説明

半導体放熱装置

【課題】半導体素子の発熱を効率的に安定して放熱するための半導体放熱装置を安価に製造して提供する。
【解決手段】半導体2を収納した収納部3及び貫通孔4を有した固定部5で構成され、収納部3及び固定部5の同一側に形成される第1放熱面8と、収納部3の第1放熱面の反対側に形成される第2放熱面9とを設けた半導体素子1に装着される半導体放熱装置10に於いて、第1放熱面8に接触する第1放熱部材11と、第1放熱部材11との接合部25を支点として固定部5に接触せずに第2放熱面9に弾性的に接触する第2放熱部材21と、貫通孔4に挿通して第1放熱部材11及び第2放熱部材21に係合し、第1放熱部材11と第2放熱部材21とで半導体素子1を挟持させる固定部材28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワートランジスタ等の発熱量の大きな半導体素子に装着する放熱装置に関し、特に、半導体素子の発熱を効率的に安定して放熱するための放熱部材の取り付け構造を特徴とする半導体放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタに代表される電力用の半導体素子は、プラスチック製のパッケージ内部に放熱効果のある金属板を設け、この金属板に半導体を載置してリード端子に接続しているが、通電による半導体の発熱を効率よく放熱させるために、パッケージ外部に放熱板等の放熱装置(ヒートシンク)を装着して使用するのが一般的である。
【0003】
このような半導体素子は、図8に示す半導体素子1のように、発熱体である半導体2を収納している収納部3と、ネジ止め用の貫通孔4を有する固定部5とで構成されたパッケージ6から、複数のリード端子7が引き出された構造となっており、パッケージ6の背面8が放熱面として形成され、一般的には、放熱装置にパッケージ6の背面8を接触させ、貫通孔4にネジを通して締結し圧着させている。
【0004】
このように半導体素子を放熱装置にネジ止めする場合、締め付けトルクが適正値より大きいとパッケージが変形し、また、締め付けトルクが適正値より小さいとパッケージと放熱装置との密着性が悪くなり、所定の放熱性能を得ることができないという問題が発生する。従って、配線基板の実装工程においては、半導体素子を放熱装置に取り付ける際のネジの締め付けトルクを厳密に管理しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−183644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現実には、ネジの不適切な締め付けトルクによる放熱効率の低下や、ネジの過大な締め付けトルクによる半導体素子の破損等のトラブルが頻繁に発生し、特に、半導体素子を交換するような修理時においては、半導体素子を放熱装置に取り付ける際のネジの締め付けトルクが管理されない場合が多い。
【0007】
図9は、従来の半導体放熱装置の実施例及びその問題点を示す断面図であり、図9(A)は、放熱板に半導体素子を取り付けて配線基板に実装した状態、図9(B)は、ネジの不適切な締め付けトルクによって、半導体素子が浮き上がった状態を示している。
【0008】
図9(A)(B)において、半導体放熱装置130の放熱板131は、半導体素子1をネジ138によって取り付けた状態で、配線基板140にネジ142で取り付けてあり、また、半導体素子1のリード端子7は、配線基板140のスルーホール141に挿入されハンダ付けされている。
【0009】
図9(A)では、ネジ138を適切なトルクで締め付けているため、半導体素子1の背面(放熱面)8は、放熱板131に密着しているが、図9(B)では、ネジ138の締め付けトルクが過大であるため、半導体素子1の固定部5が変形し、背面8が放熱板131の接触面133から浮き上がっている。このような状態では、半導体放熱装置130は、所定の放熱性能を得ることができず、また、固定部5にクラックが発生しやすくなる。
【0010】
すなわち、図9に示すような、従来の半導体放熱装置においては、半導体素子を取り付ける際のネジの不適切な締め付けトルクによって、放熱効率の低下や半導体素子の破損が発生するという問題がある。
【0011】
この問題を解決するために、例えば、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1に記載された放熱装置(電気回路モジュール)は、半導体素子を放熱部材に直接ネジ止めするのではなく、放熱部材にネジ止めした固定部材が、半導体素子を放熱部材に圧着して固定する構成となっている。
【0012】
しかし、この構成においても、後で詳細に説明するように、半導体素子の形状的なばらつきによる放熱部材への圧着不足で、半導体素子と放熱部材との熱抵抗が増加したり半導体素子の固定が不十分であったり等の問題が発生する。また、このような固定部材は、構造が複雑であるため高価であり、更に、放熱装置を小型化する弊害にもなっていた。
【0013】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、半導体素子の発熱を効率的に安定して放熱するための半導体放熱装置を安価に製造して提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。まず本発明は、半導体を収納した収納部及び貫通孔を有する固定部で構成され、収納部及び固定部の同一側に形成される第1放熱面と、収納部の第1放熱面の反対側に形成される第2放熱面とを有する半導体素子に装着される半導体放熱装置を対象とする。
【0015】
このような半導体放熱装置において、本発明にあっては、半導体素子の第1放熱面に接触する第1放熱部材と、第1放熱部材との接合部を支点として半導体素子の固定部に接触せずに第2放熱面に弾性的に接触する第2放熱部材と、半導体素子の貫通孔に挿通して第1放熱部材及び第2放熱部材に係合し、第1放熱部材と第2放熱部材とで半導体素子を挟持させる固定部材とを備えたことを特徴とする。
【0016】
ここで、第1放熱部材は、半導体素子の第1放熱面の実質的に全面に接触する第1接触面と、固定部材を挿通する第1取付孔とを有し、第2放熱部材は、半導体素子の第2放熱面の一部又は全面に接触する第2接触面と、固定部材を挿通する第2取付孔とを有し、固定部材は、第1取付孔、貫通孔、第2取付孔に挿通し、接合部を支点、第2取付孔を力点、第2接触面を作用点として第2放熱面を押圧する。更に、第1放熱部材は、配線基板に固定する基板取付部を有する。
【0017】
また、この半導体放熱装置は、第1接触面に複数の半導体素子を配線基板に実装する方向に並べて配置し、第1放熱部材と第2放熱部材とでこの複数の半導体素子を挟持して固定する構成としてもよい。
【0018】
このように、複数の半導体素子を挟持して固定する構成の場合、第2放熱部材は、複数の半導体素子の配置位置間にスリットを形成し、スリットにより分離された第2接触面の各々が、複数の半導体素子の第2放熱面に個別に接触する。
【0019】
ここで、第1放熱部材及び第2放熱部材の少なくとも何れか一方は、第1放熱部材の基板取付部を配線基板に固定した状態で、配線基板とは反対側に、配線基板の略平行方向に屈曲した形状の屈曲部を有する。
【0020】
また、第1放熱部材及び第2放熱部材は、板金加工したアルミニウム又はアルミニウム合金であり、更に、第2放熱部材は、第1放熱部材より熱伝導率が高い材質とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、半導体素子を放熱装置に取り付ける際に、半導体素子を2枚の放熱板で弾性的に挟持して固定するようにしたことで、従来の放熱板に半導体素子の固定部を直接ネジ止めする方法で問題になる、ネジの不適切な締め付けトルクによる半導体素子の浮き上がりや破損等を防止できる。
【0022】
また、本発明によれば、半導体素子を弾性的に挟持することで、従来の固定治具を用いて半導体素子を放熱板に固定する方法で問題になる、半導体素子の形状的なばらつきによる放熱板への圧着不足で、半導体素子と放熱板との熱抵抗が増加したり半導体素子の固定が不十分であったり等のトラブルを防止することができる。
【0023】
また、本発明によれば、2枚の放熱板を組み合わせて使用することで、半導体素子の両面から効率的に放熱させることができ、従来の1枚の放熱板で半導体素子の片面から放熱させる半導体放熱装置に比べて放熱効率が向上する。
【0024】
更に、本発明によれば、2枚の放熱板としてアルミニウム材を板金加工したものを使用することで、複雑な形状にすることなく表面積を増やすことができ、所定の放熱性能を備えた半導体放熱装置を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による半導体放熱装置の実施形態を示す断面図
【図2】図1に示す半導体素子を複数の半導体素子に適用した場合の外観図
【図3】図2に示す半導体素子の分解図
【図4】従来の半導体放熱装置の実施例と図1に示す実施形態とを対比する断面図
【図5】本発明による半導体放熱装置の他の実施形態を示す説明図
【図6】本発明による半導体放熱装置の他の実施形態を示す説明図
【図7】本発明による半導体放熱装置の他の実施形態を示す断面図
【図8】本発明が対象とするパワートランジスタに代表される半導体素子を示す外観図
【図9】従来の半導体放熱装置の実施例及びその問題点を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明による半導体放熱装置の実施形態を示す断面図であり、上記の半導体素子に対して本発明を適用した場合の半導体放熱装置について説明する。
【0027】
図1に示すように、半導体放熱装置10は、熱伝導性に優れたアルミニウムやアルミニウム合金等の板材を板金加工した、第1放熱板(第1放熱部材)11と第2放熱板21(第2放熱部材)、及びネジ(固定部材)28で構成されている。
【0028】
第1放熱板11は、半導体素子1の背面8(第1放熱面)に接触する第1接触面13と第1取付孔14を有する半導体取付部12、及び配線基板140に固定する基板取付部15を形成し、第2放熱板21は、半導体素子1の表面9(第2放熱面)に接触する第2接触面23と第2取付孔24を有する押圧部22、第1放熱板11に当接する接合部25、屈曲部26、及び段曲部27を形成している。
【0029】
第2放熱板21の段曲部27は、半導体素子1の背面8から表面9までの厚さに実質的に等しい段差を有し、屈曲部26は、半導体放熱装置10の基板取付部15を配線基板140に固定した状態で、接合部25から配線基板140の略平行方向に屈曲した形状となっている。
【0030】
屈曲部26は、半導体放熱装置10が所定の放熱性能を発揮するのに必要な第2放熱板21の表面積を確保しながら、半導体放熱装置10の配線基板140からの高さを所定の寸法内に抑えるために形成しており、その形状は図1に示す形態に限らず、また、第1放熱板11側に設けてもよく、更に、第1放熱板11と第2放熱板21の両方に設けることも可能である。
【0031】
第1放熱板11の第1取付孔14は、ネジ28に螺合する雌ネジとなっており、第2放熱板21の第2取付孔24は、内径がネジ28の外径よりも大径となっている。また、ネジ28は、外径が半導体素子1の貫通孔4の内径よりも小径となっている。
【0032】
なお、第1取付孔14の雌ネジは、半導体放熱装置10を組み立てる以前に、予めネジ切り作業を施して形成する方法と、予めネジ切りを行わずにネジ28としてセルフタップネジを使用し、ネジ込み時に形成する方法の何れでも構わない。
【0033】
半導体放熱装置10に半導体素子1を取り付けるには、第1放熱板11、半導体素子1、第2放熱板21を各々の第1取付孔14、貫通孔4、第2取付孔24の位置が概ね一致するように重ね合わせ、第1放熱板11の第1接触面13と半導体素子1の背面8、第2放熱板21の第2接触面23と半導体素子1の表面9が接触した状態で、ネジ28を第2取付孔24、貫通孔4に通し、第1取付孔14にネジ止めする。
【0034】
ここで、半導体素子1の固定部5と第2放熱板21の押圧部22との間には空間があるため、ネジ28を締め込むことで、第2放熱板21の接合部25を支点、第2取付孔24とネジ28の頭部との係合部を力点、第2接触面23を作用点として、第2放熱板21の弾性によって押圧部22が半導体素子1の収納部3を押圧する。
【0035】
半導体素子1は、この押圧部22の押圧によって、第1放熱板11と第2放熱板21とで挟持されるように保持される。その後、半導体素子1のリード端子7を配線基板140のスルーホール141に通しておいて、第1放熱板1の基板取付部15をネジ142で配線基板140に固定し、リード端子7をハンダ付けすることで、半導体素子1と半導体放熱装置10は、配線基板140に固定される。
【0036】
半導体素子1の背面8と第1放熱板11の第1接触面13、半導体素子1の表面9と第2放熱板21の第2接触面23が圧着しているため、半導体素子1は、通電された際の半導体2の発熱を第1放熱板11を介して放熱するだけではなく、第2放熱板21からも放熱することができる。
【0037】
また、半導体素子1が発熱した際の表面9の温度は、通常、背面8の温度より低い。このように熱勾配が背面9よりも小さな状態で、表面9と同様に放熱させるためには、第2放熱板21を第1放熱板11より熱伝導率が高い材質で形成すればよく、このように構成することで更に効率的に放熱させることが可能となる。
【0038】
図2は、図1に示す半導体放熱装置を複数の半導体素子に適用した場合の外観図であり、配線基板に実装する以前の状態である。図2に示すように、半導体放熱装置10は、3個の半導体素子1を並べて配置し、3本のネジ28を締め付けて第1放熱板11と第2放熱板21とで3個の半導体素子1を挟持して固定している。
【0039】
本実施形態においては、3個の半導体素子1を並べているが、半導体素子1の数はこれに限定されず、2個でも4個以上でも構わない。
【0040】
図3は、図2に示す半導体放熱装置の分解図であり、ネジ28を省略している。図3に示すように、半導体放熱装置10を組み立てる際には、3個の半導体素子1を、各々の貫通孔4と対応する第1放熱板11の第1取付孔14と第2放熱板21の第2取付孔24の位置が概ね一線上にあるように配置し、ネジ28を第2取付孔24、貫通孔4に通し、第1取付孔14にネジ止めする。
【0041】
なお、半導体放熱装置10を組み立てる際に、半導体素子1の配線基板140に対する取り付け角度がずれないようにするには、半導体素子1の向きを規制する組立治具を使用する等の周知の方法を適宜選択し、位置ずれを防止すればよい。
【0042】
図4は、従来の半導体放熱装置の実施例と図1に示す実施形態とを対比する断面図で、図4(A)は、特許文献1に記載された技術を図1に示す実施形態に対応させて示し、図4(B)は、図1に示す実施形態を示している。
【0043】
図4(A)に示すように、従来の半導体放熱装置110は、放熱板111と樹脂等を金型により成形して形成した固定部材121とで構成され、固定部材121をネジ128によって放熱板111に取り付け、本来は、固定部材121の固定部122で半導体素子1を放熱板111に押さえ込むようになっている。
【0044】
しかし、図4(A)においては、半導体素子1の背面8から表面9までの厚みが所定値より小さいか、または段差部127の段差が所定値より大きい場合、あるいはその両方が複合した場合を示しており、固定部122と半導体素子1の表面9との間には隙間ができている。
【0045】
このような状態は、半導体放熱装置110を組み立てた時点で発生していなくとも、特に、固定部材121が樹脂である場合は、経時変化で起こることがある。この状態では、半導体素子1の背面8は放熱板111に接触していても圧着不足となっており、半導体素子1の背面8と放熱板111の接触面113との熱抵抗が増加して放熱効率が低下したり、半導体素子1の固定が不十分であったり等のトラブルが発生する。
【0046】
しかし、図4(B)に示す本発明の半導体放熱装置10においては、半導体素子1の厚みが所定値より小さい場合や、第2放熱板21の段曲部27の段差が所定値より大きい場合でも、ネジ28を締め込むことで、第2放熱板21の弾性によって押圧部22が半導体素子1の収納部3を適切に押圧することができる。
【0047】
従って、図4(B)に示す本発明の構造は、図4(A)に示す従来の構造に比べて、半導体素子1の発熱を効率的に安定して放熱することができ、また、第2放熱板21が複雑な形状でないため、板材を板金加工したものを使用することができ、半導体放熱装置を安価に製造することができる。
【0048】
図5は、本発明による半導体放熱装置の他の実施形態を示す説明図であり、図5(A)は半導体放熱装置の断面図、図5(B)は第2放熱板の外観図である。本実施形態は、複数の半導体素子1を配置する場合に適用し、第2放熱板41の半導体素子1の配置位置間にスリットを形成している。
【0049】
図5(A)に示すように、半導体放熱装置30は、第1放熱板31と第2放熱板41、及び固定部材となるネジ48とナット49で構成されている。図1に示す実施形態において、第2放熱板21に形成されていた屈曲部26が、本実施形態では、第1放熱板31に屈曲部36として設けてある。
【0050】
また、図1に示す実施形態では、第1取付孔14は雌ネジとなっていたが、本実施形態では、第1取付孔34は第2取付孔44と同様に、ネジ48の外径よりも大径となっており、第2取付孔44、半導体素子1の貫通孔4、第1取付孔34に通したネジ48をナット49で締めこみ、第2放熱板41の押圧部42が半導体素子1の収納部3を押圧するようになっている。
【0051】
本実施形態においては、第2放熱板41側にネジ48のネジ頭、第1放熱板31側にナット49となるように配置されているが、この形態に限らず逆向きの配置でもよく、ネジ48を通す方向は組み立て易さ等を考慮して適宜選択される。また、第1放熱板31の基板取付部35も、ネジ143とナット144で配線基板140に固定しているが、これもこの形態に限らず、他の方法で固定してもよい。
【0052】
なお、図1に示す実施形態においても、第2放熱板21の第2取付孔24を雌ネジとして、ネジ28を第1放熱板11側から通すようにしてもよく、これ以降に説明する他の実施形態においても同様である。
【0053】
また、図5(B)に示すように、第2放熱板41は、半導体素子1の配置位置間にスリット46を形成している。スリット46は、押圧部42の先端側から段曲部47まで形成されているため、ネジ48とナット49を締め込むことで、スリット46で分離された押圧部42の各々が、半導体素子1の収納部3を個別に押圧することが可能となる。
【0054】
従って、本実施形態においては、複数の半導体素子1の背面8から表面9までの厚さがばらついていたとしても、ネジ48の各々の締め付けトルクを個別に管理することで、全ての半導体素子1の第1放熱板31と第2放熱板41との圧着の程度を適切にすることができる。
【0055】
図6は、本発明による半導体放熱装置の他の実施形態を示す説明図であり、図6(A)は半導体放熱装置の断面図、図6(B)は第2放熱板の外観図である。本実施形態は、半導体152の収納部153と貫通孔154を有する固定部155とに段差がない形状の半導体素子151を配置する場合に適用する。
【0056】
図6(A)に示すように、半導体放熱装置50は、第1放熱板51と第2放熱板61、及び固定部材となるネジ68で構成され、第2放熱板61は、押圧部62と半導体素子151の固定部155との間に空間を確保するように、段曲部67と押圧部62を形成している。
【0057】
従って、ネジ68を締め込むことで、第2放熱板61の接合部65を支点、第2取付孔64とネジ68の頭部との係合部を力点、第2接触面63を作用点として、第2放熱板61の弾性によって押圧部62が半導体素子1の収納部3を押圧することができる。
【0058】
本実施形態においては、ネジ68をバネ座金69を介して第1放熱板51の第1取付孔54にネジ止めしているが、第2放熱板61の弾性がバネ座金と同様な効果を発揮するため、バネ座金69は必須というわけではなく、他の実施形態と同様に、バネ座金69を介さずにネジ68のみでネジ止めしても構わない。
【0059】
また、図1に示す実施形態において、第2放熱板21のみに形成されていた屈曲部26が、本実施形態では、図6(A)(B)に示すように、第2放熱板61の屈曲部66だけではなく第1放熱板51にも屈曲部56として設けてある。このように、第1放熱板51と第2放熱板61の両方に屈曲部56、66を設けることで、半導体放熱装置50の放熱面積が増加し、放熱効率を更に上げることができる。
【0060】
図7は、本発明による半導体放熱装置の他の実施形態を示す断面図である。本実施形態は、図1、5、6の実施形態では第2放熱板に設けられていた段曲部を第1放熱板側に設けた形態であり、図7(A)は、収納部3と固定部5に段差がある半導体素子1を配置する場合、図7(B)は、収納部153と固定部155に段差がない半導体素子151を配置する場合に適用する。
【0061】
図7(A)に示すように、半導体放熱装置70は、第1放熱板71と第2放熱板81、及び固定部材となるネジ88で構成されており、第1放熱板71に段差部77、第2放熱板81に屈曲部86を設けている。
【0062】
また、図7(B)に示すように、半導体放熱装置90は、第1放熱板91と第2放熱板101、及び固定部材となるネジ108で構成されており、第1放熱板91に段差部97と屈曲部96を設けている。
【0063】
図7(A)(B)に示すような、段曲部77、97を第1放熱板側に設けた形態であっても、図1、5、6に示すような、段曲部27、47、67を第2放熱板側に設けた形態と同様な作用及び効果を有するため、段曲部を第1放熱板と第2放熱板の何れに設けるかは設計的事項であり、設計時の都合によって適宜選択することができる。
【0064】
以上で実施形態の説明を終えるが、本考案は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値等による限定は受けない。
【符号の説明】
【0065】
1、151:半導体素子
2:半導体
3、153:収納部
4、154:貫通孔
5、155:固定部
6:パッケージ
7:リード端子
8:背面(第1放熱面)
9:表面(第2放熱面)
10、30、50、70、90:半導体放熱装置
11、31、51、71、91:第1放熱板(第1放熱部材)
12、32、52:半導体取付部
13、33、53:第1接触面
14、34、54:第1取付孔
15、35、55:基板取付部
36、56、96:屈曲部
77、97:段曲部
21、41、61、81、101:第2放熱板(第2放熱部材)
22、42、62:押圧部
23、43、63:第2接触面
24、44、64:第2取付孔
25、45、65:接合部
26、66、86、:屈曲部
27、47、67、107:段曲部
28、48、68、88、108:ネジ(固定部材)
46:スリット
49:ナット
69:バネ座金
110、130:半導体放熱装置
111、131:放熱板
113、133:接触面
121:固定部材
122:固定部
127:段差部
128、138、142、143:ネジ
140:配線基板
141:スルーホール
144:ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体を収納した収納部及び貫通孔を有した固定部で構成され、前記収納部及び固定部の同一側に形成される第1放熱面と、前記収納部の前記第1放熱面の反対側に形成される第2放熱面とを設けた半導体素子に装着される半導体放熱装置に於いて、
前記第1放熱面に接触する第1放熱部材と、
前記第1放熱部材との接合部を支点として前記固定部に接触せずに前記第2放熱面に弾性的に接触する第2放熱部材と、
前記貫通孔に挿通して前記第1放熱部材及び第2放熱部材に係合し、前記第1放熱部材と前記第2放熱部材とで前記半導体素子を挟持させる固定部材と、
を備えたことを特徴とする半導体放熱装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体放熱装置に於いて、
前記第1放熱部材は、
前記第1放熱面の実質的に全面に接触する第1接触面と、
前記固定部材を挿通する第1取付孔と、
を有し、
前記第2放熱部材は、
前記第2放熱面の一部又は全面に接触する第2接触面と、
前記固定部材を挿通する第2取付孔と、
を有し、
前記固定部材は、
前記第1取付孔、前記貫通孔、前記第2取付孔に挿通し、前記接合部を支点、前記第2取付孔を力点、前記第2接触面を作用点として前記第2放熱面を押圧することを特徴とする半導体放熱装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体放熱装置に於いて、前記第1放熱部材は、配線基板に固定する基板取付部を有することを特徴とする半導体放熱装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体放熱装置に於いて、前記第1接触面に複数の前記半導体素子を前記配線基板に実装する方向に並べて配置し、前記第1放熱部材と前記第2放熱部材とで前記複数の半導体素子を挟持して固定することを特徴とする半導体放熱装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体放熱装置に於いて、前記第2放熱部材は、前記複数の半導体素子の配置位置間にスリットを形成し、前記スリットにより分離された前記第2接触面の各々が、前記複数の半導体素子の前記第2放熱面に個別に接触することを特徴とする半導体放熱装置。
【請求項6】
請求項3乃至5の何れかに記載の半導体放熱装置に於いて、前記第1放熱部材及び第2放熱部材の少なくとも何れか一方は、前記基板取付部を前記配線基板に固定した状態で、前記配線基板とは反対側に、前記配線基板の略平行方向に屈曲した形状の屈曲部を有することを特徴とする半導体放熱装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の半導体放熱装置に於いて、前記第1放熱部材及び第2放熱部材は、板金加工したアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする半導体放熱装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の半導体放熱装置に於いて、前記第2放熱部材は、前記第1放熱部材より熱伝導率が高い材質であることを特徴とする半導体放熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−134200(P2012−134200A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282685(P2010−282685)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】