説明

半導体装置の製造方法および半導体製造装置

【課題】半導体装置におけるナノスケールの微細構造物を用いた配線部分に金属をボイドなく埋め込み、電気的な不良を抑制して半導体装置の歩留りを向上させる。
【解決手段】半導体基板上に形成された絶縁膜に設けられたヴィアホール又はトレンチに金属めっき膜を埋め込む工程において、まず、最初のめっき液の容積、補充しためっき液量、処理したウェーハ枚数、流した電流値及び排出しためっき液量の各データを収集する。次いで、取得した電流値に基づいてめっき処理の累積電荷量を算出する。また、全めっき液の容積を算出する。そして、取得した、全めっき液の容積、排出しためっき液量および累積電荷量に基づいて、めっき液に含まれる抑制剤の分解物量を算出する。分解物量が予め設定された閾値以下である場合にのみ半導体基板のめっき処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体製造装置に係り、特に半導体装置の金属配線形成工程におけるめっき方法と、そのめっき装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は従来の電気めっき装置の概略構成図である。当該電気めっき装置は、循環ライン101、めっきバス102、カソード104、アノード105、ウェーハ106、フィルター107、添加剤濃度測定装置108、CPU109、添加剤供給装置110を備える。
【0003】
そして、従来の電気めっきにおいて、添加剤を補充しながら金属をめっきしている(特許文献1)。また、添加剤の濃度は電流−電位曲線により測定しているものもある(非特許文献1)。
【0004】
図10は従来のめっき方法における処理工程のフローチャートである。図10に示すように、従来の処理工程では、めっき液補充(S101)、添加剤濃度測定(S102)、レシピスタート(S103)、ウェーハ設置(S104)、めっき処理(S105)、ウェーハ搬出(S106)、レシピエンド(S107)の各ステップを経てめっきが行われる。
【0005】
従来のめっき方法では、電気めっきの間に、めっき液中に添加剤として含まれる光沢剤、平滑剤、抑止剤の各成分濃度をそれぞれ測定し、必要によりそれぞれの成分を補充して各成分の濃度を、それぞれ所定の範囲に保持しながら電気めっきを行っている。
【0006】
具体的方法として、添加剤を含むめっき液の電流−電位曲線を用いたり、めっき液の電流−電位曲線を得るためのCV(Cyclic Voltammetry)電極をめっき装置内のめっき液中に配置して、添加剤の濃度を測定することが行われている。
【特許文献1】特開2001−152398号公報
【非特許文献1】小山田仁子 他3名 「電気銅めっきにおける添加剤のフィリング能の電析時間依存性」 エレクトロニクス実装学会誌 技術論文 Vol.7 No.3 p261−265 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の電気めっき方法および電気めっき装置では、めっき処理の過程で発生する副生成物を含めためっき液中に存在する全ての含有物成分の濃度を測定し、評価することが難しい。そのため、半導体装置におけるナノスケールの微細構造物を用いた配線部分に金属をボイドなく埋め込むことができない。
【0008】
本発明は、半導体装置におけるナノスケールの微細構造物を用いた配線部分に金属をボイドなく埋め込むことを可能にし、電気的な不良を抑制して半導体装置の歩留りを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に形成された絶縁膜に設けられたヴィアホール又はトレンチに金属めっき膜を埋め込む工程において、まず、最初のめっき液の容積、補充しためっき液量、処理したウェーハ枚数、流した電流値及び排出しためっき液量の各データを収集する。次いで、取得した電流値に基づいてめっき処理の累積電荷量を算出する。また、全めっき液の容積を算出する。そして、取得した、全めっき液の容積、排出しためっき液量および累積電荷量に基づいて、めっき液に含まれる抑制剤の分解物量を算出する。
【0010】
上記の半導体装置の製造方法において、前記分解物量が予め設定した値を超えた時に、所定量のめっき液を排出することが好ましい。
【0011】
本発明に係る半導体製造装置は、半導体基板上に形成された絶縁膜に設けられたヴィアホール又はトレンチに金属めっき膜を埋め込む処理を実施する。そして、本発明に係る半導体製造装置は、めっき液を循環させる手段と、めっき液を供給する手段と、めっき液を排出する手段とを備える。また、最初のめっき液の容積、補充しためっき液量、処理したウェーハ枚数、流した電流値及び排出しためっき液量の各データを収集する手段と、取得した電流値に基づいてめっき処理の累積電荷量を算出する手段と、全めっき液の容積を計算する手段と、取得した、全めっき液の容積、排出しためっき液量および累積電荷量に基づいて、めっき液に含まれる抑制剤の分解物量を算出する手段とを備えている。
【0012】
上記の半導体製造装置において、めっき液の排出手段は、前記分解物量が予め設定した値を超えた時にめっき液を排出することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気めっきによって発生する副生成物量を計算して、副生成物量を制御することによって、めっき液の組成変動による埋め込み不良を防止することで半導体装置の歩留りを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について図1を参照して説明する。
【0015】
図1は第1の実施の形態における電気めっき装置の概略構成図である。当該電気めっき装置は、仕切り22を有するめっき浴槽21を備える。めっき浴槽21の底部にはアノード14が配置されている。アノード14に対向して配設されたカソード10は、被処理面をアノード14に対向させた状態でウェーハ11を保持する。アノード14とカソード10との間には、アノード14側からフィルター13と拡散板12とが配置されている。また、本実施形態の電気めっき装置は、めっき液の循環経路として循環ライン3と副循環ライン4を備える。ここで、循環ライン3は、めっき浴槽21の上端から導出されためっき液を、めっき液溜槽2、フィルター7を通じて、拡散板12とフィルター13との間へ再流入させる循環経路である。副循環ライン4は、めっき浴槽21の底部から導出されためっき液を、フィルター8を通じて、フィルター13とアノード14との間へ再流入させる循環経路である。なお、循環ライン3のめっき液溜槽2の上流側には、新たなめっき液を循環ライン3に導入する供給バルブ9が設けられており、副循環ライン4のフィルター8の上流側には、循環経路からめっき液を排出する廃液バルブ5が設けられている。供給バルブ9の開閉状態および廃液バルブ5の開閉状態は、モニタリング装置6が取得した後述のデータに基づいて制御装置1が制御する。また、本実施形態では、制御装置1は電気めっき装置の各種動作も制御する構成になっている。
【0016】
図1において、銅の電気めっき装置では、めっき液を循環させて5から100rpmの間の回転速度でウェーハ11を回転させながら、カソード10側に設置したウェーハ11に1Aから50Aまでの間の電流を流してめっき膜を成膜している。めっき処理中、めっき液は主の循環ライン3によってめっき液溜槽2を含めて循環している。そしてアノード14側の副循環ライン(SAC:Separate Anode Chamberライン)4によって、アノード14側に集まっためっき液が循環している。ここで用いられているめっき液は主に硫酸銅と添加剤からなっている。
【0017】
添加剤としては、3種類の添加剤が用いられている。その3種類は、抑制剤、促進剤(光沢材)と平滑剤である。この添加剤が微細構造に銅を埋め込む場合に重要な役割を果たしている。簡単にその役割を説明すると次のようになる。
【0018】
抑制剤はPEG(poly(ethylene glycol))−PPG(poly(propylene glycol))重合体(高分子)であり、銅膜の成長を抑制するものである。促進剤(光沢材)は硫黄を含有した有機物であり、銅膜の成長を促進する。そして平滑剤はアミン系の有機化合物であり、ウェーハ上の電界の集中する部分で銅膜の成長を抑制し、電界が集中しない部分では逆に銅膜の成長を抑制しない。したがって、平滑材は銅膜の平滑性を向上させる働きを有している。
【0019】
このようにヴィア、コンタクトやトレンチなどのナノオーダーの微細な構造に銅膜をボイドやシームなどの空隙や欠陥なく埋め込むためにはめっき液の組成を制御することが非常に重要である。しかし、電気めっきの処理を進めると電気分解等によりめっき液の組成が変化することがわかってきた。しかも、前述した添加剤の濃度を予め決めたある値の範囲内に制御するだけではナノスケールの微細構造物に金属を埋め込むことはできない。それは、3種類の添加剤が電気分解によって、この3種類の添加剤とは別の分子構造を含めて異なるもの(副生成物)ができるためである。
【0020】
なお、念のために添加剤の濃度制御について言えば、循環ライン3にある供給バルブ9を開けてめっき液に新しいめっき液を補充することにより添加剤の濃度制御処理を実施している。従来、副生成物は埋め込み特性に影響を与えない、もしくは影響が少ないと考えられていたため、当該方法が使用されていた。しかしながら、本願発明者らの検討の結果、この方法では上述のとおりナノスケールの構造物ではヴィアの埋め込み不良が発生することが判明した。しかし、めっき処理中に副生成物量を測定することは困難である。そこで、本願発明者ら考案した、図1に示す電気めっき装置では、モニタリング装置6が、最初のめっき液の体積、補充しためっき液量、処理したウェーハの枚数、流した電流値、印加した電圧値、処理時間、回転数、廃液した液量などのデータを収集し、制御装置1がそのデータを用いて電気分解によって発生した副生成物量(分解物量)をモデルにより計算して求める。ここで、「補充しためっき液量」とは、「最初のめっき液」を基準として補充されためっき液量であり、「廃液した液量」とは、「最初のめっき液」を基準として排出されためっき液量である。
【0021】
なお、モニタリング装置6および制御装置1は、例えば、専用の演算回路、あるいは、プロセッサとRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリとを備えたハードウェアおよび当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実現することができる。本実施形態では、モニタリング装置6および制御装置1をコンピュータと当該コンピュータ上で実行されるプログラムとして実現している。なお、モニタリング装置6は、上述の各データを直接取得する各種センサにより取得してもよく、電気めっき装置の動作状態から間接的に取得してもよい。
【0022】
ここで、制御装置1が分解物量(副生成物量)の算出に使用するモデルについて説明する。本実施形態では、図1に示すように、1回のめっき処理において1枚のウェーハが処理される構成であるため、めっき処理回数は処理したウェーハ枚数に一致する。この場合、n回目のウェーハ処理後のめっき液に含まれる分解物量Nbnのモデル式は、初期のめっき液(上記最初のめっき液)中に存在する分解物量Nb0、n回目のウェーハ処理における分解物の生成量Gn、全めっき液の容積(外郭容積)V2、各回の廃液量V1とすると以下の式(1)のように表現することができる。
【0023】
【数1】

【0024】
当該モデル式は、特に処理したウェーハに流した電流値から計算する累積電荷量(電流値の積分値)を用いて各めっき処理における生成量Gnを求め(例えば、ウェーハ枚数と流した電流値から算出)、全めっき液の容積に対して排出しためっき液の量から各廃液後に残存した分解物量を計算する。そして、各廃液間に残った分解物量を積算してn回目のウェーハ処理後のめっき液に含まれる分解物量Nbnを求める。当該分解物量Nbnに、その後のめっき処理中に生成された分解物量を加算することで、そのめっき処理の時点での分解物量を算出することができる。なお、分解物量Nbnの算出に使用するデータ(特に電流値)は少なくとも2Hzよりも細かいサンプリングレートで取得する必要がある。それは、副生成物量の計算精度を左右するからであり、例えば、2Hzよりもサンプリングレートが遅くなると計算精度は3%以上劣化する。また、上記式(1)では、全めっき液の容積V2と廃液量V1とを一定値としているが、各回の廃液量と補充液量とが異なる場合には、それぞれの値を用いて分解物量を算出することができる。
【0025】
図2は計算した副生成物量とシームやボイドによって引き起こされた電気的な不良のチップの発生状況を示す図である。図2において、縦軸が副生成物量(分解物量)に対応する。図2から副生成物がある一定量を超えると不良チップが発生していることがわかる。つまり、副生成物は前述の通りウェーハの処理を進める過程でめっき液が電気分解したために生成され、この副生成物の量によってシームやボイド等の欠陥が発生することが新たにわかった。また、このような副生成物の振舞いは、副生成物が抑制剤の効果を持つことを示している。この新しい事実を本願発明者らは発見した。なお、本実施形態の電気めっき装置において、めっき液を充填できる最大の容量は200Lである。
【0026】
図3は電気的な不良チップの物理解析(不良箇所を特定し、その箇所の断面を観察するもの)した結果を示す図である。コンタクト35の直径は60nmから70nmで、トレンチ34とコンタクト35との深さを合わせた層間絶縁膜32の膜厚は200nmから300nmである。なお、図3では、層間絶縁膜32の下地層である層間絶縁膜31と当該層間絶縁膜31が備えるトレンチ33に充填された金属めっき層を合わせて図示している。
【0027】
図3において、トレンチ34の深さは100nm未満である。したがって、コンタクト35のアスペクト比は最大5程度である。100nm以下のコンタクト直径の場合、アスペクト比が3以上になると埋め込みが難しくなり、図3のように電気的な不良チップではトレンチ34の側壁にボイド41が発生していた。さらにコンタクト35部分にはシーム42が発生していた。なお、めっき液中の銅濃度を10mg/Literから100mg/Literまで変化させてもシーム42やボイド41の発生を抑制することはできなかった。
【0028】
次に、そのヴィア埋め込み不良の発生メカニズムについて説明する。
【0029】
図4はめっき液の変化に対するヴィア埋め込み特性の変化を示すメカニズム図である。本願発明者らの検討によれば、良好なヴィア埋め込み特性を得るためには、抑制剤51が電気分解されることで発生する副生成物52を制御することが重要である。抑制剤51は電気分解により消費されるが、そのときに元のPEG−PPG重合体よりも分子量の小さい分子が生成されたと考えられる現象が確認された。この分子量の小さい分子が上述の副生成物52である。上述のように、この副生成物52は、抑制剤51と同様の銅膜の成長を抑制する機能を有する。また、この副生成物52は分子量が小さいために拡散係数が大きく、微細なヴィア底(図4では、コンタクト35の底部)に到達する量が増加する。その結果、ヴィアやコンタクトの埋め込み不良が発生するのである。すなわち、副生成物52がヴィア底に早く到達するためヴィア底からの金属膜成長(ボトムフィリング)が抑制された結果、シーム等の欠陥が発生したと考えられる。
【0030】
よって、新しいめっき液を補充して3種類の添加剤の量を制御しても、このようなメカニズムで発生する副生成物は制御することができず、埋め込み不良を抑制することはできない。めっき液から副生成物を外部に放出する、つまり廃液することが根本的な解決方法になる。したがって、廃液量を制御することがもっとも重要なことなのである。そこで、本第1の実施の形態の電気めっき装置では、上述の式(1)により算出される副生成物の量が予め決めた量を超えると、SACライン4にある廃液バルブ5を開放して、めっき液を放出する構成を採用している。本構成では、放出によって副生成物が外部に放出されるので、ボイドやシームの原因となっているめっき液中の副生成物量を減らすことができる。
【0031】
図5は上述の式(1)により計算した副生成物量と、実際に液クロマトグラフィーを用いてめっき液中の副生成物量を測定した結果とを示す図である。図5から計算した副生成物量が増えてくるとめっき液中の副生成物量が多くなっていることがわかる。この測定では、検出すべき副生成物の具体的な分子構造までは特定できていないので、計算した副生成物量を頼りに液をサンプリングし、抑制剤とは異なる分子量を有する分子を液クロマトグラフィーで測定している。
【0032】
液クロマトグラフィーではカラムの保持時間に対する屈折率強度を観測するが、このような異なる分子量を有する分子は、抑制剤が観測できる保持時間(測定時間)とは異なる保持時間現れるため分離して検出することができる。現実の測定では、抑制剤が観測できる保持時間(測定時間)より長い時間で抑制剤以外の副生成物と考えられるピークを観測することができた。今回の液クロマトグラフィーではサイズ排除モードを用いている。当該モードでは、分子量の小さい分子はカラムの奥に入るためカラムから出にくくなり、カラムの保持時間が長くなる。今回の測定では、保持時間が長い場合にピークが観測されるので、検出された副生成物の分子量が抑制剤の分子量より小さいことを示唆しており、前述の発明者のモデルの正当性を示す結果が得られた。
【0033】
(第2の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に基づき、第2の実施の形態ではボイドやシーム等の欠陥のない埋め込み方法を提供するものである。
【0034】
図6は第2の実施の形態を示すめっき工程のフローチャートである。レシピをスタートすると、まず、モニタリング装置6が3つの添加剤の濃度を測定する(S1)。モニタリング装置6は、測定値が予め設定した値の範囲を超える場合はNGとしてめっき液の補充を制御装置1に指示する。当該指示を受けた制御装置1は供給バルブ9を開放状態として所定量のめっき液を補充する(S1NG、S2)。補充が完了すると、モニタリング装置6は、再度、添加剤の濃度を測定する(S1)。添加剤の濃度が上記範囲内に入るまでめっき液の補充が繰り返し実施されるが、補充量がめっき液のバス容積の値を超える場合は装置を停止させる。添加剤の濃度が上記範囲内になると(S1OK)、モニタリング装置6が、最初のめっき液の体積、補充しためっき液量、処理したウェーハの枚数、流した電流値、印加した電圧値、処理時間、回転数、排出した液量などの装置のデータを収集する(S3)。制御装置1は、これらの装置データから式(1)に基づいて副生成物量を計算する(S4)。副生成物量が予め設定した値の範囲を超えている場合、制御装置1は、廃液バルブ5を開放して廃液を実施(S4NG、S5)した後に、再度、データを収集して副生成物量を計算する(S4)。副生成物量が予め設定した値の範囲内になるまで廃液が繰り返し実施される(S4NG、S5)。副生成物量が予め設定した値の範囲内になると、制御装置1は、ウェーハを装置内に搬送し(S6)、カソード電極上にウェーハを設置する。しかるのちに、金属めっきを実施(S7)して、めっき完了後にウェーハを搬出し(S8)、レシピは終了する。
【0035】
ここで、重要なことは、従来レシピの外で実施されていた添加剤の濃度測定と、この濃度の良否を判断する工程を新たに設けた上に、添加剤の濃度が予め設定した値の範囲外である(S1NG)場合にめっき液を添加する機構と工程を設けた点である。さらに、より重要な点は、装置のデータを収集した上で副生成物量の計算とこの量の良否を判定する工程を新たに設けた上に、副生成物量が予め設定した値の範囲外である(S4NG)場合に廃液を実施する機構と工程を設けた点である。これらがレシピ内で実施されるために、モニタリングしたデータをその場で計算し、その結果をフィードバックすることができる。そして、副生成物量によって添加するめっき液の容積と排出するめっき液の容積とを制御している。それ故に、副生成物量の計算精度が大きく向上する。
【0036】
なお、ここでの説明はレシピスタート(オペレーションスタート)を起点としているが、ロットが装置に予約された時点(トラックイン)を起点としても、大きく計算精度が狂うことがないことは言うまでもない。
【0037】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態について説明する。本発明の第3の実施の形態は、最適な廃液量を決めた電気めっき方法に関するものである。めっき液は高価なので廃液する量はできるだけ少ないことが好ましい。そこで、本実施形態では、処理するウェーハ量、すなわち生成する副生成物量とめっき液槽全体の容積と廃液する量によって最適な廃液量を決定する手法について説明する。
【0038】
図7は廃液回数に対するめっき液中の副生成物量をシミュレーションした結果を示す図である。最初の副生成物量を「1」として、全めっき液量の8%廃液した場合と、29%廃液した場合の計算結果を示している。なお、廃液率は乱数により決めている。
【0039】
図7から8%の廃液率では十分に副生成物を外部に放出できないために、めっき液中に含まれる副生成物量は増え続けていることがわかる。一方、29%の廃液率では、副生成物の増加量は抑制されていることがわかる。このことから、廃液率には最適値があることがわかる。そこで、この計算結果から廃液率に対する副生成物の増加量を求めた結果を次に示す。
【0040】
図8は廃液率に対する副生成物の増加量についての説明図である。図8において、横軸が廃液率に対応し、縦軸が副生成物量に対応する。
【0041】
図8から前述の予測通り、廃液率を大きくすると増加量が小さくなっていることがわかる。もとの副生成物量が「1」なので副生成物量が「1」を越えないための廃液率は34%であることがわかる。したがって、めっき液中の副生成物量を増加させないためには廃液時に全めっき液量の34%を廃液することが必要である。もちろん、廃液率を34%より大きくすれば、廃液回数の増大に伴ってめっき液中の副生成物量を減らすことができることは言うまでもない。
【0042】
本実施の形態では、このようにして予め廃液量を決めることが可能であり、図1のモニタリング装置6に、ここで求めた値を閾値として保持しておいて、この値よりも廃液率が下がると装置を停止することで埋め込み不良を防止することが可能である。少なくとも図3に示すようなコンタクト直径100nm以下の微細構造物に銅をボイドやシームなどの欠陥なく埋め込むためには、少なくとも34%のめっき液を廃液しなければならない。
【0043】
なお、前記実施の形態において銅膜の埋め込みについて説明したが、銀やアルミニュウムなど他の金属膜についても同様であることは言うまでもない。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、めっき液の組成変動による埋め込み不良を防止することで半導体装置の歩留りを向上させることができる。
【0045】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変形および応用が可能である。例えば、上記各実施形態では、循環ラインと副循環ラインとを備える半導体製造装置に適用した事例について説明したが、本願発明は、図9に示したような1つの循環ラインのみを備える半導体製造装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の半導体装置の製造方法および半導体製造装置は、発生する副生成物量を計算によって求める機能を有し、この機能を使って副生成物量を一定の値に制御することが可能であって、ナノオーダーの微細構造物に金属を埋め込む半導体装置の配線工程の製造技術等として有用である。また、MEMSにおけるめっき工程等の用途にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態における電気めっき装置の概略構成図
【図2】めっき液中の副生成物の量の計算結果と不良発生との関係を示す図
【図3】ヴィアホールおよびトレンチの埋め込み不良の概略を示す図
【図4】ヴィアホールおよびトレンチの埋め込み不良のメカニズムを示す図
【図5】めっき液中の副生成物の量の計算結果に基づく液クロマトグラフィー測定結果を示す図
【図6】本発明の第2の実施の形態における電気めっき方法の工程を示すフローチャート
【図7】本発明の第3の実施の形態における廃液率シミュレーション結果を示す図
【図8】本発明の第3の実施の形態における廃液率決定方法を示す図
【図9】従来の電気めっき装置の概略構成図
【図10】従来の電気めっき方法の工程を示すフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された絶縁膜に設けられたヴィアホール又はトレンチに金属めっき膜を埋め込む工程を備えた、半導体装置の製造方法において、
前記金属めっき膜を埋め込む工程が、
最初のめっき液の容積、補充しためっき液量、処理したウェーハ枚数、流した電流値及び排出しためっき液量の各データを収集するステップと、
前記流した電流値に基づいてめっき処理の累積電荷量を計算するステップと、
全めっき液の容積を計算するステップと、
前記全めっき液の容積、排出しためっき液量および累積電荷量に基づいて、めっき液に含まれる抑制剤の分解物量を計算するステップと、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記分解物量が予め設定した値を超えた時に所定量のめっき液を排出するステップと、
めっき液を補充するステップと、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
半導体基板上に形成された絶縁膜に設けられたヴィアホール又はトレンチに金属めっき膜を埋め込む処理を実施する半導体製造装置において、
めっき液を循環させる手段と、
めっき液を供給する手段と、
めっき液を排出する手段と、
最初のめっき液の容積、補充しためっき液量、処理したウェーハ枚数、流した電流値及び排出しためっき液量の各データを収集する手段と、
前記流した電流値に基づいてめっき処理の累積電荷量を計算する手段と、
全めっき液の容積を計算する手段と、
前記全めっき液の容積、排出しためっき液量および累積電荷量に基づいて、めっき液に含まれる抑制剤の分解物量を計算する手段と、
を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項4】
前記めっき液の排出手段は、前記分解物量が予め設定した値を超えた時に、所定量のめっき液を排出することを特徴とする請求項3に記載の半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−242941(P2009−242941A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53154(P2009−53154)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】