説明

半導体層の製造法

本発明は、少なくとも以下の工程:(A)相応する金属の、少なくとも3個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はポリカルボン酸のカルボキシレート又はモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体、アルコキシド、水酸化物、セミカルバジド、カルバメート、ヒドロキサメート、イソシアネート、アミジン、アミドラゾン、尿素誘導体、ヒドロキシルアミン、オキシム、ウレタン、アンモニア、アミン、ホスフィン、アンモニウム化合物、アジド及びそれらの混合物から成る群から選択される、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物を含有する溶液を、少なくとも1種の溶媒中で製造する工程、(B)工程(A)からの溶液を基材に施与する工程及び(C)前記少なくとも1種の前駆体化合物を、少なくとも1種の半導体金属酸化物に変えるために、工程(B)からの基材を、20〜200℃の温度で熱処理する工程を包含し、その際、工程(A)において電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)が前駆体化合物として使用される場合、これを酸化亜鉛又は水酸化亜鉛とアンモニアとの反応によって得る、基材上に少なくとも1種の半導体金属酸化物を含有する層を製造するための方法、この方法によって得られる、少なくとも1種の半導体金属酸化物で被覆されている基材、この基材の、電子部品における使用、並びに電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(式中、x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)を、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛とアンモニアとの反応によって製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも以下の工程:(A)相応する金属の、少なくとも3個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はポリカルボン酸のカルボキシレート又はモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体、アルコキシド、水酸化物、セミカルバジド、カルバメート、ヒドロキサメート、イソシアネート、アミジン、アミドラゾン、尿素誘導体、ヒドロキシルアミン、オキシム、ウレタン、アンモニア、アミン、ホスフィン、アンモニウム化合物、アジド、無機錯体及びそれらの混合物から成る群から選択される、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物を含有する溶液を、少なくとも1種の溶媒中で製造する工程、(B)工程(A)からの溶液を基材に施与する工程及び(C)該少なくとも1種の前駆体化合物を、少なくとも1種の半導体金属酸化物に変えるために、工程(B)からの基材を、20〜200℃の温度で熱処理する工程を包含し、その際、工程(A)において電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)が前駆体化合物として使用される場合、これを酸化亜鉛又は水酸化亜鉛とアンモニアとの反応によって得る、基材上に少なくとも1種の半導体金属酸化物を含有する層を製造するための方法、この方法によって得られる、少なくとも1種の半導体金属酸化物で被覆されている基材、この基材の、電子部品における使用、並びに電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)を、酸化亜鉛又は水酸化亜鉛とアンモニアとの反応によって製造するための方法に関する。
【0002】
半導体材料からの層を基材に施与する方法は、従来技術から既に公知である。
【0003】
WO2009/010142A2によれば、有機金属亜鉛錯体を半導体酸化亜鉛の前駆体化合物として含有する印刷用インクを使用することによって、印刷された電子部品を得ることができる。使用される有機金属亜鉛錯体中には、少なくとも1個のオキシメート配位子が存在している。さらに、この亜鉛錯体は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含んでいない。有利には、WO2009/010142による方法では、2−(メトキシイミノ)アルカノエート、2−(エトキシイミノ)アルカノエート又は2−(ヒドロキシイミノ)アルカノエートから選択される配位子を有する有機金属亜鉛錯体が使用される。
【0004】
J.J.Schneider et al,Adv.Mater.20,2008,3383−3387は、半導体活性材料としてナノスケールの酸化亜鉛を有する、印刷されたフレキシブルな電界効果トランジスタを開示している。これらのナノスケールの酸化亜鉛層は、前駆体の溶液を利用して施与され、その際、前駆体化合物として、(2−メトキシイミノ)ピルベート配位子を有する有機亜鉛錯体が使用される。
【0005】
EP1993122A2は、低い温度で加工されることができる前駆体の溶液を用いて、薄膜トランジスタとしての半導体酸化亜鉛層を製造するための方法を開示している。該前駆体の溶液は、亜鉛塩及び錯化剤を含有する。適した亜鉛塩は、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛又は酢酸亜鉛である。錯化剤としてカルボン酸又は有機アミンが使用される。
【0006】
S.Meiers et al,J.Am.Chem.Soc.,130(51),2008,17603−17609は、低い温度での酸化亜鉛TFTの製造用の水性の無機インクを開示している。半導体酸化亜鉛の前駆体化合物としてZn(OH)2(NH3xが使用される。二段階の方法において、この無機亜鉛錯体は、高純度の硝酸亜鉛(99.998%)を水溶液中の水酸化ナトリウム溶液と反応させ、引き続き、そのようにして得られた水酸化亜鉛をアンモニアと反応させることによって得られる。硝酸亜鉛と水酸化ナトリウム溶液との反応に際して生じる塩を取り除くために、多数の分離工程及び洗浄工程が必要とされる。
【0007】
従来技術において記載される、半導体酸化亜鉛層を基材に施与するための方法は、一方では、使用される酸化亜鉛の前駆体化合物が、煩雑な合成法及び浄化法で製造されるという欠点を有している。そのうえ、一部に高価な高純度の出発材料が使用される。さらに、従来技術から使用される前駆体化合物の場合、酸化亜鉛の取得下での熱分解に際して、基材上に残留し、そして、さらなる工程において分離されなければならないか、もしくは、形成される酸化亜鉛層の純度ひいては機能性を損ねる副生成物が得られるという欠点がある。
【0008】
それゆえ本発明の課題は、特に単純に方法を取り扱えることによって際立つ、基材上に半導体層を製造するための方法を提供することである。さらに、本発明により得られたコーティングされた基材は、可能な限り高い純度の半導体材料、殊に酸化亜鉛を有しているべきである。これは本発明により、熱分解によって所望の酸化亜鉛に変えられる前駆体化合物を使用することによって達成されるものとし、その際、しかしながら、形成された層内に残される、妨げとなる副生成物は得られない。本発明による方法によって得られる半導体層は、さらに、改善された電気的特性によって際立つべきである。
【0009】
これらの課題は、少なくとも以下の工程:
(A)相応する金属の、少なくとも3個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はポリカルボン酸のカルボキシレート又はモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体、アルコキシド、水酸化物、セミカルバジド、カルバメート、ヒドロキサメート、イソシアネート、アミジン、アミドラゾン、尿素誘導体、ヒドロキシルアミン、オキシム、ウレタン、アンモニア、アミン、ホスフィン、アンモニウム化合物、アジド及びそれらの混合物から成る群から選択される、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物を含有する溶液を、少なくとも1種の溶媒中で製造する工程、
(B)工程(A)からの溶液を基材に施与する工程及び
(C)該少なくとも1種の前駆体化合物を、少なくとも1種の半導体金属酸化物に変えるために、工程(B)からの基材を、20〜200℃の温度で熱処理する工程を包含し、
その際、工程(A)において電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)が前駆体化合物として使用される場合、これを酸化亜鉛又は水酸化亜鉛とアンモニアとの反応によって得る、基材上に少なくとも1種の半導体金属酸化物を含有する層を製造するための方法によって解決される。
【0010】
本発明による方法は、基材上に少なくとも1種の半導体金属酸化物を含有する層を製造するのに役立つ。
【0011】
特に有利な実施形態では、酸化亜鉛が半導体金属酸化物として、本発明による方法で使用される。それゆえ本発明はまた、少なくとも1種の半導体金属酸化物が酸化亜鉛ZnOである本発明による方法にも関する。
【0012】
一般的に、本発明による方法により、当業者に公知の全ての基材、例えばSiウェハ、ガラス、セラミックス、金属、金属酸化物、半金属酸化物、プラスチック、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン等を被覆することが可能である。
【0013】
本発明による方法の特別な実施形態では、基材は機械的にフレキシブルであり、かつ、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリスルホン及びそれらの混合物から成る群から選択される、少なくとも1種のプラスチックを包含する。
【0014】
本発明による方法によって基材上に製造された、少なくとも1種の半導体金属酸化物を含有する層は、一般的に5〜250nmの厚さ、有利には5〜100nmの厚さを有する。
【0015】
本発明による方法の個々の工程が、下記にて詳細に記載される:
工程(A):
本発明による方法の工程(A)は、相応する金属の、少なくとも3個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はポリカルボン酸のカルボキシレート又はモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体、アルコキシド、水酸化物、セミカルバジド、カルバメート、ヒドロキサメート、イソシアネート、アミジン、アミドラゾン、尿素誘導体、ヒドロキシルアミン、オキシム、ウレタン、アンモニア、アミン、ホスフィン、アンモニウム化合物、アジド及びそれらの混合物から成る群から選択される、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物を含有する溶液を、少なくとも1種の溶媒中で製造する工程を包含する。
【0016】
本発明による方法の工程(A)では、相応する前駆体化合物の溶液が製造される。溶媒として、一般的に、使用される前駆体化合物が、溶液全体を基準として、少なくとも0.01質量%で可溶性である任意の溶媒を使用してよい。
【0017】
適した溶媒は、例えば、水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ケトン、例えばアセトン、エーテル、例えばジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、エステル及びそれらの混合物から成るから選択されている。有利には、本発明による方法の工程(A)では、水性、アルコール性又はエーテル性の溶液が使用され、特に有利には、工程(A)では、水が溶媒として使用される。
【0018】
本発明による方法の工程(A)では、少なくとも1種の半導体金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物を、そのつど溶液全体を基準として、0.01〜20質量%、有利には0.1〜10質量%、特に有利には0.5〜5質量%の濃度で含有する溶液が製造される。
【0019】
本発明による方法の工程(A)では、少なくとも1種の半導体金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物が相応する溶媒中で溶解される。少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物は、その際、相応する金属の、少なくとも3個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はポリカルボン酸のカルボキシレート又はモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体、アルコキシド、水酸化物、セミカルバジド、カルバメート、ヒドロキサメート、イソシアネート、アミジン、アミドラゾン、尿素誘導体、ヒドロキシルアミン、オキシム、ウレタン、アンモニア、アミン、ホスフィン、アンモニウム化合物、アジド及びそれらの混合物から成る群から選択されている。
【0020】
特別な実施形態では、一般的に200℃より下の、有利には150℃より下の、特に有利には130℃より下の、極めて有利には100℃より下の温度で、半導体金属酸化物及び揮発性生成物、例えば二酸化炭素、酢酸エステル等に分解する前駆体化合物が使用される。これらの前駆体化合物の分解の最小温度は、例えば50℃であり、触媒活性化の下で、例えば20℃である。
【0021】
相応する金属の適したカルボキシレートは、例えば、相応する金属と、少なくとも3個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はポリカルボン酸又はモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体との化合物である。モノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体は、本発明により、相応するモノ−、ジ−又はポリエステルもしくは無水物又はアミドと理解される。本発明により、カルボキシレート錯体中の中心原子として存在する金属原子は、一般的に3〜6の配位数を有していてよい。
【0022】
酸化亜鉛が半導体金属酸化物として基材に施与される、本発明により特に有利な場合では、工程(A)で、有利なカルボキシレートとして、亜鉛の相応する化合物が使用される。特別な実施形態では、本発明により3〜6の配位数を有する亜鉛カルボキシレート錯体が使用され、その際、亜鉛上の少なくとも1個の配位子は、少なくとも3個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はポリカルボン酸又はモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体の群に由来する。
【0023】
さらに別の特別な実施形態では、前駆体化合物として、一般的に200℃より下の、有利には150℃より下の、特に有利には130℃より下の、極めて有利には100℃より下の温度で、酸化亜鉛及び揮発性生成物、例えば二酸化炭素、アセトン等に分解する亜鉛カルボキシレートもしくはその誘導体が使用される。これらの前駆体化合物の分解の最小温度は、例えば50℃であり、触媒活性化の下で、例えば20℃である。
【0024】
本発明による方法の工程(A)で前駆体化合物として使用される、特に有利なカルボキシレートは、一般式(I)
1−M−O−C(O)−R2 (I)、
[式中、
Mは、Znであり、
1は、水素、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C12−へテロアルキル、置換又は非置換のC5〜C16−アリール、直鎖状又は分枝鎖状の、置換又は非置換のC5〜C16−アラルキル、直鎖状又は分枝鎖状の、置換又は非置換のC5〜C16−アルカリール、NR67(R6、R7は、互いに無関係に、Si−(C1〜C6−アルキル)3)、又は式−O−C(O)−R2の基(R2は、下記に示される意味を有する)であって、それぞれ場合により、電子供与体特性を有する官能基、例えばヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、エーテル基及び/又はオキソ基で置換されており、
2は、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、有利にはC2〜C12−アルキル、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C12−ヘテロアルキル、有利にはC2〜C12−ヘテロアルキル、置換又は非置換のC5〜C16−アリール、直鎖状又は分枝鎖状の、置換又は非置換のC5〜C16−アラルキル、直鎖状又は分枝鎖状の、置換又は非置換のC5〜C16−アルカリールであって、それぞれ場合により、電子供与体特性を有する官能基、例えばヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、エーテル基及び/又はオキソ基で置換されており;又は式
【化1】

の基であり、
3は、O及びCH2から選択されており、
n、m、cは、互いに無関係に、0、1、2又は3であり、有利には0、1、2であり、かつ特に有利には0又は1であり、
4は、O、C=O、−X4C=CH−、OCH2から選択されており、
5は、H、OH、OCH3、OC25、OSi(X1(3-a-b)(X2a(X3b、CO25、OCO25から、有利にはCO25から選択されており、
5は、C1〜C4アルキルから、有利にはメチル、エチル又はt−ブチルから、極めて有利にはエチル又はt−ブチルから選択されており、
a、bは、互いに無関係に、0、1、2又は3であり、かつa及びbからの合計は最大3であり、
1、X2、X3、X4は、互いに無関係に、H、C1〜C10−アルキル、有利にはH及びC1〜C4アルキル、特に有利にはH、メチル及びエチルから選択されており、
dは、1〜100の整数であり、
6は、H、C1〜C10アルキルから、有利にはH及びC1〜C4−アルキルから、特に有利にはメチル又はエチルから選択されている]に相当する。
【0025】
一般式(I)の化合物は、溶解状態で、有利には水溶液中で、場合により一般式(I)の2分子以上の凝集体もしくは多環式付加物で存在し、これらは本発明により一緒に包含されている。
【0026】
極めて有利なカルボキシレート、殊にZnカルボキシレート中に存在する配位子は、3−オキシグルタル酸モノアルキルエステル、例えば3−オキソグルタル酸モノメチルエステル、3−オキソグルタル酸モノエチルエステル、マロン酸モノアルキルエステル、例えばマロン酸モノメチルエステル、マロン酸モノエチルエステル、及びそれらの混合物から成る群から選択されている。
【0027】
本発明による方法の工程(A)で前駆体化合物として使用される亜鉛カルボキシレートの有利な例は、式(II)Zn[(EtOC(O)CH2C(O)CH2COO)2]の化合物である。
【0028】
本発明により実験式及び/又は構造式として表される化合物では、場合により溶媒分子、例えば水等が、該化合物中に存在していてよい。
【0029】
式(II)の化合物の製造法は、例えば、化学量論量の3−オキソグルタル酸モノエチルエステルをジエチル亜鉛とヘキサン中で0℃にて反応させることによるものであって、当業者に自体公知である。
【0030】
本発明による方法の工程(A)で前駆体化合物として使用され、かつ、一般式(I)の2分子の付加物として存在する亜鉛カルボキシレートの特に有利なさらに別の例は、式(III)
【化2】

の化合物である。
【0031】
式(III)の化合物も同様に、例えば、等モル量の3−オキソグルタル酸モノエチルエステル及び亜鉛−ビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]をベンゼン又はトルエン中で室温にて反応させることによる、当業者に公知の方法によって製造可能である。
【0032】
本発明による方法の工程(A)で前駆体化合物として使用される亜鉛カルボキシレートの特に有利なさらに別の例は、式(IV)
【化3】

の化合物である。
【0033】
式(IV)の化合物も同様に、当業者に公知の方法によって製造可能である。
【0034】
亜鉛カルボキシレートの有利なさらに別の例は、電子供与体官能基を有する、式(IVa)Zn[(NH2CH2COO)2(H2O)])
【化4】

の化合物である。
【0035】
本発明による方法の工程(A)で前駆体化合物として使用される亜鉛カルボキシレートの特に有利なさらに別の例は、同様にカルボキシレート基に対してα位に電子供与体官能基を有する、式(IVb)Zn[{R78N−N=C(CH3)CO22(H2O)2
【化5】

の化合物である。
【0036】
亜鉛カルボキシレートの有利なさらに別の例は、式(IVc)
【化6】

(R7=R8=メチル、又はR7=H及びR8=C(O)Me)の化合物である。
【0037】
さらに有利には、本発明による方法の工程(A)では、少なくとも1種の金属酸化物の前駆体化合物として、相応する金属のアルコキシドが使用される。
【0038】
有利には、前駆体化合物として、金属原子が配位数3〜6を有する金属アルコキシドが使用される。酸化亜鉛が半導体金属酸化物として使用される、特に有利な場合では、殊に配位数3〜6を有する亜鉛アルコキシド錯体が使用され、該錯体中では少なくとも1個の配位子がアルコキシドである。これらの本発明により存在する配位数は、本発明により使用される前駆体化合物中で、同じ又は異なる分子を互いに付加することによって実現される。
【0039】
特に有利な実施形態では、前駆体化合物として、一般的に200℃より下の、有利には150℃より下の、特に有利には130℃より下の、極めて有利には100℃より下の温度で、半導体金属酸化物及び揮発性生成物に分解する亜鉛アルコキシドが使用される。これらの前駆体化合物の分解の最小温度は、例えば50℃であり、触媒活性化の下で、例えば20℃である
特に有利な実施形態では、本発明による方法の工程(A)で前駆体化合物として使用される金属アルコキシドは、下記の一般式(V)
(R9O)o−M−(R10p (V)、
[式中、
Mは、Znであり、
9は、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C12−へテロアルキル、置換又は非置換のC5〜C16−アリール、直鎖状又は分枝鎖状の、置換又は非置換のC5〜C16−アラルキル、直鎖状又は分枝鎖状の、置換又は非置換のC5〜C16−アルカリール、有利には直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C6−アルキル、殊にメチル又はエチルであって、それぞれ場合により、電子供与体特性を有する官能基、例えばヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、エーテル基及び/又はオキソ基で置換されており、
10は、水素、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C12−アルキル、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C12−ヘテロアルキル、置換又は非置換のC5〜C16−アリール、直鎖状又は分枝鎖状の、置換又は非置換のC5〜C16−アラルキル、直鎖状又は分枝鎖状の、置換又は非置換のC5〜C16−アルカリール、NR1112(R11、R12は、互いに無関係に、Si−(C1〜C6−アルキル)3)、又は式−O−C(O)−R2の基(R2は、上記に示される意味を有する)であって、それぞれ場合により、電子供与体特性を有する官能基、例えばヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、エーテル基及び/又はオキソ基で置換されており、特に有利には、R9は、直鎖状又は分枝鎖状のC1〜C6−アルキル、殊にメチル又はエチルであり、
oは、1又は2であり、かつ
pは、0又は1であり、その際、添え字は、o+p=2が当てはめられ、そうして一般式(V)の電気的に中性の化合物が存在するように選択される]
又はヘテロキュバン、例えば(Et−Zn−OEt)4又はZn78Me14(式(Vb))に相当する。
【0040】
一般式(V)の特に有利な化合物は、メトキシメチル亜鉛又はエトキシエチル亜鉛である。
【0041】
本発明による方法の工程(A)で前駆体化合物として使用される亜鉛アルコキシドの有利なさらに別の例は、式(Va)、(Vb)及び(Vc)
【化7】

の化合物である。
【0042】
本発明による方法の有利なさらに別の実施形態では、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物として、相応する金属の水酸化物、セミカルバジド、カルバメート、ヒドロキサメート、イソシアネート、アミジン、アミドラゾン、尿素誘導体、ヒドロキシルアミン、オキシム、ウレタン、アンモニア、アミン、アミド、ホスフィン、アンモニウム化合物、アジド及びそれらの混合物、特に有利には、相応する金属のヒドロキソ錯体が使用される。
【0043】
有利には、前駆体化合物として、金属原子が配位数4〜6を有するヒドロキソ金属錯体かあるいはアコ錯体が使用される。酸化亜鉛が半導体金属酸化物として使用される、特に有利な場合では、殊に配位数4〜6を有する亜鉛錯体が使用される。
【0044】
特に有利な実施形態では、前駆体化合物として、一般的に200℃より下の、有利には150℃より下の、特に有利には130℃より下の、極めて有利には100℃より下の温度で、半導体金属酸化物及び揮発性生成物、例えばアンモニアに分解するヒドロキソ金属錯体が使用される。これらの前駆体化合物の分解の最小温度は、例えば50℃であり、触媒活性化の下で、例えば20℃である。
【0045】
特に有利な実施形態では、これらの化合物は、一般式(VI)
[(A)q(B)r(C)s(OH)tZn]u (VI)
[式中、
A、B、Cは、互いに無関係に、R133N(R13は、互いに無関係に、水素、C1〜C6−アルキル、C5〜C12−アリール、C5〜C12−アラルキル、C5〜C12−アルカリールである)、N2134(R13は、上で定義した通りである)、NR132OH(R13は、上で定義した通りである)、(NR1322C=O(R13は、上で定義した通りである)、R13N−CO2-(R13は、上で定義した通りである)、N3-、NCO-、アセトヒドラジド、アミドラゾン、セミカルバジド、R143P(R14は、互いに無関係に、水素、メチル又はエチルである)、R143As(R14は、上で定義した通りである)、オキシム、ウレタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、水、C1〜C12−アルコール、炭素原子2〜12個を有するエーテル、例えば1,2−ジメトキシエタン(DME)、炭素原子4〜12個を有する環状エーテル、例えばジオキサン、殊にNH3及び/又はOHであり、
q、r、s、tは、互いに無関係に、0〜10、有利には0〜6、特に有利には0〜4であり、有利にはt=2であり、
uは、1〜10、有利にはu=1である]に相当し、その際、q、r、s、t、uは、一般式(VI)の電気的に中性の化合物が存在するように選択される。
【0046】
特に有利には、本発明による方法の工程(A)では、少なくとも1種の前駆体化合物として、無機錯体[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)、極めて有利には[(OH)x(NH3yZn]z(x=2、y=2もしくは4、かつz=1)が使用され、その際、x、y及びzは、上で挙げられた錯体が電気的に中性に帯電されているように選択されており、かつ、これは酸化亜鉛又は水酸化亜鉛とアンモニアとの反応によって、殊に電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10であり、有利にはx、y及びzは、互いに無関係に、1〜6の整数であり、特に有利にはx=2、y=2もしくは4及びz=1である)の本発明による製造法によって得られる。
【0047】
それゆえ本発明はまた、工程(A)で少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物として[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、挙げられた錯体が電気的に中性に帯電されているように、互いに無関係に、0.01〜10であり、かつ、これは酸化亜鉛又は水酸化亜鉛とアンモニアとの反応によって得られる)が使用される、本発明による方法にも関する。
【0048】
本発明による方法の工程(A)は、一般的に、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物を含有する適した溶液が得られる温度で、例えば5〜120℃、有利には10〜60℃で実施される。
【0049】
本発明による方法の工程(A)は、当業者に公知の全ての反応器、例えば攪拌反応器中で実施することができる。工程(A)は、本発明により、連続的に又は不連続的に実施することができる。
【0050】
本発明による方法の工程(A)後に、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物を含有する溶液が得られる。これらの成分の他に、工程(A)で得られた溶液は、基材上への選択される堆積プロセスの改善のために(工程B)、さらなる添加剤を含有してよい。
【0051】
さらに、本発明による方法の工程(A)で製造された溶液は、半導体金属酸化物をドープするのに役立つ、さらなる金属カチオンも含有してよい。特別な実施形態では、これらの金属カチオンは、Al3+、In3+、Sn4+、Ga3+及びそれらの混合物から成る群から選択されている。これらの金属カチオンは別個に溶液中に導入してよく、又は本発明による前駆体化合物中にすでに存在していてよい。
【0052】
挙げられたドーピング金属カチオンは、工程(A)での溶液の製造に、金属酸化物、金属水酸化物、金属アルコキシドの形態で又は可溶性錯体の形態で添加してよい。挙げられたドーピング剤は、本発明による方法の工程(A)での溶液に、一般的に、Znを基準として0.02〜10mol%の量で、有利には、Znを基準として0.1〜5mol%の量で添加してよい。
【0053】
それゆえ本発明はまた、半導体金属酸化物が、Al3+、In3+、Sn4+、Ga3+及びそれらの混合物から成る群から選択される金属カチオンでドープされている、本発明による方法にも関する。
【0054】
工程(B):
本発明による方法の工程(B)は、基材に工程(A)からの溶液を施与する工程を包含する。
【0055】
一般的に、工程(B)は、工程(A)から得られた溶液を基材に施与するために適している、当業者に公知の全ての方法、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドロップキャスティング又は印刷、例えばインクジェット印刷、フレキソ印刷又はグラビア印刷により実施することができる。
【0056】
それゆえ本発明は、有利な実施形態では、工程(A)からの溶液の施与を、工程(B)で、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドロップキャスティング及び/又は印刷によって行う、本発明による方法に関する。
【0057】
特に有利には、工程(A)からの溶液は、本発明による方法の工程(B)で、スピンコーティング又はインクジェット印刷によって施与される。これらの製造法は、当業者に自体公知である。
【0058】
それゆえ本発明はまた、工程(A)からの溶液の施与を、工程(B)でスピンコーティングによって行う、本発明による方法にも関する。
【0059】
工程(C)
本発明による方法の工程(C)は、少なくとも1種の前駆体化合物を、少なくとも1種の半導体金属酸化物に変えるために、工程(B)からの基材を20〜200℃の温度で熱処理することを包含する。
【0060】
一般的に、工程(C)は、基材を加熱するための当業者に公知の全ての装置、例えばホットプレート、炉、乾燥キャビネット、ホットエアガン、ベルト式焼成装置又は空調キャビネット中で実施することができる。
【0061】
本発明による方法の工程(C)が、例えば20〜50℃の比較的低い温度で実施される場合、少なくとも1種の半導体金属酸化物への分解は、有利には触媒活性化により、例えば反応性ガスを吹き込むことによってか又は照射によって行われる。より高い温度でも、触媒活性化を行うことができるが、しかし、有利ではない。
【0062】
工程(C)では、工程(A)からの溶液を用いて工程(B)で基材に施与されている半導体金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物が、相応する金属酸化物、殊に酸化亜鉛に変えられる。
【0063】
その際、本発明により好ましい点は、使用される金属酸化物の前駆体化合物が、200℃より下の、有利には150℃より下の、特に有利には130℃より下の、殊に100℃より下の温度ですでに、相応する金属酸化物に変えられることができるので、例えば、半導体金属酸化物の製造中に変形しないか、もしくは熱により分解しないプラスチック基材を使用できる点である。さらに別の利点は、使用される前駆体化合物に基づき、本発明による方法の工程(C)での熱処理に際して、単に揮発性の、ひいてはガス状で漏出し、かつ、妨げとなる不純物としては、形成される層内に残留しない副生成物が生じるに過ぎない点である。
【0064】
本発明により使用される前駆体化合物は、一般的に、工程(C)で相応する金属酸化物、殊に酸化亜鉛、及び易揮発性化合物、又はそれらの混合物に変えられる。殊に、工程(C)による熱処理後に、形成された金属酸化物層内には、前駆体化合物の副生成物、例えば、対イオン、例えばハロゲン化物アニオン、硝酸アニオン、カチオン、例えばNa+、K+、又は中性配位子は残らない。本発明により使用される前駆体化合物のさらに別の利点は、該化合物が、本発明による方法の工程(C)で、一般的に、さらに別の添加剤の添加なしに、相応する金属酸化物に変換されることができる点であり、それというのも、該化合物は、相応する酸化物に変えるのに必要とされる酸素をすでに配位子球に有しているからである。さらに別の添加剤が添加される必要はないので、形成された層内には、これらの添加剤の副生成物も残留しない。好ましい点は、同様に、製造法の工程(A)、(B)及び(C)が周囲条件(空気酸素等)下で実施できる点である。
【0065】
本発明のさらに別の対象は、上記の通りの、少なくとも工程(A)、(B)及び(C)を包含する、半導体構成品、例えば薄膜トランジスタの製造法である。
【0066】
本発明による前駆体化合物もしくは、該前駆体化合物から得られる金属酸化物は、その際、TFTの半導体層として使用される。前駆体化合物の溶液(工程(A)で記載されるような製造)は、その際、(B)及び(C)で記載されるように、TFTの半導体部品へと加工されることができる。
【0067】
TFT構造、例えばボトムゲート、トップゲート、トップコンタクト、ボトムコンタクト等に関して制限はない。誘電体は、考えられうる全ての有機、無機又は有機−無機のハイブリッド材料であってよい。ゲート−、ソース−及びドレイン−コンタクト材料は、導電性材料、例えばAl、Au、Ag、Ti/Au、Cr/Au、ITO、Si、PEDOT/PSS等である。基材として、殊に、低い分解温度を有する高分子のフレキシブルな材料、ならびに他の非耐熱性の基材も適しているが、それらに制限されるべきではない。基材、ゲート−、ソース−及びトレイン−コンタクト材料並びに誘電体は、主たる制限を受けず、そして加工処理の化学的/物理的適合性並びに所望の適用に相応して選択することができる。
【0068】
本発明はまた、本発明による方法によって得られる、少なくとも1種の半導体金属酸化物で被覆されている基材にも関する。基材、金属酸化物、前駆体化合物等に関する詳細及び有利な実施形態は、上ですでに挙げられている。
【0069】
本発明による製造法に基づき、殊に、半導体金属酸化物、殊に酸化亜鉛の特別な前駆体化合物の使用に基づき、本発明により被覆された基材は、その電子特性に関して優れた特性を有する。
【0070】
例えば、本発明による方法によって製造されたTFT、有利にはZnO TFTは、10-4〜100cm2/V*s、有利には10-2〜50cm2/V*s、特に有利には0.1-2〜10cm2/V*s、例えば0.5cm2/V*sの移動度、及び/又は100〜109、有利には103〜108、特に有利には105〜108、例えば107のオンオフ比を、0〜50V、有利には0〜25V、例えば19Vのしきい値電圧にて有する。
【0071】
それゆえ本発明はまた、電子構成品、例えばTFTにおける本発明による基材の使用、殊に、CMOS回路及び他の電子回路、RFIDタグ、ディスプレイ等における本発明による基材の適用にも関する。それゆえ本発明は、電子構成品における本発明による基材の使用に関し、その際、該電子構成品は、TFT、RFIDタグ又はディスプレイである。
【0072】
プラスチックと適合する温度で溶液から加工できることによって、フレキシブルな、屈曲可能な基材上に構成品を製造することが可能である。
【0073】
本発明はまた、酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛をアンモニアと反応させることによる、電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10であり、有利には1〜6の整数である)の製造法でもある。
【0074】
特別な有利な実施形態では、x=2及びy=2又はy=4及びz=1であり、そうして本発明により特に有利には[(OH)2(NH32Zn]又は[(OH)2(NH34Zn]が製造される。
【0075】
本発明による方法によって製造された電気的に中性の[(OH)2(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)は、それが、製造に使用された反応物質に由来する不純物、例えば、外来イオン、例えばNa+、K+、NO3-等を含有せず、非常に低コストの反応物質を使用することができ、また精製工程を必要としないことによって際立つ。得られた生成物は、有利には、製造直後に、さらなる浄化工程なしに、例えば>99%、有利には>99.5%、特に有利には>99.9%の特に高い純度を有する。本発明により、この特に純粋な出発化合物から、同様に特に高い純度を有する半導体酸化亜鉛層を得ることができる。この高い純度は、例えば層の半導体特性にプラスに作用する。
【0076】
有利には、この方法では、第1の工程で固体の酸化亜鉛又は水酸化亜鉛又はそれらの混合物が、適した反応器に装入される。次いで、この固体の酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛は、有利にはアンモニア(NH3)の溶液を用いて適した溶媒中で処理される。
【0077】
溶媒は、有利には水性溶媒、例えばアルコール水溶液又は水、特に有利には水である。アンモニアは、この有利には水溶液中で、そのつど全溶液を基準として、1〜18mol/l、有利には2〜15mol/l、特に有利には3〜12mol/lの濃度で存在する。酸化亜鉛が、一般的に、0.01〜2mol/L、有利には0.1〜1mol/L、特に有利には0.1〜0.5mol/Lの濃度で存在する反応混合物を得るのに十分なアンモニア溶液が固体の酸化亜鉛に加えられる。選択的に、液体アンモニア中で直接作業してもよい。
【0078】
次いで、そのようにして得られた反応混合物は、一般的に10〜120℃、有利には10〜60℃、特に有利には20〜30℃の温度で攪拌される。一般的に、懸濁液は、完全な変換が得られるまで、例えば、2〜72時間、有利には2〜24時間攪拌される。完全な反応後に、所望の生成物の溶液が、溶媒、殊に水の中で存在する。場合によっては存在する懸濁物質を分離するために、得られた溶液を、場合により、例えば濾過によって浄化してよい。したがって、所望の生成物は、特に高い純度で、有利には水溶液で得られる。
【0079】
方法は、所望の化合物が単に1つの工程で、生成物の浄化なしに、特に安価な反応物質から、特に高い純度で得られることによって際立つ。それゆえ、そのようにして得られた電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)は、殊に有利には、少なくとも1種の半導体金属酸化物を含有する層を基材上に製造するための本発明による方法において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】トランジスタの代表的な出力曲線(AK)及び伝達曲線(TK)を示す図
【図2】トランジスタの代表的な出力曲線(AK)及び伝達曲線(TK)を示す図
【0081】
実施例
実施例1:Zn(OH)2(NH34の製造
四つ口フラスコ500mlに、ZnO 6.10g(pharmaceutical quality、Umicore社)を装入する。6.6mol/lのNH3/H2O溶液500mlを、それに加える。懸濁液を、一晩中、室温にて300rpmで撹拌する。ガラスフリットによって分離される僅かな懸濁物質を有する透明な溶液が得られ、そうして上述の錯体の透明な溶液が得られる。溶液の元素分析の結果から、溶液100gにつきZn含有量1.0gが判明する。
【0082】
実施例2:半導体材料としてZnOを有するTFTの製造
SiO2誘電体層(200nm)を有する浄化されたSidoped基材を、実施例1からの水溶液に浸し、かつ、これを3000回転/分で30秒間スピンコーティングにかける(gespincoated)。引き続き、試験体を20分間150℃にて加熱する。ソース/ドレイン−コンタクト(チャネル幅/チャネル長の比:20)を、アルミニウムの熱蒸着によって作製する。相応するトランジスタの代表的な出力曲線(AK)及び伝達曲線(TK)は、図1及び2に表示されている。その際、VD:ソース・ドレイン間電圧、VG:ソース・ゲート間電圧、ID:ソース・ドレイン間電流が当てはめられる。
【0083】
次の平均パラメータが測定される:
移動度μ:0.5cm2/(V*s)
オンオフ比:107
tしきい値電圧:19V

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも1種の半導体金属酸化物を含有する層を製造する方法であって、少なくとも以下の工程:
(A)相応する金属の、少なくとも3個の炭素原子を有するモノ−、ジ−又はポリカルボン酸のカルボキシレート、又はモノ−、ジ−又はポリカルボン酸の誘導体、アルコキシド、水酸化物、セミカルバジド、カルバメート、ヒドロキサメート、イソシアネート、アミジン、アミドラゾン、尿素誘導体、ヒドロキシルアミン、オキシム、ウレタン、アンモニア、アミン、ホスフィン、アンモニウム化合物、アジド及びそれらの混合物から成る群から選択される、少なくとも1種の金属酸化物の少なくとも1種の前駆体化合物を含有する溶液を、少なくとも1種の溶媒中で製造する工程、
(B)工程(A)からの溶液を基材に施与する工程及び
(C)該少なくとも1種の前駆体化合物を、少なくとも1種の半導体金属酸化物に変えるために、工程(B)からの基材を、20〜200℃の温度で熱処理する工程を包含し、
その際、工程(A)において電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)が前駆体化合物として使用される場合、これを酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛とアンモニアとの反応によって得る、基材上に少なくとも1種の半導体金属酸化物を含有する層を製造する方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の半導体金属酸化物が、酸化亜鉛ZnOであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記基材が機械的にフレキシブルであり、かつ少なくとも1種のプラスチックを包含することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記半導体金属酸化物が、Al3+、In3+、Sn4+、Ga3+及びそれらの混合物から成る群から選択される金属カチオンでドープされていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記工程(A)からの溶液の施与を、工程(B)で、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドロップキャスティング及び/又は印刷によって行うことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法によって得られる、少なくとも1種の半導体金属酸化物で被覆されている基材。
【請求項7】
電子構成品における請求項6記載の基材の使用。
【請求項8】
前記電子構成品が、TFT、RFIDタグ又はディスプレイであることを特徴とする、請求項7記載の使用。
【請求項9】
請求項1記載の少なくとも工程(A)、(B)及び(C)を包含する、半導体構成品の製造法。
【請求項10】
酸化亜鉛及び/又は水酸化亜鉛をアンモニアと反応させることによって、電気的に中性の[(OH)x(NH3yZn]z(x、y及びzは、互いに無関係に、0.01〜10である)を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−525493(P2012−525493A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507700(P2012−507700)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055499
【国際公開番号】WO2010/125011
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】