説明

半導体レーザ装置及び光装置

【課題】信頼性が高い半導体レーザ装置及び光装置を低コストで提供する。
【解決手段】この半導体レーザ装置100は、青紫色半導体レーザ素子40を封止するベース10及び封止部材20を含むパッケージ30を備えている。ベース10のステム11には貫通孔11c、11dが形成されており、リード端子14、15が貫通して配置されている。リード端子14、15は、貫通孔11c、11d内に充填されたエポキシ樹脂からなる接着剤50、51によってベース10と電気的に絶縁された状態で接合されているとともに、貫通孔11c、11d内の前方には、接着剤50、51が前方に露出しないように、シリコン樹脂60、61が充填されている。また、貫通孔11c、11dの前面11a側の開口部には、シリコン樹脂60、61が露出しないように、EVOH樹脂からからなる被覆剤70、71が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ装置及び光装置に関し、特に、半導体レーザ素子を封止するパッケージを備えた半導体レーザ装置及びこれを用いた光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ブルーレイディスクの光源として、約405nmの波長のレーザ光を出射する青紫色半導体レーザ装置が実用化されている。この青紫色半導体レーザ装置は、半導体レーザ素子を封止するパッケージを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されている半導体レーザ装置では、半導体レーザ素子が金属製のステムと容器(キャップ)とからなるパッケージによって気密封止されている。このキャップには、レーザ光が出射されるガラス窓が取り付けられている。このガラス窓の取り付けは、気密封止を行うために、金属の熱膨張係数と近い熱膨張係数を有する低融点ガラスを用いて行われている。また、ステムには、パッケージを貫通するようにリード線が取り付けられており、ステムとリード線とは、電気的に絶縁されている。このリード線がステムを貫通する部分においても、気密封止を行うために、上記同様の低融点ガラスを用いてリード線を融着(封止)している。また、ステムとキャップとは、抵抗溶接によって取り付けられることにより、気密封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−22918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された半導体レーザ装置では、上記のように気密封止を低融点ガラスや抵抗溶接により行っているので、製造工程が複雑になり、製造コストが大きくなるという問題点があった。また、低融点ガラスにより気密封止された部分は、外部からの衝撃等に弱いので、信頼性が低いという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、信頼性が高い半導体レーザ装置及び光装置を低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による半導体レーザ装置は、内部に封止空間を有するパッケージと、封止空間内に配置された半導体レーザ素子とを備え、パッケージは、互いに接着剤で接合された第1の部材及び第2の部材を有し、封止空間内の第1の部材及び第2の部材の接合領域上には、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる被覆剤が形成されており、被覆剤により接着剤が覆われている。
【0008】
この発明の第1の局面による半導体レーザ装置では、パッケージを構成する第1の部材及び第2の部材を接着剤で接合しているので、製造工程が簡単で、低コストに半導体レーザ装置を製造することができる。また、低融点ガラス等で接合されている場合と比べて、柔軟性が高いことから、外力に対する信頼性も高い。
【0009】
また、封止空間内では、接着剤を被覆剤で覆っているので、接着剤に低分子シロキサンや揮発性の樹脂成分が含まれている場合にも、それらが封止空間内に侵入することを抑制することができる。また、被覆剤として、ガスバリア性に優れ、揮発性のガスも発生しにくいエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いているので、封止空間内には上記ガスが侵入することを抑制することができる。この結果、レーザ出射端面に付着物が形成されることを抑制することができるので、半導体レーザ素子の劣化を容易に抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、接着剤と被覆剤との間に接着剤より大きな弾性を有する樹脂が配置されており、被覆剤により樹脂が覆われている。このように構成すれば、第1の部材及び第2の部材の熱膨張係数が異なっていたり、外力による衝撃等で、接着剤に亀裂や剥離が発生した場合であっても、樹脂が亀裂や剥離によって生じた隙間に侵入することができる。これにより、さらに、気密性が向上し、信頼性も高くなる。
【0011】
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、第1の部材と第2の部材は、異なる材料から構成されていてもよい。この場合、各部材の形状や機能に合わせて材料を容易に選択できる。
【0012】
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、第1の部材は、透光性を有するとともに、第2の部材の開口部に接合されており、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光は、第1の部材を透過してパッケージの外部に出射される。このように構成すれば、レーザ光を出射するための窓部における封止を容易に行うことができる。
【0013】
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、第1の部材は、導電性を有するとともに、第2の部材の開口部に接合されており、第1の部材は、第2の部材と電気的に絶縁された状態でパッケージの外部から封止空間内まで延びて配置されている。このように構成すれば、封止空間内に配置されている半導体レーザ素子への電力供給用の配線部やフォトダイオード(PD)からのモニタ信号用の配線部における封止を容易に行うことができる。
【0014】
この発明の第2の局面による光装置は、内部に封止空間を有するパッケージと、封止空間内に配置された半導体レーザ素子とを含む半導体レーザ装置と、半導体レーザ素子の出射光を制御する光学系とを備え、パッケージは、互いに接着剤で接合された第1の部材及び第2の部材を有し、封止空間内の第1の部材及び第2の部材の接合領域上には、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる被覆剤が形成されており、被覆剤により接着剤が覆われている。
【0015】
この発明の第2の局面による光装置では、封止空間内の第1の部材及び第2の部材を接着剤で接合しているので、製造工程が簡単で、低コストに半導体レーザ装置を製造することができる。また、低融点ガラス等で接合されている場合と比べて、柔軟性が高いことから、外力に対する信頼性も高い。
【0016】
また、接着剤を被覆剤で覆っているので、接着剤に低分子シロキサンや揮発性の樹脂成分が含まれている場合にも、それらが封止空間内に侵入することを抑制することができる。また、被覆剤として、ガスバリア性に優れており、揮発性のガスも発生しにくいエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いているので、封止空間内には上記ガスの侵入をさらに抑制することができる。これにより、レーザ出射端面に付着物が形成されることを抑制することができるので、半導体レーザ素子の劣化を容易に抑制することができる。これらの結果、信頼性が高い光装置を容易にかつ低コストに実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、レーザ出射端面に付着物が形成されにくいので、信頼性が高く、半導体レーザ素子が劣化しにくい半導体レーザ装置及び光装置を容易にかつ低コストに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】半導体レーザ装置100のベース10と封止部材20とが分離された状態を示した分解斜視図である。
【図2】半導体レーザ装置100の幅方向の中心線に沿った縦断面図である。
【図3】半導体レーザ装置100における貫通孔11c(11d)付近の縦断面図である。
【図4】半導体レーザ装置110のベースとキャップとが分離された状態を示した分解斜視図である。
【図5】半導体レーザ装置200のベース10と封止部材20とが分離された状態を示した分解斜視図である。
【図6】半導体レーザ装置200の幅方向の中心線に沿った縦断面図である。
【図7】半導体レーザ装置200のリード端子14(15)が貫通する付近の端子保持部55の部分断面図である。
【図8】半導体レーザ装置210のベース10と封止部材20とが分離された状態を示した分解斜視図である。
【図9】半導体レーザ装置220のベース10と封止部材20とが分離された状態を示した分解斜視図である。
【図10】半導体レーザ装置220の幅方向の中心線に沿った縦断面図である。
【図11】半導体レーザ装置220における貫通孔11c(11d)付近の縦断面図である。
【図12】半導体レーザ装置210を備えた光ピックアップ装置300の構成を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による半導体レーザ装置100について説明する。図1〜図3に示すように、この半導体レーザ装置100は、ベース10及び封止部材20を含むパッケージ30を備えており、パッケージ内には、約405nmの発振波長を有する青紫色半導体レーザ素子40が封止されている。青紫色半導体レーザ素子40は、本発明の「半導体レーザ素子」の一例である。
【0021】
ベース10は、表面にNi−Auめっきを施したFe−Ni−Co合金であるコバールから形成されており、円盤状のステム11とステム11の前面11aら前方に突出する台座12とを有する。
【0022】
ステム11の後面11bには、後方(A2方向)に延びるリード端子13、14及び15が設けられている。リード端子13は、ベース10と一体的に形成されており、電気的に接続されている。また、ステム11には、台座12の上面(C2側の面)に平行な同一平面上に貫通孔11c及び11dが形成されている。リード端子14及び15は、貫通孔11c及び11d内を貫通してステム11の前方まで延びて配置されている。リード端子14及び15は、貫通孔11c及び11d内に充填されたエポキシ樹脂からなる接着剤50及び51によってベース10と電気的に絶縁された状態で接合されている。なお、貫通孔11c及び11dは、本発明の「開口部」の一例である。
【0023】
貫通孔11c及び11d内の前方には、接着剤50及び51が前方に露出しないように、シリコン樹脂60及び61が充填されている。なお、シリコン樹脂60及び61は、本発明の「接着剤より大きな弾性を有する樹脂」の一例である。また、貫通孔11c及び11dの前面11a側の開口部には、シリコン樹脂60及び61が露出しないように、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH樹脂)からからなる被覆剤70及び71が形成されている。被覆剤70及び71は、シリコン樹脂60及び61を覆うようにフィルム状のEVOH樹脂を配置した後、約200℃に加熱溶融することにより形成される。
【0024】
青紫色半導体レーザ素子40は、サブマウント45を介して台座12の上面に接合されている。ここで、青紫色半導体レーザ素子40は、青紫色半導体レーザ素子40の一対の共振器端面のうち、出射されるレーザ光の光強度が相対的に大きい方の共振器端面(光出射面)を前方(A1方向)に、出射されるレーザ光の光強度が相対的に小さい方の共振器端面(光反射面)を後方(A2方向)に、それぞれ向けて配置されている。
【0025】
青紫色半導体レーザ素子40の下面(C1側の面)に形成されたn側電極(図示せず)は、サブマウント45を介して、台座12及びリード端子13と電気的に接続されている。また、青紫色半導体レーザ素子40の上面(C2側の面)に形成されたp側電極(図示せず)は、Au等からなる金属線80を介して、リード端子14の前端部と電気的に接続されている。
【0026】
ステム11の前面11aには、フォトダイオード(PD)90が取り付けられている。PD90の前面(受光面)は、青紫色半導体レーザ素子40の光反射面と対向するように配置されている。PD90の背面に形成されたn側電極(図示せず)は、導電性接着剤52を介して、ステム11及びリード端子13と電気的に接続されている。また、PD90の前面に形成されたp側電極(図示せず)は、Au等からなる金属線81を介して、リード端子15の前端部と電気的に接続されている。また、PD90の側面とステム11の前面11aとの間には、導電性接着剤52を覆うように、EVOH樹脂からなる被覆剤72が形成されている。被覆剤72は、被覆剤71と同様に、PD90の周囲にフィルム状のEVOH樹脂を配置した後、約200℃に加熱溶融することにより形成される。
【0027】
封止部材20は、表面にNiめっきを施したコバールからなり、後方に開口したキャップ状に形成されている。封止部材20は、円筒状に形成された側壁部20aと、側壁部20aの前方を塞ぐ底部20bと、側壁部20の後方に形成され、ステム11の外形と同様に外周に向かって張り出した取付部20cとを有する。
【0028】
封止部材20の底部20bの中央には、円状の孔部20eが設けられており、前方から孔部20eを覆うように、硼珪酸ガラスからなる矩形状の光透過部21が接合されている。なお、孔部20eは、本発明の「開口部」の一例である。光透過部21の後面と孔部20eを除く底部20bの前面との間には、EVOH樹脂からなる被覆剤73が形成されている。被覆剤73は、光透過部21と底部20bとの隙間を封止するように充填されている。被覆剤73は、孔部20eと同じ形状の開口部を有するフィルム状のEVOH樹脂を光透過部21と底部20eとの間に挟み込んだ後、約200℃に加熱溶融することにより形成することができる。また、光透過部21の側面と封止部材20の底部20bとの間には、エポキシ樹脂からなる接着剤53が形成されており、この接着剤53によって、光透過部21と底部20bとが固定されている。接着剤53は、被覆剤73を形成した後、光透過部21の周囲に塗布形成することができる。
【0029】
ベース10と封止部材20とは、ステム11の前面11aと封止部材20の取付部20cとの間に形成されたEVOH樹脂からなる被覆剤74によって封止されている。被覆剤74は、取付部20cと同じ形状のフィルム状のEVOH樹脂を前面11aと取付部20cとの間に挟み込んだ後、約200℃に加熱溶融することにより形成することができる。また、取付部20cの側面とステム11の側面との間には、エポキシ樹脂からなる接着剤54が形成されており、この接着剤54によって、取付部20cとステム11とが固定されている。接着剤54は、被覆剤74を形成した後、取付部20cの側面とステム11の側面との間に塗布形成することができる。このようにして、ベース10及び封止部材20により囲まれたパッケージ30内の封止空間31内に青紫色半導体レーザ素子40を封止した半導体レーザ装置100が構成されている。
【0030】
ここで、半導体レーザ装置100では、ベース10と封止部材20との関係においては、一方が本発明の「第1の部材」、他方が本発明の「第2の部材」の一例である。また、ベース10とリード端子14、15との関係においては、リード端子14、15が本発明の「第1の部材」、ベース10が本発明の「第2の部材」の一例となる。また、封止部材20と光透過部21との関係においては、光透過部21が本発明の「第1の部材」、封止部材20が本発明の「第2の部材」の一例となる。
【0031】
半導体レーザ装置100では、パッケージを構成するベース10、封止部材20、光透過部21、リード端子14及び15を接着剤50、51、53及び54で接合しているので、製造工程が簡単で、低コストに半導体レーザ装置100を製造することができる。また、低融点ガラス等で接合されている場合と比べて、柔軟性が高いことから、外力に対する信頼性も高い。また、封止空間31内では、接着剤50、51、53及び54を被覆剤70、71、73、74で覆っているので、接着剤50、51、53及び54に低分子シロキサンや揮発性の樹脂成分が含まれている場合にも、それらが封止空間31内に侵入することを抑制することができる。また、被覆剤70、71、73、74として、ガスバリア性に優れ、揮発性のガスも発生しにくいEVOHを用いているので、封止空間31内には上記ガスが侵入することを抑制することができる。この結果、半導体レーザ素子40の光出射面に付着物が形成されることを抑制することができるので、半導体レーザ素子40の劣化を容易に抑制することができる。
【0032】
また、半導体レーザ装置100では、上記のように構成されているので、ベース10、リード端子14及び15、封止部材20及び光透過部21は、各部材の形状や機能に合わせて材料を容易に選択できる。
【0033】
また、半導体レーザ装置100では、上記のように構成されているので、レーザ光を出射するための光透過部21における封止を容易に行うことができる。
【0034】
また、半導体レーザ装置100では、上記のように構成されているので、半導体レーザ素子40への電力供給用の配線部(貫通孔11c)やPD90からのモニタ信号用の配線部(貫通孔11d)における封止を容易に行うことができる。
【0035】
また、リード端子14及び15とステム11との接合領域では、接着剤50及び51と被覆剤70及び71との間にシリコン樹脂60及び61が配置されている。これにより、外力による衝撃やリード端子14及び15とステム11との熱膨張係数の違いにより、接着剤50及び51に亀裂や剥離が発生した場合であっても、シリコン樹脂60及び61が亀裂や剥離によって生じた隙間に侵入することができるので、さらに、気密性が向上し、信頼性も高くなる。
【0036】
また、半導体レーザ装置100では、PD90を固定する導電性接着剤52を覆うようにPD90の周囲にEVOHからなる被覆剤72が形成されている。これにより、導電性接着剤52内に低分子シロキサンや揮発性の樹脂成分が含まれている場合であっても、封止空間31内に侵入することを抑制することができる。
【0037】
(第1実施形態の第1変形例)
次に、第1実施形態の変形例による半導体レーザ装置110について説明する。この半導体レーザ装置110では、図4に示すように、光透過部21は、封止部材20の底部20bの内側に取り付けられている。この場合、光透過部21と底部20bとを固定する接着剤53は、光透過部21の前面と孔部20eを除く底部20bの内面との間に形成されている。また、接着剤53を覆う被覆剤73は、封止部材20の内側において光透過部21の側面と底部20b内面との間に形成されており、接着剤53が封止部材20の内側に露出しないように配置されている。その他の構成は、半導体レーザ装置100と同様である。
【0038】
半導体レーザ装置110についても、半導体レーザ装置100と同様の効果を奏する。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による半導体レーザ装置200について説明する。
【0040】
図5〜図7に示すように、この半導体レーザ装置200では、ベース10は、表面にNiメッキを行った約0.4mmの厚みを有するリン青銅からなるフレーム状の金属板からなる。ベース10には、折り曲げ加工により、前方(A1方向)、後方(A2方向)及び上方(C2方向)に開口した溝状の凹部10aが形成されている。なお、凹部10aの前方及び後方に開口した領域は、本発明の「開口部」の一例である。また、ベース10の底面10bには、後方に延びるリード端子13が一体的に形成されている。凹部10aの側面10c及び10dは、同じ高さを有し、側壁10c及び10dの上方には、底面10bに平行に延びる取付部10e及び10fが形成されている。
【0041】
凹部10aの前方には、凹部10aの断面と同一形状の硼珪酸ガラスからなる光透過部21が嵌め込まれている。光透過部21と凹部10aの底面10b及び側面10c、10dとの間には、約0.5mmの厚みを有するEVOH樹脂からなる被覆剤73が形成されている。被覆剤73は、光透過部21と凹部10aとの隙間を封止するように充填されているとともに、光透過部21を凹部21内に接合している。
【0042】
ベース10の後方には、凹部10aの断面と同一形状のエポキシ樹脂からなる端子保持部55が形成されている。なお、端子保持部55は、本発明の「接着剤」の一例である。端子保持部55の前面(凹部10aの内側の面)55aには、EVOH樹脂からなる被覆剤71が形成されている。被覆剤73は、端子保持部55が凹部10aの内側から見て露出しないように、前面55aを覆っている。また、リード端子14、15は、凹部10aの底面10bに平行な同一平面上で端子保持部55及び被覆剤71を貫通しており、凹部10a内まで延びて配置されている。リード端子14、15は、端子保持部55によって電気的に絶縁された状態で保持されている。なお、端子保持部55は、リード端子14及び15を所定の位置に保持した状態で、凹部10aの後方にエポキシ樹脂を流し込むことにより形成される。被覆剤71は、端子保持部55の形成後、ベース10を約220℃に加熱した状態で端子保持部55の前面55aにEVOH樹脂を塗布することにより形成される。
【0043】
凹部10aの底面10b上には、青紫色半導体レーザ素子40がサブマウント45を介して接合されている。青紫色半導体レーザ素子40は、サブマウント45の上面前方に配置されており、サブマウント45の上面後方には、受光面(図示せず)を上方に向けて、PD90が接合されている。
【0044】
封止部材20は、約15μmの厚みを有する洋白からなる金属板20aからなり、ベース10の平面形状と同様の形状を有している。封止部材20の下面には、約0.5mmの厚みを有するEVOH樹脂からなる被覆剤74が形成されており、被覆剤74を介して、ベース10の取付部10e、10f、端子保持部55及び光透過部21の各上面と接合されている。
【0045】
このようにして、ベース10、端子保持部55、光透過部21及び封止部材20により囲まれたパッケージ30内の封止空間31内に青紫色半導体レーザ素子40を封止した半導体レーザ装置200が構成されている。半導体レーザ装置200のその他の構成は、半導体レーザ装置100と同様である。
【0046】
ここで、半導体レーザ装置200では、封止部材20と、ベース10、リード端子14、15及び光透過部21との関係においては、一方が本発明の「第1の部材」、他方が本発明の「第2の部材」の一例である。また、ベース10とリード端子14、15との関係においては、リード端子14、15が本発明の「第1の部材」、ベース10が本発明の「第2の部材」の一例となる。また、ベース10と光透過部21との関係においては、光透過部21が本発明の「第1の部材」、ベース10が本発明の「第2の部材」の一例となる。
【0047】
半導体レーザ装置200では、ベース10及び封止部材20を金属板から形成しているので、低コストに半導体レーザ装置200を製造することができる。また、封止部材20及び光透過部21は、それぞれ、被覆剤73及び74によって接合されている。すなわち、それらの接合領域では接着剤を使用していないので、封止空間31内に接着剤に含まれる揮発性の樹脂成分が侵入しにくく、また、低コストで半導体レーザ装置200を製造することができる。
【0048】
半導体レーザ装置200のその他の効果は、半導体レーザ装置100と同様である。
【0049】
(第2実施形態の第1変形例)
次に、第2実施形態の第1変形例による半導体レーザ装置210について説明する。この半導体レーザ装置210では、図8に示すように、サブマウント45上に、約405nmの発振波長を有する青紫色半導体レーザ素子40、約650nmの発振波長を有する赤色半導体レーザ素子41及び約780nmの発振波長を有する赤外半導体レーザ素子42が並置して接合されている。それぞれのレーザ光は、前方(A1方向)に平行に出射される。なお、青紫色半導体レーザ素子40、赤色半導体レーザ素子41及び赤外半導体レーザ素子42は、いずれも本発明の「半導体レーザ素子」の一例である。
【0050】
また、半導体レーザ装置210では、4本のリード端子14、15、16、17が凹部10aの底面10bに平行な同一平面上で端子保持部55及び被覆剤71を貫通しており、幅方向(B1方向)にこの順序で配置されている。リード端子14は、金属線80を介して青紫色半導体レーザ素子40と接続され、リード端子15は、金属線81を介してPD90と接続され、リード端子16は、金属線82を介して赤色半導体レーザ素子41と接続され、リード端子17は、金属線83を介して赤外半導体レーザ素子42と接続されている。その他の構成は、半導体レーザ装置200と同様である。
【0051】
半導体レーザ装置210では、3つの異なる波長のレーザ光を出射することができる。半導体レーザ装置210のその他の効果は、半導体レーザ装置200と同様である。
【0052】
(第2実施形態の第2変形例)
次に、第2実施形態の第2変形例による半導体レーザ装置220について説明する。この半導体レーザ装置220のベース10には、図9及び図10に示すように、半導体レーザ装置200の溝状の凹部10aに代えて、前方(A1方向)及び後方(A2方向)に、それぞれ、前面10g及び後面10iが形成された箱状の凹部10aを備えている。凹部10aは、金属板をプレス加工することにより形成される。
【0053】
凹部10aの前面10gの中央には、円状の孔部10hが設けられており、前方から孔部10hを覆うように、矩形状の光透過部21が設けられている。光透過部21の固定及び封止の方法は、半導体レーザ装置100の光透過部21と同様である。
【0054】
図11に示すように、凹部10aの後面10iには、凹部10aの底面10bに平行な同一平面上に貫通孔10c及び10dが形成されている。リード端子14及び15は、貫通孔10c及び10d内を貫通して凹部10a内まで延びて配置されている。リード端子14及び15は、貫通孔10c及び10d内に充填されたエポキシ樹脂からなる接着剤50及び51によって電気的に絶縁された状態で保持されている。貫通孔10c及び10dの凹部10a内側の開口部には、接着剤50及び51を覆うようにEVOH樹脂からからなる被覆剤70及び71が形成されている。なお、孔部10h及び貫通孔10c、11dは、本発明の「開口部」の一例である。
【0055】
ベース10上面の取付部10eは、凹部10aを囲む枠状に形成されており、取付部10eの後方には、リード端子13が一体的に形成されている。封止部材20は、被覆剤74を介して取付部10eの上面と接合されている。また、封止部材20の側面及びベース10の取付部10eの側面には、エポキシ樹脂からなる接着剤54が形成されており、これにより、封止部材20とベース10とが接合されている。半導体レーザ装置220のその他の構成は、半導体レーザ装置200と同様である。
【0056】
ここで、半導体レーザ装置220では、ベース10と封止部材20との関係においては、一方が本発明の「第1の部材」、他方が本発明の「第2の部材」の一例である。また、リード端子14、15及び光透過部21と、ベース10との関係においては、リード端子14、15及び光透過部21が本発明の「第1の部材」の一例、ベース10が本発明の「第2の部材」の一例となる。
【0057】
半導体レーザ装置220では、光透過部21及び封止部材20についても接着剤53及び54によってベース10と接合されているので、より強固に光透過部21及び封止部材20が固定されており、信頼性が高い。また、被覆剤73及び74によって、封止空間31内からみて、上記接着剤53及び54が覆われているので、接着剤53及び54に低分子シロキサンや揮発性の樹脂成分が含まれている場合にも、それらが封止空間31内に侵入することを抑制することができる。
【0058】
半導体レーザ装置220のその他の効果は、半導体レーザ装置200と同様である。
【0059】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による光ピックアップ装置300について説明する。なお、光ピックアップ装置300は、本発明の「光装置」の一例である。
【0060】
光ピックアップ装置300は、図12に示すように、第2実施形態の第1変形例による半導体レーザ装置210と、半導体レーザ装置210から出射されたレーザ光を調整する光学系320と、レーザ光を受光する光検出部330とを備えている。
【0061】
光学系320は、偏光ビームスプリッタ(PBS)321、コリメータレンズ322、ビームエキスパンダ323、λ/4板324、対物レンズ325、シリンドリカルレンズ326及び光軸補正素子327を有している。
【0062】
PBS321は、半導体レーザ装置210から出射されるレーザ光を全透過するとともに、光ディスク340から帰還するレーザ光を全反射する。コリメータレンズ322は、PBS321を透過した半導体レーザ装置210からのレーザ光を平行光に変換する。ビームエキスパンダ323は、凹レンズ、凸レンズ及びアクチュエータ(図示せず)から構成されている。アクチュエータは後述するサーボ回路からのサーボ信号に応じて、凹レンズ及び凸レンズの距離を変化させることにより、半導体レーザ装置210から出射されたレーザ光の波面状態を補正する機能を有している。
【0063】
λ/4板324は、コリメータレンズ322によって略平行光に変換された直線偏光のレーザ光を円偏光に変換する。また、λ/4板324は光ディスク340から帰還する円偏光のレーザ光を直線偏光に変換する。この場合の直線偏光の偏光方向は、半導体レーザ装置210から出射されるレーザ光の直線偏光の方向に直交する。これにより、光ディスク340から帰還するレーザ光は、PBS321によって略全反射される。対物レンズ325は、λ/4板324を透過したレーザ光を光ディスク340の表面(記録層)上に収束させる。なお、対物レンズ325は、対物レンズアクチュエータ(図示せず)により、後述するサーボ回路からのサーボ信号(トラッキングサーボ信号、フォーカスサーボ信号及びチルトサーボ信号)に応じて、フォーカス方向、トラッキング方向及びチルト方向に移動可能にされている。
【0064】
PBS321により全反射されるレーザ光の光軸に沿うように、シリンドリカルレンズ326、光軸補正素子327及び光検出部330が配置されている。シリンドリカルレンズ326は、入射されるレーザ光に非点収差作用を付与する。光軸補正素子327は、回折格子により構成されており、シリンドリカルレンズ326を透過した青紫色、赤色及び赤外の各レーザ光の0次回折光のスポットが後述する光検出部330の検出領域上で一致するように配置されている。
【0065】
光検出部330は、受光したレーザ光の強度分布に基づいて再生信号を出力する。ここで、光検出部330は再生信号とともに、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びチルトエラー信号が得られるように所定のパターンの検出領域を有する。このようにして、半導体レーザ装置210を備えた光ピックアップ装置300が構成される。
【0066】
この光ピックアップ装置300では、半導体レーザ装置210内に封止されている青紫色半導体レーザ素子40、赤色半導体レーザ素子41及び赤外半導体レーザ素子42から、青紫色、赤色及び赤外のレーザ光を独立的に出射される。半導体レーザ装置210から出射されたレーザ光は、上記のように、PBS321、コリメータレンズ322、ビームエキスパンダ323、λ/4板324、対物レンズ325、シリンドリカルレンズ326及び光軸補正素子327により調整された後、光検出部330の検出領域上に照射される。
【0067】
ここで、光ディスク340に記録されている情報を再生する場合には、光ディスク340の種類に応じて選択された半導体レーザ素子40(41、42)から出射されるレーザパワーが一定になるように制御しながら、光ディスク340の記録層にレーザ光を照射するとともに、光検出部330から出力される再生信号を得ることができる。また、同時に出力されるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びチルトエラー信号により、ビームエキスパンダ323のアクチュエータと対物レンズ325を駆動する対物レンズアクチュエータとを、それぞれ、フィードバック制御することができる。
【0068】
また、光ディスク340に情報を記録する場合には、光ディスク340の種類に応じて選択された半導体レーザ素子40(41、42)から出射されるレーザパワーを記録すべき情報に基づいて制御しながら、光ディスク340にレーザ光を照射する。これにより、光ディスク340の記録層に情報を記録することができる。また、上記同様、光検出部330から出力されるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びチルトエラー信号により、ビームエキスパンダ323のアクチュエータと対物レンズ325を駆動する対物レンズアクチュエータとを、それぞれ、フィードバック制御することができる。
【0069】
このようにして、半導体レーザ装置210を備えた光ピックアップ装置300を用いて、光ディスク340への記録及び再生を行うことができる。
【0070】
光ピックアップ装置300では、上記半導体レーザ装置210を備えているので、低コストで、長時間の使用にも耐え得る信頼性の高い光ピックアップ装置300を得ることができる。光ピックアップ装置300のその他の効果については、半導体レーザ装置210と同様である。
【0071】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0072】
たとえば、半導体レーザ装置100では、シリコン樹脂60及び61は、接着剤50及び51と被覆剤70及び71との間に形成されていたが、シリコン樹脂60及び61はなくてもよい。また、シリコン樹脂60及び61が形成されていた領域に隙間があってもよい。あるいは、シリコン樹脂60及び61が、貫通孔11c及び11dの後面11b側の開口部(パッケージ30の外側)に形成されていてもよい。これらは、他の部材が接合されている接合領域においても同様である。また、シリコン樹脂に代えて、たとえば、ゴム等の他の樹脂材料からなり、接着剤50、51より大きな弾性を有する樹脂を用いることができる。
【0073】
また、半導体レーザ装置の全ての部材の接合部を接着剤で接合する必要はなく、一部の接合を従来からある抵抗溶接やコバールガラスによるハーメッチックシールにより接合してもよい。また、半導体レーザ装置200及び210において、光透過部21及び封止部材20の接合を被覆剤73及び74だけで行っているが、半導体レーザ装置220と同様に、接着剤53及び54を併用してもよい。
【0074】
また、接着剤としてエポキシ樹脂以外の熱硬化性あるいは光硬化性の材料を用いることができる。ここで、パッケージ内への水蒸気の浸入を防止するために、接着剤には透湿度が小さい材料を使用したり、シリカ粒子等の無機系のバインダを混入したりすることが好ましい。さらに、接着剤の表面にSiO、Al等の酸化膜やAu、Ni、Cr等の金属膜をガスバリア膜として形成することがより好ましい。これにより、EVOH樹脂が吸湿し、ガスバリア性が低下することを防止することができる。
【0075】
また、半導体レーザ素子として、出射光の波長が上記の波長に限られる必要はなく、また、異なる半導体レーザ素子が封止された半導体レーザ装置210においても、別の波長の半導体レーザ装置を組み合わせて封止してもよい。たとえば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3波長のレーザを選択することにより、RGB3波長レーザ装置を構成することができ、さらにこれを搭載する光装置として、プロジェクタ装置やディスプレイ装置を構成することもできる。
【0076】
また、ベース、リード端子、封止部材の材料としては、上記材料以外にも、Al、Cu、Sn、Ni、ステンレス、Mg等の合金等を用いることもできる。また、封止部材については、Niメッキした樹脂(例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、液晶ポリマー等)を用いてもよい。これにより、さらに低コストに封止部材を製造することができる。
【0077】
また、光透過部の材料についても、上記材料以外にも、他の種類のガラスや透光性の材料を用いることができる。なお、光透過部の表面には、Al、SiO、ZrO等の金属酸化膜(誘電体膜)を単層又は積層して形成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 ベース
13、14、15 リード端子
20 封止部材
21 光透過部
30 パッケージ
31 封止空間
40 青紫色半導体レーザ素子(半導体レーザ素子)
50、51、52、53、54 接着剤
60 シリコン樹脂
70、71、72、73、74 被覆剤
80、81 金属線
90 PD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に封止空間を有するパッケージと、
前記封止空間内に配置された半導体レーザ素子とを備え、
前記パッケージは、互いに接着剤で接合された第1の部材及び第2の部材を有し、
前記封止空間内の前記第1の部材及び前記第2の部材の接合領域上には、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる被覆剤が形成されており、
前記被覆剤により前記接着剤が覆われている、半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記接着剤と前記被覆剤との間に前記接着剤より大きな弾性を有する樹脂が配置されており、
前記被覆剤により前記樹脂が覆われている、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記第1の部材と前記第2の部材は、異なる材料から構成されている、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記第1の部材は、透光性を有するとともに、前記第2の部材の開口部に接合されており、
前記半導体レーザ素子から出射されるレーザ光は、前記第1の部材を透過して前記パッケージの外部に出射される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記第1の部材は、導電性を有するとともに、前記第2の部材の開口部に接合されており、
前記第1の部材は、前記第2の部材と電気的に絶縁された状態で前記パッケージの外部から前記封止空間内まで延びて配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
内部に封止空間を有するパッケージと、前記封止空間内に配置された半導体レーザ素子とを含む半導体レーザ装置と、
前記半導体レーザ素子の出射光を制御する光学系とを備え、
前記パッケージは、互いに接着剤で接合された第1の部材及び第2の部材を有し、
前記封止空間内の前記第1の部材及び前記第2の部材の接合領域上には、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる被覆剤が形成されており、
前記被覆剤により前記接着剤が覆われている、光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−60039(P2012−60039A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203861(P2010−203861)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】