説明

半導体発光素子の製造方法、半導体発光素子、及び光断層画像化装置

【課題】選択成長を利用した半導体発光素子において、より高い耐久性および信頼性を有する半導体発光素子の製造方法、半導体発光素子、及び光断層画像化装置を提供する。
【解決手段】GaAs基板上に形成されたInGaP下部第1クラッド層13A上に、幅が段階的または連続的に変化する選択成長用マスクを形成して選択領域を形成する第1の工程、選択領域の上にInGaP下部第2クラッド層13Bを形成する第2の工程、下部第2クラッド層13B上にInGaAs量子井戸層15を形成する第3の工程、量子井戸層15上にInGaP上部クラッド層17を形成する第4の工程を含む半導体発光素子1の製造方法において、第2の工程を600°C以上の成長温度で、第3の工程を600°C以上の成長温度で、選択成長用マスクを除去せずに第4の工程を600°C以上の成長温度で行い、第2の工程から第4の工程までを大気に暴露することなく行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子の製造方法、半導体発光素子、及び光断層画像化装置に係り、より詳細には、選択成長を利用した半導体発光素子の製造方法、半導体発光素子、及び光断層画像化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の断層画像を取得する際に低コヒーレンス光による光干渉を用いたOCT(Optical Coherence Tomography)装置(光断層画像化装置)が用いられることがある。このOCT装置の一例として、光源から射出された低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割した後、測定光が測定対象に照射されたときの反射光と参照光とを合波し、反射光と参照光との干渉光の強度に基づいて断層画像を取得する装置がある。
【0003】
このような光断層画像化装置においては、例えば参照光を反射するミラーを移動させることにより、参照光の光路長を変更させて測定対象内の測定深さを変更し、測定対象の断層画像を取得するようになっている。しかしながら、ミラーを移動させるという機械的な手段を用いて測定する深さ位置を変えているため、データの収集に時間を要するという問題がある。
【0004】
そこで、高速に断層画像を取得する方法として 上述した参照光の光路長の変更を行うことなく断層画像を取得する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に開示された所謂SD−OCT(Spectral Domain OCT)装置においては、マイケルソン型干渉計を用いて、光源から低コヒーレンス光を射出して測定光と参照光とに分割した後、測定対象に測定光が照射されたときの反射光と参照光との干渉光を各周波数成分に分解したチャンネルドスペクトルをフーリエ解析することにより、深さ方向の走査を行わずに断層画像を取得するようになっている。
【0006】
ところで、OCT装置は、内視鏡への応用を目指してさらに研究開発が進められている。OCT装置の光源波長としては、主に0.8μm帯が用いられている。これは生体における吸収特性を主に考慮した結果、選択された波長である。しかしながら、近年、OCT装置では、生体内部の後方散乱反射光を検出するため、散乱特性も計測深度を律束することが明らかにされた。生体組織での主な散乱はレーリー散乱であり、レーリー散乱では散乱強度は波長の4乗に逆比例する。OCT信号を取得する際の全損失は、吸収損失と散乱損失の和である。このような生体組織における光の全損失を考慮して、全損失が最小となる波長帯域である、1.3μm帯の光を光源波長として用いている。このため、眼科用のOCT装置が実用化された後、内視鏡応用のOCT装置においては、光源波長として1.3μm帯の光を用いた研究開発が進められている。
【0007】
しかしながら、内視鏡へOCT装置を応用する場合、被測定部の多くは水分を多く含む物質に覆われている。例えば被測定部が胃壁であれば、胃液や胃粘膜に覆われているし、被測定部が大腸壁であれば、粘液や腸粘膜に覆われている。また、被測定部が膀胱壁であれば尿あるいは測定のために用いる生理食塩水等に覆われている。これらの水分を多く含む物質に覆われている被測定部においては、水による吸収の影響が大きいため、1.3μm帯の光を用いた場合・所望の深度までの光断層画像が取得できない、あるいは取得した断層画像の信頼度が低下するおそれがある。
【0008】
そこで、本出願人は特許文献2において、生体組織が水分を多く含む物質に覆われている場合であっても、生体組織の所望の深度までの光断層画像を高精度に取得することのできる光断層画像化装置を提供する提案を行った。それは、低コヒーレンス光を射出する光源と、光源から射出された低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、測定光が測定対象に照射されたときの該測定対象からの反射光と参照光とを合波する合波手段と、合波手段により合波された反射光と参照光との干渉光の周波数および強度に基づいて、測定対象の各深さ位置における反射光の強度を検出する干渉光検出手段と、干渉光検出手段により検出された各深さ位置における干渉光の強度を用いて測定対象の断層画像を取得する画像取得手段とを有し、低コヒーレンス光の中心波長が、0.90μm以上かつ1.15μm以下の範囲にあることを特徴とするものである。
【0009】
低コヒーレンス光源の候補としては、低コストで且つスペクトルがガウス形状に近いスーパールミネッセントダイオード(SLD)が有望である。画像の解像度を向上するためには、光源の波長帯域を広げることが有効で、これを達成する手法として、選択成長を利用して量子井戸厚・量子井戸組成を軸方向で変調するという手法がある。
【0010】
この手法は、2つのストライプ状のSiOなどで形成される誘電体マスクを互いに一定間隔を開けて平行に形成し、その上に成長を行うと、マスクに挟まれた成長領域の成長速度・組成が変化する現象を利用していて、マスク幅を変えることで成長する活性層膜厚・組成を共振器軸方向に変化させることができる。
【0011】
この手法を用いると、通常のSLDと比較して非常に広い帯域を得ることが可能であるが、例えば必要とされる1μm帯の波長を発光させようとすると、以下のような問題があった。
【0012】
すなわち、この波長帯域では、GaAs基板を用い、クラッド層に使用できる材料はバンドギャップの関係上AlGaAsなどのAlを含む系か、もしくはInGaPとなる。前者のAlを含む材料系では、選択成長マスクへの吸着が強力すぎてマスク上でポリ結晶を生成してしまい、光出力特性に悪影響を及ぼすので使用には不適である。一方、後者のInGa1−xP は、GaAs基板にX=0.5の場合しか格子整合しない。選択成長で広帯域化を鑑みた場合、発光層であるInGaAs量子井戸層の組成については、強い組成変調をさせるので、同じ条件でInGaPによりクラッド層を形成すると、格子不整合から結晶劣化が生じてしまう。つまり、選択成長により1μm帯の波長を発光する素子において、広帯域な量子井戸層と高品質なクラッド層の両方を備えた発光素子の作製は非常に困難であった。
【0013】
本発明者らによる過去の検討では、選択成長させたInGaPのクラッド層を用いた場合では、発光効率などの特性がよいとは言えなかった(例えば特許文献3記載の発光素子)。
【0014】
さらに最近の検証では、選択成長に伴う再成長の界面が非常に荒れやすいことがわかった。従来型の選択成長構造では、選択成長は、量子井戸層直下のGaAs光ガイド層から開始していた。これは、クラッド層を選択成長させると、格子不整合のために結晶性が低下するためである。
【特許文献1】特開平11−325849号公報
【特許文献2】特開2006−267071号公報
【特許文献3】特開2007−184557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記のように量子井戸層直下のGaAs光ガイド層から選択成長させた構造とすると、再成長界面で生じるロスがレーザ特性に非常に影響を及ぼすことがわかった。
【0016】
選択成長を用いて光導波路方向に波長が変化する例えば1μm帯発光のSLD/SOA(半導体光増幅器)において帯域を広げ且つ発光特性を良好にするためには、組成変調効果を強めた量子井戸と、組成変調されないクラッド層の両立が必要であり、組成の変調効果を層ごとに制御できる方法が必要となる。また、従来の選択成長構造で生じていた再成長界面のロスの低減方法を確立する必要もある。
【0017】
本発明は上記事実を考慮して成されたものであり、選択成長を利用した半導体発光素子において、より高い耐久性および信頼性を有する半導体発光素子の製造方法、半導体発光素子、及び光断層画像化装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本出願人は、選択成長における成長温度によってInとGaの組成変調を制御できることに注目し、本発明に至った。
【0019】
すなわち、請求項1記載の発明の半導体発光素子の製造方法は、導電型GaAs基板の上に形成されたInGaPから構成される下部第1クラッド層の上に、幅が段階的または連続的に変化する選択成長用マスクを形成して選択領域を形成する第1の工程と、前記選択領域の上にInGaPから構成される下部第2クラッド層を少なくとも1層形成する第2の工程と、前記下部第2クラッド層の上にInGaAsから構成される量子井戸層を少なくとも1層形成する第3の工程と、前記量子井戸層の上にInGaPから構成される上部クラッド層を形成する第4の工程とを、少なくともこの順に含む半導体発光素子の製造方法において、前記第2の工程を600°C以上の成長温度の下で行い、前記第3の工程を600°C未満の成長温度の下で行い、前記選択成長用マスクを除去せずに前記第4の工程を600°C以上の成長温度の下で行い、少なくとも前記第2の工程から前記第4の工程までを大気に暴露することなく行うことを特徴とする。
【0020】
ここで、「幅が段階的または連続的に変化する選択成長用マスク」とは、選択成長に用いられるマスクであって、射出する光の導波方向に対して垂直な方向のマスクの長さが、段階的または連続的に上記導波方向に沿って変化するものを意味するものとする。
【0021】
そして、「選択成長用マスクを除去せずに」第4の工程を行うとは、第4の工程の前に少なくとも選択成長用マスクを除去するためのみの工程を行うことなく、第4の工程を行うことを意味するものとする。
【0022】
また、「大気に暴露することなく行う」とは、製造途中の半導体発光素子を薄膜成長装置から大気中に出すこと、または製造途中の半導体発光素子が存在する薄膜成長装置を大気で満たすことなく行うことを意味するものとする。この場合、真空の経路または不活性ガスで満たされた経路を介しての装置間等の移動を含むものとする。
【0023】
なお、請求項2に記載したように、前記第2及び第4の工程における成長温度が600°C〜750°Cの範囲であり、前記第3の工程における成長温度が500°C〜600°C未満の範囲であることが好ましい。
【0024】
請求項3記載の発明の半導体発光素子は、導電型GaAs基板と、InGaPから構成される下部第1クラッド層と、前記下部第1クラッド層上の選択領域の上に形成されたInGaPから構成される下部第2クラッド層と、前記下部第2クラッド層の上に形成されたInGaAsから構成される量子井戸層と、前記量子井戸層の上に形成されたInGaPから構成される上部クラッド層と、を少なくともこの順に含むことを特徴とする。
【0025】
この発明による半導体発光素子は、請求項1又は請求項2記載の製造方法により製造することができる。
【0026】
また、半導体発光素子は、例えば請求項4に記載したように、スーパールミネッセントダイオードや、請求項5に記載したように、半導体光増幅器とすることができる。
【0027】
また、請求項6に記載したように、光出射面が共振器軸に対し傾いている斜面導波路構造を有することが好ましい。
【0028】
請求項7記載の発明の光断層画像化装置は、低コヒーレンス光を出射する光源部と、前記低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割する分割手段と、前記測定光を測定対象に照射する照射光学系と、前記参照光または前記測定光が照射されたときの前記測定対象からの反射光と、前記参照光とを合波する合波手段と、合波された前記反射光と前記参照光との干渉光の光強度に基づいて、前記参照光の光路長と前記測定光および前記反射光の合計の光路長とが略一致する、前記測定対象の複数の深さの位置における反射光の強度を検出し、これらの深さ位置における強度に基づいて測定対象の断層画像を取得する画像取得手段とを備えた光断層画像化装置において、前記光源部が、請求項3〜6の何れか1項に記載の半導体発光素子を前記低コヒーレンス光の光源として含むものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、半導体発光素子の耐久性および信頼性を向上させることが可能となり、さらには本発明による半導体発光素子を用いることにより、光断層画像化装置の性能も向上させることが可能となる、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明における最良の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0031】
「半導体発光素子およびその製造方法」
【0032】
まず、成長温度によるInおよびGaの組成変調の制御について説明する。
【0033】
図1は、成長温度550°C、585°C、600°Cおよび635°CにおけるInGaAsの組成変調と選択成長マスクの幅との関係を示すグラフである。これにより、選択成長による組成変調は、成長温度により効果が変化することが判明した。つまり、成長温度550°Cおよび585°Cの下で選択成長を行うと、選択成長マスク幅に依存して組成変調および膜厚変調が生じる。しかしながら、成長温度600°Cおよび635°Cの下で選択成長を行うと、InとGaの拡散長が略一致し組成比が変化しないため、この温度領域での波長変調は膜厚変調のみの効果にて生じることがわかる。
【0034】
また、図2は、InGaPにおける図1と同様の関係を示すグラフである。これより、InGaPにおいても成長温度を制御することによりInGaAsと同様な効果が生じていることがわかる。
【0035】
なお、組成量はオージェ電子分光にて行い、InGaAs層およびInGaP層の厚さは臨界膜厚以下で評価するため200Åで行った。
【0036】
これらから、600°C付近を境にInとGaの拡散長に変化が生じ、組成変調の効果に違いが表れることがわかる。さらに、InとGaをIII族系に有するIII−V族半導体化合物において、この境となる成長温度がV族系の種類によらないことを示している。したがって、選択成長におけるこの現象を利用することによって、InGaAs量子井戸層は成長温度600°C未満の下で形成して組成変調の効果を強めることができ、InGaPクラッド層は600°C以上の下で形成することで組成変調を抑制することができる。
【0037】
そして、本発明者等の研究により、前述した量子井戸層直下の再成長界面に起因するロスの問題に関しては、GaAs光ガイド層から選択成長させるのではなく、n型の下部第2クラッド層を600°C以上の成長温度で成長させ、再成長界面と量子井戸層との距離を長くすることにより解決できることがわかった。
【0038】
詳細は後述するが、成長温度プロファイルとしては、図3に示すように、再成長界面に対して600°C以上の成長温度で下部第2クラッド層を形成し、量子井戸層は600°C未満の成長温度で形成し、上部クラッド層は600°C以上の成長温度で形成すればよい。これにより、広帯域な量子井戸層の形成と結晶品質の高い上部クラッド層の形成とを両立することが可能となり、ロスの少ない良好な発光特性を有する中心波長帯が例えば約1μm程度のSLDやSOA(Semiconductor Optical Amplifier)を作製することができる。
【0039】
次に、本実施形態における半導体発光素子およびその製造方法について説明する。
【0040】
図4〜7は、本実施形態による半導体発光素子の製造工程を示す概略斜視図であり、図7は、この工程によって製造される本実施形態による半導体発光素子1の概略斜視図である。図7に示す本実施形態による半導体発光素子1においては、図示奥側の素子端面が後方端面1Rであり、図示手前側の素子端面が前方端面(光出力側の端面)1Fである。本実施形態では、後方端面1R及び前方端面1Fはいずれも半導体基板11の基板面に対して垂直であり、後方端面1R及び前方端面1Fは互いに平行である。
【0041】
以下に、本実施形態による半導体発光素子1の層構成について説明する。
【0042】
半導体発光素子1は、n型(第1導電型)GaAs基板11の図示上面に、基板側からn型GaAsバッファ層12とn型In0.49Ga0.51P下部第1クラッド層13Aとが順次積層されている。そして、下部第1クラッド層13A上には、n型In0.49Ga0.51P下部第2クラッド層13B、アンドープGaAs下部光ガイド層14、InGaAs/GaAs量子井戸活性層15、アンドープGaAs上部光ガイド層16およびp型(第2導電型)In0.49Ga0.51P上部クラッド層17の積層構造からなるストライプ状のリッジ構造部20が形成されている。
【0043】
このリッジ構造部20のリッジ幅dは一例として5μmである。また、リッジ構造部20上には、リッジ構造部20の両脇端面を除いて上面にp型GaAsコンタクト層18が形成されている。そして、下部第1クラッド層13Aおよびリッジ構造部20を覆うように、コンタクト層18上の一部を除いて(電流狭窄部23)SiO電流狭窄層19が形成されている。さらに、電流狭窄部23を埋めるように電流狭窄層19上にはp型電極21が、基板11の下面にはn型電極22が形成されている。
【0044】
量子井戸活性層15は、InGaAs量子井戸層と障壁層(例えば、GaAs等)との交互積層構造を有するものである。この場合には、量子井戸活性層15は、InGaAs量子井戸層が一層の単一量子井戸構造であっても、InGaAs量子井戸層が二層以上の多重量子井戸構造であってもよい。
【0045】
また、本実施形態において、リッジ構造部20を形成する各層のうち、量子井戸活性層15中のInGaAs量子井戸層は組成および膜厚を、それ以外の層は膜厚を、射出される光の導波方向に段階的または連続的に変化させている。これにより、InGaAs量子井戸層は段階的または連続的に変化した圧縮性歪を有し、それ以外の層は格子整合する構成としている。
【0046】
なお、半導体発光素子1の層組成および各層の膜厚は、射出する光の波長特性に応じて適宜設計できる。さらに、リッジ構造部20は、光の導波方向に並んだ2つの領域(それぞれe領域、f領域とする)によって形成されており(図7)、光出力側のe領域の方の膜厚が厚くなっている。e領域とf領域との境界では2つの領域間において、組成および膜厚が共に連続的に変化するように、組成および膜厚共に傾斜を有している。e領域とf領域の射出光の導波方向の幅は特に制限なく、射出光の波長特性等に応じて適宜設計できる。
【0047】
そして以下に、本実施形態による半導体発光素子1の製造方法を示す。
【0048】
図4〜図7を参照して、上記本実施形態による半導体発光素子1の製造方法例について説明する。本実施形態において、半導体発光素子1は、パターニングした選択成長用マスクを用いて選択成長により作製される。
【0049】
はじめに、炉内にn型(第1導電型)GaAs基板11を用意し、基板11の略全面にn型GaAsバッファ層12とn型In0.49Ga0.51P下部第1クラッド層13Aとを結晶成長により順次形成する。
【0050】
次に、リッジ構造部20に対応したパターンのSiO選択成長用マスクMをn型下部第1クラッド層13A上に形成し(図4)、フォトリソグラフィーにより選択成長用マスクMをパターニングする。その後、選択成長用マスクMを形成した状態で、図3に示すようにn型In0.49Ga0.51P下部第2クラッド層13Bを650°Cの成長温度の下で結晶成長により形成し、その上にアンドープGaAs下部光ガイド層14を形成した後成長を中断させる。
【0051】
そして、図3に示すように炉内の温度を580°Cまで降下させ、InGaAs/GaAs量子井戸活性層15、アンドープGaAs上部光ガイド層16を580°Cの成長温度の下で順次形成して、成長を中断させる。
【0052】
次に、図3に示すように炉内を650°Cまで上昇させ、p型(第2導電型)In0.49Ga0.51P上部クラッド層17およびp型GaAsコンタクト層18を順次形成して(図5)、選択成長用マスクMを除去して微小なポリ結晶を除去した後(図6)、リソグラフィー工程とエッチングによりリッジ構造部20の上部のみの部分を残してコンタクト層18を除去する。そして、SiO電流狭窄層19を形成し、リッジ構造部20の上部にあたる部分に2μm程度の幅の窓開けストライプをリソグラフィー工程により形成し、さらにその上にp型電極21を、基板11の下面にn型電極22を形成して半導体発光素子1が完成する(図7)。
【0053】
なお、下部光ガイド層14の形成からコンタクト層18の形成までの工程を、大気に暴露することなく1つの薄膜成長装置で一貫して行っている。
【0054】
また、本実施形態において、各半導体層及び各種膜の成膜方法は、特に制限なく有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線エピタキシー法等が挙げられる。
【0055】
リッジ構造部20は、図4に示されるようなパターンの選択成長用マスクMにより選択成長されるので、上述したように各層の組成および膜厚が、射出される光の導波方向に段階的または連続的に変化した構造となる。
【0056】
第2の工程は、In0.49Ga0.51P下部第2クラッド層13Bを形成する工程に含まれている。この層を650°Cの成長温度の下で形成することにより、下部第2クラッド層13Bの組成変調を生じさせないようにしている。
【0057】
第3の工程は、InGaAs/GaAs量子井戸活性層15を形成する工程に含まれている。量子井戸活性層15は、単一量子井戸構造または多重量子井戸構造を有することを先に述べた。このとき、少なくとも一層のInGaAs量子井戸層が600°C未満の成長温度の下で組成変調を生じさせるように形成されていればよい。組成変調を有するInGaAs量子井戸層が少なくとも一層あれば、半導体発光素子における発光スペクトルの広帯域化が可能となるためである。なお、量子井戸活性層15が多重量子井戸構造を有する場合には、半導体発光素子の発光特性の観点から、すべてのInGaAs量子井戸層が600°C未満の成長温度の下で組成変調を生じさせるように形成されることがより好ましい。
【0058】
そして、In0.49Ga0.51P上部クラッド層17を650°Cの成長温度の下で形成する第4の工程により、選択成長用マスクMを除去せずとも上部クラッド層17の組成変調を生じさせないようにしている。
【0059】
また、第2及び第4の工程における成長温度は600°C〜750°Cの範囲であり、第3の工程における成長温度は500°C〜600°C未満の範囲であることが好ましい。ここで、第2及び第4の工程における成長温度の上限を750°Cとしたのは、これ以上の熱履歴をInGaAs量子井戸層に加えると結晶品質が劣化するためであり、第3の工程における成長温度の下限を500°Cとしたのは、成長温度をこの温度未満とした場合は同様にInGaAs量子井戸層の結晶品質が劣化するためである。
【0060】
なお、本実施形態では成長温度を上昇させる際に成長中断を行ったが、必ずしも成長中断は必要としない。例えば、InGaAs/GaAs量子井戸活性層15の形成において、最後の障壁層を形成しながら温度上昇させる方法を用いてもよい。このようにすれば、成長中断による最上層からの材料の再蒸発を防ぎ、一連の層形成を連続して行うことが可能となる。例えばGaAs障壁層であれば、層を形成中に成長温度を変化させても組成変調等の影響がないためにこのような方法を用いることができる。
【0061】
さらに、本発明では少なくとも第2の工程から第4の工程までを大気に暴露することなく行う。しかしながら、本実施形態のような場合には、上記のように下部第2クラッド層13Bの形成からコンタクト層18の形成までの工程を、大気に暴露することなく行うことが好ましく、1つの薄膜成長装置で一貫して行うことがより望ましい。より一般的に換言すれば、選択成長用マスクMを形成してから除去するまでの間の薄膜形成を1つの薄膜成長装置で大気に暴露することなく行うことがより望ましい。このようにすることで、大気の暴露によるパーティクル汚染を防げるので、InGaAs/GaAs量子井戸活性層15に近接した構造の品質劣化を防止する効果がある。
【0062】
選択成長の技術は、選択成長用マスク(SiO等の誘電体)によりマスクされていない領域にのみ半導体結晶を気相成長させる方法である。混晶半導体結晶の場合はマスクの幅を変えることにより、混晶半導体結晶を構成する原子を含む各原料種の気相中の濃度勾配や、表面マイグレーションによる実効的な移動距離が変わり、組成および膜厚に勾配を持たせることができる。したがって、射出される光の導波方向で組成および膜厚の異なる2領域を有する半導体発光素子1を、選択成長により領域毎に分けずに一括で作製することが可能である。なお、リッジ構造部20の組成および膜厚の変調制御は、所望の組成および膜厚となるようにマスクのパターン(マスク幅、マスク間幅等)を変えることにより行うことができる。図4に示される選択成長用マスクMのパターンは、このような半導体発光素子1を構成する際に用いられるパターンの一例である。
【0063】
選択成長用マスクMの幅は、リッジ構造部20の膜厚及び組成に応じて決定すればよく、膜厚を相対的に厚くしたい方を幅広にすればよい。図示されるように、本実施形態においては、光出力側のe領域において膜厚が厚くなるように、選択成長用マスクMの幅が広くなっている。
【0064】
以下、本実施形態における作用を示す。
【0065】
本発明による半導体発光素子1は、例えば約1μmの中心波長帯の低コヒーレンス光を射出し、かつGaAs基板およびInGaAs量子井戸層を有し、選択成長を用いて、InGaP下部第2クラッド層の形成を650°Cの成長温度の下で行い、InGaAs量子井戸層の形成を580°Cの成長温度の下で行い、選択成長用マスクを除去せずにInGaP上部クラッド層の形成を650°Cの成長温度の下で行っている。
【0066】
これにより、選択成長用マスクMを残したまま、InGaAs量子井戸層中のInとGaは組成変調させ、InGaP下部第2クラッド層及びInGaP上部クラッド層中のInとGaは組成変調させないように制御することができる。すなわち、InGaAs量子井戸層をそのバンドギャップが射出される光の導波方向に沿って変化するような構造とすることができ、上部クラッド層17を組成変調なく全体的に格子整合するような構造とすることができる。
【0067】
また、従来のように再成長界面に対してGaAs光ガイド層から成長させるのではなく、n型下部第2クラッド層を600°C以上の成長温度で成長させ、再成長界面と量子井戸層との距離を長くする構成としている。
【0068】
この結果、発光スペクトルが広帯域な量子井戸層の形成と結晶品質の高い上部クラッド層の形成を両立することができるため、半導体発光素子の耐久性および信頼性を向上させることが可能となる。
【0069】
さらに、選択成長用マスクMを除去する工程を省くことができ、大気に暴露する工程を減らし一貫した薄膜形成ができるため、製造の工程を簡素化しかつコストを抑えることを可能とする。
【0070】
上記の本発明の方法により作成した半導体発光素子(SLD)1と、量子井戸活性層、下部第2クラッド層、及び上部クラッド層の成長温度を変化させずにどちらも580°Cで作製した半導体発光素子(以下、第1の従来型とする)、下部第2クラッド層は形成しないが、量子井戸活性層の成長温度を580°C、上部クラッド層の成長温度を650°Cとして作製した半導体発光素子(以下、第2の従来型とする)の発光特性(内部量子効率)を比較すると以下のようになった。
【0071】
第1の従来型のSLDは、クラッド層を形成した時点で結晶にクラックが生じ、電流注入したところ非発光であった。また、第2の従来型のSLDの内部量子効率は0.3であったのに対し、本発明に係るロスを低減させたSLDでは、InとGaの組成を安定させ高品質なInGaP下部第2クラッド層及び上部クラッド層を形成することが可能なため、0.58と格段に向上した。
【0072】
なお、本発明に係るSLDでは、中心波長が1.102μm、発光半値幅は186.3nmとなり、最高出力は19.6mWと、OCT装置の光源として十分な性能を得ることができた。
【0073】
このように、本発明によれば、スペクトル半値幅200nm、出力数10mW程度と広帯域・高出力な半導体発光素子を得ることができ、超高解像OCT装置の実用レベルに耐えうる光源の提供が可能となる。
【0074】
また、本実施形態による半導体発光素子1は、スーパールミネッセントダイオード(SLD)または半導体光増幅器(SOA)として用いることができる。
【0075】
(設計変更例) 本実施形態による半導体発光素子1は上記構成に限らず、適宜設計変更可能である。
【0076】
上記実施形態では、半導体発光素子1は、埋め込み型リッジストライプ構造としたが、内部ストライプ構造等、他の構造としてもよい。
【0077】
上記実施形態では、光導波路が素子端面1Fおよび1Rの法線方向と略同一の方向に延びる導波路構造としたが、光導波路の少なくとも一部が素子端面1Fおよび1Rの法線方向に対して斜めに延びる、斜め導波路構造としても良い。
【0078】
上記実施形態では、選択成長技術によりリッジ構造部20を作製したが、作製方法は制限されない。
【0079】
また、上記実施形態では、射出する光の導波方向の2領域において発光波長が異なる構成としたが、領域数は制限されず、射出する光の波長特性に応じて適宜設計可能である。
【0080】
また、本実施形態による半導体発光素子1は、同一の基板上に、射出する光の導波方向に、異なる波長を発光する複数の連続した領域を設けた構成としているので、単一の半導体基板上に、異種機能の複数の光素子を集積した半導体光集積素子への応用も可能である。
【0081】
また、上記実施形態において、光ガイド層の材料組成および層厚は、組成および層厚を限定したものではない。クラッド層の材料は、組成および層厚は発光波長が単一モードで発光する条件の一例を示したものであり、本発明を前述の材料組成、層厚に、Alを含まない材料でGaAsに格子整合するものならば、限定したものではない。また、ここでは選択成長で形成したリッジストライプ構造によるSLD素子を実施例として挙げたが、内部ストライプ構造など他の構造でも構わない。
【0082】
さらに、本実施形態では、選択成長によるストライプ構造の幅を5μmとしているが、5μm〜30μmとしてもよい。
【0083】
「光断層画像化装置」
【0084】
図を参照して、上記実施形態の半導体発光素子1を備えた光断層画像化装置について説明する。図8は、本実施形態による光断層画像化装置の概略構成図である。
【0085】
図8に示す光断層画像化装置200は、測定対象の断層画像を前述のTD−OCT(Time Domain Optical Coherence Tomography)計測により取得するものであって、レーザ光Laを射出する光源50および集光レンズ51からなる光源ユニット(光源部)210と、光源ユニット210から射出されて光ファイバFB1を伝搬するレーザ光Laを分割する光分割手段2と、ここを通過したレーザ光Laを測定光L1と参照光L2とに分割する光分割手段3と、光分割手段3により分割されて光ファイバFB3を伝搬した参照光L2の光路長を調整する光路長調整手段220と、光分割手段3により分割されて光ファイバFB2を伝搬した測定光L1を測定対象Sに照射する光プローブ230と、該光プローブ230から測定光L1が測定対象Sに照射されたときの測定対象からの反射光L3と参照光L2とを合波する合波手段4(光分割手段3が兼ねている)と、合波手段4により合波されて反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出する干渉光検出手段240とを備えている。
【0086】
光源50は、中心波長(λc)1.1μm、スペクトル半値幅75nmの低コヒーレント光Laを射出するSLDであり、光源ユニット210は、光源50と、該光源50から射出された光を光ファイバFB1内に入射させるための光学系51とを有している。この光源50が、上記実施形態の半導体発光素子1である。
【0087】
上記光路長調整手段220は、光ファイバFB3から出射した参照光L2を平行光化するコリメータレンズ61と、このコリメータレンズ61との距離を変えるように図中矢印A方向に移動可能とされたミラー63と、このミラー63を移動させるミラー移動手段64とから構成されて、測定対象S内の測定位置を深さ方向に変化させるために、参照光L2の光路長を変える機能を有している。光路長調整手段220により光路長の変更がなされた参照光L2が合波手段4に導波されるようになっている。
【0088】
光プローブ230は、先端が閉じられた円筒状のプローブ外筒55と、このプローブ外筒55の内部空間に、該外筒55の軸方向に延びる状態に配設された1本の光ファイバ53と、光ファイバ53の先端から出射した光Lをプローブ外筒55の周方向に偏向させるプリズムミラー57と、光ファイバ53の先端から出射した光Lを、プローブ外筒55の周外方に配された被走査体としての測定対象Sにおいて収束するように集光するロッドレンズ58と、プリズムミラー57を光ファイバ53の軸を回転軸として回転させるモータ54とを備えている。
【0089】
光分割手段3は、例えば2×2の光ファイバカプラから構成されており、光源ユニット210から光ファイバFB1を介して導波した光Laを測定光L1と参照光L2とに分割する。この光分割手段3は、2本の光ファイバFB2、FB3にそれぞれ光学的に接続されており、測定光L1は光ファイバFB2を導波し、参照光L2は光ファイバFB3を導波する。なお、本例におけるこの光分割手段3は、合波手段4としても機能するものである。
【0090】
光ファイバFB2には、光プローブ230が光学的に接続されており、測定光L1は光ファイバFB2から光プローブ230へ導波する。光プローブ230は、例えば鉗子口から鉗子チャンネルを介して体腔内に挿入されるものであって、光学コネクタ31により光ファイバFB2に対して着脱可能に取り付けられている。
【0091】
また合波手段4は、前述の通り2×2の光ファイバカプラからなり、光路長調整手段230により周波数シフトおよび光路長の変更が施された参照光L2と、測定対象Sからの反射光L3とを合波し、光ファイバFB4を介して干渉光検出手段240側に射出するように構成されている。
【0092】
干渉光検出手段240は、干渉光L4の光強度を検出するものであり、干渉光L4の光強度を測定する光検出器40aおよび40bと、光検出器40aの検出値と光検出器40bの検出値の入力バランスを調整してバランス検波を行う演算部41とを備えている。具体的には、測定光L1の全光路長と測定対象Sのある点で反射、もしくは後方散乱された反射光L3の合計と、参照光L2の光路長差が光源のコヒーレンス長よりも短い場合にのみ、反射光量に比例した振幅の干渉信号が検出される。光路長調整手段220により光路長を走査することで、干渉信号が得られる測定対象Sの反射点位置(深さ)が変わって行き、干渉光検出手段240は測定対象Sの各測定位置における反射率信号を検出するようになっている。
【0093】
なお、測定位置の情報は光路長調整手段220から画像取得手段250へ出力されるようになっている。このミラー移動手段64における測定位置の情報と干渉光検出手段240により検出された信号とに基づいて、画像取得手段250により測定対象Sの深さ方向の反射光強度分布情報が得られる。
【0094】
以下、上記構成を有する光断層画像化装置200の作用について説明する。断層画像を取得する際には、まずミラー63を矢印A方向に移動させることにより、測定可能領域内に測定対象Sが位置するように光路長の調整が行われる。その後、光源ユニット210から光Laが射出され、この光Laは光分割手段3により測定光L1と参照光L2とに分割される。測定光L1は光プローブ230から体腔内に向けて射出され、測定対象Sに照射される。
【0095】
そして、測定対象Sからの反射光L3は、において、反射ミラー62において反射した参照光L2と合波され、干渉光L4が発生する。
【0096】
干渉光L4は、光分割手段3(合波手段4)で分割され、一方は光検出器40aに入力され、他方は光検出器40aに入力される。
【0097】
干渉光検出手段240では、光検出器40aの検出値と光検出器40bの検出値の入力バランスを調整してバランス検波を行って、干渉光L4の光強度を検出し、画像取得手段250へ出力する。
【0098】
この検出された干渉光L4の光強度に基づいて、画像取得手段250において測定対象Sの所定の深さにおける反射光強度情報が得られる。次に光路長調整手段330により、参照光L2の光路長を変更し、同様に干渉光L4の光強度を検出し、異なる所定の深さにおける反射光強度情報を取得する。このような動作を繰り返すことにより、測定対象Sの深さ方向(1次元)の反射光強度情報を取得することができる。
【0099】
そして、光プローブ230のモータ54により、プリズムミラー57を回転させることにより、測定光L1を測定対象S上で走査させれば、この走査方向に沿った各部分において測定対象Sの深さ方向の情報が得られるので、この走査方向を含む断層面についての断層画像を取得することができる。このようにして取得された断層画像は、表示装置260に表示される。なお、例えば光プローブ230を図8の左右方向に移動させて、測定対象Sに対して測定光L1を、上記走査方向に対して直交する第2の方向に走査させることにより、この第2の方向を含む断層面についての断層画像をさらに取得することも可能である。
【0100】
このようにして取得された断層画像は、表示装置260に表示される。なお、例えば光プローブ230を図8の左右方向に移動させて、測定対象Sに対して測定光L1を、上記走査方向に対して直交する第2の方向に走査させることにより、この第2の方向を含む断層面についての断層画像をさらに取得することも可能である。
【0101】
背景技術の項で述べたように、光断層画像化装置の性能は、光源の広帯域性に大きく依存する。本実施形態による光断層画像化装置200は、広帯域かつ、高出力な上記本実施形態による半導体発光素子1を用いて構成されたものであるので、鮮明かつ高精細な断層画像を取得することができる。
【0102】
(設計変更)
【0103】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更可能である。上記実施形態では、TD−OCT計測により画像を取得する光断層画像化装置を例に記載したが、その他の光断層画像化装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の半導体発光素子は、OCT装置等の光画像断層化装置用の低コヒーレンス光源等に特に好ましく利用することができる。本発明の半導体発光素子は、光画像断層化装置用の光源以外にも、通信、計測、医療、印刷、画像処理等の分野において、種々の用途の光源として好ましく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】InGaAs層における成長温度と組成変化量の関係を示す図
【図2】InGaP層における成長温度と組成変化量の関係を示す図
【図3】組成変調を制御した成長温度プロファイルの一例を示す概念図
【図4】実施形態による半導体発光素子の作製工程を示す断面図(その1)
【図5】実施形態による半導体発光素子の作製工程を示す断面図(その2)
【図6】実施形態による半導体発光素子の作製工程を示す断面図(その3)
【図7】実施形態による半導体発光素子の構造を示す断面図(その4)
【図8】実施形態による光断層画像化装置を示す概略構成図
【符号の説明】
【0106】
1 半導体発光素子
11 第1導電型(n型)GaAs基板 12 第1導電型(n型)GaAsバッファ層
13A 第1導電型(n型)InGaP下部第1クラッド層
13B 第1導電型(n型)InGaP下部第2クラッド層
14 アンドープGaAs下部光ガイド層
15 InGaAs/GaAs量子井戸活性層
16 アンドープGaAs上部光ガイド層
17 第2導電型(p型)InGaP上部クラッド層
18 第2導電型(p型)GaAsコンタクト層
19 SiO電流狭窄層
20 リッジ構造部
21 p型電極
22 n型電極
23 電流狭窄部
200 光断層画像化装置
210 光源ユニット(光源部)
2,3 分割手段
230 照射プローブ(照射光学系)
4 合波手段
250 画像取得手段
S 測定対象
La 低コヒーレンス光(広帯域光)
L1 測定光
L2 参照光
L3 反射光
L4 干渉光
d リッジ構造部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電型GaAs基板の上に形成されたInGaPから構成される下部第1クラッド層の上に、幅が段階的または連続的に変化する選択成長用マスクを形成して選択領域を形成する第1の工程と、
前記選択領域の上にInGaPから構成される下部第2クラッド層を少なくとも1層形成する第2の工程と、
前記下部第2クラッド層の上にInGaAsから構成される量子井戸層を少なくとも1層形成する第3の工程と、
前記量子井戸層の上にInGaPから構成される上部クラッド層を形成する第4の工程とを、少なくともこの順に含む半導体発光素子の製造方法において、
前記第2の工程を600°C以上の成長温度の下で行い、前記第3の工程を600°C未満の成長温度の下で行い、前記選択成長用マスクを除去せずに前記第4の工程を600°C以上の成長温度の下で行い、少なくとも前記第2の工程から前記第4の工程までを大気に暴露することなく行うことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2及び第4の工程における成長温度が600°C〜750°Cの範囲であり、前記第3の工程における成長温度が500°C〜600°C未満の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
導電型GaAs基板と、
InGaPから構成される下部第1クラッド層と、
前記下部第1クラッド層上の選択領域の上に形成されたInGaPから構成される下部第2クラッド層と、
前記下部第2クラッド層の上に形成されたInGaAsから構成される量子井戸層と、
前記量子井戸層の上に形成されたInGaPから構成される上部クラッド層と、
を少なくともこの順に含む半導体発光素子。
【請求項4】
スーパールミネッセントダイオードであることを特徴とする請求項3に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
半導体光増幅器であることを特徴とする請求項3に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
光出射面が共振器軸に対し傾いている斜面導波路構造を有することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
低コヒーレンス光を出射する光源部と、
前記低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割する分割手段と、
前記測定光を測定対象に照射する照射光学系と、
前記参照光または前記測定光が照射されたときの前記測定対象からの反射光と、前記参照光とを合波する合波手段と、
合波された前記反射光と前記参照光との干渉光の光強度に基づいて、前記参照光の光路長と前記測定光および前記反射光の合計の光路長とが略一致する、前記測定対象の複数の深さの位置における反射光の強度を検出し、これらの深さ位置における強度に基づいて測定対象の断層画像を取得する画像取得手段とを備えた光断層画像化装置において、
前記光源部が、請求項3〜6の何れか1項に記載の半導体発光素子を前記低コヒーレンス光の光源として含むものであることを特徴とする光断層画像化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−231756(P2009−231756A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78448(P2008−78448)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】