説明

半導体装置、ダイシング刃および半導体装置の製造方法

【課題】パッド電極の腐食を抑制することができる半導体装置、ダイシング刃および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板10の上に第1の層間絶縁膜11、第2の層間絶縁膜13が形成されている。第1の層間絶縁膜11内には第1のCu配線12が、第2の層間絶縁膜13には第2のCu配線14が形成されている。第2のCu配線14の上には、バリアメタル17を介して、パッド電極18が形成されている。パッド電極18はMgを含むAlCuからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、ダイシング刃および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の微細化に伴うチップサイズの縮小と、半導体装置を形成するウェハの大口径化に伴い、1ウェハ当たりの半導体装置のダイシング時間が長くなる傾向がある。
【0003】
以下、従来の半導体装置のダイシング法について説明する。図8(a)は、従来の半導体装置のダイシング工程を示す図である。従来のダイシング法では、配管124a、124bからはCO2を溶解した酸性の冷却水を、配管124cからはNH3を溶解した塩基性の冷却水を、ウェハ121と回転歯123との接触部位に高圧で噴射している。この方法では、酸性の冷却水が塩基性の冷却水によって中和されるため、ダイシング時に、基板表面に露出する端子電極の腐食及び帯電や外部リードとの接着性低下を抑制することができる。
【0004】
図8(b)は、従来の配線構造を示す断面図である。
【0005】
図8(b)に示す構造では、半導体基板110の上に、層間絶縁膜111、113が形成されている。層間絶縁膜111、113内にはCu配線112、114が形成されており、Cu配線114の上にはパッド電極118が形成されている。パッド電極118としては、AlCuが一般的に用いられている。
【0006】
純Alをパッド電極として用いた場合には、電子がAlを突き動かすことにより生じるEM(electromigration)不良が起こりやすいが、AlCuをパッド電極として用いると、EM不良を改善することができる。
【0007】
また、パッド電極としてAlCuを用いると、AlとAuは合金を形成しやすいため、組立時にワイヤーの金線との接着性が良好になる。さらに、AlCuをパッド電極として用いると、他のAl配線プロセスと設備を共有化できるメリットがある。
【特許文献1】特開平03−235350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のダイシング工程では、次のような問題が生じていた。
【0009】
ウエハの大口径化及び半導体装置の微細化によって、ダイシング時間が長くなると、ウェハが、ダイシング時の冷却水又は洗浄水に長時間浸かっていることになる。そのため、パッド電極118に含まれるAlが腐食し、後工程でワイヤーボンドの不着が起こるなど、半導体装置の信頼性が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パッド電極の腐食を抑制することができる半導体装置、ダイシング刃および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜の上に形成された第1の金属を含む配線と、前記配線と電気的に接続され、第2の金属及び前記第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素を含む電極とを備え、前記電極中における前記元素の含有量は、前記電極中における前記2の金属の含有量よりも少ない。
【0012】
本発明の第1形態の半導体装置によると、電極に、第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素を含有させることにより、半導体装置をダイシングにより切り出す工程において、第2の金属ではなく前記元素がイオン化しやすくなる。その結果、ダイシング工程において、第2の金属が液体に溶け出すのを抑制することができるため、電極の腐食を防止することができる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、ワイヤーと電極との密着性を高めることができるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0013】
本発明の第1態様の半導体装置において、前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向よりも低くてもよい。
【0014】
本発明の第1態様の半導体装置において、前記第1の金属はCuであって、前記第2の金属はAlであって、前記元素はMg、Li、KまたはCaであってもよい。
【0015】
本発明の第1態様のダイシング刃は、半導体基板をダイシングするためのダイシング刃であって、Alよりもイオン化傾向の高い元素を含んでいる。
【0016】
本発明の第1態様のダイシング刃では、Alよりもイオン化傾向の高い元素をダイシング刃に含有させることにより、半導体基板をダイシングする際に、Alよりも前記元素のイオン化が進行しやすくなる。その結果、半導体基板の上の配線や電極がイオン化傾向の異なる金属から構成されている場合であっても、それらの金属の異種金属腐食が起こりにくくなり、液体にこれらの金属が溶け出すのを抑制することができるため、電極の腐食を防止することができる。
【0017】
本発明の第1態様のダイシング刃において、前記元素は、Mg、Li、KまたはCaであってもよい。
【0018】
本発明の第1態様の半導体装置の製造方法は、半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程(a)と、前記絶縁膜の上に、第1の金属を含む配線を形成する工程(b)と、前記配線と電気的に接続され、第2の金属及び前記第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素を含む電極を形成する工程(c)とを備え、前記電極中における前記元素の含有量は、前記電極中における前記2の金属の含有量よりも少なくする。
【0019】
本発明の第1態様の半導体装置の製造方法によると、前記電極中に、第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素を含有させることにより、ウェハをダイシングする際には、第2の金属ではなく前記元素がイオン化しやすくなる。その結果、ダイシング工程において、第2の金属が液体に溶け出すのを抑制することができるため、電極の腐食を防止することができる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、ワイヤーと電極との密着性を高めることができるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0020】
本発明の第1態様の半導体装置の製造方法において、前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向よりも低くてもよい。
【0021】
本発明の第1態様の半導体装置の製造方法において、前記第1の金属はCuであって、前記第2の金属はAlであって、前記元素はMg、Li、KまたはCaであってもよい。
【0022】
本発明の第2態様の半導体装置の製造方法は、半導体装置のダイシング工程を含む半導体装置の製造方法であって、前記半導体装置は、第1の金属を含む配線と、前記配線と電気的に接続され、前記第1の金属よりもイオン化傾向の高い第2の金属を含む電極とを備え、前記ダイシング工程では、第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素を含むダイシング刃を用いてダイシングを行う。
【0023】
本発明の第2態様の半導体装置の製造方法によると、半導体装置をダイシングする際には、ダイシング刃に含まれる元素が、電極に含まれる第2の金属よりもイオン化しやすくなる。その結果、第2の金属が液体に溶け出すのを抑制することができるため、電極の腐食を防止することができる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、ワイヤーと電極との密着性を高めることができるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0024】
本発明の第2態様の半導体装置の製造方法において、前記元素は、Mg、Li、KまたはCaであってもよい。
【0025】
本発明の第3態様の半導体装置の製造方法は、半導体装置のダイシング工程を含む半導体装置の製造方法であって、前記半導体装置は、第1の金属を含む配線と、前記配線と電気的に接続され、前記第1の金属よりもイオン化傾向の高い第2の金属を含む電極とを備え、前記ダイシング工程では、前記第2の金属のイオン化を防止するイオン化防止剤を供給しながらダイシングを行ってもよい。
【0026】
本発明の第3態様の半導体装置の製造方法によると、半導体装置をダイシングする際には、第2の金属がイオン化しにくくなる結果、電極の腐食を防止することができる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、ワイヤーと電極との密着性を高めることができるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0027】
本発明の第3態様の半導体装置の製造方法において、前記イオン化防止材は、前記第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素であって、前記ダイシング工程では、前記元素を含む液体を供給しながら前記ダイシングを行ってもよい。
【0028】
この場合に、前記元素は、Mg、Li、KまたはCaであってもよい。
【0029】
本発明の第3態様の半導体装置の製造方法において、前記イオン化防止剤は塩基性緩衝液であって、前記ダイシング工程では、前記塩基性緩衝液を供給しながら前記ダイシングを行ってもよい。
【0030】
本発明の第3態様の半導体装置の製造方法において、前記イオン化防止剤は水素であって、前記ダイシング工程では、大気中の水素分圧よりも高い分圧の水素を含む雰囲気中で、液体を供給しながら前記ダイシングを行ってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、ダイシングの際の電極の腐食を防止することにより、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(本発明の思想)
図8(b)に示すように、パッド電極118にはAlが含まれており、このAlのイオン化傾向は、Cu配線114のCuのイオン化傾向よりも格段に高い。したがって、パッド電極118とCu配線114との界面では、Alが電子を放出しやすくなる。その結果、図1に示すように、パッド電極118とCu配線114との界面では、Al側を負極1とし、Cu側を正極2とする電池が形成されて、Alのイオン化が進行することとなる。
【0033】
本発明では、上記イオン化傾向を考慮することにより、アルミのイオン化を抑制することとした。
【0034】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。図2に示すように、本実施形態の半導体装置では、半導体基板10の上に第1の層間絶縁膜11が形成され、第1の層間絶縁膜11の上に第2の層間絶縁膜13が形成されている。なお、図示は省略するが、半導体基板10には、MISFETなどの素子が形成されている。
【0035】
第1の層間絶縁膜11の上層部には第1のCu配線12が形成されている。図2に示す断面には示されていないが、この第1のCu配線12は、他の部分において、半導体基板10に形成されたMISFETなどの素子(図示せず)に接続されている。そして、第2の層間絶縁膜13には、第1のCu配線12と接触する第2のCu配線14が形成されている。
【0036】
第2の層間絶縁膜13の上にはシリコン窒化膜(SiN)からなる第1の表面保護膜15が形成されている。第1の表面保護膜15には、第2のCu配線14を露出する開口16が形成されている。開口16内には、TiNからなるバリアメタル17を介してパッド電極18が形成されている。パッド電極18はMgを含むAlCu膜からなっている。パッド電極18に含まれるMgの量はどの程度であってもよいが、Mgの含有率はAlの含有率よりも低いことが必要である。特に、0.5%以上10%以下の含有率でMgが含まれていることが好ましい。一方、AlCu膜におけるCuの含有率は例えば0.5%程度であって、通常、AlはCuよりも高い含有率で含まれている。つまり、AlとCuとを比較すると、Alの方がCuよりもイオン化傾向が高く、かつ高い含有率で含まれている。
【0037】
なお、パッド電極18の材質としては、AlCu膜ではなく、Mgを含むAl膜を用いてもよいし、Mgを含むAlSiCu膜を用いてもよい。AlSiCu膜を用いた場合には、CuおよびSiそれぞれの含有率はAlよりも低い。
【0038】
第1の表面保護膜15の上には、SiNからなる第2の表面保護膜19が形成されている。第2の表面保護膜19には、パッド電極18を露出する開口20が形成されている。
【0039】
図3(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。本実施形態の製造方法では、図3(a)に示す構造を得るために次の工程を行う。まず、半導体基板10の上に第1の層間絶縁膜11を形成し、第1の層間絶縁膜11の上層部に、第1のCu配線12を形成する。そして、第1の層間絶縁膜11の上に第2の層間絶縁膜13を形成し、第2の層間絶縁膜13を貫通して第1のCu配線12に到達する第2のCu配線14を形成する。
【0040】
次に、図3(b)に示す工程で、第2の層間絶縁膜13および第2のCu配線14の上に、SiNからなる第1の表面保護膜15を形成する。その後、第1の表面保護膜15に、第2のCu配線14を露出させる開口16を形成する。次に、開口16を埋めるTiN膜17aを形成する。次に、TiN膜17aの上に、Mgを含むAlCu膜18aを形成する。
【0041】
次に、図3(c)に示す工程で、Mgを含むAlCu膜18aの上にレジスト29(図示せず)を形成し、レジストをマスクとしてTiN膜17aおよびMgを含むAlCu膜18aに対するパターンニングを行う。これにより、バリアメタル17およびパッド電極18を形成する。その後、レジストを除去する。
【0042】
次に、図3(d)に示す工程で、第1の表面保護膜15の上に、SiNからなる第2の表面保護膜19を形成する。その後、第2の表面保護膜19に対してパターンニングを行うことにより、パッド電極18を露出する開口20を形成する。
【0043】
本実施形態では、パッド電極18に、Alよりもイオン化傾向の高いMgを含有させることにより、ウェハをダイシングする際には、AlではなくMgがイオン化しやすくなる。その結果、CuとAlとの異種金属腐食が起こりにくくなり、冷却水又は洗浄水にAlイオンが溶け出すのを抑制することができるため、パッド電極18の腐食を防止することができる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、Auワイヤーをパッド電極18に密着させてAlとAuとの合金を形成しやすくなるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係るダイシング工程を模式的に示す図である。図4において、ウェハ21は、ダイシング台22の上に固定された状態で、ダイシング刃(回転刃)23によりダイシングされている。このとき、配管24からは冷却水が供給されている。この冷却水にはMg(Mgイオン)が含まれている。冷却水に含まれるMgはどのような濃度であってもよい。ただし、0.5モル%程度の濃度であれば、Mg金属を冷却水に浸しておくだけで溶け出させることができるため、容易にダイシングを行うことができる。
【0045】
なお、配管24からは、冷却水ではなく洗浄水が供給されていてもよい。
【0046】
ウェハ21としては、図8に示す構造と同様に、Cuからなる配線と、AlCuからなるパッド電極とを有しているものを用いてもよい。また、それ以外の配線および電極を有するウェハを用いてもよい。つまり、配線がCuを含み、パッド電極がAlを含んでいればよい。
【0047】
本実施形態では、ダイシングの際の冷却水または洗浄水に、Alよりもイオン化傾向の高いMgを含有させることにより、ウェハをダイシングする際には、Alがイオン化しにくくなり、CuとAlとの異種金属腐食が起こりにくくなる。その結果、パッド電極の腐食を防止することができる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、Auワイヤーをパッド電極に密着させてAlとAuとの合金を形成しやすくなるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0048】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係るダイシング工程を模式的に示す図である。図5において、ウェハ21は、ダイシング台22の上に固定された状態で、ダイシング刃23によりダイシングされている。このとき、配管25からは塩基性緩衝液が供給されている。塩基性緩衝液としては、例えばTrisメチルアミン溶液を用いる。
【0049】
パッド電極に含まれるAlがイオン化して液体中に溶け出す状態は、下記の(1)式および(2)式により示される。
【0050】
Al → Al3+ + 3e- ・・・(1)
3e- +2H+ → H2↑ ・・・(2)
上記(1)式に示すように、Alがイオン化する際にはe-が発生する。しかしながら、塩基性緩衝液中にはe-が溶液中に多く存在するため、塩基性緩衝液を供給しながらダイシングを行うと(1)式の反応(Alのイオン化)が進行しにくくなる。その結果、パッド電極の腐食が進行しにくくなる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、Auワイヤーをパッド電極に密着させてAlとAuとの合金を形成しやすくなるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0051】
なお、上述の説明では、塩基性緩衝液としてTrisメチルアミンを用いる場合について説明した。しかしながら、Trisメチルアミン以外の塩基性緩衝液を用いてもよい。つまり、pH=8〜13の間に安定して保つことができる溶液であればよい。
【0052】
ウェハ21としては、図8に示す構造と同様に、Cuからなる配線と、AlCuからなるパッド電極とを有しているものを用いてもよい。また、それ以外の配線および電極を有するウェハを用いてもよい。つまり、配線がCuを含み、パッド電極がAlを含んでいればよい。
【0053】
(第4の実施形態)
図6は、本発明の第4の実施形態に係るダイシング工程を模式的に示す図である。図に示すように、本実施形態では、ダイシング台22が筐体29内に設置されており、筐体29内でダイシングが行われる。このとき、配管26からは冷却水または洗浄水が供給されている。
【0054】
筐体29内にはH2が含まれている。筐体29内には、大気中のH2含有率よりも高い割合のH2が含まれていればよい。つまり、筐体29内には、もともと筐体29内に存在していた空気と、後に加えられたH2とが存在していればよい。このとき、H2が限界分圧まで含まれていればより好ましい。なお、筐体29内に必ずしも空気が含まれている必要はなく、H2のみが存在していてもよい。
【0055】
アルミニウムは、下記の(3)式に示すように、冷却水や洗浄水中に存在するOH-と反応して溶け出す。このOH-は、下記の(4)式に示すようにH2Oの分解によって発生し、この分解の際にはH2も発生する。
【0056】
Al3+→Al(OH)3 (3)
2H2O →2OH- + H2↑ (4)
本実施形態では、ダイシングの際にH2を供給することにより、上記(4)式に示すH2Oの分解が抑制され、OH-の発生も抑制される。これにより、上記(3)式の反応が起こりにくくなるため、Alがイオン化しにくくなり、CuとAlとの異種金属腐食が起こりにくくなる。その結果、パッド電極の腐食を防止することができる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、Auワイヤーをパッド電極に密着させてAlとAuとの合金を形成しやすくなるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0057】
ウェハ21としては、図8に示す構造と同様に、Cuからなる配線と、AlCuからなるパッド電極とを有しているものを用いてもよい。また、それ以外の配線および電極を有するウェハを用いてもよい。つまり、配線がCuを含み、パッド電極がAlを含んでいればよい。
【0058】
(第5の実施形態)
図7は、本発明の第5の実施形態に係るダイシング方法を模式的に示す図である。図76に示すように、本実施形態では、Mgを含む金属からなるダイシング刃27を用いてダイシングを行う。このとき、ウェハ21は、ダイシング台22の上に固定されており、配管28からは冷却水または洗浄水が供給されている。ダイシング刃27は、例えば、金属からなる円盤部の側面にダイヤモンド片が接着された構造を有する。この場合には、円盤部の金属にMgが含有されていればよい。
【0059】
本実施形態では、ダイシング刃27に、Alよりもイオン化傾向の高いMgを含有させることにより、ウェハをダイシングする際には、AlよりもMgのイオン化が進行しやすくなる。その結果、CuとAlとの異種金属腐食が起こりにくくなり、冷却水又は洗浄水にAlイオンが溶け出すのを抑制することができるため、パッド電極18の腐食を防止することができる。よって、後工程のワイヤーボンドにおいて、Auワイヤーをパッド電極18に密着させてAlとAuとの合金を形成しやすくなるため、ワイヤーボンドの不着を防止することができ、半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0060】
ウェハ21としては、図8に示す構造と同様に、Cuからなる配線と、AlCuからなるパッド電極とを有しているものを用いてもよい。また、それ以外の配線および電極を有するウェハを用いてもよい。つまり、配線がCuを含み、パッド電極がAlを含んでいればよい。
【0061】
(その他の実施形態)
上述の各実施形態では、Alよりもイオン化傾向の高い金属としてMgを用いた。しかしながら、Alよりもイオン化傾向が高いMg以外の元素を用いてもよい。例えば、Li、K、Caなどを用いてもよい。
【0062】
上述の各実施形態では、配線がCuからなり、パッド電極がAlを含む材質からなる場合について説明した。しかしながら、配線およびパッド電極はそれ以外の材質であってもよい。つまり、本発明の課題は配線材料よりもパッド電極材料の方がイオン化傾向が大きければ生じるため、本発明は、そのような場合に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば電気機器、パソコン、家電など、種々の機器の動作の信頼性を高めることができる点で、産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】各実施形態における発明の思想を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るダイシング工程を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るダイシング工程を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るダイシング工程を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係るダイシング方法を模式的に示す図である。
【図8】(a)は、従来の半導体装置のダイシング法を示す説明図であり、(b)は、従来の配線構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 負極
2 正極
10 半導体基板
11 第1の層間絶縁膜
12 第1のCu配線
13 第2の層間絶縁膜
14 第2のCu配線
15 第1の表面保護膜
16 開口
17 バリアメタル
17a TiN膜
18 パッド電極
18a AlCu膜
29 レジスト
19 第2の表面保護膜
20 開口
21 ウェハ
22 ダイシング台
23 ダイシング刃
24 配管
25 配管
26 筐体
27 ダイシング刃
28 配管
29 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に形成された第1の金属を含む配線と、
前記配線と電気的に接続され、第2の金属及び前記第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素を含む電極とを備え、
前記電極中における前記元素の含有量は、前記電極中における前記2の金属の含有量よりも少ない、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向よりも低い、半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置であって、
前記第1の金属はCuであって、前記第2の金属はAlであって、前記元素はMg、Li、KまたはCaである、半導体装置。
【請求項4】
半導体基板をダイシングするためのダイシング刃であって、
Alよりもイオン化傾向の高い元素を含む、ダイシング刃。
【請求項5】
請求項4に記載のダイシング刃であって、
前記元素は、Mg、Li、KまたはCaである、ダイシング刃。
【請求項6】
半導体基板の上に絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記絶縁膜の上に、第1の金属を含む配線を形成する工程(b)と、
前記配線と電気的に接続され、第2の金属及び前記第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素を含む電極を形成する工程(c)とを備え、
前記電極中における前記元素の含有量は、前記電極中における前記2の金属の含有量よりも少なくする、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1の金属のイオン化傾向は、前記第2の金属のイオン化傾向よりも低い、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1の金属はCuであって、前記第2の金属はAlであって、前記元素はMg、Li、KまたはCaである、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体装置のダイシング工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記半導体装置は、第1の金属を含む配線と、前記配線と電気的に接続され、前記第1の金属よりもイオン化傾向の高い第2の金属を含む電極とを備え、
前記ダイシング工程では、第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素を含むダイシング刃を用いてダイシングを行う、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記元素は、Mg、Li、KまたはCaである、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体装置のダイシング工程を含む半導体装置の製造方法であって、
前記半導体装置は、第1の金属を含む配線と、前記配線と電気的に接続され、前記第1の金属よりもイオン化傾向の高い第2の金属を含む電極とを備え、
前記ダイシング工程では、前記第2の金属のイオン化を防止するイオン化防止剤を供給しながらダイシングを行う、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記イオン化防止材は、前記第2の金属よりもイオン化傾向の高い元素であって、
前記ダイシング工程では、前記元素を含む液体を供給しながら前記ダイシングを行う、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記元素は、Mg、Li、KまたはCaである、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記イオン化防止剤は塩基性緩衝液であって、
前記ダイシング工程では、前記塩基性緩衝液を供給しながら前記ダイシングを行う、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記イオン化防止剤は水素であって、
前記ダイシング工程では、大気中の水素分圧よりも高い分圧の水素を含む雰囲気中で、液体を供給しながら前記ダイシングを行う、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−189051(P2007−189051A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5845(P2006−5845)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】