説明

半導体素子の製造方法

【課題】 半導体層のエッチング時間の短縮化が望まれている。
【解決手段】 第1の膜及び半導体膜がこの順番に形成された積層基板の前記半導体膜の上に、マスクパターンを形成する。マスクパターンをエッチングマスクとして、半導体膜をエッチングすることにより、凹部を形成するとともに、凹部の底面の一部の領域に第1の膜が露出し、他の領域には、半導体膜の残渣が残っている状態でエッチングを停止させる。凹部の底面に露出した第1の膜を厚さ方向及び横方向にエッチングすることにより、残渣の下に空洞を形成する。積層基板を浸漬させた液体に超音波を印加することにより、空洞の上に残留している残渣を積層基板から脱離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体膜をエッチングして凹部を形成し、凹部の底面に下地表面を露出させる工程を含む半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青色LED等に窒化物半導体が用いられている。ウエハ上に形成された窒化物半導体層のストリート領域に、チップごとに分離するための溝が形成される。この溝の形成に、例えば、ドライエッチングが適用される(特許文献1)。また、ドライエッチング後に、電極膜として用いているAgのウィスカ等を、超音波洗浄によって除去する方法が提案されている(特許文献2)。窒化物半導体層を電解液を用いてウェットエッチングする際に、超音波を印加しながらエッチングする方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−66704号公報
【特許文献2】特開2008−130799号公報
【特許文献3】特開2006−80274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒化物半導体層のストリート領域に溝を形成するためのエッチング工程が長時間を要している。特に、GaNの−c極性の面(N面)をエッチングすると、六角錘状の残渣が残りやすい。この残渣が残らないようにするために、エッチング時間を十分長くする必要がある。
【0005】
半導体層のエッチング時間の短縮化が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
第1の膜及び半導体膜がこの順番に形成された積層基板の前記半導体膜の上に、マスクパターンを形成する工程と、
前記マスクパターンをエッチングマスクとして、前記半導体膜をエッチングすることにより、凹部を形成するとともに、前記凹部の底面の一部の領域に前記第1の膜が露出し、他の領域には、前記半導体膜の残渣が残っている状態でエッチングを停止させる工程と、
前記凹部の底面に露出した前記第1の膜を厚さ方向及び横方向にエッチングすることにより、前記残渣の下に空洞を形成する工程と、
前記積層基板を浸漬させた液体に超音波を印加することにより、前記空洞の上に残留している前記残渣を前記積層基板から除去する工程と
を有する半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
半導体膜に凹部を形成する際に、凹部の底面に半導体膜の残渣が残っている状態でエッチングを停止させるため、エッチング時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1−1】実施例1による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図1−2】実施例1による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図2−1】実施例2による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図2−2】実施例2による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図3−1】実施例3による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図3−2】実施例3による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図3−3】実施例3による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図3−4】実施例3による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図3−5】実施例3による半導体素子の製造方法の製造途中段階における断面図である。
【図4−1】実施例3による半導体素子の製造方法のp側電極のエッチング過程を示す断面図である。
【図4−2】実施例3による半導体素子の製造方法のp側電極のエッチング過程を示す断面図である。
【図4−3】実施例3による半導体素子の製造方法のp側電極のエッチング過程を示す断面図である。
【図5】実施例3による方法で製造される半導体素子の製造途中段階における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施例1〜実施例3について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1A〜図1Eを参照して、実施例による半導体素子の製造方法について説明する。
【0011】
図1Aに示すように、支持基板11の上に、第1の膜12及び半導体膜13が形成された積層基板10を準備する。第1の膜12は、基板11及び半導体膜13のいずれともエッチング耐性の異なる材料、例えば金属で形成される。半導体膜13は、例えば窒化物半導体で形成される。半導体膜13は、単層構造でもよいし、pn接合、pin接合、ヘテロpn接合、またはヘテロpin接合を含む積層構造としてもよい。
【0012】
半導体膜13の上に、マスクパターン14を形成する。マスクパターン14は、例えば行列状に分布する複数の長方形パターンを含む。
【0013】
図1Bに示すように、マスクパターン14をエッチングマスクとして、半導体膜13をエッチングすることにより、マスクパターン14が形成されていない領域に凹部15を形成する。マスクパターン14が行列状に分布する複数の長方形パターンを含む場合、凹部15の平面形状は、正方格子模様となる。凹部15の底面のうち一部の領域に第1の膜12が露出し、他の領域には半導体膜13の残渣13aが残っている状態で、半導体膜13のエッチングを停止する。マスクパターン14で覆われている領域に、半導体膜13からなる凸部13bが残る。
【0014】
図1Cに示すように、第1の膜12及びマスクパターン14をエッチングするためのエッチャント20に、積層基板10を浸漬させる。エッチャント20を収容しているエッチング容器21を超音波処理容器22内の液体、例えば水に接触させる。水を介して、エッチャント20に超音波23を印加する。
【0015】
凹部15の底面に露出している第1の膜12がエッチングされる。このエッチングは、横方向(基板の面内方向)にも進むため、残渣13aの先端近傍の部分と基板11との間に空洞16が形成される。この空洞内にエッチャント20が侵入し、さらに横方向のエッチングが進む。横方向のエッチングによる侵入長が、ある長さまで達すると、それ以上のエッチングは殆ど進まなくなる。これは、エッチングの最前面である第1の膜12の端面に接するエッチャントの循環が不十分になるためである。一例として、エッチングが殆ど進まなくなる侵入長は、第1の膜12の厚さの30倍程度である。また、マスクパターン14もエッチングされて薄くなる。
【0016】
図1Dに示すように、第1の膜12の端部から横方向に張り出した残渣13aが、超音波23の物理的作用によって、積層基板10から脱離する。
【0017】
残渣13aの張り出し部分が除去されると、第1の膜12の端部に接するエッチャント20が循環するため、横方向のエッチングが再開する。横方向のエッチングと、残渣13aの張り出し部分の脱離とが繰り返されることにより、残渣13aがほぼ全て積層基板10から除去される。
【0018】
図1Eに示すように、最終的には、凸部13bの端面よりも内側まで第1の膜12の横方向のエッチングが進む。凸部13bの上面を覆っていたマスクパターン14(図1B)は全てエッチングされ、凸部13bの上面が露出する。凸部13bは残渣13aに比べて厚いため、超音波23の物理的作用を受けても、積層基板10から脱離することはない。
【0019】
実施例1においては、図1Bに示した工程で半導体膜13の残渣13aが残った状態でエッチングを停止させている。このため、凹部15の底面に残渣が残らないようにエッチングする場合に比べて、エッチング時間を短縮することができる。
【実施例2】
【0020】
図2A〜図2Dを参照して、実施例2による半導体素子の製造方法について説明する。実施例1による方法の図1Bに示した状態までの工程は、実施例2による方法と共通である。
【0021】
図2Aに示すように、半導体膜13の凸部13b及び残渣13aが形成された積層基板10をエッチャント20に浸漬させる。実施例1の場合と異なり、エッチャント20に超音波は印加しない。第1の膜12の横方向へのエッチングが進み、残渣13aの先端近傍の部分と基板11との間に空洞16が形成される。また、マスクパターン14もエッチングされて薄くなる。
【0022】
図2Bに示すように、積層基板10をエッチャント20から取り出し、超音波処理容器22内の液体25に浸漬させる。超音波処理用の液体25には、例えば水、アルコール等が用いられる。超音波処理により、残渣13aのうち、第1の膜12の端部から突き出ていた部分が積層基板10から脱離する。
【0023】
図2Cに示すように、積層基板10を、再度エッチャント20に浸漬させる。第1の膜12の横方向へのエッチングがさらに進む。同時に、マスクパターン14がさらに薄くなる。
【0024】
図2Dに示すように、積層基板10をエッチャント20から取り出し、超音波処理容器22内の液体25に浸漬させ、超音波処理を行う。残渣13aのうち、第1の膜12の端部から突き出ていた部分が積層基板10から脱離する。
【0025】
図2Cに示した第1の膜12のエッチングと、図2Dに示した超音波処理とを、交互に繰り返すことにより、残渣13aをほぼ全て取り除くことができる。
【0026】
実施例2においても、実施例1と同様に、半導体膜13のエッチング時間を短縮することができる。
【実施例3】
【0027】
図3A〜図5を参照して、実施例3による半導体発光素子の製造方法について説明する。
【0028】
図3Aに示すように、c面サファイアからなる成長用基板41の上に、GaNからなるバッファ層42を形成する。バッファ層42のc軸は、厚さ方向と平行になり、バッファ層42の表面は、+c極性の面(Ga面)となる。バッファ層42の厚さは、例えば30nmである。バッファ層42の上に、n型GaNからなるn型半導体層43を形成する。n型半導体層43の厚さは例えば6μmである。n型ドーパントとしてSiが用いられ、Si濃度は、例えば5×1018cm−3である。n型半導体層43の上に発光層44を形成する。
【0029】
図3Bに、発光層43の積層構造を示す。厚さ14nmのGaN層44aと厚さ2.2nmのIn0.35Ga0.65N層44bとが交互に積層されて発光層44が形成される。積層構造の繰り返し回数は、例えば5回である。なお、発光層44として、単層の半導体層を用いてもよい。
【0030】
図3Aに戻って説明を続ける。発光層44の上に、p型Al0.2Ga0.8Nからなるp型中間層45を形成する。p型中間層45の厚さは、例えば40nmである。p型ドーパントとしてMgが用いられ、Mg濃度は2×1020cm−3である。
【0031】
p型中間層45の上に、p型GaNからなるp型半導体層46を形成する。p型半導体層46は、Mg濃度5×1019cm−3、厚さ100nmの層を、Mg濃度2×1020cm−3、厚さ20nmの層で挟んだ構造を有する。p型半導体層46の合計の厚さは140nmである。
【0032】
バッファ層42からp型半導体層46までの各層の形成には、例えば有機金属化学気相成長(MOCVD)が用いられる。n型半導体層43からp型半導体層46までの各層も、バッファ層42と同様に、c軸配向し、+c極性の面(Ga面)が現れる。
【0033】
p型半導体層46を形成した後、例えば窒素雰囲気中において、温度900℃で1分間のアニールを行う。
【0034】
図3Cに示すように、p型半導体層46の上に、p側電極47を形成する。p側電極47は、例えば成長用基板41側に配置される厚さ1nmのPt層と、その上に配置される厚さ300nmのAg層とを含む。p側電極47の形成には、例えば電子ビーム蒸着が用いられる。この構成により、発光層44で発生した光に対する反射率が80%以上になり、p型半導体層46とp側電極47との接触抵抗が1×10−3Ωcm程度になる。
【0035】
p側電極47として、Ni層とAg層との積層、Ti層とAg層との積層、ITO(インジウム錫酸化物)層とAg層との積層、ITO層とNi層とAg層との積層、またはITO層とTi層とAg層との積層を用いてもよい。また、Agの代わりに、Agを含む合金、例えばAgCuPd合金を用いてもよい。
【0036】
p側電極47の上に、バリア層48及び接合層49を形成する。バリア層48は、例えば成長用基板41側に配置された厚さ100nmのTi層、及びその上に配置された厚さ200nmのPt層を含む。接合層49にはAuが用いられ、その厚さは例えば200nmである。Ti層は、Pt層の密着強度を高める機能を持つ。Pt層は、接合時にAuと共晶を形成するSnの拡散を防止する機能を持つ。これらの層の形成には、例えば電子ビーム蒸着が用いられる。
【0037】
図3Dに示すように、p型Siからなる支持基板60の上に、バリア層61及び接合層62を形成する。バリア層61は、例えば支持基板60側から順番に積層された厚さ200nmのPt層、厚さ150nmのTi層、厚さ50nmのNi層、厚さ100nmのAu層、及び厚さ100nmのPt層を含む。接合層62は、たとえば厚さ90nmのAu層と、その上に形成されたAu層とSn層との交互積層構造を含む。交互積層構造内のAu層及びSn層の厚さは、例えばそれぞれ90nm及び140nmであり、積層の繰り返し回数は4回である。
【0038】
支持基板60の背面に、Pt等のコンタクト層63を形成する。コンタクト層63は、支持基板60に低抵抗でオーミックにコンタクトする。バリア層61、接合層62、及びコンタクト層63の形成には、例えば電子ビーム蒸着が用いられる。
【0039】
図3Eに示すように、成長用基板41上の接合層49と、支持基板60上の接合層62とを密着させて、熱圧着を行う。これにより、AuSn合金が形成されて、接合層49と接合層62とが一体化する。熱圧着の際には、例えば真空中、窒素雰囲気中、または不活性ガス雰囲気中において接合層同士を密着させ、両者に1.2kN/cmの圧力を印加した状態で、330℃まで加熱する。このとき、バリア層61及び48が、Snの拡散を防止する。なお、圧力及び温度の条件は、AuSn共晶に適したその他の条件としてもよい。
【0040】
支持基板60として、Si基板の他に、Ge基板やダイヤモンド基板を用いてもよい。また、図3Cに示したp側電極47の上に銅をめっきすることにより、十分な物理的支持力を有するめっき膜を形成してもよい。このめっき膜を支持基板として用いることができる。
【0041】
図3Fに示すように、バッファ層42から成長用基板41を剥離する。成長用基板41の剥離には、例えばレーザリフトオフ法を適用することができる。なお、成長用基板41とバッファ層42との間に部分的に金属または酸化シリコンの剥離層、または空洞を含む剥離層を配置してもよい。金属や酸化シリコン等の剥離層を配置した場合には、これらのエッチャントで剥離層をエッチングして空洞を形成しておき、熱圧着を行った後に成長用基板41を剥離することができる。また、熱圧着を行った後に、エッチャントで剥離層をエッチングすることにより、成長用基板41を剥離してもよい。空洞を含む剥離層を配置した場合には、熱圧着後に熱膨張係数の違いによって成長用基板41がバッファ層42から剥離する。
【0042】
図3Gに示すように、n型半導体層43が露出するまで、バッファ層42(図3F)及びn型半導体層43の表面を研磨する。露出したn型半導体層43の表面には、−c極性の面(N面)が現れる。
【0043】
図3Hに示すように、n型半導体層43の上に、マスクパターン70を形成する。マスクパターン70は、例えば厚さ1nmのNi層と、その上に堆積した厚さ300nmのAg層とを含む。Ni層及びAg層の形成には、例えば電子ビーム蒸着が用いられる。また、マスクパターン70のパターニングには、例えばリフトオフ法が用いられる。
【0044】
図5に示すように、マスクパターン70は、平面視において行列状に分布する複数の長方形パターンを含む。長方形パターンの間に、チップ同士を分離するストリート領域71が画定される。各長方形パターンの短辺の長さW1及び長辺の長さW2は、例えばそれぞれ330μm及び540μmである。ストリート領域71の幅W3は、例えば60μmである。
【0045】
図3Iに示すように、マスクパターン70をエッチングマスクとして、n型半導体層43、発光層44、p型中間層45、及びp型半導体層46をエッチングする。このエッチングには、例えば85℃に加熱したテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)が用いられる。これにより、ストリート領域71に対応する正方格子状の凹部(溝)73が形成される。マスクパターン70の下に、p型半導体層46からn型半導体層43までの各層を含む凸部76が残る。凸部76の側面は基板面に対して傾斜する。エッチャントとして、TMAH以外に、熱リン酸、加熱した水酸化カリウム水溶液(KOH)、加熱した水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)、またはこれらの水溶液を含む薬液を用いてもよい。
【0046】
このエッチングは、凹部73の底面の一部にp側電極47が露出し、他の領域には、p型半導体層46からn型半導体層43までの各層の残渣75が残っている状態で停止させる。この状態は、実施例1の図1Bに示した状態に相当する。残渣75は、{10−11}面を斜面とする六角錘状の多数の突起を含む。各突起の平面視における寸法は、0.5μm〜3μm程度である。
【0047】
図5に示すように、ストリート領域71内に、残渣75が残っている。残渣75は、凸部76に連続し、凸部76を取り囲むように分布する。また、残渣75は、凸部76から切り離されてストリート領域71内に孤立する場合もある。大部分の領域では、残渣75は相互に隣り合う凸部76の一方から他方まで連続することはない。ただし、一部において、領域80に示すように、残渣76が、相互に隣り合う凸部76の一方から他方まで連続していてもよい。
【0048】
図3Jに示すように、凸部76をエッチングマスクとしてp側電極47をエッチングする。p側電極47のエッチャントとして、例えば硝酸、硝酸と塩酸との混合液等を用いることができる。このエッチングは、実施例1の図1C〜図1Dに示したように、エッチャントに超音波を印加した状態で行う。これにより、p側電極47の横方向のエッチングが進むとともに、残渣75が物理的に除去される。
【0049】
n型半導体層43からp型半導体層46までのエッチングにドライエッチングを適用すると、ドライエッチング時にp側電極47から飛散した金属が発光層44の端面等に再付着する。再付着した金属は、リーク電流増加の要因になる。実施例3では、n型半導体層43からp型半導体層46までのエッチングにウェットエッチングを適用している。このため、金属の再付着に起因するリーク電流の増加を防止することができる。
【0050】
p側電極47のエッチングと同時に、マスクパターン70(図3I)もエッチングされる。マスクパターン70の材料として、p側電極47用のエッチャントでエッチングされるものを選択することにより、マスクパターン70を除去するための専用の工程を省略することができる。
【0051】
図4A〜図4Eに、p側電極47がエッチングされる経過を示す。ストリート領域71の幅W3が60μmであり、p側電極47の厚さが約300nmであるため、両者の比は、約200:1になる。図3Iは、厚さ方向の寸法を、横方向の寸法に比べて著しく拡大して描かれている。厚さ方向の寸法と横方向の寸法との比は、図4Aの方が図3Iよりも実際の比に近い。
【0052】
図4Aに示すように、凹部73の底面の一部にp側電極47が露出し、他の領域に残渣75が残っている。
【0053】
図4Bに示すように、露出したp側電極47がエッチングされる。このエッチングは横方向にも進む。このため、残渣75の先端近傍の部分の下に、空洞78が形成される。横方向へのエッチングの侵入長は、約10μmである。エッチングの侵入長が10μmに達すると、それ以上の横方向のエッチングが殆ど生じなくなる。残渣75は薄いため、図4Cに示すように、超音波の物理的な作用によって、残渣75のうちp側電極47の縁から横方向に張り出した部分75aが脱離する。
【0054】
実施例3においては、残渣75が、六角錘状の多数を突起で構成されている。突起の頂部と頂部との間には、谷部が画定される。残渣75は、この谷の部分で切断され易い。
【0055】
残渣75の一部75aが脱離すると、図4Dに示すように、p側電極47の横方向へのエッチングが再開する。残渣75のうち、エッチングが進んだp側電極47の縁から横方向に張り出した部分75bが脱離する。p側電極47の横方向へのエッチングと、残渣75の一部の脱離が繰り返すことにより、ほぼ全ての残渣75が除去される。
【0056】
図4Eに示すように、凸部76は残渣75(図4A)に比べて十分厚いため、凸部76は超音波による物理的作用を受けても基板から脱離しない。p側電極47のエッチングは、凸部76の縁から横方向へ10μm程度進んだ時点で停止する。
【0057】
図5の領域80に現れているように、残渣75がストリート領域71一方の縁から他方の縁まで、幅方向に繋がっている場合には、p側電極47の横方向エッチングがストリート領域71の長手方向に進む。これにより、ストリート領域71の一方の縁から他方の縁まで、幅方向に繋がっている残渣75が除去される。
【0058】
図4A〜図4Eでは、p側電極47のエッチングと、超音波処理とを同時に行ったが、図2A〜図2Dに示した実施例2による方法のように、p側電極47のエッチングと、超音波処理とを交互に繰り返してもよい。
【0059】
図3Kに示すように、凸部76及びバリア層48を、保護膜85で覆う。保護膜85には、凸部76の上面、及びストリート領域71に対応した開口が形成されている。保護膜85は、例えば酸化シリコンで形成され、その厚さは300nmである。保護膜85の形成には、例えばスパッタリングが適用される。開口の形成には、例えばリフトオフ法が適用される。なお、保護膜85の形成に、熱CVDや電子ビーム蒸着を適用してもよい。
【0060】
保護膜85の開口内の凸部76の上面に、n側電極86を形成する。n側電極86は、例えば基板側から順番に積層された厚さ25nmのTi層、厚さ800nmのAl層、厚さ100nmのTi層、及び厚さ200nmのAu層を含む。n側電極86の形成には、例えば電子ビーム蒸着が適用され、そのパターニングには、例えばリフトオフ法が適用される。
【0061】
n側電極86として、Al層とRh層との積層、Al層とIr層との積層、Al層とPt層との積層、Al層とPd層との積層、またはTi層とPt層との積層を用いてもよい。
【0062】
図3Lに示すように、ストリート領域71に沿って支持基板60をダイシングすることにより、チップごとに分離する。
【0063】
発光層44で発生した光は、n型半導体層43を通って、またはp側電極47で反射された後n型半導体層43を通って外部に放射される。
【0064】
光の取り出し効率を高めるために、n型半導体層43の上面を粗面化しておいてもよい。粗面化の処理は、例えば図3Gに示した研磨後に行ってもよいし、図3Kに示した保護膜85の形成後に行ってもよい。この粗面化処理は、Clガスを用いた反応性エッチング、KOHやTMAH等のアルカリを用いたウェット処理により行うことができる。
【0065】
実施例3では、図3Iに示した工程で、残渣75が残っている状態でエッチングを停止させた。このため、残渣75を全てエッチングで除去する場合に比べて、エッチング時間を短縮することができる。
【0066】
実施例3では、ストリート領域71の幅W3を60μmとした。この幅W3を狭くしすぎると、ダイシング時の歩留まりが低下してしまう。逆に、幅W3を広くすると、1枚のウエハから製造することができるチップ数が減少してしまう。これらの観点から、ストリート領域71の幅W3は、40μm〜200μmの範囲内とすることが好ましい。
【0067】
図4Aに示した残渣75が厚すぎると、図4B〜図4Dに示した工程で、超音波の物理的作用によって除去することが困難になる。このため、残渣75の谷の部分の厚さのうち最も厚い部分が3μm以下になるまで、エッチングを行っておくことが好ましい。
【0068】
図3Iに示したエッチング工程後にストリート領域71内に露出するp側電極47の面積が小さすぎると、p側電極47の横方向エッチングによる残渣75の除去が困難になる。このため、p側電極47の露出した部分の面積を、ストリート領域71の面積の20%以上にしておくことが好ましい。ウエハ内でn型半導体層43の厚さにマクロなばらつきがあると、p側電極47の露出した部分の面積の割合が平均で20%以上になっても、局所的にはp側電極47が殆ど露出していない状況が生じ得る。このため、p側電極47の露出した部分の面積の割合の評価は、マスクパターン70の各々の各辺に対応するストリート領域71ごとに行うことが好ましい。
【0069】
p側電極47の露出した部分の面積の割合は、顕微鏡で観察することにより行うことができる。なお、量産時には、p側電極47の露出した部分の面積の割合が20%以上になるエッチング条件、例えばエッチング温度、時間等を予め決定しておき、この条件で処理を行えばよい。
【0070】
上記実施例3では、n型半導体層43、発光層44、p型半導体層46等に窒化物半導体を用いたが、他の半導体材料を用いてもよい。例えば、AlGaInP系の半導体材料を用いてもよい。この場合、これらの層のウェットエッチングには、例えばHBrを用いることができる。AlGaInP系の半導体材料は酸と反応しやすいため、ストリート領域のp側電極のエッチングには、アルカリ溶液、例えばKOH、NaOH、TMAH等を用いることが好ましい。従って、ストリート領域のp側電極には、アルカリに溶解する金属、例えばAlやZn等を用いることが好ましい。
【0071】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0072】
10 積層基板
11 基板
12 第1の膜
13 半導体膜
13a 残渣
13b 凸部
14 マスクパターン
15 凹部
16 空洞
20 エッチャント
21 エッチング容器
22 超音波処理容器
23 超音波
25 超音波処理用液体
41 成長用基板
42 バッファ層
43 n型半導体層
44 発光層
45 p型中間層
46 p型半導体層
47 p側電極
48 バリア層
49 接合層
60 支持基板
61 バリア層
62 接合層
70 マスクパターン
71 ストリート領域
73 凹部
75 残渣
76 凸部
78 空洞
80 残渣が繋がった領域
85 保護膜
86 n側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の膜及び半導体膜がこの順番に形成された積層基板の前記半導体膜の上に、マスクパターンを形成する工程と、
前記マスクパターンをエッチングマスクとして、前記半導体膜をエッチングすることにより、凹部を形成するとともに、前記凹部の底面の一部の領域に前記第1の膜が露出し、他の領域には、前記半導体膜の残渣が残っている状態でエッチングを停止させる工程と、
前記凹部の底面に露出した前記第1の膜を厚さ方向及び横方向にエッチングすることにより、前記残渣の下に空洞を形成する工程と、
前記積層基板を浸漬させた液体に超音波を印加することにより、前記空洞の上に残留している前記残渣を前記積層基板から除去する工程と
を有する半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記第1の膜をエッチングする工程、及び前記積層基板に液体中で超音波を印加する工程が、前記第1の膜のエッチャントに前記積層基板を浸漬させた状態で、前記エッチャントに超音波を印加することにより、同時に進行する請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1の膜をエッチングする工程と、前記超音波を印加する工程とを少なくとも2サイクル交互に繰り返す請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記第1の膜が金属、または導電性を持つ金属酸化物で形成されており、前記半導体膜が、n型半導体膜と、p型半導体膜と、両者の間に配置された発光層とを含む発光構造を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記マスクパターンを形成する工程の前に、さらに、
成長用基板の上に、前記半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜の上に、電極膜として前記第1の膜を形成する工程と、
支持基板と前記成長用基板との間に前記第1の膜が挟まれる向きで、前記成長用基板を前記支持基板に貼り合わせる工程と、
前記成長用基板を除去することにより、前記支持基板、前記第1の膜、及び前記半導体膜を含む前記積層基板を得る工程と
を有する請求項4に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記半導体膜はc軸を厚さ方向と平行にする窒化物半導体で形成されており、前記半導体膜をエッチングする際に、窒化物半導体の−c極性の表面が露出している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体素子の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−96707(P2011−96707A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246224(P2009−246224)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】