説明

半導体レーザ素子及び半導体レーザアレイ

【課題】植物工場用の光源や蛍光体励起用の光源として使用可能であり、かつ高圧ナトリウムランプや発光ダイオードよりも設備コストや消費電力を低減できる半導体レーザ素子及び半導体レーザアレイを提供する。
【解決手段】互いに対向配置された一対の共振器面を有する半導体レーザ素子30において、第1導電型の半導体基板1と、半導体基板1の下方に形成され、一対の共振器面から外部に向けて出射されるレーザ光Laを発生すると共に半導体基板1に向けて自然放出光Lbを発生する活性層5と、活性層5の下方に形成された第2導電型のリッジ14と、リッジ14に接続された第1の電極19(20)と、半導体基板1に接続された第2の電極26と、を備え、自然放出光Lbは、半導体基板1におけるリッジ14が形成されている領域に対応する領域から外部に向けて出射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物工場用の光源や蛍光体励起用の光源として使用可能な半導体レーザ素子及び半導体レーザアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
レタスやサラダ菜等の野菜は天候の影響を受けやすいため、安定した栽培が難しい。また北欧等の日照時間の短い地域では野菜が十分発育しない場合がある。これらを鑑みて最近では高圧ナトリウムランプを用いて人工の擬似太陽光を生成し、野菜等の植物を栽培する植物工場が注目されている。
しかしながら、高圧ナトリウムランプは単価が高く、使用寿命も短いため、植物工場用の光源としては最適とはいえない。
そこで、高圧ナトリウムランプに替わる別の植物工場用光源として発光ダイオードを用いる手段が例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−131909
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発光ダイオードでは電力利用効率が30%程度と低く、植物工場用の光源として用いるためには単位面積当たり多くの発光ダイオードが必要になるため、設備コストが高く、かつ消費電力が大きくなるため、さらなる改善が望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、植物工場用の光源や蛍光体励起用の光源として使用可能であり、かつ高圧ナトリウムランプや発光ダイオードよりも設備コストや消費電力を低減できる半導体レーザ素子及び半導体レーザアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の半導体レーザ素子及び半導体レーザアレイを提供する。
1)互いに対向配置された一対の共振器面を有する半導体レーザ素子において、第1導電型の半導体基板(1)と、前記半導体基板の下方に形成され、前記一対の共振器面から外部に向けて出射されるレーザ光(La)を発生すると共に前記半導体基板に向けて自然放出光(Lb)を発生する活性層(5)と、前記活性層の下方に形成された第2導電型のリッジ(14)と、前記リッジに接続された第1の電極(19,20)と、前記半導体基板に接続された第2の電極(26)と、を備え、前記自然放出光は、前記半導体基板における前記リッジが形成されている領域に対応する領域から外部に向けて出射されることを特徴とする半導体レーザ素子(30)。
2)前記第2の電極は、前記リッジが形成されている領域に対応する領域に開口部を有することを特徴とする1)記載の半導体レーザ素子。
3)前記第2の電極は、前記自然放出光を透過する透明電極(61)であることを特徴とする1)記載の半導体レーザ素子。
4)前記半導体基板は、前記リッジが形成されている領域に対応する領域に、前記活性層側に窪んだ凹部(23,41)を有することを特徴とする1)記載の半導体レーザ素子。
5)前記リッジは、前記凹部が形成されている領域に対応する領域を残して絶縁膜(17)で覆われていることを特徴とする4)記載の半導体レーザ素子。
6)前記活性層は、前記凹部が形成されている領域に対応する領域を残して無秩序化されていることを特徴とする4)記載の半導体レーザ素子。
7)前記凹部には複数の突起物(141)が形成されていることを特徴とする4)記載の半導体レーザ素子。
8)1)〜7)のいずれかの半導体レーザ素子が複数形成されていることを特徴とする半導体レーザアレイ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、植物工場用の光源や蛍光体励起用の光源として使用可能であり、かつ高圧ナトリウムランプや発光ダイオードよりも設備コストや消費電力を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A1工程)を説明するための模式的断面図である。
【図2】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A2工程)を説明するための模式的断面図である。
【図3】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A3工程)を説明するための模式的断面図である。
【図4】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A4工程)を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A5工程)を説明するための模式的断面図である。
【図6】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A6工程)を説明するための模式的断面図である。
【図7】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A7工程)を説明するための模式的断面図である。
【図8】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A8工程)を説明するための模式的断面図である。
【図9】本発明の半導体レーザ素子の実施例1(A9工程)を説明するための模式的断面図である。
【図10】本発明の半導体レーザ素子の実施例1を説明するための模式的斜視図である。
【図11】実施例の半導体レーザ素子のI−V特性及び光出力特性を示した模式図である。
【図12】本発明の半導体レーザ素子の実施例2を説明するための模式的斜視図である。
【図13】本発明の半導体レーザ素子の実施例2(B1工程)を説明するための模式的断面図である。
【図14】本発明の半導体レーザ素子の実施例2(B2工程)を説明するための模式的断面図である。
【図15】本発明の半導体レーザ素子の実施例2(B3工程)を説明するための模式的断面図である。
【図16】本発明の半導体レーザ素子の実施例2(B4工程)を説明するための模式的断面図である。
【図17】本発明の半導体レーザ素子の実施例3を説明するための模式的斜視図である。
【図18】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C1工程)を説明するための模式的断面図である。
【図19】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C2工程)を説明するための模式的断面図である。
【図20】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C3工程)を説明するための模式的断面図である。
【図21】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C4工程)を説明するための模式的断面図である。
【図22】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C5工程)を説明するための模式的断面図である。
【図23】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C6工程)を説明するための模式的断面図である。
【図24】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C7工程)を説明するための模式的断面図である。
【図25】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C8工程)を説明するための模式的断面図である。
【図26】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C9工程)を説明するための模式的断面図である。
【図27】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C10工程)を説明するための模式的断面図である。
【図28】本発明の半導体レーザ素子の実施例3(C11工程)を説明するための模式的断面図である。
【図29】本発明の半導体レーザ素子の実施例4を説明するための模式的斜視図である。
【図30】本発明の半導体レーザ素子の実施例5を説明するための模式的斜視図である。
【図31】本発明の半導体レーザ素子の実施例5(E2工程)を説明するための模式的断面図である。
【図32】本発明の半導体レーザ素子の実施例5(E3工程)を説明するための模式的断面図である。
【図33】本発明の半導体レーザ素子の実施例5(E4工程)を説明するための模式的断面図である。
【図34】本発明の半導体レーザ素子の実施例6を説明するための模式的斜視図である。
【図35】本発明の半導体レーザ素子の実施例7を説明するための模式的斜視図である。
【図36】本発明の半導体レーザ素子の実施例8を説明するための模式的斜視図である。
【図37】本発明の半導体レーザ素子の実施例9(F1工程)を説明するための模式的断面図である。
【図38】本発明の半導体レーザ素子の実施例9(F2工程)を説明するための模式的断面図である。
【図39】本発明の半導体レーザ素子の実施例9(F3工程)を説明するための模式的断面図である。
【図40】本発明の半導体レーザ素子の実施例9(F4工程)を説明するための模式的断面図である。
【図41】本発明の半導体レーザ素子の実施例9(F5工程)を説明するための模式的断面図である。
【図42】本発明の半導体レーザ素子の実施例9(F6工程)を説明するための模式的断面図である。
【図43】本発明の半導体レーザ素子の実施例9を説明するための模式的斜視図である。
【図44】本発明の半導体レーザ素子の実施例10を説明するための模式的斜視図である。
【図45】本発明の半導体レーザ素子の実施例10(G2工程)を説明するための模式的断面図である。
【図46】本発明の半導体レーザ素子の実施例10(G3工程)を説明するための模式的断面図である。
【図47】本発明の半導体レーザ素子の実施例10(G4工程)を説明するための模式的断面図である。
【図48】本発明の半導体レーザ素子の実施例11を説明するための模式的斜視図である。
【図49】本発明の半導体レーザ素子の実施例11(H2工程)を説明するための模式的断面図である。
【図50】本発明の半導体レーザ素子の実施例11(H3工程)を説明するための模式的断面図である。
【図51】本発明の半導体レーザ素子の実施例11(H4工程)を説明するための模式的断面図である。
【図52】本発明の半導体レーザ素子の実施例11(H5工程)を説明するための模式的断面図である。
【図53】本発明の半導体レーザ素子の実施例11(H6工程)を説明するための模式的断面図である。
【図54】実施例11の半導体レーザ素子における活性層及びその近傍の光強度分布を示す図である。
【図55】本発明の半導体レーザアレイの実施例(実施例12)を説明するための模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、実施例1〜12により図1〜図55を用いて説明する。
通常、半導体レーザ素子は1つの半導体ウエハから一度に複数形成されるが、図1〜図10,図12〜図53,及び図55では、説明をわかりやすくするために便宜上、工程の初めから1つの半導体レーザ素子についてのみ示すこととする。
【0010】
<実施例1>
本発明の半導体レーザ素子の実施例1について図1〜図11を用いて説明する。
【0011】
[A1工程](図1参照)
互いに対向する一対の面1a,1bを有するn型の半導体基板1の一方の面1a上に、n型のバッファ層2、n型の耐酸化層3、n型のクラッド層4、ノンドープMQW活性層(以下、活性層と称す)5、p型のクラッド層6、p型のエッチングストップ層7、p型のクラッド層8、p型の障壁緩和層9、及びp型のコンタクト層10を、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて順次形成する。
n型のクラッド層4、活性層5、及びp型のクラッド層6によってダブルヘテロ構造が形成されている。
【0012】
実施例1ではn型の半導体基板1としてn型のGaAs(ガリウム砒素)ウエハを用いた。半導体基板1は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが小さいので活性層5で発生した自然放出光Lb(詳細は後述する)を吸収してしまう。
【0013】
また、実施例1では、n型のバッファ層2として、n型ドーパントであるSi(シリコン)のドーパント濃度が1×1018cm-3であるGaAs層を形成した。バッファ層2は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが小さいので活性層5で発生した自然放出光Lbを吸収してしまう。
【0014】
また、実施例1では、n型の耐酸化層3として、Siのドーパント濃度が1×1018cm-3であるGa0.56In0.44P(ガリウム インジウム リン)層を形成した。耐酸化層3は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが大きいので活性層5で発生した自然放出光Lbを透過する。また、n型の耐酸化層3としてGaInPの他にGaP(ガリウムリン)を用いることができる。
【0015】
また、実施例1では、n型のクラッド層4として、Siのドーパント濃度が1×1018cm-3である(Al0.7Ga0.30.5In0.5P(アルミニウム ガリウム インジウム リン)層を形成した。クラッド層4は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが大きいので活性層5で発生した自然放出光Lbを透過する。また、n型のクラッド層4としてAlGaInPの他にAlInP(アルミニウム インジウム リン)層を用いることができる。
【0016】
また、実施例1では、活性層5を、ノンドープIn0.53Ga0.47Pウエル層とノンドープ(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pバリア層とが交互に積層された二重量子井戸構造を有する構成とした。
【0017】
また、実施例1では、p型のクラッド層6として、p型ドーパントであるZn(亜鉛)のドーパント濃度が5×1017cm-3である(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層を形成した。クラッド層6は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが大きいので活性層5で発生した自然放出光Lbを透過する。また、p型のクラッド層6としてAlGaInPの他にAlInPを用いることができる。
【0018】
また、実施例1では、p型のエッチングストップ層7として、Znのドーパント濃度が1×1018cm-3であるGa0.56In0.44P層を形成した。エッチングストップ層7は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが大きいので活性層5で発生した自然放出光Lbを透過する。
【0019】
また、実施例1では、p型のクラッド層8として、Znのドーパント濃度が1×1018cm-3である(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層を形成した。クラッド層8は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが大きいので活性層5で発生した自然放出光Lbを透過する。また、p型のクラッド層8としてAlGaInPの他にAlInPを用いることができる。
【0020】
また、実施例1では、p型の障壁緩和層9として、Znのドーパント濃度が2×1018cm-3であるGa0.5In0.5P層を形成した。障壁緩和層9は、バンドギャップエネルギーが活性層5とほぼ等しいので活性層5で発生した自然放出光Lbを吸収してしまう。そのため、障壁緩和層9を、クラッド層8およびコンタクト層10とのオーミックコンタクトが取れる範囲で、できるだけ薄くすることが望ましい。
【0021】
また、実施例1では、p型のコンタクト層10として、Znのドーパント濃度が1×1019cm-3以上であるGaAs層を形成した。コンタクト層10は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが小さいので活性層5で発生した自然放出光Lbを吸収してしまう。そのため、コンタクト層10を、後述するP側電極19とのオーミックコンタクトが取れる範囲で、できるだけ薄くすることが望ましい。
【0022】
[A2工程](図2参照)
コンタクト層10上にSiO2(二酸化シリコン)膜12を、例えばスパッタリング法を用いて形成し、さらにフォトリソグラフィー法を用いてパターン化する。
【0023】
[A3工程](図3参照)
パターン化されたSiO2膜12をエッチングマスクとして、SiO2膜12が形成されていない領域のコンタクト層10、障壁緩和層9、及びクラッド層8を、例えばドライエッチングとウェットエッチングとを順次行って除去する。
上記ウェットエッチングに用いるエッチャントは、エッチングストップ層7に対するエッチング速度がクラッド層8に対するエッチング速度よりも非常に遅いので、上記ウェットエッチングをエッチングストップ層7で容易に停止させることができる。
例えば上記エッチャントとして硫酸を用いることができる。
上記エッチングにより、クラッド層8、障壁緩和層9、及びコンタクト層10を含むストライプ状のp型のリッジ14と、リッジ14の両側に形成され、エッチングストップ層7が露出したストライプ状の溝部15と、が形成される。
【0024】
[A4工程](図4参照)
まず、SiO2膜12を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
次に、リッジ14、溝部15、及びリッジ14以外の領域のコンタクト層10に亘って、絶縁膜17を例えばプラズマCVD法を用いて形成し、さらにフォトリソグラフィー法を用いてパターン化し、リッジ14におけるコンタクト層10を露出させる。
実施例1では、絶縁膜17としてSiO2膜を形成した。
【0025】
[A5工程](図5参照)
絶縁膜17上、及び露出したコンタクト層10上に、Ti(チタン)、Pt(白金)、及びAu(金)を主成分とするP側電極19を例えばスパッタリング法を用いて形成する。
さらに、P側電極19をめっき導電膜として電気めっきを行い、P側電極19上にAuを主成分とするP側めっき電極20を形成する。
【0026】
[A6工程](図6参照)
半導体基板1の他方の面1b上(図6における下側)に、SiO2膜22を、例えばスパッタリング法を用いて形成し、さらにフォトリソグラフィー法を用いてパターン化する。
【0027】
[A7工程](図7参照)
パターン化されたSiO2膜22をエッチングマスクとして、SiO2膜22が形成されていない領域の半導体基板1及びバッファ層2を、例えばドライエッチングとウェットエッチングとを順次行って除去する。
上記ウェットエッチングに用いるエッチャントは、耐酸化層3に対するエッチング速度がバッファ層2に対するエッチング速度よりも非常に遅いので、上記ウェットエッチングを耐酸化層3で容易に停止させることができる。
例えば上記エッチャントとしてアンモニア過酸化水素水溶液を用いることができる。
上記エッチングにより、半導体基板1及びバッファ層2における、リッジ14が形成されている領域に対応する領域を含む領域に、耐酸化層3が露出した溝状の凹部23が形成される。
【0028】
[A8工程](図8参照)
まず、SiO2膜22を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
次に、凹部23の内周面を覆うようにパターン化されたレジスト膜25を形成し、さらに半導体基板1の他方の面1b上に、AuGe(金ゲルマニウム)、Ni(ニッケル)、及びAuを主成分とするn側電極26を例えば真空蒸着法を用いて形成する。
このとき、n側電極26はレジスト膜25上にも形成されるが、レジスト膜25上のn側電極26と半導体基板1上のn側電極26とは、レジスト膜25の段差によって互いに分離して形成される。
【0029】
[A9工程](図9参照)
レジスト膜25(図8参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜25上のn側電極26もレジスト膜25と共に除去され、半導体基板1上のn側電極26のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
その後、アニール処理を行うことにより、P側電極19とコンタクト層10とがオーミックコンタクトし、n側電極26と半導体基板1とがオーミックコンタクトする。
【0030】
その後、上述のA1工程〜A9工程を経た半導体基板1を素子毎に分断することにより、図10に示す半導体レーザ素子30が一度に複数得られる。
図10において、半導体レーザ素子30の紙面手前側の面及び紙面奥側の面は、一対の共振器面である。
なお、図10は、説明をわかりやすくするために、図1〜図9とは上下を逆にして示している。
【0031】
ここで、実施例1の半導体レーザ素子30を例えば植物工場用等の光源として用いる場合について、図10と共に図11を用いて説明する。
図11(a)の太点線は一般的な発光ダイオード(LED)素子のI(電流)−V(電圧)特性を模式的に示したものである。
図11(b)の太点線は一般的な半導体レーザ素子のI(電流)−V(電圧)特性を模式的に示したものである。
図11(c)の太点線は実施例1の半導体レーザ素子のI(電流)−V(電圧)特性を模式的に示したものである。
図11(d)は、図11(b)に示す一般的な半導体レーザ素子と図11(c)に示す実施例1の半導体レーザ素子の光出力特性をそれぞれ模式的に示したものである。
【0032】
図11(a)と図11(b)を比較すると、発光ダイオード素子は、半導体レーザ素子に比べて低い電流でも発光するものの、電力利用効率が低い(およそ30%)ため、植物工場用等の光源として用いる場合には単位面積当たり多くの発光ダイオード素子が必要になる。このため、設備コストが高くなったり、消費電力が大きくなってしまう。
一方、半導体レーザ素子は、発光ダイオード素子に比べて電力利用効率が高い(およそ74%)が、発振閾値よりも低い電流ではレーザ発振せず、かつ発振閾値よりも低い電流でLED発光した自然放出光は半導体基板やバッファ層等で吸収されたり、半導体基板上に形成された電極によって遮光されてしまう。このため、発振閾値未満の範囲では消費電力のほとんどは発光に寄与しない熱に変換されてしまう。そのため、素子の発熱により、素子の最高出力値が低下したり寿命が短くなるといった問題を有する。
【0033】
これら素子に対して、図10に示すように、実施例1の半導体レーザ素子30では、活性層5のリッジ14に対応する領域で発生した自然放出光(LED発光)Lbは、自然放出光Lbを吸収する半導体基板1及びバッファ層2が上記領域を含んで除去されているため、半導体基板1及びバッファ層2が除去された溝状の凹部23から外部に向けて効率的に照射される。
また、実施例1の半導体レーザ素子30では、溝状の凹部23が形成されている領域では、クラッド層4が耐酸化層3で覆われているため、クラッド層4の大気による酸化を防止することができる。クラッド層4の酸化が進行すると、界面での非発光再結合の増加により光の取り出し効率が低下するといった問題が発生する場合がある。
【0034】
従って、図11(c)に示すように、実施例1の半導体レーザ素子30(図10参照)におけるP側めっき電極20からn側電極26に向けて外部から電流を供給することにより、発振閾値よりも低い電流範囲では、活性層5のリッジ14に対応する領域で発生した自然放出光Lbが、溝状の凹部23から外部に向けて効率的に照射され、また、発振閾値以上の電流範囲では、自然放出光Lbに加えて、レーザ発光したレーザ光Laが一対の共振器面(図10における紙面手前側の面及び紙面奥側の面)から外部に向けて照射される。
【0035】
また、図11(c)に示すように、実施例1の半導体レーザ素子30は、図11(b)に示す一般的な半導体レーザ素子に比べて半導体基板やバッファ層への自然放出光の吸収量が低減されるため、素子の発熱を低減することができる。
これにより、図11(d)に示すように、熱飽和レベルが改善され、素子の光出力の最大出力値を向上させることができる。
【0036】
<実施例2>
本発明の半導体レーザ素子の実施例2について図12〜図16を用いて説明する。なお、前述した実施例1と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例1と同じ符号を付して説明する。
【0037】
まず、実施例2の半導体レーザ素子40の構成について図12を用いて説明する。図12(a)は実施例2の半導体レーザ素子40の模式的外観斜視図である。図12(b)は図12(a)のA−A線における模式的断面図である。図12(c)は図12(a)のB−B線における模式的断面図である。図12(d)は図12(a)のC−C線における模式的断面図である。
【0038】
実施例1の半導体レーザ素子30(図10参照)は、凹部23が溝状であったのに対し、図12に示すように、実施例2の半導体レーザ素子40は、耐酸化層3を露出させる凹部41が、リッジ14が形成されている領域に対応する領域に複数(図12では3つ)形成されている点が第1の相違点である。
【0039】
また、実施例1の半導体レーザ素子30(図10参照)では、絶縁膜17を、リッジ14が延在する方向に沿ってコンタクト層10が露出するようにパターン化したのに対し、実施例2の半導体レーザ素子40は、凹部41が形成されている領域に対応する領域のみコンタクト層10が露出するようにパターン化した点が第2の相違点である。
【0040】
上述した第1及び第2の相違点以外は実施例1の構成と同じである。
【0041】
次に、実施例2の半導体レーザ素子40の製造方法について、図13〜図16を用いて説明する。図13〜図16における(b)〜(d)は、図12における(b)〜(d)にそれぞれ対応している。なお、図13〜図16は、説明をわかりやすくするために図12とは上下を逆にして示している。
【0042】
[B1工程](図13参照)
まず、実施例1のA1工程〜A3工程(図1〜図3参照)と同様の工程を行う。
次に、SiO2膜12(図3参照)を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
その後、リッジ14、溝部15、及びリッジ14以外の領域のコンタクト層10を覆うように、絶縁膜42を、例えばスパッタリング法を用いて形成し、さらにフォトリソグラフィー法を用いてパターン化してリッジ14の所定の領域におけるコンタクト層10を露出させる。
図13(b)はリッジ14の所定の領域におけるコンタクト層10が露出した状態を示す。図13(c)はリッジ14の所定の領域以外の領域であり、リッジ14におけるコンタクト層10が絶縁膜42で覆われている状態を示す。図13(d)はリッジ14におけるコンタクト層10が露出した所定の領域と、コンタクト層10が絶縁膜42で覆われている所定の領域以外の領域とが混在した状態を示す。
実施例1では、絶縁膜42としてSiO2膜を形成した。
【0043】
[B2工程](図14参照)
実施例1のA4工程と同様の工程を行って、絶縁膜42上、及び露出したコンタクト層10上に、P側電極19を例えばスパッタリング法を用いて形成する。
さらに、P側電極19をめっき導電膜として電気めっきを行い、P側電極19上にP側めっき電極20を形成する。
【0044】
[B3工程](図15参照)
まず、半導体基板1の他方の面1b上(図15における下側)に、SiO2膜45を、例えばスパッタリング法を用いて形成し、さらにフォトリソグラフィー法を用いてパターン化する。
パターン化されたSiO2膜45は、絶縁膜42が形成されている領域に対応するように形成されている。
【0045】
次に、パターン化されたSiO2膜45をエッチングマスクとして、SiO2膜45が形成されていない領域の半導体基板1及びバッファ層2を、例えばドライエッチングとウェットエッチングとを順次行って除去する。
上記ウェットエッチングに用いるエッチャントは、耐酸化層3に対するエッチング速度がバッファ層2に対するエッチング速度よりも非常に遅いので、上記ウェットエッチングを耐酸化層3で容易に停止させることができる。
例えば上記エッチャントとして硫酸を用いることができる。
上記エッチングにより、リッジ14が形成されている領域に対応する領域を含む領域に、耐酸化層3が露出した複数の凹部41が形成される。
【0046】
[B4工程](図16参照)
まず、SiO2膜45(図15参照)を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
次に、凹部41の内周面を覆うようにパターン化されたレジスト膜47を形成し、さらに半導体基板1の他方の面1b上に、AuGe(金ゲルマニウム)、Ni(ニッケル)、及びAuを主成分とするn側電極43を例えば真空蒸着法を用いて形成する。
このとき、n側電極43はレジスト膜47上にも形成されるが、レジスト膜47上のn側電極43と半導体基板1上のn側電極43とは、レジスト膜47の段差によって互いに分離して形成される。
【0047】
[B5工程](図12参照)
レジスト膜47(図16参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜47上のn側電極43もレジスト膜47と共に除去され、半導体基板1上のn側電極43のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
その後、アニール処理を行うことにより、P側電極19とコンタクト層10とがオーミックコンタクトし、n側電極43と半導体基板1とがオーミックコンタクトする。
【0048】
その後、上述のB1工程〜B5工程を経た半導体基板1を、B3工程で半導体基板1及びバッファ層2を残した領域で素子毎に分断することにより、図12に示した半導体レーザ素子40が一度に複数得られる。
図12(a)において、半導体レーザ素子40の紙面手前側の面及び紙面奥側の面は、一対の共振器面である。
【0049】
実施例2の半導体レーザ素子40は、実施例1の半導体レーザ素子30に比べて、B1工程〜B5工程を経た半導体基板1を素子毎に分断する際に、分断箇所に半導体基板1及びバッファ層2が存在しているため、分断時に発生する応力に対して機械的強度が強い。そのため、分断時に生じる素子破壊の発生率を実施例1よりも低減することができる。
【0050】
また、実施例2の半導体レーザ素子40は、半導体基板1及びバッファ層2が存在している領域に対応する領域に絶縁膜42が形成されているため、活性層5における複数の凹部41が形成されている領域に対応する領域のみ、自然放出光Lbが発生し、この自然放出光Lbを複数の凹部41から外部に向けて効率よく照射することができる。
【0051】
実施例1で図11を用いて説明した理由と同様の理由により、実施例2の半導体レーザ素子40を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0052】
<実施例3>
本発明の半導体レーザ素子の実施例3について図17〜図28を用いて説明する。なお、前述した実施例1及び2と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例1及び2と同じ符号を付して説明する。
【0053】
まず、実施例3の半導体レーザ素子50の構成について図17を用いて説明する。図17(a)は実施例3の半導体レーザ素子50の模式的外観斜視図である。図17(b)は図17(a)のA−A線における模式的断面図である。図17(c)は図17(a)のB−B線における模式的断面図である。図17(d)は図17(a)のC−C線における模式的断面図である。
【0054】
実施例2の半導体レーザ素子40(図12参照)では、凹部41が形成されている領域に対応する領域以外の領域に、コンタクト層10を覆うように絶縁膜17を形成したのに対し、図17に示すように、実施例3の半導体レーザ素子50では、凹部58が形成されている領域に対応する領域以外の領域であって、p型の障壁緩和層9の表面(図17では下側の面)からクラッド層4の途中までの深さ領域を無秩序化する点が相違する。
【0055】
上述した相違点以外は実施例2の構成と同じである。
【0056】
次に、実施例3の半導体レーザ素子50の製造方法について、図18〜図28を用いて説明する。図18〜図28における(b)〜(d)は、図17における(b)〜(d)にそれぞれ対応している。なお、図18〜図28は、説明をわかりやすくするために図17とは上下を逆にして示している。
【0057】
[C1工程](図18参照)
まず、実施例1のA1工程と同様の工程を行う。
次に、コンタクト層10上における上述した無秩序化する領域以外の領域にパターン化されたレジスト膜51を例えばフォトリソグラフィー法を用いて形成する。
【0058】
[C2工程](図19参照)
レジスト膜51をエッチングマスクとして、レジスト膜51で覆われていない領域、即ち無秩序化する領域におけるコンタクト層10を例えばウェットエッチングで除去し、無秩序化する領域の障壁緩和層9を露出させる。コンタクト層10を除去する理由は、後述する活性層5を無秩序化するためのZn拡散において、コンタクト層が残っていた場合にZnの拡散制御が難しくなるためである。
【0059】
[C3工程](図20参照)
露出した障壁緩和層9上に、例えばRFスパッタリング法を用いてZnO(酸化亜鉛)膜52を形成する。このとき、ZnO膜52はレジスト膜51上にも形成されるが、レジスト膜51上のZnO膜52と障壁緩和層9上のZnO膜52とは、レジスト膜51の段差によって互いに分離して形成される。
【0060】
[C4工程](図21参照)
まず、レジスト膜51(図20参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜51上のZnO膜52もレジスト膜51と共に除去され、障壁緩和層9上のZnO膜52のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
次に、ZnO膜52上、及びレジスト膜51が除去されて露出したコンタクト層10上に、例えばRFスパッタリング法を用いて拡散カバー層53を形成する。
実施例3では、拡散カバー層53としてSiO2膜を形成した。
【0061】
[C5工程](図22参照)
C4工程を経た半導体基板1に熱処理を施し、ZnO膜52中のZn(亜鉛)を、ZnO膜52が形成されている領域における、障壁緩和層9の表面(図22における上側の面)からクラッド層4の途中までの深さ領域に拡散させ、活性層5を無秩序化(混晶化)する。
【0062】
[C6工程](図23参照)
拡散カバー層53及びZnO膜52(図22参照)を除去する。
拡散カバー層53(SiO2膜)及びZnO膜52は例えばフッ酸系のエッチング液で除去することができる。
【0063】
[C7工程](図24参照)
実施例1のA2工程及びA3工程と同様の工程を行い、SiO2膜12をエッチングマスクとして、ストライプ状でp型のリッジ54と、リッジ54の両側に形成され、エッチングストップ層7が露出した溝部55と、を形成する。
実施例3のリッジ54は、活性層5が無秩序化されている領域ではクラッド層8及び障壁緩和層9を有して構成され、活性層5が無秩序化されていない領域ではクラッド層8、障壁緩和層9及びコンタクト層10を有して構成されている。
【0064】
[C8工程](図25参照)
まず、実施例1のA4工程と同様に、SiO2膜12を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
次に、リッジ54、溝部55、及びリッジ54以外の領域の露出している障壁緩和層9及びコンタクト層10に亘って、絶縁膜57を、例えばプラズマCVD法を用いて形成し、さらにフォトリソグラフィー法を用いてパターン化してリッジ54におけるコンタクト層10を露出させる。
実施例3では、絶縁膜57としてSiO2膜を形成した。
実施例3では、リッジ54において、コンタクト層10が存在している領域ではリッジ54が露出しており、コンタクト層10が存在していない領域、即ち活性層5が無秩序化されている領域ではリッジ54が絶縁膜57で覆われている。
【0065】
[C9工程](図26参照)
実施例1のA5工程と同様の工程を行って、絶縁膜57上、及び露出したコンタクト層10上に、P側電極19を例えばスパッタリング法を用いて形成する。
さらに、P側電極19をめっき導電膜として電気めっきを行い、P側電極19上にP側めっき電極20を形成する。
【0066】
[C10工程](図27参照)
実施例2のB3工程と同様の工程を行って、絶縁膜57が形成されている領域に対応するように、半導体基板1の他方の面1b上(図27における下側)に、パターン化されたSiO2膜45を形成する。
【0067】
さらに、実施例2のB3工程と同様の工程を行って、パターン化されたSiO2膜45をエッチングマスクとして、SiO2膜45が形成されていない領域の半導体基板1及びバッファ層2を、例えばドライエッチングとウェットエッチングとを順次行って除去する。
上記エッチングにより、リッジ54が形成されている領域に対応する領域を含む領域であって、かつ活性層5が無秩序化されていない領域に対応する領域に、耐酸化層3が露出した複数の凹部58が形成される。
【0068】
[C11工程](図28参照)
まず、実施例2のB4工程と同様の工程を行って、SiO2膜45(図27参照)を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
さらに、実施例2のB4工程と同様の工程を行って、凹部58の内周面を覆うようにパターン化されたレジスト膜47を形成し、さらに半導体基板1の他方の面1b上に、n側電極43を例えば真空蒸着法を用いて形成する。
このとき、n側電極43はレジスト膜47上にも形成されるが、レジスト膜47上のn側電極43と半導体基板1上のn側電極43とは、レジスト膜47の段差によって互いに分離して形成される。
【0069】
[C12工程](図17参照)
実施例2のB5工程と同様の工程を行って、レジスト膜47(図28参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜47上のn側電極43もレジスト膜47と共に除去され、半導体基板1上のn側電極43のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
その後、アニール処理を行うことにより、P側電極19とコンタクト層10とがオーミックコンタクトし、n側電極43と半導体基板1とがオーミックコンタクトする。
【0070】
その後、上述のC1工程〜C12工程を経た半導体基板1を、C10工程で半導体基板1及びバッファ層2を残した領域で素子毎に分断することにより、図17に示した半導体レーザ素子50が一度に複数得られる。
図17(a)において、半導体レーザ素子50の紙面手前側の面及び紙面奥側の面は、一対の共振器面である。
【0071】
実施例3の半導体レーザ素子50は、実施例2の半導体レーザ素子40に比べて、凹部58が形成されていない領域における活性層5が無秩序化(混晶化)されているため、無秩序化されている領域の活性層5に電流が流れないので、活性層5における複数の凹部58が形成されている領域に対応する領域のみに電流を集中的に流すことができる。そして、電流が集中的に流れる領域には複数の凹部58が形成されているため、活性層5で発生した自然放出光Lbを外部に向けて効率よく照射することができる。
【0072】
また、実施例3の半導体レーザ素子50は、実施例2の半導体レーザ素子40に比べて、無秩序化されている領域が自然放出光Lbに対して光透過性を有するため、自然放出光Lbの取出し効率を実施例2よりもさらに向上させることができる。
【0073】
また、実施例3の半導体レーザ素子50は、実施例2の半導体レーザ素子40に比べて、一対の共振器面を含む領域が無秩序化されているため、COD(catastrophic optical damage:壊滅的光学損傷)を抑制することができる。
【0074】
実施例1で図11を用いて説明した理由と同様の理由により、実施例3の半導体レーザ素子50を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0075】
<実施例4>
本発明の半導体レーザ素子の実施例4について図29を用いて説明する。なお、前述した実施例1〜3と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例1〜3と同じ符号を付して説明する。
【0076】
実施例1の半導体レーザ素子30(図10参照)では、半導体基板1の他方の面1bのみにAuGe、Ni、及びAuを主成分とするn側電極26を形成したのに対し、図29に示すように、実施例4の半導体レーザ素子60では、半導体基板1の他方の面1b及び溝状の凹部23に光透過性を有するn側透明電極61を形成した点が相違する。
【0077】
次に、実施例4の半導体レーザ素子60の製造方法について図1〜図7及び図29を用いて説明する。
【0078】
[D1工程](図1〜図7参照)
実施例1のA1工程〜A7工程と同様の工程を行う。
【0079】
[D2工程](図29参照)
まず、SiO2膜22(図7参照)を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
次に、半導体基板1の他方の面1b及び溝状の凹部23に光透過性を有するn側透明電極61を形成する。
実施例4では、n側透明電極61としてITO(Indium Tin Oxide)膜をRFスパッタリング法を用いて形成した。
【0080】
その後、アニール処理を行うことにより、P側電極19とコンタクト層10とがオーミックコンタクトし、n側透明電極61と半導体基板1及び耐酸化層3とがそれぞれオーミックコンタクトする。
【0081】
その後、上述のD1工程及びD2工程を経た半導体基板1を素子毎に分断することにより、図29に示す半導体レーザ素子60が一度に複数得られる。
図29において、半導体レーザ素子60の紙面手前側の面及び紙面奥側の面は、一対の共振器面である。
なお、図29は、説明をわかりやすくするために、図1〜図7とは上下を逆にして示している。
【0082】
実施例4の半導体レーザ素子60は、実施例1の半導体レーザ素子30に比べて、リッジ14が形成されている領域に対応する領域の耐酸化層3の表面にもn側透明電極61が形成されているため、実施例1の半導体レーザ素子30において材料使用量を節約するためにクラッド層4を薄くした場合においても、電流をリッジ14に効率的に流すことができる。
そのため、実施例4の半導体レーザ素子60は、実施例1の半導体レーザ素子30において材料使用量を節約するためにクラッド層4を薄くした場合においても、半導体レーザ素子やLED素子としての性能を損ねることがなく、より効率的な設計が可能になる。
【0083】
実施例1で図11を用いて説明した理由と同様の理由により、実施例4の半導体レーザ素子60を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0084】
<実施例5>
本発明の半導体レーザ素子の実施例5について図30〜図33を用いて説明する。なお、前述した実施例1〜4と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例1〜4と同じ符号を付して説明する。
【0085】
図30に示すように、実施例5の半導体レーザ素子70は、実施例1の半導体レーザ素子30(図10参照)におけるn側電極26と、実施例4の半導体レーザ素子60(図29参照)におけるn側透明電極61と、を組み合わせたような構成を有する。
【0086】
実施例5の半導体レーザ素子70の製造方法について図1〜図7及び図30〜図33を用いて説明する。
【0087】
[E1工程](図1〜図7参照)
実施例1のA1工程〜A7工程と同様の工程を行う。
【0088】
[E2工程](図31参照)
SiO2膜22(図7参照)を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
次に、凹部23の内周面が露出するように、半導体基板1の他方の面1b上にレジスト膜71を形成する。
さらに、凹部23の内周面を覆うように光透過性を有するn側透明電極72を形成する。このとき、n側透明電極72はレジスト膜71上にも形成されるが、レジスト膜71上のn側透明電極72と凹部23の内周面に形成されたn側透明電極72とは、レジスト膜71の段差によって互いに分離して形成される。
実施例5では、n側透明電極72としてITO(Indium Tin Oxide)膜をRFスパッタリング法を用いて形成した。
【0089】
[E3工程](図32参照)
レジスト膜71(図31参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜71上のn側透明電極72もレジスト膜71と共に除去され、凹部23の内周面及び半導体基板1の表面の一部に形成されたn側透明電極72のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
【0090】
[E4工程](図33参照)
半導体基板1の表面上におけるn側透明電極72の一部が露出するように、凹部23の内周面におけるn側透明電極72上(図33では下側)にレジスト膜73を形成する。
さらに、半導体基板1の他方の面1b上(図33では下側)に、露出するn側透明電極72と接続するように、AuGe(金ゲルマニウム)、Ni(ニッケル)、及びAuを主成分とするn側電極74を例えば真空蒸着法を用いて形成する。
このとき、n側電極74はレジスト膜73上にも形成されるが、レジスト膜73上のn側電極74と半導体基板1上及び露出するn側透明電極72上のn側電極74とは、レジスト膜73の段差によって互いに分離して形成される。
【0091】
[E5工程](図30参照)
レジスト膜73(図33参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜73上のn側電極74もレジスト膜73と共に除去され、半導体基板1の他方の面1b上に形成されてn側透明電極72に接続するn側電極74のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
【0092】
その後、上記工程を経た半導体基板1にアニール処理を行うことにより、P側電極19とコンタクト層10とがオーミックコンタクトし、n側透明電極72及びn側電極74と、半導体基板1,コンタクト層10,及び耐酸化層3とが接続領域ごとにそれぞれオーミックコンタクトする。
【0093】
さらに、上述のE1工程〜E5工程を経た半導体基板1を素子毎に分断することにより、図30に示した半導体レーザ素子70が一度に複数得られる。
図30において、半導体レーザ素子70の紙面手前側の面及び紙面奥側の面は、一対の共振器面である。
なお、図30は、説明をわかりやすくするために、図1〜図7及び図31〜図33とは上下を逆にして示している。
【0094】
AuGe、Ni、及びAuを主成分とするn側電極74は、ITO膜であるn側透明電極72よりも電気抵抗率が小さく、かつ半導体基板1とのオーミックコンタクトが取り易い。
そこで、実施例5では、自然放出光Lbを取出すための凹部23には光透過性を有するn側透明電極72を形成し、半導体基板1上には電気抵抗率が小さく、かつ半導体基板1とのオーミックコンタクトが取り易いn側電極74をn側透明電極72と電気的に接続された状態で形成している。
これにより、実施例4の半導体レーザ素子60よりも電気抵抗を小さくすることができるので、半導体レーザ素子70の電力利用効率を、実施例4の半導体レーザ素子60よりも改善することができる。
【0095】
実施例1で図11を用いて説明した理由と同様の理由により、実施例5の半導体レーザ素子70を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0096】
<実施例6>
本発明の半導体レーザ素子の実施例6について図34を用いて説明する。なお、前述した実施例1〜5と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例1〜5と同じ符号を付して説明する。
【0097】
実施例6の半導体レーザ素子80は、実施例1の半導体レーザ素子30(図10参照)における、Znのドーパント濃度が2×1018cm-3のGa0.5In0.5P層であるp型の障壁緩和層9、及びZnのドーパント濃度が1×1019cm-3以上のGaAs層であるp型のコンタクト層10に替えて、Znのドーパント濃度が1×1019cm-3以上のGaInP(ガリウムインジウムリン)層であるp型のコンタクト層81を形成した点で相違する。
【0098】
実施例1の半導体レーザ素子30におけるp型のコンタクト層10は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが小さいので、活性層5で発生した自然放出光Lbを吸収してしまう。
これに対して、実施例6の半導体レーザ素子80におけるp型のコンタクト層81は、活性層5よりもバンドギャップエネルギーが大きいので、活性層5で発生した自然放出光Lbを透過する。
コンタクト層81を透過した自然放出光LbはP側電極19で反射されて、再びコンタクト層81を透過して凹部23から外部に向けて照射される。
従って、実施例6の半導体レーザ素子80は、活性層5からコンタクト層81側に出射された自然放出光Lbに対しても凹部23から取出すことが可能になるため、実施例1の半導体レーザ素子30よりも光取出し効率が向上する。
【0099】
実施例1で図11を用いて説明した理由と同様の理由により、実施例6の半導体レーザ素子80を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0100】
<実施例7>
本発明の半導体レーザ素子の実施例7について図35を用いて説明する。なお、前述した実施例1〜6と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例1〜6と同じ符号を付して説明する。
【0101】
実施例7の半導体レーザ素子90は、実施例1の半導体レーザ素子30(図10参照)における、Znのドーパント濃度が1×1018cm-3の(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層であるp型のクラッド層8に替えて、Znのドーパント濃度が1×1018cm-3のAl0.7Ga0.3As(アルミニウムガリウム砒素)層であるp型のクラッド層91を形成した点で相違する。
【0102】
p型のクラッド層91におけるAl(アルミニウム)のGa(ガリウム)との混晶比率を0.5以上(実施例7では0.7)にすることにより、p型のクラッド層91のバンドギャップエネルギーを活性層5のバンドギャップエネルギーよりも大きくすることができるので、活性層5で発生した自然放出光Lbはクラッド層91を透過する。
クラッド層91を透過した自然放出光LbはP側電極19で反射されて、再びクラッド層91を透過して凹部23から外部に向けて照射される。
【0103】
ところで、一般的に化合物半導体はその構成元素数が多いほど、合金散乱によって熱抵抗率が増加する傾向にある。
例えば、実施例1の半導体レーザ素子30におけるクラッド層8はAl,Ga,In,及びPの4つの元素により構成されており、クラッド層8の熱抵抗率は20cm・k/W以上である。
それに対し、実施例7の半導体レーザ素子90におけるクラッド層91はAl,
Ga,及びAsの3つの元素により構成されており、クラッド層91の熱抵抗率は8cm・k/W以下である。
従って、実施例7の半導体レーザ素子90は、実施例1の半導体レーザ素子30に比べて熱抵抗率が小さいため、素子の発熱抵抗を低減することができる。これにより、熱飽和レベルが改善され、前述の図11(d)に示すように、素子の光出力の最大出力値を向上させることができる。
【0104】
実施例1で図11を用いて説明した理由と同様の理由により、実施例7の半導体レーザ素子90を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0105】
<実施例8>
本発明の半導体レーザ素子の実施例8について図36を用いて説明する。なお、前述した実施例1〜7と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例1〜7と同じ符号を付して説明する。
【0106】
実施例8の半導体レーザ素子100は、実施例7の半導体レーザ素子90における、Znのドーパント濃度が5×1017cm-3である(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層であるp型のクラッド層6に替えて、Znのドーパント濃度が1×1018cm-3である(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層であるp型の第1クラッド層101、及びZnのドーパント濃度が1×1018cm-3であるAl0.7Ga0.3As層であるp型の第2クラッド層102を活性層5上(図36では下側)に順次形成した点で相違する。
【0107】
第1クラッド層101は、活性層5との電子に対する高いエネルギー障壁を形成する。
第2クラッド層102は、実施例7で説明した理由と同様の理由により、実施例1の半導体レーザ素子30におけるクラッド層6よりも熱抵抗率を小さくすることができる。
従って、実施例8の半導体レーザ素子100は、実施例1の半導体レーザ素子30に比べて熱抵抗率が小さいため、素子の発熱抵抗を低減することができる。これにより、熱飽和レベルが改善され、前述の図11(d)に示すように、素子の光出力の最大出力値を向上させることができる。
【0108】
実施例1で図11を用いて説明した理由と同様の理由により、実施例8の半導体レーザ素子100を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0109】
<実施例9>
本発明の半導体レーザ素子の実施例9について図37〜図43を用いて説明する。
【0110】
[F1工程](図37参照)
互いに対向する一対の面111a,111bを有するn型の半導体基板111の一方の面111a上に、n型の超格子クラッド層112、n型のガイド層113、MQW活性層(以下、活性層と称す)114、p型のキャップ層115、p型のガイド層116、p型の超格子クラッド層117、及びp型のコンタクト層118を、例えばMOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて順次形成する。
n型の超格子クラッド層112、活性層114、及びp型の超格子クラッド層117によってダブルヘテロ構造が形成されている。
n型のガイド層113及びp型のガイド層116は、活性層近傍に光を集中させて光閉じ込め効率を向上させるための機能を有する。
【0111】
実施例9ではn型の半導体基板111としてn型のGaN(窒化ガリウム)ウエハを用いた。半導体基板111は活性層114よりもバンドギャップエネルギーが大きいので、活性層114で発生した自然放出光Ld(詳細は後述する)を透過する。
【0112】
また、実施例9では、n型の超格子クラッド層112として、n型ドーパントであるSi(シリコン)のドーパント濃度が1×1019cm-3であり、厚さが2nmのAl0.2Ga0.8N(窒化アルミニウムガリウム)層と、厚さが2nmのノンドープGaN層とが交互に計100層積層された超格子多層膜を形成した。n型の超格子クラッド層112は活性層114よりもバンドギャップエネルギーが大きいので、活性層114で発生した自然放出光Ldを透過する。
【0113】
また、実施例9では、n型のガイド層113として、Siのドーパント濃度が1×1017cm-3であり、厚さが0.1μmのGaN層を形成した。n型のガイド層113は活性層114よりもバンドギャップエネルギーが大きいので、活性層114で発生した自然放出光Ldを透過する。
【0114】
また、実施例9では、活性層114として、Siのドーパント濃度が1×1017cm-3であり、厚さが2.5nmのIn0.2Ga0.8N(窒化インジウム ガリウム)層である井戸層と、Siのドーパント濃度が1×1017cm-3であり、厚さが5nmのIn0.05Ga0.95N層である障壁層とが交互に積層されて総厚が17.5nmの二重量子井戸構造を有する構成とした。
【0115】
また、実施例9では、p型のキャップ層115として、p型ドーパントであるMg(マグネシウム)のドーパント濃度が1×1020cm-3であり、厚さが30nmのAl0.1Ga0.9N層を形成した。
【0116】
また、実施例9では、p型のガイド層116として、Mgのドーパント濃度が1×1018cm-3のGaN層を形成した。
【0117】
また、実施例9では、p型の超格子クラッド層117として、Mgのドーパント濃度が1×1020cm-3であり、厚さが2nmのAl0.2Ga0.8N層と、厚さが2nmのノンドープGaN層とが交互に計100層積層された超格子多層膜を形成した。
【0118】
また、実施例9では、p型のコンタクト層118として、Mgのドーパント濃度が2×1020cm-3であり、厚さが1.5nmのGaN層を形成した。
【0119】
その後、上記半導体基板111を窒素雰囲気中で所定の温度で熱処理し、各p型の半導体層の低抵抗化を図る。
【0120】
[F2工程](図38参照)
フォトリソグラフィー法及びドライエッチング法を用いて、コンタクト層118を部分的にエッチングすると共に、超格子クラッド層117をガイド層116が露出しない程度に部分的にエッチングする。
上記エッチングにより、超格子クラッド層117の一部及びコンタクト層118を含んで構成されたストライプ形状を有するp型のリッジ119が形成される。
【0121】
[F3工程](図39参照)
少なくともリッジ119を覆うように絶縁膜120を例えばプラズマCVD法を用いて形成し、さらにフォトリソグラフィー法及びウェットエッチング法を用いて、絶縁膜120に、コンタクト層118を露出させる開口部120aを形成する。
実施例9では、絶縁膜120としてSiO2膜を形成した。
【0122】
[F4工程](図40参照)
まず、絶縁膜120上の所定の領域に、パターン化されたレジスト膜121を形成する。
次に、Ni(ニッケル)及びAu(金)を主成分とし、コンタクト層118に接続するp側電極122を例えばスパッタリング法を用いて形成する。
このとき、p側電極122はレジスト膜121上にも形成されるが、レジスト膜121上のp側電極122と、コンタクト層118に接続するp側電極122とは、レジスト膜121の段差によって互いに分離して形成される。
【0123】
[F5工程](図41参照)
まず、レジスト膜121(図42参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜121上のp側電極122もレジスト膜121と共に除去され、コンタクト層118に接続するp側電極122のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
さらに、P側電極122をめっき導電膜として電気めっきを行い、P側電極122上にAuを主成分とするP側めっき電極123を形成する。
【0124】
[F6工程](図42参照)
まず、半導体基板111の他方の面111b上(図42では下側)におけるリッジ119が形成されている領域を含む領域に、パターン化されたレジスト膜124を形成する。
次に、露出している半導体基板111の他方の面111b上に、Ti(チタン)及びAl(アルミニウム)を主成分とするn側電極125を例えば真空蒸着法を用いて形成する。
このとき、n側電極125はレジスト膜124上にも形成されるが、レジスト膜124上のn側電極125と半導体基板111の他方の面111b上のn側電極125とは、レジスト膜124の段差によって互いに分離して形成される。
【0125】
[F7工程](図43参照)
レジスト膜124(図42参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜124上のn側電極125もレジスト膜124と共に除去され、半導体基板111上のn側電極125のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
その後、アニール処理を行うことにより、P側電極120とコンタクト層118とがオーミックコンタクトし、n側電極125と半導体基板111とがオーミックコンタクトする。
【0126】
その後、上述のF1工程〜F7工程を経た半導体基板111を、素子毎に素子分離領域(P側めっき電極123が形成されていない領域)で分断することにより、図43に示す半導体レーザ素子110が一度に複数得られる。
図43において、半導体レーザ素子110の紙面手前側の面及び紙面奥側の面は、一対の共振器面である。
なお、図43は、説明をわかりやすくするために、図37〜図42とは上下を逆にして示している。
【0127】
図43に示すように、実施例9の半導体レーザ素子110は、リッジ119が形成されている領域に対応する領域を含む領域にn側電極125が形成されていない。このため、半導体レーザ素子110のP側めっき電極123からn側電極125に向けて外部から電流を供給することにより、発振閾値よりも低い電流範囲では、活性層114のリッジ119に対応する領域で発生した自然放出光Ldが、半導体基板111におけるn側電極125が形成されていない領域から外部に向けて照射され、また、発振閾値以上の電流範囲では、上記の自然放出光Ldに加えて、レーザ発光したレーザ光Lcが一対の共振器面から外部に向けて照射される。
【0128】
上述したように、実施例9の半導体レーザ素子110は、自然放出光Ld及びレーザ光Lcを外部に向けて効率的に照射することができるので、例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0129】
<実施例10>
本発明の半導体レーザ素子の実施例10について図44〜図47を用いて説明する。なお、前述した実施例9と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例9と同じ符号を付して説明する。
【0130】
図44に示すように、実施例10の半導体レーザ素子130は、実施例9の半導体レーザ素子110(図43参照)と比較して、半導体基板111におけるリッジ119が形成されている領域に対応する領域を含む領域に溝状の凹部131が形成されている点で相違する。この相違点以外は実施例9の構成と同じである。
【0131】
次に、実施例10の半導体レーザ素子130の製造方法について、図37〜図41及び図44〜図47を用いて説明する。なお、図37〜図41及び図45〜図47は、説明をわかりやすくするために図44とは上下を逆にして示している。
【0132】
[G1工程](図37〜図41参照)
実施例9のF1工程〜F5工程と同様の工程を行う。
【0133】
[G2工程](図45参照)
半導体基板111の他方の面111b上(図45における下側)に、SiO2膜132を、例えばスパッタリング法を用いて形成し、さらにフォトリソグラフィー法を用いてパターン化する。
【0134】
[G3工程](図46参照)
パターン化されたSiO2膜132をエッチングマスクとして、SiO2膜132が形成されていない領域の半導体基板111を、超格子クラッド層112が露出しない程度にエッチングする。
上記エッチングにより、半導体基板111におけるリッジ119が形成されている領域に対応する領域を含む領域に、溝状の凹部131が形成される。
【0135】
[G4工程](図47参照)
まず、SiO2膜132(図46参照)を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
次に、凹部131の内周面を覆うようにパターン化されたレジスト膜133を形成し、さらに半導体基板111の他方の面111b上(図47では下側)に、Ti及びAlを主成分とするn側電極125を例えば真空蒸着法を用いて形成する。
このとき、n側電極125はレジスト膜133上にも形成されるが、レジスト膜133上のn側電極125と半導体基板111の他方の面111b上のn側電極133とは、レジスト膜133の段差によって互いに分離して形成される。
【0136】
[G5工程](図44参照)
レジスト膜133(図47参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜133上のn側電極125もレジスト膜133と共に除去され、半導体基板111上のn側電極125のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
その後、アニール処理を行うことにより、P側電極120とコンタクト層1180とがオーミックコンタクトし、n側電極125と半導体基板111とがオーミックコンタクトする。
【0137】
その後、上述のG1工程〜G5工程を経た半導体基板111を素子毎に素子分離領域(P側めっき電極123が形成されていない領域)で分断することにより、図44に示した半導体レーザ素子130が一度に複数得られる。
図44において、半導体レーザ素子30の紙面手前側の面及び紙面奥側の面は、一対の共振器面である。
【0138】
図44に示すように、実施例10の半導体レーザ素子130は、実施例9の半導体レーザ素子110と比較して半導体基板111に凹部131が形成されている。
前述したように、半導体基板111は活性層114よりもバンドギャップエネルギーが大きいので、活性層114で発生した自然放出光Ldを透過する。しかしながら、自然放出光Ldに対する半導体基板111の透過率は100%ではないので、活性層114で発生した自然放出光Ldの一部は半導体基板111に吸収される。
【0139】
そこで、実施例10の半導体レーザ素子130では、半導体基板111におけるリッジ119が形成されている領域に対応する領域を含む領域に凹部131を形成することにより、凹部131が形成されている領域の半導体基板111の厚さが他の領域よりも薄くなり、自然放出光Ldに対する半導体基板111の吸収を低減することができる。そのため、凹部131から自然放出光Ldを効率的に取出すことができるので、実施例9の半導体レーザ素子110よりも自然放出光Ldの取り出し効率が向上する。
【0140】
実施例9で説明した理由と同様の理由により、実施例10の半導体レーザ素子130を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0141】
<実施例11>
本発明の半導体レーザ素子の実施例11について図48〜図54を用いて説明する。なお、前述した実施例9及び実施例10と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例9及び実施例10と同じ符号を付して説明する。
【0142】
図48に示すように、実施例11の半導体レーザ素子140は、実施例10の半導体レーザ素子130(図44参照)と比較して、凹部131の底面に複数の突起物141が形成されている点で相違する。上述した相違点以外は実施例10の構成と同じである。
【0143】
次に、実施例11の半導体レーザ素子140の製造方法について、図37〜図41、図45、及び図48〜図54を用いて説明する。なお、図37〜図41、図45、及び図49〜図53は、説明をわかりやすくするために図48とは上下を逆にして示している。
【0144】
[H1工程](図37〜図41及び図45参照)
実施例10のG1工程及びG2工程と同様の工程を行う。
【0145】
[H2工程](図49参照)
パターン化されたSiO2膜132をエッチングマスクとして、SiO2膜132が形成されていない領域の半導体基板111を所定の深さまでエッチングする。
上記エッチングにより、半導体基板111におけるリッジ119が形成されている領域に対応する領域を含む領域に、溝部142が形成される。
【0146】
[H3工程](図50参照)
まず、SiO2膜132(図49参照)を例えばフッ酸系のエッチャントを用いて除去する。
次に、溝部142の底面を含む内周面を覆うように、半導体基板111の他方の面111b側に所定の厚さを有するレジスト膜143を形成する。
【0147】
[H4工程](図51参照)
レジスト膜143に向けて外部から露光光又は電子ビームを所定のプログラムに基づいて照射強度を調整しながら照射する。
次に、部分的に照射強度が異なって露光された上記レジスト膜143を現像することにより、溝部142の底面に、複数の円錐状のレジスト突起物144を形成する。このとき、半導体基板111における溝部142が形成されている領域以外の領域はレジスト膜143で覆われている。
【0148】
[H5工程](図52参照)
レジスト突起物144及びレジスト膜143をエッチングマスクとして、例えばドライエッチング法を用いて半導体基板111を所定の深さまでさらにエッチングする。
半導体基板111のエッチングの進行に応じてレジスト突起物144も徐々にエッチングされる。レジスト突起物144は、中心部で最も厚く、外周部に向かうほど薄くなっている。そのため、半導体基板111のエッチングの進行に応じてレジスト突起物144は外周部から中心部に向かって徐々に小さくなる。
従って、半導体基板111のエッチングの進行に応じて、半導体基板111がレジスト突起物144の外周部から中心部に向かって徐々に露出していく。
半導体基板111が露出するとその露出した領域の半導体基板111がエッチングされる。
これにより、レジスト突起物144の形状がトレース(転写)された複数の円錐状の突起物141を底面に有する溝状の凹部131が形成される。
【0149】
その後、レジスト突起物144及びレジスト膜143を所定の剥離液を用いて除去する。
【0150】
[H6工程](図53参照)
次に、凹部131の内周面及び複数の突起物141を覆うようにパターン化されたレジスト膜133を形成し、さらに半導体基板111の他方の面111b上(図53では下側)に、Ti及びAlを主成分とするn側電極125を例えば真空蒸着法を用いて形成する。
このとき、n側電極125はレジスト膜133上にも形成されるが、レジスト膜133上のn側電極125と半導体基板111の他方の面111b上のn側電極133とは、レジスト膜133の段差によって互いに分離して形成される。
【0151】
[H7工程](図48参照)
レジスト膜133(図53参照)を所定の剥離液を用いて除去することにより、レジスト膜133上のn側電極125もレジスト膜133と共に除去され、半導体基板111上のn側電極125のみが残る。この方法は一般的にリフトオフ法と称される。
その後、アニール処理を行うことにより、P側電極120とコンタクト層1180とがオーミックコンタクトし、n側電極125と半導体基板111とがオーミックコンタクトする。
【0152】
その後、上述のH1工程〜H7工程を経た半導体基板111を素子毎に素子分離領域(P側めっき電極123が形成されていない領域)で分断することにより、図48に示す半導体レーザ素子140が一度に複数得られる。
図48において、半導体レーザ素子140の紙面手前側の面及び紙面奥側の面は、一対の共振器面である。
【0153】
ここで、半導体レーザ素子140の厚さ方向における複数の突起物141の形成位置について、図54を用いて説明する。図54は、半導体レーザ素子140のリッジ119が形成されている領域に対応する活性層114及びその近傍における光強度分布を示す図である。図54において、横軸は半導体レーザ素子140における厚さ方向の距離を示し、縦軸は光強度を示す。
また、図54における左側は図48における上側に対応し、図54における右側は図48における下側に対応する。
図54中の「ガイド含む活性層」の範囲は図48の「ガイド層113、活性層114、キャップ層115、及びガイド層116」に対応し、図54中の「△」マークは図48の「複数の突起物141」に対応し、図54中の「ta」は複数の突起物141が形成されている領域における半導体基板111及びn型の超格子クラッド層112の総厚に相当する。
【0154】
図54に示すように、半導体レーザ素子140は活性層114を中心にして半導体レーザ素子140の厚さ方向に所定の光強度分布を有する。
光強度分布状態はリッジ119の高さや幅、リッジの形状等によって異なる。
【0155】
上述したH2工程及びH5工程で半導体基板111をエッチングしすぎると、上記光強度分布に影響を与え、半導体レーザ素子140の電力利用効率を悪化させる要因となる。
そのため、半導体レーザ素子140の厚さ方向において、複数の突起物141を上記光強度分布に影響を与えない位置に形成することが望ましい。
【0156】
また、突起物141(図52参照)の底面の大きさを光の波長より十分小さなスケールとすることにより、屈折率は半導体内部から外側の空気に向かって徐々に変化することになる。このため半導体と空気の境界が明確であったときには全反射のために取り出せなかった自然放出光Ldを、効率的に外部に取り出すことが可能になる。
【0157】
実施例9で説明した理由と同様の理由により、実施例11の半導体レーザ素子140を例えば植物工場用等の光源として用いることができる。
【0158】
<実施例12>
本発明の半導体レーザアレイの実施例を実施例12として図55を用いて説明する。
実施例12の半導体レーザアレイは、前述した実施例1の半導体レーザ素子30が複数配列されてアレイ化されたものである。なお、実施例1と同じ構成部については説明をわかりやすくするために実施例1と同じ符号を付して説明する。
【0159】
図55に示すように、半導体レーザアレイ150は、実施例1の半導体レーザ素子30(図10参照)が複数(図55では5素子分)配列されてアレイ化されたものである。
即ち、半導体レーザアレイ150は、複数(5つ)のリッジ14と、各リッジ14に対応する複数(5つ)の凹部23を有する。
そして、半導体レーザアレイ150における共通のP側めっき電極20から各n側電極26に向けて外部から電流を供給することにより、発振閾値よりも低い電流範囲では、活性層5における各リッジ14に対応する領域でそれぞれ発生した自然放出光Lbが、各溝状の凹部23から外部に向けてそれぞれ照射される。また、発振閾値以上の電流範囲では、自然放出光Lbに加えて、リッジ14ごとにレーザ発光したレーザ光Laが共通の一対の共振器面(図55における紙面手前側の面及び紙面奥側の面)から外部に向けて照射される。
【0160】
半導体レーザアレイ150は、実施例1の半導体レーザ素子30を個別に複数配置する場合に比べて、素子の分割工数を削減することができるので、生産性が向上する。
また、半導体レーザアレイ150は、実施例1の半導体レーザ素子30を個別に複数配置する場合に比べて、素子の集積密度を向上させることができるので、小型化が可能になる。
【0161】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0162】
例えば、実施例1〜3、実施例6〜8,及び実施例12では、クラッド層4の酸化を防止するために耐酸化層3を設けた構成としたが、これに限定されるものではない。クラッド層4が酸化されにくい材料で形成されている場合は耐酸化層3を特に設けなくてもよい。
【0163】
また、実施例1〜11の構成のうちの任意の2以上の構成を互いに組み合わせた構成としてもよい。
【0164】
また、実施例12では実施例1の半導体レーザ素子30をアレイ化した例を示したが、これに限定されるものではない。本発明に係る半導体レーザアレイとして、実施例2の半導体レーザ素子40をアレイ化したものでもよい。また、実施例3の半導体レーザ素子50をアレイ化したものでもよい。また、実施例4の半導体レーザ素子60をアレイ化したものでもよい。また、実施例5の半導体レーザ素子70をアレイ化したものでもよい。また、実施例6の半導体レーザ素子80をアレイ化したものでもよい。また、実施例7の半導体レーザ素子90をアレイ化したものでもよい。また、実施例8の半導体レーザ素子100をアレイ化したものでもよい。また、実施例9の半導体レーザ素子110をアレイ化したものでもよい。また、実施例10の半導体レーザ素子130をアレイ化したものでもよい。また、実施例11の半導体レーザ素子140をアレイ化したものでもよい。
【0165】
実施例1〜12における半導体基板及び各半導体層におけるn型を第1導電型、p型を第2導電型という場合がある。また、実施例1〜12とは逆に、n型の半導体基板及び各半導体層をp型とし、p型の各半導体層をn型としてもよい。即ち、第1導電型とはn型及びp型の一方を示し、第2導電型とはn型及びp型の他方を示すものである。
【符号の説明】
【0166】
1,111_n型の半導体基板、 1a,1b,111a,111b_面、 2_n型のバッファ層、 3_n型の耐酸化層、 4_n型のクラッド層、 5,114_活性層、 6,8,91,101,102_p型のクラッド層、 7_p型のエッチングストップ層、 9_p型の障壁緩和層、 10,81,118_p型のコンタクト層、 12,22,45,132_SiO2膜、 14,54,119_p型のリッジ、 15,55,142_溝部、 17,42,57,120_絶縁膜、 19,122_P側電極、 20,123_P側めっき電極、 23,41,58,131_凹部、 25,47,51,71,73,121,124,133,143_レジスト膜、 26,43,74,125_n側電極、 30,40,50,60,70,90,100,110,130,140,150_半導体レーザ素子、 52_ZnO膜、 53_拡散カバー層、 61,72_n側透明電極、 112_n型の超格子クラッド層、 113_n型のガイド層、 115_p型のキャップ層、 116_p型のガイド層、 117_p型の超格子クラッド層、 120a_開口部、 141_突起物、 144_レジスト突起物、 La,Lc_レーザ光、 Lb,Ld_自然放出光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置された一対の共振器面を有する半導体レーザ素子において、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の下方に形成され、前記一対の共振器面から外部に向けて出射されるレーザ光を発生すると共に前記半導体基板に向けて自然放出光を発生する活性層と、
前記活性層の下方に形成された第2導電型のリッジと、
前記リッジに接続された第1の電極と、
前記半導体基板に接続された第2の電極と、
を備え、
前記自然放出光は、前記半導体基板における前記リッジが形成されている領域に対応する領域から外部に向けて出射されることを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記第2の電極は、前記リッジが形成されている領域に対応する領域に開口部を有することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記第2の電極は、前記自然放出光を透過する透明電極であることを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記半導体基板は、前記リッジが形成されている領域に対応する領域に、前記活性層側に窪んだ凹部を有することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記リッジは、前記凹部が形成されている領域に対応する領域を残して絶縁膜で覆われていることを特徴とする請求項4記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記活性層は、前記凹部が形成されている領域に対応する領域を残して無秩序化されていることを特徴とする請求項4記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記凹部には複数の突起物が形成されていることを特徴とする請求項4記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の半導体レーザ素子が複数形成されていることを特徴とする半導体レーザアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【公開番号】特開2011−159673(P2011−159673A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17987(P2010−17987)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(308036402)JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社 (1,152)
【Fターム(参考)】