説明

半導体装置の製造方法及び基板処理装置

【課題】金属膜中の不純物が少ない高品質な金属膜を形成する。
【解決手段】基板処理装置は、ウエハ200を処理する処理室201と、処理室201内に金属含有原料ガスを供給する原料ガス供給ライン10と、処理室201内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給ライン30と、処理室201内を加熱するヒータ206と、所定の処理温度に設定された処理室201内に金属含有原料ガスを供給してウエハ200上に所定膜厚の金属膜を形成し、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された処理室201内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理し、これを1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成するように、ヒータ206、原料ガス供給ライン10及び水素含有ガス供給ライン30を制御するコントローラ280と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法及び基板処理装置に関し、特に金属膜中の不純物が少ない高品質な金属膜を形成可能な半導体装置の製造方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置(半導体デバイス)の微細化に伴い、従来のSi系の金属膜を用いた工程に、Si以外の材料を用いた金属膜が導入される工程が増えつつある。例えば、容量絶縁膜の上部及び下部電極やゲート電極が挙げられる。これらの多くは、金属を含有した金属含有原料ガスと反応ガスとが使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、前記金属含有原料ガスが有機原料の場合、その原料に含まれる有機物質(例えば炭素(C))が不純物として金属膜中に残留し、金属膜としての特性を劣化させる場合がある。
従って、本発明の主な目的は、金属膜中の不純物が少ない高品質な金属膜を形成可能な半導体装置の製造方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、
処理室内に基板を搬入する工程と、
所定の処理温度に設定された前記処理室内に金属含有原料ガスを供給して基板上に所定膜厚の金属膜を形成する工程と、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された前記処理室内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理する工程とを、1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成する処理を行う工程と、
処理済基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0005】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に金属含有原料ガスを供給する金属含有原料ガス供給系と、
前記処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
所定の処理温度に設定された前記処理室内に金属含有原料ガスを供給して基板上に所定膜厚の金属膜を形成し、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された前記処理室内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理し、これを1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成するように、前記ヒータ、前記金属含有原料ガス供給系及び前記水素含有ガス供給系を制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、金属膜を形成した後に水素含有ガスを用いてその金属膜を熱処理するから、金属膜中の不純物を除去することができ、金属膜中の不純物が少ない高品質な金属膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施例について説明する。
【0008】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施例にかかる基板処理装置の構成について、図1,図2を参照しながら説明する。
【0009】
<処理室>
図1,図2に示すとおり、本実施例にかかる基板処理装置は、処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)など金属材料により構成されている。処理容器202内には、基板としてのウエハ200を処理する処理室201が構成されている。
【0010】
処理室201内には、ウエハ200を支持する支持台203が設けられている。ウエハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、ウエハ200を加熱する加熱手段としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、処理容器202の底部を貫通している。
【0011】
処理室201の外部には、昇降機構207bが設けられている。この昇降機構207bを作動させることにより、サセプタ217上に支持されるウエハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウエハ200の搬送時には図2で示される位置(ウエハ搬送位置)まで下降し、ウエハ200の処理時には図1で示される位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203の下端部、及び昇降機構207bの周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0012】
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に設けられている。また、支持台203には、かかるリフトピン208bを貫通させるための貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウエハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン208bの上端部が支持台203の上面から突出して、リフトピン208bがウエハ200を下方から支持するように構成されている。また、支持台203をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没して、支持台203上面に設けられたサセプタ217がウエハ200を下方から支持するように構成される。なお、リフトピン208bは、ウエハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0013】
<ウエハ搬送口>
処理室201の内壁側面には、処理室201の内外にウエハ200を搬送するためのウエハ搬送口250が設けられている。ウエハ搬送口250にはゲートバルブ251が設けられており、ゲートバルブ251を開けることにより、処理室201内と搬送室(予備室)271内とが連通するように構成されている。搬送室271は密閉容器272内に形成されており、搬送室271内にはウエハ200を搬送する搬送ロボット273が設けられている。搬送ロボット273には、ウエハ200を搬送する際にウエハ200を支持する搬送アーム273aが備えられている。支持台203をウエハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ251を開くことにより、搬送ロボット273により処理室201内と搬送室271内との間でウエハ200を搬送することが可能なように構成されている。処理室201内に搬送されたウエハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。
【0014】
<排気系>
処理室201の内壁側面であって、ウエハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、及び真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0015】
<ガス導入口>
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するためのガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0016】
<シャワーヘッド>
ガス導入口210と、ウエハ処理位置におけるウエハ200との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させるための分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウエハ200の表面に供給するためのシャワー板240bと、を備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面及びシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウエハ200と対向するように配置されている。
【0017】
なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させるための分散室(第1バッファ空間)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させるための第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0018】
<排気ダクト>
処理室201の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウエハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウエハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成される。
【0019】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられる。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるためのプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0020】
支持台203がウエハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウエハ処理位置まで上昇する。その結果、ウエハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204及びロワープレート205)及び支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0021】
ここで、ウエハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、分散室(第1バッファ空間)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウエハ200上に均一に供給される。そして、ウエハ200上に供給されたガスは、ウエハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウエハ200に接触した後の余剰なガスは、支持台203の外周に設けられた排気ダクト259上(すなわちコンダクタンスプレート204上)を、ウエハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、排気ダクト259上に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。以上の通り、処理室201の下部への、すなわち支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0022】
<ガス供給系>
ガス導入口210には原料ガス供給ライン10が接続されている。原料ガス供給ライン10には開閉バルブ12、気化器(VAP)14、液体流量コントローラ(LMFC)16が設けられおり、その基端に原料供給源18が設けられている。原料供給源18は金属含有原料の供給源であり、本実施例では当該金属含有原料としてDER(2,4−ジメチルペンタジエニルエチルシクロペンタジエニルルテニウム,Ru(C)((CH)C))が用いられる。
【0023】
原料ガス供給ライン10には、不活性ガス供給ライン20と水素含有ガス供給ライン30とが接続されている。不活性ガス供給ライン20には、開閉バルブ22、流量コントローラ(MFC)24が設けられており、その基端に不活性ガス供給源26が接続されている。不活性ガス供給源は不活性ガスの供給源であり、本実施例では当該不活性ガスとしてNガスが用いられる。水素含有ガス供給ライン30には、開閉バルブ32、流量コントローラ34が設けられており、その基端に水素含有ガス供給源36が接続されている。水素含有ガス供給源は水素含有ガスの供給源であり、本実施例では当該水素含有ガスとしてHガスが用いられる。
【0024】
原料ガス供給ライン10に加え、ガス導入口210にはさらに反応ガス供給ライン40が接続されている。反応ガス供給ライン40には開閉バルブ42、流量コントローラ44が設けられており、その基端に反応ガス供給源46が設けられている。反応ガス供給源46は反応ガスの供給源であり、本実施例では当該反応ガスとしてOガスが用いられる。
【0025】
<ベント(バイパス)系>
原料ガス供給ライン10にはベントライン50の一端が接続されている。ベントライン50には開閉バルブ52が設けられており、その他端が排気管261の真空ポンプ264より上流側に接続されている。不活性ガス供給ライン20にもベントライン60の一端が接続されている。ベントライン60には開閉バルブ62が設けられており、その他端が排気管261の真空ポンプ264より上流側に接続されている。反応ガス供給ライン40にもベントライン70の一端が接続されている。ベントライン70には開閉バルブ72が設けられており、その他端が排気管261の真空ポンプ264より上流側に接続されている。なお、反応ガス供給ライン40とベントライン60との間にはこれらラインを互いに接続する接続ライン80が設けられており、接続ライン80には開閉バルブ82が設けられている。
【0026】
<コントローラ>
本実施例にかかる基板処理装置は、基板処理装置の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、ゲートバルブ251、昇降機構207b、搬送ロボット273、ヒータ206、圧力調整器262、気化器14、真空ポンプ264、開閉バルブ12,22,32,42,52,62,72,82、液体流量コントローラ16、流量コントローラ24,34,44等の動作を制御する。
【0027】
(2)基板処理工程
続いて、図1〜図3を参照しながら、本実施例にかかる半導体装置の製造工程の一工程として、主に、上述の基板処理装置を用いたALD(Atomic Layer Deposition)法により、ウエハ200上に金属膜を形成する基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280により制御される。
【0028】
<基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)>
まず、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図2に示すウエハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ251を開き、処理室201と搬送室271とを連通させる。そして、搬送ロボット273により搬送室271内から処理室201内へ処理対象のウエハ200を搬送アーム273aで支持した状態で搬入する(S1)。処理室201内に搬入したウエハ200は、支持台203の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。搬送ロボット273の搬送アーム273aが処理室201内から搬送室271内へ戻ると、ゲートバルブ251が閉じられる。
【0029】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図1に示すウエハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没し、ウエハ200は、支持台203上面のサセプタ217上に載置される(S2)。
【0030】
<圧力調整工程(S3)、昇温工程(S4)>
続いて、圧力調整器262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する(S3)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウエハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S4)。
【0031】
なお、基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)、圧力調整工程(S3)及び昇温工程(S4)においては、真空ポンプ264を作動させつつ、不活性ガス供給ライン20の開閉バルブ22を開けることで、処理室201内にNガスを常に流しておく(idle)。これにより、ウエハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。このとき、ベントライン50の開閉バルブ52を開けて、液体のDERを予め液体流量コントローラ16で流量制御しながら気化器14で気化させ、DERガスをベントライン50から排気しておく。
【0032】
<成膜工程(S5)>
成膜工程(S5)は主に、原料ガス供給工程(S5−1)、原料ガスパージ工程(S5−2)、反応ガス供給工程(S5−3)及び反応ガスパージ工程(S5−4)の4つの工程で構成されている。
【0033】
原料ガス供給工程では、開閉バルブ52を閉じて原料ガス供給ライン10の開閉バルブ12を開け、液体のDERを、液体流量コントローラ16で流量制御しながら気化器14に送り込んで気化器14で気化させ、気化させたDERガスをガス導入口210からシャワーヘッド240に導入する。DERガスはシャワーヘッド240を流通して処理室201内に供給され、ウエハ200の表面に吸着する(S5−1)。余剰なDERガスは、排気ダクト259を経由して排気口260から排気される。このとき、接続ライン80の開閉バルブ82を開け、Nガスを流量コントローラ24で流量制御しながら反応ガス供給ライン40に流しておき、DERガスが反応ガス供給ライン40に侵入するのを防止する。
【0034】
続いて、原料ガスパージ工程では、開閉バルブ12を閉じて不活性ガス供給ライン20の開閉バルブ22を開け、Nガスを、流量コントローラ24で流量制御しながらガス導入口210からシャワーヘッド240を経て処理室201に供給する。その結果、原料ガス供給ライン10や処理室201に残留しているDERガスは、Nガスによりパージされ排気口260から排気される(S5−2)。このとき、ベントライン70の開閉バルブ72を開けて、次の工程で用いるOガスを、予め流量コントローラ44で流量制御しながらベントライン70から排気しておく。
【0035】
続いて、反応ガス供給工程では、開閉バルブ72を閉じて反応ガス供給ライン40の開閉バルブ42を開け、Oガスを、流量コントローラ44で流量制御しながらガス導入口210からシャワーヘッド240に導入する。Oガスはシャワーヘッド240を流通して処理室201内に供給され、ウエハ200の表面に吸着しているDERと表面反応し、その結果ウエハ200上にRu膜が形成される(S5−3)。余剰なOガスは、排気ダクト259を経由して排気口260から排気される。このとき、開閉バルブ22を開いたままとして、Nガスを流量コントローラ24で流量制御しながら原料ガス供給ライン10に流しておき、Oガスが原料ガス供給ライン10に侵入するのを防止する。
【0036】
続いて、反応ガスパージ工程では、開閉バルブ42を閉じて接続ライン80の開閉バルブ82を開けて、Nガスを、流量コントローラ24で流量制御しながらガス導入口210からシャワーヘッド240を経て処理室201に供給する。その結果、反応ガス供給ライン40や処理室201に残留しているOガスや、Oガスにより発生した副生成物は、Nガスによりパージされ排気口260から排気される(S5−4)。このとき、ベントライン50の開閉バルブ52を開けて、液体のDERを予め液体流量コントローラ16で流量制御しながら気化器14で気化させ、DERガスをベントライン50から排気しておく。
【0037】
そして上述した4つの工程S5−1〜S5−4を1サイクルとしてこの成膜サイクルを所定回数(1回又は複数回)繰り返し(S6)、所定膜厚のRu膜を形成する(S5)。原料ガス供給工程(S5−1)から反応ガスパージ工程(S5−4)にかけて要する時間は、スループット向上のために、各工程で数秒以下が望ましい。
【0038】
なお、成膜工程(S5)において、Ru膜をALD法により形成する際の処理条件の一例としては、処理室201内の温度(処理温度):200〜450℃、処理室201内の圧力(処理圧力):0.1〜10Torr、処理室201内に供給するガスの総流量:0.1〜5slm(100〜5000sccm)、原料ガス(DERガス)の供給流量:0.01〜0.5g/min、反応ガス(Oガス)の供給流量:10〜1000sccm、パージガス(Nガス)の供給流量:100〜5000sccm、Ru膜の膜厚:1〜20nm、成膜サイクル:1〜100サイクルが例示される。なお、この処理条件の範囲内であれば、成膜工程(S5)をノンプラズマで行うことができる。
【0039】
また、成膜工程(S5)をALD法により行う場合、処理温度を原料ガス(DERガス)が自己分解しない程度の温度帯となるように制御する。この場合、原料ガスを用いたALD工程において原料ガスを供給する際(S5−1)には、原料ガスは熱分解することなくウエハ200上に吸着する。また、反応ガス(Oガス)を供給する際(S5−3)には、ウエハ200上に吸着している原料ガス分子と反応ガスとが反応することにより、ウエハ200上に1原子層未満(1Å未満)程度の薄膜(Ru膜)が形成される。
【0040】
<水素処理工程(S7)>
続いて、水素含有ガス供給ライン30の開閉バルブ32を開けて、Hガスを、流量コントローラ34で流量制御しながらガス導入口210からシャワーヘッド240に導入する。Hガスはシャワーヘッド240を流通して処理室201内に供給され、その結果ウエハ200上に形成された所定膜厚のRu膜に対しHガスを用いた熱処理がなされる(S7)。余剰なHガスは、排気ダクト259を経由して排気口260から排気される。この状態で所定時間経過したら、開閉バルブ32を閉じてHガスの供給を停止するとともに、不活性ガス供給ライン20の開閉バルブ22を開けて処理室201内をパージする。
【0041】
そして、上記成膜サイクルによる成膜工程(S5)の処理と、この水素処理工程(S7)の処理とを、1サイクルとしてこの成膜−水素処理サイクルを所定回数(1回又は複数回)繰り返し(S8)、目標膜厚のRu膜を形成する。
【0042】
なお、水素処理工程(S6)における、水素処理条件の範囲としては、処理室201内の温度(処理温度):200〜450℃、処理室201内の圧力(処理圧力):0.1〜10Torr、水素含有ガス(Hガス)の供給流量:0.1〜5slm、水素処理時間:1〜30分、成膜−水素処理サイクル数:1〜100サイクル、水素処理サイクル完了後のRu膜の総膜厚:5〜100nmが例示される。
【0043】
ALD法によるRu膜の成膜工程(S5)と水素処理工程(S6)とは、同一の処理温度で行うのが好ましく、同一の処理温度及び同一の処理圧力で行うのがさらに好ましい。上述の水素処理条件の範囲内であれば、同一の処理温度で、さらには同一の処理温度及び同一の処理圧力で、成膜工程(S5)と水素処理工程(S6)とを行うことができる。つまり、処理温度を変更することなく、さらには処理温度と処理圧力とを変更することなく、成膜工程(S5)と水素処理工程(S6)とを連続的かつスムーズに行うことができ、スループットを向上させることができる。また、上述の水素処理条件の範囲内であれば、水素処理工程(S6)をノンプラズマで行うことができる。
【0044】
<基板搬出工程(S9)>
その後、上述した基板搬入工程(S1)、基板載置工程(S2)に示した手順とは逆の手順により、目標膜厚のRu膜を形成した後のウエハ200を処理室201内から搬送室271内へ搬出して、本実施例にかかる基板処理工程を完了する。
【0045】
以上の本実施例によれば、目標膜厚のRu膜を形成する際に成膜−水素処理サイクルを所定回数繰り返すから、Ru膜中の不純物(例えば炭素(C))を除去することができ、高品質なRu膜をウエハ200上に形成することができる。特に、本実施例において、成膜工程(S5)と水素処理工程(S7)とで、処理温度を変更せずに同一の処理温度で各処理を実行すれば、スループットを向上させることができる。さらに、処理温度,処理圧力の両方を変更せずに同一処理温度,同一処理圧力で各処理を実行すれば、さらにスループットを向上させることができる。また、水素処理工程(S7)の処理を熱により(ノンプラズマで)実行するから、ウエハ200にダメージを与えることがないし、プラズマを発生させるためのプラズマユニットも不要であり、基板処理装置にかかるコストが増大するのを防止することができる。
【0046】
ここで、図4,図5の実験結果を参照しながら、成膜−水素処理サイクルとRu膜の抵抗率との関係(不純物の除去効果)について説明する。
図4は、横軸がRu膜の成膜と水素処理とを1サイクルとした場合のサイクル数を示しており、縦軸が抵抗率を示している。
図5は、横軸がRu膜の成膜と水素処理とを1サイクルとした場合の1サイクル当たりに形成されるRu膜の膜厚を示しており、縦軸が抵抗率を示している。
なお、図4,図5は同一の実験結果を示すものであり、横軸だけを変えたものである。また、実験では、Ru膜の成膜工程と水素処理工程とのそれぞれの処理条件を上述の処理条件の範囲内の値に設定し、Ru膜の成膜工程と水素処理工程とを1サイクルとした場合のサイクル数と、1サイクル当たりに形成するRu膜の膜厚を変えて成膜を行った。
【0047】
図4,図5より、1サイクル当たりに形成されるRu膜の膜厚を薄くし、サイクル数を増やすと、Ru膜の抵抗率が低下していることがわかる。つまり、1サイクル当たりのRu膜の膜厚が厚い状態では、水素処理による不純物の除去効果が不十分で膜全体に行き届かないが、1サイクル当たりのRu膜の膜厚が薄い状態では、十分に水素処理の効果が得られることを確認できた。
【0048】
また、1サイクル当たりに形成するRu膜の膜厚は0.03〜6nmが好ましい。Ru膜の膜厚が0.03nm未満だと、1サイクル当たりのRu膜の厚さが1原子層未満となってスループットが悪くなり、実用的でない。他方、Ru膜の膜厚が6nmを超えると、Ru膜の抵抗率が実用レベルではなくなる。よって、Ru膜の膜厚は0.03〜6nmがよく、より好ましくは0.05〜2nmがよい。この範囲とすれば、スループットがより実用的で、Ru膜の抵抗率がより実用レベルとなる。
【0049】
なお、本発明の好ましい実施例では、原料ガスとしてDERガスを、反応ガスとしてOガスを使用し、金属膜としてRu膜を形成し、水素含有ガスとしてHガスを使用する例について説明したが、本実施例で使用されるガス,形成する膜は用途に応じて様々な種類から適宜選択可能であり、一般的に下記が例示される。
【0050】
原料ガスとしては、Si,Al,Ti,Ni,Sr,Y,Zr,Nb,Nb,Ru,Sn,Ba,La,Hf,W,Re,Ir,Pt,W,Pb,Biのうち少なくともいずれかの金属を含むものが使用可能である。
反応ガスとしては、HO,NO,NOが使用可能である。
金属膜としては、Si,Al,Ti,Ni,Sr,Y,Zr,Nb,Nb,Ru,Sn,Ba,La,Hf,W,Re,Ir,Pt,W,Pb,Biのうち少なくともいずれかの金属を含むものが形成可能である。
水素含有ガスとしては、H,HO,H,NH,N等のガスのいずれかや、これらガスのいずれかを活性化手段により活性化させることにより生成可能なラジカル種又はイオン種が使用可能である。
【0051】
また、成膜方法としては、従来から実施されている、金属含有原料ガスと反応ガス(酸素又は窒素を含有するガス)とを同時に供給する成膜や、金属含有原料の熱分解による成膜によるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法も利用できることは言うまでもない。
【0052】
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0053】
本発明の一態様によれば、
処理室内に基板を搬入する工程と、
所定の処理温度に設定された前記処理室内に金属含有原料ガスを供給して基板上に所定膜厚の金属膜を形成する工程と、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された前記処理室内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理する工程とを、1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成する処理を行う工程と、
処理済基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0054】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に基板を搬入する工程と、
所定の処理温度に設定された前記処理室内に金属含有原料ガスと反応ガスとを交互に又は同時に供給して基板上に所定膜厚の金属膜を形成する工程と、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された前記処理室内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理する工程とを、1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成する処理を行う工程と、
処理済基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0055】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に金属含有原料ガスを供給する金属含有原料ガス供給系と、
前記処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
所定の処理温度に設定された前記処理室内に金属含有原料ガスを供給して基板上に所定膜厚の金属膜を形成し、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された前記処理室内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理し、これを1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成するように、前記ヒータ、前記金属含有原料ガス供給系及び前記水素含有ガス供給系を制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0056】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に金属含有原料ガスを供給する金属含有原料ガス供給系と、
前記処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
所定の処理温度に設定された前記処理室内に金属含有原料ガスと反応ガスとを交互に又は同時に供給して基板上に所定膜厚の金属膜を形成し、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された前記処理室内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理し、これを1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成するように、前記ヒータ、前記金属含有原料ガス供給系及び前記水素含有ガス供給系を制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0057】
好ましくは、前記水素含有ガスによる前記金属膜の熱処理はノンプラズマで行う。
好ましくは、前記1サイクルで形成する前記金属膜の膜厚が0.03nm以上6nm以下である。
好ましくは、前記1サイクルで形成する前記金属膜の膜厚が0.05nm以上2nm以下である。
好ましくは、前記所定膜厚の金属膜を形成する工程と前記金属膜を熱処理する工程とで、前記処理室内の温度および圧力を同一の処理温度および処理圧力に設定する。
好ましくは、前記金属膜がルテニウム膜であり、前記水素含有ガスが水素ガスである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の好ましい実施例にかかる基板処理装置のウエハ処理時における概略的な断面構成図である。
【図2】本発明の好ましい実施例にかかる基板処理装置のウエハ搬送時における概略的な断面構成図である。
【図3】本発明の好ましい実施例にかかる半導体装置の製造方法の一部の工程を経時的に示す概略的なフローチャートである。
【図4】成膜−水素処理サイクル数(横軸)と、Ru膜の抵抗率(縦軸)との関係を概略的に示す図面である。
【図5】1回の成膜−水素処理サイクル当たりに形成されるRu膜の膜厚(横軸)と、Ru膜の抵抗率(縦軸)との関係を概略的に示す図面である。
【符号の説明】
【0059】
10 原料ガス供給ライン
30 水素含有ガス供給ライン
200 ウエハ
201 処理室
206 ヒータ
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に基板を搬入する工程と、
所定の処理温度に設定された前記処理室内に金属含有原料ガスを供給して基板上に所定膜厚の金属膜を形成する工程と、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された前記処理室内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理する工程とを、1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成する処理を行う工程と、
処理済基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に金属含有原料ガスを供給する金属含有原料ガス供給系と、
前記処理室内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理室内を加熱するヒータと、
所定の処理温度に設定された前記処理室内に金属含有原料ガスを供給して基板上に所定膜厚の金属膜を形成し、前記所定の処理温度と同一の処理温度に設定された前記処理室内に水素含有ガスを供給することにより前記金属膜を熱処理し、これを1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返すことにより目標膜厚の金属膜を形成するように、前記ヒータ、前記金属含有原料ガス供給系及び前記水素含有ガス供給系を制御するコントローラと、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−80737(P2010−80737A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248456(P2008−248456)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】