説明

半導体装置の製造方法

【課題】剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】室温よりも高い第1温度で、第1基板の第1主面と、前記第1基板とは熱膨張係数が異なる第2基板の第2主面と、を密着させ、前記第1主面と前記第2主面とを密着させたまま、前記第1温度よりも高い第2温度まで加熱して、前記第1基板と前記第2基板とを接合することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、異なる種類の基板を接合する工程がある。例えば、半導体発光素子においては、GaAsからなる基板と、GaPからなる基板と、を接合する工程がある。
【0003】
このように異なる種類の2枚の基板を接合一体化するために、いくつかの接合方法が考案されているが、熱処理を伴うのが一般的である。
例えば、共晶接合、半田接合、ガラスフリット接合などの、接合材料を用いる方法では、2枚の基板を加熱して接合界面の接合材料を溶融、あるいは軟化させて、2枚の基板を一体化させ、その後、基板を室温に戻す。
【0004】
一方、接合材料を用いない方法である直接接合では、例えば、OH基どうしの結合力で2枚の基板を室温で密着させ、その後基板の温度を上げて界面の接合反応を進めることにより2枚の基板を強固に接合し、最後に基板を室温に戻す(例えば特許文献1参照)。
【0005】
これら従来の方法によって材質が異なる基板を接合する場合、両基板の熱膨張係数差が異なるために、接合がうまくいかない問題がある。すなわち、昇温または降温の際に、熱膨張係数が大きい方の基板が小さい方の基板に比べて、より多く延びる、または、縮むため、接合界面や基板本体に応力がかかり、反りが発生したり、剥がれたり、基板が破壊することがある。
【特許文献1】特開2001−57441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合する半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、室温よりも高い第1温度で、第1基板の第1主面と、前記第1基板とは熱膨張係数が異なる第2基板の第2主面と、を密着させ、前記第1主面と前記第2主面とを密着させたまま、前記第1温度よりも高い第2温度まで加熱して、前記第1基板と前記第2基板とを接合することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
すなわち、同図は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法における基板の温度と時間との関係を例示しており、横軸が時間tであり、縦軸が基板の温度Tを表している。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の構成を例示する模式的断面図である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を含む製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
すなわち、同図(a)は最初の工程の図であり、同図(b)〜(d)はそれぞれ、前の工程に続く図である。なお、図4は、図3の上下を逆にして記載されている。
【0011】
図3に表したように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造装置によって製造される半導体装置は、例えば、InGaAlP系LED50である。同図に表したように、LED50は、活性層15と、この活性層15を介在させて積層形成されたN型クラッド層14と、P型クラッド層16と、を有する積層体10と、この積層体10の下面に一体的に接合されたGaP基板11と、N型クラッド層14の上面側に設けられた第1電極19aと、GaP基板11の下面に設けられた第2電極19bと、を有している。
【0012】
積層体10は、図示しないGaAs基板を成長用基板として化合物半導体の混晶をエピタキシャル成長させることにより形成されたものである。
【0013】
GaP基板11は、P型クラッド層16との接合面を主面とすると、この主面が鏡面加工され、積層体10が、上記の成長用基板上に形成されたままで、直接密着接合されている。成長用基板は、密着接合後に除去されている。
【0014】
活性層15、N型クラッド層14及びP型クラッド層16は、例えば、In(Ga1−yAl1−xPの組成を有する。
【0015】
本具体例においては、GaP基板11は、例えば、P型で、厚さが250μmである。 そして、P型クラッド層16は、例えば、0.6μmの厚さを有し、その組成比は、上記の組成式において、x=0.5、y=1.0とすることができる。また、活性層15は、例えば、厚さ0.6μmで、組成比がx=0.5、y=0.28である。また、N型クラッド層14は、厚さ0.6μmであり、その組成比は、x=0.5、y=1.0である。
このように、本具体例のLED50は、可視光領域の光を吸収しないGaP基板11上に形成されているため、高い輝度で発光させることができる。
【0016】
このような半導体装置であるLED50は、例えば、図4に表したような方法で作製することができる。
まず、図4(a)に表したように、まず、直接接合に供するエピタキシャルウェーハとして、N型GaAs基板12(成長用基板)の上に、バッファ層18、N型クラッド層14、活性層15、P型クラッド層16、及び、表面カバー層17を順次積層して形成する。これらのエピタキシャル膜の成膜には、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。
【0017】
N型GaAs基板12には、例えば、サイズが直径2インチ、厚さ250μmの基板を用いることができ、不純物としてSiが約1×1018/cmのキャリア濃度でドープされ、さらにその主面は鏡面仕上げとなっている。
バッファ層18は、例えば、GaAsで、厚さは0.5μmとすることができる。
最上層の表面カバー層17は、例えば、GaAsで形成され、厚さは0.1μmとすることができる。
【0018】
次に、図4(b)に表したように、上記のエピタキシャルウェーハを洗浄した後、例えば、アンモニア及び過酸化水素水の混合液に侵漬してエッチングを行い、表面カバー層17を除去する。
【0019】
そして、図4(c)に表したように、表面カバー層17を除去したエピタキシャルウェーハとGaP基板11との直接接合を行う。この時に、本発明の第1の実施形態に係る製造方法を用いるが、それについては後述する。
【0020】
そして、エピタキシャルウェーハとGaP基板11とが接合された後、図4(d)に表したように、上記のエピタキシャルウェーハのGaAs基板12を除去する。このGaAs基板12の除去には、例えば、エピタキシャルウェーハ及びGaP基板11との接合体をアンモニア及び過酸化水素水の混合液に浸漬し、GaAsを選択的にエッチングする方法を用いることができる。このエッチングにより、バッファ層18も同時に除去する。
【0021】
そして、GaP基板11とN型クラッド層14とにそれぞれ第1及び第2電極19a、19bを設け、図3に例示したLED50が得られる。
【0022】
以下では、図4(c)に例示した、エピタキシャルウェーハとGaP基板11との直接接合について詳しく説明する。この工程では、N型GaAs基板12の上に形成されたP型クラッド層16の表面と、GaP基板11と、が直接接合される。以下では、N型GaAs基板12とその上に形成されたエピタキシャル膜とを第1基板110とし、GaP基板11を第2基板120として説明する。
【0023】
図1、図2に表したように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、まず、室温T0よりも高い第1温度T1で、第1基板110の第1主面111と、前記第1基板110とは熱膨張係数が異なる第2基板120の第2主面121とを密着させる(ステップS10)。
【0024】
そして、前記第1主面111と、前記第2主面121とを密着させたまま、前記第1温度T1よりも高い第2温度T2で、前記第1基板110及び前記第2基板120を熱処理する(ステップS20)。
【0025】
これにより、剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合する半導体装置の製造方法が提供できる。
【0026】
従来の方法においては、2枚の基板を直接接合する際には、その2枚の基板は室温で密着させられ、その後熱処理が行われていた。
これに対し、本実施形態においては、室温T0よりも高温の第1温度T1で、第1及び第2基板110、120を密着させ、その後、その状態でさらに高温の第2温度T2で熱処理する。そして、その後、室温T0まで降温する。
【0027】
すなわち、図1に表したように、2枚の基板の密着を行うステップS10は、第1温度T1で行われ、熱処理を行うステップS20は、第2温度T2で行われる。この時、室温T0とステップS10が行われる温度との差は、温度差ΔT1(=T1−T0)である。そして、ステップS10とステップS20との温度差は、ΔT2(=T2−T1)となる。
【0028】
そして温度差ΔT1に起因して、第1及び第2基板110、120に、ΔT1起因応力が印加される。そして、温度差ΔT2に起因して、第1及び第2基板110、120に、ΔT2起因応力が印加される。この時、ΔT1起因応力及びΔT2起因応力のうち大きい方の応力が、基板の剥がれや破壊を支配する。従って、基板の剥がれや破壊を抑制するためには、ΔT1起因応力及びΔT2起因応力のうちの大きい方の応力を低下させ、ΔT1起因応力及びΔT2起因応力の両方を小さい状態にすることが有効である。
【0029】
一方、第2温度T2は、2枚の基板において接合反応を充分進行させるために必要な温度Taよりも高い温度とすることができる。すなわち、室温と第2温度T2との差は、比較的大きな差となる。この時、基板どうしを密着させる工程(ステップS10)を、室温よりも高い温度である第1温度T1とすることで、ΔT1とΔT2の両方を比較的小さい状態にすることができる。これにより、基板に加えられる熱膨張係数の差に起因した応力、すなわち、ΔT1起因応力及びΔT2起因応力の大きい方の応力を緩和でき、剥がれや破壊などを発生させずに、第2温度T2を充分高い温度に設定できる。
【0030】
このように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合する半導体装置の製造方法が提供できる。
【0031】
このように、第2温度T2は、第1及び第2基板110、120どうしが接合反応する温度Taよりも高い温度に設定することができる。例えば、GaAs基板とGaP基板とを接合する際には、第2温度T2は、例えば350℃以上とすることができる。
【0032】
また、上記の第1温度T1は、室温よりも高い温度とすることができる。その時、上記のΔT1とΔT2とが実質的に同じであることが好ましい。すなわち、第1温度T1が、第2温度T2と室温T0との間の丁度中間の温度とすることが望ましい。
【0033】
実際には、第1温度T1(℃)は、第2温度T2(℃)の30%〜70%の値にすることができる。これにより、上記のΔT1及びΔT2の両方を比較的小さい状態にすることができる。その結果、ΔT1起因応力及びΔT2起因応力のうち、大きい方の応力を低下させ、これらの熱応力の両方を小さい状態にすることができ、剥がれや破壊などを発生し難くすることができる。
なお、上記において、室温は、例えば25℃である。
【0034】
また、図1に表した具体例では、ステップS10においては、第1温度T1が比較的短い保持時間t1の間保持されている。例えば、保持時間t1は、10秒〜60秒とすることができる。
【0035】
ただし、本発明はこれに限らない。すなわち、ステップS10は、第1温度T1での保持時間がなく、温度が変化し続けている最中に実施することができる。逆に、第1温度T1の保持時間t1が比較的長く、その間にステップS10を実施しても良い。
【0036】
また、図1に表した具体例では、ステップS20においては、第2温度T2が、保持時間t1よりも長い保持時間t2の間保持されているが、本発明はこれに限らない。すなわち、第2温度T2の保持時間t2が比較的短く、その間にステップS20を実施しても良く、さらには、第2温度T2の保持時間が実質的に非常に短く、温度が変化し続けている最中にステップS20を実施しても良い。このように、本実施形態においては、第2温度T2による熱処理が実施されれば良い。
【0037】
上記において、2枚の基板どうしの直接接合は以下のように行われる。
直接接合においては、表面を鏡面とした2枚の基板どうしを、実質的に異物がない雰囲気下において、密着させ、その後熱処理することにより接合して一体化する。この方法においては、熱処理の前に基板の全面が密着しているため、未接合部を残すことなく全面を接合でき、また熱処理中に圧力を印加する必要がないので、特殊な装置や器具を必要としない利点がある。ただし、熱処理中に圧力を印加しても良い。
【0038】
なお、この直接接合の技術は、上に説明したGaAs基板とGaP基板との接合の他にも、各種の基板に応用することができる。
【0039】
直接接合における接合の機構を、Siウェーハどうしを直接接合する場合として説明する。
すなわち、まず初めに洗浄や水洗によりウェーハの表面にOH基を形成させる。そこでウェーハ表面どうしを接触させると、OH基どうしが水素結合により引き合い、室温でもウェーハどうしが密着する。この密着力は強く、通常のウェーハの反りであれば、これを矯正して全面が密着する。熱処理中には、100℃を上回る温度において脱水縮合反応(Si−OH:HO−Si→Si−O−Si+HO)が起こり、酸素原子を介してウェーハどうしが結合し、接着強度が上がっていく。さらに高温になると接着界面近傍の原子の拡散と再配列が起こり、強度的にも電気的にもウェーハが一体化する。同様の機構により、例えば化合物半導体基板どうし、あるいは、各種基板と金属基板との直接接合も行われる。
【0040】
直接接合においては、上記のような化学反応、すなわち、接合反応を充分進行させることにより、より強固な接合が実現できる。接合反応に必要な温度Taは、例えば、200℃以上とすることができる。
【0041】
(第1の比較例)
図5は、第1の比較例の半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
図5に表したように、第1の比較例の半導体装置の製造方法においては、ステップS10が室温で実施される。そして、室温からあまり高い温度に加熱した際に生じる、熱応力を抑制するために、熱処理温度T8は、基板どうしの直接接合に必要とされる温度Taよりも低く抑えられている。
【0042】
このため、基板どうしを密着させる室温T0と熱処理温度T8との温度差ΔT8は比較的小さく抑えられている。
【0043】
このため、第1の比較例の製造方法においては、温度差ΔT8が小さいため、発生する熱応力が小さく、基板の破壊やスリップは発生しない。しかしながら、熱処理温度T8が、基板どうしの直接接合に必要とされる温度Taよりも低いので、接合反応が充分でなく、薬品の処理等により容易に基板が剥がれてしまう。
【0044】
(第2の比較例)
図6は、第2の比較例の半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
図6に表したように、第2の比較例の半導体装置の製造方法においては、ステップS10が室温で実施される。そして、室温から充分高い熱処理温度T9で熱処理が行われる。この場合の熱処理温度T9は、基板どうしの直接接合に必要とされる温度Taよりも高い温度であり、例えば、上記の実施形態の第2温度T2と同じ温度である。
【0045】
この場合、熱処理温度T9が充分高いため、接合反応が充分進行するので、薬品の処理等により基板が剥がれてしまうことはない。
【0046】
しかしながら、基板どうしを密着させる室温T0と熱処理温度T9との温度差ΔT9は、非常に大きくなる。
このため、第2の比較例の製造方法においては、温度差ΔT9が大きいので、発生する熱応力が大きく、基板の破壊やスリップが発生する。
【0047】
このように、第1及び第2の比較例においては、接合が不十分で剥がれが生じるか、基板の破壊やスリップが発生する。
【0048】
これに対し、既に説明したように、本実施形態においては、室温よりも高温の第1温度T1で基板どうしを密着させるので、基板を密着させる温度と室温との温度差ΔT1と、基板を密着させる温度と熱処理を行う温度第2温度T2との温度差ΔT2の両方を比較的小さい値にしつつ、熱処理温度(第2温度T2)を充分に高温にすることができる。これにより、基板どうしに加えられる熱膨張係数の差に起因した応力を緩和でき、剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合する半導体装置の製造方法が提供できる。
【0049】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、上記のように、GaAs基板とGaP基板との接合の他、各種の化合物半導体基板どうしの接合、シリコン基板と化合物半導体との接合、に応用できる。また、上記のように、基板表面どうしを直接に接合させる場合以外に、基板間に、金属やその他の接合材料を介して接合させる場合にも、応用できる。また、化合物半導体またはシリコン基板と、金属基板(または表面に金属層を有する基板)と、の接合など、各種の基板どうしの接合に応用できる。
【0050】
第1及び第2基板110、120の少なくともいずれかに金属基板(または表面に金属層を有する基板)を用いる際には、熱処理温度である第2温度T2は、その金属の融点よりも低い温度とすることができる。
【0051】
また、ステップS10における、第1及び第2基板110、120の密着の際に、第1及び第2基板110、120を加圧して密着させることができる。特に、第1及び第2基板110、120の少なくともいずれかに金属基板(または表面に金属層を有する基板)を用いる際には、基板どうしを密着させるステップS10において、第1及び第2基板110、120を加圧して密着させると接合力が向上して効果的である。ただし、必ずしも加圧しなくても良い。
【0052】
また、ステップS20における、第1及び第2基板110、120の熱処理中に、第1及び第2基板110、120を加圧しながら熱処理しても良い。ただし、必ずしも加圧しなくても良い。
【0053】
さらに、図1に表した具体例では、ステップS10の後に昇温してステップS20を実施したが、本発明はこれに限らず、ステップS10の後に、一旦降温して、その後ステップS20を実施しても良い。例えば、ステップS10の第1温度T1から、一旦室温まで降温し、その後ステップS20の第2温度T2まで昇温しても良い。
【0054】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る別の半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
図7に表したように、本実施形態に係る別の半導体装置の製造方法においても、まず、室温T0よりも高い第1温度T1で、第1基板110の第1主面111と、前記第1基板110とは熱膨張係数が異なる第2基板120の第2主面121とを密着させる(ステップS10)。そして、前記第1主面111と前記第2主面121とを密着させたまま、前記第1温度T1よりも高い第2温度T2で、前記第1基板110及び前記第2基板120を熱処理する(ステップS20)。ただし、図1のように、基板の温度が直線的に変化し、また、例えばステップS20の熱処理の温度が第2温度T2で一定ではなく、本具体例の場合には、温度の変化は曲線的であり、また、熱処理を行う第2ステップS20においても、温度は連続的に変化している。
【0055】
このように第1及び第2基板110、120の温度の変化が曲線的であり、また熱処理中の温度が変化しても良い。
【0056】
なお、本発明の実施形態において、熱処理を行うステップS20は、少なくとも第2温度T2を含む温度で実施されれば良い。
【0057】
また、本具体例は、基板どうしを接合するステップS10が、基板の温度が連続的に変化しながら、第1温度T1で実施される例である。すなわち、ステップS10は、第1温度T1を含む特定の温度幅の間で、実施されても良い。
【0058】
(実施例)
以下、本実施形態の実施例に係る半導体装置の製造方法について説明する。
本実施例の半導体装置の製造方法では、GaAsからなる第1基板110と、GaPからなる第2基板120と、を接合する。両基板の直径は100mmであり、厚さは400μmである。
【0059】
まず、表面を鏡面化した第1及び第2基板110、120を、第1温度T1である250℃に加熱した。そして、250℃において、第1及び第2基板110、120の主面(表面)を互いに対向させて密着させた。その後、第1及び第2基板110、120を密着させたまま、第2温度T2である500℃度に加熱した。そして、第2温度T2において一定時間の熱処理を行った。その後、両基板を降温し、室温に戻した。
【0060】
このような方法によって両基板が接合され、室温に戻った後の両基板においては、基板に破壊やスリップは起こらなかった。
【0061】
すなわち、本実施例に係る半導体装置の製造方法においては、第1及び第2基板110、120を密着させる時の温度は第1温度T1であり、熱処理の温度は第2温度T2であるので、密着時と熱処理時の温度差は、250℃と比較的温度差が小さい。このため、熱処理中に基板に破壊やスリップが発生しない。
【0062】
また、その後、熱処理温度(第2温度T2)の500℃から降温する場合には、まず、第1温度T1の250℃まで降温し、第1及び第2基板110、120は、密着時の状態に戻る。そして、さらに降温され、室温である25℃まで戻るが、この時には、密着時の250℃から25℃まで降温されるので、225℃の温度差が生じるが、この温度差も、比較的小さいため、基板の破壊やスリップが発生しなかった。
【0063】
両基板の接合界面の強度を確認するために、接合された両基板を、アンモニア及び過酸化水素水の混合液に侵漬して、第1基板110(GaAs基板)を選択的にエッチングしたところ、接合界面から両基板が剥がれることなく、第1基板110であるGaAs基板がなくなるまでエッチングを行うことができ、接合反応が充分に進んでいることが分かった。
【0064】
なお、密着時の温度(250℃)と室温(25℃)との温度差により、室温において、第2基板120(GaP基板)側が凸になる反りが発生したが、実用上問題となるものではなかった。
【0065】
このように、本実施例に係る半導体装置の製造方法においては、高温での基板どうしの密着と、その後のさらに高温の加熱処理によって、基板の破壊やスリップの発生がなく、かつ、エッチングでの剥がれもなく、充分な接合反応の接合が得られた。
【0066】
(第3の比較例)
第3の比較例の半導体装置の製造方法においても、GaAsからなる第1基板110と、GaPからなる第2基板120と、を接合する。実施例と同様に、両基板の直径は100mmであり、厚さは400μmである。
【0067】
まず、室温において、表面を鏡面化した第1及び第2基板110、120の表面を互いに対向させて密着させた。そして、第1及び第2基板110、120を密着させた状態で、300℃(すなわち、図5に例示した熱処理温度T8)まで昇温し、300℃での熱処理を行い、室温まで戻した。
【0068】
このように300℃の熱処理では、両基板において破壊や反りも発生しなかった。
そして、接合された両基板を、アンモニア及び過酸化水素水の混合液に侵漬して、第1基板110(GaAs基板)を選択的にエッチングしたところ、接合界面から両基板が剥がれてしまい、接合反応が不十分であった。
【0069】
(第4の比較例)
第4の比較例の半導体装置の製造方法においても、GaAsからなる第1基板110と、GaPからなる第2基板120と、を接合する。この場合も、両基板の直径は100mmであり、厚さは400μmである。
まず、室温において、表面を鏡面化した第1及び第2基板110、120の表面を互いに対向させて密着させた。そして、第1及び第2基板110、120を密着させた状態で、500℃(図6に例示した熱処理温度T9)まで昇温し、500℃での熱処理を行い、室温まで戻した。
【0070】
このような500℃の熱処理では、接合後の第2基板120(GaP基板)に、スリップが発生していた。
【0071】
そして、接合された両基板を、アンモニア及び過酸化水素水の混合液に侵漬して、第1基板110(GaAs基板)を選択的にエッチングしたところ、接合界面から両基板が剥がれることなく、第1基板110であるGaAs基板がなくなるまでエッチングを行うことができ、接合反応が充分に進んでいることが分かった。
【0072】
このように、第1及び第2の比較例では、両基板を室温で密着させる。この時、第1の比較例のように熱処理温度を300℃とすると、密着時温度と室温との差は275℃であり、この温度差には耐えられ、スリップなどは発生しないが、第2の比較例のように熱処理温度を500℃とすると、密着時温度と室温との差が475℃となり、この温度差には耐えられず、スリップが発生する。一方、第2の比較例のように、室温から475℃高い500℃での熱処理では充分な接合反応の接合が得られるが、第1の比較例のように、室温から275℃高い300℃の熱処理では、接合が不十分であった。
【0073】
これに対して、本実施例に係る半導体装置の製造方法においては、熱膨張係数が異なる異種の基板を接合一体化する際、通常基板を使用する温度、すなわち室温より高い第1温度T1において2枚の基板を密着させ、その後、接合界面を固定したまま、第1温度T1よりもより高い第2温度T2で熱処理を行うことで、基板を破壊せずに強固な接合を得ることができる。
【0074】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図8に表したように、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、第1の実施形態で説明したステップS10とステップS20の後に、前記第1基板110及び前記第2基板120の少なくともいずれかの厚みを減らす(ステップS30)。
【0075】
例えば、図4(c)に表したように、N型GaAs基板12とその上に形成されたエピタキシャル膜と、が第1基板110であり、GaP基板11を第2基板120とする。その時、ステップS10とステップS20によって、エピタキシャルウェーハ(N型GaAs基板12とその上に形成されたエピタキシャル膜)とGaP基板11とが接合された後、図4(d)に表したように、上記のエピタキシャルウェーハのGaAs基板12及びバッファ層18を除去する。すなわち、第1基板110の厚みを、GaAs基板12及びバッファ層18の厚み分だけ、減らす。
このようにして、LED50を形成する。
【0076】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、ステップS10及びステップS20によって、第1及び第2基板110、120が安定して接合されているので、その後、第1及び第2基板110、120の少なくともいずれかの厚みを減らす各種の工程を実施しても悪影響を実質的に生じないようにすることができ、安定して製造することができる。
【0077】
このように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によって、基板の厚さを調整することで、基板の破壊の可能性を低減し、各種の製造マージンを拡大でき、また半導体装置の性能の向上に繋がる。
【0078】
このように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合し、安定した製造を可能とする半導体装置の製造方法が提供できる。
【0079】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
すなわち、同図は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法における基板の温度と時間との関係を例示しており、横軸が時間tであり、縦軸が基板の温度Tを表している。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図9及び図10に表したように、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、第1の実施形態で説明したステップS10とステップS20の後に、さらに、前記第2温度T2よりも高い第3温度T3でさらに熱処理を行う(ステップS40)。
【0080】
これにより、例えば半導体装置の結晶構造が均一化し、例えば動作電圧の均一化や消費電力の低下、信頼性の向上など、各種の電気的特性が向上する。
第3温度T3は例えば600℃〜800℃とすることができる。
【0081】
なお、図9に表した具体例では、ステップS20とステップS40との間に、例えば一旦室温T0まで降温し、この室温において、第2の実施形態で説明したステップS30を実施することができる。
【0082】
すなわち、第2温度T2による前記熱処理の後、前記第1基板110及び第2基板120の少なくともいずれかの厚みを減らし(ステップS30)、その後、前記第2温度T2よりも高い第3温度T3で、前記第1基板110及び前記第2基板120を熱処理する(ステップS40)ことができる。
【0083】
これにより、例えば、第1基板110の一部であるGaAs基板12や、バッファ層18を除去した後に、ステップS40の第3温度T3での熱処理を行うことで、半導体装置の結晶構造が均一化し、例えば動作電圧の均一化や消費電力の低下、信頼性の向上など、各種の電気的特性が向上する。
【0084】
ただし、本発明の第3の実施形態において、ステップS20とステップS40との間で、必ずしも、例えば、室温T0まで降温する必要はなく、室温T0よりも高い温度に降温しても良く、さらには、降温せずに、第2温度T2から第3温度T3まで昇温しても良い。
【0085】
例えば、ステップS20とステップS40との間に、ステップS30を実施する場合において、ステップS30の温度は任意である。
また、ステップS20とステップS40との間に、ステップS30を実施しなくても良い。
【0086】
このように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合し、電気特性が向上した半導体装置の製造方法が提供できる。
【0087】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置の製造方法を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0088】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0089】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の構成を例示する模式的断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を含む製造方法を例示する工程順模式的断面図である。
【図5】第1の比較例の半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
【図6】第2の比較例の半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る別の半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示する模式図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【符号の説明】
【0091】
10 積層体
11 GaP基板
12 GaAs基板
14 N型クラッド層
15 活性層
16 P型クラッド層
17 表面カバー層
18 バッファ層
19a 第1電極
19b 第2電極
50 半導体装置(LED)
110 第1基板
111 第1主面
120 第2基板
121 第2主面
T1 第1温度
T2 第2温度
T3 第3温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温よりも高い第1温度で、第1基板の第1主面と、前記第1基板とは熱膨張係数が異なる第2基板の第2主面と、を密着させ、
前記第1主面と前記第2主面とを密着させたまま、前記第1温度よりも高い第2温度まで加熱して、前記第1基板と前記第2基板とを接合することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1温度は、前記第1基板と前記第2基板とが実質的に接合する温度よりも低く、
前記第2温度は、前記第1基板と前記第2基板とが実質的に接合する温度よりも高いことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1温度(℃)は、前記第2温度T2(℃)の30%〜70%であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記接合した後に、前記第1基板及び前記第2基板の少なくともいずれかの厚みを減らすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記接合した後に、前記第2温度よりも高い第3温度で、前記第1基板及び前記第2基板を熱処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−45156(P2010−45156A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207781(P2008−207781)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】