返し単位(B)のなかでも、酸解離性基を含有する繰り返し単位(B1)を含有していることが好ましい。
尚、この重合体に含有される繰り返し単位(A)及び(B)は、それぞれ、1種のみ含有されていてもよいし、2種以上含有されていてもよい。
【0052】
前記繰り返し単位(A)の含有割合は、重合体を構成する全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、5〜60モル%であることが好ましく、より好ましくは10〜55モル%である。
また、酸解離性基を有する繰り返し単位(B1)の含有割合は、重合体を構成する全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、20〜80モル%であることが好ましく、より好ましくは30〜70モル%である。
更に、酸解離性基を有しない単量体(B)に由来する酸解離性基を有しない繰り返し単位の含有割合は、重合体を構成する全繰り返し単位の合計を100モル%とした場合に、70モル%以下であることが好ましく、より好ましくは50モル%以下である。
【0053】
また、前記重合体において、繰り返し単位(A)と、酸解離性基を有する繰り返し単位(B1)との含有比[繰り返し単位(A):繰り返し単位(B1)](モル比)は、10:90〜60:40であることが好ましく、より好ましくは30:70〜60:40である。この含有比が10:90〜60:40である場合には、現像時に対する適切な溶解コントラストが得られ、良好な解像度及び焦点深度等を得ることができるため好ましい。また、ラクトン骨格を有する繰り返し単位(A)の含有比が少なすぎると、即ち酸解離性基を揺有する繰り返し単位(B1)の含有比が多すぎると、現像時に対する溶解コントラストの低下により、適切なパターンプロファイルが形成されないおそれがある。一方、繰り返し単位(A)の含有比が多すぎると、即ち繰り返し単位(B1)の含有比が少なすぎると、適切な溶解コントラストが得られず、解像度が低下するおそれがある。
【0054】
また、前記重合体のゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1000〜300000であることが好ましく、より好ましくは1000〜100000、更に好ましくは1000〜50000である。
更に、この重合体における、前記Mwと、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)とで求められる分子量分布(Mw/Mn)は、1〜5であることが好ましく、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1.1〜2.5である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0056】
[1]半導体レジスト用重合体の合成及び評価
[1−1]半導体レジスト用重合体の合成
下記の各合成例における各測定及び評価は、下記の要領で行った。
(1)Mw及びMn
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL1 本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度Mw/Mnは測定結果より算出した。
(2)13C−NMR分析
各樹脂の13C−NMR分析は、日本電子(株)製「JNM−EX270」を用い、測定した。
【0057】
以下、各合成例について説明する。
実施例1〜2及び比較例1の半導体レジスト用重合体の合成に用いた各化合物(単量体)を式(M−1)〜(M−3)として以下に示す。
【0058】
【化7】

【0059】
(実施例1)
前記化合物(M−1)8.09gを2−ブタノン30gに溶解させ、単量体溶液(X−1)を調製した。また、前記化合物(M−1)45.84g、前記化合物(M−2)10.69g、及び前記化合物(M−3)35.38gを2−ブタノン170gに溶解させ、単量体溶液(Y−1)を調製した。更に、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを2−ブタノン50gに溶解させ、開始剤溶液を調製した。
次いで、2−ブタノン50gを入れた1000mlの四口フラスコ内を30分窒素パージした。窒素パージの後、四口フラスコ内の2−ブタノンを攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した単量体溶液(Y−1)及び開始剤溶液を滴下漏斗により別々に同時に滴下開始し、3時間かけて一定の滴下速度で滴下した。これらの滴下が終了した5分後に、事前に準備した単量体溶液(X−1)を25分かけて一定の滴下速度で滴下した。更に、2時間30分間、80℃にて熟成させた。
重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状で洗浄した後、再度ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体を得た(収率75%)。
得られた共重合体は、Mwが7600、Mw/Mnが1.49、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、(M−2)及び(M−3)に由来する各繰り返し単位の含有割合が51.2:9.9:38.9(モル%)の共重合体であった。
【0060】
(実施例2)
前記化合物(M−1)8.09gを2−ブタノン30gに溶解させ、単量体溶液(X−2)を調製した。また、前記化合物(M−1)45.84g、前記化合物(M−2)10.69g、及び前記化合物(M−3)35.38gを2−ブタノン170gに溶解させ、単量体溶液(Y−2)を調製した。更に、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを2−ブタノン50gに溶解させ、開始剤溶液を調製した。
次いで、2−ブタノン50gを入れた1000mlの四口フラスコ内を30分窒素パージした。窒素パージの後、四口フラスコ内の2−ブタノンを攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した開始剤溶液を滴下漏斗により滴下を開始した。そして、開始剤溶液の滴下開始から5分後に、事前に準備した単量体溶液(Y−2)の滴下を開始し、開始剤溶液を3時間5分、単量体溶液(Y−2)を3時間かけて一定の速度で滴下した。これらの滴下が終了した5分後に、事前に準備した単量体溶液(X−2)を25分かけて一定の滴下速度で滴下した。更に、2時間30分間、80℃にて熟成させた。
重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー状で洗浄した後、再度ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体を得た(収率75%)。
得られた共重合体は、Mwが7500、Mw/Mnが1.45、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、(M−2)及び(M−3)に由来する各繰り返し単位の含有割合が50.9:9.8:39.3(モル%)の共重合体であった。
【0061】
(比較例1)
前記化合物(M−1)53.93g(50モル%)、前記化合物(M−2)10.69g(10モル%)、及び前記化合物(M−3)35.38g(40モル%)を2−ブタノン200gに溶解させ、単量体溶液を調製した。更に、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)5.58gを2−ブタノン500gに溶解させ、開始剤溶液を調製した。
次いで、2−ブタノン50gを入れた1000mlの四口フラスコ内を30分窒素パージした。窒素パージの後、四口フラスコ内の2−ブタノンを攪拌しながら80℃に加熱し、事前に準備した単量体溶液及び開始剤溶液を滴下漏斗により別々に同時に滴下開始し、3時間かけて一定の滴下速度で滴下した。更に、3時間、80℃にて熟成させた。
重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別する。ろ別された白色粉末を2度400gのメタノールにてスラリー上で洗浄した後、ろ別し、50℃にて17時間乾燥し、白色粉末の共重合体を得た(収率70%)。
得られた共重合体は、Mwが7200、Mw/Mnが1.41、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、(M−2)及び(M−3)に由来する各繰り返し単位の含有割合が51.1:9.8:39.1(モル%)の共重合体であった。
【0062】
[1−2]重合体の評価
(1)レジスト溶剤への溶解性
実施例1、2及び比較例1の重合方法で得られた各共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(固形分濃度:17質量%)を調製した。次いで、室温26℃の部屋にて、これらの17%共重合体溶液1gを攪拌している所へ、プロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノエチルエーテルとの混合溶剤[重量比(プロピレングリコールモノメチルエーテル:プロピレングリコールモノエチルエーテル)=2:1]を滴下した。そして、共重合体溶液が曇った時点で滴下を止め、滴下した混合溶剤の量を比較することで溶解性を評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
(2)GPC−IRの測定
東ソー(株)製GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてMwの測定を行った。
次いで、「LC−Transform Series 400」(LAB CONNECTION社製)を用いて、分子量(Mw)により分別された共重合体溶液を、LC5030 Single Ge Collection−disk(1mm)上に基板を1分あたり10度回転させながら分取し、135℃のガスで乾燥させた。これを「IR NEXUS 470 FT−IR」(サーモニコレー社製)を用いてIR分析を実施した。
得られたIRをもとにラクトン骨格のカルボニル由来のピーク強度を主鎖のエステルのカルボニル由来のピーク強度で割ることにより、カラムの保持時間ごとのラクトン骨格含有繰り返し単位の相対的な導入量をプロットした。
図1〜図3に各重合体のGPC測定結果とラクトン骨格含有繰り返し単位の相対的な導入量をプロットしたGPC−IRチャートを示す。チャート図における横軸はカラムの保持時間(単位;分)を表し、左の縦軸はGPCの相対強度(ピークの最大値を100とする)を表し、右の縦軸はラクトン骨格含有繰り返し単位の相対的な導入量(ラクトン骨格のC=O結合に由来するピーク強度を、主鎖に近いエステル骨格のC=O結合に由来するピーク強度で割った値)を表す。また、山状のピークはGPC測定結果を表し、線状のピークはラクトン骨格を含有する繰り返し単位の相対的な導入量をプロットした結果を表す。
【0065】
[2]感放射線性樹脂組成物(半導体レジスト用組成物)の調製及び評価
[2−1]評価方法
感放射線性樹脂組成物の評価は、下記の要領で行った。
(1)感度(単位:mJ/cm
8インチのウエハー表面に、下層反射防止膜形成剤(商品名「ARC29A」、日産化学社製)を用いて、膜厚77nmの下層反射防止膜を形成した。後述する感放射線性樹脂組成物をこの基板の表面にスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、100℃にて60秒間加熱処理を行い、膜厚150nmのレジスト被膜を形成した。形成したレジスト被膜を、フルフィールド縮小投影露光装置(商品名「S306C」、ニコン社製、開口数:0.78)を使用し、マスクパターンを介して露光量を1mJ/cmずつ変量して露光した。その後、105℃にて60秒間加熱処理を行った後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により25℃で30秒現像した後、水洗及び25℃にて乾燥してポジ型のレジストパターンを形成した。寸法75nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、線幅75nmの1対1ラインアンドスペースに形成される露光量(mJ/cm)を「感度」とした。尚、測長には走査型電子顕微鏡(商品名「S9220」、日立ハイテクノロジーズ社製)を使用した。
【0066】
(2)露光余裕(単位:mJ/cm
寸法75nmの1対1ラインアンドスペースのマスクを介して形成した線幅が、感度から露光量を小さくしていった際に、隣り合う2本のライン間にブリッジ欠陥が生じて繋がってしまうまでの露光量の変量(単位:mJ/cm)を「露光余裕」とした。例えば、感度が30mJ/cmである場合に、露光量を29、28、27mJ/cmと小さくしていった際にブリッジ欠陥が27mJ/cmで生じた場合、露光余裕は30−27=3(mJ/cm)と計算される。
【0067】
[2−2]感放射線性樹脂組成物の調製及び評価結果
前述の実施例により合成した各重合体、及び以下に示す各成分〔酸発生剤(B)、酸拡散抑制剤(C)、及び溶剤(D)〕を使用し、各感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0068】
<酸発生剤(B)>
B−1:トリフェニルスルホニウム 2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート
【0069】
<酸拡散抑制剤(C)>
C−1:N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
【0070】
<溶剤(D)>
D−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
D−2:シクロヘキサノン
D−3:γ−ブチロラクトン
【0071】
(実施例3)
実施例1で得た重合体100部、酸発生剤(B−1)8.5部、及び酸拡散抑制剤(C−1)1部を混合して混合物を得た。得られた混合物に、溶剤(D−1)900部、溶剤(D−2)400部、及び溶剤(D−3)30部を添加し、混合物を溶解させて混合溶液を得た。得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(実施例3)を調製した。調製した感放射線性樹脂組成物(実施例3)の感度の測定結果は35mJ/cm、露光余裕は4mJ/cmであった。
【0072】
(実施例4)
実施例2で得た重合体100部、酸発生剤(B−1)8.5部、及び酸拡散抑制剤(C−1)1部を混合して混合物を得た。得られた混合物に、溶剤(D−1)900部、溶剤(D−2)400部、及び溶剤(D−3)30部を添加し、混合物を溶解させて混合溶液を得た。得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(実施例4)を調製した。調製した感放射線性樹脂組成物(実施例4)の感度の測定結果は35mJ/cm、露光余裕は4mJ/cmであった。
【0073】
(比較例2)
比較例1で得た重合体100部、酸発生剤(B−1)8.5部、及び酸拡散抑制剤(C−1)1部を混合して混合物を得た。得られた混合物に、溶剤(D−1)900部、溶剤(D−2)400部、及び溶剤(D−3)30部を添加し、混合物を溶解させて混合溶液を得た。得られた混合溶液を孔径0.20μmのフィルターでろ過して感放射線性樹脂組成物(比較例2)を調製した。調製した感放射線性樹脂組成物(比較例2)の感度の測定結果は35mJ/cm、露光余裕は3mJ/cmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レジスト用重合体の重合方法であって、
原料単量体として、ラクトン骨格を含有する(メタ)アクリル系単量体(A)、及びラクトン骨格を含有しない単量体(B)が用いられ、
前記単量体(A)及び前記単量体(B)を含む単量体溶液(i)を、反応系に30分間以上かけて加えながら重合し、該重合の開始から30分間以上経過した後に、前記単量体(A)を含む単量体溶液(ii)を、反応系に更に加えて重合を行うことを特徴とする半導体レジスト用重合体の重合方法。
【請求項2】
前記単量体溶液(i)に含まれる前記単量体(B)の量は、重合すべき単量体(B)の全量である請求項1に記載の半導体レジスト用重合体の重合方法。
【請求項3】
前記単量体溶液(ii)に含まれる単量体(A)の割合は、前記単量体溶液(i)及び(ii)に含まれる単量体(A)の合計を100質量%とした場合に、50質量%以下である請求項1又は2に記載の半導体レジスト用重合体の重合方法。
【請求項4】
前記単量体溶液(ii)の供給が、前記単量体溶液(i)の供給が終了した後に開始される請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の半導体レジスト用重合体の重合方法。
【請求項5】
前記単量体(B)が、下記一般式(M−b1)〜(M−b6)で表される化合物のうちの少なくとも1種である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の重合方法。
【化1】

〔一般式(M−b1)〜(M−b6)において、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基を示す。〕
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の重合方法にて製造された半導体レジスト用重合体であって、
ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1000〜50000であり、且つ、前記Mwと前記GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)とで求められる分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜2.5であることを特徴とする半導体レジスト用重合体。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の重合方法にて製造された半導体レジスト用重合体であって、
下記一般式(b1)〜(b6)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする半導体レジスト用重合体。
【化2】

〔一般式(b1)〜(b6)のにおいて、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基を示す。〕

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−195739(P2011−195739A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65107(P2010−65107)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】