説明

半導体用接着フィルム、半導体用接着フィルム付きリードフレーム及びこれらを用いた半導体装置

【課題】リードフレームに対して十分な接着性を有しつつ、封止後に室温で容易に剥離できる半導体用接着フィルム、これを用いたリードフレーム及び半導体装置を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるイミドジカルボン酸とジイソシアナートとを共重合させた樹脂(a)からなる樹脂層Aが支持フィルムの少なくとも片面に形成されており、半導体用接着フィルムをリードフレームに接着した後の樹脂層Aとリードフレームとの25℃における90度ピール強度が5N/m以上であり、且つ半導体用接着フィルムを接着したリードフレームを封止材で封止した後の樹脂層Aとリードフレーム及び封止材との25℃における90度ピール強度が1000N/m以下である半導体用接着フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレーム裏面に接着フィルムを貼り付けて保護し、その後リードフレームの表面に半導体素子を接着し、封止後に前記接着フィルムを引き剥がして半導体装置を得る半導体装置の製造方法に使用される半導体用接着フィルムに関する。特に封止後にリードフレーム及び封止材から室温において簡便に引き剥がすことにより、半導体装置を高い作業性で製造するための半導体装置の製造方法に使用される半導体用接着フィルム、半導体用接着フィルム付きリードフレーム及びこれらを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置(以下、「半導体パッケージ」ともいう)は、ダイパッド面上に銀ペースト等の接着剤により半導体素子を接着し、これとリードフレームをワイヤで接合した後に、外部接続用のアウターリードを残して全体を封止する構造の半導体パッケージが用いられてきた。しかし近年、半導体パッケージの高密度化、小面積化、薄型化等の要求に伴い、さまざまな構造のパッケージが開発されてきている。その中には、例えば、LOC(lead on chip)やCOL(chip on lead)構造等があるが、小面積化、薄型化の点では限界がある。
【0003】
一方、これらの課題を解決するために、半導体パッケージの片面(半導体素子側)のみを封止し、裏面むき出しのリードフレームを外部接続用に用いる構造の半導体パッケージが開発されてきた(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。この構造の半導体パッケージはリードフレームが封止材から突出していないので、小面積化及び薄型化が図れる。この半導体パッケージ構造の半導体装置を製造する方法の一つとして、次に示す工程を含む製造方法がある。
(1)リードフレーム裏面に半導体用接着フィルムを接着する工程。
(2)リードフレームのダイパッド面に半導体素子を接着する工程。
(3)リードフレームのインナーリードと半導体素子を接続する工程。
(4)封止材で封止する工程。
(5)封止材を硬化する工程。
(6)半導体用接着フィルムをリードフレーム及び封止材から引き剥がす工程。
【0004】
この方法による半導体装置の製造において、封止材で封止する工程で、リードフレーム裏面に封止樹脂が回りこむ等の問題が起こり易かった。また、半導体用接着フィルムを封止材で封止した後のリードフレームや封止材から引き剥がす工程で、接着剤とリードフレームや封止材が強固に接着してしまい、室温で剥がすことができない問題や、接着剤が支持フィルムから剥離してリードフレームや封止材に付着する問題があった。また、室温で半導体用接着フィルムの引き剥がしが困難な場合、熱をかけて引き剥がすことがあり、作業性が低下する問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−129473号公報
【特許文献2】特開平10−12773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みなされたもので、半導体装置の製造方法に使用される半導体用接着フィルムであって、リードフレーム裏面に接着後、リードフレームに対して十分な接着性を有し、且つ封止材で封止した後のリードフレームや封止材から室温で容易に剥離でき、半導体装置を高い作業性で製造することができる半導体用接着フィルム、これを用いたリードフレーム及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)リードフレーム裏面に接着フィルムを貼り付けて保護し、その後リードフレームのダイパッド面に半導体素子を接着し、封止材で封止した後に引き剥がす方法に使用される、支持フィルム及び樹脂層Aを有する半導体用接着フィルムであって、
前記樹脂層Aは、一般式(I)
【0008】
【化1】

(X及びXはそれぞれ独立に0〜5の酸素原子及び0〜5の窒素原子を含むC3〜C20の二価の有機基である。)で表されるイミドジカルボン酸とジイソシアナートとを共重合させた樹脂(a)からなり、且つ前記支持フィルムの少なくとも片面に形成されており、
前記半導体用接着フィルムをリードフレームに接着した後の前記樹脂層Aと前記リードフレームとの25℃における90度ピール強度が5N/m以上であり、且つ前記半導体用接着フィルムを接着した前記リードフレームを前記封止材で封止した後の、樹脂層Aとリードフレーム及び封止材との25℃における90度ピール強度が1000N/m以下である半導体用接着フィルム。
(2)前記イミドジカルボン酸が一般式(II)
【0009】
【化2】

(X及びXはそれぞれ独立に0〜5の酸素原子と芳香環を1〜3個有する二価の有機基である。)で表される化合物である前記(1)に記載の半導体用接着フィルム。
(3)前記ジイソシアナートが分子内に芳香環を有する化合物である前記(1)又は(2)に記載の半導体用接着フィルム。
(4)前記樹脂層Aの厚さ(A)と支持フィルムの厚さ(C)との比(A/C)が、0.5以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(5)前記樹脂層Aの厚さが1〜20μmである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(6)前記支持フィルムの材質が、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン及びポリエチレンナフタレートよりなる群から選ばれるものである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(7)前記支持フィルムのガラス転移温度が、200℃以上である前記(6)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(8)前記支持フィルムの材質が、銅、アルミニウム、ステンレススティール及びニッケルよりなる群から選ばれるものである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(9)前記支持フィルムの厚さが、5〜100μmである前記(1)〜(8)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(10)前記支持フィルムの20〜200℃における線熱膨張係数が3.0×10−5/℃以下である前記(1)〜(9)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(11)前記支持フィルムの200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.15%以下である前記(1)〜(10)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(12)前記支持フィルムの片面に前記樹脂層Aが形成されており、その反対面に樹脂層Bが形成され、前記樹脂層Bは230℃における貯蔵弾性率が10MPa以上であり、且つ接着性を有しない樹脂層である前記(1)〜(11)のいずれかに記載の半導体用接着フィルム。
(13)前記(1)〜(12)のいずれかに記載の半導体用接着フィルムが接着された半導体用接着フィルム付きリードフレーム。
(14)前記(1)〜(12)のいずれかに記載の半導体用接着フィルムの樹脂層Aが、リードフレームのダイパットの反対面に前記樹脂層Aで接着された前記(13)記載の半導体用接着フィルム付きリードフレーム。
(15)前記(1)〜(12)のいずれかに記載の半導体用接着フィルムを有する半導体用接着フィルム付き半導体装置。
(16)前記半導体装置は、支持フィルムと該支持フィルムの片面に形成される樹脂層Aを有する半導体用接着フィルムと、ダイパット及びインナーリードを有し且つ前記半導体用接着フィルムが樹脂層Aに前記ダイパットの反対面で接着されるリードフレームと、前記ダイパッドに接着された半導体素子と、前記半導体素子と前記インナーリードとを接続するワイヤと、前記リードフレームの露出面及び半導体素子及びワイヤを封止する封止材とを備えている前記(15)記載の半導体用接着フィルム付半導体装置。
(17)前記(15)又は(16)記載の半導体用接着フィルム付き半導体装置から半導体用接着フィルムを剥離して得られる半導体装置。
(18)前記(1)〜(12)のいずれかに記載の半導体用接着フィルムを用いて作製した半導体装置。
(19)前記(13)に記載の半導体用接着フィルム付きリードフレームを用いて作製した半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、リードフレームに接着後、リードフレームに対して十分な接着性を有し、封止材で封止した後のリードフレームや封止材からは室温で容易に剥離でき、半導体装置を高い作業性で製造することができる半導体用接着フィルム、これを用いたリードフレーム及び半導体装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明の半導体用接着フィルムは、リードフレーム裏面に接着フィルムを貼り付けて保護し、その後リードフレームのダイパッド面に半導体素子を接着し、封止材で封止した後に引き剥がす工程を含む半導体装置の製造方法に使用されるものであり、支持フィルムと樹脂層Aを有する半導体用接着フィルムであって、
前記樹脂層Aは、下記一般式(I)
【0012】
【化3】

(X及びXはそれぞれ独立に0〜5の酸素原子及び0〜5の窒素原子を含むC3〜C20の二価の有機基である。)で表されるイミドジカルボン酸とジイソシアナートとを共重合させた樹脂(a)からなり、且つ前記支持フィルムの少なくとも片面に形成されており、
前記半導体用接着フィルムをリードフレームに接着した後且つ封止前の樹脂層Aとリードフレームとの25℃における90度ピール強度(以下、「封止前の90度ピール強度」ともいう)が5N/m以上であり、且つ半導体用接着フィルムを接着したリードフレームを封止材で封止した後の、接着層Aとリードフレーム及び封止材との25℃における90度ピール強度(以下、「封止後の90度ピール強度」ともいう)が1000N/m以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明において、25℃における90度ピール強度は、例えば、JIS Z 0237の90度引き剥がし法に準じて、リードフレームに対して半導体用接着フィルムを90度方向に引き剥がして測定する。具体的には、25℃において、毎分300mmの速さで、リードフレームに対して半導体用接着フィルムを90度方向に引き剥がす際のピール強度を、90度剥離試験機(テスタ産業株式会社製)で測定する。なお上記方法は、「封止前の90度ピール強度」及び「封止後の90度ピール強度」共通の測定方法である。
本発明において、「封止前の90度ピール強度」及び「封止後の90度ピール強度」は、本発明の半導体用接着フィルムを用いて半導体装置を製造する段階で得られる「半導体用接着フィルムがリードフレーム裏面に接着した、封止材で封止する前のサンプル」(以下、「封止前ピール強度サンプル」ともいう)及び「リードフレームのダイパット面に半導体素子を接着し、封止材で封止した後のサンプル」(以下、「封止後ピール強度サンプル」ともいう)を測定用のサンプルとして用い、それぞれ測定した値とする。サンプルの作製について具体的に後述する。
【0014】
本発明において、封止前の90度ピール強度は、5N/m以上とし、10N/m以上が好ましく、50N/m以上であることがより好ましく、100N/m以上であることがさらに好ましく、150N/m以上であることが特に好ましい。封止前の90度ピール強度が5N/m未満の場合、半導体用接着フィルムがリードフレームから剥がれやすく、また、封止工程時に、リードフレームと樹脂層Aとの間に封止用樹脂が入り込む等の問題がある。また、この封止前の90度ピール強度の上限値は特に制限はないが、2000N/m以下であることが好ましく、1500N/m以下であることがより好ましく、1000N/m以下であることがさらに好ましい。
【0015】
一般的に90度ピール強度は、接着層のガラス転移温度(Tg)、接着条件、被接着材の材質等に依存しているが、本発明の半導体用接着フィルムにおいて、封止前の90度ピール強度を5N/m以上にするには、例えば、樹脂層Aのガラス転移温度(Tg)を100〜300℃とすることにより調整できる。また、支持フィルム上に形成する樹脂層Aの厚みでも調整可能である。本発明の半導体用接着フィルムを用いて該フィルムが接着したリードフレーム又は半導体装置を製作する際は、リードフレームの材質により樹脂層Aとリードフレームとの接着条件を適宜設定してピール強度を調整することが可能である。具体的には半導体装置の製造で後述する。
【0016】
90度ピール強度を測定するための封止前ピール強度サンプル及び封止後ピール強度サンプルは以下のように作製する。本発明の半導体用接着フィルムをリードフレームの片面、具体的には半導体素子を接着するダイパットの反対面に接着する。この接着条件は、ピール強度に影響するため、基本的には半導体装置を製造するときの接着条件で行うことが好ましい。しかし、本発明においては、封止前の90度ピール強度を測定するための封止前ピール強度サンプルの作製において、半導体用接着フィルムとリードフレームとの接着条件は、具体的には以下のように条件設定する。リードフレームとして、銅リードフレームを用い、温度250℃、圧力6MPa、時間10秒とする。
封止後の90度ピール強度を測定するための封止後ピール強度サンプルは、封止前ピール強度サンプルのダイパット面に半導体素子を接着し、ワイヤボンド工程の後、封止材として、エポキシ樹脂(日立化成工業株式会社製のCEL−9600)を用い、温度180℃、圧力7MPa、時間3分の条件で封止を行い、次いで180℃で5時間加熱して封止材を硬化させて得る。
上記において、封止後のピール強度のサンプルは、ワイヤボンド工程を行うことで作製しているが、バンプを用いるワイヤレスボンド工程により作製される半導体装置にも本発明の半導体用接着フィルムは使用可能である。
【0017】
本発明の半導体用接着フィルムは、封止後の90度ピール強度が、樹脂層Aとリードフレームとのピール強度、又は樹脂層Aと封止材とのピール強度どちらも1000N/m以下である。800N/m以下であることが好ましく、500N/m以下であることがより好ましい。前記封止後の90度ピール強度が1000N/mを超える場合、リードフレームや封止材に応力が加わり、破損する傾向がある。この封止後の90度ピール強度は0N/m以上であることが好ましく、3N/m以上であることがより好ましく、5N/m以上であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明において、半導体用接着フィルムを接着したリードフレームを封止材で封止した後の樹脂層Aとリードフレーム及び封止材との25℃における「封止後の90度ピール強度」を1000N/m以下にするには、樹脂層Aが下記一般式(I)で示されるイミドジカルボン酸とジイソシアナートとを共重合させた樹脂(a)からなることにより達成される。
本発明の半導体用接着フィルムは、支持フィルムと樹脂層Aを有する半導体用接着フィルムであって、支持フィルムの少なくとも片面に、下記一般式(I)
【0019】
【化4】

(X及びXはそれぞれ独立に0〜5の酸素原子及び0〜5の窒素原子を含むC3〜C20の二価の有機基である。)で表されるイミドジカルボン酸とジイソシアナートとを共重合させた樹脂(a)からなる樹脂層Aが形成されている。
前記イミドジカルボン酸としては、特に制限はないが、一般式(II)
【0020】
【化5】

(X及びXはそれぞれ独立に0〜5の酸素原子と芳香環を1〜3個有する二価の有機基である。)で表されるイミドジカルボン酸であることが耐熱性の観点から好ましい。具体的には、下記に示す化合物が挙げられる。
【0021】
【化6】

【0022】
上記イミドジカルボン酸の合成方法としては、特に制限はないが、例えば、一般式(III)で表されるジアミンと無水トリメリット酸を、有機溶媒中80℃以下で反応させ生成したアミド酸を脱水閉環することにより合成することができる。
【0023】
【化7】

(式(III)中のX及びXはそれぞれ独立に0〜5の酸素原子及び0〜5の窒素原子を含むC3〜C20の二価の有機基である。)
【0024】
脱水閉環は、120〜250℃で熱処理する方法(熱イミド化)や脱水剤を用いて行う方法(化学イミド化)で行うことができる。120〜250℃で熱処理する方法の場合、脱水反応で生じる水を系外に除去しながら行うことが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去してもよい。
【0025】
脱水剤を用いて脱水閉環を行う方法は、脱水剤として無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸等の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等を用いるのが好ましい。このとき、必要に応じてピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、アミノピリジン、イミダゾール等の脱水触媒を用いてもよい。脱水剤又は脱水触媒は、無水トリメリット酸1モルに対し、それぞれ1〜8モルの範囲で用いることが好ましい。
【0026】
無水トリメリット酸は、一般式(III)で表されるジアミン1モルに対して、総量で1.90〜2.10モル使用するのが好ましく、1.95〜2.05モル使用するのがより好ましい。無水トリメリット酸の総量が、一般式(III)で表されるジアミン1モルに対して1.90モルより少ない場合や2.10モルより多い場合、合成したイミドジカルボン酸を精製せずにジイソシアナートと共重合させる際、得られる樹脂の分子量は低く、成膜性に劣り、均一な樹脂層を形成できない傾向にある。
【0027】
前記一般式(III)で表されるジアミンとしては、特に制限はないが、例えば、ジアミノメチルスルホン、ビス(2−アミノエチル)スルホン、ビス(3-アミノプロピル)スルホン、ビス(4-アミノブチル)スルホン、ビス(5-アミノペンチル)スルホン、ビス(6-アミノヘキシル)スルホン、ビス(7−アミノヘプチル)スルホン、ビス(8−アミノオクチル)スルホン、ビス(9-アミノノニル)スルホン、ビス(10-アミノデシル)スルホン、ビス(12−アミノドデシル)スルホン、ビス(3−(2−アミノエチル)アミノプロピル)スルホン、アミノメチル2−アミノエチルスルホン、2-アミノエチル3-アミノプロピルスルホン、ビス[2−(3-アミノプロポキシ)エチル]スルホン、4−(アミノメチルスルホニル)アニリン、4−(2-アミノエチルスルホニル)アニリン、4−(3−アミノプロピルスルホニル)アニリン等が挙げられ、入手の容易さやコスト、耐熱性の点から4、4’−ジアミノジフェニルスルホン、3、4’−ジアミノジフェニルスルホン、3、3’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンであることが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記イミドジカルボン酸の合成において、一般式(III)で表されるジアミン以外に他のジアミンを併用してもよい。他のジアミンとしては、特に制限はないが、例えば、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)ブタン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス[2−(3−アミノプロポキシ)エチル]エーテル、フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ビス(4−アミノクミル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ビフェニル、次一般式(IV)で表されるシロキサンジアミン等があり、これらは2種以上併用してもよい。
【0029】
【化8】

(式中、R及びRは2価の有機基、R及びRは1価の有機基を示し、mは1〜100の整数を示す。)
一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン、1,5−ビス(3-アミノプロピル)ヘキサメチルトリシロキサン、1,7−ビス(3-アミノプロピル)オクタメチルテトラシロキサン、1,3-ビス(3−アミノプロピル)ジメチルジフェニルジシロキサン等が挙げられる。
なお、一般式(III)で表されるジアミン以外の他の上記ジアミンを併用した場合、一般式(III)で表されるジアミン及び他のジアミンの合計1モルに対して、総量で 0〜0.6モル使用するのが好ましく、0〜0.4モル使用するのがより好ましい。無水トリメリット酸の総量が、一般式(III)で表されるジアミンとその他のジアミン1モルに対して1.90モルより少ない場合や2.10モルより多い場合、合成したイミドジカルボン酸を精製せずにジイソシアナートと共重合させる際、得られる樹脂の分子量が低く、成膜性に劣り、均一な樹脂層を形成できない傾向がある。
【0030】
前記した他のジアミンを併用する場合、併用する割合は、用いるジアミンの総量に対して60モル%未満であることが好ましく、40モル%未満であることがより好ましい。他のジアミンを60モル%以上用いたイミドジカルボン酸を用いて本発明の半導体用接着フィルムを作製した場合、封止後のリードフレーム及び封止材との接着性が高くなりすぎ、リードフレーム及び封止材から半導体用接着フィルムを室温で引き剥がすのが困難になる傾向がある。
【0031】
一般式(III)で表されるジミン、必要によりその他のジアミン及び無水トリメリット酸からイミドジカルボン酸を合成する際に用いる有機溶媒としては、カルボン酸無水物とアミンからイミドカルボン酸を生成する反応に通常用いられる有機溶媒が使用可能であり特に制限はないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン等が挙げられる。これらの極性溶媒以外に、ケトン類、エステル類、エーテル類、脂肪族化合物類、芳香族化合物類、及びそれらのハロゲン化物等を使用することもでき、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
以上のようにして合成したイミドジカルボン酸は、反応終了後の溶液のまま用いてもよいし、イミドジカルボン酸に対する貧溶媒に反応溶液を投入し、イミドジカルボン酸を析出させ、精製して用いてもよい。
本発明の半導体用接着フィルムに用いる樹脂(a)は、上記のようにして合成したイミドジカルボン酸とジイソシアナートを有機溶媒中で共重合させることにより得られる。用いる有機溶媒としては、ジアミンと無水トリメリット酸からイミドジカルボン酸を合成する際に通常用いられる有機溶剤が挙げられる。合成工程の簡略化、コスト低減の観点から、イミドジカルボン酸の反応後の溶液をそのまま用いることが好ましい。用いるジイソシアナートとしては、特に制限はないが、入手の容易さやコストの点から、フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートであることが好ましく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記ジイソシアナートは、イミドジカルボン酸1モルに対して、総量で0.80〜1.20モル使用するのが好ましく、0.90〜1.10モル使用するのがより好ましい。ジイソシアナートの総量が、イミドジカルボン酸1モルに対して0.80モルより少ない場合や1.20モルより多い場合、得られる共重合体の分子量は低く、成膜性に劣り、均一な樹脂層を形成できない傾向にある。
【0034】
イミドジカルボン酸とジイソシアナートを共重合する条件としては、特に制限はなく、カルボン酸とイソシアナートが反応してアミドを生成する公知の条件であればよい。例えば、イミドジカルボン酸の溶液にジイソシアナートを80℃以下で添加し、その後、140〜200℃の温度で反応させることにより、本発明の半導体用接着フィルムに用いる樹脂(a)が得られる。樹脂(a)は精製して用いてもよいし、反応後の溶液のまま樹脂(a)の樹脂ワニスとして用いてもよい。
得られた樹脂(a)の重量平均分子量は5千〜10万が好ましく、1万〜8万がより好ましい。平均分子量が5千より小さいと成膜性に劣り、10万より高いとワニスの粘度が高くなり作業性が悪くなる。上記した重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(溶離液は0.05mol/Lリン酸NMP溶液、液速度は1ml/分、検出はUV検出器(250nm))により測定し、ポリスチレン換算を行うことにより測定できる。
樹脂(a)のガラス転移温度は100〜300℃が好ましく、150〜280℃がより好ましい。ガラス転移温度が100℃より低いとワイヤボンド性に劣り、300℃より高いとリードフレームへの接着温度が高くなり、リードフレームが劣化する傾向にある。ガラス転移温度は、樹脂(a)の単層フィルムを作製し、TMA(引張り)分析よりフィルム伸びの変曲点を求めることにより得られる。
また、樹脂(a)の5質量%減少温度は250〜500℃であることが好ましく、300〜500℃であることがより好ましい。5質量%減少温度が250℃よりも低い場合、パッケージ組立工程中にアウトガスが発生し、半導体素子を汚染する傾向がある。
【0035】
本発明においては、樹脂(a)にセラミック粉、ガラス粉、銀粉、銅粉、樹脂粒子、ゴム粒子等のフィラーを添加してもよい。上記フィラーは、樹脂層の凝集力を高め、高温での貯蔵弾性率を高めるのでワイヤボンド性向上の効果がある。フィラーを添加する場合、その添加量は、樹脂(a)100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。添加量が1質量部より少ないと、フィラー添加の効果が発現しない傾向があり、30質量部より多いと基材との密着性が低下する傾向がある。
【0036】
また、樹脂(a)にカップリング剤を用いてもよい。カップリング剤としては、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、チタネート、アルミキレート、ジルコアルミネート等のカップリング剤が使用できるが、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの内、エポキシ基を有するエポキシシランカップリング剤が好ましく用いられる。シランカップリング剤を添加することにより、樹脂層Aの支持フィルムに対する密着性を向上させ、本発明の半導体用接着フィルムを引き剥がした際に、樹脂層Aと支持フィルムの界面で剥離が生じにくくなる。
カップリング剤の添加量は、樹脂(a)100質量部に対して、1〜15質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。添加量が1質量部より少ないと、効果が発現しない傾向があり、15質量部より多いとワニスがゲル化する傾向がある。
【0037】
支持フィルム上に樹脂層Aを形成する方法は、特に制限はないが、樹脂(a)をN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤に溶解して作製した樹脂(a)の樹脂ワニス又はイミドジカルボン酸とジイソシアナートとの共重合反応後の溶液のままの樹脂(a)の樹脂ワニスを、支持フィルムの片面又は両面上に塗布した後、加熱処理して有機溶剤を除去することにより、二層構造又は三層構造の半導体用接着フィルムを得ることができる。樹脂ワニスを塗布した支持フィルムを加熱処理する温度は、有機溶剤が除去できる温度であればよい。
【0038】
上記において、支持フィルムへの樹脂(a)の樹脂ワニスの塗布方法には、特に制限はないが、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、コンマコート等を用いて行うことができる。また、樹脂(a)の樹脂ワニス中に支持フィルムを通して塗布しても良い。
【0039】
本発明においては、支持フィルムの材質は特に制限はないが、樹脂(a)の樹脂ワニスの塗布、乾燥、半導体装置組立工程中の熱に耐えられる樹脂からなるフィルムが好ましい。具体的には、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン及びポリエチレンナフタレートよりなる群から選ばれるフィルムであることが好ましい。
また、支持フィルムのガラス転移温度は、耐熱性を向上させるために200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。また、上記のガラス転移温度を有する耐熱性樹脂フィルムを用いることにより、接着工程、ワイヤボンド工程、封止工程等の熱の加わる工程において、支持フィルムが軟化せず、効率よく作業を行うことができる。
半導体用接着フィルムをリードフレームに貼り付けたあとのリードフレームの反りを低減するために、支持フィルムの20〜200℃における線熱膨張係数は、3.0×10−5/℃以下であることが好ましく、2.5×10−5/℃以下であることがより好ましく、2.0×10−5/℃以下であることがさらにより好ましい。
また、半導体用接着フィルムをリードフレームに貼り付けたあとのリードフレームの反りを低減するために、支持フィルムを200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率は、0.15%以下であることが好ましく、0.13%以下であることがより好ましく、0.10%以下であることがさらにより好ましい。
【0040】
上記の支持フィルムは、樹脂層Aに対して密着性が十分高いことが好ましい。密着性が低いと、リードフレーム及び封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がした際、樹脂層Aと支持フィルム界面で剥離が生じやすく、リードフレーム及び封止材に樹脂が残留しやすくなる。支持フィルムは、耐熱性を有し、且つ樹脂層Aに対する密着性が十分高いことが好ましい。これらを考慮すると、支持フィルムはポリイミドフィルムであることが好ましい。上記範囲のガラス転移温度、線熱膨張係数、範囲の加熱収縮率を満たすポリイミドフィルムとしては、カプトン(登録商標、東レ・デュポン株式会社製)、ユーピレックス(登録商標、宇部興産株式会社製)、アピカル(登録商標、株式会社カネカ製)等を用いることができる。
【0041】
上記の支持フィルムは、樹脂層Aに対する密着性を十分高めるために、表面を処理することが好ましい。支持フィルムの表面処理方法は特に制限はないが、アルカリ処理及びシランカップリング処理等の化学処理、サンドマット処理等の物理的処理、プラズマ処理、コロナ処理等が挙げられる。
支持フィルムの材質を、上記した樹脂以外の、銅、アルミニウム、ステンレススティール及びニッケルよりなる群から選ぶこともできる。支持フィルムを上記の金属とすることにより、リードフレームと支持フィルムの線熱膨張係数を近くし、半導体用接着フィルムをリードフレームに貼り付けた後のリードフレームの反りを低減できることから好ましい。
【0042】
上記の支持フィルムの厚さには特に制限はないが、半導体用接着フィルムをリードフレームに貼り付けた後のリードフレームの反りを低減するために、5〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。支持フィルムの厚さが5μm未満である場合は、支持フィルムにシワが入り易く作業性に劣る傾向にあり、100μmを超える場合は、半導体用接着フィルムをリードフレームに貼り付けた後のリードフレームの反りが大きくなる傾向がある。
【0043】
本発明の半導体用接着フィルムにおいて、樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)との比(A/C)が0.5以下であることが好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。ここでいう樹脂層Aの厚さ(A)は、支持フィルムに形成された樹脂層Aの片面のみの厚さであり、両面に樹脂層Aを設けた場合は厚い方の樹脂層Aの厚さである。前記比(A/C)が0.5を超える場合、樹脂(a)の樹脂ワニスを支持フィルム上に塗布した後に有機溶剤除去する際、樹脂層Aの体積減少により半導体用接着フィルムがカールしやすく、リードフレームに接着する際の作業性が低下しやすい傾向にある。支持フィルムの両面に樹脂層Aを設けた場合には、両樹脂層Aの厚みの比(リードフレームと接着する側に設けられた樹脂層の厚さ:反対側に設けられた樹脂層Aの厚さ)を0.8:1〜1.2:1とすることが好ましく、0.9:1〜1.1:1とすることがより好ましく、1:1とすることが特に好ましい。両樹脂層Aの厚みの比を上記範囲とすることにより半導体用接着フィルムのカールを防ぐことができる。
なお、樹脂層Aの厚さ(A)は1〜20μmであることが好ましく、3〜15μmであることがより好ましく、4〜10μmであることがさらに好ましい。樹脂層Aの厚さ(A)が1μm未満である場合は、封止前の90度ピール強度が小さくなり、接着性に劣り、封止時に封止材が漏れ易くなる傾向にある。樹脂層Aの厚さ(A)が20μm超である場合は、半導体用接着フィルムの層厚みが厚くなり経済性に劣る傾向にある。
【0044】
有機溶剤除去時の樹脂層Aの体積減少に起因する半導体用接着フィルムのカールを相殺するために、支持フィルムの両面に樹脂層Aを設けてもよいが、支持フィルムの片面に樹脂層Aを設け、反対面に高温で軟化しにくい別の樹脂層を設けることも好ましい。すなわち、前記支持フィルムの片面に接着性を有する樹脂層Aを形成し、その反対面に230℃における貯蔵弾性率が10MPa以上の接着性を有しない樹脂層Bを形成することが好ましい。
【0045】
本発明においては、接着性を有しない樹脂層Bの230℃での貯蔵弾性率は10MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることがより好ましく、1000MPa以上であることがさらに好ましい。樹脂層Bの230℃での貯蔵弾性率が10MPa未満の場合、ワイヤボンド工程等の熱が加わる工程で軟化しやすく、金型やジグに張り付きやすい傾向がある。この貯蔵弾性率は、2000MPa以下であることが好ましく、1500MPa以下であることがより好ましい。
【0046】
上記の接着性を有しない樹脂層Bの金型やジグに対する接着力は、工程上、金型やジグに貼り付かない程度に低ければ特に制限はないが、25℃における樹脂層Bと金型やジグとの90度ピール強度(以下、「樹脂層Bの90度ピール強度」ともいう)が5N/m未満であることが好ましく、1N/m未満であることがより好ましい。
本発明において、この樹脂層Bの90度ピール強度の測定は、樹脂層Bを有する半導体用接着樹脂の樹脂層B面を真鍮製の金型に温度250℃、圧力8MPaで10秒間圧着したものをサンプル(以下、「樹脂層Bのピール強度サンプル」ともいう)として用い、上述した封止前90度ピール強度及び封止後90度ピール強度と同様に測定する。
【0047】
上記の230℃での貯蔵弾性率が10MPa以上である樹脂層Bのガラス転移温度は、接着工程、ワイヤボンド工程、封止工程等で軟化しにくく、金型やジグに貼りつきにくくするため、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、このガラス転移温度は、350℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましい。
【0048】
上記の樹脂層Bの形成に用いられる樹脂(以下、樹脂(b)ともいう)は、組成に特に制限はなく、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれも用いることができる。熱可塑性樹脂の組成は、特に制限はないが、アミド基、エステル基、イミド基、エーテル基又はスルホン基を有する熱可塑性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂の組成には、特に制限はないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂(例えば、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンをモノマーとするビスマレイミド樹脂)等が好ましい。また、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を組み合わせて用いることもできる。熱可塑製樹脂と熱硬化性樹脂を組み合わせる場合、熱可塑性樹脂100質量部に対し、熱硬化性樹脂5〜100質量部とすることが好ましく、20〜70質量部とすることがより好ましい。組み合わせた場合に上記範囲の混合割合とすることで、成膜性と接着性低減の効果が得られる。
なお、樹脂層Bは、組立工程中の熱で分解しないために、5質量%減少温度は高い方が好ましい。分解するとアウトガスが発生し、半導体素子を汚染し、ワイヤボンド不良、半導体装置の信頼性低下につながる傾向がある。
【0049】
さらには、上記の樹脂(b)にセラミック粉、ガラス粉、銀粉、銅粉、樹脂粒子、ゴム粒子等のフィラーを添加してもよい。フィラーを添加する場合、その添加量は、樹脂(b)100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、5〜15質量部がより好ましい。添加量が1質量部より少ないと、フィラー添加の効果が発現しない傾向があり、30質量部より多いと基材との密着性が低下する傾向がある。
また、上記樹脂(b)にカップリング剤を添加してもよい。カップリング剤の添加量は、樹脂(b)100質量部に対して1〜20質量部とすることが好ましく、2〜15質量部とすることがより好ましい。添加量が1質量部より少ないと、添加の効果が発現しない傾向があり、20質量部より多いとワニスがゲル化する傾向がある。カップリング剤を添加することにより、基材との密着性を向上させることができる。
樹脂(b)に用いられるカップリング剤としては、樹脂(a)に用いられるものと同じカップリング剤が使用可能であるが、シランカップリング剤が好ましい。
【0050】
上記の接着性を有しない樹脂層Bを形成する方法は、特に制限はないが、通常、樹脂(b)をN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤に溶解して作製した樹脂(b)の樹脂ワニスを、支持フィルム上に塗布した後、加熱処理して有機溶剤を除去することにより、形成することができる。又は、樹脂(b)の樹脂ワニス塗布後に加熱処理等によって樹脂(b)(例えばポリイミド樹脂)となる樹脂(b)の前駆体(例えばポリアミド酸)を有機溶剤に溶解した樹脂(b)の前駆体ワニスを支持フィルム上に塗布した後、加熱処理することで、形成することもできる。この場合、塗布後の加熱処理により、有機溶剤を除去しつつ、前駆体を樹脂(b)とする反応を行うこととなる(例えばイミド化)。塗布面の表面状態等の点から、樹脂(b)の樹脂ワニスを用いることが好ましい。
【0051】
上記の樹脂層Bの形成において、ワニスを塗布した支持フィルムを溶剤の除去やイミド化等のために加熱処理する場合の処理温度は、樹脂(b)の樹脂ワニスを用いるか樹脂(b)の前駆体ワニスを用いるかで異なる。樹脂ワニスの場合には有機溶剤が除去できる温度であればよく、前駆体ワニスの場合には、イミド化させるために樹脂層Bのガラス転移温度以上の処理温度が好ましい。支持フィルムに上記樹脂層Bを形成することは、有機溶剤除去時の樹脂層Bの体積減少、又はイミド化あるいは熱硬化性樹脂の硬化の際の収縮により、樹脂層Aの体積減少に起因する半導体用接着フィルムのカールを相殺することができることから好ましい。
【0052】
上記において、支持フィルムへの樹脂(b)の樹脂ワニス又は前駆体ワニスの塗布方法は、特に制限はないが、例えば、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、コンマコート等を用いて行うことができる。また、支持フィルムに樹脂層Aを形成する前であれば樹脂ワニス又は前駆体ワニス中に支持フィルムを通して塗布しても良い。
【0053】
本発明の半導体用接着フィルムは、例えば、半導体装置の製造方法に好適に使用することができる。本発明の半導体用接着フィルムを半導体装置の製造方法に使用する場合、下記の工程からなる方法により、半導体装置を製造することが好ましい。
即ち、(1)リードフレームの裏面に150〜400℃で本発明の半導体用接着フィルムを接着する工程、
(2)リードフレームのダイパッドに銀ペースト等の接着剤を用いて半導体素子を接着し、140〜200℃で30分〜2時間の加熱を行うことにより銀ペースト等の接着剤を硬化する工程、
(3)200〜270℃で3分〜30分加熱して、リードフレームのインナーリードと半導体素子とを金線等でワイヤボンドを行う工程、
(4)150〜200℃で封止材を封止する工程、
(5)150〜200℃で4〜6時間の加熱を行うことにより、封止材樹脂を硬化する工程、
(6)0〜40℃で半導体用接着フィルムをリードフレーム及び封止材から引き剥がす工程である。
リードフレームが各々ダイパッド及びインナーリードを有する複数のパターンからなるものである場合には、必要に応じ、各々1つの半導体素子を有する複数の半導体装置に分割される。
【0054】
本発明の半導体用接着フィルムの一つの実施の形態を図1に、本発明の半導体用接着フィルム付きリードフレームの一つの実施の形態を図2に示す。図1に示すように上記半導体用接着フィルム3は、支持フィルム2上の樹脂層A 1が形成されたフィルムである。図2に示すように、該半導体用接着フィルム3をリードフレーム4の片面に接して接着することにより半導体用接着フィルム付きリードフレームを製造することができる。
【0055】
本発明において、リードフレームへの半導体用接着フィルムの接着条件は、接着温度が150〜400℃の間であることが好ましく、180〜350℃がより好ましく、200〜300℃がさらに好ましい。温度が150℃より低い場合、リードフレームと樹脂層Aの接着強度が低下する傾向がある。また400℃を超えると、リードフレームが劣化する傾向がある。
【0056】
本発明において、リードフレームへの半導体用接着フィルムの接着圧力は0.5〜30MPaの間が好ましく、1〜20MPaがより好ましく、3〜15MPaがさらに好ましい。接着圧力が0.5MPaより小さい場合、樹脂層Aとリードフレームとの接着強度が低下する傾向がある。また30MPaを超えると、リードフレームが破損しやすい傾向がある。
【0057】
本発明において、リードフレームへの半導体用接着フィルムの接着時間は0.1〜60秒の間が好ましく、1〜30秒がより好ましく、3〜20秒がさらに好ましい。接着時間が0.1秒未満の場合、樹脂層Aとリードフレームとの接着強度が低下しやすい傾向がある。また60秒を超えると、作業性と生産性が低下しやすい傾向がある。また、圧力を加える前に5〜60秒程度の予備加熱を行うことが好ましい。
【0058】
本発明において、リードフレームの材質に特に制限はないが、例えば、42アロイ等の鉄系合金又は銅や銅系合金等を用いることができる。また、銅や銅系合金のリードフレームの表面には、パラジウム、金、銀等を被覆することもできる。
【0059】
本発明においては、半導体用接着フィルムをリードフレームの裏面に接着した後、封止工程を行う前に、加熱を行うことにより、樹脂層Aとリードフレームとの接着強度を向上させることもできる。この加熱温度は特に限定されないが、樹脂層Aとリードフレームとの接着強度を向上させるためには、100℃以上で加熱することが好ましい。また、リードフレームや半導体用接着フィルムの耐熱性の点から、300℃以下であることが好ましい。好ましくは、上記加熱温度は130℃以上270℃以下であることがより好ましい。また、加熱時間は特に限定されないが、樹脂層Aとリードフレームとの接着強度を十分に向上させるために10秒以上が好ましい。より好ましい加熱時間は1分以上2時間以内である。
【0060】
樹脂層Aとリードフレームとの90度ピール強度を向上させるための上記加熱工程は、生産性の点から、封止工程に移る前の諸工程(例えば、銀ペースト等の接着剤の硬化工程、ワイヤボンド工程等)における加熱によって行うことが好ましい。例えば、半導体素子のリードフレームダイパットへの接着工程では通常、接着に用いる接着剤を硬化させるために140〜200℃で30分〜2時間の加熱が行われる。従って、上記加熱工程をこれらの諸工程における加熱により行うことができる。
【0061】
本発明の半導体用接着フィルムを用いて製造される半導体装置の構造は特に限定されないが、例えば半導体装置の片面(半導体素子側)のみを封止し、裏面のむき出しのリードフレームを外部接続用に用いる構造の半導体装置(Non Lead Type Package)が挙げられる。上記半導体装置の具体例としては、QFN(Quad Flat Non−leaded Package)やSON(Small Outline Non−leaded Package)等が挙げられる。
【0062】
本発明においては、本発明の半導体用接着フィルムと、半導体用接着フィルムの樹脂層Aにダイパットの反対面で接着されるリードフレームと、ダイパッドに接着された半導体素子と、半導体素子とリードフレームのインナーリードとを接続するワイヤと、リードフレームの露出面及び半導体素子及びワイヤを封止する封止材とを備える構造を有する半導体用接着フィルム付き半導体装置を得ることも好ましい。さらに該半導体用接着フィルムが接着されたリードフレーム、また該半導体用接着フィルムを剥離して得られる半導体装置も本発明の範囲内である。
本発明の半導体用接着フィルムを用いて製造される半導体装置は、高密度化、小面積化、薄型化等の点で優れており、例えば携帯電話等の情報機器に組み込まれる。
【実施例】
【0063】
次に実施例により、図1〜図6を参照しながら、本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を制限するものではない。
製造例1(実施例1、8、9、10に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス1の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン90.1g(0.208モル)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略す)603.1gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸80.0g(0.417モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(以下、「MDI」と略す)52.1g(0.208モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、本発明に用いる樹脂(a)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、28.8質量%であった。固形分の測定は次の方法により行った。即ち、樹脂溶液1gを金属皿に量りとり、150℃で1時間、次いで250℃で2時間加熱して溶剤を除去した後の固形分の質量を測定し、次式により算出した。
〔数1〕
固形分(質量%)=(溶剤除去後の固形分の質量÷樹脂溶液の質量)×100
以下、固形分の測定は上記の方法により行った。
この樹脂溶液100gに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.864gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス1を得た。
【0064】
製造例2(実施例2に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス2の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン45.1g(0.104モル)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン42.7g(0.104モル)を入れ、NMP594.8gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸80.0g(0.417モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、MDI52.1g(0.208モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、本発明に用いる樹脂(a)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、27.6質量%であった。この樹脂溶液100gにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.828gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス2を得た。
【0065】
製造例3(実施例3、7に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス3の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン88.3g(0.204モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン12.7g(0.051モル)を入れ、NMP710.6gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸98.0g(0.510モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、MDI63.9g(0.255モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、本発明に用いる樹脂(a)の樹脂溶液
を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、27.2質量%であった。この樹脂溶液100gにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.816gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス3を得た。
【0066】
製造例4(実施例4に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス4の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン69.4g(0.160モル)、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)ブタン14.0g(0.069モル)を入れ、NMP618.5gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸88.0g(0.458モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、MDI57.4g(0.229モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、本発明に用いる樹脂(a)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、27.6質量%であった。この樹脂溶液100gにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.828gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス4を得た。
【0067】
製造例5(実施例5に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス5の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン69.4g(0.160モル)、1,12−ジアミノドデカン13.8g(0.069モル)を入れ、NMP617.8gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸88.0g(0.458モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、MDI57.4g(0.229モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、本発明に用いる樹脂(a)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、28.3質量%であった。この樹脂溶液100gにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.849gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス5を得た。
【0068】
製造例6(実施例6に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス6の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン71.0g(0.164モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン17.4g(0.070モル)を入れ、NMP632.5gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸90.0g(0.469モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、MDI58.7g(0.235モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、本発明に用いる樹脂(a)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、26.3質量%であった。この樹脂溶液100gにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.789gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス6を得た。
【0069】
製造例7(実施例3〜6、8、比較例1〜3に樹脂(b)として使用した樹脂(b)の樹脂ワニス7の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた5リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン172.4g(0.42モル)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)153.7g(0.42モル)を入れ、NMP1550gに溶解した。さらにこの溶液を0℃に冷却し、この温度で無水トリメリット酸クロライド174.7g(0.83モル)を添加した。無水トリメリット酸クロライドが溶解した後、トリエチルアミン130gを添加した。室温(25℃)で2時間撹拌を続けた後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させた。得られた反応液を水中に投入して重合体を単離させた。これを乾燥した後、NMPに溶解し水中に投入して再度重合体を単離した。その後、減圧乾燥して精製されたポリエーテルアミドイミド粉末を得た。得られたポリアミドイミド粉末120g及びシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)6gをNMP360gに溶解し、樹脂(b)の樹脂ワニス7を得た。
【0070】
製造例8(実施例9に樹脂(b)として使用した樹脂(b)の樹脂ワニス8の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた5リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン270.9g(0.66モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン8.7g(0.035モル)を入れ、NMP1950gに溶解した。さらにこの溶液を0℃に冷却し、この温度で無水トリメリット酸クロライド149.5g(0.71モル)を添加した。無水トリメリット酸クロライドが溶解した後、トリエチルアミン100gを添加した。室温(25℃)で2時間撹拌を続けた後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させた。得られた反応液を水中に投入して重合体を単離させた。これを乾燥した後、NMPに溶解し水中に投入して再度重合体を単離した。その後、減圧乾燥して精製されたポリアミドイミド粉末を得た。得られたポリエーテルアミドイミド粉60g及びビス(4−マレイミドフェニル)メタン40gをNMP300gに溶解し、樹脂(b)の樹脂ワニス8を得た。
【0071】
製造例9(比較例1に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス9の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン85.4g(0.208モル)を入れ、NMP586.5gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸80.0g(0.417モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、MDI52.1g(0.208モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、27.2質量%であった。この樹脂溶液100gにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.816gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス9を得た。
【0072】
製造例10(比較例2に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス10の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン20.3g(0.047モル)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン76.9g(0.188モル)を入れ、NMP664.6gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸90.0g(0.469モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、MDI58.7g(0.234モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、本発明に用いる樹脂(a)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、27.9質量%であった。この樹脂溶液100gにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.837gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス10を得た。
【0073】
製造例11(比較例3に樹脂(a)として使用した樹脂(a)の樹脂ワニス11の製造)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び分留塔を取り付けた1リットルの4つ口フラスコに窒素雰囲気下、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン67.0g(0.155モル)、シリコーンジアミン(信越化学工業株式会社製、商品名:X−22−161B)57.8g(0.066モル)を入れ、NMP717.0gに溶解し、50℃に昇温した。さらにこの溶液に無水トリメリット酸85.0g(0.443モル)を添加して30分間攪拌した後、180℃に昇温して5時間反応させてイミド化を完結させて、イミドジカルボン酸の溶液を得た。この溶液を50℃まで冷却した後、MDI55.4g(0.221モル)を添加し、160℃に昇温して3時間反応させ、本発明に用いる樹脂(a)の樹脂溶液を得た。この樹脂溶液の固形分を測定したところ、28.1質量%であった。この樹脂溶液100gにシランカップリング剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH6040)0.843gを添加し、攪拌して樹脂(a)の樹脂ワニス11を得た。
【0074】
(実施例1)
表面に化学処理を施した厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックスSGA(登録商標)、線熱膨張係数:1.2×10−5/℃、加熱収縮率:0.07%)を支持フィルムとして用いた。このポリイミドフィルムの片面に、製造例1で製造した樹脂ワニス1を100μmの厚さに塗布し、100℃で10分、300℃で10分乾燥して、図1に示すような、支持フィルム2の片面に厚さ20μmの樹脂層A 1が形成された半導体用接着フィルム3を得た。樹脂層Aは、ガラス転移温度が220℃、5質量%減少温度が430℃であった。
樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.40であった。次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはやや大きかったが、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度(引き剥がし速度:毎分300mm)を測定したところ、封止前の90度ピール強度は12N/mであり、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、2.2mmであった。さらに、この半導体用接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行った。得られた半導体装置は、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものである。半導体素子の接着には銀ペーストを用い、150℃で60分加熱して銀ペーストを硬化させた。ワイヤボンドは、ワイヤとして金線を用い、260℃で5分加熱して行った。封止工程には封止材として、エポキシ樹脂であるCEL−9600(日立化成工業株式会社製)を用い、温度180℃、圧力7MPa、時間3分で行い、その後、180℃で5時間の加熱を行い、封止材を硬化させた。いずれの工程でも問題は生じなかった。
図4は、ダイパット6を有するリードフレーム4裏側に半導体用接着フィルム3が接着され、ダイパット6上の半導体素子7はワイヤ8でリードフレーム4に接続され、封止材9で封止された、実施例1で得られた半導体装置の一つの実施の形態を示す(銀ペーストは図示せず)。なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、封止後の90度ピール強度は80N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。得られた半導体装置は、図5に示すような半導体用接着フィルムを剥離することにより得られた半導体装置が複数繋がった構造のものである。
【0075】
さらに、この半導体装置を分割して、図5に示した各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0076】
(実施例2)
樹脂ワニスとして製造例2で作製した樹脂ワニス2を用いた以外は、実施例1と同様にして、支持フィルムの片面に厚さ20μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルムを作製した。樹脂層Aは、ガラス転移温度が228℃、5質量%減少温度が425℃であった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.40であった。次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはやや大きかったが、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ15N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、2.0mmであった。さらに、この半導体用接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がし封止後の90度ピール強度を測定したところ100N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示した各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0077】
(実施例3)
表面に化学処理を施した厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックスSGA(登録商標))を支持フィルムとして用いた。このポリイミドフィルムの片面に、製造例3で製造した樹脂ワニス3を50μmの厚さに塗布し、100℃で10分、300℃で10分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ9μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aのガラス転移温度は216℃、5質量%減少温度は423℃であった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.36であった。次に、支持フィルムの樹脂層Aを形成したフィルムの反対面に、製造例7で作製した樹脂ワニス7を50μmの厚さに塗布し、100℃で10分、300℃で10分乾燥して、厚さ9μmの樹脂層Bを形成した。この樹脂層Bのガラス転移温度は253℃、5質量%減少温度は416℃、230℃における貯蔵弾性率は1500MPaであった。これにより図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。
次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ65N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、0.2mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がして封止後の90度ピール強度を測定したところ160N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示すような各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0078】
(実施例4)
樹脂層Aの形成に用いる樹脂ワニスとして、製造例4で製造した樹脂ワニス4を用いた以外は実施例3と同様の操作で、図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aの厚さは9μm、樹脂層Bの厚さは8μmであった。樹脂層Aのガラス転移温度は201℃、5質量%減少温度は420℃であった。樹脂層Bのガラス転移温度は253℃、5質量%減少温度は416℃、230℃における貯蔵弾性率は1500MPaであった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.36であった。次に、得られた半導体用接着フィルムを温度230℃、圧力6MPa、時間10秒で銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ240N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、0.1mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示す半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。
なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、封止後の90度ピール強度は500N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示した各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0079】
(実施例5)
樹脂層Aの形成に用いる樹脂ワニスとして、製造例5で製造した樹脂ワニス5を用いた以外は実施例3と同様の操作で、図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aの厚さは9μm、樹脂層Bの厚さは9μmであった。樹脂層Aのガラス転移温度は204℃、5質量%減少温度は415℃であった。樹脂層Bのガラス転移温度は253℃、5質量%減少温度は416℃、230℃における貯蔵弾性率は1500MPaであった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.36であった。次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ60N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じなかいと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、0.2mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行って、図4に示す半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。
なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、封止後の90度ピール強度は200N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示すような各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0080】
(実施例6)
支持フィルムとして、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名:カプトンEN(登録商標)、20〜200℃における線熱膨張係数:1.5×10−5/℃、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率:0.02%)を用い、樹脂層Aの形成に用いる樹脂ワニスとして、製造例6で製造した樹脂ワニス6を用いた以外は実施例3と同様の操作で、図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aの厚さは9μm、樹脂層Bの厚さは9μmであった。樹脂層Aのガラス転移温度は224℃、5質量%減少温度は425℃であった。
樹脂層Bのガラス転移温度は253℃、5質量%減少温度は416℃、230℃における貯蔵弾性率は1500MPaであった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.36であった。
次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ、15N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、0.1mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、封止後の90度ピール強度は180N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示した各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0081】
(実施例7)
厚さ50μmのポリイミドフィルム(カネカ株式会社製、商品名:アピカルNPI(登録商標)、20〜200℃における線熱膨張係数:1.6×10−5/℃、200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率:0.07%)を支持フィルムとして用いた。このポリイミドフィルムの片面に、製造例3で製造した樹脂ワニス3を50μmの厚さに塗布し、100℃で10分、300℃で10分乾燥して、支持フィルムの片面に9μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aのガラス転移温度は216℃、5質量%減少温度は423℃であった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.18であった。
次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ、60N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、1.2mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、封止後の90度ピール強度は160N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示した各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0082】
(実施例8)
支持フィルムとして、厚さ18μmの銅箔(日本電解株式会社製、商品名:HLB、20〜200℃における線熱膨張係数:1.7×10−5/℃)を用いた。この銅箔の片面に、製造例1で製造した樹脂ワニス1を30μmの厚さに塗布し、100℃で10分、200℃で10分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ5μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aのガラス転移温度は220℃、5質量%減少温度は430℃であった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.28であった。次に、支持フィルムの樹脂層Aを形成したフィルムの反対面に、製造例7で作製した樹脂ワニス7を30μmの厚さに塗布し、100℃で10分、300℃で10分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ5μmの樹脂層Bを形成した。この樹脂層Bのガラス転移温度は253℃、5質量%減少温度は416℃、230℃における貯蔵弾性率は1500MPaであった。これにより図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。
次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ、15N/mであり、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、0.1mm未満であった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、封止後の90度ピール強度は80N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層がリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示した各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0083】
(実施例9)
表面に化学処理を施した厚さ25μmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 ユーピレックスSGA(登録商標)、20〜200℃における線熱膨張係数:1.2×10−5/℃、加熱収縮率:0.07%)を支持フィルムとして用いた。このポリイミドフィルムの片面に、製造例1で製造した樹脂ワニス1を50μmの厚さに塗布し、100℃で10分、300℃で10分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ9μmの樹脂層Aが形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aのガラス転移温度は220℃、5質量%減少温度は430℃であった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.36であった。次に、支持フィルムの樹脂層Aを形成したフィルムの反対面に、製造例8で作製した樹脂ワニス8を50μmの厚さに塗布し、100℃で10分、300℃で10分乾燥して、支持フィルムの片面に厚さ9μmの樹脂層Bを形成した。この樹脂層Bの230℃における貯蔵弾性率は800MPaであった。これにより図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。
次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ15N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、0.2mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、封止後の90度ピール強度は85N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示した各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0084】
(実施例10)
実施例1で作製した半導体用接着フィルムを温度350℃、圧力3MPa、時間3秒で42アロイリードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはやや大きかったが、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ150N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、3.5mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、封止後の90度ピール強度は300N/mであった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がしたところ(引き剥がし速度:毎分300mm)、樹脂層Aがリードフレーム及び封止材に付着残留することなく簡単に引き剥がせた。さらに、この半導体装置を分割して、図5に示した各々1つの半導体素子を有する半導体装置を作製したが、工程中、問題はなかった。
【0085】
(比較例1)
樹脂層Aの形成に用いる樹脂ワニスとして、製造例9で製造した樹脂ワニス9を用いた以外は実施例3と同様の操作で、図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aの厚さは9μm、樹脂層Bの厚さは9μmであった。樹脂層Aのガラス転移温度は234℃、5質量%減少温度は432℃であった。樹脂層Bのガラス転移温度は253℃、5質量%減少温度は416℃、230℃における貯蔵弾性率は1500MPaであった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.36であった。
次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ20N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、0.1mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、リードフレーム及び封止材との接着強度が強すぎるために、フィルムが破断して、引き剥がすことができなかった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がした場合も(引き剥がし速度:毎分300mm)、リードフレーム及び封止材との接着強度が強すぎるために、フィルムが破断して、引き剥がすことができなかった。
【0086】
(比較例2)
樹脂層Aの形成に用いる樹脂ワニスとして、製造例10で製造した樹脂ワニス10を用いた以外は実施例3と同様の操作で、図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aの厚さは9μm、樹脂層Bの厚さは9μmであった。樹脂層Aのガラス転移温度は228℃、5質量%減少温度は430℃であった。樹脂層Bのガラス転移温度は253℃、5質量%減少温度は416℃、230℃における貯蔵弾性率は1500MPaであった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.36であった。
次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを作製し、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前90度ピール強度を測定したところ、25N/mで、搬送時に剥がれる不具合は生じないと思われる。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じないと思われる。
次に図3のように、半導体用接着フィルムを接着後のリードフレームの長手方向の反り(X)を測定したところ、0.2mmであった。さらに、この接着フィルムを接着したリードフレームを用いて、実施例1と同様にして、半導体素子の接着、ワイヤボンド工程及び封止工程を行い、図4に示すような半導体装置が複数繋がった構造のものを作製したが、いずれの工程においても問題は生じなかった。なお、封止後ピール強度サンプルを作製し、室温(25℃)でリードフレームと封止材から半導体用接着フィルムを引き剥がしたところ、リードフレーム及び封止材との接着強度が強すぎるために、フィルムが破断して、引き剥がすことができなかった。
封止後の、半導体用フィルムが接着した半導体装置から半導体用フィルムを引き剥がした場合も(引き剥がし速度:毎分300mm)、リードフレーム及び封止材との接着強度が強すぎるために、フィルムが破断して、引き剥がすことができなかった。
【0087】
(比較例3)
樹脂層Aの形成に用いる樹脂ワニスとして、製造例11で製造した樹脂ワニス11を用いた以外は実施例3と同様の操作で、図6に示すような、支持フィルム2に樹脂層A 1と樹脂層B 10が片面ずつ形成された半導体用接着フィルムを得た。樹脂層Aの厚さは9μm、樹脂層Bの厚さは8μmであった。樹脂層Aのガラス転移温度は185℃、5質量%減少温度は411℃であった。樹脂層Bのガラス転移温度は253℃、5質量%減少温度は416℃、230℃における貯蔵弾性率は1500MPaであった。樹脂層Aの厚さ(A)と、支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)は0.36であった。
次に、得られた半導体用接着フィルムを温度250℃、圧力6MPa、時間10秒でパラジウムを被覆した銅リードフレーム(50mm×200mm)に接着した。半導体用接着フィルムのカールはほとんどなく、接着時の作業性は良好であった。なお、封止前ピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Aとリードフレームとの封止前の90度ピール強度を測定したところ0N/mで、搬送時に剥がれてしまい、後の工程を行うことができないと予想された。また、得られた半導体用接着フィルムの樹脂層B側面を250℃、圧力8MPa、時間10秒で真鍮製の金属板に接着して樹脂層Bのピール強度サンプルを得、25℃における樹脂層Bと真鍮製の金属板との樹脂層Bの90度ピール強度を測定したところ0N/mで、工程中金型やジグに張り付く不具合は生じなかった。
【0088】
実施例1〜実施例10の結果より、25℃でリードフレームとの密着性が高く、なおかつ樹脂封止後、リードフレーム及び封止材より室温(25℃)において容易に剥離可能な半導体用接着フィルムを製造することができ、半導体パッケージを高い作業性と生産性で製造することができることが示された。本発明の半導体用接着フィルムは、25℃でリードフレームとの密着性が高く、なおかつ樹脂封止後、室温(25℃)においてリードフレーム及び封止材から容易に引き剥がせるため、半導体装置を高い作業性と生産性で製造することを可能とするものである。
これに対して、半導体用接着フィルムを接着したリードフレームを封止材で封止した後の樹脂層Aとリードフレーム及び封止材との25℃における封止後の90度ピール強度が1000N/mを超える比較例1及び比較例2の半導体用接着フィルムは、樹脂層Aとリードフレーム及び封止材との接着強度が強すぎるために、フィルムが破断して引き剥がすことができなかった。半導体用接着フィルムをリードフレームに接着した後の樹脂層Aとリードフレームとの25℃における封止前の90度ピール強度が5N/m未満である比較例3の半導体用接着フィルムは、搬送時に剥がれてしまい、後の工程を行うことができなかった。
【0089】
本発明の半導体用接着フィルムは、25℃でリードフレームとの密着性が高く、なおかつ樹脂封止後、室温においてリードフレーム及び封止材から容易に引き剥がせるため、半導体パッケージを高い作業性と生産性で製造することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一態様の半導体用接着フィルムの断面図である。
【図2】本発明の一態様の半導体用接着フィルムをリードフレームに接着した半導体用接着フィルム付きリードフレームの断面図である。
【図3】半導体用接着フィルムを接着したリードフレームの反りの測定方法を示す側面図である。
【図4】本発明の一態様の半導体用接着フィルムを備えた半導体装置を示す断面図である。
【図5】本発明半導体用接着フィルムを用いて作製された半導体装置を示す断面図である。
【図6】本発明の一態様の半導体用接着フィルムの断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 樹脂層A
2 支持フィルム
3 半導体用接着フィルム
4 リードフレーム
5 インナーリード
6 ダイパッド
7 半導体素子
8 ワイヤ
9 封止材
10 樹脂層B
11 台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレーム裏面に接着フィルムを貼り付けて保護し、その後リードフレームのダイパッド面に半導体素子を接着し、封止材で封止した後に引き剥がす半導体装置の製造方法に使用される、支持フィルムと樹脂層Aを有する半導体用接着フィルムであって、
前記樹脂層Aは、一般式(I)
【化1】

(X及びXはそれぞれ独立に0〜5の酸素原子及び0〜5の窒素原子を含むC3〜C20の二価の有機基である。)で表されるイミドジカルボン酸とジイソシアナートとを共重合させた樹脂(a)からなり、且つ前記支持フィルムの少なくとも片面に形成されており、
前記半導体用接着フィルムをリードフレームに接着した後の前記樹脂層Aと前記リードフレームとの25℃における90度ピール強度が5N/m以上であり、且つ前記半導体用接着フィルムを接着した前記リードフレームを前記封止材で封止した後の、樹脂層Aとリードフレーム及び封止材との25℃における90度ピール強度が1000N/m以下である半導体用接着フィルム。
【請求項2】
前記イミドジカルボン酸が一般式(II)
【化2】

(X及びXはそれぞれ独立に0〜5の酸素原子と芳香環を1〜3個有する二価の有機基である。)で表される化合物である請求項1に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項3】
前記ジイソシアナートが分子内に芳香環を有する化合物である請求項1又は2に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層Aの厚さ(A)と支持フィルムの厚さ(C)の比(A/C)が、0.5以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層Aの厚さが1〜20μmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項6】
前記支持フィルムの材質が、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリレート、芳香族ポリエーテルエーテルケトン及びポリエチレンナフタレートよりなる群から選ばれるものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項7】
前記支持フィルムのガラス転移温度が、200℃以上である請求項6に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項8】
前記支持フィルムの材質が、銅、アルミニウム、ステンレススティール及びニッケルよりなる群から選ばれるものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項9】
前記支持フィルムの厚さが、5〜100μmである請求項1〜8のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項10】
前記支持フィルムの20〜200℃における線熱膨張係数が3.0×10−5/℃以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項11】
前記支持フィルムの200℃で2時間加熱した際の加熱収縮率が0.15%以下である請求項1〜10のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項12】
前記支持フィルムの片面に前記樹脂層Aが形成されており、その反対面に樹脂層Bが形成され、該樹脂層Bは230℃における貯蔵弾性率が10MPa以上であり、且つ接着性を有しない樹脂層である請求項1〜11のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムが接着された半導体用接着フィルム付きリードフレーム。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムの樹脂層Aが、リードフレームのダイパットの反対面に前記樹脂層A面で接着された半導体用接着フィルム付きリードフレーム。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムを有する半導体用接着フィルム付き半導体装置。
【請求項16】
前記半導体装置は、支持フィルムと該支持フィルムの片面に形成される樹脂層Aを有する半導体用接着フィルムと、ダイパット及びインナーリードを有し且つ前記半導体用接着フィルムの樹脂層Aが前記ダイパットの反対面で接着されるリードフレームと、前記ダイパッドに接着された半導体素子と、前記半導体素子と前記インナーリードとを接続するワイヤと、前記リードフレームの露出面及び半導体素子及びワイヤを封止する封止材とを備えている請求項15記載の半導体用接着フィルム付き半導体装置。
【請求項17】
請求項15又は16記載の半導体用接着フィルム付き半導体装置から半導体用接着フィルムを剥離して得られる半導体装置。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の半導体用接着フィルムを用いて作製した半導体装置。
【請求項19】
請求項13に記載の半導体用接着フィルム付きリードフレームを用いて作製した半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−277802(P2008−277802A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97239(P2008−97239)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】