説明

半導体レーザ素子

【課題】高出力化に適しかつ安定したTMモード発振が得られる半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】半導体レーザ素子70は、リッジストライプ状に形成された第2p型クラッド層を含むリッジストライプ30を備えている。リッジストライプ30の側面には、n型電流狭窄層6が形成されている。第2p型クラッド層19における第1p型クラッド層17側の面の幅であるリッジボトム幅W1が3.0μm以上4.5μm以下に形成され、第2p型クラッド層19における第1p型クラッド層17側と反対側の面の幅であるリッジトップ幅W2が2.0μm以上に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置(HDD;Hard disc Drive)の記憶容量を増大させるためには、ディスクの微小領域に信号を書き込む必要がある。信号の熱安定性を確保しつつ微小領域に信号を記録するためには、熱的に安定した記録媒体が必要となるが、そうすると書き換えには強い磁場が必要となるというジレンマが生じる。現行のGMR(Giant Magneto Resistance)方式では記録密度が飽和しつつある今、「熱アシスト記録」方式の実現が希求されている。「熱アシスト記録」方式は、レーザダイオード(半導体レーザ素子)を熱源とすることで、一時的に磁界を保持する力を弱めて書き込みを行う方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−111367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行のスライダ作成工程と親和性を持たせるためには、「熱アシスト記録」方式の記録装置に用いられる半導体レーザ素子は、従来の光ピックアップ用の半導体レーザ素子とは異なり、小さいチップサイズで高い出力を得る必要がある。
また、半導体レーザ素子の実装空間には制限があるため、光学系設計によっては従来の半導体レーザ素子での一般的なTE(Tranverse Electric)偏光だけではなく、TM(Tranverse Magnetic)偏光を実現する必要が生じる場合もある。
【0005】
この発明の目的は、高出力化に適しかつ安定したTMモード発振が得られる半導体レーザ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の半導体レーザ素子は、n型クラッド層と、第1p型クラッド層と、前記第1p型クラッド層における前記n型クラッド層側とは反対側に形成されかつリッジストライプ状に形成された第2p型クラッド層を含むリッジストライプと、前記n型クラッド層および前記第1p型クラッド層に挟まれ、引っ張り歪が生じている活性層と、前記リッジストライプの側面に形成された電流狭窄層とを備えている。そして、前記第2p型クラッド層における前記第1p型クラッド層側の面の幅である第1リッジ幅が3.0μm以上4.5μm以下に形成され、前記第2p型クラッド層における前記第1p型クラッド層側と反対側の面の幅である第2リッジ幅が2.0μm以上に形成されている。この構成では、引っ張り歪が生じている活性層を備えているので、TMモードで発振する半導体レーザが得られる。
【0007】
第1リッジ幅が狭いと、動作時に半導体レーザ素子の幅中央にキャリアが集中しやすくなり、電流密度が高くなるので、キンクが発生するおそれがある。一方、第1リッジ幅が広いと、動作時において電流が拡散する範囲が大きくなるので、キャリア供給不足が発生し、キンクが発生するおそれがある。この発明の構成では、第1リッジ幅が3.0μm以上4.5μm以下に形成されているので、キンクの発生を抑制または防止できる。このため、特性の安定した半導体レーザ素子が得られる。
【0008】
また、第2リッジ幅が狭いと、リッジストライプの抵抗が大きくなる。リッジストライプの抵抗が大きくなると、動作電流が大きくなり、光出力の最大値が低下する。この発明の構成では、第2リッジ幅が2.0μm以上に形成されているので、リッジストライプの抵抗を小さくすることができる。これにより、動作電流を下げることができ、光出力の最大値が低下するのを防止できる。
【0009】
前記半導体レーザ素子は、具体的には、前記第1p型クラッド層の膜厚が、300nm以上400nm以下であることが好ましい。第1p型クラッド層の膜厚が300nmより小さいと、第1p型クラッド層と活性層との間の屈折率差を緩和することができず、キンクが発生しやすくなるからである。一方、第1p型クラッド層の膜厚が400nmより大きいと、第2p型クラッド層から活性層までの電流経路が長くなって、特性が悪化してしまうからである。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記半導体レーザ素子は、前記電流狭窄層が形成された後にp型コンタクト層が形成される3回成長型半導体レーザ素子である。そして、前記電流狭窄層がn型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P(0≦x4≦1)層からなり、前記(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P層は、0.7≦x4≦0.9を満たす組成を有している。
【0011】
電流狭窄層を形成している(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P層におけるAl組成が多くなるほど、電流狭窄層の屈折率が小さくなる。x4が0.7より小さいと、第1p型および第2p型クラッド層と電流狭窄層との間の屈折率差が小さくなるため、電流狭窄層による幅方向の光閉じ込め効果が弱くなる。このため、動作電流が大きくなり、最大出力が低下してしまう。一方、x4が0.9より大きいと、第1p型および第2p型クラッド層と電流狭窄層との間の屈折率差が大きくなりすぎるため、電流狭窄層による幅方向の光閉じ込め効果が強くなりすぎる。このため、光密度が高くなり、キンクが発生しやすくなる。前記実施形態では、(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P層は、0.7≦x4≦0.9を満たす組成を有しているので、最大出力が低下するのを防止できるとともにキンクの発生を抑制または防止できる。これにより、高出力化に適しかつ特性の安定した半導体レーザ素子が得られる。
【0012】
前記半導体レーザ素子は、具体的には、前記n型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P電流狭窄層の膜厚が、300nm以上450nm以下であることが好ましい。電流狭窄層の膜厚が300nmより小さいと、横断面視において光ビームが電流狭窄層を超えてコンタクト層にはみ出るおそれがあるからである。一方、電流狭窄層の膜厚が450nmより大きいと、その製造が困難となるからである。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記半導体レーザ素子は、前記第2p型クラッド層が形成される際にp型コンタクト層が形成され、その後に前記電流狭窄層が形成される1回成長型半導体レーザ素子であって、前記電流狭窄層がSiOまたはSiN層からなる。
前記半導体レーザ素子は、具体的には、前記SiOまたはSiN層からなる電流狭窄層の膜厚が200nm以上300nm以下であることが好ましい。電流狭窄層の膜厚が200nmより小さいと、横断面視において光ビームが電流狭窄層からはみ出るおそれがあるからである。一方、電流狭窄層の膜厚が300nmより大きいと、SiOまたはSiN層は硬いため、電流狭窄層と活性層との間の熱膨張係数の違いによって、活性層に応力がかかり、活性層に加わる引っ張り歪の大きさが変化するおそれがあるからである。
【0014】
前記半導体レーザ素子は、具体的には、レーザ共振器の端面部分に、前記活性層のバンドギャップを拡大する端面窓構造が形成されていることが好ましい。レーザ共振器の端面部分に端面窓構造が形成されると、その端面部分において、活性層のバンドギャップを拡大させることができる。このため、内部で電子と正孔が再結合してできた誘導放出光がレーザ共振器の端面部分で吸収されにくくなるから、発熱を抑制できる。これにより、端面光学損傷を抑制できるので、高出力化が可能となる。
【0015】
前記半導体レーザ素子は、具体的には、前記n型クラッド層、第1p型クラッド層および第2p型クラッド層は、(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49P層からなり、前記(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49P層は、0.7>x1を満たす組成を有していることが好ましい。
この理由につい説明する。n型クラッド層、第1p型クラッド層および第2p型クラッド層のバンドギャップは、Al組成が多くなるほど大きくなる。これらのクラッド層によって良好なキャリア閉じ込めおよび光閉じ込めを行うためには、ガイド層とクラッド層との間のバンドギャップ差を所定値以上にすることが好ましい。そこで、x1を0.7よりも大きくすることによって、前記バンドギャップ差を前記所定値以上にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第1実施形態に係る半導体レーザダイオードの構成を説明するための平面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】前記半導体レーザダイオードの活性層の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図5】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図6】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図7】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図8】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図9】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図10】半導体レーザダイオードの製造工程を示す平面図である。
【図11】半導体レーザダイオードの製造工程を示す平面図である。
【図12】この発明の第2実施形態に係る半導体レーザダイオードの構成を説明するための平面図である。
【図13】図12のXIII- XIII 線に沿う断面図である。
【図14】図12のXIV−XIV 線に沿う断面図である。
【図15】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図16】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図17】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図18】半導体レーザダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図19】半導体レーザダイオードの製造工程を示す平面図である。
【図20】半導体レーザダイオードの製造工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る半導体レーザダイオードの構成を説明するための平面図であり、図2は図1のII-II線に沿う断面図であり、図3は図1のIII-III線に沿う断面図である。
この半導体レーザダイオード70は、3回の結晶成長工程を経て作製される3回成長型半導体レーザダイオードである。半導体レーザダイオード70は、基板1と、基板1上に結晶成長によって形成された半導体積層構造2と、基板の裏面(半導体積層構造2と反対側の表面)に接触するように形成されたn型電極3と、半導体積層構造2の表面に接触するように形成されたp型電極4を備えたファブリぺロー型のものである。
【0018】
基板1は、この実施形態では、GaAs単結晶基板で構成されている。GaAs基板1の表面の面方位は、(100)面に対して、10°のオフ角を有している。半導体積層構造2を形成する各層は、基板1に対してエピタキシャル成長されている。エピタキシャル成長とは、下地層からの格子の連続性を保った状態での結晶成長をいう。下地層との格子不整合は、結晶成長される層の格子の歪によって吸収され、下地層との界面での格子の連続性が保たれる。
【0019】
半導体積層構造2は、活性層10と、n側ガイド層11と、p側ガイド層112と、n型半導体層13と、p型半導体層14とを備えている。n型半導体層13は活性層10に対して基板1側に配置されており、p型半導体層14は活性層10に対してp型電極4側に配置されている。n側ガイド層11はn型半導体層13と活性層10との間に配置され、p側ガイド層12は活性層10とp型半導体層14との間に配置されている。こうして、ダブルヘテロ接合が形成されている。活性層10には、n型半導体層13からn側ガイド層11を介して電子が注入され、p型半導体層14からp側ガイド層12を介して正孔が注入される。これらが活性層10で再結合することにより、光が発生するようになっている。
【0020】
n型半導体層13は、基板1側から順に、n型GaAsバッファ層15(たとえば50nm〜100nm厚、この例では100nm厚)およびn型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層(0≦x1≦1)16(たとえば2000nm〜3000nm厚、この例では2500nm厚)を積層して構成されている。
一方、p型半導体層14は、p型ガイド層12上に、第1p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層(0≦x1≦1)17(たとえば250nm〜400nm厚、この例では350nm厚)、p型InGaPエッチングストップ層18(たとえば5nm〜10nm厚、この例では5nm厚)、第2p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層(0≦x1≦1)19(たとえば1000nm〜1500nm厚、この例では1000nm厚)、p型GaAsキャップ層20(たとえば50nm〜100nm厚、この例では100nm厚)およびp型GaAsコンタクト層21(たとえば1000nm〜2000nm厚、この例では1000nm厚)を積層して構成されている。
【0021】
n型GaAsバッファ層15は、GaAs基板1とn型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層16との接着性を高めるために設けられた層である。n型GaAsバッファ層15は、GaAsにたとえばn型ドーパントとしてのSiをドープすることによって、n型半導体層とされている。
p型GaAsコンタクト層21は、p型電極4とオーミックコンタクトをとるための低抵抗層である。p型GaAsコンタクト層21は、GaAsにたとえばp型ドーパントとしてのZnをドープすることによって、p型半導体層とされている。
【0022】
n型クラッド層16と、第1および第2p型クラッド層17,19とは、活性層10にキャリア(電子および正孔)を閉じ込めるキャリア閉じ込め効果と、活性層10からの光をそれらの間に閉じ込める光閉じ込め効果とを生じるものである。n型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層16は、(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pにたとえばn型ドーパントとしてのSiをドープすることによって、n型半導体層とされている。第1および第2p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層17,19は、(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pにたとえばp型ドーパントとしてのZnをドープすることによって、p型半導体層とされている。
【0023】
n型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層16は、n側ガイド層11よりもバンドギャップが広く、第1および第2p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層17,19は、p側ガイド層12よりもバンドギャップが広い。これにより、良好なキャリア閉じ込めおよび光閉じ込めを行うことができ、高効率の半導体レーザダイオードを実現できる。
【0024】
高出力化を可能とするためには、端面光学損傷を抑制することが重要である。そこで、後述するように、レーザ共振器端面部分に亜鉛などの不純物を拡散することにより、活性層10のバンドギャップを拡大する端面窓構造40を作製することが好ましい。端面窓構造40を作製するために、亜鉛等の不純物を拡散する場合、不純物を拡散すべき領域が燐を含んでいれば拡散速度が速い。この実施形態では、n型クラッド層16および第1および第2p型クラッド層17,19は、それぞれ燐を含む(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49P層からなる。したがって、亜鉛等の不純物を拡散させやすいので、端面窓構造40の作製が容易である。これにより、高出力化に適した半導体レーザダイオードを実現できる。
【0025】
また、この実施形態におけるn型クラッド層16およびp型クラッド層17,19は、(Alx1Ga(1−x1))の組成に対するInの組成の比を、0.49/0.51としているので、GaAs基板1と格子整合するため、高品質の結晶を得ることができる。この結果、信頼性の高い半導体レーザ素子が得られる。
n側ガイド層11は、Alx2Ga(1−x2)As(0≦x2≦1)層(たとえば20nm〜30nm厚、この例では20nm厚)からなり、n型半導体層13上に積層されることにより構成されている。p側ガイド層12は、Alx2Ga(1−x2)As(0≦x2≦1)層(たとえば20nm〜30nm厚、この例では20nm厚)からなり、活性層10上に積層されることにより構成されている。
【0026】
n側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層11およびp側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層12は、活性層10に光閉じ込め効果を生じる半導体層であり、かつ、クラッド層16,17,19とともに、活性層10へのキャリア閉じ込め構造を形成している。これにより、活性層10における電子および正孔の再結合の効率が高められるようになっている。
【0027】
クラッド層16,17,19を形成している(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49P層は、x1>0.7を満たす組成を有していることが好ましい。この理由について説明する。クラッド層16,17,19のバンドギャップは、Al組成が多くなるほど大きくなる。前述したように、クラッド層16,17,19によって良好なキャリア閉じ込めおよび光閉じ込めを行うためには、ガイド層11,12とクラッド層16,17,19との間のバンドギャップ差を所定値以上にすることが好ましい。そこで、x1を0.7よりも大きくすることによって、前記バンドギャップ差を前記所定値以上にすることができる。
【0028】
第1p型クラッド層17の膜厚は、300nm以上400nm以下であることが好ましい。第1p型クラッド層17の膜厚が300nmより小さいと、第1p型クラッド層17と活性層10との間の屈折率差を緩和することができず、キンクが発生しやすくなるからである。一方、第1p型クラッド層17の膜厚が400nmより大きいと、第2p型クラッド層19から活性層10までの電流経路が長くなって、特性が悪化してしまうからである。
【0029】
活性層10は、たとえば、AlGaAsPを含む多重量子井戸(MQW:multiple-quantum well)構造を有しており、電子と正孔とが再結合することにより光が発生し、その発生した光を増幅させるための層である。
活性層10は、この実施形態では、図4に示すように、アンドープのGaAs(1−x3)x3層(0≦x3≦1)からなる量子井戸(well)層221(たとえば8nm〜14nm厚、この例では13nm厚)とアンドープのAlx2Ga(1−x2)As層(0≦x2≦1)からなる障壁(barrier)層222とを交互に複数周期繰り返し積層して構成された多重量子井戸構造を有している。障壁層222の膜厚は、4nmより大きくかつ量子井戸層221の膜厚より小さい範囲内の大きさに形成されている。この例では、障壁層222の膜厚は、6.5nm厚である。
【0030】
無歪の状態でのGaAsP層の格子定数はGaAs基板1の格子定数より小さいので、GaAs(1−x3)x3層からなる量子井戸層221には引っ張り応力(引っ張り歪)が生じている。これにより、半導体レーザダイオード70は、TMモードで発振することが可能となる。なお、TMモードの出力光は、光伝搬方向に対して磁界方向が垂直(光伝搬方向に対して電界方向が平行)となるTM波となる。
【0031】
図3に示すように、p型半導体層14内の、第2p型クラッド層19およびp型キャップ層20は、その一部が除去されることによって、リッジストライプ30を形成している。より具体的には、第2p型クラッド層19およびp型キャップ層20の一部がエッチング除去され、横断面視が略台形形状(メサ形)のリッジストライプ30が形成されている。つまり、リッジストライプ30は、第2p型クラッド層19とp型キャップ層20とから構成されている。第2p型クラッド層19における第1p型クラッド層17側の面の幅(第1リッジ幅)を「リッジボトム幅W1」といい、第2p型クラッド層19における第1p型クラッド層17側と反対側の面の幅(第2リッジ幅)を「リッジトップ幅W2」ということにする。
【0032】
リッジボトム幅W1は、3.0μm以上4.5μm以下であり、好ましくは3.5μmである。リッジボトム幅W1が3.0μmより狭いと、動作時に半導体レーザ素子70の幅中央にキャリアが集中しやすくなり、電流密度が高くなるので、キンクが発生するおそれがある。一方、リッジボトム幅W1が4.5μmより広いと、動作時において電流が拡散する範囲が大きくなるので、キャリア供給不足が発生し、キンクが発生するおそれがある。この実施形態では、リッジボトム幅W1が3.0μm以上4.5μm以下に形成されているので、キンクの発生を抑制または防止できる。このため、特性の安定した半導体レーザ素子が得られる。
【0033】
リッジトップ幅W2は、2.0μm以上であり、好ましくは2.5μmである。リッジトップ幅W2が2.0μmより狭いと、リッジストライプ30の抵抗が大きくなる。リッジストライプ30の抵抗が大きくなると、動作電流が大きくなり、光出力の最大値が低下する。この実施形態では、リッジトップ幅W2が2.0μm以上に形成されているので、リッジストライプ30の抵抗を小さくすることができる。これにより、動作電流を下げることができ、光出力の最大値が低下するのを防止できる。
【0034】
リッジストライプ30の側面には、n型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P(0≦x4≦1)電流狭窄層(埋め込み層)6(たとえば300nm〜450nm厚、この例では400nm厚)が形成されている。より具体的には、両端面31,32よりの両端部分を除く中間部領域においては、p型キャップ層20の側面と、第2p型クラッド層19の露出面と、p型エッチングストップ層18の露出面は、n型電流狭窄層6によって覆われている。一方、両端部領域においては、p型キャップ層20の上面および側面と、第2p型クラッド層19の露出面と、p型エッチングストップ層18の露出面は、n型電流狭窄層6によって覆われている。n型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P電流狭窄層6は、(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49Pにたとえばn型ドーパントとしてのSiをドープすることによって、n型半導体層とされている。
【0035】
中間部領域においては、n型電流狭窄層6およびp型キャップ層20の露出面がコンタクト層21によって覆われ、両端部領域においては、n型電流狭窄層6の露出面がコンタクト層21によって覆われている。
電流狭窄層6を形成しているn型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P(0≦x4≦1)層は、0.7≦x4≦0.9を満たす組成を有していることが好ましい。この理由について説明する。電流狭窄層6を形成しているn型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49PにおけるAl組成が多くなるほど、電流狭窄層6の屈折率が小さくなる。x4が0.7より小さいと、第1p型および第2p型クラッド層17,19と電流狭窄層6との間の屈折率差が小さくなるため、電流狭窄層6による幅方向の光閉じ込め効果が弱くなる。このため、動作電流が大きくなり、最大出力が低下してしまう。一方、x4が0.9より大きいと、第1p型および第2p型クラッド層17,19と電流狭窄層6との間の屈折率差が大きくなりすぎるため、電流狭窄層6による幅方向の光閉じ込め効果が強くなりすぎる。このため、光密度が高くなり、キンクが発生しやすくなる。
【0036】
この実施形態では、電流狭窄層6を形成している(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P層は、0.7≦x4≦0.9を満たす組成を有しているので、最大出力が低下するのを防止できるとともにキンクの発生を抑制または防止できる。これにより、高出力化に適しかつ特性の安定した半導体レーザ素子が得られる。
また、電流狭窄層6の膜厚は、300nm以上450nm以下であることが好ましい。電流狭窄層6の膜厚が300nmより小さいと、横断面視において光ビームが電流狭窄層6を超えてコンタクト層21にはみ出るおそれがあるからである。一方、電流狭窄層6の膜厚が450nmより大きいと、その製造が困難となるからである。
【0037】
半導体積層構造2は、リッジストライプ30の長手方向両端における劈開面により形成された一対の端面(劈開面)31,32を有している。この一対の端面31,32は、互いに平行である。こうして、n側ガイド層11、活性層10およびp側ガイド層12によって、前記一対の端面31,32を共振器端面とするファブリペロー共振器が形成されている。すなわち、活性層10で発生した光は、共振器端面31,32の間を往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、増幅された光の一部が、共振器端面31,32からレーザ光として素子外に取り出される。
【0038】
n型電極3は、たとえばAuGe/Ni/Ti/Au合金からなり、そのAuGe側が基板1側に配されるように、基板1にオーミック接合されている。p型電極4は、たとえばTi/Au合金からなり、そのTi側がp型コンタクト層21に配されるように、p型コンタクト層21にオーミック接合されている。
図1および図2に示すように、共振器の端面部分には、活性層10のバンドギャップを拡大する端面窓構造40が形成されている。この端面窓構造40は、たとえば、共振器の端面部分に亜鉛(Zn)を拡散することによって形成される。
【0039】
このような構成によって、n型電極3およびp型電極4を電源に接続し、n型半導体層13およびp型半導体層14から電子および正孔を活性層10に注入することによって、この活性層10内での電子および正孔の再結合を生じさせ、たとえば、発振波長が770nm以上830nm以下の光を発生させることができる。この光は、共振器端面31,32の間をガイド層11,12に沿って往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、レーザ出射端面である共振器端面31から、より多くのレーザ出力が外部に取り出されることになる。
【0040】
図5〜図11は、図1〜図3に示す半導体レーザダイオード70の製造方法を示す横断面図である。ただし、図5、図7〜図9は、図3に対応する中央部の横断面図であり、図6は端部付近の横断面図である。図10および図11は、平面図である。
まず、図5に示すように、GaAs基板1上に、有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって、n型GaAsバッファ層15、n型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層16、n側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層11、活性層10、p側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層12、第1p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層17、p型InGaPエッチングストップ層18、第2p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層19およびp型GaAsキャップ層20を順に成長させる(1回目の結晶成長工程)。なお、活性層10は、GaAs(1−x3)x3層からなる量子井戸層221と、Alx2Ga(1−x2)As層からなる障壁層222とを交互に複数周期繰り返し成長させることによって形成される。
【0041】
次に、図6および図10に示すように、半導体レーザダイオード70の端面近傍に相当する領域において、p型GaAsキャップ層20上にZnO(酸化亜鉛)51をパターニングする。そして、たとえば、500〜600°Cで約2時間、アニール処理を行うことにより、半導体レーザダイオード70の端面近傍に相当する領域にZnを拡散させる。これにより、半導体レーザダイオード70の端面近傍に相当する領域に、端面窓構造40が形成される。
【0042】
次に、ZnO層51を除去する。それから、図7および図11に示すように、ストライプ状のSiO絶縁膜をマスク層52として、エッチングにより、p型キャップ層20および第2p型クラッド層19の一部を除去する。そうすると、頂面にマスク層52が積層されたリッジストライプ30が形成される。リッジストライプ30の形成後に、マスク層52全体のうち、半導体レーザダイオード70の端面近傍に相当する領域にある部分52a(図11参照)のみを除去する。
【0043】
次に、図8に示すように、表面にn型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P電流狭窄層6を成膜させる(2回目の結晶成長工程)。このとき、マスク層52がマスクとして機能する。そのため、半導体レーザダイオード70の両端部間の中間部に相当する領域では、図8に示すように、リッジストライプ30の頂面(p型キャップ層20の上面)はn型電流狭窄層6によって覆われない。一方、半導体レーザダイオード70の端面近傍に相当する領域では、マスク層52が存在しないため、リッジストライプ30の頂面(p型キャップ層20の上面)はn型電流狭窄層6によって覆われる。
【0044】
この後、マスク層52を除去する。そして、図9に示すように、表面にp型コンタクト層21を成長させる(3回目の結晶成長工程)。
最後に、p型GaAsコンタクト層21にオーミック接触するp型電極4を形成する。また、GaAs基板1にオーミック接触するn型電極3を形成する。
図12は、この発明の第2実施形態に係る半導体レーザダイオードの構成を説明するための平面図であり、図13は図12のXIII- XIII 線に沿う断面図であり、図14は図12のXIV- XIV線に沿う断面図である。図12〜図14において、図1〜図3に示された各部に対応する部分には、図1〜図3と同一の参照符号を付してある。
【0045】
この半導体レーザダイオード80は、1回の結晶成長工程を経て作製される1回成長型半導体レーザダイオードである。半導体レーザダイオード80は、基板1と、基板1上に結晶成長によって形成された半導体積層構造2Aと、基板の裏面(半導体積層構造2Aと反対側の表面)に接触するように形成されたn型電極3と、半導体積層構造2Aの表面に接触するように形成されたp型電極4を備えたファブリぺロー型のものである。
【0046】
基板1は、この実施形態では、GaAs単結晶基板で構成されている。GaAs基板1の表面の面方位は、(100)面に対して、10°のオフ角を有している。半導体積層構造2Aを形成する各層は、基板1に対してエピタキシャル成長されている。
半導体積層構造2Aは、活性層10と、n側ガイド層11と、p側ガイド層12と、n型半導体層13と、p型半導体層14Aとを備えている。n型半導体層13は活性層10に対して基板1側に配置されており、p型半導体層14Aは活性層10に対してp型電極4側に配置されている。n側ガイド層11はn型半導体層13と活性層10との間に配置され、p側ガイド層12は活性層10とp型半導体層14Aとの間に配置されている。こうして、ダブルヘテロ接合が形成されている。活性層10には、n型半導体層13からn側ガイド層11を介して電子が注入され、p型半導体層14Aからp側ガイド層12を介して正孔が注入される。これらが活性層10で再結合することにより、光が発生するようになっている。
【0047】
n型半導体層13は、基板1側から順に、n型GaAsバッファ層15(たとえば50nm〜100nm厚、この例では100nm厚)およびn型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層(0≦x1≦1)16(たとえば2000nm〜3000nm厚、この例では2500nm厚)を積層して構成されている。
一方、p型半導体層14Aは、p型ガイド層12上に、第1p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層(0≦x1≦1)17(たとえば250nm〜400nm厚、この例では350nm厚)、p型InGaPエッチングストップ層18(たとえば5nm〜10nm厚、この例では5nm厚)、第2p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層(0≦x1≦1)19(たとえば1000nm〜1500nm厚、この例では1000nm厚)、およびp型GaAsコンタクト層21A(たとえば100nm〜300nm厚、この例では300nm厚)を積層して構成されている。
【0048】
n側ガイド層11は、Alx2Ga(1−x2)As(0≦x2≦1)層(たとえば20nm〜30nm厚、この例では20nm厚)からなり、n型半導体層13上に積層されることにより構成されている。p側ガイド層12は、Alx2Ga(1−x2)As(0≦x2≦1)層(たとえば20nm〜30nm厚、この例では20nm厚)からなり、活性層10上に積層されることにより構成されている。
【0049】
クラッド層16,17,19を形成している(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49P層は、x1>0.7を満たす組成を有していることが好ましい。この理由について説明する。クラッド層16,17,19のバンドギャップは、Al組成が多くなるほど大きくなる。前述したように、クラッド層16,17,19によって良好なキャリア閉じ込めおよび光閉じ込めを行うためには、ガイド層11,12とクラッド層16,17,19との間のバンドギャップ差を所定値以上にすることが好ましい。そこで、x1を0.7よりも大きくすることによって、前記バンドギャップ差を前記所定値以上にすることができる。
【0050】
第1p型クラッド層17の膜厚は、300nm以上400nm以下であることが好ましい。第1p型クラッド層17の膜厚が300nmより小さいと、第1p型クラッド層17と活性層10との間の屈折率差を緩和することができず、キンクが発生しやすくなるからである。一方、第1p型クラッド層17の膜厚が400nmより大きいと、第2p型クラッド層19から活性層10までの電流経路が長くなって、特性が悪化してしまうからである。
【0051】
活性層10は、たとえば、AlGaAsPを含む多重量子井戸(MQW:multiple-quantum well)構造を有している。活性層10は、この実施形態では、図4に示すように、アンドープのGaAs(1−x3)x3層(0≦x3≦1)からなる量子井戸(well)層(たとえば8nm〜14nm厚、この例では13nm厚)221とアンドープのAlx2Ga(1−x2)As層(0≦x2≦1)からなる障壁(barrier)層222とを交互に複数周期繰り返し積層して構成された多重量子井戸構造を有している。障壁層222の膜厚は、4nmより大きくかつ量子井戸層221の膜厚より小さい範囲内の大きさに形成されている。この例では、障壁層222の膜厚は、6.5nm厚である。
【0052】
無歪の状態でのGaAsP層の格子定数はGaAs基板1の格子定数より小さいので、GaAs(1−x3)x3層からなる量子井戸層221には引っ張り応力(引っ張り歪)が生じている。これにより、半導体レーザダイオード80は、TMモードで発振することが可能となる。なお、TMモードの出力光は、光伝搬方向に対して磁界方向が垂直(光伝搬方向に対して電界方向が平行)となるTM波となる。
【0053】
p型半導体層14A内の、第2p型クラッド層19およびp型コンタクト層21Aは、その一部が除去されることによって、リッジストライプ30Aを形成している。より具体的には、第2p型クラッド層19およびp型コンタクト層21Aの一部がエッチング除去され、横断面視が略台形形状(メサ形)のリッジストライプ30Aが形成されている。つまり、リッジストライプ30Aは、第2p型クラッド層19とp型コンタクト層21Aとから構成されている。第2p型クラッド層19における第1p型クラッド層17側の面の幅(第1リッジ幅)を「リッジボトム幅W1」といい、第2p型クラッド層19における第1p型クラッド層17側と反対側の面の幅(第2リッジ幅)を「リッジトップ幅W2」ということにする。
【0054】
リッジボトム幅W1は、3.0μm以上4.5μm以下であり、好ましくは3.5μmである。リッジボトム幅W1が3.0μmより狭いと、動作時に半導体レーザ素子70の幅中央にキャリアが集中しやすくなり、電流密度が高くなる。電流密度が高くなると、急激な電流注入が発生して、キンクが発生するおそれがある。一方、リッジボトム幅W1が4.5μmより広いと、動作時において電流が拡散する範囲が大きくなる。電流の拡散範囲が大きくなると、キャリア不足が発生し、キンクが発生するおそれがある。この実施形態では、リッジボトム幅W1が3.0μm以上4.5μm以下に形成されているので、キンクの発生を抑制または防止できる。このため、特性の安定した半導体レーザ素子が得られる。
【0055】
リッジトップ幅W2は、2.0μm以上であり、好ましくは2.5μmである。リッジトップ幅W2が2.0μmより狭いと、リッジストライプ30の抵抗が大きくなる。リッジストライプ30の抵抗が大きくなると、動作電流が大きくなり、光出力の最大値が低下する。この実施形態では、リッジトップ幅W2が2.0μm以上に形成されているので、リッジストライプ30Aの抵抗を小さくすることができる。これにより、動作電流を下げることができ、光出力の最大値が低下するのを防止できる。
【0056】
リッジストライプ30Aの側面には、SiOまたはSiN絶縁層からなる電流狭窄層(埋め込み層)6A(たとえば200nm〜300nm厚、この例では250nm厚)が形成されている。より具体的には、p型コンタクト層21Aの側面と、第2p型クラッド層19の露出面と、p型エッチングストップ層18の露出面は、電流狭窄層6Aによって覆われている。
【0057】
電流狭窄層6Aの膜厚は、200nm以上300nm以下であることが好ましい。電流狭窄層6Aの膜厚が200nmより小さいと、横断面視において光ビームが電流狭窄層6Aからはみ出るおそれがあるからである。一方、電流狭窄層6Aの膜厚が300nmより大きいと、SiOまたはSiN絶縁層は硬いため、電流狭窄層6Aと活性層10との間の熱膨張係数の違いによって、活性層10に応力がかかり、活性層に加わる引っ張り歪の大きさが変化するおそれがあるからである。
【0058】
半導体積層構造2Aは、リッジストライプ30Aの長手方向両端における劈開面により形成された一対の端面(劈開面)31,32を有している。この一対の端面31,32は、互いに平行である。こうして、n側ガイド層11、活性層10およびp側ガイド層12によって、前記一対の端面31,32を共振器端面とするファブリペロー共振器が形成されている。すなわち、活性層10で発生した光は、共振器端面31,32の間を往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、増幅された光の一部が、共振器端面31,32からレーザ光として素子外に取り出される。
【0059】
n型電極3は、たとえばAuGe/Ni/Ti/Au合金からなり、そのAuGe側が基板1側に配されるように、基板1にオーミック接合されている。p型電極4は、たとえばTi/Au合金からなり、そのTi側がp型コンタクト層21Aに配されるように、p型コンタクト層21Aにオーミック接合されている。
図12および図13に示すように、共振器の端面部分には、活性層10のバンドギャップを拡大する端面窓構造40が形成されている。この端面窓構造40は、たとえば、共振器の端面部分に亜鉛(Zn)を拡散することによって形成される。
【0060】
このような構成によって、n型電極3およびp型電極4を電源に接続し、n型半導体層13およびp型半導体層14Aから電子および正孔を活性層10に注入することによって、この活性層10内での電子および正孔の再結合を生じさせ、たとえば、発振波長が770nm以上830nm以下の光を発生させることができる。この光は、共振器端面31,32の間をガイド層11,12に沿って往復しながら、誘導放出によって増幅される。そして、レーザ出射端面である共振器端面31から、より多くのレーザ出力が外部に取り出されることになる。
【0061】
図15〜図20は、図12〜図14に示す半導体レーザダイオード80の製造方法を示す横断面図である。ただし、図15、図17および図18は、図14に対応する中央部の横断面図であり、図16は端部付近の横断面図である。図19および図20は、平面図である。
まず、図15に示すように、GaAs基板1上に、有機金属化学気相成長法(MOCVD)によって、n型GaAsバッファ層15、n型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層16、n側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層11、活性層10、p側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層12、第1p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層17、p型InGaPエッチングストップ層18、第2p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層19およびp型GaAsコンタクト層21Aを順に成長させる。なお、活性層10は、GaAs(1−x3)x3層からなる量子井戸層221と、Alx2Ga(1−x2)As層からなる障壁層222とを交互に複数周期繰り返し成長させることによって形成される。
【0062】
次に、図16および図19に示すように、半導体レーザダイオード80の端面近傍に相当する領域において、p型GaAsキャップ層20上にZnO(酸化亜鉛)51をパターニングする。そして、たとえば、500〜600°Cで約2時間、アニール処理を行うことにより、半導体レーザダイオード80の端面近傍に相当する領域にZnを拡散させるこれにより、半導体レーザダイオード80の端面近傍に相当する領域に、端面窓構造40が形成される。
【0063】
次に、ZnO層51を除去する。それから、図17および図20に示すように、ストライプ状のSiO絶縁膜をマスク層52として、エッチングにより、p型コンタクト層21Aおよび第2p型クラッド層19の一部を除去する。そうすると、頂面にマスク層52が積層されたリッジストライプ30Aが形成される。この後、マスク層52を除去する。
次に、表面にSiOまたはSiN絶縁層からなる電流狭窄層6Aを成膜させる。その後、p型コンタクト層21A上の電流狭窄層6Aを除去する。これにより、図18に示すように、リッジストライプ30Aの側面は電流狭窄層6Aによって覆われるが、リッジストライプ30Aの頂面(p型コンタクト層21は電流狭窄層6Aによって覆われない。
【0064】
最後に、p型GaAsコンタクト層21Aにオーミック接触するp型電極4を形成する。また、GaAs基板1にオーミック接触するn型電極3を形成する。
この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2,2A 半導体積層構造
3 n型電極
4 p型電極
6 n型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P電流狭窄層
6A SiOまたはSiN電流狭窄層
10 活性層
11 n側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層
12 p側Alx2Ga(1−x2)Asガイド層
13 n型半導体層
14,14A p型半導体層
15 n型GaAsバッファ層
16 n型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層
17,19 p型(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49Pクラッド層
18 p型エッチングストップ層
20 p型キャップ層
21,21A p型GaAsコンタクト層
30,30A リッジストライプ
40 端面窓構造
70,80 半導体レーザダイオード
221 量子井戸層
222 障壁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型クラッド層と、
第1p型クラッド層と、
前記第1p型クラッド層における前記n型クラッド層側とは反対側に形成されかつリッジストライプ状に形成された第2p型クラッド層を含むリッジストライプと、
前記n型クラッド層および前記第1p型クラッド層に挟まれ、引っ張り歪が生じている活性層と、
前記リッジストライプの側面に形成された電流狭窄層とを備え、
前記第2p型クラッド層における前記第1p型クラッド層側の面の幅である第1リッジ幅が3.0μm以上4.5μm以下に形成され、前記第2p型クラッド層における前記第1p型クラッド層側と反対側の面の幅である第2リッジ幅が2.0μm以上に形成されている、半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記第1p型クラッド層の膜厚が、300nm以上400nm以下である、請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記電流狭窄層が形成された後にp型コンタクト層が形成される3回成長型半導体レーザ素子であって、
前記電流狭窄層がn型(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P(0≦x4≦1)層からなり、前記(Alx4Ga(1−x4)0.51In0.49P層は、0.7≦x4≦0.9を満たす組成を有している、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記電流狭窄層の膜厚が300nm以上450nm以下である、請求項3に記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記第2p型クラッド層が形成される際にp型コンタクト層が形成され、その後に前記電流狭窄層が形成される1回成長型半導体レーザ素子であって、
前記電流狭窄層がSiO層またはSiN層からなる、請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記電流狭窄層の膜厚が200nm以上300nm以下である、請求項5に記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
レーザ共振器の端面部分に、前記活性層のバンドギャップを拡大する端面窓構造が形成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記n型クラッド層、第1p型クラッド層および第2p型クラッド層は、(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49P層からなり、
前記(Alx1Ga(1−x1)0.51In0.49P層は、0.7>x1を満たす組成を有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体レーザ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−156397(P2012−156397A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15732(P2011−15732)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】