説明

半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法

【課題】充分な機械強度とともに、低誘電率であり密着性に優れた絶縁材料を形成するための、シランカップリング剤を含有する絶縁膜形成用組成物を有機溶媒に溶解した塗布液のポットライフを高める半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法を提供する。
【解決手段】シランカップリング剤を含有する半導体層間絶縁膜形成用塗布液を、接液面がプラスティックである容器に保存することを特徴とし、前記プラスティックがポリエチレン、弗素樹脂から選ばれる材質であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法に関し、詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度、密着性等の膜特性が良好な絶縁材料およびそれを形成するための絶縁材料形成用組成物の塗布液の保存法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。さらに、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
高耐熱性の層間絶縁膜としては古くからポリベンゾオキサゾール、ポリイミド、ポリアリーレン(エーテル)等が開示されているが、高速デバイスを実現するためには更に誘電率の低い材料が要望されている。該材料のようにポリマー分子内に酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子や芳香族炭化水素ユニットを導入すると、高モル分極に起因して誘電率が高くなったり、吸湿に起因して経時で誘電率が上昇したり、さらには電子デバイスの信頼性を損なう問題が生じるため改良が必要であった。
一方、飽和炭化水素で構成されるポリマーは含ヘテロ原子ユニットや芳香族炭化水素ユニットで構成されるポリマーと比べてモル分極が小さくなるため、より低い誘電率を示すという利点がある。しかし例えばポリエチレン等のフレキシビリティーの高い炭化水素は耐熱性が不十分であり、電子デバイス用途に利用することは出来ない。
リジッドなカゴ構造の飽和炭化水素であるアダマンタンやジアマンタンを分子内に導入したポリマーが開示されている(特許文献1〜3)。アダマンタンやジアマンタンはダイヤモンドイド構造を有し、高い耐熱性と低い誘電率を示す点で好ましいユニットである。しかしながら、これらのポリマーは溶剤への溶解性が低く、薄膜形成が困難であったり、カゴ構造を連結する基の影響で誘電率が高くなることが課題であり、改良が要求されている。
【0004】
また、有機ポリマーは概してシリコンウエハー等に対する接着性が低く、配線加工時の膜ハガレ等の問題が生じやすかった。このため、カゴ型構造を有する化合物を含む絶縁材料形成用組成物から形成されたポリマー(カゴ型構造を含むポリマー)および接着促進剤を含有する絶縁膜形成用組成物を有機溶媒に溶解し、絶縁膜形成用塗布液として用いられているが、接着促進剤として、シラン化合物を用いた場合、前記塗布液のポットライフが短いという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−100808号公報
【特許文献2】特開2001−2899号公報
【特許文献3】特開2001−2900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、充分な機械強度とともに、低誘電率であり密着性に優れた絶縁材料を形成するための、シランカップリング剤を含有する絶縁膜形成用組成物を有機溶媒に溶解した塗布液のポットライフを高める半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題が下記の(1)〜(4)の構成により解決されることを見出した。
(1)シランカップリング剤を含有する半導体層間絶縁膜形成用塗布液を接液面がプラスティックである容器に保存することを特徴とする半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法。
(2)前記プラスティックがポリエチレン、弗素樹脂から選ばれる材質であることを特徴とする前記(1)に記載の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法。
(3)前記シランカップリング剤が少なくとも1つのSiOH基を構造中に有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法。
(4)前記半導体層間絶縁膜形成用塗布液がカゴ型構造を有する化合物を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体層間絶縁膜用塗布液保存法は、接着促進剤としてシランカップリング剤を含有する半導体層間絶縁膜形成用塗布液のポットライフを高めることができ、長期保存においても誘電率、密着性等の特性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法は、シランカップリング剤を含有する半導体層間絶縁膜形成用塗布液を接液面がプラスティックである容器に保存することにより、該塗布液のポットライフを高めることが可能である。
【0010】
本発明の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法は、保存容器として、接液面がプラスティックである容器を用いる。容器接液面の材質のプラスティックの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、FRP、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、弗素樹脂(PTFE、PFA)等が挙げられる。これらには弗素樹脂でコーティングされたガラス容器、金属容器も含まれる。
これらの中でより好ましいのは、ポリエチレン、弗素樹脂である。
これらの接液面がプラスティックである容器が、接着促進剤であるシランカップリング剤を含有する絶縁膜形成用塗布液のポットライフを高め、長期保存を可能する要因は、下記の事項が関与していると推測される。
保存容器がガラス容器である場合、接液面がSiO構造を有しているため、シランカップリング剤が吸着してしまい、長時間の保存で液中のシランカップリング剤が容器の接液面に移行し、液中のシランカップリング剤濃度が下がってしまうが、プラスティック容器であれば、そのようなことが起こらないためである。
【0011】
本発明の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法において、接液面がプラスティックである容器に保存される半導体層間絶縁膜形成用塗布液(以下、単に塗布液または絶縁材料形成用組成物とも称する)は、シランカップリング剤を含有する。
また本発明の塗布液は、シランカップリング剤のほかに、ポリマー成分も含有する。
本発明の塗布液を、例えば、基板上に塗設、乾燥、好ましくは更に加熱し、シランカップリング剤およびポリマーを含む膜として形成することができる。
【0012】
本発明の塗布液に用いるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、以下の化合物を加水分解または脱水縮合して得られるものが挙げられる。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0013】
本発明の塗布液に用いる上記シランカップリング剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてよい。
本発明に用いるシランカップリング剤の使用量はポリマー100wt%に対して、好ましくは0.001〜15wt%、より好ましくは0.005〜8wt%、特に好ましくは0.01〜5wt%である。
【0014】
また、本発明の塗布液には、カゴ型構造を有する化合物を含有することが好ましい。
以下に、本発明に用いるカゴ型構造を有する化合物について詳述する。
カゴ型構造を含有する化合物は、カゴ型構造を有すれば、低分子化合物であっても高分子化合物(たとえばポリマー)であっても良い。
本発明で述べる「カゴ型構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。例えば、アダマンタン構造はカゴ型構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ型構造とは考えられない。
【0015】
カゴ型構造は飽和、不飽和結合のいずれを含んでいても良く、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を含んでも良いが、低誘電率の見地から飽和炭化水素が好ましい。
【0016】
カゴ型構造は、好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドランであり、より好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタンであり、低誘電率である点で特にビアダマンタン、ジアマンタンが好ましい。
【0017】
カゴ型構造は1つ以上の置換基を有していても良く、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)等である。
【0018】
本発明におけるカゴ型構造は2〜4価であることが好ましい。このとき、カゴ型構造に結合する基は1価以上の置換基でも2価以上の連結基でも良い。カゴ型構造は好ましくは、2または3価であり、特に好ましくは2価である。
【0019】
本発明におけるカゴ型構造を有する化合物とは、カゴ型構造を有するモノマーの重合体であることが好ましい。ここでモノマーとは、互いに重合して2量体以上の重合体になるものを指す。この重合体は、ホモポリマーでもコポリマーでも良い。
【0020】
モノマーの重合反応はモノマーに置換した重合性基によって起こる。ここで重合性基とは、モノマーを重合せしめる反応性の置換基を指す。該重合反応としてはどのような重合反応でも良いが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合等が挙げられる。
【0021】
上記モノマーの重合反応は非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することが出来る。
重合開始剤としては有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが、特に有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート等が好ましく用いられる。
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類等が好ましく用いられる。
【0022】
重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
重合開始剤の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0023】
モノマーの重合反応は遷移金属触媒存在下で行うことも好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを例えばPd(PPh3)4、Pd(OAc)2等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl等のW系触媒、MoCl等のMo系触媒、TaCl等のTa系触媒、NbCl等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0024】
遷移金属触媒は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。
遷移金属触媒の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0025】
本発明におけるカゴ型構造はポリマー中にペンダント基として置換していて良く、ポリマー主鎖の一部となっていても良いが、ポリマー主鎖の一部となっている形態がより好ましい。ここで、ポリマー主鎖の一部になっている形態とは、本ポリマーからかご化合物を除去するとポリマー鎖が切断されることを意味する。この形態においては、カゴ型構造は直接単結合するかまたは適当な2価の連結基によって連結される。連結基の例としては例えば、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=C(R14)−、−C≡C−、アリーレン基、−CO−、−O−、−SO2−、−N(R15)−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。ここで、R11〜R17はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。これらの連結基は置換基で置換されていてもよく、例えば前述の置換基が好ましい例として挙げられる。
この中でより好ましい連結基は、−C(R11)(R12)−、−CH=CH−、−C≡C−、アリーレン基、−O−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基であり、特に好ましいものは、低誘電率である見地から−C(R11)(R12)−、−CH=CH−である。
【0026】
本発明におけるカゴ型構造を有する化合物とは、低分子化合物であっても高分子化合物(たとえばポリマー)であっても良いが、好ましいものはポリマーである。カゴ型構造を有する化合物がポリマーである場合、その質量平均分子量は好ましくは1000〜500000、より好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。カゴ型構造を有するポリマーは分子量分布を有する樹脂組成物として絶縁膜形成用塗布液に含まれていても良い。カゴ型構造を有する化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3000、より好ましくは200〜2000、特に好ましくは220〜1000である。
【0027】
カゴ型構造を有する化合物は、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーの重合体であることが好ましい。さらには、下記式(I)〜(VI)で表される化合物の重合体であることがより好ましい。
【0028】
【化1】

【0029】
式(I)〜(VI)中、
〜Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、炭素数1〜20のカルバモイル基等を表す。このうち、好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは水素原子である。
〜Yはそれぞれ独立にハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数0〜20のシリル基を表し、より好ましくは置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくはアルキル基(メチル基等)である。
〜X、Y〜Yはさらに別の置換基で置換されていてもよい。
【0030】
1、mはそれぞれ独立に1〜16の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
1、nはそれぞれ独立に0〜15の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
、m、m、mはそれぞれ独立に1〜15の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
、n、n、nはそれぞれ独立に0〜14の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
、mはそれぞれ独立に1〜20の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
、nはそれぞれ独立に0〜19の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0031】
カゴ型構造を有するモノマーは好ましくは上記式(II)、(III)、(V)、(VI)であり、より好ましくは上記式(II)、(III)であり、特に好ましくは上記式(III)で表される化合物である。
【0032】
カゴ型構造を有する化合物は2つ以上を併用しても良く、また、本発明のカゴ型構造を有するモノマーを2種以上共重合しても良い。
【0033】
カゴ構造を有する化合物は有機溶剤へ十分な溶解性を有することが好ましい。好ましい溶解度は25℃でシクロヘキサノンまたはアニソールに3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0034】
カゴ型構造を有する化合物としては、例えば特開平11−322929号、特開2003−12802号、特開2004−18593号記載のポリベンゾオキサゾール、特開2001−2899号に記載のキノリン樹脂、特表2003−530464号、特表2004−535497号、特表2004−504424号、特表2004−504455号、特表2005−501131号、特表2005−516382号、特表2005−514479号、特表2005−522528号、特開2000−100808号、米国特許6509415号に記載のポリアリール樹脂、特開平11−214382号、特開2001−332542号、特開2003−252982号、特開2003−292878号、特開2004−2787号、特開2004−67877号、特開2004−59444号に記載のポリアダマンタン、特開2003−252992号、特開2004−26850号に記載のポリイミド等が挙げられる。
【0035】
以下に使用できるカゴ構造を有するモノマーの具体例を記載するが、これらに限定はされない。
【0036】
【化2】

【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
重合反応で使用する溶媒は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中のモノマーの濃度は好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。
【0043】
重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
重合して得られるポリマーの質量平均分子量の好ましい範囲は1000〜500000、より好ましくは5000〜300000、特に好ましくは10000〜200000である。
【0044】
カゴ構造を有する化合物は、例えば市販のジアマンタンを原料として、臭化アルミニウム触媒存在下または非存在下で臭素と反応させて臭素原子を所望の位置に導入、続けて臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化してエチニル基に変換することで合成することができる。具体的にはMacromolecules.,1991年24巻5266〜5268頁、1995年28巻5554〜5560、JournalofOrganicChemistry.,39,2995-3003(1974)等に記載された方法に準じて合成することが出来る。
また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウム等でアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
【0045】
本発明において、カゴ構造を有する重合体は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
また本発明において、カゴ型構造を有する化合物には、モル分極率を高めたり絶縁材料の吸湿性の原因となる窒素原子は誘電率を高くする働きがあるため含まないことが好ましい。特に、ポリイミド化合物では充分に低い誘電率が得られないため、本発明のカゴ型構造を有する化合物は、ポリイミド以外の化合物、即ちイミド結合を有しない化合物であることが好ましい。
【0047】
本発明の塗布液中のカゴ型構造を有する化合物の添加量は、塗布液中の全固形分に対し、一般的には10〜95質量%、好ましくは30〜90質量%である。
本発明の塗布液より形成した絶縁膜に良好な特性(誘電率、機械強度)を付与する観点から、塗布液中の全固形分の総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50〜95%、さらに好ましくは60%〜90%である。
ここで、本発明の塗布液中の全固形分とは、この塗布液により得られる絶縁膜を構成する全固形分である。したがって、空孔形成剤のように絶縁材料を形成後に絶縁膜中に残らないものは固形分に含めない。
【0048】
本発明の塗布液は、必須成分であるシランカップリング剤及びポリマー成分とともに、溶剤を含有している。
用いることの出来る好適な溶剤の例としては、特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γブチロラクトン等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤;メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などの有機溶剤が挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
より好ましい溶剤は、アセトン、プロパノール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γブチロラクトン、アニソール、メシチレン、1,2−ジクロロベンゼンである。
【0050】
本発明の塗布液の固形分濃度は、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜35質量%であり、特に好ましくは7〜20質量%である。
【0051】
更に、本発明の塗布液には、該塗布液により形成される絶縁膜の諸特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、接着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、非イオン界面活性剤、フッ素系非イオン界面活性剤などの添加剤を添加してもよい。
ラジカル発生剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシド、ペンチルパーオキシド、ヘキシルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、オクチルポリエチレンオキシド、デシルポリエチレンオキシド、ドデシルポリエチレンオキシド、オクチルポリプロピレンオキシド、デシルポリプロピレンオキシド、ドデシルポリプロピレンオキシド等が挙げられる。フッ素系非イオン界面活性剤としては、例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0052】
これらの添加剤の添加量は、添加剤の種類または塗布液の固形分濃度によって適宜選択することができるが、これらの添加剤の総量として、塗布液中、一般的には0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜5質量%、より好ましくは0.05質量%〜2質量%である。
【0053】
また、本発明の絶縁材料形成用組成物に空孔形成剤を添加して多孔質の絶縁膜(絶縁材料とも称する)を形成することもできる。多孔質の絶縁材料を形成するために添加する空孔形成剤としては、特に限定されないが、例えば、該組成物が含有する溶媒よりも高沸点の有機化合物や、熱分解性低分子化合物、熱分解性ポリマー等が挙げられる。
空孔形成剤の添加量は、絶縁材料形成用組成物の固形分濃度によって適宜選択することができるが、絶縁材料形成用組成物中、一般的には0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.1質量%〜10質量%、より好ましくは0.5質量%〜5質量%である。
【0054】
本発明の塗布液により形成される絶縁膜は、上記塗布液を、スピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により、基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。加熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。
【0055】
なお、塗布後、加熱処理によって、カゴ型構造を有する化合物を互いに架橋して、機械的強度、耐熱性に優れた絶縁材料とすることが好ましい。この加熱処理の最適条件は、加熱温度が好ましくは200〜450℃、より好ましくは300〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、加熱時間は好ましくは1分〜2時間が好ましく、より好ましくは10分〜1.5時間であり、特に好ましくは30分〜1時間である。加熱処理は数段階で行っても良い。
【0056】
絶縁材料の膜厚には、特に制限は無いが、0.001〜100μmであることが好ましく、0.01〜10μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。
絶縁材料中のシランカップリング剤の含有量は、全固形分に対して、一般的には0.05質量%〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%である。
このようにして、本発明の塗布液から、絶縁膜を形成することができる。
【0057】
より良好な特性(誘電率、機械強度)を得る点から、絶縁材料を構成する総炭素原子数に占めるカゴ型構造の総炭素原子数の比率は30%以上であることが好ましく、より好ましくは50〜95%、さらに好ましくは60%〜90%である。
【0058】
本発明の塗布液から形成される絶縁材料は、半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
【実施例】
【0059】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明が、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
【0060】
〔実施例1〕
Macromolecules.,5266(1991)に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。次に、4,9−ジエチニルジアマンタン2gとジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)0.4g、ジフェニルエーテル10mlを窒素気流下で内温150℃で5時間攪拌、重合した。反応液を室温にした後、メタノール100mlに添加、析出した固体を濾過して、メタノールで洗浄した。質量平均分子量約1.4万の重合体(A)を1.0g得た。重合体(A)のシクロヘキサノンへの溶解度は25℃で20質量%以上であった。
次にシクロヘキサノン1100g、超純水5.81gを測り取り、25℃で攪拌しながら、ビニルトリアセトキシシラン(東レ・ダウコーニング製Z6075)25.0gをゆっくりと滴下し、反応液(A)を得た。
重合体(A)1.00gおよび反応液(A)を含む溶液3.00gをシクロヘキサノン6.00gにポリエチレン容器(アイセロ化学社製クリーンボトル)中で完全に溶解させて塗布液を調製し、1週間保存した。この塗布液を0.1ミクロンのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。膜を2mm角4×4の格子状に罫書き、テーププルテストを行なったところ、剥がれは生じなかった。また膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横河ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.40であった。
【0061】
〔実施例2〕
実施例1のポリエチレン容器をNOWPak(ATMIジャパン製)に代えた以外は同じ方法で塗布液を調製し、1週間保存し、製膜した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。膜を2mm角4×4の格子状に罫書き、テーププルテストを行なったところ、剥がれは生じなかった。また膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.41であった。
【0062】
〔比較例1〕
実施例1のポリエチレン容器をガラス瓶に代えた以外は同じ方法で塗布液を調製し、1週間保存し、製膜した結果、膜厚0.5ミクロンのブツのない均一な膜が得られた。膜を2mm角4×4の格子状に罫書き、テーププルテストを行なったところ、全て剥がれた。また膜の比誘電率をフォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横河ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出したところ、2.41であった。
【0063】
上記実施例1〜2、比較例1から明らかなように、本発明の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法に係わる各実施例は、長期保存においても、表面均一性、密着性,誘電率等の特性が良好な膜を形成できる結果を得たが、比較例では不満足な結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤を含有する半導体層間絶縁膜形成用塗布液を接液面がプラスティックである容器に保存することを特徴とする半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法。
【請求項2】
前記プラスティックがポリエチレン、弗素樹脂から選ばれる材質であることを特徴とする請求項1記載の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法。
【請求項3】
前記シランカップリング剤が少なくとも1つのSiOH基を構造中に有することを特徴とする請求項1または2記載の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法。
【請求項4】
前記半導体層間絶縁膜形成用塗布液がカゴ型構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体層間絶縁膜形成用塗布液保存法。

【公開番号】特開2008−227354(P2008−227354A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66495(P2007−66495)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】