説明

半導体発光素子用基板の製造方法及びそれを用いた半導体発光素子

【課題】基板に凹凸を形成した発光素子、その基板において、好適な特性を有するものを提供する。
【解決手段】基板10の第1主面上に、半導体20の発光構造を有する半導体発光素子100において、前記基板10の第1主面に、基板凸部11を有し、該凸部の底面14が上面13より断面幅広であり、若しくは基板面において底面14内に上面13が内包されており、該底面14の形状が略多角形状であり、該上面13が略円形状若しくは前記底面14の構成辺より多い構成辺の略多角形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に凹凸を設けた半導体素子に関し、特に、基板の凹凸によって外部量子効率を上げた半導体発光素子、それに用いる基板、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、例えば窒化物半導体の発光ダイオード(LED)では基本的には基板上にn型半導体層、活性層、p型半導体層が順に積層され、その上には電極を形成している。活性層の光は、半導体構造の外部露出面(上面、側面)、基板の露出面(裏面、側面)などから素子外部に出射される。詳しくは、半導体層内で発生した光が電極との界面又は基板との界面に対して所定の臨界角以上の角度で入射すると、全反射を繰り返しながら半導体層内を横方向に伝搬し、その間に光の一部は吸収され、外部量子効率が低下する結果となる。
そこで、発光ダイオードの表面又は側面を粗面とする方法も提案されているが、半導体層にダメージを与えてしまい、クラック等が発生する場合があり、その場合p−n接合が部分的に破壊され、内部量子効率が減少する。そこで、基板の半導体成長表面側に凹凸を設けることが考えられた。
【0003】
基板の成長表面に凹凸を設ける従来技術として、以下の文献があり、特許文献3に関連して、特開2006−066442号公報、特開2005−064492号公報、特開2005−101230号公報、特開2005−136106号公報、特開2005−314121号公報があり、特許文献4,5に関連して、特開2000−331937号公報、特開2002−280609号公報、特開2002−289540号公報がある。
【特許文献1】特開2003−318441号公報
【特許文献2】特開2005−101566号公報
【特許文献3】特開2005−047718号公報
【特許文献4】特開2002−164296号公報
【特許文献5】特開2002−280611号公報
【特許文献6】特開2001−053012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各文献(文献1〜6)には、基板の成長表面に凹凸を設けることが開示され、文献3及び上記関連文献には、サファイア基板を燐酸のウェットエッチングにより、エッチピットを設けることが開示されている。
【0005】
半導体構造側の基板表面に、光取り出し効果のある光学的な構造部を設ける場合に、結晶成長面を兼ねることから、その凹凸形状により成長した結晶性が悪化する問題がある。それに加えて、設けられた基板凹部内に空隙を有すると、光取り出し効率を低下させる原因となる。また、光取り出しが向上するような基板表面の構造であっても、発光の指向性に悪影響を及ぼす問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、結晶性に優れ、光取り出し効率に優れた発光素子用基板、発光素子、並びにそれらの製造方法を提供する。
本発明の一形態に係る半導体発光素子は、基板の第1主面上に、半導体の発光構造を有する半導体発光素子において、基板の第1主面に、基板凸部を有し、基板断面において凸部の底面が上面より幅広であり、若しくは基板面内において凸部の底面内に上面が内包されており、底面の形状が略多角形状であり、上面が略円形状若しくは底面の構成辺より多い構成辺の略多角形状である半導体発光素子である。
上記形態に係る他の態様として、(1)凸部の側面が、底面の略多角形状の構成辺に対して、それぞれ、構成辺の数より多い数の面で構成される複合面である、がある。
本発明の一形態に係る半導体発光素子は、基板の第1主面上に、半導体の発光構造を有する半導体発光素子において、基板の第1主面に基板凸部を有し、凸部の底面が上面より断面幅広であり、若しくは基板面内において凸部の底面内に上面が内包されており、底面の形状が略多角形状であり、上面が底面の構成辺と同じ若しくはそれより少ない構成辺の略多角形状であり、凸部側面が、底面の構成辺の数より多い数の面で構成される複合面である。
上記各形態に係る他の態様として、(1)基板凸部が、第1主面上において、相互に分離された複数の凸部である、(2)基板の第1主面内において、凸部が、周期的に配置されている、(3)凸部の周期的配置が、三角形状、四角形状、六角形状である、(4)底面の形状が略三角形状である、がある。
本発明の一形態に係る半導体発光素子用成長基板の製造方法において、基板の第1主面にマスクを設ける工程と、マスクを介して基板をエッチングすることにより、上面形状が底面形状と異なる形状の凸部を基板面上で互いに分離させて複数設ける基板の凹凸構造形成工程と、基板の凸部及び凹部の表面に半導体を成長させ半導体基板を形成する工程とを具備する。
上記形態に係るその他の態様として、(1)マスク工程が、凸部の底面形状を画定する第1のマスクと、第1のマスクの上に、凸部の上面形状を画定する第2のマスクと、を少なくとも設ける工程である、(2)凹凸構造形成工程において、エッチングがウェットエッチングであり、凸部底面形状が、ウェットエッチングで画定される基板結晶形を内包する形状である、(3)凸部の底面が、上面より基板断面において幅広であり、若しくは基板面内において上面を内包しており、底面の形状が略多角形状であり、上面が略円形状若しくは底面の構成辺より多い構成辺の略多角形状である、(4)マスク形状が略円形であり、底面形状が定幅図形状若しくはルーローの多角形状である、(5)基板の第1主面内において、凸部が、周期的に配置され、周期的配置が、三角形状、四角形状、六角形状である、がある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の半導体発光素子は、その基板の光学的な構造により、好適な光取り出しを実現できる。また、その素子用基板としては、光学的特性に優れた複雑な形状の製造においても、工数を増やすことなく、量産性に富むものである。また、素子の製造においては、上面・底面若しくは側面を特定の形状で組み合わせることで、凹凸表面であっても、好適な半導体結晶成長を実現できる。従って、これらの発明は、その他の半導体素子にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】本発明の一実施形態に係る基板を説明する概略平面図。
【図1B】図1AのBB断面を説明する概略断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板の凹凸(凸部)を説明する概略斜視図(a)と概略平面図(b)。
【図3】本発明の一実施形態に係る基板を説明する概略斜視図。
【図4】本発明の一実施形態に係る基板の凹凸(凸部)を説明する概略斜視図(a)と概略平面図(b)。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板を説明する概略斜視図(a)と基板の凹凸の各一形態を説明する概略平面図(b),(c)。
【図6】本発明の一実施形態に係る発光素子を説明する概略平面図(a)とその基板の概略平面図(b)。
【図7A】本発明の一実施形態に係る基板の製造方法を説明する概略断面図((a),(b))。
【図7B】本発明の一実施形態に係る基板の製造方法説明する概略断面図((a)〜(c))。
【図7C】本発明の一実施形態に係る半導体の成長方法、半導体基板の製造方法を説明する概略断面図((a),(b))。
【図8】本発明の一実施形態に係る素子、基板上の半導体の成長方法を説明する概略平面図。
【図9】本発明の一実施形態に係る基板・素子の機能を説明する概略断面図。
【図10】本発明の一実施形態に係る発光素子を用いた発光装置を説明する概略断面図。
【図11】本発明の実施例3(実線)、比較例1(点線)に係る発光素子(図11(c))のAA線方向(a)、BB線方向(b)の発光特性図。
【図12】本発明の実施例3(実線)、比較例1(点線)の発光素子(図11(c))に係るAA線方向(a)、BB線方向(b)の発光特性図。
【図13】本発明の一実施形態に係る基板の凹凸(凸部)を説明する概略平面図。
【図14】本発明の実施例4(実線)、比較例2(点線)に係る発光素子(図6(a))のAA線方向(a)、BB線方向(b)の発光特性図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光素子・装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに特定しない。特に、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0010】
〔実施の形態1〕半導体発光素子及びその基板
本発明の半導体発光素子は、図9などに示すように、基本的に、基板10の上に半導体積層構造20による発光素子構造を設ける構造であり、主に半導体成長用基板10の成長側表面(第1の主面)に、発光素子の光に対して、光の反射・回折など、光学的な機能の構造が設けられている。具体的には、図9に示すように、基板の第1の主面に凹凸構造11が設けられ、該凹凸が基板と屈折率の異なる半導体と光学的機能を有する界面を形成し、横方向に伝播する光(図中白抜き矢印)を凹凸、特に傾斜した側面で、矢印に示すように反射・回折させる。基板上には、必要に応じて下地層を介し、発光素子構造の半導体が設けられ、発光素子とする構造を有する。
【0011】
具体例として、実施例1で得られる例として、図1〜3に示すように、平面形状において、凸部底面14が略三角形状、凸部上面13が略円形状、と相互に異なる形状、具体的には互いに非相似形であること、特に、この例のように、底面の多角形状に対して、その辺の数より多い構成辺の多角形状、好ましくは略円形状の上面であること、構成辺の数より多い数の面の側面を有する形状であることが好ましい。これは、基板上に発光構造を備えた素子では、基板面内において、様々な方向に伝播する光があるが、これに対して、基板の深い位置(凹部底面14)とそこから突き出す凸部の側面17、その傾斜面により、好適な光の乱反射、回折ができる傾向にある。また、上面側では各方向の光に対して、底面・側面側よりも、方位依存性の低い、回転対称回数の多い、ことにより、光の指向性、方向の偏りを抑える傾向にある。ここで、図1は、基板10表面に設けられる凸部11の形状、配置を説明する平面概略図1Aと、その一部の断面を説明する断面概略図1Bであり、図2は凸部11の細かな形状を説明する概略の斜視図(a)と平面図(b)であり、図3は基板表面に設けられる凸部11を説明する概略の斜視図である。
【0012】
この例について、細かな形状を観察すると、図2に示すように、底面14の形状は、その頂点を結ぶ図中点線の三角形14aに比して、外側に突出したものとなり、その底面14の三角形14aの1つの構成辺に対して各々2つの側面17-1,17-2、底面構成辺16-1,16-2とが設けられた構造となっている。このように、凸部底面の頂点を結ぶ構成辺14aより、多い数の側面、傾斜面で各辺が構成されること、すなわち各辺14aが複数の側面、傾斜面の複合面で構成されることで、上述した光学的機能を高めることができ、好ましい。この実施例ではこの構成辺16-1,16-2がサファイアのR面に近いものが得られる。この例では、底面における頂点の角度が、該複合面における辺16-1,16-2の頂点の角度よりも小さく形成される。
【0013】
基板に設けられる凸部11の形状に係るその他の例としては、図4に示すような形状とできる。図4の例では、凸部上面13が三角形状であり、凸部底面14が各頂点を結ぶ2つの三角形14a,bの各頂点を結ぶ六角形状となっている。ここで図4は、実施例2における凸部の概略の斜視図(a)と、平面図(b)とを示すものである。図4(a)に示すように、凸部底面の三角形14a,14bが略同一の大きさでも良く、図4(b)に示すように、一方の三角形14aが大きくても良く、実施例2では図4(b)の形状となる。この例では、大きい底面三角形14aは、凸部上面13の三角形と重心から頂点への頂点方向が、略同一方向であり、他方の三角形14bは頂点方向が逆方向となり、凸部上面13の三角形に比して180°回転した方向となっている。この例では、凸部底面14の六角形の構成辺の数より、側面17の数が多くなる形態であり、このような複合面であると、光の指向性が良くなる傾向にある。
【0014】
後述の実施例4で説明するように、基板の結晶形状、実施例では三角形、に対して、それよりも構成辺の多い多角形、又は略円形のマスク形状に、近い形状の上面13と、遠い形状の底面14が形成され、他方、基板の結晶形状に対しては、遠い形状の上面13と、近い形状の底面14となる。すなわち、マスク形状と基板の結晶形状の2つの基準に対して、マスクから遠い底面側は基板の結晶形状の依存性が高くなり、マスクに近い上面側は、マスク形状への依存性が高くなる。すなわち、マスクの上面側から、底面側に基板の結晶形状依存性が高くなる分布を備えるものであり、これを利用して、本発明がなされるものであり、各特性、具体的には発光特性、結晶性が、向上する形状を具備するものである。例えば図1、13の例では、底面形状は、ウェットエッチングを進行させると、基板結晶形状14aと同様の三角形状となるため、そこに到達するよりも前にエッチングを途中で停止することで、その結晶形14aを内包して、それよりも断面幅広、面積の大きな底面形状を成している。他方、円形のマスク形状に比して、基板結晶形状14aの各構成辺に沿って扁平させた湾曲部が形成され、これは上記ウェットエッチングにより画定される基板結晶形状14aの各構成辺が外側に突出した突出部となっている。図13の例における上面においても、同様であり、その突出部における突出長さ、湾曲部の曲率が、底面側よりも大きくなっているものである。
【0015】
例えば、後述の実施例1,2では、マスクと略同一形状、具体的にはマスク端部から内部に浸食されるため、その相似形となり、そこから深さ方向に、基板結晶の略三角形状14aに変化していき、底面側で結晶形状に極めて近い形状(実施例1,図1)、それよりも遠い形状(実施例2,図4)となっている。また、上面13側がそのマスク形状から基板形状への変化の途中とすること、すなわちマスク形状と基板形状(図中の三角形13a)の中間に位置する形状とすること(実施例4,図13)もできる。また、図4のように側面が多面化して、上面側の形状と底面側の形状の中間の立体形状で、それを緩衝させるような構造とすることもでき、上面と底面の形状と同様に適用できる。
また、後述の各実施例に示すように、結晶形状の三角形14aに対して、それよりもマスクの形状(円形、三角形)に近い形状となっているが、これに限らず、さらにエッチングを進めて、三角形14aと略同一形状とすることもできる。但し、このような基板結晶形状よりも、結晶及び発光の面内方位依存性を低くでき、結晶性、発光特性を向上できるため、中間形状である方が好ましく、以下に説明する定幅図形、ルーロー多角形がより好ましい。
【0016】
また、実施例1,4のように、略円形のように、マスク形状が定幅図形と略同一の形状であると、底面側がマスク形状と基板結晶の形状との間の形状であると、それと同様に定幅図形に略同一、若しくはそれに近似する形状となる。実施例1,4では、基板結晶の形状が略三角形14aであるため、ルーローの三角形、若しくはそれに近似する形状となっている。このように、基板結晶の形状が正多角形であり、マスク形状が定幅図形に略同一形状である場合、具体的にはマスクが略円形で基板結晶の形状が正多角形である場合に、底面側の形状が、定幅図形若しくはルーローの多角形、又はそれに近似する形状とできる。また、後述の実施例4のように、上面側が、底面側同様に、マスク形状と基板結晶の形状の中間に位置する形状であると、上面と底面が共に定幅図形若しくはルーローの多角形(辺の数が奇数、奇数角形)となる場合がある。また、上記各図形に類似する形状としては、図13の凸部上面13の形状のように、ルーローの多角形の角が丸みを帯びた形状、湾曲した辺、角が、部分的に素片化して、折れ線形状となった形状などがある。
【0017】
以上のように、上面、底面側の形状が、上述したマスクと基板の中間形状、凸部の上面、底面の構成辺の違いは、その基準形状からのズレ、例えば外周長の比、[上面又は底面の外周長]/[上面又は底面の基準形状の外周長]、または面積の比、[上面又は底面の面積]/[上面又は底面の基準形状の面積]、でわかる。これが1より大きいと、各中間形状を多角形化した場合に、上面側の構成辺が底面側より多いものとできる。この時、上面の基準形状13aは、図13に示すように、底面の基準形状14aである基板結晶形状と略相似形であることが好ましい。
ここで、基板結晶の形状は、基板材料とその面方位とエッチャントにより、種々の形状を選択できる。また、ドライエッチングの場合には、図7Bに示す上層、下層側のマスク形状を調整することで、基板結晶形状と同様に、基板側形状が実現でき、それに代えて利用できる。
【0018】
また、基板上の凸部11は、図1〜3などに示すように、互いに分離されて複数設けられることが好ましい。このとき、各凸部は、不規則に配置されていても良いが、好適な発光素子とするために高密度であることが好ましく、また好適な指向性とするために規則的な配置とされることが好ましい。凸部11の周期構造としては、図1〜3に示すような六角形状の配置(平行四辺形11A、2つの三角形11Bの各頂点に配置)の他、三角形状、四角形状など、また円形状などの構造であっても良く、この時、各形状の格子点に凸部が配置される周期構造となる。また、周期、規則構造は、基板面内全体に形成されることが好ましいが、これに限らず一部領域に規則構造を設け、他の領域に凹凸を設けない、又はそれとは異なる不規則構造と規則構造を設ける様に、複数の領域(各領域の規則構造)を有する形態、例えば周期、規則構造の領域と基板平坦構造の領域とを配置した長周期規則構造のようなものでも良い。周期構造としては、上記配置された凸部の基本単位11Aを、その単位の軸方向11a,11bに並べたものとなり、図の例では、四角形状(六方格子)が基本単位11Aの周期構造となる。また、凸部の平面形状が、非対称構造の場合には、その形状の向きも制御することにより、例えば図6に示すように、発光素子構造、電極構造及びその配置と、凸部底面の略三角形の向きと、を所望の関係とすることなどにより、光の指向性を制御することができる。この向きも、上記凸部配置と同様に、同一方向に揃えても、不規則、規則的な向きとすることもでき、これを調整して、所望の結晶性、光特性を制御することができる。好適には図6に示すように、同一方向とすることで、好適な結晶性、光特性が得られる。
【0019】
発光素子と、基板の凹凸との関係については、発光素子の光出力、光取り出し効率は、主に、凸部の高さ(凹部形成時の深さ)と、凸部間隔(凸部密度)に主に依存し、各寸法の好適な範囲としては、凸部の高さ(凹部の深さ)として0.2μm以上2μm以下の範囲、好ましくは0.5μm以上1.5μm以下の範囲、凸部の間隔、凹部の幅としては、0.5μm以上5μm以下の範囲、好ましくは3μm以下と、高密度に配置することである。また、凸部の幅も同様に0.2μm以上5μm以下の範囲、好ましくは3μm以下と高密度に配置する。これに限らず、上記各寸法を、発光素子の発光波長λに対して、λ/4、又はλ/(4n)以上とし、出来るだけ高密度の凸部を形成する。ここで、nは光が伝播する媒質、基板10または基板との凹凸界面を構成する半導体20の屈折率である。
側面の形状は、図1Bなどに示すように、底面14と側面17となす角が鋭角である傾斜の他、鈍角となっても良いが、傾斜側面17露出面が半導体側に向く前者の鋭角である方が、図10にみるような好適な光伝播、すなわち横方向から縦方向への変化が得られ好ましい。特に、図1Bに見るように、凸部上面13に比して底面14が幅広な形状、更には底面の面積が上面より大きい、更に平面視で底面内に上面が配置される形態、である方が、半導体と基板凸部の側面17との界面における光学機能を高めることができ、好ましい。
【0020】
凸部11形状、特に、側面17又は凸部上面13若しくは底面14の形状と、半導体発光素子との関係は、上述したとおり、図9に見るように側面が基板上面13、底面14又は半導体20の積層面の法線方向から傾斜した側面であることが好ましい。基板面内においては、図1〜3に見るように、1つの凹部12を挟んで対向する凸部11の底面14構成辺16が、相互に平行とならずに、交叉するように異なる方向、好ましくは垂直な方向からも傾斜した方向であること、が、相互平行な場合に比して、面内の方位依存性を低くして、出射光の指向性を良好とできる傾向にあり好ましい。更に好ましくは同図に示すように、1つの凹部12を囲んで、外縁一部を構成する凸部11、図1〜3の例では3つの凸部11、における底面構成辺16が相互に垂直、平行な方向から傾斜した方向であることが、垂直・平行な方向で構成される場合に比して、更に良好な光の指向性が得られる傾向にあり、好ましい。
【0021】
ここで、凸部底面の構成辺16を用いて説明したが、凸部上面の平面形状、凸部側面の平面形状についても同様な傾向であり、図1〜3の例における凸部上面の略円形状では、対向する凸部が相互に平行・垂直な方向から傾斜し、凹部12を囲む凸部が互いに平行・垂直な方向から傾斜した上面端部15を有している。このように、凸部上面・底面の各構成辺は、構成辺を有さない場合には、上面・底面の端部15,16、若しくはその一部に適用でき、好ましくは、上記の通り、少なくとも断面幅広側の底面が構成辺を有していることである。これは、各部位との光特性との関係では、底面14の形状が側面17、上面13の形状よりも光特性の影響が大きく、上面13の形状は底面14・側面17に比してその影響が小さい傾向にあり、特に、底面側が上面側に比して断面幅広な、更には面積の大きな場合に顕著となり、すなわち、底面の構成辺、端部16の外周長が、上面のそれより大きくなる場合に顕著となる。

【0022】
〔実施の形態2〕基板及びそれを用いた素子の製造方法
以上のような基板、素子の形成方法は、この実施の形態2で説明し、発光素子用基板及び素子については、それ以降で説明する。
上述した図1〜4に示すような基板凸部の形成方法は、図7に示すように、基板上にマスク19を形成して、基板をエッチングすることで、上述した所望形状の凸部、その上面、底面、側面を形成する。エッチングには、具体例として、後述するウェットエッチングと、ドライエッチングがあり、ドライエッチングとして具体的には気相エッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングを用いることもでき、また、エッチングガスとしては、Cl系、F系ガス、例えばCl、SiCl、BCl、HBr、SF、CHF、C、CF、などの他、不活性ガスのArなどがある。
ドライエッチングを用いる場合、図7Bに示すように、マスクの形状を三次元で形成する方法、若しくは異なる形状のマスク(フォトリソグラフィー)により2回以上エッチング方法により、上述した凸部形状とするため、実施の形態2に比して、生産性、凸部形状の精度・バラツキに難がある。具体的には、下層側のマスク19aと、その上に、上層側のマスク19bの少なくとも2つを所望形状に、具体的には相違する形状として、上層側のマスク19bで、凸部の上面形状、及び/又は、下層側のマスク19aの形状を所望形状となるように形成し(図7B(a))、基板をその2層のマスク19a, 19bを介してエッチングすることで基板と共に各マスクもエッチングされ(図7B(b))、更にエッチングすることで、上層側マスク19aが除去されるなどして、上述の所望形状の上面、底面、側面を有する凸部が形成される(図7B(c))。このように、上層側の第2のマスク19bは主に、下層側の第1のマスク19a及び/又は上部の上面、側面の形状を画定し、下層側の第1のマスク19aは主に、凸部底面、それに加えて側面の形状を画定する形態となる。
各マスク材料の画定方法としては、露光する波長の異なる2種のレジスト材、レジスト膜とケイ素、アルミニウムなどの酸化物、窒化物などの無機化合物の2種を用いることができ、露光感度の異なる2種材料の場合は、2層を塗布、成膜して、それぞれに応じた露光で所望形状とすることができ、下層側を所望形状に形成後に上層側を所望形状に形成すること、その逆に上層側、下層側の順に成膜して、上層側、下層側の順に所望形状に加工して、又は、上層側の第2のマスク19bで仮想側の第1のマスク19aを所望の立体形状として形成することができる。
【0023】
ここで、図7では、本発明の基板の製造方法(図7A(a)〜(b)、上述の図7B(a)〜(c))、また基板の上に半導体を成長させ素子を製造する方法(図7C(a)〜(c)))の一実施例について、その概略断面図を示しており、図8では凹凸を有する基板及びその表面に半導体を成長する様子を説明する概略平面図であり、以下この図を用いて説明する。
【0024】
図7Aを用いて、上述したエッチングによる基板凸部11形成工程の基本的な形態を、以下に説明する。基板10上には図7A(a)に示されるようにエッチングマスクとなる保護膜19を成膜して、所望形状に画設する。基板10は半導体を成長可能な基板、例えば実施例ではサファイア基板、を用いる。この時、保護膜19のパターン形状としては、図1、3に示すような平面配置で、凸部上面13の形状に略同一形状、この例では円形状、に対応するマスク19を形成する。
【0025】
次に、図7(A,B)の(b)にそれぞれ示されるように、保護膜18と露出した基板10の表面をエッチングする。このエッチングには上述のドライエッチングや、ウェットエッチングがあり、ウェットエッチングが好ましく用いられる。これは、ウェットエッチングの方が、凸部の表面がより平滑な面とでき、結晶性に好適に働き、また量産性にも富み、さらに上述した基板の結晶形状とマスク形状の中間形状とした凸部底面、さらにはその上面形状を、容易に得ることができるためである。ウェットエッチングのエッチング溶液としては、例えば実施例のサファイア基板の場合、リン酸、若しくはピロリン酸、又はそれに硫酸を加えた混酸、又は水酸化カリウムを用いることができる。エッチング液については、各基板材料に応じて、種々のエッチャントを用いることができ、実施例で示すように通常高温のエッチング液、例えば熱リン酸、が用いられる。この時、マスク材料としては、例えば実施例に示すSiOなどのケイ素酸化物の他、基板材料、そのエッチング液に応じて適宜選択され、例えば、V,Zr,Nb,Hf,Ti,Ta,Alからなる群から選択される少なくとも一つの元素の酸化物、Si,B,Alからなる群から選択される少なくとも一つの元素の窒化物を挙げることができる。
【0026】
続いて、ウェットエッチングによる凸部の形成の具体例を以下に説明する。
図7Aの(a)〜(b)に示すように、所望形状、周期・規則構造のマスク19を形成して、ウェットエッチングする。これにより、図7Aの(b)に示すように、エッチングが進行して、マスク下部に本発明の凸部形状が形成され、マスクより小さい幅、面積の凸部上面を有するものが得られる。この時、ウェットエッチングは、基板結晶の面方位に依存した面、形状のものが得られるが、マスクの平面形状、エッチング量に応じて、凸部の形状、特に凸部底面形状、側面を上述した本発明の形状、側面とすることができる。一方、凸部上面の形状は、上述したように、主にマスク形状に依存して同様な形状、具体的には、ほぼ相似な形状とすることができる。
【0027】
具体例を挙げれば、図1〜3に示すように、凸部上面を円形、底面形状を略三角形(各辺が2つの構成辺16-1,16-2、側面17-1,17-2)とする例では、マスクを円形状とし、C面サファイア基板のエッチング面がその結晶形状である三角形に類似して、底面形状の略三角形(計六つの構成辺)を形成し、他方上面形状はマスクと同様に円形状とできる。図4の例では、そのエッチング面の略三角形14bに対して、180°回転させた略正三角形のマスクを用いてエッチングすることで、図4に示すような、マスク形状による上面形状、基板のエッチング特性による底面形状との複合的な形状、例えば基板の結晶形状とマスク形状との複合形状、とでる。すなわち、底面構成辺14、側面17が、上面形状による側面17-2と、エッチング特性による側面17-1,3(構成辺)のものが得られる。このように、本発明の基板凸部形状は、エッチング特性を利用して、凸部上面側と底面側を異なる形状、構成辺の数とすることができる。
また、図7Aの例で、ウェットエッチング量を更に増やせば、上面の断面幅、面積をさらに小さくでき、最終的には上面がほぼ無い、錐体形状、半球・半円形状、上面側が尖形形状、曲線形状などとすることもできる。後述するように、半導体の成長において、上面からの成長がある方が、無い場合に比して、好適な結晶成長、すなわち凹凸による空隙の発生、結晶性悪化、転位が低減する効果の低下、を抑止することができる。
【0028】
以上に説明した凸部形成後の基板を用いて、その基板表面に半導体成長、半導体基板の形成する方法について、以下に説明する。基板凸部の形状としては、上述した実施の形態1と同様であるが、その面方位が重要なものとなる。これは、基板上への結晶成長は、その半導体結晶のエピタキシャル成長に依存するため、そのような結晶成長に適した形状、周期・規則構造、方位とすることが重要となる。
具体例として、基板10がC面サファイア基板であり、半導体21がc軸成長GaNである場合、サファイア基板の面方位に対し、一般にGaN結晶は30°c軸回転した面方位で成長する。従って、凸部11の形状、特に底面形状は、次のような多角形にすることが好ましい。即ち、凸部11の平面形状を、GaNのA面(11 -2 0)、(1 -2 10)、( -2 110)面にほぼ平行の辺を持ち、GaNの成長安定面(1 -1 00)、(01 -1 0)、( -1 010)に頂点が在る多角形とする。この多角形は、GaNの成長安定面(1 -1 00)、(01 -1 0)、( -1 010)、すなわちM面に平行な辺の無い、交叉する方向の辺で構成された多角形が基準になる。このような形状に凸部11を形成することにより、平坦で結晶性に優れたGaNを成長させることができる。図1〜3では、基板のA軸方向(A面に垂直な基板面内の方向)を、矢印Aで示している。具体的には、凸部11の平面形状が略正三角形である場合、基板上方から見てGaNの成長安定面であるM面と交叉するように正三角形の凸部11の構成辺を形成することが好ましい。
【0029】
これは、凸部11の上面13から成長したGaNと、凸部11が形成されていない平坦面(凹部12)から成長したGaNとが接合する部分、図7C(a)〜(b)において、GaNの成長速度が高くなるためと推定される。即ち、凸部11の上面からは、図8(b)、図3に示すように、A軸を構成辺とする六角形の形状にGaN結晶(21a)が成長しているが、凸部11の上面13から成長したGaN結晶21aと平坦面12から成長したGaN結晶21bとが接する凸部側面付近において、GaNの成長速度が高くなる。従って、凸部11の側面付近におけるGaNの成長が他の領域に追いつき、平坦なGaNが得られる。
【0030】
本発明の半導体成長用の基板に用いられる凸部は、上述したように、図1〜3などに示すような形状とする。半導体の成長形態は、具体例として、図7C,8に示すように、成長初期において、凸部上面13で成長する結晶部21aと、凹部12表面で成長する結晶部21bとが、相互に分離して成長し(図7C(a), 図8(b))、各結晶部21a,bが更に成長することで、少なくとも結晶部の側面一部が相互に接合した結晶21A,Bとなり(図7C(b))、各結晶部21A,Bの凹凸が平坦化されて層状の半導体層21が得られる。このように、凹部が結晶により充填され、空隙が発生しないように成長することが、結晶成長で好ましく、また上記実施の形態の光学的機能を高めるため、好ましい。この例では、凸部側面17の成長がほとんど無いが、基板材料、凸部形状、半導体材料、各結晶の面方位などの諸条件により、側面からの成長を発生させる形態とすることもできる。
【0031】
このように、凹部が結晶成長により好適に充填されるため、凸部側面17の傾斜角θが、凸部の間隔、密度、高さ等に応じた角度、例えば45°付近であることが好ましく、具体的には、20°〜70°、さらに好ましくは30°〜60°である。凸部、凸部の間隔は、上記実施の形態と同程度とすることができる。これは、凸部間隔、凸部寸法が小さくなるほど、凸部高さが高くなるほど、良好な結晶成長が困難となるが、上記寸法であれば、好適な成長が可能となる。
【0032】
本発明の基板による半導体層の成長により、半導体層の結晶性を良好にすること、具体的には異種基板への半導体結晶成長において、基板との格子定数差、熱膨張係数差など各特性、結晶構造・面方位の相違による結晶性悪化が生じるが、それを低く抑えること、更には貫通転位を低減するなど、改善させることができる。上述したように半導体結晶部21a,bが各々三次元成長して、具体的にはそれがファセット成長することで、横方向への成長、各結晶部における側面・横方向での接合により、基板界面に発生した転位などをその横方向成長、結晶接合により、欠陥の伝搬を抑えて成長させることができるためである。
【0033】
ここで、凸部底面14形状の構成辺、各辺を構成する辺16-1,16-2、側面17-1〜17-3については、図1〜4に示すように、凸部底面14の角よりも、各辺を構成する部分辺14-1,2が成す角度が大きい、若しくは鈍角であること、好ましくはその両方を備えた部分辺で構成された凸部底面14形状14aの辺である。これは、鈍角、角度の大きな部分辺14-1,2で構成されると、底面14形状の角よりも結晶成長の影響、すなわち上述した半導体結晶との面方位の依存性、が低くでき、他方、複数の部分辺で構成された辺であることで、良好な結晶成長、凹部の充填がなされる傾向にあるためである。底面14形状14aの各辺が複数の側面17-1〜17-3で構成される場合には、上記部分辺を少なくとも一部に備える形態(図4)、好ましくは部分辺に対応した側面のみを有する形態(図1〜3)とすることである。これも上記部分辺と同様に、成長させる半導体結晶との面方位依存性を低減して、好適な成長が実現できる傾向にあるためである。上述したように、上面形状よりも、底面形状に半導体結晶成長が依存し易く、特に底面幅広な場合に、その傾向が顕著となる。そのため、底面形状を上述した形態とすることが好ましい。他方、上面形状が図4に示すように、三角形など、底面形状、その構成辺、部分辺と同等、小さい場合には、結晶成長における上面形状への依存性が高くなり、結晶性が悪化する傾向にあるが、上記複合的な側面17-1〜3で構成されることで、これを低く抑えられる。より具体的には、図1〜4に示すように、底面形状14aよりもその各辺を構成する部分辺14-1,2、側面17-1〜3により、外側に突出した形状とすることで、構成辺の数が大きい多角形、それが丸みを帯びた形状、さらに略円形状に近くなるため、良好な結晶成長、特に凹部12からの結晶21b成長が良好となり好ましい。
【0034】
図5は、基板10の第1の主面10Aと傾き、オフアングルと、それにより形成される凸部の形状、周期構造の違いを説明するものであり、図5(a)は基板の傾斜を説明する概略の斜視図、図5(b),(c)は基板主面10Aの傾きによる凸部の各形態を説明する平面図である。具体的には、図5(b),(c)は実施例1のように、C面サファイア基板にウェットエッチングを用いて、オフアングルに依存して得られる2つの形態を示す図である。
基板主面10Aの傾きは、図示するように、オリフラ面18の法線方向を回転軸(図中A)とするような傾きと、第1の主面内でその法線方向に垂直な方向を回転軸(図中B)とするような傾きと、の主に2方向で規定することができる。例えば、後述の実施例1では、C面を主面とし、オリフラ面18をA面としてオフアングルした第1の主面10Aの例では、A軸回転方向(図中B)での傾きにおいて、実施例1で示す凸部形状は、その底面三角形14aの向きについて2つの形態(図5(a), (b))が得られる。他方、この例では、もう一方の軸における傾きの角度範囲を低くしているため、このような形態の違いは見られない。
【0035】
このように、主面のオフアングルにより、凸部11(その上面13、底面14)の形状が異なる形態を有する基板にあっては、上述した本発明の基板の凸部形状であることが好ましい。これは、基板ごとにオフアングルのバラツキがある場合、若しくは基板面内でオフアングルにバラツキがある場合に、凸部形状の違いによる半導体層成長形態、その制御困難性、引いては量産性に問題がでるが、本発明ではそれを解決できる。基板面内のオフアングルのバラツキとは、結果として、基板面内で、凸部形状・向き、その周期構造が互いに異なる領域、上記例では2つの形態の領域、を有するものとなる。この例では、(b)の形態となるオフアングル角は、0より大きい角度、具体的には0.05°以上0.25°の範囲であり、(c)の形態は、0より小さい角度、具体的には-0.05以上°以上-0.25°以下の範囲である。
また、上記の例は各角度を比較的低角度の範囲、具体的には+0.5°〜−0.5°、であり、さらにはそれより高角度の領域であれば、各傾き角、及びその合成角、合成された傾きによる依存性が観られると考えられる。
【0036】
以上、説明した各実施の形態におけるその他の構成、部材について、以下に説明する。
【0037】
[基板]
本発明に用いられる基板としては、窒化物半導体の例では、発光素子用であれば透光性の基板が用いられ、具体的には、サファイア基板、スピネル基板の絶縁性基板、SiC基板、GaN基板などの導電性基板などがある。好適には、半導体材料と屈折率差の大きな透光性基板を用いる。より具体的には、例えば、上記基板には、C面(0001)を主面とするサファイア基板を用いることができる。GaN系の半導体層の成長安定面は、六方晶のM面{1 -1 00}(ここで、面指数中の「-1」は、「1」にアッパーバー(上線)を設けたものを指し、本願では同様に表記する)である。ここで{1 -1 00}は( -1 100)、(01 -1 0)、( -1 010)などを表している。C軸配向したGaN系半導体結晶では、M面は、基板面内において上記A軸方向に平行な平面の一つとなる。尚、成長条件によっては、例えば{1 -1 01}面のファセットのように、基板面内においてGaN系半導体のA軸を含む他の平面(=M面以外の平面)が成長安定面になる場合もある。C面サファイア基板の場合、GaN系の半導体層の成長安定面であるM面は、サファイア基板のA面{11 -2 0}に平行な面である。ここでA面{11 -2 0}は(11 -2 0)、(1 -2 10)、( -2 110)などを表している。
発光素子以外の半導体素子に用いる基板としては、透光性に限らず、半導体が好適な成長ができる基板、例えば窒化物半導体における異種基板、を用いること、例えばSi基板、などを用いて、本発明の凹凸構造により結晶性に優れた半導体素子とすることができる。
【0038】
[発光素子]
発光素子構造は、図6,9などに示すように、基板上に半導体構造20、特に各層が積層された積層構造20が設けられてなるが、基板を除去するなど、基板の無い、加えて下地層21など素子能動領域27外に半導体層の無い構造、基板中に導電型領域を設けるなどして基板を含む素子領域・構造とすることもできる。発光構造25は、図6の例では、第1,2導電型層22, 24とその間の活性層23が設けられた構造として示すように、半導体構造20による発光領域が設けられた構造となり、更に同一面側に第1,2電極30, 40を設ける電極構造である。この電極構造では、基板面内の素子領域内に第1電極30若しくは第1導電型層露出領域22sと、発光構造25の領域とが少なくとも配置された構造となる。発光構造25としては、このような活性層若しくは発光層を第1,2導電型層の間に設ける構造が好ましいが、その他にp−n接合部を発光部とする構造、p−i−n構造、mis構造、などの発光構造とすることもできる。また、素子構造中、若しくは各導電型層中に、一部半絶縁・絶縁性、i型層、逆導電型の層・領域が設けられていても良く、例えば電流注入域を制御する半絶縁・絶縁性,i型層などで形成される電流阻止層・領域、電極との接合用の逆導電型で形成される逆トンネル層などが設けられた構造でも良い。
【0039】
[電極]
第1電極30の第1層31、第2電極の接触層41は、基板上に第1,2電極が設けられ電極形成側を主発光側とする発光素子構造においては、透光性の膜が形成される。透光性の導電膜、窒化物半導体のp側電極としては、Ni,Pt,Pd,Rh,Ru,Os,Ir,Co,Agよりなる群から選択された少なくとも一種を含む金属、合金、積層構造、さらには、それらの化合物、例えば、導電性の酸化物、窒化物などがある。第1,2電極に用いられる導電性の金属酸化物(酸化物半導体)として、錫をドーピングした厚さ5nm〜10μmの酸化インジウム(Indium Tin Oxide; ITO)、ZnO(酸化亜鉛)、In(酸化インジウム)、またはSnO(酸化スズ)、これらの複合物、例えばIZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられ、透光性に有利なことから好適に用いられ、 光の波長などにより適宜材料が選択される。また、上記導電性材料のドーピング材料として、半導体の構成元素、半導体のドーパントなどを用いることもできる。
【0040】
〔発光構造・電極構造〕
発光構造は、発光素子領域中に、図6に示すように1つである形態でも、一部が第1導電型層露出領域22s、第1電極形成領域などで分離された発光構造部Bで構成されるものでも良く、素子の面積、特性に応じて適宜選択される。発光構造25と第1電極10は図4で示すように1対1である必要はなく、第1電極30に挟まれた発光構造のように、2対1など他の関係でもよく、少なくとも発光構造部とそれに並設された第1電極30との組を有する構造であれば良い。上述のように、基板の電極形成側の主面を光取り出し側とする場合は、透光性電極を用い、図10に示すように、その対向する半導体の主面、基板裏面側を光取り出し側とする場合には、反射性の電極を用いる。この他に半導体の対向する主面側にそれぞれ電極を設ける構造でも良い。
発光素子、基板上に成長させる半導体としては、窒化ガリウム系化合物半導体材料としては、一般式InAlGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)のものを、特に後述のようにその二元・三元混晶を好適に用いることができる。また、窒化物半導体以外に、GaAs、GaP系化合物半導体、AlGaAs、InAlGaP、系化合物半導体などの他の半導体材料にも適用することができる。
【0041】
〔突起部・光学的構造部〕
半導体積層構造に、例えば第1導電型半導体層の露出面、上記電極30と発光構造25との間に、突起部などの光学的な機能、例えば反射,散乱,回折,出射口の機能、を有する構造部を設けても良い。これは、上述した基板の凹凸構造(図10)と同様に半導体構造部に、凹凸構造を設けて、同様な効果を奏することができる。このような光学的な構造部としては、第1導電型半導体層露出表面22s上に、透光性の絶縁膜、例えば保護膜などによる凹凸構造など、光吸収・損失の低い、透光性の材料で形成されることが好ましく、また反射・散乱の機能に限れば金属性の突起部・凹凸部を設けることができる。好ましくは、該電極・発光構造間領域が狭い領域であるため、付加的な構造物を設けるよりも、半導体の積層構造から分離、具体的には発光構造から分離された半導体構造物、例えば図11(c)に示す凹凸構造50、により、設けられると精度良く、また高密度に形成でき、光学的機能を高められ、更に発光素子と同様な透光性の材料であるため、好ましい。
【0042】
発光素子の半導体層20表面側、電極表面側を保護膜材料としては、従来知られたもの、例えば、珪素の酸化物・窒化物、アルミニウムの酸化物など、発光素子の光・波長に応じて、適宜透光性の良い材料を用いると良い。膜厚としては、0.1〜3μm程度、好ましくは、0.2〜0.6μm程度で形成される。
【0043】
このような凹凸構造50として具体的には、半導体構造の発光構造から分離溝が設けられて、分離される突起部、例えば平面略円形状、として設けることができ、一方で発光構造部に孔(凹部)を設けて、その孔とそれを囲む発光構造による複合的な構造物とすることもできる。このような突起部若しくは凹部の平面形状としては、円形状が、高密度な配置、量産性に富み最も好ましいが、楕円形状、四角・矩形状、多角形状、それらの複合的な形状であっても良い。また、その配置は、これら形状に応じて、四角・矩形状,平行四辺形状,三角形状,六角形状(蜂の巣状)、などが適宜選択され、高密度な配置がなされる。これら構造物(突起・凹・溝の各部)の平面の大きさとしては、幅0.5〜5μm、好ましくは1〜3μmであると、好適に製造できる。また、断面形状は、上記基板凸部と同様に、台形・逆台形状、矩形状などの形状とでき、好ましくは基板凸部と同様に、底面側が幅広な、上面側が電極方向に傾斜した、形状である。このように、突起部とは、光学的な機能を有する構造物であり、半導体20の表面・上面・側面、若しくは他の材料との界面などにより、光学的な機能を供することができるものであれば良い。
【0044】
[発光装置]
以上の発光素子100を搭載する発光装置200について説明すると、図10に示すように、発光装置の実装部202(図では発光部223に開口する凹部)として、実装用の基体・領域201の発光素子実装部202に発光素子100が載置される構造となる。実装基体として例えば、発光素子用のステム210、平面実装用セラミック基板、プラスチック基板等が挙げられる。具体的にはAlNからなる実装基体、金属性の実装基体を用いると放熱性の高い発光装置を得ることができ好ましい。半導体発光素子が実装される実装面は金属材料からなることで、発光素子外に取り出された光を反射し、好適な光の指向性の発光装置とすることができる。実装面などの発光素子が載置され、光が到達する装置内部の表面、反射面203では、金属材料が例えばリード電極210などに用いられ、その金属材料は本発光装置の発光波長の光を高反射率で反射することのできる金属材料が好ましい。具体的には、Ag、Al、Rh等が挙げられ、鍍金被膜など形成される。発光装置の例は、図10に示すように、発光素子100を、静電気などの保護素子を兼ねる素子実装基体104に発光素子100の電極側を接着剤接着し、その積層体103の実装基体104側で、実装部202に接着層114を介して発光装置に接着、載置している。その他に、発光素子100の電極側を発光側として、装置の基体・筐体に設けられた素子実装部に接着層を介して、素子の基板の第2の主面に反射層などのメタライズ層、共晶ハンダ、接着層を設けた半導体発光素子100を熱圧着などで実装することもできる。保護素子は、装置基体の凹部202の外側にある載置部222を設けて、そこに実装・電気接続しても良い。
【0045】
発光素子の各電極は、実装基体104、ワイヤ250などで、発光装置200のリード電極210とそれぞれ接続して、発光素子を、透光性の封止部材230で封止した構造を有している。封止部材としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが用いられ、接着部材にはこれらの樹脂材料の他、共晶ハンダなどの半田,共晶材料、Agペーストなどが用いられる。図示する例では、発光素子の電極は反射性電極を用いる。
【0046】
また、封止部材230中など、発光装置200の発光素子から装置の出射口、例えば図10の発光部223、との間の光路上に、発光素子の光を少なくとも一部変換する光変換部材を有して、種々の発光色を得ることもできる。光変換部材としては、青色LEDの白色発光に好適に用いられるYAG系蛍光体、近紫外〜可視光を黄色〜赤色域に変換する窒化物蛍光体などが挙げられる。特に、高輝度且つ長時間の使用時においてはYAGやTAGなどのガーネット構造の蛍光体、例えば(Re1-xSmx3(Al1-yGay512:Ce(0≦x<1、0≦y≦1、但し、Reは、Y,Gd,La,Tbなど、が好適に用いられる。窒化物系蛍光体、オキシナイトライド蛍光体としては、Sr−Ca−Si−N:Eu、Ca−Si−N:Eu、Sr−Si−N:Eu、Sr−Ca−Si−O−N:Eu、Ca−Si−O−N:Eu、Sr−Si−O−N:Euなどがあり、一般式LSi(2/3X+4/3Y):Eu若しくはLSi(2/3X+4/3Y−2/3Z):Eu(Lは、Sr、Ca、SrとCaのいずれか。)で表される。また、これらの蛍光体、他の蛍光体などを適宜用いることにより、所望の発光色の発光装置とすることができる。図の例では、光変換部材を含有する被覆部材105を素子100のまわりに形成している。
【0047】
[実施例]
本発明について、以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されず、上述した本発明の技術思想に基づいて、他の態様にも適用できる。
【0048】
〔実施例1〕
基板としてA面(1 -1 20)にオリフラのあるC面(0001)を主面とするサファイア基板を用いる。まずサファイア基板10上に図7A(a)に示すようにエッチングマスクとなるSiO膜19を成膜、フォトマスクを用いて、直径約2μmの円形状のマスク19を周期的に配置する。
続いて、図7A(b)に示すように、エッチング液としてリン酸と硫酸の混酸を用いたエッチング浴に基板を浸漬し、溶液の温度約290°で約5分エッチングして、深さ(凸部高さ)約1.1μmとする。
【0049】
このようにして得られる基板の凸部の構造は、図1Aのように、基板に、底面14三角形の1辺約3μm、図2にみる該構成辺16を構成する2つの辺16-1,2の一辺約1.5μm、凸部11の間隔、ここでは上面端部15間の距離を約3μmとして、図1〜3に示すように、凸部周期構造において、内角がほぼ60°、120°となる平行四辺形の点線囲み(図1Aでは実線)を基本単位11A、すなわち隣接する凸部11の構成辺14が相互に平行・垂直方向から傾斜して対向するように配置された構造として、それを周期の軸方向11a,bに等間隔に周期的に配列された構造とできる。ここで、凸部底面三角形14aの各構成辺は、図1,3基板のM面にほぼ平行に形成され、また、その構成辺14aは、図2に示すように、それに対応する2つの構成辺16-1, 16-2で構成され、この構成辺16-1,2は基板のR面にほぼ平行に形成される。
【0050】
続いて、基板をMOCVD装置に移し、基板の上記凸部が設けられた第1の主面上に、低温(約510℃)で成長させた20nmのGaNバッファ層と、その上に高温(約1050℃)で約2μmのGaNを、c軸成長させ、下地層21を形成する。ここで、基板上への成長層21は、図7C(a)〜(c)、図8(b)に示すように、成長初期(図7C(a)、図8(b))において、基板面内で分離された凸部上面13と凸部間の凹部12底面とから、それぞれ初期成長の結晶部21a, 21bが形成される。続いて、成長が進むに従って、各結晶部21a, 21bが大きくなり、凹部12の結晶部21aが凸部13高さを超えることで、各結晶部21a, 21bの側面、ファセットが互いに一部結合して、図7C(b)に示すように凸部・凹部からの結晶部が重なって、各結晶部の凸部21A, 21Bが底面で互いに結合して、凹凸を有する層状のものとなる。更に、成長が進むと、図7C(c)に示すように、各結晶部の凹凸が平坦化され、表面が平坦な下地層21が形成される。
【0051】
この例では、凹凸の各寸法は、凸部上面が直径約1.5μm、凸部上面13間距離(対向する上面端部15間の距離)が約3μm、凸部底面14の頂点と凸部上面端部15との距離が約1μm、頂角方向(底面頂点と底面三角形重心とを結ぶ方向)断面幅が約3μmである。また、側面17の凸部上面13・底面14からの傾斜角は図2における底面三角形14aの角部で約80°、底面の辺16-1と辺16-2の角部で約63°である。
【0052】
このようにして得られる下地層21からなる半導体基板上に、例えば図10に示すように、n型コンタクト層などのn型層22と、活性層23と、p型層24を形成して半導体素子構造とする。
具体的には、上記下地層21に、
その上の第1導電型層22(n型層)として、膜厚5μmのSi(4.5×1018/cm)ドープGaNのn側コンタクト層と、コンタクト層と活性層との間の領域に、0.3μmのアンドープGaN層と、0.03μmのSi(4.5×1018/cm)ドープGaN層と、5nmのアンドープGaN層と、4nmのアンドープGaN層と2nmのアンドープIn0.1Ga0.9N層とを繰り返し交互に10層ずつ積層された多層膜、を
n型層の上の活性層23として、膜厚25nmのアンドープGaNの障壁層と、膜厚3nmのIn0.3Ga0.7Nの井戸層とを繰り返し交互に6層ずつ積層し、最後に障壁層を積層した多重量子井戸構造、を、
活性層の上の第2導電型層(p型層)24として、4nmのMg(5×1019/cm)ドープのAl0.15Ga0.85N層と2.5nmのMg(5×1019/cm)ドープIn0.03Ga0.97N層とを繰り返し5層ずつ交互に積層し、最後に上記AlGaN層を積層したp側多層膜層と、膜厚0.12μmのMg(1×1020/cm)ドープGaNのp側コンタクト層、を、
積層した構造(発光波長465nm,青色LED)を用いることができる。
【0053】
発光構造部の表面となるp型層24表面に第2電極40の透光性のオーミック電極41、として、ITO(約170nm)を形成する。更に、露出された第1導電型層(n型層中のn側コンタクト層)22sに第1電極30(n電極)と、透光性電極41の一部にパッド電極42A及びそこから延長する配線電極42Bとして、Rh(約100nm)/Pt(約200nm)/Au(約500nm)をこの順に積層した構造の膜を設ける。これらの各電極は、フォトリソグラフィーにより所望形状に形成し、第1電極30、第2電極40のパッド電極42Aが外部接続部として各々供される。続いて、図6に示す□320μm(320μm角)の略正方形の発光素子となるように、ウエハを分割して、LEDチップを得る。図6(b)に示すように、基板の半導体層20側に凸部11を有することで、図10に示すように好適な光の散乱・回折作用により、光出力を高くできる。この図6(b)の凸部11は、実施例の寸法よりも誇張して、大きく示している。
【0054】
以上の例で示す各構造の寸法としては、基板10の厚さとしては50〜200μm程度(上記例では約90μm)、積層構造20では下地層21の厚さは1〜3μm程度、n型半導体層22の厚さは2〜5μm程度、活性層・発光層23の厚さは10〜100nm程度、p型半導体層24の厚さは100〜300nm程度、n型露出層22s表面から発光構造の高さは1〜3μm(上記例では約1.5μm)程度、第1層(第1電極)・第2電極(下層)の厚さは0.01〜0.5μm程度、第2層・パッド電極の厚さは0.3〜1.5μm程度、外部接続部・パッド電極の幅・直径は50〜150μm程度、素子外周露出部22sの幅は5μm〜30μm程度である。
【0055】
〔実施例2〕
実施例2では、上記実施例1において、凸部11の作製において、図4に示すように、凸部上面13、基板エッチング時のマスク19形状を三角形状とし、その他は実施例1と同様にして、基板を形成する。図4に示すように、底面三角形14aに対して、重心で180°回転させたマスク19、上面13としており、上面13・底面三角形14aの各辺に対して、3つの側面17-1〜17-3で構成された凸部11が得られる。ここで、凸部11の各寸法は、凸部上面13の三角形1辺の長さが約1μmの略正三角形であり、その他は実施例1と同様な寸法である。
実施例1と同様に、この凸部11を有する基板に下地層21を成長させると、実施例1とほぼ同程度の結晶性が得られる。
【0056】
以上の実施例1,2では、半導体層側、電極に透光性電極を用いるなどして、電極形成面側を主発光取り出し面側として、基板凹凸による光取り出し効率向上を得ているが、上述した発光装置(図10)の例のように、電極を反射性電極として、基板側を光取り出し面側とする発光素子においても同様に、基板凹凸が好適な光取り出し作用を得ることができる。
【0057】
〔比較例1,実施例3〕
実施例1において、基板の凹凸を、略同一の形状、大きさ、間隔、配置で、RIEにより、エッチングして形成する。このようにして得られる基板の凹凸構造は、凸部が、高さ約0.9μm、凸部(底面)の間隔約1μm、上面と底面の形状が略円形であり、それぞれの直径(断面幅)が、底面約2μm、上面約0.6μmで、平面円形、断面台形の円錐台形状となる。
この凹凸構造の基板上に、実施例1と同様に下地層、半導体素子構造を積層して、さらに、各電極を同様に設けて、発光素子を得る。
ここで、発光素子の構造、形状は、実施例1と異なり、図11(c)に示す、420×240μmの長方形の素子とする。
実施例3も、実施例1同様に、基板の凹凸構造、半導体積層構造、電極等を形成して、上記長方形の発光素子を形成する。
このようにして得られる比較例1と実施例3の発光特性は、図11(a),(b)に示すものとなる。ここで、図11(a)は、図11(c)の素子平面図におけるAA線方向を、図11(b)は同BB線方向の指向性を示すものであり、実施例3は実線で、比較例1は点線で示している。
この図11(a),(b)からわかるように、素子平面に垂直(90°)な光軸方向において、実施例3は比較例1に比して、強度が高くなっている。また、比較例1に見られる30〜45°付近の山が、実施例3では無くなっている。これらから、実施例3は比較例1に比して、軸上の強度が高まり、全体的に指向性がむらの無い、なだらかなものとなり、大幅に改善することがわかる。また、素子の基板裏面に金属反射膜(この例ではAl反射層)を設けても、図12に示すように、実施例3(図中の実線)、比較例1(点線)の発光特性について、同様な傾向が観られる。
また、上記下地層を膜厚3μmまで成長させ、その結晶性をロッキングカーブの半値幅で評価、比較すると、実施例3(実施例1)は比較例1に比して、(102),(002)面とも、約2〜3割減とできる。これにより、結晶性が大幅に改善することがわかる。
【0058】
〔実施例4〕
実施例1において、上記エッチング条件、マスク条件を変化させ、その他は同様にして、凹凸構造を基板表面に形成すると、図13の平面図に示すような形状の凸部が形成できる。これは、実施例1では、略円形のマスクの形状に依存して略円形の凸部上面13形状となるのに対し、実施例4では、マスク形状と凸部底面形状の中間の形状となっている。これは、マスクの膜質、密着性と、エッチング速度、溶液濃度等の条件を変化させて、凸部上面13がマスク形状への依存性が低くしているため、マスク形状から、基板結晶のエッチング形状である凸部底面の形状(17-1, 17-2の構成辺)へ変化する途中の形状になっていると考えられる。
このような形状では、凸部底面に比して、円形に近い形状、すなわち、マスク形状に近い形状となり、上面端部15には、凸部底面の構成辺(16-1, 16-2)に対応する長い湾曲部15-bと、その角に対応する短い湾曲部15-aが存在する。湾曲部15-bは曲率半径がそれに対応する凸部底面より小さく、一方湾曲部15-aではそれに対応する凸部底面の角(頂点)より丸みを帯びた形状となっている。
従って、マスク形状への依存性が、底面側では低く、上面側で高くなり、他方、基板結晶の形状依存性が、底面側で高く、上面側で低くなっている。
この実施例4を実施例1同様に、図6(a)に示す発光素子を作製して、実施例1と発光特性を比較すると、図6(a)のAA方向、BB方向の各特性は図14(a)、(b)に示すように、実施例4が、実施例1に比して軸上(90°)の強度が僅かに向上する。これは、マスク形状の略円形状の上面(実施例1)から、基板結晶の形状の略三角形に変化(実施例4)することで、上面の面積が小さくなり、相対的に側面17の平面に占める面積の割合が増えることにより、その傾斜側面による反射光が増大しているためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の基板は、発光素子だけでなく、その他の半導体素子に用いて、半導体層の結晶性を改善させることができる。また、本発明の基板では、相互に分離された凸部について説明したが、同様な凹部についても応用することができる。
また、本発明では基板の凸部は、基板を加工して形成しているが、その他に基板上に、透光性、反射性の凸部の部材、例えば上記保護膜・マスク材料と同様な材料の膜・透光性膜、を形成して、凸部とする応用もできる。この場合、半導体層の成長時に分解しない凸部材料を用いる。
【符号の説明】
【0060】
10…基板(10A:第1の主面)、11…基板凸部、12…凹部、13…凸部上面、14…凸部底面、15…上面の構成辺(端部)、16…底面の構成辺(端部)、17…側面、18…オリフラ面、19…マスク、
20…積層構造、21…下地層、22…第1導電型層(n型層)22s…層露出部(外周部)、23…活性層(発光層)、24…第2導電型層(p型層)
30…第1電極(第1導電型層側)、40…第2電極(第2導電型層側)、41…接触電極、42…配線・パッド電極、50…凹凸構造、100…発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板の第1主面上に、半導体の発光構造を有する半導体発光素子において、
前記サファイア基板の第1主面に錘体形状の基板凸部を有し、前記基板凸部の底面は略多角形状である半導体発光素子。
【請求項2】
前記基板凸部の底面は、頂点を結ぶ構成辺が三角形状または六角形状を構成する形状である請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記基板凸部の側面が、前記底面の頂点を結ぶ構成辺に対して、それぞれ、該構成辺の数より多い数の面で構成される複合面である請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記発光構造は、前記サファイア基板の第1主面に形成されるGaN層を含み、
前記底面の頂点を結ぶ構成辺は、前記GaN層のM面と交叉するように三角形状を構成する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記底面は、その頂点を結ぶ構成辺よりも外側に突出した形状である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記基板凸部が、相互に分離された複数の凸部である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記基板凸部が、周期的に配置されている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記基板凸部の周期的配置が、三角形状、四角形状、六角形状である請求項7記載の半導体発光素子。
【請求項9】
半導体発光素子用成長基板の製造方法において、
サファイア基板の第1主面にマスクを設けるマスク工程と、
前記マスクを介してサファイア基板をウェットエッチングすることにより、略多角形状の底面を有する錘体形状の凸部を、基板面上で互いに分離させて複数設けるサファイア基板の凹凸構造形成工程と、
前記サファイア基板の凸部及び凹部の表面に半導体を成長させ半導体基板を形成する工程と、を具備する半導体発光素子用基板の製造方法。
【請求項10】
前記凸部の底面は、頂点を結ぶ構成辺が三角形状または六角形状を構成する形状である請求項8に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記凹凸構造形成工程において、前記凸部の底面の頂点を結ぶ構成辺が、GaNのM面と交叉するように三角形状を構成する請求項9又は10に記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記凹凸構造形成工程において、前記凸部の底面は、その頂点を結ぶ構成辺よりも外側に突出した形状である請求項9乃至11のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項13】
前記マスク形状が略円形であり、前記底面の形状が定幅図形状若しくはルーローの多角形状である請求項9乃至12のいずれか一項に記載の半導体発光素子用基板の製造方法。
【請求項14】
前記サファイア基板の第1主面内において、前記凸部が、周期的に配置され、該周期的配置が、三角形状、四角形状、六角形状である請求項9乃至13のいずれか一項に記載の半導体発光素子用基板の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−238895(P2012−238895A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175746(P2012−175746)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2007−271764(P2007−271764)の分割
【原出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】