説明

半導体発振回路および携帯電話

【課題】基準周波数生成回路は、ロジック回路の電源ノイズの影響を受けて、周波数偏差やピリオドジッターの悪化を引き起こしていた。
【解決手段】CPUや周辺回路などのロジック回路12の電源はレギュレータ13より供給し、基準周波数生成回路11の電源には電源の高周波ノイズを10dB以上の減衰量を持つローパスフィルター10を介してから供給する。これによりロジック回路12で発生する高周波ノイズ起因での周波数偏差やジッターの悪化を抑えることができ、この基準周波数をUARTシリアル回路に接続して通信ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコンに搭載する基準クロックを生成する基準周波数生成回路を有する半導体発振回路に係り、さらに詳しくは、基準周波数生成回路におけるノイズ対策、量産課題対策に対応した半導体発振回路と、これを用いた携帯電話に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイコンは基準周波数生成回路を内蔵し、その基準周波数に基づいてCPUや周辺回路のロジックを動作させている。その基準周波数生成回路は一例として特許文献1に開示されている。
【0003】
図9は、従来における基準周波数生成回路の搭載の一例である。
【0004】
マイコン内部には基準電源を発生するレギュレータ13があり、電源電位101と接地電位201を発生する。また、外部または内部のクロックに同期して動作するCPUや周辺回路などのロジック回路12と、基準周波数生成回路11を備える。
【0005】
電源電位101はパッド103がワイヤー104を介して半導体端子105と接続され、外部で安定化容量14に接続される。また、接地電位201はパッド203がワイヤー204を介して半導体端子205と接続され、外部で安定化容量14に接続される。
【0006】
この安定化容量14はバイパスコンデンサの役割を果たし、電源電位と接地電位の安定化を目的としている。しかしながら、パッド、ワイヤー、半導体端子には抵抗成分やインダクタ成分が含まれるため、電源電位101の安定を十分に行うことができない。
【0007】
ロジック回路12はクロック100と同期して動作する。そのため、クロック100の変化点でロジック回路12に電流が流れ、電源電圧降下を引き起こす。そのためロジック回路12の電源の電源電位101は図10の2段目のようになり、クロック100に同期して電源に高周波の電源ノイズを発生する。この高周波の電源ノイズの大きさはロジック動作によって変わるため、毎回同じ大きさではなくランダムな大きさの高周波の電源ノイズとなっている。
【0008】
基準周波数生成回路11の電源はロジック回路12の電源と共有しているため、この高周波の電源ノイズは基準周波数生成回路11に回り込んでおり、周波数偏差やジッターの悪化を引き起こしていた。
【0009】
次に、経時劣化について考える。
【0010】
基準周波数生成回路11には常に電源が与えられており、時間の経過とともにMOSトランジスタのIds特性が図11に示すように変動する。そのためMOSトランジスタの経時劣化によって基準周波数が変化していた。基準周波数生成回路11はモード信号110によって制御される2つのモードを持ち、動作時と停止時を持つ。この経時劣化は停止時のときに顕著であり、この対策には内部回路に多くの付加回路必要としている。
【0011】
次に、温度特性の補正について考える。
【0012】
温度補正において、温度勾配の違う2種類の抵抗をブレンドすることで、あたかも温度勾配のない抵抗に見せることは特許文献2にも示すようによく知られている。しかしながら、わざとその温度勾配の直線性を利用して他の回路の特性を補完する場合、MOSトランジスタのON抵抗は低いインピーダンスでないと、MOSトランジスタのON抵抗の温度特性が増幅されて補完される回路の特性を阻害してしまうことが多かった。
【0013】
図12に従来のリファレンス電位発生回路を示す。
【0014】
電源電位に第1の温度勾配を示す抵抗30b、31b、32bが直列接続され、さらに、第2の温度勾配を示す抵抗61b、62b、71b、72b、73b、81bが直列に接続され、最終端は接地電位に接続される。リファレンス電位Vref91bは抵抗61bと62bの間から取り出している。また、抵抗31bと並列にMOSトランジスタ41bのソースとドレインが接続され、ゲートにはトリミングの値が入力される。以下同様に抵抗32bに並列にMOSトランジスタ42b、71bに44b、72bに45b、73bに46bが接続されている。
【0015】
トリミング値はTADJ4,5に与えられ、第1の温度勾配を示すブレンド量が最大の場合はTADJ4、TADJ5ともOFFになるように制御される。逆に第1の温度勾配を示すブレンド量が最小の場合はTADJ4、TADJ5ともONになるように制御され、抵抗31b、32bはバイパスされる。すなわち、ブレンド量により、MOSトランジスタを通過する個数が最小0個と最大2個と差があり、この個数差の影響を防ぐため、MOSトランジスタのON抵抗を低くする必要があった。MOSトランジスタ44b、45b,46bにおいてINIADJ4〜6もMOSトランジスタを通過する個数については全く同様の論理であるので、MOSトランジスタの抵抗を低くする必要がある。
【特許文献1】特願2008−204721号
【特許文献2】米国特許第5889441号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、図9において基準周波数生成回路11は、前記ロジック回路12の電源ノイズの影響を受けて、周波数偏差やジッターの悪化を引き起こしていた。ジッターの影響の例を図13に示す。基準周波数に対して1/2以上の電源ノイズがジッターを急激に悪化させていることがわかる。
【0017】
このため、図14に示すように、周波数精度を確保するためには、基準周波数生成回路11に独立したレギュレータ13aが必要であり、また、そのレギュレータ13aを安定化させる安定化容量16が必要となり半導体装置の面積増大、コスト増を招いていた。
【0018】
さらに、経時劣化においては、停止時の劣化を回避するために回路内部の付加回路の面積増大と付加回路のリークや温度特性により基準周波数生成回路11そのものの特性を悪化させるという問題を抱えていた。
【0019】
また、リファレンス電位の発生においては、トリミングの値によってMOSトランジスタのON抵抗が積算され、期待するリファレンス電圧に無視できない誤差が発生し、このON抵抗は温度が高いほどON抵抗が増大するため、特に高温時での特性劣化を招く結果となっていた。
【0020】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するものであり、基準周波数生成回路の電源ノイズ、経時劣化、プロセスばらつきを抑制し高精度な基準周波数生成回路を備えた半導体発振回路と、これを用いた携帯電話を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の目的を達成するために、本発明に係る半導体発振回路は、外部または内部のクロックに同期して動作するCPUや周辺回路などのロジック回路の電源はレギュレータより供給し、基準周波数生成回路の電源には電源の高周波ノイズを低減するフィルター回路(ローパスフィルター)を介してから供給する。これによりロジック回路で発生する高周波ノイズで周波数偏差やジッターの悪化を抑えることができる。
【0022】
前記ローパスフィルターの入力電源電位と出力電源電位の間には抵抗とMOSトランジスタによるスイッチを含み、基準周波数生成回路が動作時にはMOSトランジスタが導通状態であり、停止時にはMOSトランジスタが遮断状態にすることにより、停止時のときに顕著である経時劣化を防止することができる。そのため、従来必要であった内部回路対策の付加回路は不要となり、面積削減によるコスト削減効果がある。
【0023】
また、前記付加回路のリークや温度特性により基準周波数生成回路そのものの特性を悪化させるという問題を回避できる。また、MOSトランジスタのON抵抗を前記抵抗の一部、または、すべてと兼用することで抵抗とMOSトランジスタの面積削減によるコスト削減効果がある。
【0024】
特許文献1に記載の内部回路の温度周波数特性は図15に示すとおり、直線性があることに特徴がある。そのため、基準周波数生成回路は電源電位と接地電位を抵抗分割することによって、リファレンス電位を生成するリファレンス電位生成回路を備え、MOSトランジスタのスイッチによって抵抗の組合せを変えることでリファレンス電位を図16に示すように直線性を持って可変する。これにより、リファレンス電位と周波数の特性は図17に示すようになり、基準周波数生成回路の温度特性を図18のように温度に依存しない周波数出力が可能となる。
【0025】
また、リファレンス電位生成回路の電源電位と接地電位間に直列に接続されているMOSトランジスタのスイッチの数は、リファレンス電位を可変したときにも同じ数にすることで、従来、数が違っても同じ抵抗値にするためにMOSトランジスタのON抵抗は低いインピーダンスが必要であったが、ON抵抗が高くても問題が少なくなり、MOSトランジスタの面積を縮小することができる。
【0026】
また、リファレンス電位生成回路の電源電位と接地電位間に直列に接続されている第1の抵抗と第2の抵抗のうち抵抗部分のブレンド量の調整において、ブレンド量を切り替えても第1の抵抗部分と第2の抵抗の和が常温においてほぼ一致するよう設計することで、温度トリミングを実施しても初期ばらつきトリミングの値を変えずに済むためプロセスばらつき抑制、検査精度の向上が期待できる。
【0027】
また、リファレンス電位生成回路の電源電位と接地電位間に直列に接続されている配線とコンタクトに寄生する抵抗値がリファレンス電位を可変したときにも同じ抵抗値にする、または可変した比率と同じ比率で変化させることでトリミングによる補正幅を均一にすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、基準周波数生成回路の電源ノイズ、経時劣化、プロセスばらつきを抑制することができ、さらにコスト削減を同時に実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0030】
(実施形態1)
(ローパスフィルター)
図1は本発明の実施形態1における基準周波数生成回路の構成を示す図である。図1に示すように、マイコン内部には基準電源を発生するレギュレータ13があり、ロジック回路12の電源電位101と接地電位201を発生する。また、外部または内部のクロック100に同期して動作するCPUや周辺回路などのロジック回路12を備え、基準周波数生成回路11、ローパスフィルター10を備える。
【0031】
電源電位101はパッド103がワイヤー104を介して半導体端子105と接続され、外部で安定化容量14に接続される。また、接地電位201はパッド203がワイヤー204を介して半導体端子205と接続され、外部で安定化容量14に接続される。
【0032】
また、基準周波数生成回路11の電源電位102と接地電位202は、ローパスフィルター10を介してロジック回路12の電源電位101と接地電位201に接続される。
【0033】
安定化容量14はバイパスコンデンサの役割を果たし、電源電位101と接地電位201の安定化を目的としている。しかしながら、パッド、ワイヤー、半導体端子には抵抗成分やインダクタ成分が含まれるため、ロジック回路12の電源電位101の安定を十分に行うことができない。
【0034】
ロジック回路12はクロック100と同期して動作する。そのため、クロック100の変化点でロジック回路12に電流が流れ、電源電圧降下を引き起こす。そのためロジック回路12の電源電位101は図10の2段目のようになり、クロック100に同期して電源に高周波の電源ノイズを発生する。この高周波の電源ノイズの大きさはロジック動作によって変わるため、毎回同じ大きさではなくランダムな大きさの高周波の電源ノイズとなっている。
【0035】
ロジック回路12の電源電位101はローパスフィルター10を介して基準周波数生成回路11の電源電位201に接続されている。そのため、ローパスフィルター10の特性によって、高周波ノイズを図10の3段目のように低減することができ、基準周波数を安定して出力することができる。
【0036】
ここでローパスフィルター10に求められる特性を説明する。
【0037】
まず、基準周波数生成回路11の電源ノイズによるピリオドジッターの特性を図13に示す。なおピリオドジッターは基準周波数生成回路11の特性の1つであり、周波数偏差等の影響も同様であるので、ここでは代表してピリオドジッターで説明する。
【0038】
横軸は電源電位201に重畳させたノイズの周波数である。縦軸はピリオドジッターである。基準周波数の出力はHI区間とLO区間があり、基準周波数の1/2毎に切り替わり、時間を作り出す。この区間内にノイズが発生するとこの区間の時間が影響を受け変化するためにジッターは悪化する。すなわち、高周波のノイズが重畳されるほどノイズが多く発生されるためジッターが悪化する特性となる。また、このノイズの周波数と生成している基準周波数との依存関係も存在し、細かく高周波の周波数を変化させていくと波を打ったような特性であることがわかった。
【0039】
この高周波ノイズによるピリオドジッターの悪化を見ると基準周波数1/2の周波数の辺りからジッターの劣化が顕著になっていることがわかった。これは前記区間内に多くノイズが発生するほどジッターは劣化する前記理論と一致する。
【0040】
そこで、ローパスフィルター10の特性を、基準周波数の1/2以上で10dBの減衰量を持つローパスフィルターとする。これを図2に示す。このローパスフィルター10は図3に示すように、単に抵抗と容量で簡単に構成することができる。これにより、図13で示したピリオドジッターの特性は図4に示す特性に変えることができる。すなわち、高周波ノイズによるピリオドジッターの悪化は見られなくなる。ここでは、減衰量を10dBとしたが、20dB、30dBとすることでさらなるピリオドジッターの改善ができる。
【0041】
なお、前記ローパスフィルターの特性は基準周波数以上で10dBの減衰量を持つローパスフィルターでも構わない。この場合でも基準周波数の1/2以上で10dBの減衰量を持つローパスフィルターには劣るが、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter)シリアル回路で通信を成立させるための周波数偏差1%以下を得ることができ、実用上問題ない特性を望むことができる。
【0042】
しかしながら、基準周波数生成回路にフィルターをつけると、フィルターの効果により基準周波数生成回路自体が発生する電源電流による特性悪化が課題となる。
【0043】
1点目は基準周波数生成回路の電源電流による電圧降下である。ここには最適値が存在する。今回の基準電圧生成回路の平均電流が数百μAのため、基準周波数の1/2以上で10dBの減衰量での電圧降下を50mVと小さく抑えることができ、基準周波数生成回路の特性劣化には至らなかった。したがって、基準周波数発生回路にローパスフィルターを付帯することは、基準周波数発生回路の特性の劣化につながり、従来は実施されていなかった。今回、フィルターの特性を最適に設定することにより、実施できるようになったものである。
【0044】
また、2点目は基準周波数生成回路の電源電流のAC的な変化であるが、基準周波数生成回路の電源電流はランダム性がない規則正しい変化のため、基準周波数生成回路自身体はノイズでなく規則正しい信号の扱いとなりSPICEに代表される回路シミュレーションで確認できるレベルのものである。
【0045】
なお、ここではローパスフィルターとしたが、バンドパスフィルター等、高周波を取り除く機能を有していれば置き換えてもかまわない。
【0046】
図5は、本実施形態1によるローパスフィルター10の構成を示す図である。
【0047】
ロジック回路12の電源電位101には抵抗21の一端が接続され、多端にはMOSスイッチ23の一端が接続される。MOSスイッチ23の他端は、基準周波数生成回路11の電源電位102となる。電源電位102と接地電位202の間には容量22が接続される。
【0048】
ローパスフィルター10の特性となる抵抗値は、MOSスイッチ23のON抵抗と抵抗21との和で示されるため、MOSスイッチ23のON抵抗の分だけ抵抗21の値を小さくすることができ、ローパスフィルター10の面積削減、すなわち、コスト削減が可能である。
【0049】
基準周波数生成回路11が動作しているとき、MOSスイッチ23は導通状態にあり、ロジック回路12の電源電位101が抵抗21、MOSスイッチ23を介して供給される。すなわち、抵抗21とMOSスイッチ23のON抵抗の和と容量22でローパスフィルター10の特性となり、高周波ノイズを減衰することができる。この効果は前記に示したとおりである。
【0050】
いま、基準周波数生成回路11が停止しているとき、MOSスイッチ23は非導通状態にあり、基準周波数生成回路11の電源電位102はフローティング状態となる。このため、基準周波数生成回路11には電圧によるストレスがかからない。すなわち、基準周波数生成回路11のトランジスタの経時劣化を起こさないようにすることができる。これは基準周波数生成回路11が動作時と停止時の2モードしか存在しないために非常に有効な手段であり、この組合せ、並びにローパスフィルター10と一体化したことに価値がある。
【0051】
(リファレンス電位生成回路)
図6は、本発明の実施形態1による基準周波数生成回路11の内部ブロック図である。内部回路17は周波数出力92を出力するが、その周波数はフィードバック回路構成でオペアンプA105に入力されるVref91aによって決定される。
【0052】
Vref91aが一定のときの内部回路17の周波数は図15に示すように、温度が高くなるほど周波数出力92が高くなる特性を示す。そこで、リファレンス電位生成回路15の特性を図16に示すように、温度が高くなるほどVref91aが高くなる特性にする。温度が一定のときの内部回路17の周波数は図17に示すように、Vref91aが高くなるほど周波数出力92が低くなる特性を示す。そのため、図15に示した特性と、図17で示した特性により温度による周波数出力の変化は相殺され、基準周波数生成回路11の特性は図18に示すように温度に依存せず一定の値となる。これは、特許文献1に示していることと同じである。
【0053】
図7は、本発明の実施形態1による基準周波数生成回路11の内部におけるリファレンス電位生成回路15の構成図である。電源電位に第1の温度勾配を示す抵抗30a,31a,32aが直列接続される。また、第2の温度勾配を示す抵抗51a,52a,61a,62a,71a,72aが直列に接続され、抵抗81aは接地電位に接続される。リファレンス電位Vref91aは抵抗61aと62aの間から取り出している。また、抵抗30aと31aの間のノードと抵抗51aの開放端にMOSトランジスタ41aのソースとドレインが接続され、ゲートには温度トリミングの値TADJ1が入力される。以下同様に抵抗31aと32aの間のノードと抵抗51aと52aの間のノードにMOSトランジスタ42a、抵抗32aの開放端と抵抗52aと61aの間のノードにMOSトランジスタ43aが接続される。
【0054】
また、抵抗62aと71aの間のノードと抵抗81aの開放端にMOSトランジスタ44aのソースとドレインが接続され、ゲートにはイニシャルトリミングの値INIADJ1が入力される。以下同様に、抵抗71aと72aの間のノードと抵抗81aの開放端にMOSトランジスタ45a、抵抗72aの開放端と抵抗81aの開放端にMOSトランジスタ46aが接続される。
【0055】
温度トリミング値はTADJ1,2,3に与えられ、第1の温度勾配を示すブレンド量が最大の場合はTADJ3がON、TADJ1,2がOFFになるように排他的に制御される。すなわち、電源電位からリファレンス電位Vref91aを通過した抵抗の和は抵抗30a,31a,32a、MOSトランジスタ43a、抵抗61aとなる。逆に第1の温度勾配を示すブレンド量が最小の場合はTADJ1がON,TADJ2,3がOFFになるように排他的に制御される。すなわち、電源電位からリファレンス電位Vref91aを通過した抵抗の和は抵抗30a、MOSトランジスタ41a、抵抗51a,52a,61aとなる。
【0056】
ここで、ブレンド量にかかわる抵抗31a,32a,51a,52aは常温で同じ抵抗になるように設計する。あえて、あいまいに表現している理由は常温の定義が不明確なためと、実際には量産のばらつきが存在するため完全には同じ値にならないためである。
【0057】
これにより、電源電位からリファレンス電位Vref91aを追加した抵抗の和はブレンド量によらず抵抗4本とMOSトランジスタのON抵抗1つとなり常温において一定値となる。したがって、前記従来例で示したようにMOSトランジスタの個数が違うためにMOSトランジスタのON抵抗を低くする必要はなくなり、MOSトランジスタ41a,42a,43aのミスマッチのみを考慮するだけで済む。また、この間に存在する配線やコンタクトの寄生抵抗値もブレンド量を変えても一定にするよう設計することで、さらなるばらつき抑制効果を望むことができる。
【0058】
イニシャルトリミング値はINIADJ1,2,3に与えられ、リファレンス電位Vref91aが最大電位の場合はINIADJ3がON、INIADJ1,2がOFFになるように排他的に制御される。すなわち、リファレンス電位Vref91aから接地電位を通過した抵抗の和は抵抗62a、71a、72a、MOSトランジスタ46a、抵抗81aとなる。逆にリファレンス電位Vref91aが最小電位の場合はINIADJ1がON,INIADJ2,3がOFFになるように排他的に制御される。すなわち、リファレンス電位Vref91aから接地電位を通過した抵抗の和は抵抗62a、MOSトランジスタ44a、抵抗81aとなる。
【0059】
これにより、リファレンス電位Vref91aから接地電位を追加した抵抗の和は、ブレンド量に比例した抵抗本数と固定となるMOSトランジスタのON抵抗1つとなり、純粋に抵抗本数の変化となる。したがって、前記従来例で示したようにMOSトランジスタの個数が違うためにMOSトランジスタのON抵抗を低くする必要はなくなり、MOSトランジスタ44a,45a,46aのミスマッチのみを考慮するだけで済む。また、抵抗71a、72aに存在する配線やコンタクトの寄生抵抗値もブレンド量を変えても比例にするよう設計することでさらなるばらつき抑制効果を望むことができる。
【0060】
(携帯電話への応用)
図8は携帯電話への応用例である。携帯電話には入力装置であるキーボード313とLEDや液晶、バックライトなどの簡易表示機能312がある。制御用コントローラー301は、キーボード313の情報をI/O303を介して読み取り、その情報をCPU302で加工し、UARTシリアル回路304で非同期式シリアル通信により送信することで処理チップ311に情報を伝達する。また、処理チップ311から非同期通信で受信した情報をCPU302において加工し、I/O303を介して簡易表示機能312に表示する。
【0061】
この際、UARTシリアル回路304では通信を成立させるために1%以下の周波数偏差の基準周波数が必要となる。そのため、実施形態1で説明した基準周波数生成回路11の周波数出力をUARTシリアル回路304に接続し通信規格を満足する携帯電話を提供する。また、CPU302にも基準周波数生成回路11の出力で動作させることにより、従来必要であった外付け発振子を削除することができ、携帯電話としてコスト削減を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明による基準周波数生成回路は、周波数の高い基準クロックを精度良く生成できるので、半導体集積回路のタイマー用途,動作クロック用途,サンプリングクロック用途などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態1による基準周波数生成回路の構成図。
【図2】ローパスフィルターの特性を示すグラフ
【図3】従来のローパスフィルターの構成図
【図4】図1に示した基準周波数生成回路のジッターと電源ノイズの相関を示すグラフ
【図5】本発明の実施形態1によるローパスフィルターの構成図
【図6】本発明の実施形態1による内部回路のブロック図。
【図7】本発明の実施形態1によるリファレンス電位生成回路の構成図
【図8】携帯電話への応用構成図
【図9】従来の基準周波数生成回路の構成図1
【図10】基準周波数生成回路による電源ノイズについて説明するためのタイミングチャート
【図11】トランジスタの経時劣化示すグラフ
【図12】従来のリファレンス電位生成回路の構成図
【図13】基準周波数生成回路のジッターと電源ノイズの相関を示すグラフ
【図14】従来の基準周波数生成回路の構成図2
【図15】内部回路およびリファレンス電位発生回路の周波数出力と温度の特性グラフ
【図16】基準電圧生成回路でリファレンス電位を可変した特性グラフ
【図17】リファレンス電位と周波数出力の特性グラフ
【図18】基準周波数生成回路の温度に依存しない周波数出力を示す特性グラフ
【符号の説明】
【0064】
10 ローパスフィルター
11 基準周波数生成回路
12 ロジック回路
13,13a レギュレータ
14,16 安定化容量
15 リファレンス電位生成回路
17 内部回路
21 抵抗
22 容量
23 MOSスイッチ
30a〜81a、30b〜81b 抵抗
41a〜46a,41b〜46b MOSトランジスタ
301 制御コントローラー
302 CPU
303 I/O
304 UARTシリアル回路
311 処理チップ
312 簡易表示機能
313 キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準周波数生成回路とロジック回路を含む半導体装置の発振回路であって、
前記半導体装置の内部または外部より、電源電位と接地電位が供給され、前記ロジック回路の電源には前記電源電位と接地電位が接続され、前記基準周波数生成回路の電源にはフィルター回路を介して電源電位と接地電位が接続され、前記ロジック回路で発生する電源電流の変動によって、前記基準周波数生成回路のピリオドジッターが悪化することを抑えられることを特徴とする半導体発振回路。
【請求項2】
前記フィルター回路はローパスフィルターもしくはバンドパスフィルターで構成され、高周波成分を取り除く特性を持つことを特徴とする請求項1記載の半導体発振回路。
【請求項3】
前記ローパスフィルターもしくはバンドパスフィルターは、前記基準周波数生成回路の生成する周波数以上で10dB以上の減衰量を持つことを特徴とする請求項2記載の半導体発振回路。
【請求項4】
前記ローパスフィルターもしくはバンドパスフィルターは、前記基準周波数生成回路の生成する1/2の周波数以上で10dB以上の減衰量を持つことを特徴とする請求項2記載の半導体発振回路。
【請求項5】
前記基準周波数生成回路の電源電位と接地電位は、半導体装置内部のレギュレータによって生成され、半導体装置外部に電位安定のための容量が接続されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体発振回路。
【請求項6】
前記フィルター回路の入力電源電位と出力電源電位の間には抵抗とMOSトランジスタによるスイッチを含み、基準周波数生成回路が動作時には前記MOSトランジスタが導通状態であり、停止時には前記MOSトランジスタが遮断状態にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体発振回路。
【請求項7】
前記MOSトランジスタが導通状態のとき、前記MOSトランジスタのON抵抗を前記抵抗の一部、またはすべてと兼用していることを特徴とする請求項6記載の半導体発振回路。
【請求項8】
前記フィルター回路の入力接地電位と出力接地電位は同じのノードであり、出力電源電位と出力接地電位の間には容量を接続しローパス機能が含まれることを特徴とする請求項6または7記載の半導体発振回路。
【請求項9】
前記基準周波数生成回路は、電源電位と接地電位を抵抗分割することによってリファレンス電位を生成するリファレンス電位生成回路を備え、前記リファレンス電位の基準電圧は、MOSトランジスタのスイッチによって抵抗の組合せを変えることにより、可変できることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体発振回路。
【請求項10】
前記リファレンス電位生成回路の抵抗は、2種類の違う温度勾配を持つ第1の抵抗と第2の抵抗を含むことを特徴とする請求項9記載の半導体発振回路。
【請求項11】
前記リファレンス電位生成回路の電源電位と接地電位間に直列に接続されているMOSトランジスタのスイッチの数は、前記リファレンス電位を可変したときにも同じ数にすることを特徴とする請求項9または10記載の半導体発振回路。
【請求項12】
前記リファレンス電位生成回路の電源電位と接地電位間に直列に接続されている第1の抵抗と第2の抵抗のうち抵抗部分のブレンド量の調整において、前記ブレンド量を切り替えても前記第1の抵抗と第2の抵抗の和が常温において一致するよう設計されたことを特徴とする請求項10または11記載の半導体発振回路。
【請求項13】
前記リファレンス電位生成回路の電源電位と接地電位間に直列に接続されている配線とコンタクトに寄生する抵抗値が、リファレンス電位を可変したときにも同じ抵抗値にする、または可変した比率と同じ比率で変化することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の半導体発振回路。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の半導体発振回路と、UARTシリアル回路をと備え、前記半導体発振回路に同期して、前記UARTシリアル回路が動作することを特徴とする携帯電話。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−200238(P2010−200238A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45642(P2009−45642)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】