説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】アルミ膜を用いて生産コストの低減を図りながら、歩留りおよび信頼性を両立できる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1上に形成された酸化膜3上に指向性スパッタによってチタン膜41が形成される。このチタン膜41上に通常のスパッタによって窒化チタン膜42が形成される。さらに、窒化チタン膜42上に、通常のスパッタによってアルミ膜43が形成される。チタン膜41は、(002)配向し、アルミ膜43は(111)配向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、酸化膜上にアルミ膜を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に備えられる微細幅および微細間隔の配線(たとえば幅および間隔が130nm以下の配線)は、通常、銅配線によって形成される。銅配線の形成は、層間絶縁膜に形成された配線溝に銅配線層を埋め込むダマシンプロセスによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−124271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダマシンプロセスは、高価なプロセスであり、それに応じて生産コストが高くなる。一方、アルミニウムを主成分とする材料(たとえばAlCu)からなるアルミ膜は、ドライエッチングによるパターニングが可能であるが、パターニングのためには薄膜化が必要である。これは、主として、ドライエッチングのマスクとして用いるレジストのエッチング耐性に起因する要求である。十分に薄いアルミ膜を用いなければ、配線間ショート等の不具合が生じ、歩留りが悪くなる。しかし、薄いアルミ配線は、EM(ElectroMigration)寿命の低下を招くので、半導体装置の信頼性が問題となる。
【0005】
そこで、この発明の目的は、アルミ膜を用いて生産コストの低減を図りながら、歩留りおよび信頼性を両立できる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された酸化膜上に指向性スパッタによってチタン膜を成膜する工程と、前記チタン膜の上にスパッタによってアルミ膜を成膜する工程とを含む(請求項1)。アルミ膜とは、アルミニウムを主成分とする金属材料からなる膜であり、たとえば、AlCu(たとえばCu組成が0.5%程度のもの)からなる膜が該当する。
【0007】
この方法によれば、指向性スパッタによってチタン膜が形成されることによって、チタン膜は配向性を有する膜となる。この配向性を有するチタン膜上にスパッタによってアルミ膜を形成すると、このアルミ膜はチタン膜と同様な配向性を有する。つまり、アルミ膜を構成するアルミグレインの配向が揃うことになる。このようなアルミ膜で配線膜を形成すると、エレクトロマイグレーションが生じ難い。したがって、ドライエッチングによるパターニングを考慮してアルミ膜を薄く形成しても、EM寿命が長くなる。これにより、アルミ膜を用いて生産コストの低減を図りながら、半導体装置の歩留りおよび信頼性を両立できる。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記チタン膜を成膜する工程が、(002)配向のチタン膜を成膜する工程である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法である。(002)配向とは、たとえば、X線回折スペクトルにおける(002)面の回折ピークが、無指向性スパッタ(通常のスパッタ)によって形成されたチタン膜の(002)面の回折ピークの2倍以上であることをいう。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記アルミ膜を成膜する工程が、(111)配向のアルミ膜を成膜する工程である、請求項2に記載の半導体装置の製造方法である。(111)配向とは、たとえば、X線回折スペクトルにおける(111)面の回折ピークが、他の面方位の回折スペクトルの20倍以上であることをいう。
指向性スパッタによってチタン膜を成膜すると、(002)配向のチタン膜が得られる。この上に通常のスパッタでアルミ膜を形成すると、チタン膜と原子間距離が整合するように、(111)配向のアルミ膜が形成される。アルミニウムグレインの(111)配向面は、電子の移動を妨げる。(111)配向のアルミ膜で配線膜を形成すると、(111)配向面が電子の移動方向と平行(膜主面と平行)であるので、エレクトロマイグレーションが生じ難い。したがって、ドライエッチングによるパターニングを考慮してアルミ膜を薄く形成しても、EM寿命が長くなる。これにより、アルミ膜を用いて生産コストの低減を図りながら、半導体装置の歩留りおよび信頼性を両立できる。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記アルミ膜およびチタン膜をエッチングして、配線を形成する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法である。このようにエッチング(より具体的にはドライエッチング)によって配線を形成できるので、配線形成のためのコストを低減できる。特に、130nm幅以下および130nm間隔以下の配線(請求項5)であっても、高価なダマシンプロセスを伴う銅配線によらずに形成できるので、半導体装置の生産コストを大幅に低減できる。
【0011】
エッチングによる配線形成を正確に行って歩留りを向上するためには、前記アルミ膜は厚さが175nm以下であることが好ましい(請求項6)。このような薄いアルミ膜であっても、EM寿命を200年以上にできる。チタン膜が配向性の膜でない場合には、200年のEM寿命達成のために必要とされるアルミ膜の膜厚は200nmを超える。このような厚いアルミ膜のエッチングが困難であることは前述のとおりである。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記チタン膜の上にスパッタによって窒化チタン膜を成膜する工程をさらに含み、前記アルミ膜を成膜する工程は、前記窒化チタン膜の上にアルミ膜を成膜する工程である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法である。
チタン膜上に直接アルミ膜を成膜すると、チタンとアルミとが反応して、チタンアルミを形成する。この物質は高抵抗であり、しかも反応が半導体基板面内で一様に生じないので、抵抗ばらつきも生じる。そこで、チタン膜上に窒化チタン膜を成膜し、その上にアルミ膜を成膜することにより、上記の不具合を回避できる。窒化チタン膜が間に介在されても、チタン膜の配向性と整合するように配向したアルミ膜が成膜されるので、指向性スパッタによるチタン膜形成の効果は失われない。
【0013】
請求項8に記載されているように、前記酸化膜は、アモルファス酸化膜であってもよい。たとえば、半導体基板上にトランジスタ素子のゲートを形成した後に酸化膜を形成する場合、熱酸化膜を形成することはできないから、プラズマCVD(化学的気相成長)法等の堆積法によって酸化膜が形成される。このような場合、形成される酸化膜は、アモルファス酸化膜となる。
【0014】
この発明の半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された酸化膜と、前記酸化膜上に成膜された(002)配向のチタン膜と、前記チタン膜上に成膜された(111)配向のアルミ膜とを含む(請求項9)。
請求項10に記載されているように、前記チタン膜およびアルミ膜が配線を形成していてもよい。すなわち、チタン膜およびアルミ膜が配線パターンにパターニングされていてもよい。前記配線は、130nm幅以下および130nm間隔以下で形成されていてもよい(請求項11)。また、前記アルミ膜は厚さが175nm以下であることが好ましい(請求項12)。
【0015】
また、請求項13に記載されているように、前記半導体装置は、前記チタン膜と前記アルミ膜との間に成膜された窒化チタン層をさらに含むことが好ましい。
また、請求項14に記載されているように、前記酸化膜が、アモルファス酸化膜であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、この発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な部分斜視図である。
【図2】図2A〜2Eは、前記半導体装置の製造工程を説明するための図解的な断面図である。
【図3】図3Aは、酸化シリコン膜(USG膜)上に指向性スパッタによって形成されたチタン膜の配向性の測定結果(X線回折スペクトル)を示す図である。図3Bは、酸化シリコン膜(USG膜)上に通常のスパッタによって形成されたチタン膜の配向性の測定結果(X線回折スペクトル)を示す図である。
【図4】図4A(実施例)は、酸化シリコン膜(USG膜)上に指向性スパッタによって(002)配向したチタン膜を形成し、その上に通常のスパッタで窒化チタン膜を形成し、さらにその上に通常のスパッタでアルミ膜(AlCu膜)を形成し、そのアルミ膜の配向性を測定した結果(X線回折スペクトル)を示す図である。図4B(比較例)は、酸化シリコン膜(USG膜)上に通常のスパッタによってチタン膜を形成し、その上に通常のスパッタで窒化チタン膜を形成し、さらにその上に通常のスパッタでアルミ膜(AlCu膜)を形成し、そのアルミ膜の配向性を測定した結果(X線回折スペクトル)を示す図である。
【図5】図5Aは、(002)配向したチタン膜の膜厚を変化させた場合における、図4Aと同様のX線回折スペクトルを示す。また、図5Bは、(002)配向チタン膜の膜厚と、Al(111)のピーク強度との関係を示す。
【図6】図6は、チタン膜上に窒化チタン膜を形成し、その上にアルミ膜(AlCu膜)を形成して配線膜として用いた場合における歩留りおよびEM寿命を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を説明するための図解的な部分斜視図である。この半導体装置は、半導体基板1と、半導体基板1に形成された素子2と、素子2を覆うように形成された層間絶縁膜3と、層間絶縁膜3上に形成された配線膜4とを含む。素子2は、たとえば、トランジスタ素子であり、半導体基板1の表層部に形成されたソース・ドレイン層21,22と、ソース・ドレイン層21,22の間の半導体層にゲート絶縁膜25を挟んで対向するゲート電極23とを含む。ゲート絶縁膜25は、半導体基板1の表面に形成された熱酸化膜からなる。層間絶縁膜3は、酸化膜からなり、たとえば酸化シリコンで構成されている。この層間絶縁膜3は、プラズマCVD法等の熱酸化以外の低温成長法で形成された酸化膜(たとえばUSG(Undoped Silicate Glass))である。このような酸化膜は、アモルファス酸化膜となる。
【0018】
配線膜4は、層間絶縁膜3の表面から順に積層されたチタン(Ti)膜41と、窒化チタン(TiN)膜42と、アルミ膜43とを含む。チタン膜41および窒化チタン膜42の積層膜はライナー膜と呼ばれることもある。アルミ膜43は、アルミニウムを主成分とする金属膜であり、たとえば、AlCu膜(たとえばCu組成が0.5%程度)からなっていてもよい。配線膜4は、この実施形態では、平行ストライプ状に形成されている。配線幅Wはたとえば130nm以下であり、隣接する配線間の間隔Iはたとえば130nm以下である。このような微小幅および微小間隔の配線は、通常では、ダマシンプロセスによって作製される銅配線によって形成されるが、この実施形態では、いわゆるアルミ配線によって形成されている。
【0019】
チタン膜41は、ライナー膜の下層を構成しており、この実施形態では、(002)配向のチタン膜である。すなわち、大部分のグレインの(002)面が膜主面に平行になって揃っているチタン膜である。このような(002)配向のチタン膜は、指向性スパッタによって形成することができる。
窒化チタン膜42は、ライナー膜の上層を構成しており、通常のスパッタ(無指向性スパッタ)によって形成された膜であってもよい。窒化チタン膜42は、チタン膜41を構成するチタン原子とアルミ膜43を構成するアルミニウム原子との反応によるチタンアルミ生成を防ぐバリア層として機能する。
【0020】
アルミ膜43は、通常のスパッタ(無指向性スパッタ)によって形成された膜であってもよい。チタン膜41が(002)配向しているので、アルミ膜43は、その影響を受けて、(111)配向している。すなわち、アルミ膜43は、大部分のグレインの(111)面が膜主面に平行になって揃っているアルミ膜である。チタングレインの(002)面とアルミグレインの(111)面とは、格子定数が近似しているので、(002)配向したチタン膜上にアルミ膜を成膜すると、(111)配向したアルミ膜が得られる。アルミグレインの(111)面は、電子の移動を妨げるので、(111)面が電子の移動方向に対して垂直であると、エレクトロマイグレーションが生じやすい。これに対して、この実施形態では、アルミ膜43が(111)配向しているため、大多数のアルミグレインの(111)面は、膜主面に平行であり、したがって、電子の移動方向に対して平行である。そのため、エレクトロマイグレーションが生じ難い。
【0021】
図2A〜2Eは、前記半導体装置の製造工程を説明するための図解的な断面図であり、配線膜4の形成工程が示されている。
まず、図2Aに示すように、たとえば、プラズマCVDによってUSGからなる層間絶縁膜3が形成される。こうして形成された層間絶縁膜3は、アモルファス酸化膜からなる。この層間絶縁膜3上に、指向性スパッタによってチタン膜41が形成される。指向性スパッタとは、チタン膜41を構成するチタングレインの方向が揃う条件で行われるスパッタである。指向性スパッタの一つの例は、低圧下で行うロング・スロー・スパッタ(長距離スパッタ)である。また、指向性スパッタの他の例は、PCM(Point Cusp Magnetron)方式等のイオン化スパッタである。このような指向性スパッタを行うことによって、(002)配向したチタン膜41が形成される。
【0022】
次に、図2Bに示すように、通常のスパッタによって、窒化チタン膜42が形成される。
その後、図2Cに示すように、通常のスパッタによって、アルミ膜43(たとえばAlCu膜)が形成される。アルミ膜43の膜厚は、175nm以下とされる。
次に、図2Dに示すように、配線パターンに対応したパターンのレジストマスク7がアルミ膜43上に形成される。そして、このレジストマスク7をマスクとしたエッチング(ドライエッチング)によって、レジストマスク7によって覆われていない領域のアルミ膜43、窒化チタン膜42およびチタン膜41が除去される。アルミ膜43の膜厚が175nm以下であるので、レジストマスク7で覆われていない領域のアルミ膜43、窒化チタン膜42およびチタン膜41は、エッチングによって確実に取り除くことができる。このエッチングの後、レジストマスク7を剥離すると、図2Eに示す状態となり、層間絶縁膜3の表面に順に積層されたチタン膜41、窒化チタン膜42およびアルミ膜43からなる配線膜4が形成される。
【0023】
図3Aは、酸化シリコン膜(USG膜)上に指向性スパッタによって形成されたチタン膜の配向性の測定結果を示す図であり、X線回折スペクトルが示されている。また、図3Bは、酸化シリコン膜(USG膜)上に通常のスパッタによって形成されたチタン膜の配向性の測定結果を示す図であり、X線回折スペクトルが示されている。図3Aおよび図3Bにおいて、縦軸は強度(intensity)であり、光電子倍増管による計数結果(cps: count per second)を示す。横軸は、回折角2θ(X線の回折方向と入射方向の角度差)を示す。
【0024】
図3A(指向性スパッタ)のスペクトルでは、(002)配向したTiの明瞭なピークが表れており、そのピーク強度は図3B(通常のスパッタ)のスペクトルにおける対応するピーク強度の2倍以上である。また、図3A(指向性スパッタ)のスペクトルにおいて、(002)配向したTiに対応するピーク強度は、(100)配向および(101)配向のTiのピーク強度の2倍以上である。通常のスパッタ(図3B)では、Ti(002)のピーク強度が小さく、アモルファス酸化膜上に(002)配向したチタン膜を形成できないことが分かる。
【0025】
図4A(実施例)は、酸化シリコン膜(USG膜)上に指向性スパッタによって(002)配向したチタン膜を形成し、その上に通常のスパッタで窒化チタン膜を形成し、さらにその上に通常のスパッタでアルミ膜(AlCu膜)を形成し、そのアルミ膜の配向性を測定した結果を示す図である。また、図4B(比較例)は、酸化シリコン膜(USG膜)上に通常のスパッタによってチタン膜を形成し、その上に通常のスパッタで窒化チタン膜を形成し、さらにその上に通常のスパッタでアルミ膜(AlCu膜)を形成し、そのアルミ膜の配向性を測定した結果を示す図である。図4Aおよび図4Bには、X線回折スペクトルがそれぞれ示されている。図4Aおよび図4Bにおいて、縦軸は強度(intensity)であり、光電子倍増管による計数結果(cps: count per second)を示す。横軸は、回折角2θ(X線の回折方向と入射方向の角度差)を示す。
【0026】
図4A(実施例)のスペクトルでは、(111)配向したAlの明瞭なピークが表れており、そのピーク強度は図4B(比較例)のスペクトルにおける対応するピーク強度の20倍以上である。また、図4A(実施例)のスペクトルでは、(111)配向したAlに対応するピーク強度は、(200)配向のAlのピーク強度の20倍以上である。このように、(002)配向したチタン膜上に通常のスパッタで窒化チタン膜を形成し、この窒化チタン膜上に通常のスパッタでアルミ膜を形成した場合に、そのアルミ膜は(111)配向していることが確認された。
【0027】
図5Aは、(002)配向したチタン膜の膜厚を変化させた場合における、図4Aと同様のX線回折スペクトルを示す。また、図5Bは、(002)配向チタン膜の膜厚と、Al(111)のピーク強度との関係を示す。これらの図から、チタン膜の膜厚を大きくするほど、アルミ膜の配向が揃う(配向性が強くなる)ことが分かる。したがって、チタン膜の膜厚を大きくすることにより、アルミ膜からなる配線のEM寿命を長くできる。EM寿命の長期化の観点では、たとえば、チタン膜の膜厚を10nm厚くすることにより、アルミ膜の膜厚を35〜40nm厚くするのと同等の効果がある。
【0028】
図6は、チタン膜上に窒化チタン膜を形成し、その上にアルミ膜(この例ではAlCu膜)を形成して配線膜として用いた場合における歩留りおよびEM寿命を示す。
線L61は、アルミ膜の膜厚(横軸)と歩留り(配線短絡故障のない良品比率)との関係を示す。この線L61から、アルミ膜の膜厚を厚くするほど歩留りが悪くなることが分かる。これは、アルミ膜の膜厚が厚くなると、エッチング(ドライエッチング)によるパターニングが不良になる確率が高くなるからである。したがって、歩留りの観点からは、アルミ膜の膜厚は、たとえば175nm以下とすることが好ましい。
【0029】
線L62(比較例)は、通常のスパッタで形成したチタン膜上に通常のスパッタで窒化チタン膜を形成し、さらにその上に通常のスパッタでアルミ膜を形成した場合におけるEM寿命の測定結果を示し、アルミ膜の膜厚との関係が示されている。線L62から、アルミ膜の膜厚を大きくするほどEM寿命が長くなることが分かる。これは、配線断面積が大きくなり、抵抗が小さくなるからである。したがって、EM寿命の観点からは、アルミ膜の膜厚は、たとえば200nm以上として100年程度のEM寿命を確保することが好ましい。線L62から導かれるアルミ膜の膜厚の好ましい範囲は、線L61から導かれるアルミ膜の膜厚の好ましい範囲から離れており、これらは重複範囲を有していない。
【0030】
線L63(実施例)は、指向性スパッタで形成したチタン膜上に通常のスパッタで窒化チタン膜を形成し、さらにその上に通常のスパッタでアルミ膜を形成した場合におけるEM寿命の測定結果を示し、アルミ膜の膜厚との関係が示されている。線L62,L63の比較から、指向性スパッタでチタン膜を形成することによって、EM寿命が飛躍的に改善でき、175nm以下の膜厚でも、100年をはるかに超え、200年以上のEM寿命を実現できることが分かる。したがって、EM寿命と歩留りとを両立できる。
【0031】
以上のように、この実施形態によれば、半導体基板1上に形成された酸化膜からなる層間絶縁膜3上に、指向性スパッタによってチタン膜41が成膜される。そして、このチタン膜41上に通常のスパッタによって窒化チタン膜42が成膜され、その上に通常のスパッタによってアルミ膜43が成膜される。そして、これらのチタン膜41、窒化チタン膜42およびアルミ膜43が、レジストマスク7を用いたエッチングによって配線パターンにパターニングされることによって、配線膜4が形成される。
【0032】
指向性スパッタによって成膜されたチタン膜41は、(002)配向しているので、この上に窒化チタン膜42を介して通常のスパッタで形成されるアルミ膜43は、チタン膜41と原子間距離が整合するように、(111)配向するように形成される。これにより、電子の移動を妨げるアルミニウムグレインの(111)配向面が電子の移動方向と平行(膜主面と平行)になるので、エレクトロマイグレーションが生じ難い。これにより、ドライエッチングによるパターニングを考慮してアルミ膜43を175nm以下の薄膜としても、十分なEM寿命を確保できる。しかも、ダマシンプロセスによって形成される銅配線に比較して、エッチングプロセスで形成できるアルミ配線は、コストが格段に低い。これにより、アルミ膜43を用いて生産コストの低減を図りながら、130nm幅以下および130nm間隔以下の配線を有する半導体装置の歩留りおよび信頼性を両立できる。
【0033】
また、この実施形態では、チタン膜41と、アルミ膜43との間に窒化チタン膜42が介在しているので、チタンとアルミとが反応して高抵抗のチタンアルミが形成されることが防がれる。これにより、配線抵抗を低減でき、かつチタンとアルミの反応のばらつきに起因する配線抵抗のばらつきを回避できる。
この実施形態においては、層間絶縁膜3は、アモルファス酸化膜からなる。これは、ゲート電極23の形成後に形成される酸化膜であるので、熱酸化法による形成を行えず、プラズマCVD法によって形成されることに起因する。このようなアモルファス酸化膜上であっても、この実施形態により、(111)配向したアルミ膜43を形成できる。
【0034】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、配線層が一層の構造を示したが、むろん、半導体基板上に複数層の配線層を有する多層配線構造を有する半導体装置にこの発明を適用してもよい。この場合、下層配線ほどアルミ膜を薄く、上層配線ほどアルミ膜を厚く形成してもよい。そして、アルミ膜が薄いほどチタン膜を厚く、アルミ膜が厚いほどチタン膜を薄く形成することが好ましい。これにより、膜厚の小さなアルミ膜の(111)配向性を強めることができるので(図5Aおよび図5B参照)、薄いアルミ膜を用いた配線であっても、その抵抗を十分に低くすることができる。前述のとおり、アルミ膜の抵抗値低減に関して、チタン膜の膜厚を10nm増加するのと、アルミ膜の膜厚を35〜40nm増加するのとが同等の効果を有するので、チタン膜の膜厚を増やすことによって、低抵抗を維持しながら、アルミ膜の膜厚および配線膜全体の膜厚を効果的に低減することができる。これにより、配線膜の薄膜化および微細化(幅および間隔の減少)が可能になる。
【0035】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 半導体基板
2 素子
21,22 ソース・ドレイン層
23 ゲート電極
25 ゲート絶縁膜
3 層間絶縁膜
4 配線膜
41 チタン膜
42 窒化チタン膜
43 アルミ膜
7 レジストマスク
I 配線間隔
W 配線幅
L61 線(歩留り)
L62 線(比較例:EM寿命)
L63 線(実施例:EM寿命)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された酸化膜上に指向性スパッタによってチタン膜を成膜する工程と、
前記チタン膜の上にスパッタによってアルミ膜を成膜する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記チタン膜を成膜する工程が、(002)配向のチタン膜を成膜する工程である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記アルミ膜を成膜する工程が、(111)配向のアルミ膜を成膜する工程である、請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記アルミ膜およびチタン膜をエッチングして、配線を形成する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記配線の幅が130nm以下であり、前記配線間の間隔が130nm以下であるように、前記配線が形成される、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記アルミ膜が、175nm以下の膜厚に形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記チタン膜の上にスパッタによって窒化チタン膜を成膜する工程をさらに含み、
前記アルミ膜を成膜する工程は、前記窒化チタン膜の上にアルミ膜を成膜する工程である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記酸化膜が、アモルファス酸化膜である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された酸化膜と、
前記酸化膜上に成膜された(002)配向のチタン膜と、
前記チタン膜上に成膜された(111)配向のアルミ膜とを含む、半導体装置。
【請求項10】
前記チタン膜およびアルミ膜が配線を形成している、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記配線の幅が130nm以下であり、前記配線間の間隔が130nm以下である、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記アルミ膜の膜厚が175nm以下である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記チタン膜と前記アルミ膜との間に成膜された窒化チタン層をさらに含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記酸化膜が、アモルファス酸化膜である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−164940(P2012−164940A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26307(P2011−26307)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】