説明

半導体発光素子の実装体の製造方法、発光装置の製造方法及び半導体発光素子

【課題】流動性のあるバンプ形成材料をバンプ形成対象面へ塗布し、これを乾燥・焼成してバンプを形成すると、その表面がメニスカス形状となる。その結果、バンプと半導体発光素子及び基板との接合箇所にムラが生じ、その結果、接合面積が不十分となり、接合強度が不足し、また半導体発光素子の放熱特性も低下するおそれがある。
【解決手段】半導体発光素子の電極へ金属粒子を分散したペースト状のバンプ形成材料を島状に積層して複数のバンプ形成材料塊を形成する。ここに、バンプ形成材料塊はその上面と下面で面積が異なり、かつその上面が実質的に平坦となるように形成される。次にこのバンプ形成材料塊を熱処理して固形のバンプとし、半導体発光素子の電極と基板とをバンプを介して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光素子を基板へ固定するためのバンプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の電極をマウントした表面を基板へ対向して配置するいわゆるフリップチップ型発光素子を基板へ実装する場合、一般的には当該発光素子の電極の表面へバンプを積層し、このバンプを介して発光素子と基板とを結合する。ここに、バンプの形成方法として(1)電気メッキ、(2)スパッタ、(3)スタッドバンプなどが知られている。
しかしながら、これらの方法においては、それぞれ(1)通電が不可欠であるため発光素子に損傷が生じるおそれがある、(2)積層速度が遅く製品製造のスループット低下の原因となる、(3)各々のバンプを個々に形成しなければならないので、同じくスループット低下の原因となる、という課題がある。
【0003】
これを回避するため、金属粒子含有ペースト材1(この明細書では「バンプ形成材料」と呼ぶ)を電極表面2の所定領域へスクリーン印刷し(図1A参照)、これを熱処理及びレジストを除去して面状のバンプ5とする(図1B参照)。図1中の参照番号3はレジストである。
本件発明に関連する技術を開示する文献として特許文献1及び2を参照されたい。
【特許文献1】特開2007−19144号公報
【特許文献2】特開2008−226864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記バンプ形成材料を用いて半導体発光素子を基板へ固定することについて検討してきたところ、下記の課題に気がついた。
バンプ形成材料1はペースト状又はスラリー状で流動性があるため、半導体発光素子の電極表面2上へスクリーン印刷したとき、図1Aに示すように、表面張力が作用して表面にメニスカスが生じ、中央部分に凹部が形成され、熱処理後もその形状は維持される(図1B)。かかるバンプ5を介在させて半導体発光素子と基板とホットプレスしたとき、接合加重がバンプ5へ均等にかからず凸部のみに荷重が集中してこれが無秩序に変形し、接合箇所にムラが発生するおそれがある。その結果、接合面積が不十分となり、接合強度が不足し、また半導体発光素子の放熱特性も低下するおそれがある。これはバンプ径が大きく、バンプ高さが小さい程、問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の第1の局面は上記課題に鑑みてなされたものである。即ち、
半導体発光素子の電極表面及び/又は基板の電極対向面へ金属粒子を分散したペースト状のバンプ形成材料を島状に積層して複数のバンプ形成材料塊を形成するステップであって、前記バンプ形成材料塊はその上面と下面で面積が異なり、かつその上面が実質的に平坦となるように形成されるバンプ形成材料塊形成ステップと、
前記バンプ形成材料塊を熱処理して固形のバンプとする熱処理ステップと、
前記半導体発光素子と前記基板とを前記バンプを介して固定する固定ステップと、
を含んでいる半導体発光素子の実装体の製造方法である。
【0006】
上記の方法によれば、バンプ形成材料塊を島状として、個々のバンプ径を小さくし、その上面面積と下面面積とを異ならしめ、かつその上面が実質的に平坦としたので、当該バンプを介在させて半導体発光素子と基板とをホットプレスすると、上面と下面とにおいてその面積の小さい方に加重が集中する。このとき、バンプ上面は実質的に平坦であるため、加重が均等にかかり、小面積部位の変形を何ら阻害することはない。ここで、「実質的に平坦」とは、バンプの上面の凹凸が少なくともホットプレスによるバンプ高さの変形量以下であることを示す。
バンプにおいて小面積部位へ加重が集中するとその部位からバンプは全方向へ向けて均等に変形する。その結果、半導体発光素子と基板とに対して充分なバンプ接合面積を得られる。変形したバンプは相互に連結することがある(第5の局面参照)。相互にバンプを連結することにより、熱伝導が良好になる。
バンプの形状は高さ方向(バンプの下面から上面に向かう方向)において、その幅が漸減又は漸増する形状であっても良いし、高さ方向においてその幅が漸減する領域とその幅が漸増する領域とを備える形状であっても良い。なお、バンプの形状は円錐台形状若しくは断面台形の帯状など垂直断面の形状を台形形状とすることが好ましい(第6の局面参照)。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、第1の局面で規定の製造方法において、前記バンプ形成材料塊を形成するステップは、前記半導体発光素子の電極表面及び/又は前記基板の電極対向面へマスクを形成し、該マスクはその厚み方向のテーパー面を有する開口部を備え、該開口部へ前記バンプ形成材料を充填する。
第2の局面に規定の方法によれば、マスクを用いてバンプ形成材料塊を付形するので、バンプ形成材料塊の形状が安定し、またバンプ形成材料塊を形成するステップを安価かつ高速に行える。
【0008】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、第2の局面で規定の製造方法において、前記マスクはレジスト材料からなり、前記マスクの開口部へ前記バンプ形成材料を充填する。第3の局面に規定の方法によれば、マスクの除去が容易となり、バンプ形成材料塊を形成するステップを円滑に実行することができる。
【0009】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、第3の局面で規定の製造方法において、前記バンプ形成材料が前記マスクの上面からスクリーン印刷して該マスクの開口部へ前記バンプ形成材料を充填される。
第4の局面に規定の方法によれば、バンプ形成材料塊を形成するステップを更に円滑に実行することができ、ひいては半導体発光素子を基板へ固定する方法のスループットが向上する。
【0010】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、第1〜第6の局面に記載の製造方法に加えて、ホットプレスにより熱可塑性封止材により前記半導体発光素子を封止する封止ステップが加えられる。この方法によれば、半導体発光素子を基板に配列し、封止ステップにおけるホットプレスにより、半導体発光素子と基板の接合と、熱可塑性封止材による封止を同時に行うことが可能であり、スループットが向上する。
さらにこの発明の第8の局面では、熱可塑性封止材として低融点ガラスを選択する。
【0011】
この発明の第11の局面は、半導体発光素子の電極表面及び/又は基板の電極対向面へ金属粒子を分散したペースト状のバンプ形成材料を島状に積層して複数のバンプ形成材料塊を形成するステップであって、前記バンプ形成材料塊はその高さ方向においてその幅が変化するように形成されるバンプ形成材料塊形成ステップと、バンプ形成材料塊を熱処理して固形のバンプとする熱処理ステップと、半導体発光素子と基板とを前記バンプを介して固定する固定ステップと、を含んでいる半導体発光素子の実装体の製造方法である。
【0012】
この発明の第11の局面によれば、バンプ形成材料塊はその高さ方向においてその幅が変化するように形成されるため、形成されたバンプはその幅の狭い部分に加重が集中し、そこからバンプが全方向へ向けて変形する。その結果、半導体発光素子と基板とに対して充分なバンプ接合面積を得られる。変形したバンプは相互に連結することがある(第5の局面参照)。相互にバンプを連結することにより、熱伝導が良好になる。
さらにこの発明の第12の局面に記載の発明は、バンプ形成材料塊はその高さ方向において、バンプ形成材料塊が積層される面から離れるにつれて、その幅が漸減するように形成される。これによりバンプは傾斜する側面を備えることとなる。バンプ形成材料塊をこのような形状とすることにより、成型が容易となってスループットが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は従来のバンプ形成材料の特性を示す断面図である。
【図2】図2は半導体発光素子の電極表面へドット状に形成されたバンプを示す平面図である。
【図3】図3は半導体発光素子の電極表面へ帯状に形成されたバンプを示す平面図である。
【図4】図4は実施例1のバンプの製造工程を示す模式図である。
【図5】図5は実施例1のバンプによる半導体発光素子と基板との接合工程を示す模式図である。
【図6】図6(A)は実施例2の半導体発光素子の電極表面へドット状に形成されたバンプを示す平面図であり、図6(B)は同斜視拡大図であり、図6(C)に同側面図である。
【図7】図7はバンプ形成材料塊390の形成工程を示す模式図である。
【図8】図8は実施例2の変形例である、半導体発光素子の電極表面へドット状及び帯状に形成されたバンプを示す平面図である。
【図9】図9は本発明の実施例3におけるバンプ形成材料塊500の形成工程を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記において半導体発光素子には、絶縁性の成長基板の上にP層及びN層を形成して、片面側にp電極及びn電極を有するいわゆるフリップチップタイプのIII族窒化物系化合物半導体発光素子を適用することができる。また、導電性の基板の一方の面にp電極を有し、他方の面にn電極を有するIII族窒化物系化合物半導体発光素子を適用してもよい。
III族窒化物系化合物半導体素子とは、III族窒化物系化合物半導体からなる発光層を有する発光素子をいう。ここで、III族窒化物系化合物半導体とは、一般式としてAlGaIn1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦X+Y≦1)の四元系で表され、AlN、GaN及びInNのいわゆる2元系、AlGa1−xN、AlIn1−xN及びGaIn1−xN(以上において0<x<1)のいわゆる3元系を包含する。III族元素の少なくとも一部をボロン(B)、タリウム(Tl)等で置換しても良く、また、窒素(N)の少なくとも一部もリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等で置換できる。III族窒化物系化合物半導体層は任意のドーパントを含むものであっても良い。n型不純物として、Si、Ge、Se、Te、C等を用いることができる。p型不純物として、Mg、Zn、Be、Ca、Sr、Ba等を用いることができる。なお、結晶成長基板には、サファイア(Al)、ガリウムナイトライド(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)などを用いることができる。
III族窒化物系化合物半導体層は、周知の有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線結晶成長法(MBE法)、ハライド系気相成長法(HVPE法)、スパッタ法、イオンプレーティング法、電子シャワー法等によって形成することができる。
なお、p型不純物をドープした後にIII族窒化物系化合物半導体を電子線照射、プラズマ照射若しくは炉による加熱にさらすことも可能であるが必須ではない。
発光素子はかかるIII族窒化物系化合物半導体を積層して構成される。発光のための層構成として量子井戸構造(多重量子井戸構造若しくは単一量子井戸構造)を採用することができる。そのほか、シングルへテロ型、ダブルへテロ型、ホモ接合型を採用することもできる。
【0015】
フリップチップタイプの発光素子は光取り出し面を基板側とするので、p電極及びn電極を形成した発光素子上面と基板の配線部とをバンプによって固定する。このバンプには導電性、熱伝導性及び発光素子と基板とを強固に連結する機械的強度が要求される。
【0016】
バンプは半導体発光素子の電極表面、及び/又は基板の電極対向面に形成される。より具体的には発光素子のp電極及びn電極、及び/又は基板の配線パッドに形成される。
バンプは島状であって隣のバンプとの間に空間が形成される。バンプの島形状はドット状(バンプ11)であっても(図2参照)、帯状(バンプ13)であってもよい(図3参照)。バンプは半導体発光素子の電極(p電極15、n電極17)上及び/又は基板の配線パッド上において均等に分配させて配置されることが好ましいが、不均等な配置や、自由曲線で囲まれた形状にすることも可能である。
【0017】
本発明の第1の局面ではバンプはその上面と下面とで面積が異なるものとする。その結果、ホットプレス時にバンプの小面積部分に応力が集中してそこから変形が始まる。接触部に応力集中させることで、より接合しやすくなる。全てのバンプの形状を同一とすると、各バンプが当該小面積部分より同様に変形することとなり、半導体発光素子と基板との間にバンプが均等に充填される。換言すれば半導体発光素子と基板との接合面におけるバンプの密度が均等になる。バンプの形状、半導体発光素子、基板の形状及び変形を考慮して、意図的にバンプ形状や配置に分布をもたせてもよい。
【0018】
バンプの大きさ及びそのピッチ(換言すれば、バンプ間の空間の大きさ)は任意に設定できるものであるが、ホットプレス時に変形が予想されるバンプの体積がバンプ間の空間の容積と実質的に等しいものとすることが好ましい。これにより、半導体発光素子及び基板の各全面へバンプが結合し、両者を強固に固定する。
バンプはバンプ形成材料塊を熱処理して得られる。バンプ形成材料は流動性を有するので、その表面が大きくなると図1Aに示したようにメニスカスが生じてしまう。そこでこの発明では、バンプの上面はメニスカスが生じない程度の面積を有する。よって、バンプはその上面側を小面積とし、下面側を大面積とすることが好ましい。メニスカスの発生を実質的に予防するには、バンプ上面が円形とき(ドット状のバンプ)、その直径を3〜7μmとし、バンプの上面が長方形のとき(帯状のバンプ)、その短手方向の幅を3〜7μmとする。
【0019】
流動性を有するバンプ形成材料塊を例えば円錐台形に付形するため、マスクを用いることが好ましい。このマスクの開口部の周壁がバンプ形成材料塊の外周面を規定する。マスクを用いることにより、当該開口部の形状および形成密度を任意に設計できる。
マスクの材料は任意に選択できる。テーパーのついたマスクを容易に形成できるレジストを採用することが好ましい。例えば、金属フィルムやレジストを採用することができる。
マスクの代わりに、ポッティングやインクジェット方式によりバンプ形成材料塊を形成してもよい。
【0020】
バンプ形成材料には金属粒子を有機溶剤中に分散してなるスラリーを用いることができる。金属粒子には、金、銀、白金、又はパラジウムの単体若しくはそれら2以上の混合物を用いることができる。
有機溶剤にはアルコール類を用いることができる。例えば、エステルアルコール、ターピネオール、パインオイル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールを挙げることができる。好ましいエステルアルコール系の有機溶剤として、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンタイソブチレート(C1224)がある。
金属粒子を分散させる目的で有機溶剤にポリマーを添加してもよい。ポリマーとしてメタクリル酸メチル重合体等のアクリル系樹脂、エチルセルロース等のセルロース系樹脂、無水フタル酸樹脂等のアルキッド樹脂等を挙げることができる。
また、熱可塑性樹脂中に、金属粒子を含有させてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル,フッ化樹脂、等)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等)、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、熱可塑性エラストマ、等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
バンプ形成材料塊の熱処理はバンプ形成塊から有機溶剤を除去するとともに金属粒子の結合を図ることを目的とし、その条件はバンプ形成材料の材質やその塊の大きさに応じて適宜選択できる。
【0022】
導電性の基板の一方の面にp電極を有し、他方の面にn電極を有するIII族窒化物系化合物半導体発光素子を使用する場合、p型電極又はn型電極の表面のいずれか一方にバンプを形成し、当該バンプ形成面を配線基板と対向させてホットプレスすることができる。また、配線基板側にバンプを形成して当該発光素子をホットプレスしても良い。
【0023】
本発明の第11の局面では、バンプはその高さ方向においてその幅が変化するように形成される。バンプ形成材料塊をこのように形成する方法は、上述のスクリーン印刷を利用する方法の他に、ドット印刷、ディスペンサーによる転写、ニードル塗布、凸版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ナノインプリントなどが挙げられる。バンプ形成材料及びバンプ形成材料塊の熱処理方法(仮焼成)は第1の局面と同様とすることができる。なお、バンプが形成される半導体素子の実装条件によっては、仮焼成を省略することもできる。
【実施例1】
【0024】
以下、この発明の実施例1について図例を参照しながら説明する。
半導体発光素子の電極31の表面へレジスト材33を一様に塗布し、ドット状の穴(丸穴)34を均等に形成する。この穴34は、図4(1)に示すように、断面三角台形(即ちレジスト材33の内面は逆テーパ面となる)とすることが好ましい。レジスト材としてネガレジストを用いた。
次に、ペースト状のバンプ形成材料35を塗布し、バンプ形成材料35でレジスト材33の穴34を充填するとともに、レジスト材33表面のバンプ形成材料35をスキージ37で除去する(図4(2))。バンプ形成材料として金微粒子含有スラリーを用いた。
次に、バンプ形成材料35を、その後、230℃30分の条件でバンプ形成材料35を焼成する(図4(3))。これによりバンプ形成材料35中の金属粒子が相互に結合し、バンプが多数の間隙が存在する状態で固体化する。次に、レジスト33を除去し、図4(4)に示すように電極31の表面へ円錐台形のバンプ39がドット状に形成される。
なお、このバンプ39の形状は高さが2μm、底面の直径が3μm、上面の直径が1μmであって、ピッチ(中心線間の距離)が5μmである。
【0025】
このようにしてバンプ39の形成された半導体発光素子はその電極31を配線基板40へ向けて当て付けられる(図5(1)及び(2))。この配線基板40は基体41の上に実装されている。その後、230℃の条件でホットプレスしてバンプ39を変形する。このとき、バンプ39が円錐台形であるため、その小面積部分へ応力が集中してまずこの部位から変形が始まる。バンプ39の形状を同一とすることによりバンプの変形が一様となり、電極31と配線基板40との間に隙間無くバンプを充填することができる(図5(4)、(5))。
これにより、半導体発光素子の電極31と配線基板40との間に安定かつ充分な接合強度が得られ、かつ半導体発光素子からの放熱特性も充分なものとなる。また、レジスト材を使用する本実施例の方法によれば、大面積に対してバンプを形成することが容易となる。
【実施例2】
【0026】
本発明の実施例2について図面を参照しながら以下に説明する。実施例2では、ニードル塗布によって半導体発光素子の電極31の表面へバンプ形成材料塊390を形成する。図6(A)にバンプ形成時の電極(p電極15、n電極17)の表面の図を示す。図6(B)にバンプ形成材料塊390の斜視拡大図を、図6(C)に側面図をそれぞれ示す。図6(A)に示すように、バンプ形成材料塊390は各電極15、17の表面にドット状に形成される。バンプ形成材料塊390の形成には、例えば、ニードル式ディスペンサー100(株式会社アプライドマイクロシステム社製)を使用することができる。図7(A)〜(E)に当該装置100を使用してバンプ形成材料塊390形成する際の模式図を示す。図7(A)に示すように、当該装置100はガラス管101、その内部に設けられるタングステン針102とを備える。ガラス管101の先端の開口部にはバンプ形成材料391が表面張力によって保持されている。
【0027】
バンプ形成材料塊390は次のように形成する。まず、ガラス管101を電極15上の所定位置にセットし、タングステン製の針102を降下して先端に保持されたバンプ形成材料391を通過させる(図7(B)参照)。これにより、針102の先端にバンプ形成材料392が付着した状態となる。そして、バンプ形成材料塊392が電極15の表面に接するまで、針102をさらに降下する(図7(C)参照)。その後、針102を引き上げる(図7(D))。これにより、バンプ形成材料392が電極15の表面に転写されて、バンプ形成材料塊390が形成される(図7(E))。このように形成されるバンプ形成材料塊390の形状は、高さ方向において、電極15の表面から離れるにつれて幅が漸減する形状となり、その側面は傾斜することとなる。バンプ形成材料塊390は高さ約50μm、底面の直径約50μmであって、同一形状のバンプ形成材料塊390が約5μmのピッチ(中心線間の距離)で電極15及び電極17の表面に形成される。
【0028】
バンプ形成材料塊390によれば、バンプ形成材料塊390が高さ方向に幅が小さくなっているため、実施例1と同様にホットプレスすると当該幅の小さい部分へ応力が集中し、まずこの部位から変形が始まる。そしてバンプ39の形状が同一であるためバンプ形成材料塊390は一様に変形し、電極15、17と配線基板との間に隙間無くバンプを充填される。これにより、半導体発光素子の電極15、17と配線基板との間に安定かつ充分な接合強度が得られ、かつ半導体発光素子からの放熱特性も充分なものとなる。また、微少液滴塗布装置100を使用することにより、レジスト材を使用する場合に比べて作業工程を低減できる。
【0029】
上記実施例において、バンプ形成材料塊390は半導体発光素子のn電極15及びp電極17の表面にドット状に配列して形成したが、図8に示すように、半導体発光素子のp電極17の表面にバンプ形成材料塊393を帯状に形成しても良い。帯状のバンプ形成材料塊390は、例えば、バンプ形成材料塊390が形成される帯状の長手方向において、バンプ形成材料塊392が連結するように、微少液滴塗布装置100によるバンプ形成材料391の転写のピッチを小さくすることにより、形成することができる。
【実施例3】
【0030】
本発明の実施例3について図面を参照しながら以下に説明する。図8に実施例3におけるにバンプ形成材料塊500時の電極(p電極15、n電極17)の表面の図を示す。バンプ形成材料塊500は、例えば、エアパルス式ディスペンサー(武蔵エンジニアリング株式会社社製)により半導体発光素子の電極15、17の表面へ形成することができる。図9(A)〜(D)に当該ディスペンサー510によるバンプ形成材料塊500形成の模式図を示す。図9(A)に示すように、当該装置510はシリンジ(図示せず)の先端にノズル511を備える。ノズル511は先端の開口部が円形であり、その内径は約50μm、外径は約80μmである。ノズル511内にはバンプ形成材料391が充填され、その先端開口部からバンプ形成材料391が吐出される。
【0031】
バンプ形成材料塊500は次のように形成できる。まず、ノズル511を電極15上の所定位置にセットし、ノズル511の先端開口部からバンプ形成材料391を吐出して(図9(B)参照)バンプ形成材料391を電極15の表面に接触させる(図9(C)参照)。その後、ノズル511を引き上げ(図9(D))、バンプ形成材料391を電極15の表面に転写して、バンプ形成材料塊500を形成する。なお、バンプ形成材料391の吐出条件は吐出圧200kPa、吐出時間0.03秒としたが、バンプ形成材料391の粘度等を考慮して適宜決定してよい。
【0032】
バンプ形成材料塊500の形成後、仮焼成を行う。仮焼成の条件は温度200℃、時間10分である。仮焼成により、バンプ形成材料塊500内の溶剤が揮発してバンプ形成材料塊500内の金属粒子が間隙の多い状態で結合(即ち、略結合)するとともに、電極15にも略結合する。これにより、バンプ形成材料塊500が電極15に固定されるとともに、バンプ形成材料塊500の変形が容易となる。
【0033】
形成材料塊500の形状は、高さ方向において、電極15の表面から離れるにつれて幅が漸減する形状となり、その側面は傾斜することとなる。バンプ形成材料塊500は高さ約50μm、底面の直径約50μmである。バンプ形成材料塊500はバンプ形成材料塊390と同様に約5μmのピッチ(中心線間の距離)で電極15及び電極17の表面に形成される。
【0034】
実施例3では円形の開口部を有するノズル511を備えるディスペンサー510を例示したが、これに限定されず、矩形の開口部を有するノズルを備えるディスペンサーを使用してもよい。矩形の開口部を有するノズルを使用することにより、底部が矩形のバンプ形成材料塊を形成して、底部が円形のバンプ形成材料塊よりもさらに密に実装することができる。また、実施例3では開口部の内径が50μmのノズル511を使用することを例示したが、開口部の内径がさらに小さいノズルを使用することができる。例えば、開口部の内径が約20μmのノズルを使用する。これにより、底部が約20μmの円形のバンプ形成材料塊を形成することができ、当該バンプ形成材料塊を一層密に形成することができる。
【0035】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1,35、391、392 バンプ形成材料
2,15,17,31 電極
3,33 レジスト
39 バンプ
390、393、500 バンプ形成材料塊
40,41 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子の電極表面及び/又は基板の電極対向面へ金属粒子を分散したペースト状のバンプ形成材料を島状に積層して複数のバンプ形成材料塊を形成するステップであって、前記バンプ形成材料塊はその上面と下面で面積が異なり、かつその上面が実質的に平坦となるように形成されるバンプ形成材料塊形成ステップと、
前記バンプ形成材料塊を熱処理して固形のバンプとする熱処理ステップと、
前記半導体発光素子と前記基板とを前記バンプを介して固定する固定ステップと、
を含んでいる半導体発光素子の実装体の製造方法。
【請求項2】
前記バンプ形成材料塊を形成するステップは、前記半導体発光素子の電極表面及び/又は前記基板の電極対向面へマスクを形成し、該マスクはその厚み方向のテーパ面を有する開口部を備え、該開口部へ前記バンプ形成材料を充填する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記マスクはレジスト材料からなり、前記マスクの開口部へ前記バンプ形成材料を充填する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記バンプ形成材料は前記マスクの上面からスクリーン印刷して充填される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記固定ステップにおいて前記バンプが変形して相互に連結する、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記バンプは円錐台形状であり、前記半導体発光素子の電極表面へ均等に分配されている、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の半導体発光素子を基板へ固定する方法に加えて、ホットプレスにより熱可塑性封止材により前記半導体発光素子を封止する封止ステップを備えてなる発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性封止材は低融点ガラスである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
片面側にp電極及びn電極を有する半導体発光素子であって、前記p電極及びn電極の表面に複数の島状のバンプが均等に分散され、該バンプはその上面と下面で面積が異なり、かつその上面が実質的に平坦となるように形成される半導体発光素子。
【請求項10】
一方の面にp電極を有し、他方の面にn電極を有する半導体発光素子であって、前記p電極又はn電極の表面のいずれか一方に複数の島状のバンプが均等に分散され、該バンプはその上面と下面で面積が異なり、かつその上面が実質的に平坦となるように形成される半導体発光素子。
【請求項11】
半導体発光素子の電極表面及び/又は基板の電極対向面へ金属粒子を分散したペースト状のバンプ形成材料を島状に積層して複数のバンプ形成材料塊を形成するステップであって、前記バンプ形成材料塊はその高さ方向においてその幅が変化するように形成されるバンプ形成材料塊形成ステップと、
前記バンプ形成材料塊を熱処理して固形のバンプとする熱処理ステップと、
前記半導体発光素子と前記基板とを前記バンプを介して固定する固定ステップと、
を含んでいる半導体発光素子の実装体の製造方法。
【請求項12】
前記バンプ形成材料塊はその高さ方向において、前記バンプ形成材料塊が積層される前記半導体発光素子の電極表面及び/又は前記基板の電極対向面から離れるにつれて、その幅が漸減するように形成される、請求項11に記載の半導体発光素子の実装体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−226086(P2010−226086A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263108(P2009−263108)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】