説明

半導体発光素子

【課題】半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることを目的とする。
【解決手段】n型半導体層と、通電により発光波長λの光を出射する発光層と、p型半導体層160と、発光層から出射される光に対する透過性および導電性を備えるとともに第1屈折率n1を有する透明導電層170と、発光層から出射される光に対する透過性および絶縁性を備えるとともに第1屈折率n1よりも低い第2屈折率n2を有する透明絶縁層180と、発光層から出射される光に対する反射性を備えるp金属反射層202とが積層された半導体発光素子1において、透明導電層170の第1膜厚t1は、(λ/4n1)×(A−0.5)≦t1≦(λ/4n1)×(A+0.5)の関係を有し、透明絶縁層180の第2膜厚t2は、(λ/4n2)×(B−0.5)≦t2≦(λ/4n2)×(B+0.5)の関係を有する。ただし、Aは正の偶数、Bは正の奇数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
III−V族化合物半導体やII−VI族化合物半導体等の化合物半導体からなるn型半導体層、発光層およびp型半導体層が順に積層された積層半導体層を有する半導体発光素子が広く用いられている。そして、このような半導体発光素子では、発光層からの光を取り出す光取出し面とは反対側の面に、発光層からの光を反射させるための反射膜を形成したものが存在する。
【0003】
特許文献1には、n型半導体層、発光層およびp型半導体層が積層され、さらにp型半導体層上に透明導電層および反射膜が積層されてなる半導体発光素子において、反射膜が、発光層の発光波長において透光性を有し且つ透明導電層に積層される透明層と、高反射率を有し且つ透明層に積層される金属層とを備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−260316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体発光素子が透明導電層、透明層および金属層の積層構造を有していても、反射光量が増加しにくくなる場合があった。
本発明は、半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、下記[1]〜[10]に係る発明が提供される。
[1]第1導電型を有する化合物半導体で構成される第1半導体層と、
第1半導体層に積層され、通電により発光する発光層と、
第1導電型とは異なる第2導電型を有する化合物半導体で構成され、発光層に積層される第2半導体層と、
発光層から出射される光に対する透過性および導電性を備えるとともに第1屈折率を有する材料で構成され、第2半導体層に積層される透明導電層と、
発光層から出射される光に対する透過性および絶縁性を備えるとともに第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する材料で構成され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有するとともに透明導電層に積層される透明絶縁層と、
第1半導体層と電気的に接続される第1電極と、
発光層から出射される光に対する反射性および導電性を有する金属材料で構成され、貫通孔を介して露出する透明導電層および透明絶縁層を覆うように積層される金属反射層を有する第2電極と
を備え、
透明導電層の膜厚を第1膜厚t1、透明絶縁層の膜厚を第2膜厚t2、第1屈折率をn1、第2屈折率をn2、発光層から出射される光の波長をλとし、Aを正の偶数、Bを正の奇数とした場合に、
第1膜厚t1は、
(λ/4n1)×(A−0.5)≦ t1 ≦(λ/4n1)×(A+0.5)
の関係を有し、
第2膜厚t2は、
(λ/4n2)×(B−0.5)≦ t2 ≦(λ/4n2)×(B+0.5)
の関係を有していることを特徴とする半導体発光素子。
[2]透明導電層と同一の材料から構成され、透明絶縁層および透明絶縁層に形成された貫通孔を介して露出する透明導電層の上に積層される密着層をさらに備え、
密着層の膜厚を第3膜厚t3としたとき、第1膜厚t1および第3膜厚t3の総和は、
(λ/4n1)×(A−0.5)≦(t1+t3)≦(λ/4n1)×(A+0.5)
の関係を有していることを特徴とする[1]記載の半導体発光素子。
[3]第1半導体層は、電子をキャリアとするIII−V族化合物半導体で構成され、
第2半導体層は、正孔をキャリアとするIII−V族化合物半導体で構成されることを特徴とする[1]または[2]記載の半導体発光素子。
[4]第1半導体層および第2半導体層は、III族窒化物半導体で構成されることを特徴とする[3]記載の半導体発光素子。
[5]透明導電層は、IZO(Indium Zinc Oxide) またはITO(Indium tin Oxide)から構成されることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[6]透明絶縁層は、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム及び酸化アルミニウムからなる群から選ばれた一種の材料から構成されることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の半導体発光素子。
[7]金属反射層は、銀または銀を含む合金から構成されることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の半導体発光素子。
【0007】
[8]第1導電型を有する化合物半導体で構成され、外部からの給電に用いられる第1半導体層と、
第1半導体層に積層され、通電により発光する発光層と、
第1導電型とは異なる第2導電型を有する化合物半導体で構成され、発光層に積層される第2半導体層と、
第2半導体層に積層され、発光層から出射される光に対する透過性および導電性を備えるとともに第1屈折率を有する材料で構成され、第1半導体層とともに外部からの給電に用いられる透明導電層と、
発光層から出射される光に対する透過性および絶縁性を備えるとともに第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する材料で構成され、透明導電層に積層される透明絶縁層と、
発光層から出射される光に対する反射性を有する材料で構成され、透明絶縁層に積層される反射層とを備え、
透明導電層の膜厚を第1膜厚t1、透明絶縁層の膜厚を第2膜厚t2、第1屈折率をn1、第2屈折率をn2、発光層から出射される光の波長をλとし、Aを正の偶数、Bを正の奇数とした場合に、
第1膜厚t1は、
(λ/4n1)×(A−0.5)≦ t1 ≦(λ/4n1)×(A+0.5)
の関係を有し、
第2膜厚t2は、
(λ/4n2)×(B−0.5)≦ t2 ≦(λ/4n2)×(B+0.5)
の関係を有していることを特徴とする半導体発光素子。
[9]反射層は、導電性を備える材料で構成され、透明導電層と電気的に接続されることを特徴とする[8]記載の半導体発光素子。
[10]透明絶縁層は、厚さ方向に貫通する貫通孔を複数有し、
反射層は、複数の貫通孔を介して透明導電層と電気的に接続されることを特徴とする[9]記載の半導体発光素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体発光素子からの光取り出し効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態が適用される半導体発光素子の平面模式図の一例である。
【図2】図1に示す半導体発光素子のII−II断面図である。
【図3】本実施の形態の半導体発光素子におけるp電極周辺の断面構成の一例を示す図である。
【図4】本実施の形態の半導体発光素子におけるn電極周辺の断面構成の一例を示す図である。
【図5】半導体発光素子を搭載した発光装置の構成の一例を示す図である。
【図6】図5に示す発光装置における半導体発光素子の実装状態の一例を示す図である。
【図7】本実施の形態における半導体発光素子の光の出力を測定した結果を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明における実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において参照する図面における各部の大きさや厚さ等は、実際の半導体発光素子等の寸法とは異なっている場合がある。
【0011】
図1は、本実施の形態が適用される半導体発光素子(発光ダイオード)1の一例を上方から見た平面模式図を示している。また、図2は、図1に示す半導体発光素子1のII−II断面図を示している。なお、図1においては、後述する保護層400を取り除いた半導体発光素子1を例示している。
(半導体発光素子)
本実施の形態の半導体発光素子1は、基板110と、基板110上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備える。また、半導体発光素子1は、下地層130上に積層される第1半導体層の一例としてのn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層される第2半導体層の一例としてのp型半導体層160とをさらに備える。なお、以下の説明においては、必要に応じて、これらn型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160を、まとめて積層半導体層100と呼ぶ。
また、この半導体発光素子1においては、上方に向けてn型半導体層140の上面140cが露出するように、積層されたp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140が、一部の領域において厚さ方向に切り欠かれている。
【0012】
さらに、この半導体発光素子1は、発光層150から出力される光に対する透過性および導電性を有し、p型半導体層160の上に積層される透明導電層170を備えている。
さらにまた、この半導体発光素子1は、発光層150から出力される光に対する透過性および絶縁性を有し、透明導電層170の上面から、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の側面を介して、n型半導体層140の上面140cに至るように、一体的に積層される透明絶縁層180を備えている。
ここで、発光層150の発光波長λ(nm)における、透明導電層170の屈折率を第1屈折率n1とし、透明絶縁層180の屈折率を第2屈折率n2としたとき、両者はn1>n2の関係を有している。
【0013】
また、透明絶縁層180には、透明絶縁層180の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が設けられている。本実施の形態において、複数の貫通孔は、例えば透明導電層170の上方に複数個(図1に示す例では28個)配置されるとともに、例えばn型半導体層140の上面140cの上方にも複数個(図1に示す例では4個)配置されている。これにより、例えば透明導電層170の上に透明絶縁層180を積層した状態では、複数の貫通孔を介して透明導電層170の一部が露出することになり、また、例えばn型半導体層140の上面140cの上に透明絶縁層180を積層した状態では、複数の貫通孔を介してn型半導体層140の一部が露出することになる。ここで、本実施の形態では、透明絶縁層180に設けられている複数の貫通孔は、上方から見たときにそれぞれが円形状を有している(図1参照)。
【0014】
さらに、この半導体発光素子1は、p型半導体層160上に積層された透明導電層170および透明絶縁層180の上にさらに積層され、発光層150を発光させる際に一方の電極(正電極)として機能する第2電極の一例としてのp電極200を備える。ここで、p電極200は、透明絶縁層180に設けられた複数の貫通孔をそれぞれ貫通し、その一端が透明導電層170と接するように設けられる複数(図1に示す例では28個)のp接続導体211(複数の接続導体に対応)からなるp導体部210(導体部に対応)と、透明絶縁層180上に形成され、複数のp接続導体211のそれぞれの他端が接続されるとともに、外部との電気的な接続に用いられるpパッド部220(電極部に対応)とを有している。
なお、本実施の形態では、p電極200においてp導体部210およびpパッド部220が一体化した構造を有しているのであるが、このことについては後述する。
【0015】
さらにまた、この半導体発光素子1は、n型半導体層140の上面140c上に積層された透明絶縁層180の上にさらに積層され、発光層150を発光させる際に他方の電極(負電極)として機能する第1電極の一例としてのn電極300をさらに備えていても良い。図1では、このような実施の形態の構造を示している。ここで、n電極300は、透明絶縁層180に設けられた複数の貫通孔をそれぞれ貫通し、その一端がn型半導体層140の上面140cと接するように設けられる複数(図1に示す例では4個)のn接続導体311からなるn導体部310と、複数のn接続導体311のそれぞれの他端が接続されるとともに、外部との電気的な接続に用いられるnパッド部320とを有している。なお、本実施の形態では、上述したp電極200と同様に、n電極300においてn導体部310およびnパッド部320が一体化した構造を有しているのであるが、このことについては後述する。
【0016】
そして、この半導体発光素子1は、p電極200、p電極200の周縁、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の側面、n電極300およびn電極300の周縁にわたって一体的に積層されることで、p電極200およびn電極300を保護する保護層400を有している。ただし、保護層400は、p電極200の上面のうちほぼ中央部となる部位(この例では円形の領域)およびn電極300の上面のうちほぼ中央部となる部位(この例では円形の領域)には設けられていない。これにより、この半導体発光素子1では、p電極200の上面の一部が外部に露出し、また、n電極300の上面の一部が外部に露出している。なお、これらの露出部位は、半導体発光素子1の実装において、外部との電気的な接続に用いられる。
【0017】
このように、本実施の形態の半導体発光素子1は、基板110とは反対側となる一方の面側に、p電極200およびn電極300が形成された構造を有している。そして、この半導体発光素子1においては、p電極200を正電極、n電極300を負電極とし、両者を介して積層半導体層100(より具体的にはp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140)に電流を流すことで、発光層150が発光するようになっている。
【0018】
以下、本実施の形態における半導体発光素子1の各構成を説明する。
<基板>
基板110としては、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。例えば、サファイア、SiC、シリコン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン亜鉛鉄、酸化マグネシウムアルミニウム、ホウ化ジルコニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化モリブデン等からなる基板を用いることができる。
また、上記基板の中でも、特に、C面を主面とするサファイア基板を用いることが好ましい。サファイア基板を用いる場合は、サファイアのC面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
【0019】
<中間層>
中間層120は、基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和し、特にC面を主面とするサファイアで基板110を構成した場合には、基板110の(0001)面(C面)上にc軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120の上に単結晶の下地層130を積層すると、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。なお、本発明においては、中間層120の形成を行うことが好ましいが、必ずしも行わなくても良い。
【0020】
中間層120は、多結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、例えば、多結晶のAlxGa1-xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01μm〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
特に、中間層120としてAlNを用いる場合には、中間層120の厚みを25nm〜50nmとすることが好ましい。中間層120の厚みをこの範囲にすることで、中間層120上に積層される下地層130および積層半導体層100(n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160)の結晶性が良好になるとともに、中間層120において、発光層150から出射される光に対する透過率の低下を防止できるからである。
【0021】
<下地層>
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1-xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の厚さは0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この厚さ以上にした方が、結晶性の良好な下地層130を得やすい。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130には不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0022】
<積層半導体層>
積層半導体層100は、図2に示すように、基板110上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層が、この順で積層されて構成されている。また、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層は、それぞれ、複数の半導体層から構成してもよい。
ここで、n型半導体層140は、第1導電型の一例として、電子をキャリアとして電気伝導を行うn型の導電型を有するものであり、p型半導体層160は、第2導電型の一例として、正孔をキャリアとして電気伝導を行うp型の導電型を有するものである。
【0023】
<n型半導体層>
n型半導体層140は、nコンタクト層(図示せず)とnクラッド層(図示せず)とから構成されるのが好ましい。なお、nコンタクト層はnクラッド層を兼ねることも可能である。また、前述の下地層130をn型半導体層140に含めてもよい。
【0024】
nコンタクト層は、n電極300を設けるための層である。
nコンタクト層としては、AlxGa1-xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
また、nコンタクト層にはn型不純物がドープされていることが好ましい。n型不純物を1×1017/cm3〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018/cm3〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、n電極300との良好なオーミック接触を維持できる点で好ましい。n型不純物としては、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
【0025】
nコンタクト層の厚さは、0.5μm〜5μmとされることが好ましく、1μm〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層の厚さが上記範囲にあると、発光層150等の結晶性が良好に維持される。
【0026】
nコンタクト層と発光層150との間には、nクラッド層を設けることが好ましい。nクラッド層は、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めとを行なう層である。
nクラッド層はAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層をGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましい。なお、本明細書では、AlGaN、GaInNについて、各元素の組成比を省略した形で記述する場合がある。
【0027】
nクラッド層のn型不純物濃度は1×1017/cm3〜1×1020/cm3が好ましく、より好ましくは1×1018/cm3〜1×1019/cm3である。不純物濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および素子の動作電圧低減の点で好ましい。
nクラッド層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。
【0028】
なお、nクラッド層を、超格子構造を含む層とする場合には、10nm以下の厚さを有するIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに10nm以下の厚さを有するIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであってもよい。
また、nクラッド層は、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、この場合には、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0029】
<発光層>
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することができる。
量子井戸構造の井戸層としては、Ga1-yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。また、多重量子井戸構造の発光層150を用いる場合は、上記Ga1-yInyNを井戸層とし、井戸層よりバンドギャップエネルギーが大きいAlzGa1-zN(0≦z<0.3)を障壁層とする。井戸層および障壁層には、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
【0030】
<p型半導体層>
p型半導体層160は、pクラッド層(図示せず)とpコンタクト層(図示せず)とから構成されるのが好ましい。なお、pコンタクト層はpクラッド層を兼ねることも可能である。
pクラッド層は、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。
pクラッド層としては、発光層150のバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、例えばAlxGa1-xN(0<x≦0.4)を用いることができる。pクラッド層が、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。
【0031】
pクラッド層のp型不純物濃度は、1×1018/cm3〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019/cm3〜1×1020/cm3である。p型不純物濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層は、上述したnクラッド層と同様に超格子構造としてもよく、この場合には、組成比が異なるAlGaNと他のAlGaNとの交互構造または組成が異なるAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
pクラッド層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1nm〜400nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。
【0032】
pコンタクト層は、透明導電層170を介してp電極200を設けるための層である。 pコンタクト層は、AlxGa1-xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持およびp電極200との良好なオーミック接触の維持が可能となる点で好ましい。
pコンタクト層のp型不純物濃度は、1×1018/cm3〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは5×1019/cm3〜5×1020/cm3である。p型不純物濃度が上記範囲であると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持が可能となる点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Mg等が挙げられる。
pコンタクト層の厚さは、特に限定されないが、10nm〜500nmが好ましく、より好ましくは50nm〜200nmである。pコンタクト層の厚さが上記範囲にあると、発光出力の点で好ましい。
なお、pコンタクト層の屈折率は、第1屈折率n1よりも大きいことが好ましい。
【0033】
<透明導電層>
透明導電層170は、積層半導体層100の上面のうち、p型半導体層160の上面における周縁部、及び、露出するn型半導体層140の上面140cを除いてほぼ全面を覆うように形成されている。
透明導電層170は、p型半導体層160とオーミックコンタクトがとれ、しかもp型半導体層160との接触抵抗が小さいものを用いることが好ましい。また、この半導体発光素子1では、発光層150からの光を、透明導電層170および透明絶縁層180等を介して基板110側に取り出すことから、透明導電層170は光透過性に優れたものを用いることが好ましい。さらにまた、p型半導体層160の全面に渡って均一に電流を拡散させるために、透明導電層170は優れた導電性を有し、且つ、抵抗分布が少ないものを用いることが好ましい。
【0034】
透明導電層170としては、例えば導電性を備える酸化物であって、発光層150から出射される波長の光に対する光透過性のよいものを用いることができる。特に、Inを含む酸化物の一部は、他の透明導電膜と比較して光透過性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えばIZO(酸化インジウム亜鉛(In23−ZnO))、ITO(酸化インジウム錫(In23−SnO2))、IGO(酸化インジウムガリウム(In23−Ga23))、ICO(酸化インジウムセリウム(In23−CeO2))等が挙げられる。なお、これらの中に、例えばフッ素などのドーパントが添加されていてもかまわない。また、例えばInを含まない酸化物、例えばキャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いてもよい。
これらの材料を、この技術分野でよく知られた慣用の手段によって設けることで、透明導電層170を形成することができる。そして、透明導電層170を形成した後に、熱処理を施して結晶化を促進させることにより、透明導電層170の光透過率が上がるとともに、シート抵抗が下がることでオーミックコンタクトが取りやすくなる。
【0035】
本実施の形態において、透明導電層170は、結晶化された構造のものを使用してよく、特に六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn23結晶を含む透光性材料(例えば、IZOやITO等)を好ましく使用することができる。
透明導電層170に用いる膜としては、比抵抗が低くなる組成を使用することが好ましい。例えば、IZO中のZnO濃度は1〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%の範囲であることが更に好ましく、10質量%であると特に好ましい。
【0036】
ここで、Qを、発光層150の発光波長λおよび透明導電層170の第1屈折率n1を用いて、以下の式(1)のように表す。
=λ/4n1 …(1)
本実施の形態において、透明導電層170の膜厚を第1膜厚t1(図3参照)とすると、第1膜厚t1は、以下に示す式(2)の範囲で設定される。ただし、Aは正の偶数である。
(A−0.5)×Q ≦ t1 ≦ (A+0.5)×Q …(2)
この理由については後段で説明する。
なお、透明導電層170のシート抵抗が上昇するのを抑制するためには、透明導電層170の第1膜厚t1は、3.5Q以上であることがより好ましい。この例において、透明導電層170の第1膜厚t1は、200nm(≒4Q)である。
【0037】
<透明絶縁層>
透明絶縁層180は、例えば図2に示すように、透明導電層170、透明導電層170が積層されていないp型半導体層160、および発光層150が積層されていないn型半導体層140をそれぞれ覆うように積層されている。また、透明絶縁層180は、各層の表面を覆うだけでなく、発光層150およびp型半導体層160の側面、すなわちp型半導体層160とn型半導体層140とで形成される段差の壁部にあたる部分を覆い、さらに透明導電層170の側面も覆う。
【0038】
そして、透明絶縁層180は、上述のように、発光層150から出力される光に対する透過性、透明導電層170の屈折率(第1屈折率n1)よりも低い屈折率(第2屈折率n2)、および絶縁性を有する材質から構成される。透明絶縁層180を構成する材料としては、例えばSiO2(酸化珪素)やMgF2(フッ化マグネシウム)、CaF2(フッ化カルシウム)、Al23(酸化アルミニウム)を使用することができる。なお、この例では、透明絶縁層180としてSiO2(酸化珪素)を用いた。
【0039】
ここで、Qを、発光層150の発光波長λおよび透明絶縁層180の第2屈折率n2を用いて、以下の式(3)のように表す。
=λ/4n2 …(3)
本実施の形態において、透明導電層170の上に積層される透明絶縁層180の膜厚を第2膜厚t2(図3参照)とすると、第2膜厚t2は、以下に示す式(4)の範囲で設定される。ただし、Bは正の奇数である。
(B−0.5)×Q ≦ t2 ≦ (B+0.5)×Q …(4)
この理由については後段で説明する。
なお、この例において、透明絶縁層180の第2膜厚t2は、380nm(≒5Q)である。
【0040】
<p電極>
図3は、本実施の形態の半導体発光素子1におけるp電極200周辺の断面構成の一例を示す図である。ここで、図3は、図2におけるp電極200周辺の断面を拡大したものとなっている。
【0041】
p電極200は、最も透明導電層170および透明絶縁層180に近い側において、これら透明導電層170および透明絶縁層180と接するように積層される密着層の一例としてのp密着層201と、p密着層201に積層される金属反射層および反射層の一例としてのp金属反射層202と、p金属反射層202に積層されるp拡散防止層203と、p拡散防止層203に積層されるpボンディング層204と、pボンディング層204に積層され、さらにその上に保護層400が積層されるp保護密着層205とを有する。そして、本実施の形態では、p密着層201、p金属反射層202、p拡散防止層203、pボンディング層204およびp保護密着層205によって、複数のp接続導体211を含むp導体部210とpパッド部220とが一体化した、p電極200を構成している。
【0042】
以下、本実施の形態におけるp電極200の各構成を説明する。
[p密着層]
p密着層201は、例えば図3に示したように、透明絶縁層180の上面、透明絶縁層180に設けられた貫通孔の内壁面および各貫通孔を介して露出する透明導電層170の上面に沿って積層されている。そして、p密着層201の上には、p金属反射層202が積層されている。このp密着層201は、これら透明導電層170、透明絶縁層180およびp金属反射層202を構成する材料の物理的な密着性を高めるために設けられている。
したがって、p密着層201として、透明導電層170、透明絶縁層180およびp金属反射層202との密着性が良い材料を用いることが好ましい。
【0043】
また、本実施の形態の半導体発光素子1では、発光層150から出力される光のうち、p電極200側に入射してきた光を、透明導電層170、透明絶縁層180およびp金属反射層202などを介して基板110側に反射させることから、p密着層201として光透過性に優れた材料を用いることが好ましい。さらにまた、p電極200からp型半導体層160の全面に渡って均一に電流を拡散させるために、p密着層201として、導電性に優れ、面方向における抵抗分布が少なく、しかも透明導電層170との接触抵抗が低く抑えられたものを用いることが好ましい。
【0044】
これらの点から、p密着層201として透明導電膜を用いることが好ましい。特に、p密着層201として透明導電層170と同じ材料からなる透明導電膜を用いることが好ましい。この例では、p密着層201として、導電性を有する金属酸化物であって、発光層150から出射される波長の光に対する光透過性のよいものが用いられる。特に、Inを含む金属酸化物は、他の透明導電膜と比較して光透過性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の金属酸化物としては、例えばITO(酸化インジウム錫(In23−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In23−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In−Ga))、ICO(酸化インジウムセリウム(In23−CeO2))等が挙げられる。特に好ましくはIZO(酸化インジウム亜鉛(In23−ZnO))が挙げられる。ただし、透明導電層170を構成するIZOには熱処理を施して結晶化を促進していたのに対し、p密着層201を構成するIZOには熱処理を施さないようにすることで、アモルファス状態のままとしている。
なお、p密着層201として、導電性を有し且つ極めて薄く形成された金属からなる透光性金属薄膜を用いても良い。透光性金属薄膜としては、白金やチタン等の薄膜を用いることができる。
【0045】
このp密着層201の膜厚は、上述した理由により、好ましくは1nm〜50nmの範囲から選ばれる。p密着層201の膜厚が1nm未満の場合には、透明導電層170との密着性が悪くなり、接触抵抗が高くなる恐れがある。一方、p密着層201の膜厚が50nmを越える場合には、光透過性が低下するとともに、厚さ方向の抵抗(直列抵抗)が高くなるため、得られる半導体発光素子1における順方向電圧Vfの増加を招く。この例において、p密着層201の膜厚は例えば2nmである。
なお、透明導電層170とp密着層201とを同一の材料で形成する場合、貫通孔を介して露出する透明導電層170上に積層されるp密着層201の膜厚を第3膜厚t3とすると、第1膜厚t1および第3膜厚t3の総和は、以下に示す式(5)の範囲で設定されることが好ましい。
(A−0.5)×Q ≦(t1+t3)≦(A+0.5)×Q …(5)
これにより、半導体発光素子1の光取り出し効率が低下するのを抑制することができる。
【0046】
[p金属反射層]
p金属反射層202は、図3に示したように、p密着層201に沿って積層される。したがって、p金属反射層202は、透明絶縁層180に設けられた貫通孔の形状に従って屈曲した形状を有している。また、p金属反射層202の上には、p拡散防止層203が積層されている。
p金属反射層202は、発光層150から出射され、透明導電層170および透明絶縁層180を通過してきた光を、基板110側に向けて反射させるために設けられている。ここで、本実施の形態では、p密着層201を介して透明絶縁層180とp金属反射層202とを配置することにより、これら透明絶縁層180およびp金属反射層202が直接には接触しない構造となっている。また、p金属反射層202は、p電極200の構成要素の1つとなっていることから、自身の抵抗が低く且つp密着層201との接触抵抗が低く抑えられるものを用いることが好ましい。
【0047】
本実施の形態のp金属反射層202は、銀、パラジウム、銅、ネオジム、アルミニウム、ニッケル、クロムなどの金属および少なくともこれらのうちの1つを含む合金で構成されている。特に、p金属反射層202として銀または銀合金を用いることは、発光層150から出力される青色〜緑色の領域の波長の光に対して、高い光反射性を有している点で好ましい。ここで、p金属反射層202として銀を用いると、使用環境によっては耐熱性、耐高温高湿性が十分でない場合があることから、銀合金が好ましく使用される。
【0048】
p金属反射層202として銀あるいは銀合金を用いた場合、p密着層201の材質としては、IZO等の透明導電性材料を用いることが好ましい。ここで、p密着層201を設けずに透明絶縁層180の上にp金属反射層202を直接に積層した場合、p密着層201を設けた場合と比較して、密着性は著しく低下する。
【0049】
このp金属反射層202の膜厚は、好ましくは80nm〜200nmの範囲から選ばれる。p金属反射層202の膜厚が80nm未満の場合には、p金属反射層202による光反射率が低下する。また、p金属反射層202の膜厚が200nmを越える場合には、半導体発光素子1の製造にかかるコストが上昇する。なお、この例において、p金属反射層202の膜厚は100nm〜150nmの範囲とした。
【0050】
[p拡散防止層]
p拡散防止層203は、図3に示したように、p金属反射層202の上に積層され、且つ、その上にはpボンディング層204が積層される。なお、p拡散防止層203は、透明絶縁層180に形成された貫通孔の形状に倣って、凹凸を有している。
p拡散防止層203は、接触状態にあるp金属反射層202を構成する金属(この例では銀合金)、および、接触状態にあるpボンディング層204を構成する金属(この例では金(詳細は後述))の拡散を、それぞれ抑制するために設けられている。ここで、本実施の形態では、p拡散防止層203を介してp金属反射層202とpボンディング層204とを配置することにより、これらp金属反射層202およびpボンディング層204が直接には接触しない構造となっている。また、p拡散防止層203は、p電極200の構成要素の1つとなっていることから、自身の抵抗が低く且つp金属反射層202およびpボンディング層204との接触抵抗がそれぞれ低く抑えられるものを用いることが好ましい。なお、p拡散防止層203は、発光層150からの光を透過させる機能を基本的に必要としないので、上述したp密着層201とは異なり、光透過性を有している必要はない。
【0051】
本実施の形態におけるp拡散防止層203の具体例としては、p金属反射層202に積層されるp第1拡散防止層203aと、p第1拡散防止層203aに積層されるp第2拡散防止層203bと、p第2拡散防止層203bに積層され、さらにその上にpボンディング層204が積層されるp第3拡散防止層203cとを備える。
【0052】
本実施の形態では、p第1拡散防止層203aとしてタンタルを、p第2拡散防止層203bとしてチタンを、p第3拡散防止層203cとして白金を、それぞれ用いている。なお、p第2拡散防止層203bとして、チタンに代えてニッケルを用いてもよい。
【0053】
ここで、p第1拡散防止層203aおよびp第2拡散防止層203bは、上述したp金属反射層202を構成する金属(この例では銀合金)の拡散を抑制するだけでなく、p第3拡散防止層203cを構成する金属(この例では白金)の拡散を抑制する機能も有している。また、p第3拡散防止層203cは、上述したpボンディング層204を構成する金属(この例では金)の拡散を抑制するだけでなく、p第2拡散防止層203bを構成する金属(この例ではチタン)の拡散を抑制する機能も有している。
【0054】
そして、p第1拡散防止層203aの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲から選ばれる。p第1拡散防止層203aの膜厚が20nm未満の場合には、p金属反射層202(この例では銀合金)とp第3拡散防止層203c(この例では白金)とのバリア性が不十分となり、この例では銀と白金とが反応するおそれがある。また、p第1拡散防止層203aの膜厚が200nmを越える場合には、半導体発光素子1の製造にかかるコストが上昇する。なお、この例において、p第1拡散防止層203aの膜厚は50nmである。
【0055】
また、p第2拡散防止層203bの膜厚は、好ましくは20nm〜500nmから選ばれる。p第2拡散防止層203bの膜厚が20nm未満の場合には、p第2拡散防止層203bとp第3拡散防止層203c(この例では白金)との密着性が低下する懸念がある。さらに、p金属反射層202(この例では銀合金)とp第3拡散防止層203c(この例では白金)とのバリア性が不十分となり、この例では銀と白金が反応するおそれがある。また、p第2拡散防止層203bの膜厚が500nmを越える場合には、半導体発光素子1の製造にかかるコストが上昇する。なお、この例において、p第2拡散防止層203bの膜厚は300nmである。
【0056】
さらに、p第3拡散防止層203cの膜厚は、好ましくは50nm〜200nmの範囲から選ばれる。p第3拡散防止層203cの膜厚が50nm未満の場合には、p第2拡散防止層203b(この例ではチタン)とpボンディング層204(この例では金)とが反応するおそれがある。また、p第3拡散防止層203cの膜厚が200nmを越える場合には、半導体発光素子1の製造にかかるコストが上昇する。なお、この例において、p第3拡散防止層203cの膜厚は100nmである。
【0057】
[pボンディング層]
pボンディング層204は、図3に示したように、p拡散防止層203の上に積層され、且つ、その上には最終的に外部に露出させる一部の領域を除いてp保護密着層205が積層される。なお、pボンディング層204は、透明絶縁層180に形成された貫通孔に倣って、凹凸を有している。
pボンディング層204は、外部と電気的に接続されることによりp電極200に給電を行うために設けられている。ここで、本実施の形態では、p拡散防止層203を介してp金属反射層202とpボンディング層204とを配置することにより、これらp金属反射層202とpボンディング層204が直接には接触しない構造となっている。また、pボンディング層204は、p電極200の構成要素の1つとなっていることから、自身の抵抗が低く且つp拡散防止層203との接触抵抗が低く抑えられるものを用いることが好ましい。なお、pボンディング層204は、p拡散防止層203と同様、発光層150からの光を透過させる機能を基本的に必要としないので、光透過性を有している必要はない。
【0058】
本実施の形態におけるpボンディング層204は、最上位すなわち外部に露出する最表層が金であれば、金属の多層構造を有するものであってもよいし、金の単層構造を有するものであってもよい。なお、本実施の形態では、pボンディング層204として、金の単層膜を採用している。
【0059】
このpボンディング層204の膜厚は、好ましくは100nm〜2μmの範囲から選ばれる。pボンディング層204の膜厚が100nm未満の場合には、ボンディング時における衝撃吸収性が低下する。また、pボンディング層204の膜厚が2μmを越える場合には、半導体発光素子1の製造にかかるコストが上昇する。なお、この例において、pボンディング層204の膜厚は600nmである。
【0060】
[p保護密着層]
p保護密着層205は、図3に示したように、pボンディング層204のうち最終的に外部に露出させる一部の領域を除く部位に積層され、且つ、その上には保護層400が積層される。このp保護密着層205は、これら2つの層を構成する材料の物理的な密着性を高めるために設けられている。
【0061】
本実施の形態のp保護密着層205は、チタンで構成されている。なお、p保護密着層205として、チタンに代えてタンタルを用いてもよい。
【0062】
そして、p保護密着層205の膜厚は、好ましくは5nm〜50nmの範囲から選ばれる。p保護密着層205の膜厚が5nm未満の場合には、pボンディング層204と保護層400との密着性が低下する。また、p保護密着層205の膜厚が50nmを越える場合には、エッチング工程における作業時間が長くなり、半導体発光素子1の製造にかかるコストが上昇する。なお、この例において、p保護密着層205の膜厚は15nmである。
【0063】
また、本実施の形態では、p密着層201、p金属反射層202、p第1拡散防止層203aおよびp第2拡散防止層203bの周囲(側面も含む)を覆うようにp第3拡散防止層203cが積層され、このp第3拡散防止層203cの周囲(側面も含む)を覆うようにpボンディング層204が積層され、さらに、上記一部の領域を除いてこのpボンディング層204の周囲(側面も含む)を覆うようにp保護密着層205が積層されている。そして、上記一部の領域を除いて透明導電層170および透明絶縁層180に対しp電極200の周囲を覆うように、保護層400が積層されている。
【0064】
<n電極>
図4は、本実施の形態の半導体発光素子1におけるn電極300周辺の断面構成の一例を示す図である。ここで、図4は、図2におけるn電極300周辺の断面を拡大したものとなっている。
【0065】
n電極300は、最もn型半導体層140および透明絶縁層180に近い側において、これらn型半導体層140および透明絶縁層180と接するように積層されるn密着層301と、n密着層301に積層されるn金属反射層302と、n金属反射層302に積層されるn拡散防止層303と、n拡散防止層303に積層されるnボンディング層304と、nボンディング層304に積層され、さらにその上に保護層400が積層されるn保護密着層305とを有する。そして、本実施の形態では、n密着層301、n金属反射層302、n拡散防止層303、nボンディング層304およびn保護密着層305によって、複数のn接続導体311を含むn導体部310とnパッド部320とが一体化した、n電極300を構成している。
【0066】
以下、本実施の形態におけるn電極300の各構成を説明する。
[n密着層]
n密着層301は、図4に示したように、透明絶縁層180の上面、透明絶縁層180に設けられた貫通孔の内壁面および各貫通孔を介して露出するn型半導体層140の上面に沿って積層されている。そして、n密着層301の上には、n金属反射層302が積層されている。このn密着層301は、これらn型半導体層140、透明絶縁層180およびn金属反射層302との密着性が良い材料を用いることが好ましい。
【0067】
また、本実施の形態の半導体発光素子1では、発光層150から出力される光のうち、n電極300側に入射してきた光を、透明絶縁層180およびn金属反射層302などを介して基板110側に反射させることから、n密着層301として光透過性に優れた材料を用いることが好ましい。さらにまた、n電極300からn型半導体層140に電流を拡散させるために、n密着層301として、導電性に優れ、面方向における抵抗分布が少なく、しかもn型半導体層140との接触抵抗が低く抑えられたものを用いることが好ましい。
【0068】
これらの点から、n密着層301として透明導電膜を用いることが好ましい。この例では、n密着層301として、導電性を有し且つ極めて薄く形成された金属からなる透光性金属薄膜を用いている。本実施の形態では、n密着層301がチタンで構成されている。ただし、上述したp密着層201と同様に、金属酸化物からなる透明導電膜を用いてもよい。
【0069】
このn密着層301の膜厚は、上述した理由により、好ましくは1nm〜50nmの範囲から選ばれる。n密着層301の膜厚が1nm未満の場合には、n型半導体層140との密着性が悪くなり、接触抵抗が高くなる恐れがある。一方、n密着層301の膜厚が50nmを越える場合には、光透過性が低下するとともに、厚さ方向の抵抗(直列抵抗)が高くなるため、得られる半導体発光素子1における順方向電圧Vfの増加を招く。この例において、n密着層301の膜厚は例えば2nmである。
【0070】
[n金属反射層]
n金属反射層302は、図4に示したように、n密着層301に沿って形成される。したがって、n金属反射層302は、透明絶縁層180に設けられた貫通孔の形状に沿って屈曲した形状を有している。また、n金属反射層302の上には、n拡散防止層303が積層されている。
n金属反射層302は、発光層150から出射され、内部反射等に伴ってn型半導体層140および透明絶縁層180を通過してきた光を、基板110側に向けて反射させるために設けられている。また、n金属反射層302は、n電極300の構成要素の1つとなっていることから、自身の抵抗が低く且つn密着層301との接触抵抗が低く抑えられるものを用いることが好ましい。
【0071】
本実施の形態のn金属反射層302は、アルミニウム、ニッケル、ネオジム、銀などの金属および少なくともこれらのうちの1つを含む合金で構成されている。特に、n金属反射層302としてアルミニウム合金を用いることは、n密着層301を介したn型半導体層140との接触抵抗を低く抑えられる点で好ましい。
【0072】
n金属反射層302としてアルミニウムあるいはアルミニウム合金を用いた場合、n密着層301の材質としては、チタン等の透光性金属薄膜材料を用いることが好ましい。
【0073】
このn金属反射層302の膜厚は、好ましくは80nm〜200nmの範囲から選ばれる。n金属反射層302の膜厚が80nm未満の場合には、n金属反射層302による光反射率が低下する。また、n金属反射層302の膜厚が200nmを超える場合には、半導体発光素子1の製造にかかるコストが上昇してしまう。なお、この例において、n金属反射層302の膜厚は100nmである。
【0074】
[n拡散防止層]
n拡散防止層303は、図4に示したように、n金属反射層302の上に積層され、且つ、その上にはnボンディング層304が積層される。なお、n拡散防止層303は、透明絶縁層180に形成された貫通孔の形状に倣って、凹凸を有している。
n拡散防止層303は、接触状態にあるn金属反射層302を構成する金属(この例ではアルミニウム合金)、および、接触状態にあるnボンディング層304を構成する金属(この例では金(詳細は後述))の拡散を、それぞれ抑制するために設けられている。ここで、本実施の形態では、n拡散防止層303を介してn金属反射層302とnボンディング層304とを配置することにより、これらn金属反射層302およびnボンディング層304が直接には接触しない構造となっている。また、n拡散防止層303は、n電極300の構成要素の1つとなっていることから、自身の抵抗が低く且つn金属反射層302およびnボンディング層304との接触抵抗がそれぞれ低く抑えられるものを用いることが好ましい。なお、n拡散防止層303は、発光層150からの光を透過させる機能を基本的に必要としないので、上述したn密着層301とは異なり、光透過性を有している必要はない。
【0075】
本実施の形態におけるn拡散防止層303は、n金属反射層302に積層されるn第1拡散防止層303aと、n第1拡散防止層303aに積層されるn第2拡散防止層303bと、n第2拡散防止層303bに積層され、さらにその上にnボンディング層304が積層されるn第3拡散防止層303cとを備える。
【0076】
そして、本実施の形態では、n第1拡散防止層303aおよびp第1拡散防止層203a、n第2拡散防止層303bおよびp第2拡散防止層203b、そしてn第3拡散防止層303cおよびp第3拡散防止層203cが、それぞれ、同一材料且つ同一厚さで構成されている。
【0077】
ここで、n第1拡散防止層303aおよびn第2拡散防止層303bは、上述したn金属反射層302を構成する金属(この例ではアルミニウム合金)の拡散を抑制するだけでなく、n第3拡散防止層303cを構成する金属(この例では白金)の拡散を抑制する機能も有している。また、n第3拡散防止層303cは、上述したnボンディング層304を構成する金属(この例では金)の拡散を抑制するだけでなく、n第2拡散防止層303bを構成する金属(この例ではチタン)の拡散を抑制する機能も有している。
【0078】
[nボンディング層]
nボンディング層304は、図4に示したように、n拡散防止層303の上に積層され、且つ、その上には最終的に外部に露出させる一部の領域を除いてn保護密着層305が積層される。なお、nボンディング層304は、透明絶縁層180に形成された貫通孔に倣って、凹凸を有している。
nボンディング層304は、外部と電気的に接続されることによりn電極300に給電を行うために設けられている。ここで、本実施の形態では、n拡散防止層303を介してn金属反射層302とnボンディング層304とを配置することにより、これらn金属反射層302とnボンディング層304が直接には接触しない構造となっている。また、nボンディング層304は、n電極300の構成要素の1つとなっていることから、自身の抵抗が低く且つn拡散防止層303との接触抵抗がそれぞれ低く抑えられるものを用いることが好ましい。なお、nボンディング層304は、n拡散防止層303と同様、発光層150からの光を透過させる機能を基本的に必要としないので、光透過性を有している必要はない。
【0079】
そして、本実施の形態では、nボンディング層304およびpボンディング層204が、同一材料且つ同一厚さで構成されている。
【0080】
[n保護密着層]
n保護密着層305は、図4に示したように、nボンディング層304のうち最終的に外部に露出させる一部の領域を除く部位に積層され、且つ、その上には保護層400が積層される。このn保護密着層305は、これら2つの層を構成する材料の物理的な密着性を高めるために設けられている。
【0081】
そして、本実施の形態では、n保護密着層305およびp保護密着層205が、同一材料且つ同一厚さで構成されている。
【0082】
また、本実施の形態では、n密着層301、n金属反射層302、n第1拡散防止層303aおよびn第2拡散防止層303bの周囲(側面も含む)を覆うようにn第3拡散防止層303cが積層され、このn第3拡散防止層303cの周囲(側面も含む)を覆うようにnボンディング層304が積層され、さらに、上記一部の領域を除いてこのnボンディング層304の周囲(側面も含む)を覆うようにn保護密着層305が積層されている。そして、上記一部の領域を除いてn型半導体層140および透明絶縁層180に対しn電極300の周囲を覆うように、保護層400が積層されている。
【0083】
なお、本実施の形態では、p拡散防止層203およびn拡散防止層303を、それぞれ3層構成としていたが、これらの構成層数については、適宜設計変更して差し支えない。
また、本実施の形態では、後述するようにp電極200の露出部は、はんだ35(図6参照)(Auメッキバンプとも言う。例えば、Auスズはんだが用いられる。)を介してpリード部32(図5参照)と接続される。また、n電極300の露出部は、はんだ35(Auメッキバンプ)を介してnリード部33(図5参照)と接続される。
これにより、半導体発光素子1は、pリード部32およびnリード部33と電気的に接続され、且つ、pリード部32およびnリード部33を介して筐体31(図5参照)に対し機械的に固定されている。このような半導体発光素子1の接続手法は、一般にフリップチップ接続と呼ばれる。フリップチップ接続においては、半導体発光素子1の基板110側が、発光層150よりもリードフレーム(pリード部32、nリード部33)から遠い側に配置されることになる。
【0084】
(半導体発光素子の製造方法)
続いて、上述した半導体発光素子1の製造方法の一例について説明する。
図1および図2等に示す半導体発光素子1の製造にあたっては、まず、基板110の一方の面に、中間層120、下地層130、n型半導体層140、発光層150、p型半導体層160および透明導電層170を、公知の成膜方法にて順次積層する。続いて、積層された透明導電層170、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140に対し、一部領域(この例では上方からみたときの四隅のうちの1つの領域)を公知のリソグラフィー方法および公知のエッチング方法により除去することで、n型半導体層140の上面140cを露出させる。それから、透明導電層170の上やn型半導体層140の上面140cの上などを覆うように、公知の成膜方法により透明絶縁層180を積層した後、公知のリソグラフィー方法および公知のエッチング方法により、透明絶縁層180に複数の貫通孔を形成する。
【0085】
そして、透明導電層170上の透明絶縁層180の上にp電極200を形成するとともに、n型半導体層140上にn電極300を形成する。ここで、p電極200の形成においては、まず、透明絶縁層180に形成された複数の貫通孔を介して外部に露出する透明導電層170および透明絶縁層180の上に、公知の成膜手法にてp密着層201を積層した後、さらに、p金属反射層202、p拡散防止層203(p第1拡散防止層203a、p第2拡散防止層203bおよびp第3拡散防止層203c)、pボンディング層204およびp保護密着層205を、公知の成膜手法にて積層する。一方、n電極300の形成においては、まず、透明絶縁層180に形成された複数の貫通孔を介して外部に露出するn型半導体層140および透明絶縁層180の上に、公知の成膜手法にてn密着層301を積層した後、さらに、n金属反射層302、n拡散防止層303(n第1拡散防止層303a、n第2拡散防止層303bおよびn第3拡散防止層303c)、nボンディング層304およびn保護密着層305を、公知の成膜手法にて積層する。なお、本実施の形態では、p電極200におけるp拡散防止層203、pボンディング層204およびp保護密着層205と、n電極300におけるn拡散防止層303、nボンディング層304およびn保護密着層305とが、それぞれ同じ構成を有している。このため、p電極200を構成するp密着層201およびp金属反射層202の積層と、n電極300を構成するn密着層301およびn金属反射層302の積層とを別工程で行った後、p拡散防止層203およびn拡散防止層303の積層と、pボンディング層204およびnボンディング層304の積層と、p保護密着層205およびn保護密着層305の積層とを、それぞれ同一工程で行うことができる。
【0086】
その後、p電極200およびn電極300を含む半導体発光素子1の上面を覆うように、公知の成膜方法を用いて保護層400を積層する。それから、p電極200上に位置する保護層400のほぼ中央部およびその直下に位置するp保護密着層205と、n電極300上に位置する保護層400のほぼ中央部およびその直下に位置するn保護密着層305とを、公知のリソグラフィー技術および公知のエッチング手法を用いて除去することで、p電極200におけるpボンディング層204の一部領域を外部に露出させ、n電極300におけるnボンディング層304の一部領域を外部に露出させる。
以上により、半導体発光素子1が得られる。
【0087】
図5は、上述した半導体発光素子1を搭載した発光装置30の構成の一例を示す図である。ここで、図5(a)は発光装置30の上面図を示しており、図5(b)は図5(a)のVB−VB断面図である。なお、図5に示す発光装置30は、「発光チップ」あるいは「ランプ」と呼ばれることもある。
【0088】
この発光装置30は、一方の側に凹部31aが形成された筐体31と、筐体31に形成されたリードフレームからなるpリード部32およびnリード部33と、凹部31aの底面に取り付けられた半導体発光素子1と、凹部31aを覆うように設けられた封止部34とを備えている。なお、図5(a)においては、封止部34の記載を省略している。
【0089】
筐体31は、pリード部32およびnリード部33を含む金属リード部に、白色の熱可塑性樹脂を射出成型することによって形成されている。
【0090】
pリード部32およびnリード部33は、0.1〜0.5mm程度の厚みをもつ金属板であり、加工性、熱伝導性に優れた金属として例えば鉄/銅合金をベースとし、その上にめっき層としてニッケル、チタン、金、銀などを数μm積層して構成されている。そして、本実施の形態では、pリード部32およびnリード部33の一部が、凹部31aの底面に露出するようになっている。また、pリード部32およびnリード部33の一端部側は筐体31の外側に露出し、且つ、筐体31の外壁面から裏面側に折り曲げられている。
【0091】
また、半導体発光素子1は、凹部31aに、pリード部32とnリード部33とに跨って取り付けられている。なお、pリード部32およびnリード部33に対する半導体発光素子1の取り付け手法の詳細については後述する。
【0092】
そして、封止部34は、可視領域の波長において光透過率が高く、また屈折率が高い透明樹脂にて構成される。封止部34を構成する耐熱性、耐候性、及び機械的強度が高い特性を満たす樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やシリコン樹脂を用いることができる。そして、本実施の形態では、封止部34を構成する透明樹脂に、半導体発光素子1から出射される光の一部を、緑色光および赤色光に変換する蛍光体を含有させている。なお、このような蛍光体に代えて、青色光の一部を黄色光に変換する蛍光体、あるいは、青色光の一部を黄色光および赤色光に変換する蛍光体を含有させるようにしてもよい。
【0093】
なお、本実施の形態の発光装置30を組み込んだバックライト、携帯電話機、ディスプレイ、各種パネル類、コンピュータ、ゲーム機、照明などの電子機器や、それらの電子機器を組み込んだ自動車などの機械装置は、優れた発光特性を有する半導体発光素子1を備えたものとなる。特に、バックライト、携帯電話機、ディスプレイ、ゲーム機、照明などのバッテリ駆動させる電子機器において、優れた発光特性を有する半導体発光素子1を具備した優れた製品を提供することができ、好ましい。また、半導体発光素子1を備えた発光装置30の構成は、図5に示すものに限られるわけではなく、例えば砲弾型と呼ばれるパッケージ構成を採用したものであってもよい。
【0094】
図6は、図5に示す発光装置30における半導体発光素子1の実装状態の一例を示す図である。ただし、図6においては、発光装置30に設けられる筐体31および封止部34の記載を省略している。
【0095】
本実施の形態では、図2に示す半導体発光素子1の上下を反転させることで、半導体発光素子1に設けられたp電極200における露出部をpリード部32に対向させ、且つ、半導体発光素子1に設けられたn電極300における露出部をnリード部33に対向させている。そして、pリード部32とp電極200における露出部とをはんだ35にて接続し、且つ、nリード部33とn電極300における露出部とをはんだ35にて接続している。これにより、半導体発光素子1は、pリード部32およびnリード部33と電気的に接続され、且つ、pリード部32およびnリード部33を介して筐体31(図5参照)に対し機械的に固定されている。このような半導体発光素子1の接続手法は、一般にフリップチップ接続と呼ばれる。フリップチップ接続においては、半導体発光素子1の基板110側が、発光層150よりも遠い側に配置されることになる。
【0096】
では、図5に示す発光装置30による発光動作を、図1〜図6を参照しつつ説明する。
発光装置30に設けられたpリード部32およびnリード部33を介して、半導体発光素子1にpリード部32からnリード部33に向かう電流を流すと、半導体発光素子1では、p電極200から透明導電層170、p型半導体層160、発光層150、n型半導体層140を介してn電極300に向かう電流が流れる。その結果、発光層150が例えば青色の光を出力する。このとき、発光層150から出力される光は、主として、基板110側と、p電極200側とに向かう。
【0097】
ここで、本実施の形態では、半導体発光素子1に透明絶縁層180が設けられているが、透明絶縁層180に設けられた複数の貫通孔を介して、p電極200(より具体的には複数のp接続導体211)と透明導電層170とが導通し、且つ、n電極300(より具体的には複数のn接続導体311)とn型半導体層140とが導通することで、発光層150に対する給電が行われる。
【0098】
続いて、半導体発光素子1における、発光層150から出力された光の挙動について説明する。
発光層150から出射される光のうち基板110側に向かう光の大部分は、n型半導体層140、下地層130、中間層120および基板110を通過し、半導体発光素子1の外部(図6における上方)に出射される。しかしながら、基板110側に向かう光の一部は、例えば中間層120と基板110との境界部において中間層120および基板110の屈折率差によって反射し、発光層150側に戻ってくる。
【0099】
また、発光層150から出射される光のうち基板110とは反対側に向かう光および基板110側から戻ってきた光の一部は、p型半導体層160を介して、透明導電層170との境界部に到達する。そして、この境界部に到達した光の一部は、p型半導体層160および透明導電層170の屈折率差によって反射し、p型半導体層160側へと向かう。また、p型半導体層160と透明導電層170との境界部を通過した光は、透明導電層170を介して、p電極200が設けられている側の透明絶縁層180との境界部(透明絶縁層180のうち貫通孔が形成されていない部位)に到達する。そして、この境界部に到達した光の一部は、透明導電層170および透明絶縁層180の屈折率差によって反射し、透明導電層170を介してp型半導体層160側へと向かう。さらにまた、透明導電層170と透明絶縁層180との境界部を通過した光は、透明絶縁層180を介してp電極200との境界部に到達する。そして、この境界部に到達した光は、p電極200に設けられたp金属反射層202(図3参照)によって反射し、透明絶縁層180および透明導電層170を介してp型半導体層160側へと向かう。
【0100】
一方、発光層150から出射される光のうち基板110とは反対側に向かう光および基板110側から戻ってきた光の一部は、p型半導体層160および透明導電層170を介して、p電極200との境界部(透明絶縁層180に貫通孔が形成されている部位)に到達する。そして、この境界部に到達した光は、p電極200に設けられたp金属反射層202によって反射し、透明導電層170を介してp型半導体層160側へと向かう。
【0101】
このようにしてp電極200側で反射した光は、発光層150、n型半導体層140、下地層130、中間層120および基板110をさらに通過し、半導体発光素子1の外部(図6における上方)に出射される。
【0102】
これに対し、基板110側から戻ってきた光の一部は、n型半導体層140を介して、n電極300が設けられている側の透明絶縁層180との境界部(透明絶縁層180のうち貫通孔が形成されていない部位)に到達する。そして、この境界部に到達した光の一部は、n型半導体層140および透明絶縁層180の屈折率差によって反射し、n型半導体層140を介して下地層130側へと向かう。また、n型半導体層140と透明絶縁層180との境界部を通過した光は、透明絶縁層180を介してn電極300との境界部に到達する。そして、この境界部に到達した光は、n電極300に設けられたn金属反射層302によって反射し、透明絶縁層180およびn型半導体層140を介して下地層130側へと向かう。
【0103】
一方、基板110側から戻ってきた光の一部は、n型半導体層140を介して、n電極300との境界部(透明絶縁層180に貫通孔が形成されている部位)に到達する。そして、この境界部に到達した光は、n電極300に設けられたn金属反射層302によって反射し、n型半導体層140を介して下地層130側へと向かう。
【0104】
このようにしてn電極300側で反射した光は、中間層120および基板110をさらに通過し、半導体発光素子1の外部(図6における上方)に出射される。
【0105】
その後、半導体発光素子1から出力された光(青色光)は、封止部34内すなわち凹部31a内を進行し、直接あるいは凹部の31aの内壁(底面や壁面)で反射した後に、封止部34の上部側に設けられた出射面から外部に出射される。但し、出射面に向かう光の一部は、出射面で反射し、再び封止部34内を進行する。この間、封止部34内において、青色光の一部は蛍光体によって緑色光および赤色光に変換され、変換された緑色光および赤色光は、直接あるいは底面や壁面で反射した後、青色光と共に出射面から外部に出射される。したがって、発光装置30からは、青色光、緑色光および赤色光を含む白色光が出射されることになる。
【0106】
本実施の形態では、半導体発光素子1に、透明絶縁層180と隣接する他の層(p電極200においては透明導電層170、n電極300においてはn型半導体層140)との屈折率差を利用した光の反射構造を設けるとともに、透明絶縁層180の上にさらに金属反射層(p電極200においてはp金属反射層202、n電極300においてはn金属反射層302)を設けるようにした。これにより、半導体発光素子1をフリップチップ実装した場合に、目的とする光の取り出し方向(発光層150から基板110側に向かう方向)と反対側に出力される光を、より多く基板110側に向けて反射させることが可能となり、結果として、半導体発光素子1からの光の取り出し効率を向上させることができる。
【0107】
続いて、透明導電層170の膜厚である第1膜厚t1を上述した式(2)の範囲とし、透明絶縁層180の膜厚である第2膜厚t2を上述した式(4)の範囲とする理由について説明する。
【0108】
図7は、透明導電層170の第1膜厚t1および透明絶縁層180の第2膜厚t2を変化させた場合における、半導体発光素子1の光の出力Poを測定した結果を表した図である。図7のグラフでは、縦軸は、半導体発光素子1の光の出力Po(mW)を表し、横軸は、透明絶縁層180の第2膜厚t2(nm)を表している。そして、図7のグラフは、透明導電層170の第1膜厚t1(nm)が2Q、3Q、4Q、5Qであるそれぞれの場合について、第2膜厚t2を変化させた場合の半導体発光素子1の光の出力Poを表している。
なお、図7(a)は、半導体発光素子1に20mAの電流を供給した場合の光の出力Poを表し、図7(b)は、半導体発光素子1に80mAの電流を供給した場合の光の出力Poを表している。
【0109】
本測定では、上段で説明した、p型半導体層160上に透明導電層170、透明絶縁層180およびp金属反射層202が積層された積層構造を備える半導体発光素子1、および、この積層構造における透明絶縁層180を備えていない(第2膜厚t2=0Q)半導体発光素子1を用いた。
【0110】
本測定に使用した半導体発光素子1の発光層150から出射される発光波長λは、450nmである。
また、半導体発光素子1の透明導電層170としては、IZOを用いている。波長450nmの光に対するIZOの屈折率は、第1屈折率n1=2.1である。したがって、Q=53nmであり、本測定においては、透明導電層170の第1膜厚t1を、2Q≒100nm、3Q≒150nm、4Q≒200nm、5Q≒250nmとしている。
さらに、半導体発光素子1の透明絶縁層180としては、SiOを用いている。波長450nmの光に対するSiOの屈折率は、第2屈折率n2=1.45である。したがって、Q=77nmであり、本測定においては、透明絶縁層180の第2膜厚t2を、2Q≒152nm、3Q≒228nm、4Q≒304nm、5Q≒380nm、6Q≒456nm、7Q≒532nmとしている。
【0111】
続いて、測定結果について説明する。
まず、半導体発光素子1が透明絶縁層180を備えない場合(第2膜厚t2=0Q)と、半導体発光素子1が透明絶縁層180を備える場合(第2膜厚t2=2Q〜7Q)とを比較する。
図7(a)および(b)に示されるように、半導体発光素子1が透明絶縁層180を備えない場合と比較して、半導体発光素子1が透明絶縁層180を備える場合の方が、半導体発光素子1の光の出力Poが増加している。
したがって、半導体発光素子1が、p型半導体層160上に透明導電層170、透明絶縁層180およびp金属反射層202が積層された積層構造を備えることで、この積層構造を有さない場合と比較して、半導体発光素子1の光の出力Poが増加することが分かった。
【0112】
次に、半導体発光素子1が透明絶縁層180を備える場合において、透明絶縁層180の第2膜厚t2を変化させた場合について検討する。
なお、以下では、第2膜厚t2がQの正の偶数倍であることを第2膜厚t2が偶数Qであるといい、第2膜厚t2がQの正の奇数倍であることを第2膜厚t2が奇数Qであるということがある。同様に、第1膜厚t1がQの正の偶数倍であることを第1膜厚t1が偶数Qであるといい、第1膜厚t1がQの正の奇数倍であることを第1膜厚t1が奇数Qであるということがある。
【0113】
図7(a)および(b)に示されるように、透明絶縁層180の第2膜厚t2が奇数Qである場合(t2=3Q、5Q、7Q…)に、第2膜厚t2が偶数Qである場合(t2=2Q、4Q、6Q…)と比較して、半導体発光素子1の光の出力Poが上昇していることが分かる。
【0114】
これは以下の理由によるものと考えられる。
第2膜厚t2が奇数Qである場合には、p型半導体層160側から入射し、透明導電層170および透明絶縁層180の界面において反射した反射光と、透明絶縁層180およびp金属反射層202の界面において反射した反射光とが、互いに強め合う。これにより、第2膜厚t2が奇数Qである場合には、結果として半導体発光素子1の光の出力Poを増加させるものと考えられる。
一方、第2膜厚t2が偶数Qである場合には、これらの光が互いに弱め合うことから、第2膜厚t2が奇数Qである場合と比較して、半導体発光素子1の光の出力Poが低下するものと考えられる。
【0115】
以上より、半導体発光素子1が、p型半導体層160上に透明導電層170、透明絶縁層180およびp金属反射層202が積層された積層構造を備える場合においては、透明絶縁層180の第2膜厚t2を奇数Qとすることで、半導体発光素子1の光の出力Poを向上させることが可能になる。
【0116】
続いて、半導体発光素子1が透明絶縁層180を備え、且つ、透明絶縁層180の第2膜厚t2が奇数Qである場合において、透明導電層170の第1膜厚t1を変化させた場合について検討する。
図7(a)および(b)に示されるように、第2膜厚t2が奇数Qである場合において、透明導電層170の第1膜厚t1が偶数Qである場合(t1=2Q、4Q…)に、第1膜厚t1が奇数Qである場合(t1=3Q、5Q…)と比較して、半導体発光素子1の光の出力Poが上昇していることが分かる。
【0117】
これは以下の理由によるものと考えられる。
第2膜厚t2が奇数Qであり、且つ、第1膜厚t1が偶数Qである場合には、上述したように、透明導電層170および透明絶縁層180の界面において反射した反射光と、透明絶縁層180およびp金属反射層202の界面において反射した反射光とが強め合うのに加えて、これらの光とp型半導体層160および透明導電層170の界面において反射した反射光とが互いに強め合うことになる。したがって、第2膜厚t2が奇数Qであり、且つ、第1膜厚t1が偶数Qである場合には、結果として半導体発光素子1の光の出力Poが増加するものと考えられる。
【0118】
一方、第2膜厚t2が奇数Qであり、且つ、第1膜厚t1が奇数Qである場合には、透明導電層170および透明絶縁層180の界面において反射した反射光と、透明絶縁層180およびp金属反射層202の界面において反射した反射光とが強め合う一方で、これらの光とp型半導体層160および透明導電層170の界面において反射した反射光とが互いに弱め合うことになる。
したがって、第2膜厚t2が奇数Qであり、且つ、第1膜厚t1が奇数Qである場合には、第2膜厚t2が奇数Qであり、且つ、第1膜厚t1が偶数Qである場合と比較して、半導体発光素子1の光の出力Poが低下するものと考えられる。
【0119】
以上より、p型半導体層160上に、透明導電層170、透明絶縁層180およびp金属反射層202が積層された積層構造を有する場合に、透明絶縁層180の第2膜厚t2を奇数Qとし、且つ、透明導電層170の第1膜厚t1を偶数Qとすることで、本構成を有さない場合と比較して、半導体発光素子1の光の出力Poを向上させることが可能になる。
【0120】
ここで、本実施の形態において、第2膜厚t2が奇数Qである範囲とは、図7(a)および(b)において半導体発光素子1の光の出力Poが増加している第2膜厚t2の範囲、すなわち、図7(a)および(b)において、グラフが上に凸になっている第2膜厚t2の範囲をいう。したがって、本実施の形態において、第2膜厚t2が奇数Qであるとは、第2膜厚t2が上記式(4)の範囲内にあることをいう。
さらに、図7(a)および(b)の結果から、半導体発光素子1の光の出力Poがより増加している点で、第2膜厚t2が(B−0.4)×Q≦ t2 ≦(B+0.4)×Qの関係を有していることが好ましく、また(B−0.3)×Q≦ t2 ≦(B+0.3)×Qの関係を有していることがより好ましい。
【0121】
同様に、本実施の形態において、第1膜厚t1が偶数Qであるとは、第1膜厚t1が上記式(2)の範囲内にあることをいう。
さらに、第1膜厚t1が(A−0.4)×Q≦ t1 ≦(A+0.4)×Qの関係を有していることが好ましく、また(A−0.3)×Q≦ t1 ≦(A+0.3)×Qの関係を有していることがより好ましい。
【0122】
さらに同様に、p密着層201が透明導電層170と同一の材料から構成される場合には、第1膜厚t1およびp密着層201の膜厚である第3膜厚t3の総和は、上記式(5)の範囲で設定されることが好ましい。さらに、第1膜厚t1および第3膜厚t3の総和は、(A−0.4)×Q≦(t1+t3)≦(A+0.4)×Qの関係を有していることがより好ましく、また(A−0.3)×Q≦(t1+t3)≦(A+0.3)×Qの関係を有していることがより望ましい。
【0123】
また、本実施の形態において、透明導電層170としてIZOの他に、IZOの屈折率に近い、Inを含む導電性の酸化物、特にITOも同様に使用することができる。
また、本実施の形態において、透明絶縁層180として、二酸化ケイ素の屈折率に近いMgF2、CaF2、Al23を同様に使用することができる。
【0124】
以上より、透明導電層170の第1膜厚t1を上記式(2)の範囲とし、且つ、透明絶縁層180の第2膜厚t2を上記式(4)の範囲とすることで、半導体発光素子1の光の出力Poが増加し、半導体発光素子1の光取り出し効率を向上させることが可能になる。
換言すれば、本発明では、透明導電層170の膜厚を第1膜厚t1、透明絶縁層180の膜厚を第2膜厚t2、第1屈折率をn1、第2屈折率をn2、発光層150から出射される光の波長をλとし、Aを正の偶数、Bを正の奇数とした場合に、第1膜厚t1が、(λ/4n1)×(A−0.5)≦ t1 ≦(λ/4n1)×(A+0.5)の関係を有し、第2膜厚t2が、(λ/4n2)×(B−0.5)≦ t2 ≦(λ/4n2)×(B+0.5)の関係を有することで、半導体発光素子1の光取り出し効率を向上させる方法を提供することができる。
【0125】
なお、本実施の形態では、透明導電層170上およびn型半導体層140上の双方に、複数の貫通孔を形成した透明絶縁層180を設けていたが、これに限られるものではなく、透明絶縁層180は、少なくとも透明導電層170上に設けられていれば良い。
【0126】
また、本実施の形態では、透明導電層170およびn型半導体層140の上に積層される透明絶縁層180において、上方から見た場合にそれぞれが円形状を有するように複数の貫通孔を形成した(図1参照)が、貫通孔の形状はこれに限られない。例えば、上方から見た形状が多角形や楕円形状等であってもよい。
さらに、本実施の形態では、透明絶縁層180に設けられる複数の貫通孔は、透明導電層170に近づくにつれてその直径が減少する所謂テーパ状の断面を有するように形成したが、これに限られるものではない。例えば、貫通孔の形状は、透明絶縁層180の厚さ方向によってその直径が変化しない、円柱形状や多角柱形状等であってもよい。
【0127】
さらにまた、本実施の形態においては、透明絶縁層180に複数の貫通孔を設け、複数の貫通孔を介して、p電極200(より具体的には複数のp接続導体211)と透明導電層170とが導通し、且つ、n電極300(より具体的には複数のn接続導体311)とn型半導体層140とが導通することで、発光層150に対して給電を行っていた。しかし、発光層150に対して給電を行うことができる形態であれば、透明絶縁層180に複数の貫通孔を設けなくても良い。例えば、透明導電層170およびn型半導体層140の上面140c上に、複数の柱状の透明絶縁層180を形成し、柱状の透明絶縁層180が形成されていない透明導電層170およびn型半導体層140を介して給電を行っても良い。
【0128】
また、本実施の形態では、フリップチップ接続される半導体発光素子1について説明したが、発光層150に対して、透明導電層170および透明絶縁層180が形成される側とは反対側に光を取り出す態様であれば、フリップチップ実装に限られず、他の実装方法を用いてもよい。
【0129】
さらにまた、本実施の形態においては、積層半導体層100としてIII族窒化物半導体からなる半導体層を有する半導体発光素子1を例として挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限られない。本発明は、例えば、他のIII−V族化合物半導体やII−VI族化合物半導体等、あらゆる化合物半導体に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0130】
1…半導体発光素子、100…積層半導体層、110…基板、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、150…発光層、160…p型半導体層、170…透明導電層、180…透明絶縁層、200…p電極、201…p密着層、202…p金属反射層、203…p拡散防止層、204…pボンディング層、205…p保護密着層、210…p導体部、211…p接続導体、220…pパッド部、300…n電極、301…n密着層、302…n金属反射層、303…n拡散防止層、304…nボンディング層、305…n保護密着層、310…n導体部、311…n接続導体、320…nパッド部、400…保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型を有する化合物半導体で構成される第1半導体層と、
前記第1半導体層に積層され、通電により発光する発光層と、
前記第1導電型とは異なる第2導電型を有する化合物半導体で構成され、前記発光層に積層される第2半導体層と、
前記発光層から出射される光に対する透過性および導電性を備えるとともに第1屈折率を有する材料で構成され、前記第2半導体層に積層される透明導電層と、
前記発光層から出射される光に対する透過性および絶縁性を備えるとともに前記第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する材料で構成され、厚さ方向に貫通する貫通孔を有するとともに前記透明導電層に積層される透明絶縁層と、
前記第1半導体層と電気的に接続される第1電極と、
前記発光層から出射される光に対する反射性および導電性を有する金属材料で構成され、前記貫通孔を介して露出する前記透明導電層および前記透明絶縁層を覆うように積層される金属反射層を有する第2電極と
を備え、
前記透明導電層の膜厚を第1膜厚t1、前記透明絶縁層の膜厚を第2膜厚t2、前記第1屈折率をn1、前記第2屈折率をn2、前記発光層から出射される光の波長をλとし、Aを正の偶数、Bを正の奇数とした場合に、
前記第1膜厚t1は、
(λ/4n1)×(A−0.5)≦ t1 ≦(λ/4n1)×(A+0.5)
の関係を有し、
前記第2膜厚t2は、
(λ/4n2)×(B−0.5)≦ t2 ≦(λ/4n2)×(B+0.5)
の関係を有していることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記透明導電層と同一の材料から構成され、前記透明絶縁層および当該透明絶縁層に形成された前記貫通孔を介して露出する当該透明導電層の上に積層される密着層をさらに備え、
前記密着層の膜厚を第3膜厚t3としたとき、前記第1膜厚t1および当該第3膜厚t3の総和は、
(λ/4n1)×(A−0.5)≦(t1+t3)≦(λ/4n1)×(A+0.5)
の関係を有していることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1半導体層は、電子をキャリアとするIII−V族化合物半導体で構成され、
前記第2半導体層は、正孔をキャリアとするIII−V族化合物半導体で構成されることを特徴とする請求項1または2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1半導体層および前記第2半導体層は、III族窒化物半導体で構成されることを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記透明導電層は、IZO(Indium Zinc Oxide) またはITO(Indium tin Oxide)から構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記透明絶縁層は、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム及び酸化アルミニウムからなる群から選ばれた一種の材料から構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記金属反射層は、銀または銀を含む合金から構成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の半導体発光素子。
【請求項8】
第1導電型を有する化合物半導体で構成され、外部からの給電に用いられる第1半導体層と、
前記第1半導体層に積層され、通電により発光する発光層と、
前記第1導電型とは異なる第2導電型を有する化合物半導体で構成され、前記発光層に積層される第2半導体層と、
前記第2半導体層に積層され、前記発光層から出射される光に対する透過性および導電性を備えるとともに第1屈折率を有する材料で構成され、前記第1半導体層とともに外部からの給電に用いられる透明導電層と、
前記発光層から出射される光に対する透過性および絶縁性を備えるとともに前記第1屈折率よりも低い第2屈折率を有する材料で構成され、前記透明導電層に積層される透明絶縁層と、
前記発光層から出射される光に対する反射性を有する材料で構成され、前記透明絶縁層に積層される反射層とを備え、
前記透明導電層の膜厚を第1膜厚t1、前記透明絶縁層の膜厚を第2膜厚t2、前記第1屈折率をn1、前記第2屈折率をn2、前記発光層から出射される光の波長をλとし、Aを正の偶数、Bを正の奇数とした場合に、
前記第1膜厚t1は、
(λ/4n1)×(A−0.5)≦ t1 ≦(λ/4n1)×(A+0.5)
の関係を有し、
前記第2膜厚t2は、
(λ/4n2)×(B−0.5)≦ t2 ≦(λ/4n2)×(B+0.5)
の関係を有していることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項9】
前記反射層は、導電性を備える材料で構成され、前記透明導電層と電気的に接続されることを特徴とする請求項8記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記透明絶縁層は、厚さ方向に貫通する貫通孔を複数有し、
前記反射層は、複数の前記貫通孔を介して前記透明導電層と電気的に接続されることを特徴とする請求項9記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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