説明

半導体発光素子

【課題】半導体層表面の凹凸および反射層を有する半導体発光素子において、光取り出し効率を向上させる。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体発光素子1は、n型半導体層11とp型半導体層13とに挟まれた発光層12を有する半導体積層構造を有し、発光層12のn型半導体層11側から光を取り出す半導体発光素子であって、p型半導体層13上に形成された、発光層12から発せられた光を反射する反射層16と、を有し、n型半導体層11は、発光層12と反対側の面に光の進路を変更するための凹凸領域110を有し、反射層16の少なくとも一部は、凹凸領域110の端部の直上まで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体発光素子として、基板上にn型半導体層とp型半導体層に挟まれた発光層を有し、発光層から発せられる光を基板側から取り出すものが知られている。また、このような半導体発光素子において、発光層から基板の反対側に発せられた光を反射層で反射して、基板側から取り出すことにより、光取り出し量を増加させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の半導体発光素子として、光の進路を変更させるための凹凸をn型半導体層の基板側の表面に形成したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288548号公報
【特許文献2】特表2004−511080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体層表面の凹凸および反射層を有する半導体発光素子において、光取り出し効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、第1導電型層と第2導電型層とに挟まれた発光層を有する半導体積層構造を有し、前記発光層の前記第1導電型層側から光を取り出す半導体発光素子であって、前記第2導電型層上に形成された、前記発光層から発せられた光を反射する反射層と、を有し、前記第1導電型層は、前記発光層と反対側の面に光の進路を変更するための凹凸領域を有し、前記反射層の少なくとも一部は、前記凹凸領域の端部の直上まで形成される、半導体発光素子を提供する。
【0007】
上記半導体発光素子は、前記第1導電型層の前記凹凸領域を有する前記面と接する透光性基板をさらに有してもよい。
【0008】
上記半導体発光素子において、前記半導体積層構造の少なくとも一部は、前記透光性基板の端部上まで形成されてもよい。
【0009】
上記半導体発光素子において、前記反射層の前記第1導電型層の端部の直上に位置する部分の側面は、前記絶縁層に覆われないことが好ましい。
【0010】
上記半導体発光素子において、前記凹凸領域は、前記第1導電型層の前記面の全域に形成されてもよい。
【0011】
上記半導体発光素子において、前記反射層は、前記第2導電型層上に絶縁層を介して形成されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体層表面の凹凸および反射層を有する半導体発光素子において、光取り出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子の垂直断面図である。
【図2】図2は、図1の領域IIの拡大図である。
【図3】図3は、比較例に係る半導体発光素子の拡大図である。
【図4】図4は、反射層の端部のn型半導体層の端部からの距離と、光取り出し量の相対値(相対出力)との関係を表すグラフである。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体発光素子を示す垂直断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態に係る半導体発光素子を示す垂直断面図である。
【図7】図7は、本発明の第4の実施の形態に係る半導体発光素子を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体発光素子1の垂直断面図である。
【0015】
半導体発光素子1は、n型半導体層11、p型半導体層13、およびそれらに挟まれた発光層12からなる半導体構造を有し、発光層12のn型半導体層11側から光を取り出すタイプの発光素子である。n型半導体層11の発光層12と反対側の面上には基板10が形成される。p型半導体層13上には拡散電極14が形成される。p型半導体層13および拡散電極14上には絶縁層17を介して反射層16が形成される。
【0016】
p型半導体層13および発光層12の一部がエッチングにより除去されて、n型半導体層11の一部が露出し、その露出部分にバッファ電極19aを介して電極18aが接続される。拡散電極14には、バッファ電極19bを介して電極18bが接続される。電極18s、18bは、絶縁層17上に形成される。
【0017】
n型半導体層11、発光層12、およびp型半導体層13は、それぞれIII族窒化物化合物半導体からなる層である。III族窒化物化合物半導体として、例えば、AlGaIn1−x−yN(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の四元系のIII族窒化物化合物半導体を用いることができる。
【0018】
また、n型半導体層11は、発光層12と反対側の面に光の進路を変更するための凹凸110を有する。凹凸110は、例えば、ドットパターンやラインアンドスペースパターンを有し、発光層12から発せられる光の全反射を減らして発光素子1の光取り出し量を増やす機能を有する。凹凸110は、n型半導体層11の発光層12と反対側の面の全領域または一部の領域に設けられる。n型半導体層11の凹凸110は、例えば、表面に凹凸を有する基板10上に結晶を成長させてn型半導体層11を形成することにより設けられる。
【0019】
n型半導体層11は、例えば、n型コンタクト層、n型ESD層、およびn型クラッド層からなる積層構造を有し、所定量のn型ドーパント(例えば、Si)をそれぞれドーピングしたn−GaNからなる。
【0020】
発光層12は、複数の井戸層と複数の障壁層とを含んで形成される多重量子井戸構造を有する。井戸層は例えばInGaNから、障壁層は例えばGaN若しくはAlGaN等から形成される。
【0021】
p型半導体層13は、例えば、p型クラッド層およびp型コンタクト層からなる積層構造を有し、所定量のp型ドーパント(例えば、Mg)をドーピングしたp−GaNから形成される。
【0022】
基板10は、サファイア等の透光性を有する材料からなる。
【0023】
n型半導体層11、発光層12、およびp型半導体層13は、例えば、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition : MOCVD)、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy : MBE)、またはハライド気相エピタキシー法(Halide Vapor Phase Epitaxy : HVPE)により基板10上に結晶を成長させることにより形成される。半導体発光素子1の発光する領域を広くとるために、n型半導体層11、発光層12、およびp型半導体層13は、基板10上の全面に形成されることが好ましい。
【0024】
拡散電極14は、電極18bから流れる電流をp型半導体層13へ均等に拡散させる機能を有する。また、拡散電極14は、発光層12から発せられる光に対して透明であることが好ましく、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)から形成される。拡散電極14は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、またはCVD法により形成した導電膜をエッチングによりパターニングすることにより形成される。なお、図1に示すように、拡散電極14には、電極が接続されない領域15が存在してもよい。
【0025】
絶縁層17は、SiO、SiN等の絶縁材料からなる。また、絶縁層17の材料として、TiO、Al、Ta等の金属酸化物、若しくはポリイミド等の電気絶縁性を有する樹脂材料を用いることができる。絶縁層17は、真空蒸着法、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition : CVD)等により形成される。なお、絶縁層17のバッファ電極19a上の領域の一部と、バッファ電極19b上の領域の一部は、電極18a、18bのバッファ電極19a、19bへのコンタクト部分を形成するために、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて除去される。
【0026】
電極18a、18bは、例えば、Ni/Auからなる多層構造を有する。電極18a、18bは、スパッタリング法等により形成することができる。また、電極18a、18bは、絶縁層17上のパッド部分と、絶縁層17中のコンタクト部分とを異なる材料を用いて個別に形成してもよい。
【0027】
半導体発光素子1は、電極18a、18bを介して、実装基板等に接続される。電極18a、18bを介してn型半導体層11およびp型半導体層13に電圧を印加することにより、発光層12から光が発せられる。
【0028】
反射層16は、発光層12からp型半導体層13側(光取り出し方向の反対側)に発せられた光を反射する機能を有する。反射層16に反射された光は、n型半導体層11側から取り出すことができるため、半導体発光素子1の光取り出し量を増加させることができる。
【0029】
反射層16は、発光層12から発せられる光に対する反射率が高い金属、例えば、Al、Ag、Rh、Pt、またはこれらの少なくとも1つを主成分とする合金からなる。反射層16は、発光層12から発せられる光を効果的に反射するため、電極18a、18bのコンタクト部分周辺等を除いた、半導体構造上のほぼ全面に形成されることが好ましい。
【0030】
反射層16は、n型半導体層11の凹凸110の形成された領域の端部の直上まで形成される。凹凸110がn型半導体層11の端部まで形成されている場合は、反射層16は、n型半導体層11の端部の直上まで形成される。また、反射層16は、凹凸110のなるべく多くの端部の直上まで形成されることが好ましく、凹凸110の全ての端部の直上まで形成されることがより好ましい。また、製造工程上、反射層16と絶縁層17の積層体を半導体構造の端部で切断するため、反射層16のn型半導体層11の端部の直上に位置する部分の側面は、絶縁層17に覆われず、露出する場合がある。
【0031】
図2は、図1の領域IIの拡大図である。図中の矢印は、発光層12から発せられた光の軌跡の一例を模式的に表すものである。この光は、発光層から発せられた後に、基板10とn型半導体層11との界面で全反射して、半導体構造の端部まで進む光である。このような光は、凹凸110により反射角が変えられる場合があるが、反射層16が凹凸110の端部の直上まで形成されているため、半導体構造の端部において反射角が変わったとしても反射層16により反射され、発光層12のn型半導体層11側から取り出される。
【0032】
図3は、比較例としての半導体発光素子101の拡大図である。半導体発光素子101においては、従来の発光素子のように、反射層26が凹凸110の端部の直上まで形成されていない。この場合、半導体構造の端部において反射角が変わった光が、発光層12のp型半導体層13側から出てしまう。このため、比較例に係る半導体発光素子101の光取り出し量は、本実施の形態の半導体発光素子1のそれよりも小さい。
【0033】
図4は、反射層16の端部のn型半導体層11の端部からの距離と、光取り出し量の相対値(相対出力)との関係を表すグラフである。ここで、n型半導体層11は一辺の長さが346μmの正方形であり、反射層16の端部のn型半導体層11の端部からの距離は全ての領域において等しいものとする。すなわち、反射層16も正方形であり、反射層16の端部のn型半導体層11の端部からの距離が大きくなるにしたがって小さくなる。
【0034】
図4から分かるように、反射層16の端部のn型半導体層11の端部からの距離が小さいほど、光取り出し量が増加する。これは、図2および3を用いて上に述べた効果が反映されたものと考えられる。なお、この傾向はチップサイズが小さいほど顕著になり、本実施の形態の効果が大きくなる。
【0035】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態の半導体発光素子2は、反射層16がp型半導体層13のコンタクト電極を兼ねる点において第1の実施の形態の半導体発光素子1と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0036】
図5は、第2の実施の形態に係る半導体発光素子2を示す垂直断面図である。半導体発光素子2は、半導体発光素子1の拡散電極14およびバッファ電極19bを含まない。反射層16は、絶縁層17を介さずにp型半導体層13上に直接形成され、p型半導体層13に電気的に接続される。また、電極18bは反射層16に接続される。
【0037】
本実施の形態においては、反射層16がp型半導体層13のコンタクト電極を兼ねるため、反射層16の材料として、Ag等の特に電気伝導率の高い材料を用いることが好ましい。
【0038】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態の半導体発光素子3は、基板10が除去される点において第1の実施の形態の半導体発光素子1と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0039】
図6は、第3の実施の形態に係る半導体発光素子3を示す垂直断面図である。半導体発光素子3においては、半導体発光素子1の基板10に相当する透光性基板が除去され、露出したn型半導体層11の表面に凹凸111が形成される。なお、反射層16は、絶縁層17を介さずに拡散電極14上に直接形成されてもよい。
【0040】
まず、基板10上にn型半導体層11、発光層12、p型半導体層13、拡散電極14、バッファ電極19aおよび19b、反射層16、絶縁層17、ならびに電極18aおよび18bを形成する。その後、レーザーリフトオフ(LLO)法を用いて基板10をn型半導体層11から剥離させる。そして、n型半導体層11の露出した表面をKOH水溶液に浸漬させることにより、n型半導体層11の表面に凹凸111を形成する。
【0041】
第3の実施の形態によれば、n型半導体層11に電極を接続するために発光層12の一部を除去しなくてよいため、光取り出し量を増加させることができる。
【0042】
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態の半導体発光素子4は、基板10が除去される点、半導体構造が支持基板に接合される点、および電極28a、28bが半導体発光素子を挟むように形成されている点において第1の実施の形態の半導体発光素子1と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略または簡略化する。
【0043】
図7は、第4の実施の形態に係る半導体発光素子4を示す垂直断面図である。半導体発光素子4においては、半導体発光素子1の基板10に相当する透光性基板が除去され、露出したn型半導体層11の表面に凹凸111が形成される。半導体発光素子1の電極18aおよびバッファ電極19aの代わりに、n型半導体層11の凹凸111が形成される面上に形成される電極28aを有する。また、支持基板29の表面がバッファ電極19bを介して拡散電極14に接続される。支持基板29の表面には、電極28bが形成される。なお、反射層16は、絶縁層17を介さずに拡散電極14上に直接形成されてもよい。
【0044】
拡散電極14は、図6に示すように、p型半導体層13上の全面に形成されることが好ましい。また、支持基板29は複数のバッファ電極19bを介して複数の箇所で拡散電極14に接続されることが好ましい。これにより、電流をp型半導体層13により均一に拡散させることができる。
【0045】
電極28aは、例えば、V/Alからなる多層構造を有する。支持基板29は、Cu等の金属またはp型不純物を含有するSi等の半導体からなり、導電性を有する。電極28bは、例えば、Ti/Ni/Auからなる多層構造を有する。
【0046】
まず、基板10上にn型半導体層11、発光層12、p型半導体層13、拡散電極14、バッファ電極19b、反射層16、絶縁層17を形成し、予め表面に電極28bが形成された支持基板29の表面をバッファ電極19bに接続するように接合する。その後、レーザーリフトオフ(LLO)法を用いて基板10をn型半導体層11から剥離させる。そして、n型半導体層11の露出した表面をKOH水溶液に浸漬させることにより、n型半導体層11の表面に凹凸111を形成する。その後、n型半導体層11上に電極28aを形成する。
【0047】
第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様に、n型半導体層11に電極を接続するために発光層12の一部を除去しなくてよいため、光取り出し量を増加させることができる。
【0048】
なお、上記の各実施の形態においては、半導体積層構造のn型の層とp型の層が逆であってもよい。すなわち、n型半導体層11の代わりにp型半導体層が形成され、p型半導体層13の代わりにn型半導体層が形成されてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記に記載した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0050】
1 半導体発光素子
2 半導体発光素子
10 基板
11 n型半導体層
12 発光層
13 p型半導体層
16 反射層
17 絶縁層
110 凹凸
111 凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型層と第2導電型層とに挟まれた発光層を有する半導体積層構造を有し、前記発光層の前記第1導電型層側から光を取り出す半導体発光素子であって、
前記第2導電型層上に形成された、前記発光層から発せられた光を反射する反射層と、
を有し、
前記第1導電型層は、前記発光層と反対側の面に光の進路を変更するための凹凸領域を有し、
前記反射層の少なくとも一部は、前記凹凸領域の端部の直上まで形成される、
半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1導電型層の前記凹凸領域を有する前記面と接する透光性基板をさらに有する、
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記半導体積層構造の少なくとも一部は、前記透光性基板の端部上まで形成される、
請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記反射層の前記第1導電型層の端部の直上に位置する部分の側面は、前記絶縁層に覆われない、
請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記凹凸領域は、前記第1導電型層の前記面の全域に形成される、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記反射層は、前記第2導電型層上に絶縁層を介して形成される、
請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−124219(P2012−124219A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271602(P2010−271602)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】