説明

半導体素子の検査装置

【課題】 従来、プローブを利用して半導体素子の特性を検査する装置にあってはプローブを複数種必要とし、また、リード線が長くなってしまい、高速パルスが通りにくくなって検査の精度に支障をきたしてしまう虞があったという点である。
【解決手段】 半導体素子の検査装置は保持部材に装填された半導体素子の端子を少なくとも先端が傾動及び復元可能とされたプローブ部材で電気的に接触させることとし、前記したプローブ部材は半導体素子の端子数と対応して複数設けられ、保持部材に装填された半導体素子を中心として放射位置に配設されていることとし、プローブ部材はプローブチップを先端に固着した板バネで成形されており、その板バネは中途に鈍角とされた少なくとも一箇所以上の屈折部により、先端を内方に寄せて、基板に固着形成されていることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子、それも主として半導体発光素子、特に半導体レーザの特性を測定し、検査する半導体素子の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、CD、DVDや各種ゲーム装置における記録、再生の光源として半導体レーザの需要が高まっており、この光源における半導体レーザはパルス駆動によって光パルスを発生させ使用するため、この特性検査は高速パルスの電流駆動により光出力の受光電流特性を測定することによりなされる。
【0003】
この測定方法として従前は被検査素子である半導体レーザの端子をソケットに嵌着させ、パルスドライブ回路からのパルス電流を定電流パルスとして取り出し、ソケットに供給して、半導体レーザのパルス発光特性を測定することが行なわれていた。
【0004】
しかしこの方法はソケットに対する半導体レーザの着脱作業が必須のこととなり、半導体レーザの端子の曲がりもあり、自動化を阻害し、工程数を多くしてしまい、安定した装置の稼動ができない。
【0005】
そこで、近時は直接的に端子に接触できるプローブを利用した方法、装置が提案されている。このプローブを用いた半導体素子の検査装置は図8に示す構成となっている。この図8にあって1は被検査用の半導体素子(半導体レーザ)を示しており、2、2はその端子である。この検査装置は通例ターンテーブル3の周縁寄りに適宜ピッチで形成されている。
【0006】
ターンテーブル3には透孔4が穿設されており、その透孔4の開口縁上にプローブの保持基板5が重合され、その保持基板5は支持枠6により押さえられている。この支持枠6の半導体素子1の装填孔にはソケット7が設けられており、このソケット7には中心に端子2、2‥のガイド7aが備えられている。
【0007】
また、保持基板5には端子2、2‥に対して側方からスライドして当接するサイドプローブ8、8が備えられている。このサイドプローブ8、8の先端が端子2、2に当接すると、基板9に立設固定された突き上げプローブ10、10が基板9と共に上昇して前記サイドプローブ8、8に当接し、電流特性を測定するようになっている。なお、11は基板9を上下動させるためのロッドを示し、基板9には被検査素子である半導体素子1の駆動回路との連接部12が設けられている。
【0008】
しかしながら、この従来のプローブを用いた検査装置にあっては、二種の分離されたプローブ8及び10の存在が必要となり、動作も数段階が必要となるため、複雑で故障や誤動作も多くなる虞があり、半導体素子を駆動する電流の流れる距離が長くならざるを得ず、更に接合部分が多くなり高速パルスが通りにくくなって検査の精度にも問題が生じてしまうものとなっていた。
【特許文献1】特開2005−116984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、従来、プローブを利用して半導体素子の特性を検査する装置にあってはプローブを複数種必要とし、また、リード線が長くなってしまい、高速パルスが通りにくくなって検査の精度に支障をきたしてしまう虞があったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した問題点を解決するために、本発明に係る半導体素子の検査装置は保持部材に装填された半導体素子の端子を少なくとも先端が傾動及び復元可能とされたプローブ部材で電気的に接触させることを特徴とし、前記したプローブ部材は半導体素子の端子数と対応して複数設けられ、保持部材に装填された半導体素子を中心として放射位置に配設されていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る半導体素子の検査装置は前記したプローブ部材はプローブチップを先端に固着した板バネで成形されており、その板バネは中途に鈍角とされた少なくとも一箇所以上の屈折部により、先端を内方に寄せて、基板に固着形成されていることを特徴とし、前記した板バネは基板と同期して上下動し、その基板の中央挿通孔に挿通され先端にテーパ面を形成したバー状の操作子により、前記した傾動及び復元を行なわせることを特徴とし、前記した基板及び操作子はその下面に配備された複数枚の偏心異形カムにより上下動させることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明に係る半導体素子の検査装置は前記したプローブ部材はその下端をソレノイド、シリンダー、モータ等の駆動源で操作することを特徴とし、前記した保持部材には装填された端子の変形を防護する受芯部が備えられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る半導体素子の検査装置は上記のように構成されている。そのため、プローブ部材は一種類のもので済み、二種類に分離されたプローブがない分その基板の連結部と半導体素子の駆動回路を結ぶリード線もごく短いもので済むこととなって、高速パルスの通過も良好となり、検査精度を向上させることができる。
【0014】
また、保持部材(ソケット)に受芯部を備えているため、半導体素子の端子がプローブ部材の当接による衝撃で内方へ屈折変形してしまうことを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図として示す実施例のように構成することで実現した。
【実施例1】
【0016】
次に、本発明の好ましい実施の例を図1乃至図8を参照して説明する。図1は本発明を実施した半導体素子の検査装置を示す正面図、図2は同じくプローブ部材の動作を示す拡大図、図3は同じく保持部材を示す斜視図、図4は同じく底面図、図5は同じくカム機構を示す側面図、図6は同じく正面図、図7は同じく多数端子への対応を示す図である。尚、従来例と共通する部分には共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0017】
これらの図にあって20は据え台であり、この据え台20には駆動機構が取り付けられている。据え台20には立壁20aが一体に設けられ、その立壁20aには減速機構を介してモータ21が設けられている。このモータ21のモータ軸21aには回転板22の中心が連結されている。
【0018】
この回転板22はその周縁近くに偏心されてリンクレバー23の一端が連結固定されており、そのリンクレバー23の他端にはハンドル24の一端が連結固定され、回転板22の回転力をこのハンドル24に伝達するものとしている。
【0019】
ハンドル24には回転機構と連結され、その回転力により昇降する昇降機構25が設けられている。この昇降機構25にはプロービング機構26が一体的に連結され昇降機構25と同期して昇降するものとされている。このプロービング機構26は上端にプローブ部材27、27‥の基端を半田付け等によって固定した基板28が支持ブロック29により設けられている。
【0020】
この支持ブロック29の中心には作動パイプ30が貫通され、その作動パイプ30の上端は前記した基板28も貫通して突出されており、この作動パイプ30の周囲には上端を支持ブロック29に固着された係止板31で受けられるベアリング32が弾設されている。
【0021】
また、作動パイプ30の下には作動パイプ30を上下させるソレノイド39が昇降機構25に付けられて備えられている。また、作動パイプ30内にはロッド33が挿通され、そのロッド33の上端には操作子34が設けられている。この操作子34は上端周域に操作用のテーパ面34aが形成されている。
【0022】
一方、前記したプローブ部材27、27‥は基板28上に立設された形態となっており、プローブ素子27bの保持体には板バネが使用されたものとなっている。また、この板バネは途中鈍角に二箇所の屈折部27a、27a‥が形成され、先端を内方に寄せた形態となっている。
【0023】
さらに、半導体素子1を受ける保持部材35は円板状とされ、その上面中央に受用凹部35aが形成されている。この保持部材35の裏面には4本端子用の場合、略十字状とされた受芯部36が一体に形成され、この受芯部36の隣接奥の部分に端子2、2‥が挿通される端子孔35b、35b‥が穿設されたものとなっている。この保持部材35に形成されている受芯部36によって後述するようなプローブ部材27の動作をしても端子2、2‥は内方へ向けて変形されてしまうことが未然に防止されることとなる。
【0024】
ここで、プロービング機構26の動作を説明すると、ロッド33と一体となっている操作子34を上方へ押し上げた状態で昇降機構25と同期して上昇したプロービング機構26は所定の距離で停止する。この操作子34におけるテーパ面34aはプローブ部材27を形成する板バネの内面と摺接され、屈折部27aを押すことで各プローブ部材27、27‥の先端を外方へ拡開させる。この状態でプローブ部材27、27‥が端子2、2‥の外方を囲むように位置された時点で、ソレノイド39により操作子34が下降すると、プローブ部材27、27‥はそのバネ性によって先端のプローブ素子27b、27b‥を各端子2、2に当接させることになる。あたかもチャッキングあるいはクランプの機構の如き作動となる。この初期復元は上記した動作により、再度操作子34によってプローブ部材27、27‥を拡開して下降させればよい。
【0025】
この操作子34によって、基板28に立設固定されたプローブ部材27、27を動作させるには図5乃至図6として示す偏心カム機構を利用することもできる。この偏心カム機構はモータ37のモータ軸37aに一対の偏心カム38a、38bが偏心位置を異ならしめて取り付けられている。
【0026】
この偏心カム38a、38bは各々一部を欠落させ略直線となる部分を形成したものとなっており、この図にあってはモータ37が稼動すると、まず偏心カム38aが基板28を押し上げ、前記した直線となる部分によって所定の時間、その基板28を押し上げた状態を保持する。次いで、この保持状態で偏心カム38bが操作子34を押し上げ、プローブ部材27、27を拡開させる。ここで、偏心カム38aはさらに基板28を上昇させ、端子2、2‥の周囲へ来ると、偏心カム38bが操作子34を下降させ、タイムラグをもった2枚の偏心カム38a、38bによって上記と同様の作用を行なうこととなる。
【0027】
係るプローブ部材27、27の動作は昇降を別として考案すると、その基端にソレノイドのピンを連結する機構や、プローブ部材27、27の内方に配した開閉手段で押し拡げ戻す機構、弾性材で引張し、当接時に解放する機構等が広く応用して用いることが可能となる。
【0028】
また、本実施例の構成によると、プローブ部材27、27‥を半導体素子1の保持部材の受芯部36に対して放射状に配置し、プローブ素子27b、27b‥の高さ位置も各々変えることができるため、従来のサイドプローブ方式では実行不能であった多端子構造の半導体素子に対しても、ケルビンコンタクトを可能としている(図7参照)。
【0029】
本実施例は上記のように形成され、プローブ部材27、27‥は直接半導体素子1の端子2、2‥に当接する一種類のみで済み、また、基板28に半導体素子1の駆動回路との連結部、高速パルス駆動回路等を搭載するとしても、その基板28自体の昇降ストロークは短いもので済み、それによってリード線も短くて済むので必要な高周波パルスの通過性も良好となって精度の高い測定、検査結果を得ることができるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は上述のように構成されている。そのため、特に半導体レーザを対象とするのみでなく、端子を備えた電子部品全体について、その通電性、抵抗値等の特性測定、検査する装置にも幅広く応用実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を実施した半導体素子の検査装置を示す正面図である。
【図2】プローブ部材の動作を示す拡大図である。
【図3】保持部材を示す斜視図である。
【図4】底面図である。
【図5】カム機構を示す側面図である。
【図6】正面図である。
【図7】多数端子への対応を示す図である。
【図8】従来のプローブを利用した検査装置を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 半導体素子
2 端子
3 ターンテーブル
4 透孔
20 据え台
21 モータ
22 回転板
23 リンクレバー
24 ハンドル
25 昇降機構
26 プロービング機構
27 プローブ部材(板バネ)
27a 屈折部
27b プローブ素子
28 基板
29 支持ブロック
30 作動パイプ
31 係止板
32 コイルスプリング
33 ロッド
34 操作子
34a テーパ面
35 保持部材
36 受芯部
37 モータ
38a 偏心カム
38b 偏心カム
39 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材に装填された半導体素子の端子を少なくとも先端が傾動及び復元可能とされたプローブ部材で電気的に接触させることを特徴とする半導体素子の検査装置。
【請求項2】
前記したプローブ部材は半導体素子の端子数と対応して複数設けられ、保持部材に装填された半導体素子を中心として放射位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の検査装置。
【請求項3】
前記したプローブ部材はプローブチップを先端に固着した板バネで成形されており、その板バネは中途に鈍角とされた少なくとも一箇所以上の屈折部により、先端を内方に寄せて、基板に固着形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体素子の検査装置。
【請求項4】
前記した板バネは基板と同期して上下動し、その基板の中央挿通孔に挿通され先端にテーパ面を形成したバー状の操作子により、前記した傾動及び復元を行なわせることを特徴とする請求項3に記載の半導体素子の検査装置。
【請求項5】
前記した基板及び操作子はその下面に配備された複数枚の偏心異形カムにより上下動させることを特徴とする請求項4に記載の半導体素子の検査装置。
【請求項6】
前記したプローブ部材はその下端をソレノイド、シリンダー、モータ等の駆動源で操作することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体素子の検査装置。
【請求項7】
前記した保持部材には装填された端子の変形を防護する受芯部が備えられていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6に記載の半導体素子の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−58454(P2009−58454A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227333(P2007−227333)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(591242209)アルファクス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】