説明

半導体装置の製造方法

【課題】ノイズを低減して信頼性を向上させた半導体装置が提供可能であるとともに量産性に優れた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板材11に発光素子、受光素子およびICチップを複数個搭載する搭載工程と、ICチップをシールドする金属ケース12を発光素子、受光素子およびICチップの上方に配置する配置工程と、金属ケース12を含めて発光素子、受光素子およびICチップを樹脂封止して樹脂パッケージ8を形成する封止工程と、樹脂封止された金属ケース12を含めて基板材11を切断する切断工程とを含む光通信モジュールの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を保護する金属板を有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の1つである光通信モジュールとして、従来、図6に示すように、一側端面に接続端子が形成された基板に発光素子、受光素子、ICチップ(図示せず)が搭載され、これらを封止する樹脂パッケージ21が形成され、この樹脂パッケージ21を覆うように金属ケース22を備えたものがある。この金属ケース22は、外来ノイズを遮断して制御回路の誤動作を防止するシールド部として機能するものである。しかしながら、上記構成では、光通信モジュールの形状自由度が金属ケース22の形状に限定されるうえに、金属ケース22自体が外部から損傷を受けて変形するなど、光通信モジュールの性能の信頼性を低下させる可能性がある。
【0003】
そこで、上記従来の光通信モジュールよりもノイズを低減することができ、かつ、シールド部が外部より損傷を受けにくくすることにより信頼性を向上させた光通信モジュールが特許文献1に記載されている(図5参照)。
【特許文献1】特開2000−340846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のような光通信モジュールは、ノートパソコンやPDA等の携帯情報機器間のデータ送受信をケーブルレスで実現でき、さらには、デジタル携帯電話やPHS等の電波を用いたデータ伝送方式と比較して機構的に簡単、低コスト、小型のため情報機器に組み込みやすい等の理由から、必要性が高まっており、ますます需要が増えると予想される。従って、量産性に優れた製造方法が求められている。
【0005】
そこで本発明は、ノイズを低減して信頼性を向上させた半導体装置が提供可能であるとともに量産性に優れた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板材に半導体素子を複数個搭載する搭載工程と、前記半導体素子をシールドする金属板を前記半導体素子の上方に配置する配置工程と、前記金属板を含めて前記半導体素子を樹脂封止する封止工程と、複数の前記半導体素子をそれぞれ個片化するように、樹脂封止された前記金属板を含めて前記基板材を切断する切断工程とを含む半導体素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノイズを低減して信頼性を向上させた半導体装置を、一度に多数個製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願の第1の発明は、基板材に半導体素子を複数個搭載する搭載工程と、半導体素子をシールドする金属板を半導体素子の上方に配置する配置工程と、金属板を含めて半導体素子を樹脂封止する封止工程と、複数の半導体素子をそれぞれ個片化するように、樹脂封止された金属板を含めて基板材を切断する切断工程とを含む半導体素子の製造方法である。
【0009】
本発明によれば、外来ノイズを遮断して制御回路の誤動作を防止するシールド部として機能する金属板を基板材に複数個搭載された半導体素子の上方に配置して、金属板を含めて基板材を樹脂封止することにより、半導体素子にできるだけ近い状態で金属板を配置することができ、半導体素子に対する外来ノイズの遮断効果を高めることができるとともに、樹脂封止した金属板を含めて基板材を切断して、半導体装置が多数個につながった状態で成形されたものを1つずつに分離することによって、一度に多数の半導体装置を提供することができる。つまり、本発明によれば、ノイズを低減して信頼性を向上させた半導体装置を一度に多数個製造することができ、量産性に優れた半導体装置の製造方法とすることができる。
【0010】
本願の第2の発明は、本願の第1の発明において、金属板を半導体素子の上方に配置する際には、金属板から下方に向かって突出する凸部を基板材に形成された差込孔に差し込んで金属板を基板材に固定することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、金属板から下方に向かって突出する凸部を基板材に形成された差込孔に差し込んで金属板を基板材に固定することにより、封止工程において、半導体素子の上方に配置されている金属板の位置が樹脂封止金型に注入された封止樹脂の圧力でずれることを防止することができる。
【0012】
本願の第3の発明は、本願の第2の発明において、差込孔をグランドに接続することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、差込孔をグランドと接続することにより、差込孔に差し込まれている凸部を通じて金属板をグランドと導通させることができる。従って、金属板をグランドと導通させるために、金属板をグランド端子にワイヤで接続するなどの工程を省略することができる。また、封止樹脂による封止工程後に金属板とグランド端子を接続するための手段を設ける必要がないので、製造される半導体装置の小型化を図ることができる。
【0014】
本願の第4の発明は、本願の第1から第3のいずれかの発明の配置工程において、断面コ字状に、かつ、列状に搭載された複数の半導体素子の上方に配置されるように長尺状に形成された金属板を、半導体素子の上方に配置し、封止工程において、封止樹脂を金属板の一方の端部側から流入させることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、断面コ字状に、かつ、列状に搭載された複数の半導体素子の上方に配置されるように長尺状に形成された金属板が、封止樹脂を注入する際に、封止樹脂を誘導するトンネルの役割を果たすので、封止工程において、封止樹脂を金属板の一方の端部側から流入させると、封止樹脂は、金属板で囲われた空間を隙間なく充填することができる。従って、樹脂封止する部分に空気による空隙ができることを防ぐことができる。
【0016】
(実施の形態)
本実施の形態における半導体装置の製造方法として、光通信モジュールを例に図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態における半導体装置の製造方法を説明する平面図である。図2は図1のA部拡大図である。図3は図1のB部拡大図である。図4は金属ケースの断面図である。図5は本実施の形態における光通信モジュールを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は樹脂パッケージを除いた状態の斜視図である。
【0017】
図5に示すように、本実施の形態における光通信モジュール1は、基板5に、発光素子2、受光素子3および受光素子3からの信号を増幅したり変調したりするICチップ4が搭載され、また、外来ノイズを遮断して制御回路の誤動作を防止するために、ICチップ4の上方に金属板からなるシールド部7が配置されており、これらが一体に樹脂パッケージ8にて封止されているものである。
【0018】
次に、本実施の形態1における光通信モジュール1の製造方法について説明する。図1に示すように、光通信モジュール1は、基板材11に発光素子2、受光素子3、およびICチップ4を搭載する搭載工程(図1(a)参照)と、ICチップ4をシールドする金属ケース12を、発光素子2、受光素子3、およびICチップ4の上方に配置する配置工程(図1(b)参照)と、金属ケース12を含めて発光素子2、受光素子3、およびICチップ4を樹脂封止する封止工程と、樹脂封止された金属ケース12を含めて基板材11を切断して個片化する切断工程(図1(c)参照)とにより製造される。
【0019】
まずは、基板材11に発光素子2、受光素子3およびICチップ4を複数個搭載する搭載工程について説明する。図1(a)に示すように、基板材11には、配線パターン111および個片化した際に光通信モジュール1の接続端子となるスルーホール112が、図2に示すものを1単位として、縦横に複数形成されている。本実施の形態では、横方向に4つ形成されている。
【0020】
上記構成の基板材11の配線パターン111上の所定の位置に発光素子2、受光素子3およびICチップ4を、銀ペーストを介してそれぞれ搭載する。そして、発光素子2、受光素子3およびICチップ4から配線パターン111の所定の位置にそれぞれワイヤ113による導通接続を行う。
【0021】
次に、ICチップ4をシールドする金属ケース12を発光素子2、受光素子3、およびICチップ4の上方に配置する配置工程について説明する。配置工程で用いられる金属ケース12は、図4に示すように、2つの側壁122と天面壁123とにより断面コ字状に形成され、金属ケース12を基板材11に配置した際に、天面壁123が、図5(b)および図5(c)に示すように、ICチップ4の上方に近接した状態で配置されてシールド部7となるように、側壁122の高さが調整されている。このように、ICチップ4の上方に近接した状態で金属ケース12を配置することにより、後述する切断工程で個片化された際に、金属ケース12の天面壁123はICチップ4をシールドするシールド部7として機能し、ICチップ4に対する外来ノイズの遮断効果を高めることができる。また、金属ケース12は、図1(b)に示すように、基板材11の横方向に渡ってすべてのICチップ4を覆うように、長尺状に形成されている。また、金属ケース12の側壁122の下端にはそれぞれ、凸部124が複数箇所(本実施の形態では3箇所)に形成されている。この凸部124は、基板材11に形成されグランドパターンと導通している差込孔114(図1、図2参照)に挿入されるものである。また、金属ケース12の天面壁123にはレンズ用孔121が設けられており、このレンズ用孔121は、封止工程において樹脂封止する際に、樹脂パッケージ8のレンズ部6が形成される位置にあたる部分にそれぞれ形成されている。
【0022】
上記構成の金属ケース12を、発光素子2、受光素子3、およびICチップ4の上方に配置して、凸部124を基板材11の差込孔114に差し込む。凸部124には導電性ペーストが塗布されており、この凸部124を差込孔114に差し込むことによって、金属ケース12は基板材11にしっかりと固定されるとともにグランドと導通する。このようにすることで、後述する封止工程において、封止樹脂の注入圧で金属ケース12の位置がずれてしまうことを防ぐことができる。
【0023】
次に、金属ケース12を含めて発光素子2、受光素子3、およびICチップ4を樹脂封止する封止工程を行う。まず、図5に示すようなレンズ部6を形成するためのキャビティが形成された樹脂封止金型(図示せず)で基板材11の端部を挟持する。そして、樹脂封止金型によって形成されている空間に対して、金属ケース12の一方の端部側(図3で示す矢印A)から封止樹脂を注入する。このとき、図3に示すように、金属ケース12が断面コ字状で、かつ、長尺状に形成されていることにより、金属ケース12が封止樹脂を誘導するトンネルの役割を果たし、金属ケース12と基板材11との間に形成されている空間内に隙間なく封止樹脂が充填されていく。そして、図1(c)に示すようなレンズ部6を備えた樹脂パッケージ8が形成される。
【0024】
最後に、発光素子2、受光素子3およびICチップ4を1単位として構成される光通信モジュール1となるように個片化する切断工程を行う。樹脂封止された金属ケース12を含めて、基板材11を図1(c)に示す点線部分でダイシングすることによって、図5に示すような光通信モジュール1が一度に多数個製造される。
【0025】
このように、本実施の形態によれば、一連の製造工程により一度に多数個の光通信モジュール1を製造することができ、量産性に優れた光通信モジュールの製造方法とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ノイズを低減して信頼性を向上させた半導体装置を製造する方法として好適に用いることができる。特に、本発明によれば、量産性に優れた半導体装置の製造方法として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施の形態における半導体装置の製造方法を説明する平面図
【図2】図1のA部拡大図
【図3】図1のB部拡大図
【図4】金属ケースの断面図
【図5】本実施の形態における光通信モジュールを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)は樹脂パッケージを除いた状態の斜視図
【図6】従来の光通信モジュールを示す斜視図
【符号の説明】
【0028】
1 光通信モジュール
2 発光素子
3 受光素子
4 ICチップ
5 基板
6 レンズ部
7 シールド部
8 樹脂パッケージ
11 基板材
12 金属ケース
111 配線パターン
112 スルーホール
113 ワイヤ
114 差込孔
121 レンズ用孔
122 側壁
123 天面壁
124 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板材に半導体素子を複数個搭載する搭載工程と、
前記半導体素子をシールドする金属板を前記半導体素子の上方に配置する配置工程と、
前記金属板を含めて前記半導体素子を樹脂封止する封止工程と、
複数の前記半導体素子をそれぞれ個片化するように、樹脂封止された前記金属板を含めて前記基板材を切断する切断工程と
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属板を前記半導体素子の上方に配置する際には、前記金属板から下方に向かって突出する凸部を前記基板材に形成された差込孔に差し込んで前記金属板を前記基板材に固定することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記差込孔をグランドに接続することを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記配置工程において、断面コ字状に、かつ、列状に搭載された複数の半導体素子の上方に配置されるように長尺状に形成された金属板を、前記半導体素子の上方に配置し、
前記封止工程において、封止樹脂を前記金属板の一方の端部側から流入させることを特徴とする請求項1から3のいずれかの項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−53254(P2008−53254A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224882(P2006−224882)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】