説明

半導体基板洗浄生産管理システム

【課題】複数のバッチ式洗浄処理槽を有する洗浄処理装置の洗浄処理効率を向上させることができる半導体基板洗浄生産管理システムを提供する。
【解決手段】洗浄管理装置2は、洗浄処理装置1で処理予定の複数の仕掛かりロットについて仕掛かりロット情報を取得するとともに、その時点での洗浄処理装置1の装置稼動情報を取得する検知部21を備える。シミュレーション部22は、検知部21が取得した情報に基づいて洗浄処理装置1において各仕掛かりロットのいずれかに対する洗浄処理を開始する場合の、当該仕掛かりロットの各洗浄処理槽4への割り当てをシミュレーションし、当該シミュレーション結果に基づいて仕掛かりロットの処理完了時間または不処理時間を仕掛かりロットごとに算出する。処理順決定部23は、各仕掛かりロットの処理完了時間または不処理時間が最短の仕掛かりロットを次処理ロットに決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板洗浄生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の生産ラインでは、薬液を用いて半導体基板(以下、ウェハと記載する。)を洗浄・エッチングする半導体基板洗浄装置が使用されている。このような半導体基板洗浄装置として、複数枚のウェハを一括して処理するバッチ式の洗浄装置が知られている。バッチ式の半導体基板洗浄装置は各種薬液を貯留する複数の処理槽を有し、複数の処理シーケンス(以下、処理レシピと記載する。)のそれぞれに応じて浸漬する処理槽を切り替えて、複数種の洗浄処理を実施する。生産ラインにおいて、当該半導体基板洗浄装置には、処理対象のウェハ群(以下、ロットと記載する。)がランダムに仕掛かり、仕掛かり順にそのロットに応じた洗浄処理が実行されている。
【0003】
一方、半導体装置等の生産ラインでは、当該生産ラインを構成する各半導体基板処理装置において、ロットの無駄な停滞を発生させないことが要求される。しかしながら、当該生産ラインには多様な半導体基板処理装置が属しており、その処理能力も半導体基板処理装置種により大きく異なっている。そのため、各半導体基板処理装置において、単純に仕掛かり順のみでロットを処理すると、後続の処理を実行する半導体基板処理装置において、処理能力を超える数のロットが進行する状況が発生し、無駄な停滞が発生する可能性がある。
【0004】
そのため、従来技術では、複数の次工程を有する所定工程を担当する分岐出力型の半導体基板処理装置において、当該分岐出力型の半導体基板処理装置に複数のロットが仕掛かっている場合に、次工程を担当する各々の半導体基板処理装置の余裕度を判断し、当該余裕度に応じて当該分岐出力型の半導体基板処理装置で処理するロットを決定するようにした生産管理装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−145021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、近年のバッチ式半導体基板洗浄装置は複数の処理槽を有し、各ロットは適用される処理レシピに応じて異なる処理槽に順に浸漬される。各処理槽はフィルタや循環ポンプ等が介設された薬液循環路を備えており、各処理槽に貯留された薬液は当該薬液循環路を常時循環することで薬液中のパーティクル等の異物が除去され清浄度が維持される。また、薬液の機能低下等、薬液循環路の循環により回復できない薬液劣化については、処理槽内の薬液を交換することで対処している。このような薬液交換は、定期的あるいは不定期に実施され、薬液交換が実施されている間はその処理槽での処理は不可能になる。
【0007】
このようなバッチ式半導体基板洗浄装置では、仕掛かり順にロットを処理すると、薬液交換により洗浄装置内で待機が発生したり、未使用の処理槽が生じたりすることがあり、効率的な洗浄処理が実施されているとはいえない。また、上記特許文献1記載の従来技術は、次工程を担当する各々の半導体基板処理装置の余裕度が特定の条件を満足する場合に例外的な動作をするものではあるが、基本的には、先入れ先出しの動作仕様に従って、仕掛かり順にロットを処理している。そのため、当該技術を適用した場合であっても、洗浄処理の効率化には限界がある。すなわち、複数の洗浄処理槽を有する洗浄処理装置において、複数の仕掛かりロットが存在し、かつ仕掛かりロットごとに処理レシピが異なるという条件の下で各ロットを洗浄処理する場合、各ロットの洗浄処理を効率的に行うことは極めて困難である。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであって、複数の洗浄処理槽を有する洗浄処理装置において、従来に比べて効率的な洗浄処理を行うことができる半導体基板洗浄生産管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、バッチ式の洗浄処理槽を複数有する洗浄処理装置における洗浄処理の進行を管理する半導体基板洗浄生産管理システムを前提としている。そして、本発明に係る半導体基板洗浄生産管理システムは、洗浄処理装置で処理予定の複数の仕掛かりロットについて、各仕掛かりロットを特定する情報と、各仕掛かりロットに対応付けられた、前記洗浄処理装置における洗浄処理手順を示す処理レシピを特定する情報とを含む仕掛かりロット情報を取得する検知部と、取得された仕掛かりロット情報に基づいて、洗浄処理装置において各仕掛かりロットのいずれかに対する洗浄処理を開始する場合の、当該仕掛かりロットの処理時間に対応するデータを仕掛かりロットごとに取得する手段と、仕掛かりロットごとに取得された、処理時間に対応するデータに基づいて、複数の仕掛かりロットの洗浄処理の開始順序を決定する処理順決定部とを備える。
【0010】
本発明における第1の態様では、仕掛かりロットの処理時間に対応するデータを取得する手段がシミュレーション部として構成される。この態様では、検知部は、仕掛かりロット情報取得時点での前記洗浄処理装置におけるロットの処理状況を示す装置稼動情報をさらに取得する。シミュレーション部は、前記取得された仕掛かりロット情報および取得された装置稼動情報に基づいて、前記洗浄処理装置において前記各仕掛かりロットのいずれかに対する洗浄処理を開始する場合の、当該仕掛かりロットの各洗浄処理槽への割り当てをシミュレーションする。そして、当該シミュレーション結果に基づいて、仕掛かりロットの洗浄処理が完了する処理完了時間、または当該洗浄処理の過程で当該仕掛かりロットが処理待ちになる期間である不処理時間を仕掛かりロットの処理時間に対応するデータとして、仕掛かりロットごとに取得する。また、処理順決定部は、取得された処理完了時間が最短の仕掛かりロット、または取得された不処理時間が最短の仕掛かりロットを次処理ロットに決定する。
【0011】
また、本発明における第2の態様では、仕掛かりロットの処理時間に対応するデータを取得する手段がデータ抽出部として構成される。この態様では、半導体基板洗浄生産管理システムは、処理レシピの情報と、当該処理レシピに従って洗浄処理装置においてロットの洗浄処理を実施した場合に当該ロットの洗浄処理完了までに要する処理時間とを対応付けて、予め登録する記憶部をさらに備える。そして、データ抽出部は、仕掛かりロットの処理時間に対応するデータとして、検知部により取得された仕掛かりロット情報に含まれる処理レシピ情報に対応付けて記憶部に予め登録された処理時間を取得する。そして、処理順決定部は、取得された各仕掛かりロットの処理時間が最短の仕掛かりロットを次処理ロットに決定する。
【0012】
さらに、本発明における第3の態様では、仕掛かりロットの処理時間に対応するデータを取得する手段が未使用槽抽出部として構成される。この態様では、検知部は、仕掛かりロット情報取得時点での前記洗浄処理装置におけるロットの処理状況を示す装置稼動情報をさらに取得する。未使用槽抽出部は、前記仕掛かりロットの処理時間に対応するデータとして、各仕掛かりロット情報に対応付けられた処理レシピにおいて最初に使用される洗浄処理槽を示す情報および取得された装置稼動情報に含まれる未使用の洗浄処理槽を示す情報を取得する。そして、処理順決定部は、最初に使用される洗浄処理槽が未使用の洗浄処理槽と一致する仕掛かりロットを次処理ロットに決定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、処理完了時間が短い、または不処理時間が短い仕掛かりロットから順に洗浄処理が実施されるので、バッチ式の洗浄処理槽を複数有する洗浄処理装置において、仕掛かりロットが複数存在し、かつ仕掛かりロットごとに処理レシピが異なるという条件下であっても、洗浄処理装置の洗浄処理効率を向上させることができる。これに伴い、洗浄処理槽の内、定期的に薬液交換が実施される洗浄処理槽における薬液の使用効率も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体基板洗浄生産管理システムを示す概略構成図
【図2】本発明の第1の実施形態における洗浄処理装置の稼働状況と、当該稼働状況に応じて決定される仕掛かりロットの洗浄動作との関係を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態における洗浄管理装置のシミュレーション結果の一例を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態における半導体基板洗浄生産管理システムを示す概略構成図
【図5】本発明の第3の実施形態における半導体基板洗浄生産管理システムを示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における半導体基板洗浄生産管理システムを示す概略構成図である。本実施形態の半導体基板洗浄生産管理システムは、洗浄処理を実施する洗浄処理装置1と、洗浄処理装置1におけるロットの洗浄処理を管理する洗浄管理装置2と、洗浄処理装置1および洗浄管理装置2に対し、各種の制御指令を出力する上位ホストコンピュータである工場生産管理装置3(以下、MES3と表記する)とから構成されている。
【0016】
洗浄処理装置1は、複数の処理槽を備える。本実施形態では、洗浄処理装置1は、処理槽として、単一の乾燥処理槽5と複数の洗浄処理槽4とを備える。また、洗浄処理槽4として、3つの循環処理槽41a、41b、41cと、3つのワンバス処理槽42a、42b、42cとを備える。ここで、循環処理槽41a、41b、41cは、処理槽内に特定種の薬液を貯留する洗浄処理槽である。当該薬液は、フィルタや循環ポンプ等を備えた循環路を常時循環するとともに、所定のタイミングで薬液交換が自動的に実施される。また、ワンバス処理槽42a、42b、42cは、1の処理槽において複数種の薬液を、順に、完全に置換して洗浄を行う洗浄処理槽である。なお、本実施形態では、2つの循環処理槽41b、41cは同種の薬液を貯留しており、同一の処理を実行するように構成されている。また、2つのワンバス処理槽42b、42cも同一の処理を実行するように構成されている。すなわち、循環処理槽41b、41cの組、ワンバス処理槽42b、42cの組は平行槽と称され、いずれの処理槽においても同一の処理レシピが実行可能になっている。
【0017】
また、図示を省略しているが、洗浄処理装置1には、洗浄処理前の各ロットを搬入するためのローダ部および洗浄処理後のロットを装置外に搬出するためのアンローダ部が設けられている。例えば、図1に示すように、各処理槽が、循環処理槽41a、ワンバス処理槽42a、循環処理槽41b、ワンバス処理槽42b、循環処理槽41c、ワンバス処理槽42c、乾燥処理槽5の順で直列に配置されている場合、ローダ部は循環処理槽41aの上流側に配置され、アンローダ部は乾燥処理槽5の下流側に配置される。ローダ部では、生産ラインを構成する各生産装置間を搬送される際にロットが格納されている収容容器(キャリア)からウェハが取り出され、洗浄処理用保持具に移載される。本実施形態では、洗浄処理装置1はバッチ式の処理装置であるため、複数枚のウェハがバッチ単位で洗浄処理用保持具に保持される。本実施形態では、バッチサイズ>ロットサイズである。このようにして洗浄処理用保持具にバッチ単位で保持されたウェハが各処理槽へ搬入され、各処理槽において所定の処理に付される。また、アンローダ部では、洗浄処理用保持具からウェハが取り出され、収容容器(キャリア)へ移載される。さらに、本実施形態では、洗浄処理装置1は、多数のロットが仕掛かった場合に、ローダ部への設置待ちの仕掛かりロットを収容するストッカを備えている。すなわち、洗浄処理装置1に洗浄対象ロットの投入指示があると、洗浄処理装置1が備える図示しない搬送装置が指定された仕掛かりロットをストッカから取り出し、当該ロットをローダ部へ設置する。本実施形態では、ローダ部およびアンローダ部には、それぞれ1の収容容器が設置できる構成になっている。なお、図1に例示する洗浄処理装置1の構成(処理槽の種類や数)は、あくまで一例であって、本発明は当該構成に限定されない。
【0018】
一方、洗浄管理装置2は、検知部21、シミュレーション部22および処理順決定部23を備える。検知部21、シミュレーション部22および処理順決定部23は、例えば、専用の演算回路や、プロセッサとRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリとを備えたハードウエア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することができる。
【0019】
検知部21は、MES3から、洗浄処理装置1において処理されるべき各仕掛かりロットに対応する処理レシピを含む仕掛かりロット情報を検知する。そして、洗浄処理装置1における処理順(投入順)が決定されていない仕掛かりロットを検出すると、検知部21は、洗浄処理装置1から、その時点での洗浄処理装置1におけるロットの処理状況を示す装置稼動情報を検知する。特に限定されないが、検知部21は、例えば、所定の時間周期でMES3に対し、仕掛かりロット情報を要求する構成を採用することができる。なお、本実施形態では、仕掛かりロット情報は、ロットを特定するための情報である、各ロットに一意に付されたロットID(ロット名)と、洗浄処理装置1において適用される処理レシピを特定するための情報である、各処理レシピに一意に付されたレシピID(レシピ名)とにより構成されている。
【0020】
シミュレーション部22は、検知部21が検知した仕掛かりロット情報および装置稼動情報に基づいて、各仕掛かりロットのいずれかを次処理ロットとして洗浄処理装置1に投入する場合に、当該ロットの洗浄処理に要する処理時間を求めるシミュレーションを実行し、各仕掛かりロットの洗浄処理完了時間を個別に算出する。
【0021】
処理順決定部23は、仕掛かりロットの洗浄処理開始順序を、シミュレーション部22が算出した処理完了時間が短い順(早い順)に決定し、決定した各仕掛かりロットの処理開始順序をMES3に送出する。すなわち、処理完了時間が最短の仕掛かりロットが次処理ロットに決定される。当該浄処理開始順序を受信したMES3は、当該処理開始順序に従った各仕掛かりロットの洗浄処理実行を洗浄処理装置1に指示する。
【0022】
次に、上記構成を備える半導体基板洗浄生産管理システムが仕掛かりロットを処理する動作を、図2および図3をさらに参照しながら詳細に説明する。ここでは、一例として、2つのロットC、Dが、当該順で、洗浄処理装置1に仕掛かり状態になった場合の処理開始順序の決定処理を説明する。
【0023】
図2は本実施形態の洗浄処理装置1の稼働状況と、当該稼働状況に応じて決定される仕掛かりロットの洗浄動作(決定される洗浄処理指示)との関係を示す図である。図2(a)が洗浄処理装置1の稼働状況であり、図2(b)が当該稼働状況に応じて決定される仕掛かりロットの洗浄動作である。また、図3は、上述の洗浄管理装置2のシミュレーション部22によるシミュレーション結果の一例を示す図である。図3(a)は、ロットCを次処理ロットとして先に処理する場合のシミュレーション結果を示し、図3(b)は、ロットDを先に処理する場合のシミュレーション結果を示している。図3(a)、(b)において、横軸は時間に対応し、縦軸は各時刻に各ロットが滞在する洗浄処理装置1の処理槽(位置)を示している。
【0024】
なお、図2、図3では、循環処理槽41a、41b、41cを「T1」、「T3」、「T5」、ワンバス処理槽42a、42b、42cを「T2」、「T4」、「T6」、乾燥処理槽5を「LPD」、ロード部およびアンロード部を「LD/ULD」でそれぞれ示している。また、特に限定されないが、ここでは、循環処理槽「T1」はSPM(sulfuric acid-hydrogen peroxide mixture)洗浄を、ワンバス処理槽「T2」は水洗、APM(ammonium hydroxide-hydrogen peroxide mixture)洗浄およびDHF(diluted hydrofluoric acid)洗浄を、循環処理槽「T3」、「T5」はAPM洗浄を、ワンバス処理槽「T4」、「T6」は水洗、APM洗浄、HPM(hydrochloric acid-hydrogen peroxide mixture)洗浄およびDHF洗浄を、それぞれ実施可能である。また、乾燥処理槽「LPD」は水洗、乾燥およびDHF洗浄を実施可能である。
【0025】
また、ロットCの処理レシピは「レシピa」であり、ロットDの処理レシピは「レシピb」である。「レシピa」は、循環処理槽「T1」、ワンバス処理槽「T2」、乾燥処理槽「LPD」において順に処理が実行される処理レシピである。「レシピb」は、循環処理槽「T3(あるいはT5)」、ワンバス処理槽「T4(あるいはT6)」、乾燥処理槽「LPD」において順に処理が実行される処理レシピである。なお、本事例では、循環処理槽「T1」での処理(SPM洗浄)後の水洗がワンバス処理槽「T2」で実施され、循環処理槽「T3(あるいはT5)」での処理(APM洗浄)後の水洗がワンバス処理槽「T4(あるいはT6)」で実施される。したがって、循環処理槽「T1」とワンバス処理槽「T2」との間、および循環処理槽「T3(あるいはT5)」とワンバス処理槽「T4(あるいはT6)」との間でウェハが次処理槽への搬入待ちになると、水洗が実施されないためにSPMまたはAPMがウェハ表面に残留し続け、ウェハ表面がエッチング過多になる可能性がある。そのため、本実施形態では、水洗が実施されるワンバス処理槽が処理中である場合には、対応する循環処理槽へのウェハ搬入が実施されない構成になっている。
【0026】
さらに、ロットC、Dが新たに仕掛かり状態になった際、図2(a)に示すように、洗浄処理装置1において、処理レシピが「レシピa」であるロットBが循環処理槽「T1」で処理中であり、処理レシピが「レシピb」であるロットAが循環処理槽「T3」で処理中であるとする。加えて、図3(a)、(b)に示すように、循環処理槽「T5」には処理中のロットは存在しないが、薬液交換が一定時間の経過後(時刻t2)に開始される予定であるとする。なお、循環処理槽では、一定周期あるいは一定量のウェハが処理された際等の所定のタイミングで薬液交換が実施されるが、当該薬液交換は事前に実施時期が計画される。当該計画は洗浄処理装置1(あるいは、MES3)から取得可能である。
【0027】
さて、本実施形態では、まず、洗浄管理装置2の検知部21が、MES3から仕掛かりロット情報を収集する。本事例では、検知部21は、洗浄処理装置1に対する仕掛かりロットとして、「レシピa」で処理されるロットCおよび「レシピb」で処理されるロットDを検知する(図3 時刻t1)。このとき、検知部21は、その時点での洗浄処理装置1の稼働状況を示す設備稼働情報を収集する。ここで、洗浄処理装置1の設備稼働情報とは、その時点における、洗浄処理装置1内に滞在しているロットの処理レシピ、当該ロットの洗浄処理装置1内の所在および進行予定、各処理槽の処理状態および循環処理槽の薬液交換計画を少なくとも含む情報である。上記事例では、循環処理槽「T1」においてロットBが処理中であり、かつ以降でワンバス処理槽「T2」および乾燥処理槽「LPD」において順に処理が実行される予定であることを検知する。また、循環処理槽「T3」でロットAが処理中であり、かつ以降でワンバス処理槽「T4」および乾燥処理槽「LPD」において順に処理が実行される予定であることを検知する。さらに、ワンバス処理槽「T2」、「T4」、「T6」および循環処理槽「T5」は、その時点で使用されていない処理槽であり、循環処理槽「T5」の薬液交換が現在から所定時間の経過後に一定期間にわたって(図3の時刻t2から時刻t4)実施される計画であることを検知する。
【0028】
シミュレーション部22は、検知部21が検知した各情報に基づいて洗浄処理装置1における各洗浄処理槽4への仕掛かりロットの割り当てをシミュレーションし、各仕掛かりロットを次処理ロットとして洗浄処理する場合の当該仕掛かりロットの洗浄処理が完了する時間を求める。この事例では、シミュレーション部22は、仕掛かりロットCの洗浄処理を先に実施する場合の仕掛かりロットCの洗浄処理完了時間および仕掛かりロットDの洗浄処理を先に実施する場合の仕掛かりロットDの洗浄処理完了時間を求める。
【0029】
上述のように、ロットCの処理レシピは「レシピa」であり、ロットCは、循環処理槽「T1」、ワンバス処理槽「T2」、乾燥処理槽「LPD」において順に処理される。この場合、図3(a)から理解できるように、ロットCの処理を時刻t1に直ちに開始(洗浄処理装置1へ投入)すると、同じ処理レシピ「レシピa」により循環処理槽「T1」において現在処理中のロットBと処理が重複することになる。また、上述のように、循環処理槽「T1」へのロットCの搬入は、ワンバス処理槽「T2」におけるロットBの処理完了まで禁止されることになる。シミュレーション部22は、このような処理の重複を回避して、ロットCの処理スケジュール(進行計画)を立案するシミュレーションを実行し、ワンバス処理槽「T2」におけるロットBの処理が完了するまでロットCの処理を開始せずにローダ部で待機状態になり、ロットCに対する処理が進行しない不処理時間Pを設けたシミュレーション結果を得る。この場合、ロットCの処理完了時間は、図3(a)に示すように時刻t6になる。
【0030】
一方、ロットDの処理レシピは「レシピb」であり、ロットDは、循環処理槽「T3」または「T5」、ワンバス処理槽「T4」または「T6」、乾燥処理槽「LPD」において順に処理される。この場合、図3(b)から理解できるように、同じ処理レシピ「レシピb」により現在処理中のロットAは、循環処理槽「T3」を使用中であり、引き続きワンバス処理槽「T4」を使用予定である。しかしながら、循環処理槽「T3」およびワンバス処理槽「T4」の平行槽である循環処理槽「T5」とワンバス処理槽「T6」は使用予定がない。上述のように、シミュレーション部22は、処理の重複を回避して、ロットDの処理スケジュールを立案するシミュレーションを実行し、ロットDについて、未使用の循環処理槽「T5」およびワンバス処理槽「T6」を使用するシミュレーション結果を得る。この場合、ロットDの処理完了時間は、図3(b)に示すように時刻t5(時刻t5<t6)になる。ロットDに対するシミュレーションでは、ワンバス処理槽「T6」における処理が完了した時点(時刻t3)で、乾燥処理槽「LPD」においてロットAに対する処理が実行されている。そのため、乾燥処理槽「LPD」におけるロットAの処理が完了するまでロットDの処理を開始せずにワンバス処理槽「T6」で待機状態になり、ロットDに対する処理が進行しない不処理時間Qが設けられている。
【0031】
なお、以上のシミュレーションでは、循環処理槽「T5」における薬液交換期間(時刻t2からt4)も、ロットに対する処理と同様に重複が許されない処理として扱われるため、薬液交換中の循環処理槽「T5」にロットが割り当てられることはない。
【0032】
シミュレーション部22は、以上のようにして算出した仕掛かりロットC、Dについて算出した処理完了時間(時刻t5、t6)を処理順決定部23に送出する。当該処理完了時間を受信した処理順決定部23は、ロットCとロットDの各処理完了時間の大小関係を比較する。上述の事例では、ロットDを先に処理する場合が処理完了となる時間が短い(t5<t6)ので、処理順決定部23はロットDを先に処理すべきロットとして決定し、MES3に対してロットCよりも先にロットDを洗浄する処理開始順序を送信する。なお、特に限定されないが、本実施形態では、各処理完了時間の大小関係に差がない場合には、処理順決定部23は処理開始順序を仕掛かり順に決定し、その旨をMES3に送信する構成になっている。
【0033】
MES3は、図2(b)に示すように、処理順決定部23で決定された処理開始順序に従った各仕掛かりロットC、Dの洗浄処理の実行を洗浄処理装置1に指示する。その結果、仕掛かりロットC、Dの内、ロットDの洗浄処理が先に洗浄処理装置1において開始される。
【0034】
以上のように、本実施形態では、シミュレーション部22において、洗浄処理装置1で各仕掛かりロットを次処理ロットとして処理する場合に当該ロットの処理に要する処理時間を求めるシミュレーションを実行し、その結果に基づいて各々の仕掛かりロットの処理が完了する処理完了時間を個別に算出する。そして、処理順決定部23が、シミュレーション部22で算出された各処理完了時間が短い方の仕掛かりロットから順に洗浄処理の開始順序を決定する。そのため、各仕掛かりロットを常に最短の時間で洗浄処理することが可能になる。その結果、洗浄処理装置の仕掛かりロットの洗浄処理効率を従来よりも向上させることができる。また、本実施形態では、仕掛かりロットDは、循環処理槽「T5」の薬液を交換する前に処理ができ、薬液を交換する期間中(時刻t2からt4)に処理の待ち時間が発生するなどの無駄がないので、薬液の使用効率も向上することになる。
【0035】
なお、上記実施形態では、シミュレーション部22が算出した処理時間(処理完了時間)に基づいて処理開始順序を決定する構成としたが、シミュレーション部22がシミュレーションの過程で設定する不処理時間(上述の不処理時間P、Q)に基づいて各仕掛かりロットの処理開始順序を決定する構成を採用することもできる。すなわち、処理順決定部23が、シミュレーション部22で算出された各不処理時間が短い方の仕掛かりロットから順に洗浄処理の開始順序を決定してもよい。この場合、不処理時間が最短の仕掛かりロットが次処理ロットに決定される。この構成によっても、洗浄処理装置1における処理対象ロットの待機時間が減少することになるので、仕掛かりロットの洗浄処理効率を従来よりも向上させることが可能である。
【0036】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態における半導体基板洗浄生産管理システムを示す概略構成図である。なお、図4において、図1に示した第1の実施形態の半導体基板洗浄生産管理システムと同様の作用効果を奏する構成要素には図1と同一の符号を付している。
【0037】
本実施形態の半導体基板洗浄生産管理システムは、洗浄管理装置の構成が第1の実施形態の洗浄管理装置2と異なっている。すなわち、本実施形態の洗浄管理装置6は、検知部61、データ抽出部62、処理順決定部63および記憶部64を備える。第1の実施形態と同様に、検知部61、データ抽出部62および処理順決定部63は、例えば、専用の演算回路や、プロセッサとRAMやROM等のメモリとを備えたハードウエア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することができる。また、記憶部64はHDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段により実現することができる。
【0038】
検知部61は、MES3から、洗浄処理装置1において処理されるべき各仕掛かりロットに対応する処理レシピを含む仕掛かりロット情報を検知する。そして、洗浄処理装置1における処理順が決定されていない仕掛かりロットを検出すると、検知部61は、当該仕掛かりロット情報をデータ抽出部62に通知する。第1の実施形態と同様に、検知部61は、例えば、所定の時間周期でMES3に対し、仕掛かりロット情報を要求する構成を採用することができる。なお、仕掛かりロット情報は、ロットIDとレシピIDとにより構成されている。
【0039】
仕掛かりロット情報を受信したデータ抽出部62は、記憶部64から、仕掛かりロット情報に含まれるレシピIDに対応する処理時間を抽出する。記憶部64には、洗浄処理装置1において適用される処理レシピと、その処理レシピに従って洗浄処理装置1でロットの洗浄処理を実施した場合に完了までに要する処理時間とが対応付けられて予め登録されている。すなわち、データ抽出部62は、受信したレシピIDを検索キーとして、記憶部64に格納されている、当該レシピIDに対応する処理時間を抽出する。なお、特に限定されないが、記憶部64に格納される処理時間は、洗浄処理装置1において現実に処理が実行された際の処理時間の実績データ(装置稼動情報)により逐次更新される構成にすることができる。すなわち、検知部61が、例えば、洗浄処理装置1から、実施された処理レシピのレシピIDと、当該レシピIDの実施に要した処理時間を記憶部64に登録する構成にすることができる。この場合、記憶部64には、同一のレシピIDに対して複数の処理時間が対応付けられることになる。この場合、データ抽出部62は、当該複数の処理時間の一部あるいは全部の統計値(平均値や中央値等)を算出し、当該統計値を処理時間として抽出する構成にすることができる。
【0040】
処理順決定部63は、仕掛かりロットの洗浄処理開始順序を、データ抽出部62が抽出した各仕掛かりロットのレシピに対応する処理時間が短い順(早い順)に決定し、決定した各仕掛かりロットの処理開始順序をMES3に送出する。当該浄処理開始順序を受信したMES3は、当該処理開始順序に従った各仕掛かりロットの洗浄処理実行を洗浄処理装置1に指示する。
【0041】
次に、上記構成を備える半導体基板洗浄生産管理システムが仕掛かりロットを処理する動作を説明する。本実施形態においても、洗浄処理装置1の現在の稼働状況は、第1の実施形態(図2)で説明した場合と同一であるとする。すなわち、2つのロットC、Dが、当該順で、洗浄処理装置1に仕掛かり状態になっており、ロットCの処理レシピは「レシピa」であり、ロットDの処理レシピは「レシピb」である。また、ロットC、Dが新たに仕掛かり状態になった際、洗浄処理装置1において、処理レシピが「レシピa」であるロットBが循環処理槽「T1」で処理中であり、処理レシピが「レシピb」であるロットAが循環処理槽「T3」で処理中であるとする。さらに、循環処理槽「T5」には処理中のロットは存在しないが、薬液交換が一定時間の経過後(時刻t2)に開始される予定であるとする。
【0042】
まず、洗浄管理装置6の検知部61は、MES3から仕掛かりロットに関する情報を収集する。この場合、検知部61は、洗浄処理装置1に対する仕掛かりロットとして、「レシピa」で処理されるロットCおよび「レシピb」で処理されるロットDを検知する。
【0043】
データ抽出部62は、記憶部64から、検知部61が取得した仕掛かりロット情報に含まれるレシピIDに対応する処理時間を取得する。例えば、ロットCの処理レシピ「レシピa」に対応する処理時間Tcが60分であり、ロットDの処理レシピ「レシピb」に対応する処理時間Tdが45分であったとする。データ抽出部62は、当該抽出した各仕掛かりロットに対応する処理時間(処理時間Tc、Td)を処理順決定部63に送出する。当該処理時間を受信した処理順決定部63は、ロットCとロットDの各処理時間の大小関係を比較する。上述の事例では、ロットDの処理時間TdがロットCの処理時間Tcよりも時間が短い(Td<Tc)ので、処理順決定部63はロットDを先に処理すべきロットとして決定し、MES3に対してロットCよりも先にロットDを洗浄する処理開始順序を送信する。すなわち、処理時間により表現される処理完了時間が最短の仕掛かりロットが次処理ロットに決定される。なお、特に限定されないが、本実施形態では、各処理時間の大小関係に差がない場合には、処理順決定部63は処理開始順序を仕掛かり順に決定し、その旨をMES3に送信する構成になっている。
【0044】
MES3は、処理順決定部63で決定された処理開始順序に従った各仕掛かりロットC、Dの洗浄処理の実行を洗浄処理装置1に指示する。その結果、仕掛かりロットC、Dの内、ロットDの洗浄処理が先に洗浄処理装置1において開始される。
【0045】
以上のように、本実施形態では、データ抽出部62において、各仕掛かりロットのレシピに対応する処理時間を抽出する。そして、処理順決定部63が、データ抽出部62によって抽出された処理時間が短い方の仕掛かりロットから順に洗浄処理の開始順序を決定する。すなわち、処理時間が最短なロットから優先して処理するようにしているので、洗浄処理装置の洗浄処理効率を従来よりも向上させることができる。
【0046】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態における半導体基板洗浄生産管理システムを示す概略構成図である。なお、図5において、図1に示した第1の実施形態の半導体基板洗浄生産管理システムと同様の作用効果を奏する構成要素には図1と同一の符号を付している。
【0047】
本実施形態の半導体基板洗浄生産管理システムは、洗浄管理装置の構成が第1の実施形態の洗浄管理装置2と異なっている。すなわち、本実施形態の洗浄管理装置7は、検知部71、未使用槽抽出部72および処理順決定部73を備える。第1の実施形態と同様に、検知部71、未使用槽抽出部72および処理順決定部73は、例えば、専用の演算回路や、プロセッサとRAMやROM等のメモリとを備えたハードウエア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することができる。
【0048】
検知部71は、第1の実施形態の検知部21と同様に、MES3から、洗浄処理装置1において処理されるべき各仕掛かりロットに対応する処理レシピを含む仕掛かりロット情報を検知する。そして、洗浄処理装置1における処理順が決定されていない仕掛かりロットを検出すると、検知部71は、洗浄処理装置1から、その時点での洗浄処理装置1におけるロットの処理状況を検知する。第1の実施形態と同様に、検知部71は、例えば、所定の時間周期でMES3に対し、仕掛かりロット情報を要求する構成を採用することができる。なお、仕掛かりロット情報は、ロットIDとレシピIDとにより構成されている。
【0049】
未使用槽抽出部72は、検知部71が検知した仕掛かりロット情報およびロット処理状況に基づいて、洗浄処理装置1が備える処理槽から未使用槽を抽出する。処理順決定部73は、仕掛かりロットの洗浄処理開始順序を、未使用槽抽出部72が抽出した未使用槽を最初に使用する処理レシピが適用される仕掛かりロットを次処理ロットに決定する。なお、同一の未処理槽を最初に使用する仕掛かりロットが複数存在する場合には、処理順決定部73は、最も早く仕掛かりロットになったロットを次処理ロットに決定する。処理順決定部73は、決定した次処理ロットの情報を処理開始順序としてMES3に送出する。当該処理開始順序を受信したMES3は、当該処理開始順序に従った仕掛かりロットの洗浄処理実行を洗浄処理装置1に指示する。
【0050】
次に、上記構成を備える半導体基板洗浄生産管理システムが仕掛かりロットを処理する動作を説明する。本実施形態においても、洗浄処理装置1の現在の稼働状況は、第1の実施形態(図2)で説明した場合と同一であるとする。すなわち、2つのロットC、Dが、当該順で、洗浄処理装置1に仕掛かり状態になっており、ロットCの処理レシピは「レシピa」であり、ロットDの処理レシピは「レシピb」である。また、ロットC、Dが新たに仕掛かり状態になった際、洗浄処理装置1において、処理レシピが「レシピa」であるロットBが循環処理槽「T1」で処理中であり、処理レシピが「レシピb」であるロットAが循環処理槽「T3」で処理中であるとする。さらに、循環処理槽「T5」には処理中のロットは存在しないが、薬液交換が一定時間の経過後(時刻t2)に開始される予定であるとする。
【0051】
まず、洗浄管理装置7の検知部71は、MES3から仕掛かりロットに関する情報を収集する。この場合、検知部71は、洗浄処理装置1に対する仕掛かりロットとして、「レシピa」で処理されるロットCおよび「レシピb」で処理されるロットDを検知する。このとき、検知部71は、その時点での洗浄処理装置1の稼働状況の情報を収集する。ここでは、検知部71は、循環処理槽「T1」においてロットBが処理中であり、かつ以降でワンバス処理槽「T2」および乾燥処理槽「LPD」において順に処理が実行される予定であることを検知する。また、循環処理槽「T3」でロットAが処理中であり、かつ以降でワンバス処理槽「T4」および乾燥処理槽「LPD」において順に処理が実行される予定であることを検知する。さらに、ワンバス処理槽「T2」、「T4」、「T6」および循環処理槽「T5」は、その時点で使用されていない処理槽であり、循環処理槽「T5」の薬液交換が現在から所定時間の経過後に一定期間にわたって実施される計画であることを検知する。
【0052】
未処理槽抽出部72は、検知部71が取得した仕掛かりロット情報に含まれるレシピIDに基づいて、各仕掛かりロットが洗浄処理装置1において最初に投入される処理槽の情報を取得する。上述の例では、処理レシピ「レシピa」が最初に使用する循環処理槽「T1」を、ロットCが最初に投入される処理槽として取得し、処理レシピ「レシピb」が最初に使用する循環処理槽「T3またはT5」を、ロットDが最初に投入される処理槽として取得する。また、未使用槽抽出部72は、検知部71が取得した稼働状況の情報に基づいて、未使用槽として、ワンバス処理槽「T2」、「T4」、「T6」および循環処理槽「T5」を抽出する。未使用槽抽出部72は、抽出した各仕掛かりロットに対応する処理槽および未使用槽を処理順決定部73に送出する。なお、第1の実施形態で説明したように、ワンバス処理槽「T2」、「T4」、「T6」は、循環処理槽「T1」、「T3」、「T5」での処理後の水洗を実施する処理槽であるため、循環処理槽「T1」、「T3」、「T5」が処理中である場合には他のロットを投入できない。したがって、未使用槽抽出部72は、特定の処理槽(ワンバス処理槽「T2」、「T4」、「T6」)を未使用槽として抽出しない構成としてもよい。
【0053】
当該情報を受信した処理順決定部73は、抽出した各仕掛かりロットに対応する処理槽と未使用槽とを比較する。処理順決定部73は仕掛かりロットが最初に使用する処理槽が未使用の洗浄処理槽と一致する仕掛かりロットが最短の不処理時間を有するとみなして当該仕掛かりロットを次処理ロットに決定する。上述の事例では、ロットDが最初に投入される処理槽である循環処理槽「T5」と、未使用槽「T5」とが一致するので、処理順決定部73はロットDを次に処理すべきロットとして処理開始順序を決定し、MES3に対してロットCよりも先にロットDを洗浄する処理開始順序を送信する。
【0054】
MES3は、処理順決定部73で決定された処理開始順序に従った各仕掛かりロットC、Dの洗浄処理の実行を洗浄処理装置1に指示する。その結果、仕掛かりロットC、Dの内、ロットDの洗浄処理が先に洗浄処理装置1において開始される。
【0055】
以上のように、本実施形態では、未使用槽抽出部72において、各仕掛かりロットが最初に使用する処理槽と、未使用槽を抽出する。そして、処理順決定部73が、未使用槽抽出部72によって抽出された未使用槽を最初に使用する仕掛かりロットを次処理ロットとして、仕掛かりロットの洗浄処理開始順序を決定する。すなわち、洗浄処理装置において未使用の処理槽を最初に使用するロットから優先して処理するようにしているので、洗浄処理装置の洗浄処理効率を従来よりも向上させることができる。
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、バッチ式処理槽を複数有する洗浄処理装置において、洗浄処理装置の仕掛かりロットの洗浄処理効率を従来よりも向上させることができる。また、洗浄処理効率の向上に伴い、循環処理槽の不使用期間が減少するため、循環処理槽における薬液の使用効率を向上することになる。なお、上記各実施形態では、本発明の理解を容易にするために、洗浄処理装置1に仕掛かるロットとして、「レシピa」で処理されるロットCと「レシピb」で処理されるロットDとが存在し、その際、「レシピa」で処理さるロットBと、「レシピb」で処理されるロットAが既に処理開始中である場合を例にとって説明したが、本発明は、このような事例に限定されるものではなく任意の事例において適用可能である。
【0057】
なお、本発明は以上で説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変形および応用が可能である。例えば、上記実施形態では、洗浄処理装置と洗浄管理装置とを個別の装置である事例を説明したが、単一の装置として構成された場合であっても同一の効果を奏することはいうまでもない。また、上記各実施形態は、適宜組み合わせて実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、洗浄処理装置における洗浄処理を効率的に実施でき、生産性を向上できるという効果を有し、半導体基板洗浄生産管理システムとして有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 洗浄処理装置
2、6、7 洗浄管理装置
21、61、71 検知部
22 シミュレーション部
23、63、73 処理順決定部
62 データ抽出部
64 記憶部
72 未使用抽出部
3 工場生産管理装置(MES)
4 洗浄処理槽
5 乾燥処理槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチ式の洗浄処理槽を複数有する洗浄処理装置における洗浄処理の進行を管理する半導体基板洗浄生産管理システムであって、
前記洗浄処理装置で処理予定の複数の仕掛かりロットについて、各仕掛かりロットを特定する情報と、各仕掛かりロットに対応付けられた、前記洗浄処理装置における洗浄処理手順を示す処理レシピを特定する情報とを含む仕掛かりロット情報を取得する手段と、
取得された仕掛かりロット情報に基づいて、前記洗浄処理装置において前記各仕掛かりロットのいずれかに対する洗浄処理を開始する場合の、当該仕掛かりロットの処理時間に対応するデータを仕掛かりロットごとに取得する手段と、
前記仕掛かりロットごとに取得された、前記処理時間に対応するデータに基づいて、前記複数の仕掛かりロットの洗浄処理の開始順序を決定する手段と、
を備えることを特徴とする、半導体基板洗浄生産管理システム。
【請求項2】
前記仕掛かりロット情報を取得する手段が、仕掛かりロット情報取得時点での前記洗浄処理装置におけるロットの処理状況を示す装置稼動情報をさらに取得し、
前記仕掛かりロットの処理時間に対応するデータを取得する手段が、前記仕掛かりロットの処理時間に対応するデータとして、前記取得された仕掛かりロット情報および取得された装置稼動情報に基づいて、前記洗浄処理装置において前記各仕掛かりロットのいずれかに対する洗浄処理を開始する場合の、当該仕掛かりロットの各洗浄処理槽への割り当てをシミュレーションし、当該シミュレーション結果に基づいて仕掛かりロットの洗浄処理が完了する処理完了時間、または当該洗浄処理の過程で当該仕掛かりロットが処理待ちになる期間である不処理時間を仕掛かりロットごとに取得し、
前記洗浄処理の開始順序を決定する手段が、取得された処理完了時間が最短の仕掛かりロット、または取得された不処理時間が最短の仕掛かりロットを次処理ロットに決定する、請求項1記載の半導体基板洗浄生産管理システム。
【請求項3】
前記処理レシピの情報と、当該処理レシピに従って前記洗浄処理装置においてロットの洗浄処理を実施した場合に当該ロットの洗浄処理完了までに要する処理時間とを対応付けて、予め登録する手段をさらに備え、
前記仕掛かりロットの処理時間に対応するデータを取得する手段が、前記仕掛かりロットの処理時間に対応するデータとして、前記取得された仕掛かりロット情報に含まれる処理レシピ情報に対応付けて予め登録された前記処理時間を取得するとともに、前記洗浄処理の開始順序を決定する手段が、取得された処理時間が最短の仕掛かりロットを次処理ロットに決定する、請求項1記載の半導体基板洗浄生産管理システム。
【請求項4】
前記仕掛かりロット情報を取得する手段が、仕掛かりロット情報取得時点での前記洗浄処理装置におけるロットの処理状況を示す装置稼動情報をさらに取得し、
前記仕掛かりロットの処理時間に対応するデータを取得する手段が、前記仕掛かりロットの処理時間に対応するデータとして、前記各仕掛かりロット情報に対応付けられた処理レシピにおいて最初に使用される洗浄処理槽を示す情報および前記検知手段により取得された装置稼動情報に含まれる未使用の洗浄処理槽を示す情報を取得するとともに、前記洗浄処理の開始順序を決定する手段が、前記最初に使用される洗浄処理槽が未使用の洗浄処理槽と一致する仕掛かりロットを次処理ロットに決定する、請求項1記載の半導体基板洗浄生産管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−272644(P2010−272644A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122336(P2009−122336)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】