説明

半導体レーザ装置、半導体レーザ装置の製造方法、および不純物拡散方法

【課題】本発明は、必要最小限の不純物量で不純物拡散を制御し、プロセスコストを低減することが可能な半導体レーザ装置、半導体レーザ装置の製造方法、および不純物拡散方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による半導体レーザ装置は、半導体基板801上に形成されたダブルへテロ構造を有し、ダブルへテロ構造は、半導体基板801上に形成された第一導電型クラッド層802と、第一導電型クラッド層802上に形成された、ウェル層とバリア層との積層を含む活性層803と、活性層803上に形成された第二導電型クラッド層804とを備え、活性層803の光の出射端面の近傍に不純物拡散領域809を形成し、不純物拡散領域809の半導体基板801側の輪郭形状は、複数の山を有する波形形状であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置、半導体レーザ装置の製造方法、および不純物拡散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器が取り扱う情報量は非常に多く、高速に動作する記録装置および大容量の記録媒体の必要性が高まってきている。特に、DVD(Digital Versatile Disc)やCD(Compact Disc)などの記録媒体に記録する記録装置は、PC(Personal Computer)に搭載される大容量記憶装置、DVDレコーダー、Blue−Rayレコーダーなどに使用されるなど目覚しく普及している。DVDやCDなどの記録媒体に読み書きを行うドライブ装置には、ピックアップ光源として高出力かつ高効率の半導体レーザ装置が使用されている。
【0003】
上記のピックアップ光源のうち、DVD用のドライブ装置には波長650nm帯のAlGaInP系赤色半導体レーザ装置が用いられ、CD用のドライブ装置には波長780nm帯のAlGaAs系赤外半導体レーザ装置が用いられている。今後、記録装置に対するさらなる高速化・大容量化の要求が予想され、半導体レーザ装置の高出力化・高効率化は必須であり、現在既に200〜400mWクラスの半導体レーザ装置の開発が進められている。
【0004】
また、近年、同一基板上への複数の異なる波長の半導体レーザ装置の集積化が強く要求されている。例えば、DVDプレーヤやDVD−ROM装置において、CDおよびDVDに対して読み込み・書き込みをするためには、読み込み・書き込みが可能な発振波長780nmと発振波長650nmの2種類の半導体レーザ装置が必要となるため、2種類の半導体レーザ装置を個々に設置すると光学系の構成が複雑になるという問題があった。これに対して、同一基板上に2種類の波長の半導体レーザ装置の集積が可能になると、光学系の構成が簡易化されるとともに、ピックアップ光源が小型化されてPCやDVDレコーダーなどの製品事態が小型化されるという利点が得られる。上記のような同一基板に複数の異なる波長の半導体レーザ装置が集積化された半導体レーザ装置(多波長集積型レーザ装置)についても高出力・高効率化が要求されている。
【0005】
半導体レーザの高出力化については、レーザ共振器端面での結晶破壊による特性劣化が問題となっている。高出力化を実現する手段としては、レーザ共振器端面においてレーザ光に対して透明な材料を形成した端面窓構造が有効である。特に、量子井戸構造を活性層としたダブルへテロ構造において、不純物を拡散させることによって量子井戸構造を形成する原子を固相拡散させて無秩序化させる現象を利用した端面窓形成法が用いられている。
【0006】
上記の端面窓構造の形成には、一般的に不純物としてZnを拡散させている。Znの拡散速度は、波長650nm帯のAlGaInP系赤色半導体レーザ装置におけるAlGaInP系混晶内と、波長780nm帯のAlGaAs系赤外半導体レーザ装置におけるAlGaAs系混晶内とで異なる。例えば、AlGaInP系におけるZnの拡散速度は、AlGaAs系よりも5倍以上速い。このように、半導体レーザ装置を構成する材料によってZnの拡散条件が異なる。
【0007】
例えば、同一基板上に、波長650nm帯のAlGaInP系赤色半導体レーザ装置と波長780nm帯のAlGaAs系赤外半導体レーザ装置とを集積する場合において、各半導体レーザ装置のダブルへテロ構造の層構造や材料が異なるため、端面窓構造を形成する際のZn拡散条件も異なる。従って、両方の半導体レーザ装置に対して同時に同程度のZn拡散濃度を導入して端面窓構造を形成しても、良好な特性を両立させることができなくなるという問題が生じる。
【0008】
このような問題の対策として、従来では、不純物の拡散を抑制したいAlGaInP系650nm系赤色半導体レーザ装置のp型キャップ層とp型GaInPバンド不連続緩和層との間にAlGaAs拡散制御膜を挿入して形成することによって、同時に不純物を拡散しても両方のレーザに対して同程度の不純物拡散が行えるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−135366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、同一基板上に形成した複数の異なる波長の半導体レーザ装置に対して同時に不純物の拡散を行う場合には、拡散制御膜を形成しているため不純物の拡散を制御することが可能となる。しかし、拡散制御膜を用いる場合において、拡散制御膜のエピタキシャル成長工程と、複数の半導体レーザ素子ごとに拡散制御膜の厚みを調整するためのパターニングとエッチングを繰り返す工程とが必要となり、工程数が増加してプロセスコストが高くなるという問題がある。
【0011】
また、Znなどの不純物は、光の吸収材として作用する。従って、不純物の使用量は、無秩序化に必要な最低限の量にすることが望ましい。
【0012】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、必要最小限の不純物量で不純物拡散を制御するとともに、プロセスコストを低減することが可能な半導体レーザ装置、半導体レーザ装置の製造方法、および不純物拡散方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明による半導体レーザ装置は、半導体基板上に形成されたダブルへテロ構造を有する半導体レーザ装置であって、ダブルへテロ構造は、半導体基板上に形成された第一導電型クラッド層と、第一導電型クラッド層上に形成された、ウェル層とバリア層との積層を含む活性層と、活性層上に形成された第二導電型クラッド層とを備え、活性層の光の出射端面の近傍に不純物拡散領域を形成し、不純物拡散領域の半導体基板側の輪郭形状は、複数の山を有する波形形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体基板上に形成された第一導電型クラッド層と、第一導電型クラッド層上に形成された、ウェル層とバリア層との積層を含む活性層と、活性層上に形成された第二導電型クラッド層とを備え、活性層の光の出射端面の近傍に不純物拡散領域を形成し、不純物拡散領域の半導体基板側の輪郭形状は、複数の山を有する波形形状であるため、離散的に設けた不純物拡散源からの拡散により前記形状を得ることで、必要最小限の不純物量で不純物拡散を制御し、しかも拡散制御膜を使用しないことで、プロセスコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】前提技術による650nm帯赤色半導体レーザ装置の構造図である。
【図2】前提技術による780nm帯赤外半導体レーザ装置の構造図である。
【図3】前提技術による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図4】前提技術による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図5】前提技術による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図6】前提技術による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図7】前提技術による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図8】二波長半導体レーザ装置における不純物拡散形状を示す共振器方向の断面図である。
【図9】二波長半導体レーザ装置における不純物拡散形状を示す共振器方向の断面図である。
【図10】二波長半導体レーザ装置における不純物拡散形状を示す共振器方向の断面図である。
【図11】半導体レーザ装置における不純物拡散形状を示す共振器方向の断面図である。
【図12】前提技術による不純物開口部、リッジストライプ構造、および素子端面の各配置例を示す上面図である。
【図13】前提技術による不純物開口部、リッジストライプ構造、および素子端面の各配置例を示す上面図である。
【図14】本発明による不純物開口部、リッジストライプ構造、および素子端面の各配置例を示す上面図である。
【図15】本発明による不純物開口部、リッジストライプ構造、および素子端面の各配置例を示す上面図である。
【図16】本発明による不純物拡散形状の共振器方向の断面図である。
【図17】本発明による不純物拡散形状の共振器方向の断面図である。
【図18】本発明による不純物拡散形状の光出射端面方向の断面図である。
【図19】本発明の実施形態1による650nm帯赤色半導体レーザ装置の構造図である。
【図20】本発明の実施形態1による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図21】本発明の実施形態1による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図22】本発明の実施形態1による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図23】本発明の実施形態1による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図24】本発明の実施形態1による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図25】本発明の実施形態1による不純物拡散開口部の配置を示す上面図である。
【図26】本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の構造図である。
【図27】本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図28】本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図29】本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図30】本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図31】本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図32】本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図33】本発明の実施形態2による不純物拡散開口部の配置を示す上面図である。
【図34】本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の構造図である。
【図35】本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図36】本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図37】本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図38】本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図39】本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図40】本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【図41】本発明の実施形態3による不純物拡散開口部の配置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0017】
〈本発明の概念〉
まず、本発明の前提となる技術について説明する。
【0018】
図1は、前提技術によるAlGaInP系650nm帯赤色半導体レーザ装置の構造図である。図1に示すように、n型GaAs基板101上にn型AlGaInPクラッド層102、GaInPウェル層とAlGaInPバリア層との積層からなるMQW(Multi−Quantum Well)活性層103、p型AlGaInP第一クラッド層104、p型GaInPエッチング停止層111、p型AlGaInP第二クラッド層112、p型GaInPバンド不連続緩和層105、p型GaAsキャップ層106が順に積層して形成されている。また、n型GaAs基板101の裏面にはn型電極109が形成され、n型電極109と相対して絶縁膜108およびp型電極110が形成されている。不純物拡散領域107は、レーザ共振器端面に端面窓構造を形成するためにZnを固相拡散することによって形成された領域である。
【0019】
図2は、前提技術によるAlGaAs系780nm帯赤外半導体レーザ装置の構造図である。図2に示すように、n型GaAs基板201上にn型AlGaAsクラッド層202、GaAsウェル層とAlGaAsバリア層との積層からなるMQW活性層203、p型AlGaAs第一クラッド層204、p型GaAsエッチング停止層210、p型AlGaAs第二クラッド層211、p型GaAsキャップ層205が順に積層して形成されている。また、n型GaAs基板201の裏面にはn型電極208が形成され、n型電極208と相対して絶縁膜207およびp型電極209が形成されている。不純物拡散領域206は、レーザ共振器端面に端面窓構造を形成するためにZnを固相拡散することによって形成された領域である。なお、AlGaAs系780nm帯赤外半導体レーザ装置では、p型クラッド層204およびn型クラッド層202に対して、AlGaInPやGaInPが用いられる場合もある。
【0020】
次に、前提技術の端面窓構造を有する半導体レーザ装置の製造方法について、図1に示すAlGaInP系650nm帯赤色半導体レーザ装置を例に説明する。図3から図7は、従来による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【0021】
まず、図3に示すように、MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:有機金属気相成長)法によって、n型GaAs基板101上にn型AlGaInPクラッド層102、MQW活性層103、p型AlGaInP第一クラッド層104、p型InGaPエッチング停止層111、p型AlGaInP第二クラッド層112、p型GaInPバンド不連続緩和層105、p型GaAsキャップ層106を順に積層して形成し、ダブルへテロ構造を有する積層体を作製する。
【0022】
次に、図4に示すように、ダブルへテロ構造の上面(p型GaAsキャップ層106の上面)にSiO2膜301を形成した後にパターニングを行い、数10μm幅のストライプ開口部を、レーザ共振器方向に対して垂直方向に数百μm間隔で形成する。ストライプ開口部の形成後、スパッタ法によってZnO膜302を上面全体に堆積し、ストライプ開口部以外のZnO膜302をウェットエッチングによって除去する。
【0023】
ZnO膜302の形成後、図5に示すように、SiO2膜301およびZnO膜302の上面全体にSiO2膜303を堆積する。その後、窒素雰囲気中で熱処理によるアニールを行い、ストライプ開口部を形成するZnO膜302を拡散源としてp型GaAsキャップ層106からn型AlGaInPクラッド層102に到達するようにZnを固相拡散させることによって不純物拡散領域107が形成される。このZnの固相拡散によってGaInPウェル層とAlGaInPバリア層との積層を含むMQW活性層103は無秩序化される。不純物拡散領域107内の無秩序化されたMQW活性層103のバンドギャップは、無秩序化されていない領域のMQW活性層103のバンドギャップよりも大きくなるため、端面窓構造として機能する。
【0024】
不純物領域107の形成後、図6に示すように、SiO2膜301、ZnO膜302、およびSiO2膜303をウェットエッチングによって除去した後に、p型GaAsキャップ層106上にフォトレジスト(図示せず)を形成してパターニングを行い、数μm幅のストライプをレーザの共振器方向に形成する。このフォトレジストからなるストライプをマスクとして、ドライエッチングによってp型GaAsキャップ層106、p型GaInPバンド不連続緩和層105、p型AlGaInP第二クラッド層112をリッジ状に除去した後に、フォトレジストを除去する。
【0025】
リッジストライプの形成後、図7に示すように、リッジストライプの上面以外に絶縁膜であるSiN膜108を形成し、n型GaAs基板101の裏面にn型電極109を、リッジストライプの上面およびSiN膜108の上面にp型電極110を形成する。その後、不純物領域107内にてリッジストライプに対して垂直方向に積層体を劈開することによって一対の共振器端面を有するレーザ共振器をレーザチップが形成される。
【0026】
なお、AlGaAs系780nm帯赤外半導体レーザ装置についても、上記と同様の製造方法によって作製することが可能である。
【0027】
上記の前提技術の端面窓構造を有する半導体レーザ装置において、アニール処理によって不純物であるZnをn型クラッド層まで固相拡散させるために要する時間は、例えば、アニール温度を600℃とした場合、AlGaInP系650nm帯赤色半導体レーザ装置では20分であるのに対して、AlGaAs系780nm帯赤外半導体レーザ装置では110分であった。このように、前述の通り、AlGaInP系650nm帯赤色半導体レーザ装置におけるZnの拡散速度は、AlGaAs系780nm帯赤外半導体レーザ装置におけるZnの拡散速度よりも5倍以上速い。
【0028】
また、同一基板上に、波長650nm帯のAlGaInP系赤色半導体レーザ装置と波長780nm帯のAlGaAs系赤外半導体レーザ装置とを集積する場合において、各半導体レーザ装置のダブルへテロ構造の層構造や材料が異なるため、端面窓構造を形成する際のZn拡散条件も異なる。従って、両方の半導体レーザ装置に対して同時に同程度のZn拡散濃度を導入して端面窓構造を形成しても、良好な特性を両立させることができなくなる。以下に、不純物であるZnの拡散について説明する。
【0029】
図8から図10は、二波長半導体レーザ装置における不純物拡散形状を示す共振器方向の断面図である。図8から図10の(a)は780nm帯赤外半導体レーザ装置を、(b)は650nm帯赤色半導体レーザ装置を示している。図8は、不純物の拡散深さが最適であると仮定した場合における拡散断面形状の例である。図8に示すように、Zn拡散領域407a、407bの拡散深さが同等となることが理想的である。しかし、実際には同一基板上の複数の半導体レーザ装置の各層の組成や膜厚、拡散速度が異なるため、最適な拡散深さも各々の半導体レーザ装置によって異なる。
【0030】
例えば、図9に示すように、(b)に示す650nm帯赤色半導体レーザ装置の拡散深さを理想に合わせると、(a)に示す780nm帯赤外半導体レーザ装置の拡散深さが浅すぎてしまう。また、図10に示すように、(a)に示す780nm帯赤外半導体レーザ装置の拡散深さを理想に合わせると、(b)に示す650nm帯赤色半導体レーザ装置の拡散深さが深すぎてしまう。従って、各半導体レーザ装置に対して同時にZn拡散を行ったときに、同程度の拡散深さとなるようにする必要がある。
【0031】
図11は、半導体レーザ装置における不純物拡散形状を示す共振器方向の断面図である。特許文献1の実施形態にも記載されているように、不純物拡散領域の共振器方向の長さは、数μmから数十μmオーダーである。このような範囲に対して一箇所の開口部から不純物の固相拡散を行うと、拡散深さは、拡散形状501に示されるように中央部が最も深く端部方向に徐々に浅くなる。
【0032】
また、Znなどの不純物はZn原子自身が光の吸収材として光学的損傷耐性を下げているため、不純物量を無秩序化に必要な最低限の量にすることが望ましい。不純物が拡散形状501に示すように拡散した場合、無秩序化されたMQW活性層の領域は矢印502の範囲となる。不純物量を必要最小限にして矢印502の範囲を含むようにするためには、拡散形状503となるように不純物を拡散させることが理想的である。拡散形状503は、矢印502に示す無秩序化させるべきMQW活性層の領域全体に渡って同一の拡散深さとなっており、拡散形状501よりも使用する不純物量が少なくなっている。
【0033】
図12および図13は、前提技術による不純物開口部、リッジストライプ構造、および素子端面の各配置例を示す上面図であり、図14および図15は、本発明による不純物開口部、リッジストライプ構造、および素子端面の各配置例を示す上面図である。図12から図15は、劈開によって半導体レーザ装置をチップとして分離する前のウエハ状態における不純物拡散開口部の形状を示している。各図において、リッジストライプ位置601は半導体レーザ装置に形成されたリッジストライプの位置、端面位置602はチップ分離後の半導体レーザ装置の端面となる位置、不純物拡散開口部603は不純物を拡散させるために形成した開口部、窓長604はチップ分離後に端面窓として機能する端面窓の厚みを示している。
【0034】
図12に示すように、前提技術の半導体レーザ装置に対しては、不純物拡散開口部603はストライプ状であった。また、単一基板上に複数の異なる波長の半導体レーザ装置を有する多波長半導体レーザ装置に対しては、各々の半導体レーザ装置によって窓長を変える必要があるため、図13に示すように、不純物拡散開口部603を窓ごとに単一のアイランド状にしていた。上記の前提技術例に対して、本発明による半導体レーザ装置にて形成された不純物拡散開口部603は、図14および図15に示すように、形成された各単一の前提技術の不純物拡散領域内において不純物拡散領域を複数に分割して形成している。このように、前提技術では一箇所から不純物拡散しているのに対して、本発明では複数個所から不純物拡散を行っていることを特徴としている。
【0035】
不純物拡散を一箇所から行う場合と複数箇所から行う場合とにおける、不純物拡散形状の違いについて説明する。不純物は、基板方向のみならず全方位のベクトルを有して拡散するため、半導体結晶内の不純物拡散種は不純物拡散領域を広げながら拡散しており、不純物拡散領域内の中央部の深さは不純物拡散領域が広いほど深くなる。図16および図17は、本発明による不純物拡散形状501の共振器方向の断面図である。図16は、本発明による半導体レーザ装置の構造を最も単純化した図であり、不純物拡散領域を共振器方向に2箇所形成している。また、図11と同一の温度および時間において不純物を拡散させたときの共振器方向の不純物拡散形状を示している。図16に示すように、一箇所当たりの不純物拡散領域が狭いため拡散深さが浅くなり、半導体結晶内で不純物拡散領域同士が接合して一つの不純物拡散領域を形成している。また、図11に示す前提技術の拡散形状501と比較すると、本発明の方が前提技術よりも少ないZn量で図11の矢印502に示す範囲のMQW活性層領域を無秩序化させることができる。図17は、図16よりも狭い不純物拡散領域を多数設けた例を示している。図17に示すように、一箇所当たりの不純物拡散領域を狭くすることによって、不純物拡散領域全体の拡散深さを浅くすることができるとともに、隣接する各不純物拡散領域の間隔を調整することによって、不純物拡散領域全体の拡散深さを制御膜を用いることなくほぼ一定にすることができる。すなわち、図11に示す理想的な拡散形状503により近い拡散形状にすることが可能となる。このように、複数の離散して配置された不純物拡散開口部から不純物を拡散させて一つの不純物拡散領域を形成しており、不純物量の制御を行うことが可能となる。また、形成された不純物拡散領域の基板側の輪郭形状は複数の山を有する波形形状となる。
【0036】
単一の半導体基板上に複数の異なる波長の半導体レーザ装置を備える多波長レーザ装置において、不純物拡散速度が最も速い層構造を有する半導体レーザ装置と最も遅い層構造を有する半導体レーザ装置との間で不純物拡散速度が大きく異なる場合は、最も速い半導体レーザ装置の個々の不純物拡散開口部のスケールをプロセス限界の最小値で設計しても拡散が深くなって余分な不純物を用いることになってしまう。このような問題を解決するために、本発明では、図18に示すような不純物拡散形状としている。図18は、本発明による不純物拡散形状の光出射端面方向(チップ劈開方向)の断面図である。図18に示すように、不純物拡散開口部をリッジストライプ位置601と重ならないように形成し、不純物の拡散形状501のように、光路となるリッジストライプ直下の不純物濃度を最低限にして無秩序化を行っている。すなわち、制御膜を用いることなく、部分的な拡散深さを制御することが可能となる。なお、図18では、不純物開口部をリッジストライプ位置601と重ならないように形成しリッジストライプ直下にて不純物拡散領域が重なるようにすれば、図17に示すように不純物開口部を複数離散して配置してもよい。
【0037】
このように、不純物拡散開口部の数、大きさ、配置間隔などによって、拡散制御膜を用いることなく不純物の拡散量や拡散深さを制御することが可能となる。
【0038】
以上のことから、本発明では、必要最小限の不純物量で不純物拡散を制御するとともに、プロセスコストを低減することが可能な半導体レーザ装置、半導体レーザ装置の製造方法、および不純物拡散方法を提供することを目的とし、その詳細について以下に説明する。
【0039】
〈実施形態1〉
図19は、本発明の実施形態1による650nm帯赤色半導体レーザ装置の構造図である。図19に示すように、n型GaAs基板801上にn型AlGaInPクラッド層802(第一導電型クラッド層)、GaInPウェル層とAlGaInPバリア層との積層からなるMQW活性層803(活性層)、p型AlGaInP第一クラッド層804(第二導電型クラッド層)、p型GaInPエッチング停止層805、p型AlGaInP第二クラッド層806、p型GaInPバンド不連続緩和層807、p型GaAsキャップ層808が順に積層して形成されている。p型AlGaInP第二クラッド層806、p型GaInPバンド不連続緩和層807、およびp型GaAsキャップ層808は、レーザ光の横モード制御を実現するために、リッジ形状のストライプとして形成されている。不純物拡散領域809は、レーザ共振器端面に端面窓構造を形成するためにZnを固相拡散することによって形成された領域である。また、n型GaAs基板801の裏面にはn型電極811が形成され、n型電極811と相対してSiN絶縁膜810およびp型電極812が形成されている。
【0040】
なお、本実施形態では、AlGaInPとはAlxGa1-x-yInyP(0≦x≦1、0≦y≦1)を表し、xおよびyは各層ごとに決まった値を有するものとする。また、p型AlGaInP第一クラッド層804に替えて、p型GaInP第一クラッド層であってもよい。
【0041】
図19に示す650nm帯赤色半導体レーザ装置において、不純物拡散領域809は、不純物であるZnを複数箇所から固相拡散して形成された領域であって、MQW活性層803の光の出射端面の近傍に形成される。不純物拡散領域809内におけるMQW活性層803では、無秩序化されてウェル層とバリア層とが平均組成化されることによって、不純物非拡散領域と比較してバンドギャップが拡大している。例えば、図19に示す650nm帯赤色半導体レーザ装置における活性層の量子井戸構造からのフォトルミネッセンス(Photo Luminescence:PL)波長は、不純物非拡散領域で650nmであるのに対して、不純物拡散領域809で600nmとなり、不純物拡散によって短波長側にシフトしていることが分かる。上記のことから、不純物拡散領域809を形成することによって、光の出射端面は不純物非拡散領域から放出されるレーザ光に対して透明となり、レーザ端面の光吸収が著しく抑制されて安定した高出力動作が達成される。
【0042】
次に、本実施形態1による半導体レーザ装置の製造方法について説明する。
【0043】
図20から図24は、本発明の実施形態1による650nm帯赤色半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【0044】
まず、図20に示すように、MOVPE法によって、n型GaAs基板801上にn型AlGaInPクラッド層802、GaInPウェル層とAlGaInPバリア層との積層を含むMQW活性層803、p型AlGaInP第一クラッド層804、p型GaInPエッチング停止層805、p型AlGaInP第二クラッド層806、p型GaInPバンド不連続緩和層807、p型GaAsキャップ層808を順に積層して形成し、ダブルへテロ構造を有する積層体を作製する。
【0045】
次に、図21に示すように、ダブルへテロ構造の上面(p型GaAsキャップ層808の上面)にSiO2膜813(絶縁膜)を形成した後に、例えば図25に示すようなパターニングを行う。すなわち、SiO2膜813に対し、MQW活性層803の光の出射端面の近傍に、エッチングによって複数のアイランド状の開口部を形成する。図25は、本発明の実施形態1による不純物拡散開口部603の配置を示す上面図である。図25に示すように、パターニングによって、不純物拡散開口部603は、一辺が5μmのアイランドを各々2μm間隔で、ダブルへテロ構造の長手方向に6個、短手方向に6個ずつの6×6個分を1パターンとして40μm×40μm領域内に形成し、当該パターンをレーザ共振器方向に1mm間隔、レーザ共振器方向に対して垂直方向に300μm間隔で周期的に設ける。不純物拡散開口部603の形成後、スパッタ法によってZnO膜814(不純物拡散源膜)(本発明における不純物の拡散源となる材料源)を上面全体に堆積し、不純物開口部603以外のZnO膜814をウェットエッチングによって除去する。
【0046】
ZnO膜814の形成後、図22に示すように、SiO2膜813およびZnO膜814の上面全体にSiO2膜815を堆積する。その後、窒素雰囲気中で熱処理によるアニールを行い、不純物拡散開口部603を形成するZnO膜814を拡散源としてp型GaAsキャップ層808からn型AlGaInPクラッド層802に到達するようにZnを固相拡散させることによって一つの不純物拡散領域809が形成される。このZnの固相拡散によってMQW活性層803は無秩序化される。すなわち、ZnO膜814は、MQW活性層803の光の出射端面の近傍を無秩序化させる。不純物拡散領域809内の無秩序化されたMQW活性層803のバンドギャップは、無秩序化されていない領域のMQW活性層803のバンドギャップよりも大きくなるため、端面窓構造として機能する。このとき、不純物拡散領域809のn型GaAs基板801側の輪郭形状は、実際は例えば図17に示すように複数の山を有する波形形状であるが、ここでは図示を省略している。
【0047】
不純物拡散領域809の形成後、図23に示すように、SiO2膜813、ZnO膜814、およびSiO2膜815をウェットエッチングによって除去した後に、p型GaAsキャップ層808上にフォトレジスト(図示せず)を形成してパターニングを行い、例えば、3μm幅のストライプをレーザの共振器方向かつ不純物拡散領域809の中心を通るように形成する。このフォトレジストからなるストライプをマスクとして、ドライエッチングによってp型GaAsキャップ層808、p型GaInPバンド不連続緩和層807、p型AlGaInP第二クラッド層806を除去してリッジストライプ構造を形成するとともに、マスクされていない箇所はp型GaInPエッチング停止層805が露出するまでエッチングする。その後、リッジストライプ構造上のフォトレジストを除去する。
【0048】
リッジストライプ構造の形成後、図24に示すように、上面全部に絶縁膜であるSiN膜810を成膜した後、リッジストライプ構造の上面に形成されたSiN膜810のみドライエッチングによって除去し、n型GaAs基板801の裏面にn型電極811を、リッジストライプ構造の上面およびSiN膜810の上面にp型電極812を形成する。その後、不純物拡散領域809内にてリッジストライプ構造に対して垂直方向に積層体を劈開することによって一対の共振器端面を有するレーザ共振器として650nm帯赤色半導体レーザ装置が形成される。
【0049】
以上のことから、複数の不純物拡散開口部603から不純物を拡散して一つの不純物拡散領域を形成することによって、アニール温度600℃においてアニール時間は20分と従来例と同等であるが、従来よりも不純物であるZnの量を減少させたため、最大レーザ出力を約350mWから約400mWへと高めることができた。このように、必要最小限の不純物量で不純物拡散を制御して無秩序化を行ったため光学的損傷耐性を向上させることができる。
【0050】
なお、本実施形態において、p型GaInPエッチング停止層805を形成しなくても同様の効果が得られる。また、SiN膜810は他の絶縁膜であっても同様の効果が得られる。さらに、本実施形態によるエッチングプロセスは、ドライエッチングまたはウェットエッチングのいずれであっても同様の効果が得られる。本実施形態において、SiO2膜813に図25に示す不純物拡散開口部603のパターンを作る前に、全体の不純物拡散領域である40μm×40μm領域のp型GaAsキャップ層808を除去した後に、図25に示す不純物拡散開口部603のパターンを形成しても同様の効果が得られる。
【0051】
また、本実施形態において、n型AlGaInPクラッド層802、p型AlGaInP第一クラッド層804、およびp型AlGaInP第二クラッド層806にAlGaInP、GaInP、またはAlGaAsを、ウェル層にGaAs、AlGaAs、またはAlGaAsPを、バリア層にAlGaAs、またはAlGaInAsPを用いることで、上記と同様の製造方法によって高出力の780nm帯赤外半導体レーザ装置を作製することができる。
【0052】
〈実施形態2〉
図26は、本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の構造図である。図26に示すように、本実施形態2による半導体レーザ装置は、A領域(780nm帯赤外半導体レーザ装置)と、B領域(650nm帯赤色半導体レーザ装置)とからなる二波長の集積型半導体レーザ装置となっている。
【0053】
A領域(780nm帯赤外半導体レーザ装置)において、n型GaAs基板1101上にn型AlGaInPクラッド層1102a(第一導電型クラッド層)、GaAsウェル層とAlGaAsバリア層との積層からなるMQW活性層1103a(活性層)、p型AlGaInP第一クラッド層1104a(第二導電型クラッド層)、p型GaInPエッチング停止層1105a、p型AlGaInP第二クラッド層1106a、p型GaInPバンド不連続緩和層1107a、p型GaAsキャップ層1108aが順に積層して形成されている。p型AlGaInP第二クラッド層1106a、p型GaInPバンド不連続緩和層1107a、およびp型GaAsキャップ層1108aは、レーザ光の横モード制御を実現するために、リッジ形状のストライプとして形成されている。不純物拡散領域1109aは、レーザ共振器端面に端面窓構造を形成するためにZnを固相拡散することによって形成された領域である。また、n型GaAs基板1101の裏面にはn型電極1111が形成され、n型電極1111と相対してSiN絶縁膜1110およびp型電極1112aが形成されている。
【0054】
一方、B領域(650nm帯赤色半導体レーザ装置)において、n型GaAs基板1101上にn型AlGaInPクラッド層1102b(第一導電型クラッド層)、InGaPウェル層とAlGaInPバリア層との積層からなるMQW活性層1103b(活性層)、p型AlGaInP第一クラッド層1104b(第二導電型クラッド層)、p型GaInPエッチング停止層1105b、p型AlGaInP第二クラッド層1106b、p型GaInPバンド不連続緩和層1107b、p型GaAsキャップ層1108bが順に積層して形成されている。p型AlGaInP第二クラッド層1106b、p型GaInPバンド不連続緩和層1107b、およびp型GaAsキャップ層1108bは、レーザ光の横モード制御を実現するために、リッジ形状のストライプとして形成されている。不純物拡散領域1109bは、レーザ共振器端面に端面窓構造を形成するためにZnを固相拡散することによって形成された領域である。また、n型GaAs基板1101の裏面にはn型電極1111が形成され、n型電極1111と相対してSiN絶縁膜1110およびp型電極1112bが形成されている。
【0055】
なお、A領域において、n型AlGaInPクラッド層1102aおよびp型AlGaInPクラッド層1104aに用いられるAlGaInPに替えて、GaInPまたはAlGaAsであってもよく、B領域において、n型AlGaInPクラッド層1102bおよびp型AlGaInPクラッド層1104bに用いられるAlGaInPに替えて、GaInPであってもよい。
【0056】
図26に示す各半導体レーザ装置において、不純物拡散領域1109a、bは、不純物であるZnを複数箇所から固相拡散して形成された領域であって、MQW活性層1103a、bの光の出射端面の近傍に形成される。不純物拡散領域1109a、b内における各MQW活性層1103a、bでは、無秩序化されてウェル層とバリア層とが平均組成化されることによって、不純物非拡散領域と比較してバンドギャップが拡大している。例えば、図26に示す各半導体レーザ装置における活性層の量子井戸構造からのフォトルミネッセンス(PL)波長は、A領域(780nm帯赤外半導体レーザ装置)において、不純物非拡散領域で780nmであるのに対して、不純物拡散領域1109aで730nmとなり、不純物拡散によって短波長側にシフトしていることが分かる。また、B領域(650nm帯赤色半導体レーザ装置)において、不純物非拡散領域で650nmであるのに対して、不純物拡散領域1109bで600nmとなり、不純物拡散によって短波長側にシフトしていることが分かる。上記のことから、不純物拡散領域1109a、bを形成することによって、光の出射端面は不純物非拡散領域から放出されるレーザ光に対して透明となり、レーザ端面の光吸収が著しく抑制されて安定した高出力動作が達成される。
【0057】
次に、本実施形態2による半導体レーザ装置の製造方法について説明する。
【0058】
図27から図32は、本発明の実施形態2による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【0059】
まず、図27に示すように、MOVPE法によって、n型GaAs基板1101上にn型AlGaInPクラッド層1102a、GaAsウェル層とAlGaAsバリア層との積層を含むMQW活性層1103a、p型AlGaInP第一クラッド層1104a、p型GaInPエッチング停止層1105a、p型AlGaInP第二クラッド層1106a、p型GaInPバンド不連続緩和層1107a、p型GaAsキャップ層1108a、GaInP第二エッチング停止層1113、GaAs第二キャップ層1114を順に積層して形成し、ダブルへテロ構造を有する積層体を作製する。その後、作製したダブルへテロ構造上にフォトレジストを、例えば300μm幅のストライプ状に開口幅300μmを形成し、これをマスク(A領域以外を開口部としたマスク)としてストライプ開口部のダブルへテロ構造をn型GaAs基板1101に到達するまで除去することによってA領域のみ残す。
【0060】
次に、図28に示すように、MOVPE法によって、n型GaAs基板1101およびA領域上にn型AlGaInPクラッド層1102b、GaInPウェル層とAlGaInPバリア層との積層を含むMQW活性層1103b、p型AlGaInP第一クラッド層1104b、p型GaInPエッチング停止層1105b、p型AlGaInP第二クラッド層1106b、p型GaInPバンド不連続緩和層1107b、p型GaAsキャップ層1108bを順に積層して形成し、ダブルへテロ構造を有する積層体を作製する。その後、A領域上のみ開口するようにマスクパターンを形成し、A領域上に積層して形成された不要な半導体結晶をp型GaAsキャップ層1108aに到達するまで除去する。
【0061】
次に、図29に示すように、ダブルへテロ構造の上面(p型GaAsキャップ層1108a、bの上面)にSiO2膜1115を形成した後に、例えばB領域に対して図33に示すようなパターニングを行う。すなわち、SiO2膜1115に対し、MQW活性層1103a、bの光の出射端面の近傍に、エッチングによって複数のアイランド状の開口部を形成する。図33は、本発明の実施形態2による不純物拡散開口部603の配置を示す上面図である。図33に示すように、パターニングによって、B領域の不純物拡散開口部603は、一辺が3μmのアイランドを各々3μm間隔で、前記ダブルへテロ構造の長手方向に4個、短手方向に7個ずつの4×7個分を1パターンとして21μm×39μm領域内に形成する。一方、A領域の不純物拡散開口部603は、図25に示すパターンと同様である。各領域に対して不純物拡散開口部603を形成した後、スパッタ法によってZnO膜1116(本発明における不純物の拡散源となる材料源)を上面全体に堆積し、不純物開口部603以外のZnO膜1116をウェットエッチングによって除去する。
【0062】
ZnO膜1116の形成後、図30に示すように、各領域のSiO2膜1115およびZnO膜1116の上面全体にSiO2膜1117を堆積する。その後、窒素雰囲気中で熱処理によるアニールを行い、不純物拡散開口部603を形成するZnO膜1116を拡散源としてp型GaAsキャップ層1108a、bからn型AlGaInPクラッド層1102a、bに到達するようにZnを固相拡散させることによって各々一つの不純物拡散領域1109a、bが形成される。このZnの固相拡散によってMQW活性層1103a、bは無秩序化される。すなわち、ZnO膜1116は、MQW活性層1103a、bの光の出射端面の近傍を無秩序化させる。不純物拡散領域1109a、b内の無秩序化されたMQW活性層1103a、bのバンドギャップは、無秩序化されていない領域のMQW活性層1103a、bのバンドギャップよりも大きくなるため、端面窓構造として機能する。このとき、不純物拡散領域1109a、bのn型GaAs基板1101側の輪郭形状は、実際は例えば図17に示すように複数の山を有する波形形状であるが、ここでは図示を省略している。
【0063】
不純物拡散領域1109a、bの形成後、図31に示すように、SiO2膜1115、ZnO膜1116、およびSiO2膜1117をウェットエッチングによって除去した後に、p型GaAsキャップ層1108a、b上にフォトレジスト(図示せず)を形成してパターニングを行い、例えば、各領域に対して3μm幅のストライプをレーザの共振器方向かつ不純物拡散領域1109a、bの中心を通るように形成する。このフォトレジストからなるストライプをマスクとして、ドライエッチングによってp型GaAsキャップ層1108a、b、p型GaInPバンド不連続緩和層1107a、b、p型AlGaInP第二クラッド層1106を除去してリッジストライプ構造を形成するとともに、マスクされていない箇所はp型GaInPエッチング停止層1105a、bが露出するまでエッチングする。その後、リッジストライプ構造上のフォトレジストを除去する。
【0064】
リッジストライプ構造の形成後、図32に示すように、上面全部に絶縁膜であるSiN膜1110を成膜した後、リッジストライプ構造の上面に形成されたSiN膜1110のみドライエッチングによって除去し、n型GaAs基板1101の裏面にn型電極1111を、リッジストライプ構造の上面およびSiN膜1110の上面にp型電極1112a、bを形成する。その後、不純物拡散領域1109a、b内にてリッジストライプ構造に対して垂直方向に積層体を劈開することによって一対の共振器端面を有するレーザ共振器が形成され、A領域およびB領域からなる2種類の半導体レーザ装置を備える二波長半導体レーザ装置が形成される。
【0065】
以上のことから、拡散速度が速い領域Bの不純物拡散開口部603のパターンについて、個々のアイランドを領域Aよりも小さくするとともに、各アイランドの配置間隔をより広くすれば、複数の異なるダブルへテロ構造の活性層1103a、bに対して同時に無秩序化を行うことができるため、光学的損傷耐性が高い二波長半導体レーザ装置を作製することが可能となる。このとき、不純物開口部は離散的に配置されているため、必要最小限の不純物量で不純物拡散を制御することができる。また、拡散制御膜を用いないため、プロセスコストを低減することが可能となる。
【0066】
〈実施形態3〉
図34は、本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の構造図である。図34に示すように、本実施形態3による半導体レーザ装置は、A領域(780nm帯赤外半導体レーザ装置)と、B領域(650nm帯赤色半導体レーザ装置)とからなる二波長の集積型半導体レーザ装置となっている。
【0067】
A領域(780nm帯赤外半導体レーザ装置)において、n型GaAs基板1401上にn型AlGaAsクラッド層1402a(第一導電型クラッド層)、GaAsウェル層とAlGaAsバリア層との積層からなるMQW活性層1403a(活性層)、p型AlGaAs第一クラッド層1404a(第二導電型クラッド層)、p型GaAsエッチング停止層1405a、p型AlGaAs第二クラッド層1406a、p型GaAsキャップ層1408aが順に積層して形成されている。p型AlGaAs第二クラッド層1406aおよびp型GaAsキャップ層1408aは、レーザ光の横モード制御を実現するために、リッジ形状のストライプとして形成されている。不純物拡散領域1409aは、レーザ共振器端面に端面窓構造を形成するためにZnを固相拡散することによって形成された領域である。また、n型GaAs基板1401の裏面にはn型電極1411が形成され、n型電極1411と相対してSiN絶縁膜1410およびp型電極1412aが形成されている。
【0068】
一方、B領域(650nm帯赤色半導体レーザ装置)において、n型GaAs基板1101上にn型AlGaInPクラッド層1402b(第一導電型クラッド層)、GaInPウェル層とAlGaInPバリア層との積層からなるMQW活性層1403b(活性層)、p型AlGaInP第一クラッド層1404b(第二導電型クラッド層)、p型GaInPエッチング停止層1405b、p型AlGaInP第二クラッド層1406b、p型GaInPバンド不連続緩和層1407b、p型GaAsキャップ層1408bが順に積層して形成されている。p型AlGaInP第二クラッド層1406b、p型GaInPバンド不連続緩和層1407b、およびp型GaAsキャップ層1408bは、レーザ光の横モード制御を実現するために、リッジ形状のストライプとして形成されている。不純物拡散領域1409bは、レーザ端面に端面窓構造を形成するためにZnを固相拡散することによって形成された領域である。また、n型GaAs基板1401の裏面にはn型電極1411が形成され、n型電極1411と相対してSiN絶縁膜1410およびp型電極1412bが形成されている。
【0069】
図34に示す各半導体レーザ装置において、不純物拡散領域1409a、bは、不純物であるZnを複数箇所から固相拡散して形成された領域であって、MQW活性層1403a、bの光の出射端面の近傍に形成される。不純物拡散領域1409a、b内における各MQW活性層1403a、bでは、無秩序化されてウェル層とバリア層とが平均組成化されることによって、不純物非拡散領域と比較してバンドギャップが拡大している。例えば、図34に示す各半導体レーザ装置における活性層の量子井戸構造からのフォトルミネッセンス(PL)波長は、A領域(780nm帯赤外半導体レーザ装置)において、不純物非拡散領域で780nmであるのに対して、不純物拡散領域1409aで730nmとなり、不純物拡散によって短波長側にシフトしていることが分かる。また、B領域(650nm帯赤色半導体レーザ装置)において、不純物非拡散領域で650nmであるのに対して、不純物拡散領域1409bで600nmとなり、不純物拡散によって短波長側にシフトしていることが分かる。上記のことから、不純物拡散領域1409a、bを形成することによって、光の出射端面は不純物非拡散領域から放出されるレーザ光に対して透明となり、レーザ端面の光吸収が著しく抑制されて安定した高出力動作が達成される。
【0070】
次に、本実施形態3による半導体レーザ装置の製造方法について説明する。
【0071】
図35から図40は、本発明の実施形態3による半導体レーザ装置の製造工程を示す図である。
【0072】
まず、図35に示すように、MOVPE法によって、n型GaAs基板1401上にn型AlGaAsクラッド層1402a、GaAsウェル層とAlGaAsバリア層との積層を含むMQW活性層1403a、p型AlGaAs第一クラッド層1404a、p型GaAsエッチング停止層1405a、p型AlGaAs第二クラッド層1406a、p型GaAsキャップ層1408a、GaInP第二エッチング停止層1413、GaAs第二キャップ層1414を順に積層して形成し、ダブルへテロ構造を有する積層体を作製する。その後、作製したダブルへテロ構造上にフォトレジストを、例えば300μm幅のストライプ状に開口幅300μmを形成し、これをマスク(A領域以外を開口部としたマスク)としてストライプ開口部のダブルへテロ構造をn型GaAs基板1401に到達するまで除去することによってA領域のみ残す。
【0073】
次に、図36に示すように、MOVPE法によって、n型GaAs基板1401およびA領域上にn型AlGaInPクラッド層1402b、GaInPウェル層とAlGaInPバリア層との積層を含むMQW活性層1403b、p型AlGaInP第一クラッド層1404b、p型GaInPエッチング停止層1405b、p型AlGaInP第二クラッド層1406b、p型GaInPバンド不連続緩和層1407b、p型GaAsキャップ層1408bを順に積層して形成し、ダブルへテロ構造を有する積層体を作製する。その後、A領域上のみ開口するようにマスクパターンを形成し、A領域上に積層して形成された不要な半導体結晶をp型GaAsキャップ層1408aに到達するまで除去する。
【0074】
次に、図37に示すように、ダブルへテロ構造の上面(p型GaAsキャップ層1408a、bの上面)にSiO2膜1415を形成した後に、例えば図41に示すようなパターニングを行う。図41は、本発明の実施形態3による不純物拡散開口部603の配置を示す上面図である。図40に示すように、パターニングによって、A領域のおける不純物拡散開口部603は、共振器方向に40μm、共振器方向に対して垂直方向に60μmの単一の開口部を形成する。一方、B領域における不純物拡散開口部603は、20μm×20μmの四角形アイランドの開口部を、共振器方向および共振器方向に対して垂直方向にそれぞれ5μm間隔で形成する。このとき、不純物拡散開口部603は、リッジストライプ構造が形成される位置であるリッジストライプ位置601に重ならないように形成される。また、不純物拡散後の不純物拡散領域の輪郭の山は、リッジストライプ構造から外れて位置する。各領域において不純物拡散開口部603を形成した後、スパッタ法によってZnO膜1416(本発明における不純物の拡散源となる材料源)を上面全体に堆積し、不純物開口部603以外のZnO膜1416をウェットエッチングによって除去する。
【0075】
ZnO膜1416の形成後、図38に示すように、各領域のSiO2膜1415およびZnO膜1416の上面全体にSiO2膜1417を堆積する。その後、窒素雰囲気中で熱処理によるアニールを行い、不純物拡散開口部603を形成するZnO膜1416を拡散源としてp型GaAsキャップ層1408a、bからn型AlGaInPクラッド層1402a、bに到達するようにZnを固相拡散させることによって各々一つの不純物拡散領域1409a、bが形成される。このZnの固相拡散によってMQW活性層1403a、bは無秩序化される。すなわち、ZnO膜1416は、MQW活性層1403a、bの光の出射端面の近傍を無秩序化させる。不純物拡散領域1409a、b内の無秩序化されたMQW活性層1403a、bのバンドギャップは、無秩序化されていない領域のMQW活性層1403a、bのバンドギャップよりも大きくなるため、端面窓構造として機能する。このとき、不純物拡散領域1409a、bのn型GaAs基板1401側の輪郭形状は、例えば図16および図18に示すような複数の山を有する波形形状であるが、ここでは図示を省略する。
【0076】
不純物拡散領域1409a、bの形成後、図39に示すように、SiO2膜1415、ZnO膜1416、およびSiO2膜1417をウェットエッチングによって除去した後に、p型GaAsキャップ層1408a、b上にフォトレジスト(図示せず)を形成してパターニングを行い、例えば、各領域に対して3μm幅のストライプをレーザの共振器方向かつ不純物拡散領域1409a、bの中心を通るように形成する。このフォトレジストからなるストライプをマスクとして、ドライエッチングによってp型GaAsキャップ層1408a、b、p型GaInPバンド不連続緩和層1407a、b、p型AlGaAs第二クラッド層1406を除去してリッジストライプ構造を形成するとともに、マスクされていない箇所はp型GaAsエッチング停止層1405aおよびp型GaInPエッチング停止層1405bが露出するまでエッチングする。その後、リッジストライプ構造上のフォトレジストを除去する。リッジストライプ構造は、MQW活性層1403a、bの光の出射端面に対して垂直方向に形成される。
【0077】
リッジストライプ構造の形成後、図40に示すように、上面全部に絶縁膜であるSiN膜1410を成膜した後、リッジストライプ構造の上面に形成されたSiN膜1410のみドライエッチングによって除去し、n型GaAs基板1401の裏面にn型電極1411を、リッジストライプ構造の上面およびSiN膜1410の上面にp型電極1412a、bを形成する。その後、不純物拡散領域1109a、b内にてリッジストライプ構造に対して垂直方向に積層体を劈開することによって一対の共振器端面を有するレーザ共振器が形成され、A領域およびB領域からなる2種類の半導体レーザ装置を備える二波長半導体レーザ装置が形成される。
【0078】
以上のことから、拡散速度が著しく遅い領域Aに対しては単一領域から不純物(Zn)拡散を行い、拡散速度の速い領域Bに対しては不純物拡散開口部603がリッジストライプ位置601に重ならないように形成されるため、リッジストライプ構造直下のMQW活性層1403a、bの無秩序化を適当に制御することができ、両領域に対しても光学的損傷耐性が高い二波長(多波長)半導体レーザ装置を作製することが可能となる。このように、必要最小限の不純物量によって部分的に拡散深さを制御することができる。また、拡散制御膜を用いないため、プロセスコストを低減させることが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では、半導体レーザ装置および半導体レーザ装置の製造方法について説明したが、不純物拡散方法として、被拡散層上にマスク膜を形成し、形成したマスク膜に対し、エッチングによって複数のアイランド状の開口部を形成し、形成した開口部に不純物拡散源膜を形成し、不純物拡散源膜を形成した後、熱処理によって不純物拡散源膜から被拡散膜層に不純物を拡散させ一の不純物拡散領域を形成する工程を行えば、半導体レーザ装置に限らず、他の半導体装置に対する不純物拡散方法としても適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
101 n型GaAs基板、102 n型AlGaInPクラッド層、103 MQW活性層、104 p型AlGaInP第一クラッド層、105 p型GaInPバンド不連続緩和層、106 p型GaAsキャップ層、107 不純物拡散領域、108 絶縁膜、109 n型電極、110 p型電極、111 p型GaInPエッチング停止層、112 p型AlGaInP第二クラッド層、201 n型GaAs基板、202 n型AlGaAsクラッド層、203 MQW活性層、204 p型AlGaAs第一クラッド層、205 p型GaAsキャップ層、206 不純物拡散領域、207 絶縁膜、208 n型電極、209 p型電極、210 p型GaAsエッチング停止層、211 p型AlGaAs第二クラッド層、301 SiO2膜、302 ZnO膜、303 SiO2膜、401 ZnO膜、402 SiO2膜、403 p型半導体層、404 MQW活性層、405 n型半導体層、406 n型GaAs基板、407 Zn拡散領域、408 レーザ素子端面位置、501 拡散形状、502 無秩序化されたMQW活性層領域の範囲、503 理想的なZn拡散形状、601 リッジストライプ位置、602 端面位置、603 不純物拡散開口部、604 窓長、801 n型GaAs基板、802 n型AlGaInPクラッド層、803 MQW活性層、804 p型AlGaInP第一クラッド層、805 p型GaInPエッチング停止層、806 p型AlGaInP第二クラッド層、807 p型GaInPバンド不連続緩和層、808 p型GaAsギャップ層、809 不純物拡散領域、810 SiN絶縁膜、811 n型電極、812 p型電極、813 SiO2膜、814 ZnO膜、815 SiO2膜、1101 n型GaAs基板、1102 n型AlGaInPクラッド層、1103 MQW活性層、1104 p型AlGaInP第一クラッド層、1105 p型GaInPエッチング停止層、1106 p型AlGaInP第二クラッド層、1107 p型GaInPバンド不連続緩和層、1108 p型GaAsキャップ層、1109 不純物拡散領域、1110 SiN絶縁膜、1111 n型電極、1112 p型電極、1113 GaInP第二エッチング停止層、1114 GaAs第二キャップ層、1115 SiO2膜、1116 ZnO膜、1117 SiO2膜、1401 n型GaAs基板、1402 n型AlGaInPクラッド層、1403 MQW活性層、1404 p型AlGaInP第一クラッド層、1405 p型GaAsエッチング停止層、1406 p型AlGaAs第二クラッド層、1407 p型InGaPバンド不連続緩和層、1408 p型GaAsキャップ層、1409 不純物拡散領域、1410 SiN絶縁膜、1411 n型電極、1412 p型電極、1413 GaInP第二エッチング停止層、1414 GaAs第二キャップ層、1415 SiO2膜、1416 ZnO膜、1417 SiO2膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成されたダブルへテロ構造を有する半導体レーザ装置であって、
前記ダブルへテロ構造は、
前記半導体基板上に形成された第一導電型クラッド層と、
前記第一導電型クラッド層上に形成された、ウェル層とバリア層との積層を含む活性層と、
前記活性層上に形成された第二導電型クラッド層と、
を備え、
前記活性層の光の出射端面の近傍に不純物拡散領域を形成し、
前記不純物拡散領域の前記半導体基板側の輪郭形状は、複数の山を有する波形形状であることを特徴とする、半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記第一導電型クラッド層および前記第二導電型クラッド層はAlGaInPまたはGaInP、前記ウェル層はGaInP、前記バリア層はAlGaInPであることを特徴とする、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記第一導電型クラッド層および前記第二導電型クラッド層はAlGaInP、GaInP、またはAlGaAs、前記ウェル層はGaAs、AlGaAs、またはAlGaAsP、前記バリア層はAlGaAs、またはAlGaInAsPであることを特徴とする、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
半導体基板上に形成された複数のダブルへテロ構造を有する半導体レーザ装置であって、
前記各ダブルへテロ構造は、
前記半導体基板上に形成された第一導電型クラッド層と、
前記第一導電型クラッド層上に形成された、ウェル層とバリア層との積層を含む活性層と、
前記活性層上に形成された第二導電型クラッド層と、
を備え、
前記各ダブルへテロ構造の前記活性層の光の出射端面の近傍に不純物拡散領域を形成し、
前記各不純物拡散領域の前記半導体基板側の輪郭形状は、複数の山を有する波形形状であることを特徴とする、半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記ダブルへテロ構造のうちの少なくとも1つにおいて、前記第一導電型クラッド層および前記第二導電型クラッド層はAlGaInPまたはGaInPを、前記ウェル層はGaInPを、前記バリア層はAlGaInPを備え、残りの前記ダブルへテロ構造のうちの少なくとも1つにおいて、前記第一導電型クラッド層および前記第二導電型クラッド層はAlGaInP、GaInP、またはAlGaAsを、前記ウェル層はGaAs、AlGaAs、またはAlGaAsPを、前記バリア層はAlGaAs、またはAlGaInAsPを備えることを特徴とする、請求項4に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記ダブルへテロ構造は、前記第二導電型クラッド層上であって、前記活性層の光の出射端面に対して垂直方向に形成されたリッジストライプ構造をさらに備え、
前記不純物拡散領域の前記輪郭の山は、前記リッジストライプ構造から外れて位置することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
半導体基板上に形成されたダブルへテロ構造を有する半導体レーザ装置であって、
(a)前記半導体基板上に第一導電型クラッド層を形成する工程と、
(b)前記第一導電型クラッド層上にウェル層とバリア層との積層を含む活性層を形成する工程と、
(c)前記活性層上に第二導電型クラッド層を形成する工程と、
(d)前記第二導電型クラッド層上に絶縁膜を形成する工程と、
(e)前記絶縁膜に対し、前記活性層の光の出射端面の近傍に、エッチングによって複数のアイランド状の開口部を形成する工程と、
(f)前記開口部に不純物拡散源膜を形成する工程と、
(g)前記工程(f)の後、熱処理によって前記不純物拡散源膜から不純物を拡散させ一の不純物拡散領域を形成する工程と、
を備える、半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(g)において、
前記不純物拡散源膜は、前記活性層の光の出射端面の近傍を無秩序化させることを特徴とする、請求項7に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項9】
前記第一導電型クラッド層および前記第二導電型クラッド層はAlGaInPまたはGaInPであり、前記ウェル層はGaInPであり、前記バリア層はAlGaInPであることを特徴とする、請求項7に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項10】
前記第一導電型クラッド層および前記第二導電型クラッド層はAlGaInP、GaInP、またはAlGaAsであり、前記ウェル層はGaAs、AlGaAs、またはAlGaAsPであり、前記バリア層はAlGaAs、またはAlGaInAsPであることを特徴とする、請求項7に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁膜はSiO2膜であり、前記不純物拡散源膜はZnO膜であることを特徴とする、請求項7に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項12】
半導体基板上に形成された複数のダブルへテロ構造を有する半導体レーザ装置であって、
(a)前記半導体基板上に複数の第一導電型クラッド層を形成する工程と、
(b)前記各第一導電型クラッド層上にウェル層とバリア層との積層を含む活性層を形成する工程と、
(c)前記各活性層上に第二導電型クラッド層を形成する工程と、
(d)前記各第二導電型クラッド層上に絶縁膜を形成する工程と、
(e)前記各絶縁膜に対し、前記活性層の光の出射端面の近傍に、エッチングによって複数のアイランド状の開口部を形成する工程と、
(f)前記各開口部に不純物拡散源膜を形成する工程と、
(g)前記工程(f)の後、熱処理によって前記各不純物拡散源膜から不純物を拡散させ一の不純物拡散領域を形成する工程と、
を備える、半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項13】
前記工程(g)において、
前記不純物拡散源膜は、前記活性層の光の出射端面の近傍を無秩序化させることを特徴とする、請求項12に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項14】
前記ダブルへテロ構造のうちの少なくとも1つにおいて、前記第一導電型クラッド層および前記第二導電型クラッド層はAlGaInPまたはGaInPを、前記ウェル層はGaInPを、前記バリア層はAlGaInPを備え、残りの前記ダブルへテロ構造のうちの少なくとも1つにおいて、前記第一導電型クラッド層および前記第二導電型クラッド層はAlGaInP、GaInP、またはAlGaAsを、前記ウェル層はGaAs、AlGaAs、またはAlGaAsPを、前記バリア層はAlGaAs、AlGaInAsPを備えることを特徴とする、請求項12に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項15】
前記絶縁膜はSiO2膜であり、前記不純物拡散源膜はZnO膜であることを特徴とする、請求項12に記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項16】
前記ダブルへテロ構造は、
(h)前記工程(g)の後、前記絶縁膜および前記不純物拡散源膜を除去する工程と、
(i)前記工程(h)の後、前記第二導電型クラッド層上であって、前記活性層の光の出射端面に対して垂直方向にリッジストライプ構造を形成する工程と、
をさらに備え、
前記工程(e)において、前記開口部は、前記リッジストライプ構造が形成される位置に重ならないように形成されることを特徴とする、請求項7ないし15のいずれかに記載の半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項17】
(a)被拡散層上にマスク膜を形成する工程と、
(b)前記マスク膜に対し、エッチングによって複数のアイランド状の開口部を形成する工程と、
(c)前記開口部に不純物拡散源膜を形成する工程と、
(d)前記工程(c)の後、熱処理によって前記不純物拡散源膜から前記被拡散層に不純物を拡散させ一の不純物拡散領域を形成する工程と、
を備える、不純物拡散方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2010−245242(P2010−245242A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91752(P2009−91752)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】