説明

半導体材料のハイスループット再結晶化

半導体材料物品を製造かつ/または処理するための方法が開示されている。さまざまな方法において、第1の半導体材料物品が提供され、この第1の半導体材料物品は、半導体材料を溶融させるのに充分なほどに加熱され、溶融した半導体材料は、溶融した半導体材料物品の最短寸法に対し実質的に平行な方向で固化される。本明細書中に記載された方法によって製造される半導体材料物品も同様に開示されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、「High Throughput Recrystallization of Semiconducting Materials」という名称で2009年12月8日出願の米国特許出願第12/632,837号明細書の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、半導体材料物品の製造および/または処理方法、およびそれにより製造および/または処理された半導体材料物品に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体材料は、さまざまな利用分野において使用され、例えば光起電装置などの電子デバイス内に内蔵されてよい。光起電装置は、光起電力効果を通して光放射を電気エネルギーに転換する。
【0004】
光起電装置は、半導体材料として例えばシリコンを含んでいてよい。シリコンベースのデバイスの場合、さまざまな技法を用いて、シリコンをさまざまな形状に形成してよい。例としては、インゴット、シートまたはリボンとして形成されたシリコンが含まれる。シリコンは、下にある基板により支持されていてもいなくてもよい。しかしながら、支持型および非支持型シリコン物品を製造するための従来の方法には、多数の欠点がある。
【0005】
例えばシリコンシートなどの非支持型半導体材料物品を製造する方法は、緩慢であるかまたは半導体材料の原料の無駄が多い場合がある。非支持型単結晶半導体材料は、例えばチョクラルスキープロセスを用いて生産可能である。しかしながら、このようなバルク方法は、不利なことに、材料を薄いシートまたはウェーハの形に切断するときにかなりの切削損失を招く。非支持型多結晶半導体材料を生産できる別の方法としては、電磁鋳造およびリボン成長技術がある。しかしながら、これらの技術は、緩慢かつ高価である傾向を有する。シリコンリボン成長技術を用いて生産される多結晶シリコンリボンは、典型的に、わずか約1〜2cm/分の速度でしか形成されない。
【0006】
支持型半導体材料シートは、より安価に生産され得るが、半導体材料シートは、それが上に形成される基板により制限される場合があり、かつ基板は、矛盾し得るさまざまなプロセスおよび利用上の要件を満たさなければならない場合がある。
【0007】
非支持型多結晶半導体材料を生産するための方法は、その開示が参照により本明細書に援用されている同一所有権者の2008年2月29日に出願された特許文献1および2009年9月3日に公開された特許文献2の中で開示されている。
【0008】
半導体材料の特性は、結晶粒構造、固有の欠損の濃度とタイプ、そしてドーパントおよび他の不純物の存在および分布を含めたさまざまな要因によって左右され得る。半導体材料の内部で、例えば結晶粒径、粒径分布および結晶粒配向は、結果として得られるデバイスの性能に影響を及ぼす。一例を挙げると、光電池などの半導体に基づくデバイスの電気伝導度ひいては全体的効率は、一般に、結晶粒が大きくなればなるほどそしてより均一になるほどに改善される。
【0009】
生産スループットの増大が結晶粒の質の低下ひいては結果として得られる半導体ベースのデバイスの効率の低下を導き得るということは公知である。1つの解決法は、半導体材料物品(例えばシリコンシート)を製造するプロセスを、結晶粒構造を改善しかつ/または他の形で欠陥を最小限におさえるプロセスから切り離すことにある。1つの目的は、第1のハイスループットステップにおいて所望の幾何形状(例えば厚み、幅および/または長さ)を有する半導体材料を生産し、その後第2のステップで結晶粒構造、欠陥濃度などを修正することにあると考えられる。複数のプロセスを切り離す方法の例は、その開示が参照として本明細書に援用されている2008年6月2日出願の特許文献3に記載されている。
【0010】
ゾーンメルト再結晶(ZMR)プロセスおよび特許文献4および非特許文献1の中に記載されている関連するアプローチなどの追加の方法は、基板平面に沿って熱源を走査することによってまたはその逆によって、横方向に半導体材料を溶融させ再固化させる。しかしながら、これらのZMR方法には、スループットが所望のものより低いといった欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/067,679号明細書「Method of Making an Unsupported Article of a Pure or Doped Semiconducting Element or Alloy」
【特許文献2】国際公開第09/108358号パンフレット「Methods of Making an Unsupported Article of Pure of Doped Semiconducting Element or Alloy」
【特許文献3】米国特許出願第12/156,499号明細書「Methods of Treating Semiconducting Materials and Treated Semiconducting Materials」
【特許文献4】国際公開第2009/002550A1号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「The ZMR 100 Zone melt Recrystallization System for Silicon Films」、Fraunhofer Institut Solar Energiesysteme
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本明細書に記載する通り、発明人らは今回、半導体材料物品を製造し得るさらなる方法および/または半導体材料物品を処理するための方法を発見した。開示されている方法は、材料の無駄を削減し生産速度を高めながら、例えば改善された結晶粒構造、削減された欠陥、低い表面粗度および均一な厚みの1つ以上などの所望される属性を有する半導体材料物品の形成を容易にし得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示のさまざまな例示的実施形態によると、第2の半導体材料物品を製造する方法において、第1の半導体材料物品を提供するステップと、第1の半導体材料物品を溶融させるのに充分なほどに第1の半導体材料物品を加熱するステップと、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対し実質的に平行な方向で溶融した第1の半導体材料物品を固化させるステップと、を含むことを特徴とする方法が提供されている。
【0015】
本開示による他の例示的実施形態は、第1の半導体材料物品を処理する方法において、第1の半導体材料物品を溶融させるのに充分なほどに第1の半導体材料物品を加熱するステップと、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対し実質的に平行な方向で溶融した第1の半導体材料物品を固化させるステップと、を含むことを特徴とする方法に関する。上述の第2の物品を製造する方法および第1の半導体材料物品を処理する方法は、第1の半導体材料物品の結晶粒構造および/または表面特性の少なくとも1つを改善し得る。
【0016】
他の例示的実施形態は、第1の半導体材料物品を溶融させるのに充分なほどに第1の半導体材料物品を加熱するステップ、溶融した第1の物品の最短寸法に対し実質的に平行な方向で溶融した第1の半導体材料物品を固化させるステップによって製造された第2の半導体材料物品に関する。第2の半導体材料物品は、改善された結晶粒構造および/または表面特性を有する場合がある。
【0017】
本明細書で使用される「半導体材料」という用語は、半導体特性を示す材料、例えば非限定的な例としては、シリコン、ゲルマニウム、錫の合金および化合物、ガリウムヒ素、二酸化チタン、その合金、その化合物およびその混合物を含む。さまざまな実施形態において、半導体材料は純粋(例えば真性またはi型シリコン)であっても、またはドープされていてもよい(例えば、それぞれリンまたはホウ素などのn型またはp型ドーパントを含むシリコン)。
【0018】
本明細書中で使用される「半導体材料物品」という表現には、任意の形状または形態の結晶質または非晶質半導体材料が含まれる。このような物品の例としては、平滑であるかまたはテキスチャード加工された物品;平坦な物品、屈曲、湾曲または角度のついた物品;対称または非対称である物品;そして例えばシート、フィルム、ウェーハ、インゴット、リボンまたはロッドなどのさまざまな形態を含む物品がある。一実施形態において、半導体材料物品は少なくとも1つの実質的に平面である表面を有していてよい。別の実施形態において、半導体材料物品は、例えば、約25μm〜約5000μm、例えば約100μm〜約300μmの範囲内の厚み、および互いに独立して約75μm〜約500cm、例えば約250μm〜約250cmさらには例えば約500μm〜約15cmの範囲内にある長さと幅を有するシートを含んでいてよい。
【0019】
本明細書中で使用される「非支持型(支持されていない)」という用語は、自立した半導体材料物品(すなわち半導体材料物品は基板と一体ではない)を意味する。
【0020】
本明細書中で使用される「支持型(支持された)」という用語は、少なくとも1つの化学的結合により基板および/または少なくとも1つの半導体材料物品に付着された半導体材料物品を意味する。
【0021】
本明細書中で使用される「第1の半導体材料物品」という用語は、本明細書中に記載の加熱ステップに先立って提供されるあらゆる半導体材料物品を意味する。例えば上述の通り、半導体材料の第1の半導体材料物品は、少なくとも1つの実施形態において、例えばPCT米国特許出願第09/01268号明細書で開示されているエクソキャスティングプロセスによって製造されたものなどの網状のシリコンフィルムであってよい。
【0022】
本明細書中で使用される「第2の半導体材料物品」という用語は、本明細書中に記載されている加熱および固化ステップに付された第1の半導体材料物品から形成されたあらゆる半導体材料物品を意味する。一実施形態において、「第2の半導体材料物品」という用語は、対応する第1の半導体材料物品の全体的組成、幾何形状、形状および/または形態を保持していてよい。
【0023】
本明細書中で使用される「合金」という用語は、少なくとも2つの金属の固溶体の均質な混合物を意味し、1つの金属の原子はもう一方の金属の原子を置換するかまたはその原子間の格子間位置を占有している。
【0024】
本明細書中で使用される「実質的に平面である表面」という用語は、任意の実質的に平坦な表面(すなわち内部曲率が実質的にゼロである表面)を意味する。本開示に関しては、半導体材料物品の全体的表面(すなわちマクロスケールでの表面)は実質的に平面であるとみなされ得るが、任意の特定の場所における表面の検査(すなわちミクロスケールでの検査)は幾分かの表面不規則性を示し得ると理解される。マクロスケールで実質的に平面であるがこのような微小の表面不規則性を有し得る表面は、本開示の目的では「実質的に平面」であるとみなされる。
【0025】
本明細書中で使用される「実質的に平行」という用語は、全ての点において実質的に同じ方向で延在し実質的に等距離にあることを意味する。本開示に関しては、線および/または平面は全体的に(すなわちマクロスケールで)実質的に平行とみなされ得るが、任意の特定の場所での(すなわちミクロスケールでの)これらの線および/または平面の検査は幾分かの方向不規則性を示し得る(すなわち実質的に平行ではない)と理解される。マクロスケールで実質的に平行であるもののこのような方向の微細な不規則性を有し得る線および/または平面は、本開示の目的では「実質的に平行」であるとみなされる。
【0026】
本明細書中で使用される「実質的に垂直」という用語は、1つの線または平面が、別の所与の線または平面と交差しそれと実質的に直角を成す線または平面を意味する。本開示に関しては、線および/または平面は全体的に(すなわちマクロスケールで)実質的に垂直とみなされ得るが、任意の特定の場所での(すなわちミクロスケールでの)これらの線および/または平面の検査は幾分かの方向不規則性を示し得る(すなわち実質的に垂直ではない)と理解される。マクロスケールで実質的に垂直であるもののこのような方向の微細な不規則性を有し得る線および/または平面は、本開示の目的では「実質的に垂直」であるとみなされる。
【0027】
本明細書中で使用される、半導体材料物品に関して用いられる「実質的に静止状態にある」という用語は、溶融した半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に垂直な方向で全く運動しないかまたは最小限の運動しか示さないことを意味する。例えば、一実施形態において、第1の半導体材料物品および/または溶融した第1の半導体材料物品は、それぞれに加熱および方向性固化(directional solidification)ステップの間、実質的に静止状態にとどまっていてよい。本開示に関して、第1の半導体材料物品および/または溶融した第1の半導体材料物品は、加熱および方向性固化の間全体として(すなわちマクロスケールで)実質的に静止状態にとどまり得るが、任意の特定の場所での(すなわちミクロスケールでの)第1の半導体材料物品および/または溶融した第1の半導体材料物品の検査は、運動の幾分かの不規則を示し得る(すなわち実質的に静止状態ではない)と理解される。マクロスケールで実質的に静止状態であるもののこのような微細な運動不規則性を有し得る第1の半導体材料物品および/または溶融した第1の半導体材料物品は、本開示の目的では「実質的に静止状態にある」とみなされる。
【0028】
本明細書中で使用される「溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法」という表現は、第1の半導体材料物品と比較したその方向性配向とは無関係の溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法を意味する。例えば、一実施形態において、第1の半導体材料物品は、部分的に溶融されて第1の半導体材料物品の溶融体プールを形成してよく、この溶融体プールの最短寸法は、第1の半導体材料物品の最短寸法とは実質的に異なる方向にあってよい。別の実施形態においては、溶融体プールの最短寸法の方向は、第1の半導体材料物品の最短寸法と実質的に同じ方向であってよい。
【0029】
本明細書中で使用される「基板」という用語は、本明細書中に記載されているように、半導体材料の融点より高い温度で実質的に固体の形態にとどまり、半導体材料またはキャッピング層と反応しない(すなわち実質的に化学的に不活性である、1つの構造のあらゆる基層または最上層(すなわち「上層」)を意味する。基板は、第1の半導体材料物品および/または少なくとも1つのキャッピング層の表面全体と接触していてもよく、あるいは第1の半導体材料物品および/または少なくとも1つのキャッピング層の一部分のみ、例えば第1の半導体材料物品および/または少なくとも1つのキャッピング層の端部または縁部と接触していてもよい。基板は、一部の実施形態において耐火性材料、例えば二酸化シリコンを含んでいてよい。基板を形成するためには他の材料を使用してもよく、これらは一部の実施形態において、高温に耐えおよび/または第1の半導体材料物品が不純物で汚染される危険性を低減させるその材料の能力に基づいて選択されてよい。基板は一部の実施形態において、熱源を含んでいてよい。
【0030】
本明細書中で使用される「上昇した生産速度」という表現およびその変形形態には、リボン成長方法などの半導体材料物品を生産する従来の方法に比べた半導体材料物品の生産の速度のあらゆる上昇が含まれる。例えば、上昇した生産速度は、1〜2cm/分より高いあらゆる速度であってよい。
【0031】
本明細書中で使用される「削減された材料の浪費」という表現およびその変形形態は、半導体材料物品の生産に後続するスライシングまたは切断を用いる従来の方法を通して失われる半導体材料の量のあらゆる削減を意味する。
【0032】
本明細書中で使用される「結晶粒構造」という用語には、粒径、結晶粒形状、粒径の均一性、結晶粒形状の均一性および/または結晶粒方向の均一性が含まれる。
【0033】
本明細書中で使用される「改善された結晶粒構造」およびその変形形態は、例えば結晶粒の粒質、結晶粒の均一性および結晶粒の粒径および/または形状、結晶粒の配向などの半導体材料の任意の1つ以上の結晶粒特徴の改善を意味し、半導体材料を生産するための従来の方法に比べて第2の半導体材料物品が受ける必要のある後処理の量を削減し得る。
【0034】
本明細書中で使用される「柱状結晶粒」という用語は、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対し実質的に平行な方向に成長する結晶を含む。
【0035】
本明細書中で使用される「改善された表面特性」とは、例えば表面トポグラフィおよび表面外観などの任意の1つ以上の表面特性の改善を意味する。改善された表面特性には同様に、例えば均一の厚みを作り出すおよび/または半導体材料物品の厚みを削減する半導体材料物品の厚みの改善も含まれていてよい。
【0036】
本明細書中で使用される「結晶の」という用語は、例えば多結晶(multicrystalline)半導体材料を含めた結晶構造を含むあらゆる材料を意味する。
【0037】
本明細書中で使用される「多結晶の(multicrystalline)」という用語には、複数の結晶粒で構成されたあらゆる材料が含まれる。
【0038】
本明細書中で使用される「非晶質の」という用語は、長距離秩序が欠如したあらゆる材料を含む。
【0039】
本明細書中で使用される「溶融した第1の半導体材料物品の熱含量」という表現およびその変形形態は、溶融した第1の半導体材料物品の平均熱含量を意味する。溶融半導体材料内部の局部温度は、例えば第1の半導体材料物品が加熱された場合の熱源に近い溶融半導体材料の部域、あるいは大気条件に曝露された溶融半導体材料など、任意の時点において変動し得る。さまざまな実施形態において、溶融半導体材料の平均熱含量は、いかなる局部濃度変動にも関わらす、実質的に均一である。
【0040】
本明細書中で使用される「溶融体プール」という用語は、第1の半導体材料物品上またはその内部に収集された溶融材料の量を意味し、ここで溶融材料は、第1の半導体材料物品とほぼ同じ組成を含み、第1の半導体材料物品の少なくとも一部分を溶融状態にするのに充分な熱源に第1の半導体材料物品を曝露することによって形成される。
【0041】
本明細書中で使用される「第1の半導体材料物品を溶融させるのに充分なほどに第1の半導体材料物品を加熱する」という表現は、第1の半導体材料物品が第1の半導体材料物品を任意の方向で部分的にまたは完全に溶融させるのに充分なだけ加熱されることを意味する。例えば、一実施形態において、第1の半導体材料物品は、第1の半導体材料物品の上面、底面および/または任意の少なくとも1つの側面を起源とする方向に第1の半導体材料物品を部分的または完全に溶融させるのに充分なほど加熱されてよい。
【0042】
本明細書中で使用される「溶融(した)(molted、molten)」およびその変形形態には互換性がある。
【0043】
本明細書中で使用される「キャッピング層」という用語は、溶融した第1の半導体材料物品の表面積の削減を実質的に阻害するため、本明細書中に記載されている加熱ステップに先立ち第1の半導体材料物品の少なくとも1つの表面上で全体または一部に被着および/または形成されてよい任意の1つまたは複数の材料を意味する。
【0044】
本明細書中で使用される「固化」という用語およびその変形形態は、固体にすること(すなわち、液体から固体へと形態を変化させること)を意味する。
【0045】
本明細書中で使用される「方向性固化」という用語は、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向に溶融した第1の半導体材料物品を固化する方法を意味する。
【0046】
本明細書中で使用される「固体/液体界面」という用語は、固体半導体材料と液体(すなわち溶融した)半導体材料とを実質的に分離する共通の境界とみなされる表面を意味する。本開示に関して、固体/液体界面全体(すなわちマクロスケールで)は溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に垂直であり得るが、任意の特定の場所での(すなわちミクロスケールでの)固体/液体界面の検査は幾分かの方向不規則性(すなわち実質的に垂直ではない)を示し得ると理解される。マクロスケールでは溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に垂直であるもののこのような方向の微細な不規則性を有し得る固体/液体界面は、本開示の目的では「固体/液体界面」であるとみなされる。
【0047】
本明細書中で使用される「垂直方向」という用語およびその変形形態は、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向を意味する。
【0048】
本明細書中で使用される「横方向」という用語およびその変形形態は、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に垂直な方向を意味する。
【0049】
本明細書中に記載されているように、本開示は、半導体材料物品の製造または処理方法およびそれによって製造および/または処理された半導体材料物品に関する。以下の説明において、一部の態様および実施形態が明白になる。本発明はその広い意味において、これらの態様および実施形態の1つ以上の特徴を有することなく実践できると考えられることを理解すべきである。さらにこれらの態様および実施形態は単に例示的かつ説明的であるにすぎず、特許請求されている本発明を限定するものではない。
【0050】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかである。
【0051】
以下で説明されるおよび明細書の中に包含されその一部を構成する以下の図面は、本開示による例示的実施形態を示し、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。なぜなら、本発明は他の同等に有効な実施形態を許容し得るからである。図面は必ずしも原寸に比例しておらず、図面の一部の特徴および一部の図は、明確さおよび簡潔さを期して、縮尺または概略的に誇張して示されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本開示の1つの例示的実施形態による溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法を概略的に表わしている。
【図2A】1つの例示的実施形態による第1の半導体材料物品の概略図である。
【図2B】1つの例示的実施形態による第1の半導体材料物品の加熱の概略図である。
【図2C】1つの例示的実施形態による溶融した第1の半導体材料物品の方向性固化の概略図である。
【図2D】1つの例示的実施形態による第2の半導体材料物品の概略図である。
【図3】例示的実施形態による固化速度の一関数としてのスループットの関係を示すダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
ここで、その少なくとも1つを添付図面に示したさまざまな例示的実施形態に言及する。ただし、これらのさまざまな例示的実施形態は、本開示を限定することを意図されたものでなく、むしろ、本発明を完全に理解できるようにする目的で、数多くの具体的な細部が説明されている。当業者にとっては、これらの具体的な細部の一部または全てを含むことなく本発明を実施してよいということは明らかであり、本開示は、変形形態、修正および均等物を網羅するように意図されている。例えば、周知の特徴および/または方法ステップは、不必要に本発明を曖昧にしないように詳細に説明されていない場合もある。添付図面では、類似のまたは同一の参照番号は一般的または類似の要素を特定するために使用されている。
【0054】
本発明は、第2の半導体材料物品を製造するかまたは第1の半導体材料物品を処理する方法において、第1の半導体材料物品を提供するステップと、第1の半導体材料物品を溶融させるのに充分なほどに第1の半導体材料物品を加熱するステップと、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対し実質的に平行な方向で、例えば厚み(例えば約200マイクロメートル)の方向で溶融した半導体材料を固化させるステップと、を含むさまざまな例示的方法を企図している。溶融した第1の半導体材料物品20の最短寸法10の例示的実施形態は、図1に破線で示されている。一実施形態において、第1の半導体材料物品は部分的または完全に溶融させられ、それに続いて、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法(例えば厚み)に対して実質的に平行な方向に固化される。本開示は同様に、本明細書中に記載されているプロセスにより製造された第2の半導体材料物品のさまざまな例示的実施形態をも企図している。
【0055】
本開示による例示的実施形態において、例えば網状シリコン(例えば15cm×15cm×200マイクロメートル)などの第1の半導体材料物品を形成する方法は、粒径および欠陥密度を改良する方法から切り離されてよい。第1のステップでは、当業者にとって公知のあらゆる方法により、第1の半導体材料物品が形成されてよい。単なる一例として、所望の厚みのシリコンを、PCT米国特許出願第09/01268号明細書中で開示されたエクソキャスティングプロセスにより高いスループットで生産してよい。6000cm/分さらにはそれ以上のスループットなどの高いスループットがこれらのプロセスによって達成され得る。多重化(すなわち多数の第1の半導体材料物品が同時に形成される)によりスループットを著しく増加させて溶融装置/炉スペースの効率の良い利用が可能となり得る。
【0056】
これらのハイスループットプロセスによって形成された第1の半導体材料物品は、一部の実施形態において、意図された利用分野のための最適な結晶品質(例えば粒径分布、配向、欠陥密度、表面特性)を有していない場合もある。これは、高い浸漬/引上げ速度(スループット)と欠陥濃度の間の逆相関に起因している可能性がある。このため、第1の半導体材料物品は、本明細書中に記載されているさまざまな方法にしたがってさらに処理されてよい。
【0057】
第1の半導体材料物品を提供した後、第1の半導体材料物品を部分的または完全に溶融させるのに充分なだけ加熱し、次に溶解した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向に固化してよい。少なくとも一部の実施形態において、第1の半導体材料物品は、加熱および/または方向性固化ステップのため基板上に提供されてよい。基板の非限定的な例としては、セラミック、ガラスおよび黒鉛基板およびそれらの混合物が含まれる。さらなる例示的実施形態においては、基板材料は、縮小された形態などの半導体材料自体の分散粒子を含む混合物であってもよい。例えば、基板はシリコン/シリカ複合材料を含んでいてよい。基板材料(例えば熱伝導率、密度、比熱、気孔率、厚みなど)およびプロセスパラメータ(基板温度、熱源温度など)を適切に選択することにより、第2の半導体材料物品中に比較的低い厚み変動性が達成され得る。
【0058】
さまざまな例示的実施形態において、第1の半導体材料物品を少なくとも1つの熱源によって加熱してよい。例えば、一実施形態において、第1の半導体材料物品の加熱ステップには、熱源に対して第1の半導体材料物品の底面または上面を曝露するステップが含まれる。別の実施形態において、第1の半導体材料物品の加熱ステップには、第1の半導体材料物品の上面を第1の熱源にそして第1の熱源と同一であっても異なるものであってもよい第2の熱源に第1の半導体材料物品の底面を曝露するステップが含まれる。
【0059】
当業者であれば、本明細書中に記載されている方法のいずれかの特定の実施形態にしたがって有用である第1の半導体材料物品を加熱するための加熱技術およびパラメータを決定することができる。さまざまな例示的実施形態において、熱源は局所的に適用されてよく、かつ、第1の半導体材料物品を溶融させるための充分な熱流束のものであってよい。例えば、米国特許出願第12/156.499号明細書中で開示され請求されている加熱方法のいずれかなど、第1の半導体材料物品を部分的または完全に溶融させるために充分な熱流束を提供できるあらゆる加熱方法を使用してよい。このような加熱方法には、例えば、燃焼熱源(トーチ)、放電源(プラズマ)、赤外線放射(抵抗素子、電球)、およびそのいずれかの組合せが含まれる。さらに、熱源はさまざまな例示的実施形態において、蓄熱体(すなわち例えば黒鉛ブロックなどを含めた、加熱可能なあらゆる材料)、水素/酸素トーチ、水素/ハロゲントーチ(例えば水素/塩素トーチ)、任意には二酸化シリコン封入型タングステン電極を含むタングステン不活性ガス(TIG)トーチ、IRランプ例えばハロゲンランプおよびレーザーアレイ、アルゴンまたはヘリウムプラズマトーチ、放電源、アークランプおよび炭素棒、例えば炭素が溶融半導体材料内に進入するかまたは他の形でそれを汚染するのを防ぐため任意には封入されてよいRF加熱型炭素棒の中から選択されてよい。
【0060】
一部の例示的実施形態においては、溶融した第1の半導体材料物品の汚染をひき起こさない熱源を使用することが有利であり得る。一例として、処理されつつある第1の半導体材料物品がシリコンである場合、シリカノズルを伴う熱源を使用してよい。他の例示的実施形態においては、余剰の水素を伴う水素/酸素トーチを使用することが有利であり得る。熱源は、一部の実施形態において、単一オリフィスノズルタイプまたは多重ラインまたは造形ノズルであってよい。少なくとも1つの実施形態において、熱源は多重のラインまたは造形放射熱源であってよい。
【0061】
第1の半導体材料物品を溶融させるための適切な加熱パラメータは、いずれの特定の実施形態についても当業者によって容易に決定されてよい。例えば、当業者は、第1の半導体材料物品のサイズおよび/または、所望される半導体材料の溶融体プールあるいはその両方に相応するように熱源のサイズおよび/または形状を選択してよい。さらに、熱流量および熱が適用される時間的長さを、生成すべき溶融体プールのサイズ、制御すべき熱流束および本発明を実践している当業者が容易に決定できる他の因子などに応じて変動させてよい。熱源は一部の実施形態において、例えば一つのアレイの形に配置された多数の熱源などの多重熱源を含んでいてよい。熱源は、さまざまな例示的実施形態において、固定型または可動型であってよい。熱源は同様に、さまざまな実施形態において、組合されたもの、すなわち「ハイブリッド熱源」であってもよい。非限定的な例として、ハイブリッド熱源は、トーチまたはアークと組合わされたIRランプを含んでいてよい。
【0062】
溶融体プールを作り出すための適切な温度は、例えば半導体材料の溶融温度以上であってよい。例えば、第1の半導体材料物品は、約900℃〜約1650℃以上の範囲内の温度まで加熱されてよい。非限定的な例として、半導体材料は約1350℃から約1450℃まで加熱されてよい。さらなる非限定的例として、第1の半導体材料物品がシリコンである場合、それは1414℃から約1650℃まで加熱されてよい。当業者であれば、溶融体プールを作り上げるための適切な温度が、例えば第1の半導体材料物品の組成、その加熱条件などの因子に応じて変動し得るということを十分理解するものである。
【0063】
一部の実施形態においては、第1の半導体材料物品の放射率変化を観察することにより熱流束の適用を監視し得るだろう。例えば、半導体材料がシリコンまたはシリコン合金から選択される実施形態においては、熱源の適用時点で、白熱の増大により温度上昇を監視することができる。しかしながら、溶融の時点で、溶融した部域がより熱いものであるという事実にも関わらず、放射率は降下し、それに相応して輝度が減少し得る。例えば溶接用色ガラスを通して見た場合、当業者は、未溶融材料の輝度がより高いものであることに気付き、したがって、溶融体プールが作り出されている点を決定し得る。
【0064】
任意の特定の実施形態による望ましい加熱方法および加熱パラメータは、例えば、第1の半導体材料物品を構成する半導体材料、それがドープされているか否か、部分的または完全な溶融のいずれが所望されているか、第2の半導体材料物品の所望の特性、および当業者の判定および評価能力内に充分入る他のパラメータによって左右され得る。
【0065】
さまざまな実施形態において、さまざまな半導体材料の表面張力、例えばシリコン(約600dynes/cm)など起因して、加熱に先立ち、追加のステップが任意選択的に行なってもよい。高張力液膜は、その表面を収縮させて表面エネルギーを最小限におさえ「丸くなる(ball up)」自然の傾向を有する。したがって、溶融の時点で、液膜は基板上で平坦でなくてよく、これを一部の実施形態で使用してよい。少なくとも1つの実施形態において、重力が表面張力の収縮力を克服できるように充分大きい厚みを有することが望ましいこともある。別の実施形態では、加熱の前または加熱中に、第1の半導体材料物品の少なくとも1つの表面上にキャッピング層を被着または形成させてよい。当業者であれば、このようなキャッピング層が任意の特定の実施形態にとって所望されるか否かを容易に判定できる。
【0066】
第1の半導体材料物品が加熱ステップによりひとたび部分的または完全に溶融されたならば、溶融した第1の半導体材料物品は、その熱含量を抽出することにより、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向に固化される。理論による束縛は望まないものの、方向性固化が第2の半導体材料物品の最終的微細構造(すなわち粒径、配向など)および欠陥密度を少なくとも一部分制御し得ると考えられている。これらの特性は両方共、固体−液体界面形状および固体/液体界面速度(すなわち固化速度)に大きく左右されることから、方向性固化を適切に制御することによって、大きい柱状結晶粒ならびに低い欠陥密度を有する第2の半導体材料物品が成長し得る。少なくとも1つの実施形態において、固体−液体界面は、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に垂直にとどまる。固体−液体界面は、例えば、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に垂直であり続けながら、溶融した第1の半導体材料物品の少なくとも1つの表面から反対側の表面まで移動してよい。さらなる実施形態において、固体−液体界面は、熱エネルギーの1つまたは複数の供給源の如何に関わらず、少なくとも1つの表面および少なくとも1つの追加の表面から同じまたは変動する速度で移動してよい(例えば2つ以上の側面からの方向性固化)。少なくとも一部の実施形態において、方向性固化ステップ中の任意の点において、固体−液体界面が溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に垂直な状態に確実にとどまるように横方向の温度分布を可能なかぎり均質にすることが重要であり得る。
【0067】
一実施形態において、第1の半導体材料物品、溶融した第1の半導体材料物品、少なくとも1つの熱源、および/または少なくとも1つの基板は、本明細書中に記載されている加熱および/または固化ステップの間、実質的に静止状態にとどまってよい。例えば、一実施形態において、第1の半導体材料物品は、第1の半導体材料物品および/または少なくとも1つの熱源が実質的に静止状態にとどまっていてよい間、第1の半導体材料物品を部分的または完全に溶融させるのに充分なほど加熱されてよく、かつ溶融した第1の半導体材料物品は、溶融した第1の半導体材料物品および/または少なくとも1つの熱源が実質的に静止状態にとどまっていてよい間、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向で固化させられる。別の実施形態では、溶融した第1の半導体材料物品は、少なくとも1つの熱源が、溶融した第1の半導体材料物品から離れるように垂直方向に移動させられて溶融した第1の半導体材料物品を固化してよい間、実質的に静止状態にとどまってよい。
【0068】
本明細書中に記載されている加熱および方向性固化プロセスの例示的実施形態が、図2A、2B、2Cおよび2Dに示されている。図2Aに示された例示的実施形態においては、例えばシリコン1などの第1の半導体材料物品が提供される。図2Bおよび2Cに示された加熱および方向性固化プロセスは、あらゆる第1の半導体材料物品に適用されてよく、当業者であれば、例えば使用される第1の半導体材料物品のタイプと厚み、固化された半導体材料内に所望される特性および/または熱源のタイプなどに応じてどのような変形形態(該当する場合)が必要であるかを容易に判定することができる。図2Aに示されている例示的実施形態では、プロセスは、蓄熱体3と接触している高温セラミック基板などの基板2上に第1の半導体材料物品、シリコン1を設置することから開始する。基板2の上にシリコン1を設置する前に、キャッピング層4がシリコン1の2つの実質的に平面である表面上に被着されるが、他の実施形態では、任意の基板上に第1の半導体材料物品が設置される前および/または後に第1の半導体材料物品の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つのキャッピング層を被着させてよいかあるいは、どの時点においても第1の半導体材料物品の上にキャッピング層は被着されない。蓄熱体3の温度は、所望の速度で変更されてよい。第1の半導体材料物品の少なくとも1つの表面上に、例えばシリカなどの少なくとも1つの断熱層が提供されてもよい。例えば、図2Aからわかるように、シリコン1の2つの垂直な側面は、2つの断熱層5を枠組みとしている。シリコン1の2つの側面上の垂直の断熱層5の目的は、横方向における温度勾配を最小限におさえ、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法の方向に固化することにある。シリコン1の上には、上部加熱器6が設置されている。図2Bの例示的実施形態においては、上部加熱器6の目的は、シリコン1を完全に溶融させることにある。図2Bの上部加熱器6は、シリコン1の融点よりも高い温度に設定され、上部加熱器6と蓄熱器3の両方の温度は、シリコン1a全体を完全に溶融させるのに充分な時間保持されるが、他の実施形態においては、シリコン1は部分的にのみ溶融されてよい。この段階で、シリコン1は、図2Bに示されているように、キャッピング層4の間で完全に溶融1aされる。
【0069】
その後、図2Cからわかるように、蓄熱器3の温度は、底面から上面に向かって、すなわち溶融したシリコン1aの最短寸法に対して実質的に平行な方向で、溶融したシリコン1aを指向的に固化させるように制御された速度で低下してよい。同様に、図2Cにおいては、固体(1b)−液体(1a)界面7が、方向性固化の間、溶融したシリコンの最短寸法に対して実質的に垂直にとどまるということもわかるだろう。図2Cに見られる方向性固化ステップの後、溶融したシリコン1aは、図2Dからわかるように、固化されたシリコンの第2の半導体材料物品1bである。一実施形態において、シリコン1、溶融したシリコン1a、固化したシリコン1b、基板2、蓄熱体3、キャッピング層4、垂直断熱層5、および/または上部加熱器6は、例示的実施形態図2Bおよび2Cに示された加熱および/または方向性固化のステップ中、実質的に静止状態に保たれてよい。
【0070】
一般に、方向性固化は、第1の半導体材料物品の上面および/または底面から開始されてよい。図2Cに示されているように固化が底面からである場合、蓄熱器3の温度を低下させること、例えば蓄熱体3の温度をゆっくりと低下させることにより、方向性固化を達成してもよい。Vという固化速度については、溶融した第1の半導体材料物品から除去すべき潜熱の量は以下の通りである:
=(LW)VρΔH (1)
なお式中、第1の半導体材料物品の矩形の実施形態については、例えば、Lは長さであり、Wは幅であり、ρは密度であり、ΔHは融解潜熱である(例えばシリコンについては1800J/g)。一例としては、15cm×15cmのシリコンシート内で100マイクロメートル/秒の一定の固化速度を維持するためには、約10kwの熱除去速度が求められる。少なくとも1つの実施形態において、固化速度は、約10〜約1000マイクロメートル/秒の範囲の速度で生じる。
【0071】
加熱された第1の半導体材料物品と接触した時点で充分安定しており、一定程度の断熱値を提供し、好ましくは、半導体材料の汚染をひき起こさないことを条件として、少なくとも1つの断熱層は、熱流束の管理を補助できるあらゆる材料を含んでいてよい。少なくとも1つの断熱層に適した材料の非限定的例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、イットリアおよびハフニアおよびそれらの混合物および化合物、ならびにそのガラス質形態が含まれる。さまざまな例示的実施形態において、少なくとも1つの断熱層は、材料(これには2つ以上の化合物の混合物または固溶体が含まれ得る)の熱伝導率および拡散性に起因する高密度のモノリシック形態などの本質的に熱抵抗を付与する形態、またははるかに伝導率の低い実質的に均一に分布した材料の体積分率を含むように材料の微細構造および/またはメソ構造を工学処理することにより熱抵抗を付与する形態であってよい。このような材料は、さまざまな形態、単なる一例として粒子ベッド(ナノメートルから約0.1ミリメートル、すなわち煤から砂の粒径のもの);不織布例えば、耐火材料の包埋微粒子を含めた耐火材料の繊維で作られたフェルトまたはベール;織物;そして単独または組合せた形での上述のもののいずれかの焼結したただし完全に高密度化されていないバージョンであり得る。
【0072】
溶融した第1の半導体材料物品の熱含量は、当業者にとって公知のあらゆる形で抽出されてよい。例えば一実施形態において、最上部からの熱流束(流入)は、溶融した第1の半導体材料物品から熱含量を抽出する目的で底部からの熱流束(流出)を増大させることに加えてかまたはその代りとして、削減されてよい。別の実施形態において、溶融した第1の半導体材料物品の熱含量は、熱源と半導体材料の間の距離を増大させることによって抽出されてよい。熱源が火炎を含む場合などの別の例示的実施形態において、溶融した第1の半導体材料物品の熱含量の抽出は、より大きい表面積にわたり熱源の火炎を拡げることによって実施されてよい。さらに別の実施形態において、溶融した第1の半導体材料物品の熱含量は、少なくとも1つの熱源の温度を低下させること、基板が使用される場合には少なくとも1つの基板の温度を制御すること、そして活発に冷却することのうちの少なくとも1つによって抽出されてよい。
【0073】
さまざまな実施形態において、固化の速度および方向を精確に制御してよく、したがって、固体−液体界面も同様にして、形態不安定性についての臨界速度よりも低い速度でそれが成長するような形に制御されてよい。理論による束縛は望まないが、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に垂直である細胞状界面および亜結晶粒界の形成は、本明細書に記載の方向性固化プロセスによって防止または最小化され、それによりさらに高品質の結晶粒構造が導かれてよいと考えられている。温度勾配を溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行に維持することにより、柱状結晶粒が溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対し実質的に平行に成長し得る。溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な柱状結晶粒は、傾斜した粒界による正孔および電子の妨害を最小限におさえ、それにより、第2の半導体材料物品を含むデバイスの効率が上昇し得る。
【0074】
高いスループットが所望されるさまざまな実施形態において、低い固化速度(約100ミクロン/秒)は、少なくとも一部の実施形態において、本明細書に記載の第1の半導体材料物品上での方向性固化を実施することによって、スループットを妥協をすることなく達成され得る。固化速度は例えば約100マイクロメートル/秒にすぎない場合もあるが、固化距離も同様に一部の実施形態において、垂直方向に例えば約200マイクロメートルなどという比較的小さいものであり得る。したがって、このような例示的実施形態において、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向での固化のためには、わずか約2秒という処理時間しか必要とされない場合もある。この例示的実施形態は、なおも高いスループットを維持しながら相対的に低い速度での固化を達成できることを実証している。本明細書に開示の通り、横方向での固化と本明細書で開示されている垂直方向での固化(すなわち方向性固化)の両方に対応する固化速度の一関数としてのスループットの計算が、図3に示されている。円は横方向固化に対応し、正方形は垂直方向固化に対応する。図3からわかるように、破線の垂直線によって示されている実験的に観察された「臨界走査速度」より上では、固体−液体界面は細胞状/樹枝状(C/D)となり、第2の半導体材料物品中で亜結晶粒界を導き得る。この臨界走査速度を超えて走査速度が大きくなればなるほど、欠陥構造は劣化し得る。固化速度がこの臨界走査速度より低い場合には、固体−液体界面で安定した平面前線(Stable Planar Front)(SPF)が得られる場合があり、これにより、いかなる亜結晶粒界も無い固化された結晶構造が導かれ得る。
【0075】
別の実施形態には、第1の半導体材料物品の面積全体にわたる溶融および固化ではなくむしろ、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向での第1の半導体材料物品の領域の溶融および固化(「スポット溶融」)が関与する。スポット溶融は、例えば水素トーチを用いて行なってよく、溶融される領域の面積は、全体的火炎の形状および温度の一関数であり、単純なハンドトーチ上で数平方ミリメートルから10平方センチメートルまで容易に変動してよい。このような領域的溶融および方向性固化を達成するためには、任意の集束熱源(放射型または対流/伝導型)を使用してよい。高温スポットの適用が唯一の事象である必要はないということも理解すべきである。例えば、第1の半導体材料物品に対してこのようなスポットを同時に多数適用してもよい。スポットは重複してもよいししなくてもよい。しかしながら、重複がない場合、二次溶融アニールまたは部分溶融(片側)を起していながら全面的には再構成されなかった可能性のある周囲領域が存在し得ることから、結果として微細構造の質はより劣化する可能性がある。
【0076】
別の例示的実施形態においては、第1の半導体材料物品を部分的にまたは完全に溶融させ、溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向で固化し、次に後続して部分的または完全な溶融と方向性固化ステップを少なくともさらに一回反復することが望ましい場合もある。少なくとも1つの例示的実施形態においては、連続的溶融および方向性固化のプロセスを所望の回数だけ反復してよく、これは半導体材料物品の結晶構造および/または表面特性をさらに改善し得る。
【0077】
本開示のさまざまな例示的実施形態によると、本明細書に記載の方法は、周囲条件下、例えば空気中で行うことができ、あるいは、例えばアルゴン、水素またはその混合物を含むエングロージャ(例えばグローブボックス)内などの制御された環境の中で行われてよい。
【0078】
本開示のさまざまな例示的方法は、第1の半導体材料物品を提供すること、第1の半導体材料物品を溶融させるのに充分なだけ第1の半導体材料物品を加熱することそして溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対して実質的に平行な方向で第1の半導体材料物品を固化させることによって、第1の半導体材料物品の結晶粒構造および表面特性の少なくとも1つを改善してもよい。
【0079】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されている単数形態「a」、「an」および「the」は、明示的かつ無条件に1つの指示対象に限定されているのでないかぎり、複数の指示対象を含み、その逆も同様であるという点に留意されたい。したがって、単なる一例として、「熱源(a heat source)」に対する言及は1つ以上の熱源を意味することができ、「半導体材料(a semiconducting material)」に対する言及は、1つ以上の半導体材料を意味することができる。本明細書中で使用される「含む(includes)」およびその文法的変形形態は非限定的であるように意図され、そのため複数の品目をリストに列挙することは、列挙された品目に置換または追加され得る他の同様の品目を排除するものではない。
【0080】
当業者にとっては、本開示に対し、その教示の範囲から逸脱することなくさまざまな修正および変更を加えることができるということは明らかである。明細書を考慮し、本明細書で開示されている教示を実践することにより、当業者にとって、本開示による他の実施形態は明白になる。明細書中に記載された実施形態は単なる一例としてみなされることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の半導体材料物品を製造する方法において、
第1の半導体材料物品を提供するステップと;
前記第1の半導体材料物品を溶融させるのに充分なほどに前記第1の半導体材料物品を加熱するステップと;
前記溶融した第1の半導体材料物品の最短寸法に対し実質的に平行な方向で前記溶融した第1の半導体材料物品を固化させるステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加熱ステップに先立ち前記第1の半導体材料物品の表面上に少なくとも1つのキャッピング層が形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の半導体材料物品がシリコン、シリコンの合金および化合物、ゲルマニウム、ゲルマニウムの合金および化合物、ガリウムヒ素、ガリウムヒ素の合金および化合物、錫の合金および化合物、二酸化チタンの合金および化合物ならびにそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固化が約10〜1000マイクロメートル/秒の範囲内の速度で発生することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの断熱層が前記第1の半導体材料物品の少なくとも1つの表面上に提供されることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−512854(P2013−512854A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543192(P2012−543192)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/059201
【国際公開番号】WO2011/071857
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】