説明

半導体素子接着用樹脂ペースト組成物及び半導体装置

【課題】導電性フィラーとしてアルミニウム粉を用いながらも、優れた電気伝導性及びダイシェア強度を有する半導体素子接着用樹脂ペースト組成物を提供すること。
【解決手段】1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と、1分子中に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と、重合開始剤と、可とう化剤と、アルミニウム粉と、を含有する、半導体素子接着用樹脂ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC、LSI等の半導体素子とリードフレーム、ガラスエポキシ配線板等の支持部材とを接着するのに好適な半導体素子接着用樹脂ペースト組成物、及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体のダイボンディング材としては、Au−Si共晶、半田、樹脂ペースト組成物等が知られているが、作業性及びコストの点から樹脂ペースト組成物が広く使用されている。
【0003】
一般に、半導体装置は半導体チップなどの素子をダイボンディング材によりリードフレームに接着して製造している。半導体装置の実装方式は高密度実装の点から、従来のピン挿入方式から表面実装方式へと移行しているが、基板への実装には基板全体を赤外線等で加熱するリフローソルダリングが用いられ、パッケージが200℃以上の高温に加熱されるため、吸湿した水分の急激な膨張によりペースト層の剥離が発生することがある。そのため、ダイボンディングペーストにはSiチップとリードフレーム間の接着強度が高いことが要求される。
【0004】
また半導体チップなどの素子をリードフレームに接着させるなどのために使用される樹脂ペースト組成物には導電性フィラーとして、例えば金粉、銀粉、銅粉などの金属粉を使用することが考えられるが、金粉ほどの希少価値ではなく、銅粉のように酸化されやすく保存安定性に劣るものでもなく、さらに塗布作業性や機械特性に優れ、樹脂ペースト組成物に要求される諸特性も優れるなどの理由から、現在は銀粉を用いた樹脂ペースト組成物が主に用いられている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−179769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、銀粉自体も貴金属であって希少価値が高い材料であることから、ダイボンディング材料としてはより入手の容易な他のフィラー材料を使用したダイボンディング材の開発が望まれるが、現在のところ、銀粉にかわる材料を使って銀粉と同等以上の特性を有する樹脂ペースト組成物が得られていないのが現状である。
【0007】
例えば、本発明者らの知見によれば、特許文献1に記載の樹脂ペースト組成物における銀粉の一部をアルミニウム粉に置き換えた場合には、十分な電気伝導性(十分に低い体積抵抗率)が得られない。
【0008】
本発明は、導電性フィラーとしてアルミニウム粉を用いながらも、優れた電気伝導性及びダイシェア強度を有する半導体素子接着用樹脂ペースト組成物を提供することを目的とする。また本発明は、当該半導体素子接着用樹脂ペースト組成物を用いて製造された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と、1分子中に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と、重合開始剤と、可とう化剤と、アルミニウム粉と、を含有する、半導体素子接着用樹脂ペースト組成物を提供する。
【0010】
本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物は、その組成を上記特定のものとすることにより、導電性フィラーとしてアルミニウム粉を用いながらも、優れた電気伝導性及びダイシェア強度を有する。
【0011】
本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物は、アミン化合物をさらに含有していてもよい。このような半導体素子接着用樹脂ペースト組成物は、電気伝導性及びダイシェア強度が一層向上する。
【0012】
また、本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物において、上記アルミニウム粉の形状は粒状であることが好ましく、上記アルミニウム粉の平均粒径は2〜10μmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物は、銀粉をさらに含有していてもよい。本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物は、導電性フィラーとしてアルミニウム粉を含有しているため、希少価値が高い銀粉を多量に用いなくとも電気伝導性などの諸特性を十分に得ることができる。
【0014】
また、本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物において、上記銀粉の形状はフレーク状であることが好ましく、上記銀粉の平均粒径は1〜5μmであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物において、上記銀粉の含有量Cに対する上記アルミウム粉の含有量Cの比C/Cは、質量比で2/8〜8/2とすることができる。
【0016】
また、本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物は、実質的に芳香族系エポキシ樹脂を含有しないことが好ましい。このような半導体素子接着用樹脂ペースト組成物は、電気伝導性に一層優れる。
【0017】
本発明はまた、支持部材と、半導体素子と、上記支持部材及び上記半導体素子の間に配置され、上記支持部材及び上記半導体素子を接着する接着層と、を備え、上記接着層が、上記本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物の硬化物を含む、半導体装置を提供する。
【0018】
本発明の半導体装置は、支持部材と半導体素子とが上記本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物により接着されているため、安価なアルミニウム粉を用いながらも十分な信頼性を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、導電性フィラーとしてアルミニウム粉を用いながらも、優れた電気伝導性及びダイシェア強度を有する半導体素子接着用樹脂ペースト組成物が提供される。また本発明によれば、当該半導体素子接着用樹脂ペースト組成物を用いて製造された半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】体積抵抗率の測定に用いる試験サンプルの作製方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物の好適な実施形態について以下に説明する。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。すなわち、「(メタ)アクリロイルオキシ基を有する」とは、アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を有することを意味する。
【0022】
本実施形態に係る半導体素子接着用樹脂ペースト組成物(以下、単に「樹脂ペースト組成物」と称する。)は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、場合により「(A−1)成分」と称する。)と、1分子中に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、場合により「(A−3)成分」と称する。)と、重合開始剤(以下、場合により「(B)成分」と称する。)と、可とう化剤(以下、場合により「(C)成分」と称する。)と、アルミニウム粉(以下、場合により「(D)成分」と称する。)と、を含有する。
【0023】
樹脂ペースト組成物においては、上記特定の成分を組み合わせて用いることで、優れた電気伝導性及びダイシェア強度が得られる。
【0024】
(A−1)成分は、1分子中に1個のアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する化合物である。(A−1)成分としては、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(A−1)成分の1個のアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ダイマージオールモノアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、アクリロキシエチルホスフェート、アクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートが挙げられる。
【0026】
(A−1)成分の1個のメタクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ダイマージオールモノメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレ−ト、ジシクロペンテニルメタクリレ−ト、テトラヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートが挙げられる。
【0027】
(A−1)成分としては、樹脂ペースト組成物を用いて製造した半導体装置におけるダイシェア強度の観点から、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【0028】
【化1】

【0029】
式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは脂環式基又は複素環式基を示し、Xは炭素数1〜5のアルキレン基を示し、nは0〜10の整数を示す。nが2以上の整数であるとき、複数存在するXは互いに同一であっても異なっていてもよい。ここで脂環式基は、炭素原子が環状に結合した構造を有する基であり、複素環式基は、炭素原子とヘテロ原子とが環状に結合した構造を有する基である。
【0030】
脂環式基としては、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表される基が挙げられる。
【0031】
【化2】

【0032】
式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0033】
複素環式基としては、下記式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される基が挙げられる。
【0034】
【化3】

【0035】
式中、R、R、R、R及びR10はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0036】
式(I)で表される化合物としては、例えば、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレートシクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレ−ト、ジシクロペンテニルメタクリレ−ト、テトラヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレートが挙げられる。
【0037】
(A−1)成分の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で、5〜15質量%であることが好ましく、6〜12質量%であることがより好ましい。(A−1)成分の含有量が5質量%以上であると接着強度が一層向上し、15質量%以下であると、樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。
【0038】
(A−3)成分は、1分子中にアクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基を3個有する化合物である。(A−3)成分としては、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
(A−3)成分の1分子中に3個のアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド・プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレートが挙げられる。
【0040】
(A−3)成分の1分子中に3個のメタクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキシド・プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、グリセリンプロポキシトリメタクリレートが挙げられる。
【0041】
(A−3)成分としては、樹脂ペースト組成物を用いて製造した半導体装置におけるダイシェア強度の観点から、下記式(II)で表される化合物が好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0042】
【化4】

【0043】
式中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Y、Y及びYはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ独立に0〜10の整数を示す。pが2以上の整数であるとき、複数存在するYは互いに同一であっても異なっていてもよい。qが2以上の整数であるとき、複数存在するYは互いに同一であっても異なっていてもよい。rが2以上の整数であるとき、複数存在するYは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
(A−3)成分の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で、4〜17質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。(A−3)成分の含有量が4質量%以上であると接着強度が一層向上し、15質量%以下であると、樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。
【0045】
樹脂ペースト組成物は、本発明の効果を損ねない程度に、1分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、場合により「(A−2)成分」と称する。)をさらに含有していてもよい。
【0046】
(A−2)成分の1分子中に2個のアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ダイマージオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。また、(A−2)成分としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルとの反応物;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート;等も挙げられる。
【0047】
(A−2)成分の1分子中に2個のメタクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ダイマージオールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ビス(メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。また、(A−2)成分としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルとの反応物;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジメタクリレート;等も挙げられる。
【0048】
(A−2)成分としては、樹脂ペースト組成物を用いて製造した半導体装置におけるダイシェア強度の観点から、下記式(III)で表される化合物が好ましい。
【0049】
【化5】

【0050】
式中、R21及びR22はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R23及びR24はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Y11及びY12はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を示し、s及びtはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。sが2以上の整数であるとき、複数存在するY11は互いに同一であっても異なっていてもよい。tが2以上の整数であるとき、複数存在するY12は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0051】
樹脂ペースト組成物は、本発明の効果を損ねない程度に、1分子中に4個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、場合により「(A−4)成分」と称する。)をさらに含有していてもよい。
【0052】
(A−4)成分としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートが挙げられる。
【0053】
(B)成分は、(A−1)成分及び(A−3)成分を重合させて樹脂ペースト組成物を硬化させるための成分であり、加熱及び/又は光照射によってラジカルを発生する化合物であることが好ましい。(B)成分としては、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。なお、(B)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系ラジカル開始剤;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)へキサン等の過酸化物;が挙げられる。
【0055】
光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等のアセトフェノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類;が挙げられる。
【0056】
(B)成分としては、樹脂ペースト組成物の硬化物中におけるボイドと呼ばれる空隙の発生を低減できるため、過酸化物が好ましい。また、樹脂ペースト組成物の硬化性及び粘度安定性が一層向上することから、過酸化物の10時間半減期温度は、70〜170℃であることが好ましい。ここで半減期とは、一定温度における、過酸化物が分解してその活性酸素量が1/2になるまでに要する時間を示し、10時間半減期温度とは、半減期が10時間となる温度を示す。
【0057】
半減期は、例えば、以下のようにして測定することができる。まず、ラジカルに対して比較的不活性な溶液、例えばベンゼンを使用して、0.1mol/l濃度の過酸化物溶液を調整し、窒素置換を行ったガラス管中に密閉する。そして、所定温度にセットした恒温槽に浸し、熱分解させる。一般的に過酸化物の分解は近似的に一次反応として取り扱うことができるので、t時間後までに分解した過酸化物の濃度x、分解速度定数k、時間t、初期過酸化物濃度aとすると、下記式(i)が成り立つ。
dx/dt=k(a−x) (i)
そして、式(i)を変形すると式(ii)になる。
ln a/(a−x)=kt (ii)
半減期は、分解により過酸化物濃度が初期の半分に減ずるまでの時間であるので、半減期をt1/2で示し、式(ii)のxにa/2を代入すると、式(iii)になる。
kt1/2=ln2 (iii)
したがって、ある一定温度で熱分解させ、得られた直線の傾きから分解速度定数kを求め、式(iii)からその温度における半減期(t1/2)を求めることができる。
【0058】
(B)成分の含有量は、(A−1)成分及び(A−3)成分の総量100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、2〜7質量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量が0.1質量部以上であると樹脂ペースト組成物の硬化性が一層良好となる。また、(B)成分の含有量が10質量部を超えると、樹脂ペースト組成物の硬化時に揮発分が多く発生し、樹脂ペースト組成物の硬化物中にボイドと呼ばれる空隙が生じやすくなる傾向がある。(B)成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
また、(B)成分の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で、0.1〜5質量%であることが好ましく、0.6〜1質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量が0.1質量%以上であると樹脂ペースト組成物の硬化性が一層良好となる。また、(B)成分の含有量が5質量%を超えると、樹脂ペースト組成物の硬化時に揮発分が多く発生し、樹脂ペースト組成物の硬化物中にボイドと呼ばれる空隙が生じやすくなる傾向がある。
【0060】
(C)成分は、樹脂ペースト組成物の硬化物に可とう性を付与する成分である。樹脂ペースト組成物に(C)成分を配合することによって、熱膨張及び/又は収縮に対する応力緩和の効果が得られる。(C)成分としては、特に制限は無いが、液状ゴム及び熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0061】
液状ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、マレイン化ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴム、アミノ末端アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル末端アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のポリブタジエン骨格を有する液状ゴムが挙げられる。
【0062】
液状ゴムの数平均分子量は、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。数平均分子量が500以上であると、可とう化効果に一層優れ、10000以下であると、可とう化剤による樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を利用して測定(以下、GPC法という)した値である。
【0063】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸アルキル等のアクリル樹脂、ε−カプロラクトン変性ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0064】
熱可塑性樹脂の数平均分子量は、10000〜300000であることが好ましく、20000〜200000であることがより好ましい。数平均分子量が10000以上であると、可とう化効果に一層優れ、300000以下であると、可とう化剤による樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。なお、数平均分子量は、GPC法により測定した値である。
【0065】
樹脂ペースト組成物は、硬化物の弾性率をより低減できる観点から、(C)成分としてエポキシ化ポリブタジエンを含有することが好ましい。
【0066】
エポキシ化ポリブタジエンは、一般に市販されているポリブタジエンを、過酸化水素水、過酸類等によりエポキシ化することによって容易に得ることができる。
【0067】
エポキシ化ポリブタジエンとしては、例えば、B−1000、B−3000、G−1000、G−3000(以上、日本曹達(株)製)、B−1000、B−2000、B−3000、B−4000(以上、日本石油(株)製)、R−15HT、R−45HT、R−45M(以上、出光石油(株)製)、エポリードPB−3600、エポリードPB−4700(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が市販品として入手可能である。エポキシ化ポリブタジエンのオキシラン酸素濃度は、3〜18%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。
【0068】
樹脂ペースト組成物は、硬化物の弾性率をより低減できるとともに、ダイシェア強度をより向上できる観点からは、(C)成分としてカルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムを含有することが好ましい。カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムとしては、式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0069】
【化6】

【0070】
式中、mは5〜50の整数を示し、a及びbはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。aとbの比(a/b)は、95/5〜50/50であることが好ましい。
【0071】
式(IV)で表される化合物としては、例えば、Hycar CTBN−2009×162、CTBN−1300×31、CTBN−1300×8、CTBN−1300×13、CTBN−1009SP−S、CTBNX−1300×9(いずれも宇部興産(株)製)が市販品として入手可能である。
【0072】
樹脂ペースト組成物は、作業性及び接着強度の観点から、(C)成分としてエポキシ化ポリブタジエンとカルボキシル基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムとを併用することが好ましい。
【0073】
(C)成分の含有量は、(A−1)成分及び(A−3)成分の総量100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましく、30〜80質量部であることがさらに好ましい。(C)成分の含有量が10質量部以上であると、可とう化効果に一層優れ、200質量部以下であると、可とう化剤による樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。
【0074】
また、(C)成分の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で、3〜12質量%であることが好ましく、4〜10質量%であることがより好ましい。(C)成分の含有量が3質量%以上であると、可とう化効果に一層優れ、12質量%以下であると、可とう化剤による樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。
【0075】
(D)成分のアルミニウム粉は、従来の樹脂ペーストでフィラーとして使用されていた銀粉の一部又は全部を代替する成分である。本実施形態に係る樹脂ペースト組成物においては、上記各成分と組合せることで、銀粉の一部又は全部を(D)成分に代替しても、優れた電気伝導性及びダイシェア強度が実現される。
【0076】
(D)成分の平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、2〜9μmであることがより好ましく、3〜8μm以下であることがさらに好ましい。平均粒径が10μm以下であると、樹脂ペースト組成物の均一性及び各種物性が一層良好になる。ここで平均粒径は、レーザー光回折法を利用した粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラックX100)でメジアン径として求めることができるものである。メジアン径とは個数基準の粒度分布における累積率が50%となる粒子径(D50)の値を示す。
【0077】
(D)成分の見かけ密度は、0.40〜1.20g/cmが好ましく、0.55〜0.95g/cmであることがより好ましい。(D)成分の形状は、粒状、フレーク状、球状、針状、不規則形等が挙げられるが、粒状であることが好ましい。
【0078】
(D)成分の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で、10〜50質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましく、20〜35質量%であることが特に好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲内であると、樹脂ペースト組成物の電気伝導性、粘度等の特性がダイボンディング材として一層好適なものとなる。
【0079】
樹脂ペースト組成物は、アミン化合物(以下、場合により「(E)成分」と称する。)をさらに含有していてもよい。アミン化合物を配合することで、樹脂ペースト組成物の電気伝導性及びダイシェア強度が一層向上する。
【0080】
(E)成分としては、ジシアンジアミド、下記式(V)で表される化合物(二塩基ジヒドラジドともいう。)、エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤、イミダゾール化合物等が挙げられる。(E)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
【化7】

【0082】
式中、R31はアリーレン基又は炭素数2〜12のアルキレン基を示す。アルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、アリーレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基等が挙げられる。
【0083】
イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、等が挙げられる。
【0084】
式(V)で表される化合物としては、AFH、PFH、SFH(いずれも日本ヒドラジン工業(株)、商品名)等を用いることができ、マイクロカプセル型硬化剤としては、ノバキュア(旭化成工業(株)、商品名)等を用いることができ、イミダゾール化合物としては、キュアゾール、2P4MHZ、C17Z、2PZ−OK(いずれも四国化成(株)製、商品名)等を用いることができる。
【0085】
硬化物の強度の観点から、樹脂ペースト組成物は、(E)成分としてジシアンジアミド及びイミダゾール化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、少なくともジシアンジアミドを含有することがより好ましい。
【0086】
(E)成分の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で、0.05〜1.5質量%であることが好ましく、0.1〜1.0質量%であることがより好ましい。(E)成分の含有量が0.05質量%以上であると、硬化性が一層向上し、1.5質量%以下であると、樹脂ペースト組成物の安定性が一層良好になる。
【0087】
樹脂ペースト組成物は、銀粉をさらに含有していてもよい。但し、樹脂ペースト組成物は、銀粉の代替成分である(D)成分を含有するものであるため、従来の樹脂ペーストと比較して銀粉の含有量が少ない場合でも、優れた電気伝導性が得られる。
【0088】
銀粉の平均粒径は、1〜5μmであることが好ましい。ここで平均粒径は、レーザー光回折法を利用した粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラックX100)でメジアン径として求めることができるものである。メジアン径とは個数基準の粒度分布における累積率が50%となる粒子径(D50)の値を示す。
【0089】
銀粉のタップ密度は、3〜6g/cmであることが好ましい。また、銀粉の比表面積は、0.5〜1m/gであることが好ましい。また、銀粉の形状は、粒状、フレーク状、球状、針状、不規則形などが挙げられるが、フレーク状であることが好ましい。このような銀粉を、上記アルミニウム粉と組み合わせて用いることで、電気伝導性、ダイシェア強度、保存安定性、塗布作業性及び機械特性に一層優れる樹脂ペースト組成物が得られる。
【0090】
銀粉の含有量Cに対する(D)成分であるアルミニウム粉の含有量Cの比C/C(質量比)は、2/8〜8/2であることが好ましく、3/7〜7/3であることがより好ましく、4/6〜6/4であることが特に好ましくい。比C/Cが8/2より大きいと、樹脂ペーストの粘度が増大し、作業性が低下する場合がある。
【0091】
樹脂ペースト組成物は、(D)成分及び銀粉以外の導電性微粒子をさらに含有していてもよい。このような導電性微粒子としては、平均粒径が10μm未満である導電性微粒子が好ましい。また、導電性微粒子としては、金、銅、ニッケル、鉄、ステンレス等を含む導電性微粒子が挙げられる。
【0092】
(D)成分、銀粉及び上記導電性微粒子の総含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で、60〜85質量%であることが好ましく、65〜80質量%であることがより好ましく、70〜80質量%であることが特に好ましい。(D)成分、銀粉及び上記導電性微粒子の総含有量が上記範囲内であると、樹脂ペースト組成物の電気伝導性、粘度等の特性がダイボンディング材として一層好適なものとなる。
【0093】
樹脂ペースト組成物は、カップリング剤をさらに含有していてもよい。カップリング剤としては、特に制限はなく、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等の各種のものが用いられる。カップリング剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(メタクリロキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリグリシドキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、エトキシシラントリイソシアネート等が挙げられる。
【0095】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0096】
アルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピオネート等が挙げられる。
【0097】
ジルコネート系カップリング剤としては、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、ジルコニウムアセチルアセトネートアセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート等が挙げられる。
【0098】
また、カップリング剤の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で、0.5〜6.0質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることがより好ましい。カップリング剤の含有量が0.5質量%以上であると、接着強度が一層向上する傾向がある。また、カップリング剤の含有量が6.0質量%を超えると、樹脂ペースト組成物の硬化時に揮発分が多く発生し、樹脂ペースト組成物の硬化物中にボイドと呼ばれる空隙が生じやすくなる傾向がある。
【0099】
樹脂ペースト組成物は、バインダー樹脂成分としてエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などを更に含有していてもよい。但し、樹脂ペースト組成物は、実質的に芳香族系エポキシ樹脂を含有しないことが好ましい。樹脂ペースト組成物が芳香族系エポキシ樹脂を含有すると体積抵抗率が低下する傾向がある。
【0100】
ここで、「実質的に芳香族系エポキシ樹脂を含有しない」とは、体積抵抗率の急激な上昇が観測されない程度で、芳香族系エポキシ樹脂が微量に存在してもよいことを意味する。具体的には、芳香族系エポキシ樹脂の含有量が樹脂ペースト組成物の総量基準で0.1質量%以下であればよく、0.05質量%以下であることが好ましい。また、芳香族系エポキシ樹脂を含有しないことがより好ましい。
【0101】
樹脂ペースト組成物は、さらに必要に応じて、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤;フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高級脂肪酸等の濡れ向上剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤;等を、適宜組み合わせて添加することができる。
【0102】
樹脂ペースト組成物は、上述した各成分を一括して又は分割して、撹拌器、ハイブリッドミキサー、ライカイ器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせた装置に投入し、必要に応じて加熱して、混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすることにより得ることができる。
【0103】
樹脂ペースト組成物の25℃における粘度は、作業性の観点から、30〜200Pa・sであることが好ましく、40〜150Pa・sであることがより好ましく、40〜80Pa・sであることがさらに好ましい。
【0104】
本実施形態に係る半導体装置は、支持部材と、半導体素子と、支持部材及び半導体素子の間に配置され、支持部材及び半導体素子を接着する接着層と、を備え、接着層が上記樹脂ペースト組成物の硬化物を含むものである。このような半導体装置は、上記樹脂ペースト組成物の硬化物により、支持部材と半導体素子とが接着されているため、電気伝導性及び信頼性に優れる。
【0105】
支持部材としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドとからなるBTレジン使用基板)等の有機基板が挙げられる。
【0106】
樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材上に接着する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0107】
まず、支持部材上に樹脂ペースト組成物をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等の方法で塗布して、樹脂層を形成する。次いで、樹脂層の支持基材と反対側の面から半導体素子を圧着し、その後、オーブン、ヒートブロック等の加熱装置を用いて、樹脂層を加熱硬化する。これにより、支持部材上に半導体素子が接着される。
【0108】
支持部材上に半導体素子を接着した後、必要に応じてワイヤボンド工程、封止工程、等を行うことにより、本実施形態に係る半導体装置を得ることができる。なお、ワイヤボンド工程及び封止工程は、従来公知の方法により行うことができる。
【0109】
上記加熱硬化は、例えば、加熱温度150〜220℃(好ましくは180〜200℃)、加熱時間30秒〜2時間(好ましくは1時間〜1.5時間)の条件で行うことができる。
【0110】
通常、支持部材として有機基板を用いる場合には、有機基板が吸着した水分が接着時の加熱により蒸発してボイドの原因となるおそれがあるため、組み立て前に有機基板の乾燥を行うことが好ましい。
【0111】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0112】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0113】
実施例及び比較例で用いた成分を以下に例示する。
(1)(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物
・FA−512A(ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、日立化成工業(株)製、商品名、下記式(a−1)で表される化合物、(A−1)成分)
・A−TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート、新中村化学工業(株)製、商品名、下記式(a−2)で表される化合物、(A−3)成分)
・TMPT(トリメチロールプロパントリメタクリレート、新中村化学工業(株)製、商品名、下記式(a−3)で表される化合物、(A−3)成分)
【0114】
【化8】

【0115】
(2)(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する化合物
・SR−349(EO変性ビスフェノールAジアクリレート、サートマー社製、商品名、下記式(a−4)で表される化合物、(A−2)成分)
・FA−124M(1,4−ブタンジオールジメタクリレート、日立化成工業(株)製、商品名、下記式(a−5)で表される化合物、(A−2)成分)
【0116】
【化9】

【0117】
(3)重合開始剤((B)成分)
・トリゴノックス22−70E(化薬アクゾ(株)製、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの商品名)
(4)可とう化剤((C)成分)
・CTBN−1009SP−S(宇部興産(株)製、カルボキシ基を有するアクリロニトリルポリブタジエン共重合体の商品名)
・エポリードPB−4700(ダイセル化学工業(株)製、エポキシ化ポリブタジエンの商品名、エポキシ当量=152.4〜177.8、数平均分子量=3500)
(5)アルミニウム粉((D)成分)
・VA−2000(山石金属(株)製、アルミニウム粉の製品名、形状:粒状、平均粒径=6.7μm)
(6)アミン化合物((E)成分)
・Dicy(ジャパンエポキシレジン(株)製、ジシアンジアミドの商品名)
(7)銀粉
・AgC−212DH(福田金属箔粉工業(株)製、銀粉の商品名、形状:燐片状、平均粒径=2.9μm)
(8)カップリング剤
・SZ−6030(東レダウコーニング(株)製、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
・KBM−403(信越化学工業(株)製、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0118】
(実施例1〜2、比較例1〜6)
表1又は表2に示す配合割合(質量比)で各成分を混合し、プラネタリミキサを用いて混練した後、666.61Pa(5トル(Torr))以下で10分間脱泡処理を行い、樹脂ペースト組成物を得た。得られた樹脂ペースト組成物の特性(ダイシェア接着強度、体積抵抗率)を以下に示す方法で測定した。結果は表1又は表2に示すとおりであった。
【0119】
(ダイシェア強度の測定)
樹脂ペースト組成物を、Ni/Auメッキ付き銅フレーム(表2中、「Ni/Auメッキ」と略称する。)、Agめっき付き銅リードフレーム(表2中、「Agスポットメッキ」と略称する。)及びAgリングめっき付き銅リードフレーム(表2中、「Agリングメッキ」と略称する。)の各基板上にぞれぞれ約0.5mg塗布し、この上に3mm×3mmのSiチップ(厚さ約0.4mm)を圧着し、さらにオーブンで180℃まで30分で昇温し180℃で1時間硬化させて、試験サンプルを得た。
【0120】
得られた各試験サンプルについて、自動接着力試験装置(BT4000、Dage社製)を用い、260℃/20秒保持時の剪断接着強度(MPa)を測定した。なおダイシェア強度の測定は、各基板について10個ずつの試験サンプルで行い、その平均値を評価した。
【0121】
(体積抵抗率の測定)
図1は、体積抵抗率の測定に用いる試験サンプルの作製方法を示す模式図である。試験サンプルは、樹脂ペースト組成物、スライドグラス(東京硝子器機(株)製、寸法=76×26mm、厚さ=0.9〜1.2mm)、及び紙テープ(日東電工CSシステム製、No.7210F、寸法幅=18mm、厚さ=0.10mm)を用いて、図1に示すように作製した。作製した試験サンプルについて、デジタルマルチメーター(TR6846、ADVANTEST社製)を用い、体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0122】
なお、試験サンプルは、以下の方法で作製した。まず図1(a)に示すように、スライドグラス1の主面上に、3枚の紙テープ2を紙テープ2同士の間隔が約2mmとなるように貼り付けた。次いで、図1(b)に示すように、樹脂ペースト組成物3を紙テープ2の間で露出したスライドグラス1上に置いた。そして、紙テープ2を除去し、オーブンで180℃で1時間加熱して樹脂ペースト組成物3を硬化させ、図1(c)に示す試験サンプル10を作製した。作製した試験サンプル10は、スライドグラス1の主面上に樹脂ペースト組成物の硬化物からなる2mm幅の樹脂層4が設けらた構造を有している。この樹脂層4の体積抵抗率を、上記の方法で測定した。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
表1及び表2に記載のとおり、実施例の樹脂ペースト組成物では希少価値が高い銀を大量に用いずとも、優れた電気伝導性が得られた。また、実施例の樹脂ペースト組成物は、いずれの基板に対しても高いダイシェア強度を示し、優れた接着性を有するものであった。
【符号の説明】
【0126】
1…スライドグラス、2…紙テープ、3…樹脂ペースト組成物、4…樹脂層、10…試験サンプル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と、1分子中に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と、重合開始剤と、可とう化剤と、アルミニウム粉と、を含有する、半導体素子接着用樹脂ペースト組成物。
【請求項2】
アミン化合物をさらに含有する、請求項1に記載の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物。
【請求項3】
前記アルミニウム粉の形状が粒状であり、
前記アルミニウム粉の平均粒径が2〜10μmである、請求項1又は2に記載の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物。
【請求項4】
銀粉をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物。
【請求項5】
前記銀粉の形状がフレーク状であり、
前記銀粉の平均粒径が1〜5μmである、請求項4に記載の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物。
【請求項6】
前記銀粉の含有量Cに対する前記アルミウム粉の含有量Cの比C/Cが、質量比で2/8〜8/2である、請求項4又は5に記載の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物。
【請求項7】
実質的に芳香族系エポキシ樹脂を含有しない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物。
【請求項8】
支持部材と、半導体素子と、前記支持部材及び前記半導体素子の間に配置され、前記支持部材及び前記半導体素子を接着する接着層と、を備え、
前記接着層が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体素子接着用樹脂ペースト組成物の硬化物を含む、半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−188622(P2012−188622A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55457(P2011−55457)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】