半導体装置の製造方法
【課題】パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、処理条件を適正化して後続のウェーハの処理を行う高生産性の半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1基板11の第1主面11a上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第1パターンを有する第1層21を形成し、前記第1層が形成された前記第1主面に対向して設けられた探針30と、前記第1基板と、の間の相対位置を前記第1主面に平行な平面内で変化させ、前記探針に発生する電気信号を検出し、前記電気信号に基づいて設定された条件を用いて、第2基板の第2主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第2パターンを有する第2層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【解決手段】第1基板11の第1主面11a上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第1パターンを有する第1層21を形成し、前記第1層が形成された前記第1主面に対向して設けられた探針30と、前記第1基板と、の間の相対位置を前記第1主面に平行な平面内で変化させ、前記探針に発生する電気信号を検出し、前記電気信号に基づいて設定された条件を用いて、第2基板の第2主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第2パターンを有する第2層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置における微細化、積層化及び新材料の導入などに伴い、金属や有機物などによるウェーハの汚染が歩留まりの低下に与える影響が大きくなる。
【0003】
このような汚染を確実に除去するために、例えば過剰な処理条件を用いると、装置の処理能力の低下や間接材料コストの上昇など、生産性が低下し、また、サイドエッチングなどの副作用が発生する場合がある。
【0004】
特許文献1には、処理装置の雰囲気中の汚染物質の濃度を赤外線によって測定し、汚染除去手段にフィードバックさせる半導体製造装置が開示されているが、実際のウェーハ上の汚染を測定する方法ではないので、測定結果とウェーハ上の汚染の程度とは必ずしも一致しない。
【0005】
ウェーハ上の有機物汚染については、TOF−SIMS(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometer)などの各種の分析手法が知られており、また、ウェーハ上の金属汚染については、VPD/ICP−MS(Vapor Phase Decomposition / Inductively Coupled Mass Spectrometry)などの各種の分析手法が知られているが、これらの従来の手法においては、パターン付きウェーハの全面を非破壊かつ短時間で測定することはできず、実用的には課題がある。
【0006】
非特許文献1には、ウェーハの表面電位の分布を測定することで、ウェーハ上に付着した金属や有機物等の汚染を検出する方法が開示されているが、パターン付きウェーハに関しての汚染の検出と、ウェーハのパターン加工プロセスへのフィードバックに関しては開示されておらず、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−168776号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C.Yang, J.Hawthorne, B.Steele, R.Bryant, D.Sowell, D.Maloney and K.Ip, "Inspecting wafers using a potential difference imaging sensor method", Micro magazine, 2005年, Vol.25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、処理条件を適正化して後続のウェーハの処理を行う高生産性の半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、第1基板の第1主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第1パターンを有する第1層を形成し、前記第1層が形成された前記第1主面に対向して設けられた探針と、前記第1基板と、の間の相対位置を前記第1主面に平行な平面内で変化させ、前記探針に発生する電気信号を検出し、前記電気信号に基づいて設定された条件を用いて、第2基板の第2主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第2パターンを有する第2層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、処理条件を適正化して後続のウェーハの処理を行う高生産性の半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における汚染を例示する模式図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における電気信号を例示する模式図である。
【図5】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における基準値を例示する模式図である。
【図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を例示するフローチャート図である。
【図7】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を例示するフローチャート図である。
【図8】第1の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図9】第2の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図10】第3の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図11】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法が適用される基板を例示する模式図である。
【図12】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法における基準値を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図2は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式図である。 すなわち、図2(a)は斜視図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’線断面図である。
図3は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における汚染を例示する模式図である。
図4は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における電気信号を例示する模式図である。
【0015】
図1及び図2に表したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、第1基板11の第1主面11a上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第1パターンを有する第1層21を形成する(ステップS110)。
【0016】
そして、第1層21が形成された第1主面11aに対向して設けられた探針30と、第1基板11と、の間の相対位置を第1主面11aに平行な平面内で変化させ、探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS120)。
【0017】
そして、検出された電気信号に基づいて設定された条件を用いて、第2基板の第2主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第2パターンを有する第2層を形成する(ステップS130)。すなわち、検出された電気信号に基づいて第2基板の形成のための条件を設定する(ステップS131)。そして、設定された条件を用いて、第2パターンを有する第2層を第2基板の第2主面上に形成する(ステップS132)。
【0018】
本実施形態に係る製造方法が適用される半導体装置は、各種のメモリや、各種のロジック回路装置や、各種の増幅回路装置や受発光装置や、さらにはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などであり、その形態は任意である。
【0019】
第1基板11は、半導体装置の任意の製造工程におけるパターン層(第1層21)が形成される基板である。同様に、第2基板は、半導体装置の任意の製造工程におけるパターン層(第2層)が形成される基板である。
【0020】
第1基板11は、例えば、半導体装置の製造における任意のロットに属する例えば半導体のウェーハである。
【0021】
第2基板は、半導体装置の製造における任意のロットに属する例えば半導体のウェーハである。ただし、第2基板への第2層の形成は、第1基板11に第1層21が形成される時よりも後に実施される。すなわち、本実施形態に係る製造方法が適用される工程において、第2基板は、第1基板11が属するロットよりも後に処理されるロットに属するか、または、第1基板が属するロットと同じロットに属し、第1基板11よりも後に処理される基板である。
【0022】
以下では、一例として、第2基板は、第1基板11とは異なるロットの基板であり、第2基板が、第1基板11よりも後に処理されるロットの基板である場合として説明する。なお、この場合に、第1基板11が属するロットと、第2基板が属するロットと、は必ずしも連続していなくても良い。なお、同様に、第2基板が、第1基板11と同じロットに属する基板である場合には、第2基板は、第1基板11よりも後に処理される基板であるが、第1基板11の処理の順番と第2基板の処理の順番とは、必ずしも連続していなくても良い。
【0023】
第1層21及び第2層は、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含む。すなわち、第1層21及び第2層は、それぞれ第1パターン及び第2パターンで形成された導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含む。第1パターン及び第2パターンは、半導体装置に含まれる各種の配線や、各種の層間絶縁膜や、トランジスタや発光層等の半導体層を含む各種の素子や、各種の可動部などのパターンである。第1パターンと第2パターンとは、同じパターン形状を有することができる。
【0024】
すなわち、本実施形態に係る製造方法においては、ステップS110で、第1基板11の主面11aに所定のパターン層を形成した後に、ステップS120で、電気信号を検出することにより、その基板の主面11aに存在する金属や有機物などの汚染を検出する。そして、その結果に基づいて、ステップS130では、後続の第2基板の加工条件を設定して、第2基板の第2主面にパターン層を形成する。
【0025】
ここで、第1基板11(及び第2基板)における汚染は、各種の種類の汚染を含む。
すなわち、図3(a)に表したように、第1基板11の第1層21の側壁及び第1層21どうしの間の第1基板11の表面に、例えば、各種の金属や金属化合物や、各種の有機物などの残渣61が残る場合がある。この残渣61は、例えば、第1層21の加工の際に発生するもので、残渣61は、例えば、第1層21に含まれる材料を含む。
【0026】
また、図3(b)に表したように、第1基板11の第1層21の側壁及び第1層21どうしの間の第1基板11の表面に、例えば、各種の金属や金属化合物や、各種の有機物などの付着物62が付着している場合がある。この付着物62は、例えば、第1層21の加工の際に用いられる各種の材料が付着したもので、第1基板11の各種の処理の際に用いられる各種の材料に含まれる元素を含む。
【0027】
このような残渣61及び付着物62の厚さ、面積及び形状などは多様であり、例えば、単原子層や単分子層のこともある。また、第1層21の形状によっては、残渣61及び付着物62に含まれる物質が、ガスの状態で、第1層21のパターンどうしの間に存在している場合もあり、このようなガスの状態の物質も残渣61及び付着物62に含まれる。
【0028】
また、図3(c)に表したように、第1層21の上面に、上記の残渣61や付着物62が存在している場合もある。
【0029】
また、例えば第1基板11及び第1層21などが、例えば互いに異なる材料の積層膜を含む場合などにおいて、積層膜のいずれかの膜に含まれる材料の残渣が、その膜とは異なる膜に付着する場合もあり、これも、付着物に含まれる。
【0030】
また、図3(d)に表したように、上記の残渣61や付着物62に含まれる物質が、第1基板11及び第1層21の少なくともいずれかの表面に侵入し、汚染領域63となる場合もある。
【0031】
このように、本実施形態に係る製造方法において対象とされる汚染には、各種の形態がある。すなわち、汚染物は、上記の残渣61、付着物62及び汚染領域63などを含み、汚染の検出とは、上記の汚染物の有無、並びに、汚染物の量、濃度及び分布の少なくともいずれかに関する検出を含む。なお、この時の検出は、絶対値の検出の他、相対的な検出を含み、後述する各種の基準値と比較され得る値の導出を含む。
【0032】
以下では、ステップS120における汚染の検出について説明する。
図2(a)及び(b)に例示したように、第1基板11の主面11aには、ステップS110で形成された第1パターンの第1層21が設けられている。そして、探針30が、第1主面11aに対向して設置されている。なお、第1基板11は、例えばステージ5の上に載置される。
そして、探針30と第1基板11との間の相対位置が、第1主面11aに平行な平面内で変化させられる。
【0033】
ここで、主面11aに垂直な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とし、Z軸方向とX軸方向とに垂直な方向をY軸方向とする。
【0034】
すなわち、探針30と第1基板11との間の相対位置は、X−Y平面内で変化させられる。この時、探針30の位置が変化しても良く、第1基板11の位置が変化しても良く、探針30及び第1基板11の両方の位置が変化しても良い。また、これらの間の相対的な位置の変化は、例えばX軸方向に沿って変化しても良く、また、Y軸方向に沿って変化しても良く、この場合は、探針30と第1基板11との相対位置は、1次元で変化させられる。
【0035】
また、これらの間の相対的な位置の変化は、例えばX軸方向及びY軸方向の両方において変化させられても良く、この場合は、探針30と第1基板11との相対位置は、2次元で変化させられる。
【0036】
また、2次元の変化においては、例えば第1基板11がZ軸を軸にして回転し、探針30が例えばX軸に沿って移動し、探針30と第1基板11との間の相対位置がX−Y平面内で渦巻き状に変化させられても良い。このように、探針30と第1基板11との間の相対位置の変化のさせ方は任意である。
【0037】
以下では、説明を簡単にするために、まず、第1基板11の位置が固定されており、探針30が、X軸方向に沿って移動する場合として説明する。
【0038】
なお、探針30と、第1基板11の主面11aと、の間には間隙30gが設けられている。この間隙30gにより、探針30は、第1基板11と接触せず、探針30によって第1基板11の主面11aに傷が発生することがない。すなわち、第1基板11の汚染が、以下のように、非接触で、非破壊で検出される。
【0039】
ステップS120では、上記のように、探針30と第1基板11との間の相対位置をX軸に沿って(X−Y平面内で)で変化させ、探針30に発生する電気信号を検出する。
【0040】
すなわち、探針30には、探針30に発生する電気信号を検出する信号検出部40が接続される。
探針30に発生する電気信号は、例えば探針30に流れる電流である。すなわち、信号検出部40は、例えば、探針30と第1基板11との間に流れる電流を検出する。このとき、例えば、第1基板11はアース電位(基準電位)に設定され、信号検出部40は、探針30とアース電位の端子との間に流れる電流を検出しても良い。
【0041】
本実施形態に係る製造方法においては、探針30と第1基板11とを相対的に移動させることにより、第1基板11の主面11aに存在する物質の表面電位と、探針30の表面電位と、の差、及び、第1基板11の主面11aと、探針30と、の間の間隙30gと、に基づく電流が、探針30に発生する。
【0042】
すなわち、主面11aに存在する各種の金属や各種の有機物など対象物のそれぞれに固有の仕事関数と、探針30の先端部分に用いられる物質に固有の仕事関数と、の差に基づいて、探針30には電流が流れる。この仕事関数の差に基づく電位差が表面電位差であり、探針30には、表面電位差に基づく表面電位差電流が流れる。
表面電位差電流は、探針30と対象物との仕事関数の差に基づくため、主面11aに存在する対象物が金属などや有機物などである場合を含めて、探針30と対象物とで仕事関数の差に基づく表面電位差電流が発生し、この表面電位差電流は検出可能である。
【0043】
また、第1基板11の主面11aと、探針30と、の間にはキャパシタンスが形成されるが、第1基板11の主面11aと、探針30と、の間の間隙30gが変わると、このキャパシタンスの電気容量が変化するので、これによっても探針30に電流が流れる。このように、探針30には、電気容量の変化に基づく容量変化電流が流れる。
【0044】
このように、探針30には、表面電位差電流及び容量変化電流の合計の電流が流れる。 なお、この電流の大きさは、探針30と基板11との間の相対位置の時間変化(すなわち、例えば探針30の基板11に対する移動速度)にも依存する。
【0045】
探針30に流れるこのような電流を、信号検出部40は検出する。この時、この電流を直接検出しても良いし、電流を電圧に変換した電気信号を検出しても良い。すなわち、信号検出部40は、探針30に流れる電流に基づく電気信号を検出する。
【0046】
なお、探針30は単数でも良く、複数でも良い。複数の探針30を用いると、第1基板11の主面11aの全面に渡っての電気信号の検出が短時間で実行できる。この場合、複数の探針30で得られた電気信号は、適正にデータ処理され、第1基板11の主面11aの全面に渡っての電気信号のデータに変換される。
以下では、説明を簡単にするために、探針30が1つの場合として説明する。
【0047】
図4(a)は、パターン層(第1層21)を有し、表面に汚染などがない第1基板11を例示しており、図4(b)は、このような第1基板11において、探針30に発生する電気信号S1を例示しており、図4(c)は、参照信号SRを例示しており、図4(d)は、上記の電気信号S1と参照信号SRとの差分の相対信号S2を例示している。図4(b)〜(d)の横軸は、X軸方向における位置x1を表している。
【0048】
図4(b)に表したように、探針30に発生する電気信号S1は、位置x1の変化と供に変動する。この変動は、第1基板11の主面11aの第1層21の形状と位置(第1パターンの形状と位置)に連動している。このように、パターンを有する第1層21の形状や用いられる材料によって、表面電位電流及び容量変化電流の合計の電流(電気信号S1)が探針30に流れる。
【0049】
すなわち、図4(a)に例示したように、表面に汚染がない正常な第1基板11の場合であっても、図4(b)に例示したように、探針30には、第1パターンの第1層21の形状及びその材料に対応した電気信号S1が発生する。
【0050】
この時、図4(c)に例示した参照信号SRが用意される。
参照信号SRには、例えば、表面に汚染がないことが確認された基板において探針30で得られる電気信号を用いることができる。また、表面に汚染がないことが確認された複数の基板における電気信号を重畳して、ノイズ成分を除去した電気信号を用いることもできる。また、過去に処理された基板において得られた電気信号から汚染に基づく信号成分を除去した信号を用いることもできる。また、例えば、第1層21の形状及び用いられる材料等に関する設計データに基づいてシミュレーションによって求められた信号などを用いてもよい。
【0051】
図4(d)に表したように、このような参照信号SRと、図4(b)に例示した検出された電気信号S1と、の差分である相対信号S2を求めると、相対信号S2は、基準レベルSS0の一定の値であり、変化しない信号となる。
【0052】
なお、相対信号S2の導出に関しては、例えば、電気信号S1と参照信号SRとの差分を差動増幅器などの電気回路によって導出してもよく、また、例えば、電気信号S1に基づくデジタルデータと、参照信号SRに基づくデジタルデータと、の差分を、コンピュータによって導出しても良い。このように、参照信号SRは、アナログ電気信号として用意されても良く、デジタルデータとして用意されても良い。
【0053】
このように、実際に得られた電気信号S1と、予め用意され参照信号SRと、を比較することで、その時に測定した第1基板11には汚染がないことが分かる。
【0054】
図4(e)は、パターン層(第1層21c)を有し、表面に汚染がある別の第1基板11cを例示しており、図4(f)は、このような第1基板11cにおいて、探針30に発生する電気信号S1を例示しており、図4(g)は、上記の電気信号S1と参照信号SRとの差分の相対信号S2を例示している。図4(f)及び(g)の横軸は、X軸方向における位置x1を表している。
【0055】
図4(e)に表したように、別の第1基板11cにおいては、例えば、各種の金属残渣や有機物残渣や各種の付着物などの第1汚染物51、第2汚染物52、及び第3汚染物53が存在している。このような、第1〜第3汚染物51、52及び53などが、第1基板11cの汚染である。このような汚染物は、第1基板11cへの第1層21cの形成における、または、それよりも前の工程における、例えば、レジスト残渣やエッチング残りや各種の付着物や汚染領域などに起因したものであり、半導体装置の性能や歩留まりに悪影響を与える。
【0056】
図4(f)に表したように、このような第1基板11cにおいては、電気信号S1は、第1層21cの形状と用いられる材料に基づく信号の他に、上記の第1〜第3汚染物51、52及び53に基づく信号を含む。
【0057】
そして、図4(g)に表したように、検出された電気信号S1と、上記の参照信号SRと、の差分である相対信号S2を求めると、上記の第1〜第3汚染物51、52及び53にそれぞれ基づく第1〜第3汚染起因信号51s、52s及び53sが検出される。
【0058】
本具体例では、第1汚染物51に起因した第1汚染起因信号51s、及び、第2汚染物52に起因した第2汚染起因信号52sは、基準レベルSS0よりも高い値の信号である。そして、本具体例では、第2汚染起因信号52sは、第1汚染起因信号51sよりも高い値である。一方、この場合の第3汚染物53に起因した第3汚染起因信号53sは、基準レベルSS0よりも低い値の信号である。汚染起因信号は、その汚染物の仕事関数と、探針30の先端部分に用いられる材料の仕事関数と、の差によって、その値と極性が異なる。このように、汚染起因信号は、基準レベルSS0に対して正極性及び負極性のいずれかの信号を含む。なお、この基準レベルSS0は、例えば、探針30の先端に用いられる材料が第1基板11に設けられており、その場合に得られる電気信号の値に相当するものとすることができる。
【0059】
このように、この製造方法においては、検出された電気信号S1に処理が加えられた相対信号S2を用いることで、汚染が容易に検出できる。
【0060】
このように、本実施形態に係る製造方法においては、探針30に発生する電気信号が検出され、その電気信号に基づいて汚染(汚染起因信号)が検出される。すなわち、電気信号S1は、第1パターン以外のパターンで変化し、第1基板11の第1主面11aに存在する有機物及び無機物の少なくともいずれかを含む汚染物に起因した汚染起因信号(例えば上記の第1〜第3汚染起因信号51s、52s及び53s)を含む。なお、この無機物は、各種の金属や、各種の金属元素を含む各種の化合物を含む。
【0061】
なお、上記においては、説明を簡単にするために、参照信号SRを用いる場合について説明したが、本発明はこれには限らない。検出された電気信号S1のデータに処理を施すことによって、汚染起因信号の成分のみを抽出することも可能である。
例えば、検出された電気信号S1のデータから、第1基板11の第1パターンの周期などの位置関連値を用いて、その位置関連値との連動の程度が低い値を汚染起因信号として抽出することができる。すなわち、第1層21は、第1基板11に形成される複数の半導体チップなどに対応した繰り返しパターンを有している場合があり、この場合において、検出された電気信号S1のうち、繰り返しパターンの周期に連動しない信号成分を抽出し、これを汚染起因信号とすることもできる。
【0062】
このように、本製造方法では、検出された電気信号に基づいて汚染(汚染起因信号)が検出されるが、探針30に発生する電気信号に所定の処理が施された信号も含めて、電気信号と見なすことができ、例えば、探針30に発生するアナログの電気信号をデジタル信号に変換した信号、すなわち、デジタルデータも、検出された電気信号に含まれる。
【0063】
そして、「探針30に発生する電気信号に基づく」とは、例えば、「検出された電気信号S1に各種のデータ処理を施したものに基づく」ことを含み、例えば、「検出された電気信号S1と、上記の参照信号SRと、に基づいて求められた相対信号S2に基づく」ことを含む。
【0064】
そして、得られた電気信号(例えば電気信号S1及び相対信号S2など)に含まれる汚染起因信号に関して、各種の基準値を設定し、汚染を判定することができる。すなわち、例えば、汚染起因信号は種々の振幅を有しているので、適切な基準値に基づいて、汚染の有無を判定し、その結果をこの後の処理(第2基板の加工や第1基板11の汚染物除去処理)に反映させる。以下では、説明を簡単にするために、相対信号S2に含まれる汚染起因信号に関して基準値が設けられる場合について説明する。
【0065】
図5は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における基準値を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、最大基準値VH1及び最小基準値VL1を例示している。同図(b)は、平均値が大きい場合の電気信号を例示しており、同図(c)は、電気信号の平均に関する基準値(平均最大基準値VAH1及び平均最小基準値VAL1)を例示している。同図(d)は、電気信号のX軸方向における変化率に関する基準値(微分最大基準値VDH1及び微分最小基準値VDL1)を例示している。
【0066】
例えば、図5(a)に例示したように、相対信号S2に関して、最大値に関する最大基準値VH1と、最小値に関する最小基準値VL1と、を設定することができる。すなわち、既に説明したように、相対信号S2のうち、最大基準値VH1を超える成分と、最小基準値VL1を下回る成分と、が汚染と判定される。
【0067】
本具体例では、第2汚染起因信号52sは最大基準値VH1を超え、また、第3汚染起因信号53sは、最小基準値VL1を下回っている。この場合には、第2汚染起因信号52sと第3汚染起因信号53sに相当する位置x1に、検出されるべき汚染が発生していると判断される。
【0068】
一方、本具体例では、第1汚染起因信号51sは、最大基準値VH1と最小基準値VL1との間の値であり、この場合、汚染起因信号51sに相当する位置x1には、汚染に似た異常が検出されるが、その異常は製造している半導体装置の仕様上許容できる程度の異常であると判定される。
【0069】
すなわち、このような例においては、第2汚染起因信号52s及び第3汚染起因信号53sに相当する位置x1に、汚染があり、汚染起因信号51sに相当する位置x1には汚染がないとされる。このように、最大基準値VH1及び最小基準値VL1を設定することにより、得られた電気信号に含まれる汚染起因信号から、検出されるべき汚染を効率的に抽出することができる。
【0070】
図5(b)は、平均値が大きい(例えば基準レベルSS0からの差が大きい)場合の電気信号を例示している。すなわち、図5(b)に例示したように、別の第1基板11dにおいては、電気信号(この例では、相対信号S2)は、最大基準値VH1と最小基準値VL1との間の信号であるが、基準レベルSS0から外れている領域の位置x1の長さが長い。すなわち、本具体例では、ブロードな形状の第4汚染起因信号54sが検出されている。
【0071】
このような場合には、例えば、第1基板11dの主面11aには、汚染の程度が弱い(例えば汚染物の濃度が低い)ものの、広い面積で汚染物が付着しており、この場合も、半導体装置の製造上問題になることがある。すなわち、上記の最大基準値VH1及び最小基準値VL1によって定められた電気信号(この場合は相対信号S2)に関する許容範囲を満足していても、問題となる場合がある。このような場合には、電気信号(この場合は相対信号S2)の平均値に関する平均基準値を採用することができる。
【0072】
例えば、図5(c)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)を、一定の範囲の位置x1に関して平均した平均信号S3を求め、その平均信号S3に関しての大きい側の平均最大基準値VAH1、及び、小さい側の平均最小基準値VAL1、を採用する。そして、これらの基準値と、平均信号S3と、の比較に基づいて、検出すべき汚染を抽出する。なお、電気信号の平均に関する位置x1の範囲は、本製造方法が適用される半導体装置の仕様やウェーハの大きさなどによって適切に定められる。
【0073】
なお、上記においては、電気信号(この場合は相対信号S2)を、一定の範囲の位置x1に関して平均した平均信号S3を求める場合に関して説明したが、この平均信号S3は、電気信号(この場合は相対信号S2)を、一定の範囲の位置x1に関して積分した値と見なすこともできる。
【0074】
また、電気信号(例えば相対信号S2)のX軸方向の変化率に関する基準値を採用しても良い。
例えば、図5(a)に例示した電気信号(この場合は相対信号S2)のX軸方向に沿った変化率(電気信号の位置x1に関する微分値)を求めると、図5(d)に示す微分信号S4が得られる。この微分信号S4においては、第1〜第3汚染起因信号51s、52s及び53sにそれぞれ対応して、第1〜第3微分汚染起因信号51d、52d及び53dが求められる。
【0075】
すなわち、例えば、第1基板11に形成されている第1層21の第1パターンによっては、汚染に起因した信号と、例えば第1パターンに起因した電流による信号と、の分離が困難な場合があり、このような場合において、上記の微分信号S4を用いることで両者の分離が容易になり、汚染の検出がより容易になる。
【0076】
この時、図5(d)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)のX軸方向の変化率(微分信号S4)に関する基準値である微分最大基準値VDH1及び微分最小基準値VDL1を設定することができる。そして、これらの基準値と、微分信号S4と、の比較に基づいて、検出すべき汚染を抽出する。すなわち、微分信号S4が微分最大基準値VDH1を超える、または、微分最小基準値VDL1を下回るときに、その分部に汚染があると判定される。
【0077】
なお、上記の各種の基準値は、例えば、管理すべき濃度で予め汚染させた基準ウェーハにおける電気信号の検出結果に基づいて設定されることもでき、また、蓄積された過去のデータに基づいて適切に設定されることもでき、その設定の方法は任意である。
【0078】
また、上記の基準値(第1基準値)は、第1基板11の第1パターンに含まれる第1領域に対して定められれば良い。すなわち、例えば、第1パターンに含まれる特定の領域に対して、基準値を定めても良く、また、第1パターンに含まれる領域にかかわらず、第1基板11の全面にわたって同じ値の基準を定めても良い。また、後述するように、第1パターンに含まれる異なる領域ごとに異なる基準値(例えば第1基準値及び第2基準値)を定めても良い。
【0079】
なお、図4及び図5においては、電気信号のX軸に沿った変化について説明したが電気信号のX−Y平面における変化(分布)に関して上記と同様の特性を検出し、そして、上記と同様の基準値を定め、第1基板11の主面11aの汚染の2次元的な分布を検出することができる。
【0080】
すなわち、探針30に生じる電気信号の検出は、電気信号の主面11aに平行な平面内における面内分布の検出を含む。そして、例えば上記の基準値に基づいて、第1基板11の主面11aの汚染の2次元的な分布が検出される。
【0081】
そして、このようにして検出された汚染に基づいて、既に説明したように、ステップS130では、後続の第2基板の加工条件を設定して、第2基板の第2主面にパターン層である第2層を形成する。
【0082】
なお、上記の各種の基準値に基づいた汚染の検出は、ステップS120に含まれるものとしても良く、また、ステップS130に含まれるものとしても良い。
【0083】
すなわち、第2基板の加工条件の設定は、第1基板11に関して検出された電気信号に関する最大値、最小値、平均値(例えば積分値)、及び、平面内における変化率(例えば微分値)、の少なくともいずれかに関する基準値(第1基準値)と、検出された電気信号の値と、の関係に基づいて実施される。
【0084】
例えば、上記の最大基準値VH1、最小基準値VL1、平均最大基準値VAH1、平均最小基準値VAL1、微分最大基準値VDH1及び微分最小基準値VDL1の少なくともいずれかに基づいて、第2基板の加工条件が設定される。
【0085】
例えば、検出された電気信号がこれらの基準値によって定められる範囲の外にある場合は、第2基板への第2層の形成の際の条件を、第1基板11への第1層21の形成の条件とは異ならせることができる。そして、検出された電気信号が、これらの基準値の範囲内のときは、第2基板への第2層の形成の際の条件を、第1基板11への第1層21の形成の条件と同じに設定することができる。なお、第2基板への第2層の形成の条件を、第1基板11への第1層21と異ならせる(変更する)場合も、同じにする(変更しない)場合も、「第2基板の加工条件は、検出された電気信号に基づいて設定される」、とされる。
【0086】
これにより、第1基板11の汚染の検出結果に基づいて、第1基板11よりも後に加工される第2基板の加工条件が適宜変更され、例えば最適条件に調整される。
【0087】
そして、この最適条件を用いて、第2基板の第2パターンを有する第2層が形成される。このため、第2基板においては、汚染の発生が抑制され、また、処理条件が最適化されているため、装置の処理能力の低下や間接材料コストの上昇などの生産性の低下が抑制され、また、サイドエッチングなどの副作用の発生も抑制される。
【0088】
このように、本実施形態に係る製造方法によれば、パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、処理条件を適正化して後続のウェーハの処理を行う高生産性の半導体装置の製造方法が提供できる。
【0089】
なお、第1基板11の汚染の検出結果によって設定される第2基板への第2層の形成のための条件は、第2基板に関する前洗浄、成膜、リソグラフィを含むレジスト形成、エッチング、レジスト剥離、後洗浄、各種の不純物注入、熱処理等の各種の処理条件、搬送及び保管などの条件、用いる原料などの直接材料や間接材料、処理装置の保守や清掃、並びに、使用するフォトマスなどの仕様など、デバイスの設計仕様を含めた製造条件の全てを含む。
【0090】
図6は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を例示するフローチャート図である。
図6に表したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例においては、まず、第1基板11の第1主面11a上に、第1層21となる第1膜を成膜する(ステップS101)。第1膜は、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み、単層膜でも良く、また、これらの膜の積層膜でも良い。
【0091】
そして。第1膜を第1パターンとなるように加工する。例えば、第1膜の上にマスク(レジストマスク及びハート゛マスクの少なくともいずれか)を、例えばフォトリソグラフィによって形成し、これをマスクにして、エッチング(ドライエッチング及びウエットエッチングの少なくともいずれか)を実施して、第1膜を加工して、第1パターンを有する第1層21を形成する(ステップS111)。
【0092】
図1に例示したステップS110は、上記のステップS111を含む。ステップS110は、さらに、上記のステップS101を含んでも良い。
【0093】
そして、図1と同様に、第1基板11に関して、探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS120)。すなわち、第1基板11の主面11aの汚染に起因した信号を検出して、汚染を検出する。
【0094】
そして、例えば上記の各種の基準値を用いて、検出された電気信号に基づいて第2基板の形成のための条件を設定する(ステップS131)。
そして、設定された条件を用いて、第2パターンを有する第2層を第2基板の第2主面上に形成する(ステップS132)。上記のステップS131及びステップS132が、図1に例示したステップS130に含まれる。
【0095】
そして、本具体例では、第1基板11の汚染物の除去がさらに実施される(ステップS140)。すなわち、第1基板11に関して検出された電気信号の値に基づいて、第1基板11の汚染物を除去する。この時、例えば、得られた電気信号(例えば相対信号S2)に関する最大値及び最小値、得られた電気信号の平均値(積分値)に関する最大値及び最小値、得られた電気信号の変化率(微分値)に関する最大値及び最小値、並びに、これらの面内分布に基づいて、第1基板11の汚染物の除去処理の実施の有無の判断、及び、除去処理の条件の設定、並びに、その除去処理の条件を用いた除去処理、が実施される。
【0096】
第1基板11の汚染物の除去処理は、例えば、各種の薬液による処理を含む他、アッシングなどの気相における各種の処理、及び、各種の熱処理なども含む。
【0097】
なお、汚染物の除去には、既に説明した残渣61及び付着物62の除去の他に、既に説明した汚染領域63の除去も含まれ、この場合には、汚染領域63からの汚染原因物質を選択的に除去することの他に、汚染領域63を汚染されていない領域から分離して汚染領域63を除去することも含む。
【0098】
なお、上記の第1基板11の汚染物の除去に関する各種の基準値は、第2基板の加工条件を設定するための基準値(例えば、上記の最大基準値VH1、最小基準値VL1、平均最大基準値VAH1、平均最小基準値VAL1、微分最大基準値VDH1及び微分最小基準値VDL1など)と同じでも良く、また異なっていても良い。
【0099】
このように、第1基板11に関する電気信号の検出(すなわち、汚染の検出)の結果に基づいて、第1基板11の汚染物の除去を実施することで、第1基板11の汚染物を除去でき、半導体装置の製造の歩留まりが向上する。
【0100】
このように、本実施形態に係る製造方法によれば、先行する第1基板11の汚染状態を後続する第2基板の加工条件にフォードバックして、第2基板を加工することで、第2基板の製造における不良を未然に回避でき歩留まりが向上できると供に、汚染が評価された第1基板11の汚染物の除去処理条件を適正に設定してその汚染物を除去することで、第1基板11の不良の発生を抑制できる。
【0101】
なお、上記の第1基板11の汚染物の除去のステップS140は、ステップS120よりも後に行われれば良く、ステップ140は、ステップS131及びステップS132の少なくともいずれかの前に実施されても良い。
【0102】
また、上記の汚染物の除去(ステップS140)の後に、再度第1基板11に関する電気信号の検出(ステップS120)を行い、汚染物の除去が適正に行われたかどうかの判定を行っても良い。
【0103】
また、例えば、汚染物の除去処理によって他の必要な膜が過剰にエッチングされるなどの副作用が起こる場合には、比較的弱い条件で汚染物の除去処理(ステップS140)を実施し、再度第1基板11に関する電気信号の検出(ステップS120)を行い、汚染の検出を行い、これらの工程を繰り返して実施して、副作用が抑制された状態で、汚染物の除去を行うこともできる。
【0104】
第1基板11と第2基板との2枚の基板の組み合わせを対象とする、上記のステップS110〜S130または、ステップS110〜S140は、3枚以上の基板に関しても拡張して適用でき、同様の効果を得ることができる。
【0105】
図7は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を例示するフローチャート図である。
図7に表したように、変形例の製造方法は、本実施形態を任意の複数の基板に適用した場合の製造方法であり、まず、N番目の基板へのN番目の膜の形成を行う(ステップS201)。なお、Nは1以上の整数である。そして、N番目の基板において、N番目の加工を行い、パターンを有するN番目の層を形成する(ステップS211)。
【0106】
そして、N番目の基板での探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS220)。
【0107】
そして、検出された電気信号に基づいて後続の基板のための条件を設定し(ステップS231)、その条件を用いて、後続の基板の層を形成する(ステップS232)。
この時、例えば、後続の基板は、(N+M)番目の基板とされる。ここで、Mは1以上の整数である。すなわち、設定された条件を用いて、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含みパターンを有する(N+M)番目の層を、(N+M)番目の基板の主面上に形成する。
【0108】
そして、さらに、N番目の基板の汚染物の除去を実施する(ステップS240)。なお、この場合も、ステップS240は、ステップS231及びステップS232の少なくともいずれかの前に実施されても良い。また、既に説明したように、ステップS240の後にステップS120を再度実施しても良く、また、ステップS240とステップS120とを繰り返して実施しても良い。
【0109】
そして、Nが所定の数A0を超えるまで、上記の工程が繰り返される。なお、上記のMは一定である必要はなく、Nの値によってMは変化しても良い。すなわち、先行する基板の汚染の検出結果がフィードバックされる後続の基板は、任意の順番の基板とすることができる。
【0110】
なお、ステップS220(電気信号の検出)及びステップS231(条件の設定)に要する時間が短ければ、第1基板11と第2基板とは、互いに近接した順番の基板とすることができ、例えば、第1基板11と第2基板は、同じロットに属することもでき、また、例えば、第2基板の処理の順番は、第1基板11の処理の順番に連続させることもできる。
【0111】
また、第1基板11を用いた汚染の検出が実施される頻度は任意であり、例えば、1つにロットについて1枚の第1基板11を選んでも良く、例えば、複数のロットに対して、1枚の第1基板11を選んでも良く、また、1つのロットにおいて、複数の第1基板11を選んでも良い。
【0112】
例えば、1つのロットのカセットの上部と中部と下部の3枚の基板を、汚染を検出する第1基板11とすることもできる。なお、基板の汚染は、連続または近接して処理された複数の基板において、同じような分布を示すことがあるので、複数の基板における汚染の検出結果(電気信号の検出結果)を合計して重ね合わせることで、汚染の発生をより正確に検出することができる。
【0113】
(第1の実施例)
図8は、第1の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。図8に例示したように、第1の実施形態に係る第1の実施例の半導体装置の製造方法においては、例えば、シリコンなどの半導体のウェーハの表面に、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの手法により、高誘電膜(第1膜)を成膜する(ステップS301)。このウェーハは、例えば先行ロットのウェーハ(第1基板11)である。また、高誘電膜は、例えば、酸化ハフニウムである。
【0114】
そして、高誘電膜の上にシリコン酸化膜を形成する(ステップS302)。そして、リソグラフィにより、所定形状のレジストマスクを形成する(ステップS303)。そして、そのレジストマスクをマスクとして、シリコン酸化膜を、例えばRIE(Reactive Ion Etching)法で加工して、高誘電膜の一部を露出させる(ステップS304)。そして、シリコン酸化膜から露出した高誘電膜をRIE法によりエッチングして、高誘電膜を加工する(ステップS305)。なお、この後、必要に応じて上記のシリコン酸化膜を除去する。
【0115】
このようにして、先行ロットの複数のウェーハの主面に、所定の形状を有する高誘電膜(第1層21)が形成される。
【0116】
次に、そのロット(先行ロット)から、ウェーハを例えば3枚抜き取り、上記の手法によって探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS320)。この時、例えば、ウェーハの全面に渡って2次元的な電気信号の分布が検出される。そして、既に説明した各種のデータ処理及び各種の基準値に基づいて、汚染を検出する。
【0117】
これにより、例えば、上記の高誘電膜に含まれる金属元素のウェーハ上への残留を検出することができる。
【0118】
そして、検出された電気信号と、各種の基準値と、に基づいて、先行ロットよりも後の後続ロットのウェーハ(第2基板)の処理条件を設定し(ステップS331)、その条件を用いて、後続ロットのウェーハへのパターン層(第2層)を形成する(ステップS332)。
【0119】
この時、後続ロットに関するウェーハの加工工程(ステップS332)は、先行ロットに関する上記のステップS301(高誘電膜の形成)、ステップS302(シリコン酸化膜の形成)、ステップS303(レジストマスクの形成)、ステップS304(高誘電膜の一部の露出)、及び、ステップS305(高誘電膜の加工)、並びに、これらの工程に付属する任意の工程、の少なくともいずれかに相当する工程を含むことができ、上記の後続ロットのウェーハの処理条件の設定は、これらの工程の条件の設定である。
【0120】
すなわち、先行ロットの少なくとも一部の工程と、後続ロットの少なくとも一部の工程と、は、同様の種類の工程である。そして、例えば、同様の種類の工程に関して、先行ロットの汚染の検出結果(電気信号の検出結果であり、例えば、電気信号に含まれる汚染信号の検出結果)が、後続ロットの条件に反映されれば良い。
【0121】
例えば、先行ロットと後続ロットとにおいて、ステップS301〜ステップS304までは、同じ条件で連続して実施され、その後、先行ロットのステップS305の工程が実施され、先行ロットの汚染が検出され、その検出結果に基づいて、後続ロットのステップS305に相当する工程の処理条件が設定され、その工程が実施されても良い。また、先行ロットに関して、上記のステップS301〜ステップS305が実施され、その後、先行ロットの汚染が検出され、その検出結果に基づいて、後続ロットのステップS301〜ステップS305に相当する工程が実施されるようにしても良い。このように、後続ロットに関する処理条件の設定及び実施の仕方は、任意である。
【0122】
この時、先行ロットで検出された汚染に基づいて、後続ロットに関して条件を設定される工程は、適切に選択される。例えば、ウェーハ上の特定の位置に偏った汚染(残渣など)が認められる場合には、ステップS301(高誘電膜の形成)及びステップS302(シリコン酸化膜の形成)の少なくともいずれかの工程の条件が不適切であったと推定され、これらの工程の条件が適切に設定される。
【0123】
なお、既に説明したように、ステップS320における電気信号の検出においては、金属による汚染の他、陰イオン及び有機物による汚染も検出され、この場合も同様にして、後続ロットの処理条件を設定して、後続ロットの処理を実施する。
【0124】
これにより、後続ウェーハにおいて、例えば金属元素の汚染が抑制されたパターンが形成できる。
【0125】
そして、先行ロットのウェーハの汚染の検出結果に基づいて、先行ロットのウェーハの汚染物の除去を行う(ステップS340)。この時、先に説明した各種の基準値及びその変形の基準値を用いることができる。
【0126】
例えば、汚染の検出結果が、基準値以下の場合は、ステップS340は省略される。そして、基準値を超える場合には、その汚染の種類に適合する方法を用いて、その汚染物の除去処理を行う。
【0127】
例えば、本具体例の場合、高誘電膜のパターン形成工程であるので、残留している汚染は、高誘電膜に含有されるHf等に起因した金属残渣であることが推定され、例えば、塩酸とオゾン溶解水との混合液を用いた残留金属除去処理が実施される。
【0128】
また、残留している汚染がレジスト等の有機物である場合には、例えば、硫酸、塩酸、及びアンモニアなどの強アルカリと、過酸化水素水と、の混合液による処理、オゾン溶解水等による処理、オゾンガスによる処理、UV(紫外線)照射処理、加熱昇温処理、減圧処理、並びに、プラズマ処理、の少なくともいずれかを実施することができる。
【0129】
また、その後、再度ステップS320を実施して汚染物の除去の確認を行うこともでき、また、ステップS320とステップS340とを繰り返して実施しも良い。
【0130】
(第2の実施例)
図9は、第2の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。図9に例示したように、第1の実施形態に係る第2の実施例の半導体装置の製造方法においては、例えば、シリコンなどの半導体のウェーハの表面に、レジスト膜を形成する(ステップS401)。このウェーハは、例えば先行ロットのウェーハ(第1基板11)である。
【0131】
そして、リソグラフィにより、有機溶剤によってレジスト膜を加工して、所定の形状のレジスト層を形成する(ステップS411)。このようにして、先行ロットの複数のウェーハの主面に、所定のパターン形状を有するレジスト層(第1層21)が形成される。
【0132】
次に、そのロット(先行ロット)から、ウェーハを例えば3枚抜き取り、上記の手法によって探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS420)。この時、例えば、ウェーハの全面に渡って2次元的な電気信号の分布が検出される。そして、既に説明した各種のデータ処理及び各種の基準値に基づいて、汚染を検出する。
これにより、例えば、上記の有機溶剤のウェーハ上への残留を検出することができる。
【0133】
そして、検出された電気信号と、各種の基準値と、に基づいて、先行ロットよりも後の後続ロットのウェーハ(第2基板)の、レジスト膜の形成及び有機溶剤による加工(ステップS401及びステップS411に相当する工程)の条件を設定する(ステップS431)。
【0134】
そして、その条件を用いて、後続ロットのウェーハ(第2基板)に関して、レジスト膜の形成及び有機溶剤による加工を実施し、所定のパターンを有するレジスト層(第2層)を形成する(ステップS432)。
これにより、後続ウェーハにおいて、有機溶剤の残留が抑制されたレジスト層が形成できる。
【0135】
そして、先行ロットのウェーハの有機溶剤に関する汚染の検出結果に基づいて、先行ロットのウェーハにおける有機溶剤の残留(有機汚染物)の除去を行う(ステップS440)。この時、先に説明した各種の基準値及びその変形の基準値を用いることができる。
【0136】
例えば、硫酸、塩酸、及びアンモニアなどの強アルカリと、過酸化水素水と、の混合液による処理、オゾン溶解水等による処理、オゾンガスによる処理、UV(紫外線)照射処理、加熱昇温処理、減圧処理、並びに、プラズマ処理、の少なくともいずれかを実施することができる。
【0137】
なお、汚染の検出(ステップS420)における電気信号の検出においては、有機物の汚染でなく、金属元素に基づく汚染も検出できるので、例えば、有機溶剤に含まれる各種の陰イオン及び金属不純物による汚染も検出でき、必要に応じて、これらの汚染物を除去する処理を行うこともできる。
【0138】
(第3の実施例)
図10は、第3の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図10に例示したように、第1の実施形態に係る第3の実施例の半導体装置の製造方法においては、例えば、シリコンなどの半導体のウェーハ(第1基板11)の表面に形成されたポリシリコン膜をRIE法によって加工して、パターンを有するポリシリコン層を形成(ステップS510)。なお、この時、ポリシリコン膜の上に所定のレジストが形成され、RIE法による加工が行われ、その後、レジストは除去しても良く、またレジストは残したまま、次の処理を行っても良い。
【0139】
次に、そのロット(先行ロット)から、ウェーハを例えば3枚抜き取り、上記の手法によって探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS520)。この時、例えば、ウェーハの全面に渡って2次元的な電気信号の分布が検出される。そして、既に説明した各種のデータ処理及び各種の基準値に基づいて、汚染を検出する。
これにより、例えば、ウェーハ上へのポリシリコン膜の残渣が検出される。
【0140】
そして、検出された電気信号と、各種の基準値と、に基づいて、先行ロットよりも後の後続ロットのウェーハ(第2基板)の、ポリシリコン膜の加工条件を設定し(ステップS531)、その条件を用いて、後続ロットのウェーハに関して、ポリシリコン膜を加工してパターンを有するポリシリコン層(第2層)を形成する(ステップS532)。
これにより、後続ウェーハにおいて、残渣が抑制され所定形状を有するポリシリコン層が形成できる。
【0141】
そして、先行ロットのウェーハのポリシリコン膜の残渣の汚染の検出結果に基づいて、先行ロットのウェーハにおける残渣(汚染物)の除去を行う(ステップS540)。この時、先に説明した各種の基準値及びその変形の基準値を用いることができる。
【0142】
この残渣の除去としては、例えば、ステップS510のRIE処理をさらに行っても良く、また、RIEの処理条件を変えて実施しても良い。
【0143】
なお、例えば、既に説明したように、後続ロットに関する条件の設定(ステップS531)及び加工(ステップS532)と、先行ロットの汚染物の除去(ステップS540)と、の順序は入れ換えても良い。この場合には、RIE処理装置に、探針30の電気信号を検出する検出部(探針30、信号検出部40及びステージ5など)を組み込んでも良い。この場合には、この検出部は、処理のエンドポイントモニタの機能を果たす。
【0144】
従来のRIE処理においては、被加工膜の厚さや、用いるガス種、出力、処理時間などのRIE加工条件などを変更した場合には、残渣の量が変わるため、そのRIE加工条件、及び、その後に行われる加工残渣除去処理条件が適正であることを確認する作業が必要だったが、本実施例に係る製造方法によれば、ロット毎に残渣の量を確認することができ、過不足のない加工残渣除去処理が可能となる。
【0145】
このように、探針30の電気信号を検出する検出部が、各種の処理装置に組み込まれる場合には、この検出部は、処理のエンドポイントモニタの機能を果たす。そして、この形態においては、先行基板の電気信号の検出と、先行基板における汚染物の除去と、後続基板の加工と、が、連続して実施されることも可能になるので、第1基板11と第2基板とは、同じロットに属する連続した順番で処理が行われる基板とすることもでき、より精度が高くより生産性の高い製造が実施できる。
【0146】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1基板11の第1パターンに含まれる異なる領域ごとに、異なる基準値が定められる例である。
【0147】
図11は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法が適用される基板を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)のB部を拡大した平面図であり、同図(c)は、同図(b)のC−C’線断面図である。
【0148】
図11(a)に表したように、本実施形態に係る製造方法が適用される半導体装置のウェーハ(第1基板11)は、それぞれ半導体チップとなる複数の領域13を有している。
【0149】
そして、図11(b)に表したように、1つの半導体チップ(領域13)は、半導体チップに内蔵される各種の機能によって複数の領域にさらに分かれる。ここでは、説明を簡単にするために、1つの半導体チップ(領域13)は、第1領域71と第2領域72とを有する場合として説明する。
【0150】
そして、図11(c)に表したように、第1領域71と第2領域72のそれぞれにおいて、第1領域層21aと第2領域層21bとが設けられている。なお、第1領域層21aと第2領域層21bとは、第1層21に含まれる。
【0151】
そして、このような構成を有する半導体チップ(領域13)が、第1基板11であるウェーハの主面11aにおいて、繰り返し複数設けられている。
【0152】
図12は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法における基準値を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、最大基準値及び最小基準値を例示しており、同図(b)は、電気信号の平均に関する基準値を例示しており、同図(c)は、電気信号のX軸方向の変化率に関する基準値を例示している。
【0153】
図12(a)〜(c)に表したように、本実施形態においては、検出された電気信号に関する各基準値として、上記の第1領域71と第2領域72とで異なる値が用いられている。
【0154】
例えば、図12(a)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)に関して、第1領域71においては、最大値に関する第1最大基準値VH1と、最小値に関する第1最小基準値VL1と、が設定され、第2領域72においては、最大値に関する第2最大基準値VH2と、最小値に関する第2最小基準値VL2と、が設定される。そして、第2最大基準値VH2及び第2最小基準値VL2の少なくともいずれかは、それぞれ、第1最大基準値VH1及び第1最小基準値VL1とは異なる値に設定され得る。
【0155】
本具体例では、第2最大基準値VH2と第2最小基準値VL2との差は、第1最大基準値VH1と第1最小基準値VL1との差よりも小さく設定されている。
【0156】
すなわち、本具体例では、第1領域71よりも第2領域72の方が、精密に管理された製造が必要な領域とされており、これに対応させて、第2領域72に関する管理値が第1領域71よりも厳しく設定されている。これにより、第1領域71及び第2領域72のそれぞれに必要とされる要求を満足した上で、製造の許容幅を最大に緩和し、最適化された製造を実施することができる。
【0157】
例えば、1つの半導体チップが、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)が形成され、相対的に高い精度の製造が必要な領域と、それ以外の部分が形成され、相対的に低い精度の製造が許容される領域と、を有する場合などにおいて、上記のように異なる領域ごとに基準値を変える方法が好適に適用される。
【0158】
同様に、図12(b)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)を、一定の範囲の位置x1に関して平均した(積分した)平均信号S3を求め、その平均値に関して、領域ごとに、異なる管理値が設定される。すなわち、第1領域71においては、大きい側の第1平均最大基準値VAH1、及び、小さい側の第1平均最小基準値VAL1、が設定され、第2領域72においては、大きい側の第2平均最大基準値VAH2、及び、小さい側の第2平均最小基準値VAL2、が設定される。第2平均最大基準値VAH2及び第2平均最小基準値VAL2の少なくともいずれかは、それぞれ、第1平均最大基準値VAH1及び第1平均最小基準値VAL1とは異なる値に設定され得る。
【0159】
また、同様に、図12(c)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)のX軸方向の変化率(微分信号S4)に関する基準値として、第1領域71においては、第1微分最大基準値VDH1及び第1微分最小基準値VDL1が設定され、第2領域72においては、第2微分最大基準値VDH2及び第2微分最小基準値VDL2が設定される。第2微分最大基準値VDH2及び第2微分最小基準値VDL2の少なくともいずれかは、それぞれ、第1微分最大基準値VDH1及び第1微分最小基準値VDL1とは異なる値に設定され得る。
【0160】
このように、本実施形態においては、第1基板11における電気信号の検出結果に基づいて、第2基板の第2層の形成のための条件の設定する際に、その条件の設定は、第1パターンに含まれ、第1領域とは異なる第2領域に対して定められ、電気信号に関する最大値、最小値、平均値、及び、主面11aに平行な平面内における変化率、の少なくともいずれかに関し、第1基準値とは異なる第2基準値と、検出された電気信号の値と、の関係にさらに基づいて行われる。
このように、第1パターンに含まれる異なる領域ごとに異なる基準値を定めることで、それぞれの領域に最も適した製造を実施することができる。
【0161】
例えば、第2基準値における電気信号(例えば相対信号S2であり、以下同様)に関する最大値(第2最大基準値VH2)と最小値(第2最小基準値VL2)との差は、第1基準値における電気信号に関する最大値(第1最大基準値VH1)と最小値(第2最小基準値VL2)との差よりも小さい、第2基準値における電気信号に関する平均値の最大値(第2平均最大基準値VAH2)と最小値(第2平均最小基準値VAL2)との差は、第1基準値における電気信号に関する平均値の最大値(第1平均最大基準値VAH1)と最小値(第1平均最小基準値VAL1)との差よりも小さい、及び、第2基準値における電気信号に関する変化率の最大値(第2微分最大基準値VDH2)と最小値(第2微分最小基準値VDL2)との差は、第1基準値における電気信号に関する変化率の最大値(第1微分最大基準値VDH1)と最小値(第1微分最小基準値VDL1)との差よりも小さい、の少なくともいずれかに設定することができる。
【0162】
なお、領域ごとに定められる各種の基準値は、領域ごとの仕様に適合するように、例えば、管理すべき濃度で予め汚染させた基準ウェーハの測定値、及び、蓄積された過去のデータに基づく値などに基づいて設定することができる。
【0163】
本実施形態に係る製造方法によれば、パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、異なる領域ごとに定められた基準値を用いることで、処理条件の適正化をより高め、後続のウェーハの処理をより高い生産性で実施することができる。
【0164】
また、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、パターン付きウェーハ表面の汚染を直接的に、また、面内分布も含めて、非破壊かつ短時間で測定することにより、汚染物の除去工程前に汚染量を把握し、最適な汚染物の除去条件を適用でき、除去不足や過剰な処理による副作用が防止できる。
【0165】
また、汚染物の除去工程後に汚染物の除去の程度を確認し、必要に応じて追加処理を行うことができる。また、汚染の影響が大きい工程の前に、汚染の検出(電気信号の検出であり、例えば電気信号に含まれる汚染信号の検出)を行い、突発的な異常を検知してトラブルを防止することもできる。そして、生産性を最大化した状態で、金属及び有機物などの各種の汚染の管理を行うことで、汚染状態の変化や突発的な異常を検出して、後続工程への影響を排除し、開発時および量産時のトラブルを防止することができる。
【0166】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置の製造方法が適用される半導体装置を構成する基板、ウェーハ、各種の層、膜等、各要素の具体的な構成、並びに、製造方法に用いられる装置を構成する探針、信号検出部、ステージ等、各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0167】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0168】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0169】
5…ステージ、 11、11c、11d…第1基板、 11a…主面、 13…領域、 21、21c…第1層、 21a…第1領域層、 21b…第2領域層、 30…探針、 30g…間隙、 40…信号検出部、 51〜53…第1〜第3汚染物、 51d、52d、53d…第1〜第3微分汚染起因信号、 51s、52s、53s、54s…第1〜第4汚染起因信号、 61…残渣、 62…付着物、 63…汚染領域、 71…第1領域、 72…第2領域、 S1…電気信号、 S2…相対信号、 S3…平均信号、 S4…微分信号、 SR…参照信号、 SS0…基準レベル、 VAH1…第1平均最大基準値(平均最大基準値)、 VAH2…第2平均最大基準値、 VAL1…第1平均最小基準値(平均最小基準値)、 VAL2…第2平均最小基準値、 VDH1…第1微分最大基準値(微分最大基準値)、 VDH2…第2微分最大基準値、 VDL1…第1微分最小基準値(微分最小基準値)、 VDL2…第2微分最小基準値、 VH1…第1最大基準値(最大基準値)、 VH2…第2最大基準値、 VL1…第1最小基準値(最小基準値)、 VL2…第2最小基準値
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置における微細化、積層化及び新材料の導入などに伴い、金属や有機物などによるウェーハの汚染が歩留まりの低下に与える影響が大きくなる。
【0003】
このような汚染を確実に除去するために、例えば過剰な処理条件を用いると、装置の処理能力の低下や間接材料コストの上昇など、生産性が低下し、また、サイドエッチングなどの副作用が発生する場合がある。
【0004】
特許文献1には、処理装置の雰囲気中の汚染物質の濃度を赤外線によって測定し、汚染除去手段にフィードバックさせる半導体製造装置が開示されているが、実際のウェーハ上の汚染を測定する方法ではないので、測定結果とウェーハ上の汚染の程度とは必ずしも一致しない。
【0005】
ウェーハ上の有機物汚染については、TOF−SIMS(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometer)などの各種の分析手法が知られており、また、ウェーハ上の金属汚染については、VPD/ICP−MS(Vapor Phase Decomposition / Inductively Coupled Mass Spectrometry)などの各種の分析手法が知られているが、これらの従来の手法においては、パターン付きウェーハの全面を非破壊かつ短時間で測定することはできず、実用的には課題がある。
【0006】
非特許文献1には、ウェーハの表面電位の分布を測定することで、ウェーハ上に付着した金属や有機物等の汚染を検出する方法が開示されているが、パターン付きウェーハに関しての汚染の検出と、ウェーハのパターン加工プロセスへのフィードバックに関しては開示されておらず、改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−168776号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C.Yang, J.Hawthorne, B.Steele, R.Bryant, D.Sowell, D.Maloney and K.Ip, "Inspecting wafers using a potential difference imaging sensor method", Micro magazine, 2005年, Vol.25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、処理条件を適正化して後続のウェーハの処理を行う高生産性の半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、第1基板の第1主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第1パターンを有する第1層を形成し、前記第1層が形成された前記第1主面に対向して設けられた探針と、前記第1基板と、の間の相対位置を前記第1主面に平行な平面内で変化させ、前記探針に発生する電気信号を検出し、前記電気信号に基づいて設定された条件を用いて、第2基板の第2主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第2パターンを有する第2層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、処理条件を適正化して後続のウェーハの処理を行う高生産性の半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における汚染を例示する模式図である。
【図4】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における電気信号を例示する模式図である。
【図5】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における基準値を例示する模式図である。
【図6】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を例示するフローチャート図である。
【図7】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を例示するフローチャート図である。
【図8】第1の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図9】第2の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図10】第3の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図11】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法が適用される基板を例示する模式図である。
【図12】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法における基準値を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図2は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一部を例示する模式図である。 すなわち、図2(a)は斜視図であり、図2(b)は図2(a)のA−A’線断面図である。
図3は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における汚染を例示する模式図である。
図4は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における電気信号を例示する模式図である。
【0015】
図1及び図2に表したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法においては、第1基板11の第1主面11a上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第1パターンを有する第1層21を形成する(ステップS110)。
【0016】
そして、第1層21が形成された第1主面11aに対向して設けられた探針30と、第1基板11と、の間の相対位置を第1主面11aに平行な平面内で変化させ、探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS120)。
【0017】
そして、検出された電気信号に基づいて設定された条件を用いて、第2基板の第2主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第2パターンを有する第2層を形成する(ステップS130)。すなわち、検出された電気信号に基づいて第2基板の形成のための条件を設定する(ステップS131)。そして、設定された条件を用いて、第2パターンを有する第2層を第2基板の第2主面上に形成する(ステップS132)。
【0018】
本実施形態に係る製造方法が適用される半導体装置は、各種のメモリや、各種のロジック回路装置や、各種の増幅回路装置や受発光装置や、さらにはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)などであり、その形態は任意である。
【0019】
第1基板11は、半導体装置の任意の製造工程におけるパターン層(第1層21)が形成される基板である。同様に、第2基板は、半導体装置の任意の製造工程におけるパターン層(第2層)が形成される基板である。
【0020】
第1基板11は、例えば、半導体装置の製造における任意のロットに属する例えば半導体のウェーハである。
【0021】
第2基板は、半導体装置の製造における任意のロットに属する例えば半導体のウェーハである。ただし、第2基板への第2層の形成は、第1基板11に第1層21が形成される時よりも後に実施される。すなわち、本実施形態に係る製造方法が適用される工程において、第2基板は、第1基板11が属するロットよりも後に処理されるロットに属するか、または、第1基板が属するロットと同じロットに属し、第1基板11よりも後に処理される基板である。
【0022】
以下では、一例として、第2基板は、第1基板11とは異なるロットの基板であり、第2基板が、第1基板11よりも後に処理されるロットの基板である場合として説明する。なお、この場合に、第1基板11が属するロットと、第2基板が属するロットと、は必ずしも連続していなくても良い。なお、同様に、第2基板が、第1基板11と同じロットに属する基板である場合には、第2基板は、第1基板11よりも後に処理される基板であるが、第1基板11の処理の順番と第2基板の処理の順番とは、必ずしも連続していなくても良い。
【0023】
第1層21及び第2層は、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含む。すなわち、第1層21及び第2層は、それぞれ第1パターン及び第2パターンで形成された導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含む。第1パターン及び第2パターンは、半導体装置に含まれる各種の配線や、各種の層間絶縁膜や、トランジスタや発光層等の半導体層を含む各種の素子や、各種の可動部などのパターンである。第1パターンと第2パターンとは、同じパターン形状を有することができる。
【0024】
すなわち、本実施形態に係る製造方法においては、ステップS110で、第1基板11の主面11aに所定のパターン層を形成した後に、ステップS120で、電気信号を検出することにより、その基板の主面11aに存在する金属や有機物などの汚染を検出する。そして、その結果に基づいて、ステップS130では、後続の第2基板の加工条件を設定して、第2基板の第2主面にパターン層を形成する。
【0025】
ここで、第1基板11(及び第2基板)における汚染は、各種の種類の汚染を含む。
すなわち、図3(a)に表したように、第1基板11の第1層21の側壁及び第1層21どうしの間の第1基板11の表面に、例えば、各種の金属や金属化合物や、各種の有機物などの残渣61が残る場合がある。この残渣61は、例えば、第1層21の加工の際に発生するもので、残渣61は、例えば、第1層21に含まれる材料を含む。
【0026】
また、図3(b)に表したように、第1基板11の第1層21の側壁及び第1層21どうしの間の第1基板11の表面に、例えば、各種の金属や金属化合物や、各種の有機物などの付着物62が付着している場合がある。この付着物62は、例えば、第1層21の加工の際に用いられる各種の材料が付着したもので、第1基板11の各種の処理の際に用いられる各種の材料に含まれる元素を含む。
【0027】
このような残渣61及び付着物62の厚さ、面積及び形状などは多様であり、例えば、単原子層や単分子層のこともある。また、第1層21の形状によっては、残渣61及び付着物62に含まれる物質が、ガスの状態で、第1層21のパターンどうしの間に存在している場合もあり、このようなガスの状態の物質も残渣61及び付着物62に含まれる。
【0028】
また、図3(c)に表したように、第1層21の上面に、上記の残渣61や付着物62が存在している場合もある。
【0029】
また、例えば第1基板11及び第1層21などが、例えば互いに異なる材料の積層膜を含む場合などにおいて、積層膜のいずれかの膜に含まれる材料の残渣が、その膜とは異なる膜に付着する場合もあり、これも、付着物に含まれる。
【0030】
また、図3(d)に表したように、上記の残渣61や付着物62に含まれる物質が、第1基板11及び第1層21の少なくともいずれかの表面に侵入し、汚染領域63となる場合もある。
【0031】
このように、本実施形態に係る製造方法において対象とされる汚染には、各種の形態がある。すなわち、汚染物は、上記の残渣61、付着物62及び汚染領域63などを含み、汚染の検出とは、上記の汚染物の有無、並びに、汚染物の量、濃度及び分布の少なくともいずれかに関する検出を含む。なお、この時の検出は、絶対値の検出の他、相対的な検出を含み、後述する各種の基準値と比較され得る値の導出を含む。
【0032】
以下では、ステップS120における汚染の検出について説明する。
図2(a)及び(b)に例示したように、第1基板11の主面11aには、ステップS110で形成された第1パターンの第1層21が設けられている。そして、探針30が、第1主面11aに対向して設置されている。なお、第1基板11は、例えばステージ5の上に載置される。
そして、探針30と第1基板11との間の相対位置が、第1主面11aに平行な平面内で変化させられる。
【0033】
ここで、主面11aに垂直な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とし、Z軸方向とX軸方向とに垂直な方向をY軸方向とする。
【0034】
すなわち、探針30と第1基板11との間の相対位置は、X−Y平面内で変化させられる。この時、探針30の位置が変化しても良く、第1基板11の位置が変化しても良く、探針30及び第1基板11の両方の位置が変化しても良い。また、これらの間の相対的な位置の変化は、例えばX軸方向に沿って変化しても良く、また、Y軸方向に沿って変化しても良く、この場合は、探針30と第1基板11との相対位置は、1次元で変化させられる。
【0035】
また、これらの間の相対的な位置の変化は、例えばX軸方向及びY軸方向の両方において変化させられても良く、この場合は、探針30と第1基板11との相対位置は、2次元で変化させられる。
【0036】
また、2次元の変化においては、例えば第1基板11がZ軸を軸にして回転し、探針30が例えばX軸に沿って移動し、探針30と第1基板11との間の相対位置がX−Y平面内で渦巻き状に変化させられても良い。このように、探針30と第1基板11との間の相対位置の変化のさせ方は任意である。
【0037】
以下では、説明を簡単にするために、まず、第1基板11の位置が固定されており、探針30が、X軸方向に沿って移動する場合として説明する。
【0038】
なお、探針30と、第1基板11の主面11aと、の間には間隙30gが設けられている。この間隙30gにより、探針30は、第1基板11と接触せず、探針30によって第1基板11の主面11aに傷が発生することがない。すなわち、第1基板11の汚染が、以下のように、非接触で、非破壊で検出される。
【0039】
ステップS120では、上記のように、探針30と第1基板11との間の相対位置をX軸に沿って(X−Y平面内で)で変化させ、探針30に発生する電気信号を検出する。
【0040】
すなわち、探針30には、探針30に発生する電気信号を検出する信号検出部40が接続される。
探針30に発生する電気信号は、例えば探針30に流れる電流である。すなわち、信号検出部40は、例えば、探針30と第1基板11との間に流れる電流を検出する。このとき、例えば、第1基板11はアース電位(基準電位)に設定され、信号検出部40は、探針30とアース電位の端子との間に流れる電流を検出しても良い。
【0041】
本実施形態に係る製造方法においては、探針30と第1基板11とを相対的に移動させることにより、第1基板11の主面11aに存在する物質の表面電位と、探針30の表面電位と、の差、及び、第1基板11の主面11aと、探針30と、の間の間隙30gと、に基づく電流が、探針30に発生する。
【0042】
すなわち、主面11aに存在する各種の金属や各種の有機物など対象物のそれぞれに固有の仕事関数と、探針30の先端部分に用いられる物質に固有の仕事関数と、の差に基づいて、探針30には電流が流れる。この仕事関数の差に基づく電位差が表面電位差であり、探針30には、表面電位差に基づく表面電位差電流が流れる。
表面電位差電流は、探針30と対象物との仕事関数の差に基づくため、主面11aに存在する対象物が金属などや有機物などである場合を含めて、探針30と対象物とで仕事関数の差に基づく表面電位差電流が発生し、この表面電位差電流は検出可能である。
【0043】
また、第1基板11の主面11aと、探針30と、の間にはキャパシタンスが形成されるが、第1基板11の主面11aと、探針30と、の間の間隙30gが変わると、このキャパシタンスの電気容量が変化するので、これによっても探針30に電流が流れる。このように、探針30には、電気容量の変化に基づく容量変化電流が流れる。
【0044】
このように、探針30には、表面電位差電流及び容量変化電流の合計の電流が流れる。 なお、この電流の大きさは、探針30と基板11との間の相対位置の時間変化(すなわち、例えば探針30の基板11に対する移動速度)にも依存する。
【0045】
探針30に流れるこのような電流を、信号検出部40は検出する。この時、この電流を直接検出しても良いし、電流を電圧に変換した電気信号を検出しても良い。すなわち、信号検出部40は、探針30に流れる電流に基づく電気信号を検出する。
【0046】
なお、探針30は単数でも良く、複数でも良い。複数の探針30を用いると、第1基板11の主面11aの全面に渡っての電気信号の検出が短時間で実行できる。この場合、複数の探針30で得られた電気信号は、適正にデータ処理され、第1基板11の主面11aの全面に渡っての電気信号のデータに変換される。
以下では、説明を簡単にするために、探針30が1つの場合として説明する。
【0047】
図4(a)は、パターン層(第1層21)を有し、表面に汚染などがない第1基板11を例示しており、図4(b)は、このような第1基板11において、探針30に発生する電気信号S1を例示しており、図4(c)は、参照信号SRを例示しており、図4(d)は、上記の電気信号S1と参照信号SRとの差分の相対信号S2を例示している。図4(b)〜(d)の横軸は、X軸方向における位置x1を表している。
【0048】
図4(b)に表したように、探針30に発生する電気信号S1は、位置x1の変化と供に変動する。この変動は、第1基板11の主面11aの第1層21の形状と位置(第1パターンの形状と位置)に連動している。このように、パターンを有する第1層21の形状や用いられる材料によって、表面電位電流及び容量変化電流の合計の電流(電気信号S1)が探針30に流れる。
【0049】
すなわち、図4(a)に例示したように、表面に汚染がない正常な第1基板11の場合であっても、図4(b)に例示したように、探針30には、第1パターンの第1層21の形状及びその材料に対応した電気信号S1が発生する。
【0050】
この時、図4(c)に例示した参照信号SRが用意される。
参照信号SRには、例えば、表面に汚染がないことが確認された基板において探針30で得られる電気信号を用いることができる。また、表面に汚染がないことが確認された複数の基板における電気信号を重畳して、ノイズ成分を除去した電気信号を用いることもできる。また、過去に処理された基板において得られた電気信号から汚染に基づく信号成分を除去した信号を用いることもできる。また、例えば、第1層21の形状及び用いられる材料等に関する設計データに基づいてシミュレーションによって求められた信号などを用いてもよい。
【0051】
図4(d)に表したように、このような参照信号SRと、図4(b)に例示した検出された電気信号S1と、の差分である相対信号S2を求めると、相対信号S2は、基準レベルSS0の一定の値であり、変化しない信号となる。
【0052】
なお、相対信号S2の導出に関しては、例えば、電気信号S1と参照信号SRとの差分を差動増幅器などの電気回路によって導出してもよく、また、例えば、電気信号S1に基づくデジタルデータと、参照信号SRに基づくデジタルデータと、の差分を、コンピュータによって導出しても良い。このように、参照信号SRは、アナログ電気信号として用意されても良く、デジタルデータとして用意されても良い。
【0053】
このように、実際に得られた電気信号S1と、予め用意され参照信号SRと、を比較することで、その時に測定した第1基板11には汚染がないことが分かる。
【0054】
図4(e)は、パターン層(第1層21c)を有し、表面に汚染がある別の第1基板11cを例示しており、図4(f)は、このような第1基板11cにおいて、探針30に発生する電気信号S1を例示しており、図4(g)は、上記の電気信号S1と参照信号SRとの差分の相対信号S2を例示している。図4(f)及び(g)の横軸は、X軸方向における位置x1を表している。
【0055】
図4(e)に表したように、別の第1基板11cにおいては、例えば、各種の金属残渣や有機物残渣や各種の付着物などの第1汚染物51、第2汚染物52、及び第3汚染物53が存在している。このような、第1〜第3汚染物51、52及び53などが、第1基板11cの汚染である。このような汚染物は、第1基板11cへの第1層21cの形成における、または、それよりも前の工程における、例えば、レジスト残渣やエッチング残りや各種の付着物や汚染領域などに起因したものであり、半導体装置の性能や歩留まりに悪影響を与える。
【0056】
図4(f)に表したように、このような第1基板11cにおいては、電気信号S1は、第1層21cの形状と用いられる材料に基づく信号の他に、上記の第1〜第3汚染物51、52及び53に基づく信号を含む。
【0057】
そして、図4(g)に表したように、検出された電気信号S1と、上記の参照信号SRと、の差分である相対信号S2を求めると、上記の第1〜第3汚染物51、52及び53にそれぞれ基づく第1〜第3汚染起因信号51s、52s及び53sが検出される。
【0058】
本具体例では、第1汚染物51に起因した第1汚染起因信号51s、及び、第2汚染物52に起因した第2汚染起因信号52sは、基準レベルSS0よりも高い値の信号である。そして、本具体例では、第2汚染起因信号52sは、第1汚染起因信号51sよりも高い値である。一方、この場合の第3汚染物53に起因した第3汚染起因信号53sは、基準レベルSS0よりも低い値の信号である。汚染起因信号は、その汚染物の仕事関数と、探針30の先端部分に用いられる材料の仕事関数と、の差によって、その値と極性が異なる。このように、汚染起因信号は、基準レベルSS0に対して正極性及び負極性のいずれかの信号を含む。なお、この基準レベルSS0は、例えば、探針30の先端に用いられる材料が第1基板11に設けられており、その場合に得られる電気信号の値に相当するものとすることができる。
【0059】
このように、この製造方法においては、検出された電気信号S1に処理が加えられた相対信号S2を用いることで、汚染が容易に検出できる。
【0060】
このように、本実施形態に係る製造方法においては、探針30に発生する電気信号が検出され、その電気信号に基づいて汚染(汚染起因信号)が検出される。すなわち、電気信号S1は、第1パターン以外のパターンで変化し、第1基板11の第1主面11aに存在する有機物及び無機物の少なくともいずれかを含む汚染物に起因した汚染起因信号(例えば上記の第1〜第3汚染起因信号51s、52s及び53s)を含む。なお、この無機物は、各種の金属や、各種の金属元素を含む各種の化合物を含む。
【0061】
なお、上記においては、説明を簡単にするために、参照信号SRを用いる場合について説明したが、本発明はこれには限らない。検出された電気信号S1のデータに処理を施すことによって、汚染起因信号の成分のみを抽出することも可能である。
例えば、検出された電気信号S1のデータから、第1基板11の第1パターンの周期などの位置関連値を用いて、その位置関連値との連動の程度が低い値を汚染起因信号として抽出することができる。すなわち、第1層21は、第1基板11に形成される複数の半導体チップなどに対応した繰り返しパターンを有している場合があり、この場合において、検出された電気信号S1のうち、繰り返しパターンの周期に連動しない信号成分を抽出し、これを汚染起因信号とすることもできる。
【0062】
このように、本製造方法では、検出された電気信号に基づいて汚染(汚染起因信号)が検出されるが、探針30に発生する電気信号に所定の処理が施された信号も含めて、電気信号と見なすことができ、例えば、探針30に発生するアナログの電気信号をデジタル信号に変換した信号、すなわち、デジタルデータも、検出された電気信号に含まれる。
【0063】
そして、「探針30に発生する電気信号に基づく」とは、例えば、「検出された電気信号S1に各種のデータ処理を施したものに基づく」ことを含み、例えば、「検出された電気信号S1と、上記の参照信号SRと、に基づいて求められた相対信号S2に基づく」ことを含む。
【0064】
そして、得られた電気信号(例えば電気信号S1及び相対信号S2など)に含まれる汚染起因信号に関して、各種の基準値を設定し、汚染を判定することができる。すなわち、例えば、汚染起因信号は種々の振幅を有しているので、適切な基準値に基づいて、汚染の有無を判定し、その結果をこの後の処理(第2基板の加工や第1基板11の汚染物除去処理)に反映させる。以下では、説明を簡単にするために、相対信号S2に含まれる汚染起因信号に関して基準値が設けられる場合について説明する。
【0065】
図5は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法における基準値を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、最大基準値VH1及び最小基準値VL1を例示している。同図(b)は、平均値が大きい場合の電気信号を例示しており、同図(c)は、電気信号の平均に関する基準値(平均最大基準値VAH1及び平均最小基準値VAL1)を例示している。同図(d)は、電気信号のX軸方向における変化率に関する基準値(微分最大基準値VDH1及び微分最小基準値VDL1)を例示している。
【0066】
例えば、図5(a)に例示したように、相対信号S2に関して、最大値に関する最大基準値VH1と、最小値に関する最小基準値VL1と、を設定することができる。すなわち、既に説明したように、相対信号S2のうち、最大基準値VH1を超える成分と、最小基準値VL1を下回る成分と、が汚染と判定される。
【0067】
本具体例では、第2汚染起因信号52sは最大基準値VH1を超え、また、第3汚染起因信号53sは、最小基準値VL1を下回っている。この場合には、第2汚染起因信号52sと第3汚染起因信号53sに相当する位置x1に、検出されるべき汚染が発生していると判断される。
【0068】
一方、本具体例では、第1汚染起因信号51sは、最大基準値VH1と最小基準値VL1との間の値であり、この場合、汚染起因信号51sに相当する位置x1には、汚染に似た異常が検出されるが、その異常は製造している半導体装置の仕様上許容できる程度の異常であると判定される。
【0069】
すなわち、このような例においては、第2汚染起因信号52s及び第3汚染起因信号53sに相当する位置x1に、汚染があり、汚染起因信号51sに相当する位置x1には汚染がないとされる。このように、最大基準値VH1及び最小基準値VL1を設定することにより、得られた電気信号に含まれる汚染起因信号から、検出されるべき汚染を効率的に抽出することができる。
【0070】
図5(b)は、平均値が大きい(例えば基準レベルSS0からの差が大きい)場合の電気信号を例示している。すなわち、図5(b)に例示したように、別の第1基板11dにおいては、電気信号(この例では、相対信号S2)は、最大基準値VH1と最小基準値VL1との間の信号であるが、基準レベルSS0から外れている領域の位置x1の長さが長い。すなわち、本具体例では、ブロードな形状の第4汚染起因信号54sが検出されている。
【0071】
このような場合には、例えば、第1基板11dの主面11aには、汚染の程度が弱い(例えば汚染物の濃度が低い)ものの、広い面積で汚染物が付着しており、この場合も、半導体装置の製造上問題になることがある。すなわち、上記の最大基準値VH1及び最小基準値VL1によって定められた電気信号(この場合は相対信号S2)に関する許容範囲を満足していても、問題となる場合がある。このような場合には、電気信号(この場合は相対信号S2)の平均値に関する平均基準値を採用することができる。
【0072】
例えば、図5(c)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)を、一定の範囲の位置x1に関して平均した平均信号S3を求め、その平均信号S3に関しての大きい側の平均最大基準値VAH1、及び、小さい側の平均最小基準値VAL1、を採用する。そして、これらの基準値と、平均信号S3と、の比較に基づいて、検出すべき汚染を抽出する。なお、電気信号の平均に関する位置x1の範囲は、本製造方法が適用される半導体装置の仕様やウェーハの大きさなどによって適切に定められる。
【0073】
なお、上記においては、電気信号(この場合は相対信号S2)を、一定の範囲の位置x1に関して平均した平均信号S3を求める場合に関して説明したが、この平均信号S3は、電気信号(この場合は相対信号S2)を、一定の範囲の位置x1に関して積分した値と見なすこともできる。
【0074】
また、電気信号(例えば相対信号S2)のX軸方向の変化率に関する基準値を採用しても良い。
例えば、図5(a)に例示した電気信号(この場合は相対信号S2)のX軸方向に沿った変化率(電気信号の位置x1に関する微分値)を求めると、図5(d)に示す微分信号S4が得られる。この微分信号S4においては、第1〜第3汚染起因信号51s、52s及び53sにそれぞれ対応して、第1〜第3微分汚染起因信号51d、52d及び53dが求められる。
【0075】
すなわち、例えば、第1基板11に形成されている第1層21の第1パターンによっては、汚染に起因した信号と、例えば第1パターンに起因した電流による信号と、の分離が困難な場合があり、このような場合において、上記の微分信号S4を用いることで両者の分離が容易になり、汚染の検出がより容易になる。
【0076】
この時、図5(d)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)のX軸方向の変化率(微分信号S4)に関する基準値である微分最大基準値VDH1及び微分最小基準値VDL1を設定することができる。そして、これらの基準値と、微分信号S4と、の比較に基づいて、検出すべき汚染を抽出する。すなわち、微分信号S4が微分最大基準値VDH1を超える、または、微分最小基準値VDL1を下回るときに、その分部に汚染があると判定される。
【0077】
なお、上記の各種の基準値は、例えば、管理すべき濃度で予め汚染させた基準ウェーハにおける電気信号の検出結果に基づいて設定されることもでき、また、蓄積された過去のデータに基づいて適切に設定されることもでき、その設定の方法は任意である。
【0078】
また、上記の基準値(第1基準値)は、第1基板11の第1パターンに含まれる第1領域に対して定められれば良い。すなわち、例えば、第1パターンに含まれる特定の領域に対して、基準値を定めても良く、また、第1パターンに含まれる領域にかかわらず、第1基板11の全面にわたって同じ値の基準を定めても良い。また、後述するように、第1パターンに含まれる異なる領域ごとに異なる基準値(例えば第1基準値及び第2基準値)を定めても良い。
【0079】
なお、図4及び図5においては、電気信号のX軸に沿った変化について説明したが電気信号のX−Y平面における変化(分布)に関して上記と同様の特性を検出し、そして、上記と同様の基準値を定め、第1基板11の主面11aの汚染の2次元的な分布を検出することができる。
【0080】
すなわち、探針30に生じる電気信号の検出は、電気信号の主面11aに平行な平面内における面内分布の検出を含む。そして、例えば上記の基準値に基づいて、第1基板11の主面11aの汚染の2次元的な分布が検出される。
【0081】
そして、このようにして検出された汚染に基づいて、既に説明したように、ステップS130では、後続の第2基板の加工条件を設定して、第2基板の第2主面にパターン層である第2層を形成する。
【0082】
なお、上記の各種の基準値に基づいた汚染の検出は、ステップS120に含まれるものとしても良く、また、ステップS130に含まれるものとしても良い。
【0083】
すなわち、第2基板の加工条件の設定は、第1基板11に関して検出された電気信号に関する最大値、最小値、平均値(例えば積分値)、及び、平面内における変化率(例えば微分値)、の少なくともいずれかに関する基準値(第1基準値)と、検出された電気信号の値と、の関係に基づいて実施される。
【0084】
例えば、上記の最大基準値VH1、最小基準値VL1、平均最大基準値VAH1、平均最小基準値VAL1、微分最大基準値VDH1及び微分最小基準値VDL1の少なくともいずれかに基づいて、第2基板の加工条件が設定される。
【0085】
例えば、検出された電気信号がこれらの基準値によって定められる範囲の外にある場合は、第2基板への第2層の形成の際の条件を、第1基板11への第1層21の形成の条件とは異ならせることができる。そして、検出された電気信号が、これらの基準値の範囲内のときは、第2基板への第2層の形成の際の条件を、第1基板11への第1層21の形成の条件と同じに設定することができる。なお、第2基板への第2層の形成の条件を、第1基板11への第1層21と異ならせる(変更する)場合も、同じにする(変更しない)場合も、「第2基板の加工条件は、検出された電気信号に基づいて設定される」、とされる。
【0086】
これにより、第1基板11の汚染の検出結果に基づいて、第1基板11よりも後に加工される第2基板の加工条件が適宜変更され、例えば最適条件に調整される。
【0087】
そして、この最適条件を用いて、第2基板の第2パターンを有する第2層が形成される。このため、第2基板においては、汚染の発生が抑制され、また、処理条件が最適化されているため、装置の処理能力の低下や間接材料コストの上昇などの生産性の低下が抑制され、また、サイドエッチングなどの副作用の発生も抑制される。
【0088】
このように、本実施形態に係る製造方法によれば、パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、処理条件を適正化して後続のウェーハの処理を行う高生産性の半導体装置の製造方法が提供できる。
【0089】
なお、第1基板11の汚染の検出結果によって設定される第2基板への第2層の形成のための条件は、第2基板に関する前洗浄、成膜、リソグラフィを含むレジスト形成、エッチング、レジスト剥離、後洗浄、各種の不純物注入、熱処理等の各種の処理条件、搬送及び保管などの条件、用いる原料などの直接材料や間接材料、処理装置の保守や清掃、並びに、使用するフォトマスなどの仕様など、デバイスの設計仕様を含めた製造条件の全てを含む。
【0090】
図6は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を例示するフローチャート図である。
図6に表したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例においては、まず、第1基板11の第1主面11a上に、第1層21となる第1膜を成膜する(ステップS101)。第1膜は、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み、単層膜でも良く、また、これらの膜の積層膜でも良い。
【0091】
そして。第1膜を第1パターンとなるように加工する。例えば、第1膜の上にマスク(レジストマスク及びハート゛マスクの少なくともいずれか)を、例えばフォトリソグラフィによって形成し、これをマスクにして、エッチング(ドライエッチング及びウエットエッチングの少なくともいずれか)を実施して、第1膜を加工して、第1パターンを有する第1層21を形成する(ステップS111)。
【0092】
図1に例示したステップS110は、上記のステップS111を含む。ステップS110は、さらに、上記のステップS101を含んでも良い。
【0093】
そして、図1と同様に、第1基板11に関して、探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS120)。すなわち、第1基板11の主面11aの汚染に起因した信号を検出して、汚染を検出する。
【0094】
そして、例えば上記の各種の基準値を用いて、検出された電気信号に基づいて第2基板の形成のための条件を設定する(ステップS131)。
そして、設定された条件を用いて、第2パターンを有する第2層を第2基板の第2主面上に形成する(ステップS132)。上記のステップS131及びステップS132が、図1に例示したステップS130に含まれる。
【0095】
そして、本具体例では、第1基板11の汚染物の除去がさらに実施される(ステップS140)。すなわち、第1基板11に関して検出された電気信号の値に基づいて、第1基板11の汚染物を除去する。この時、例えば、得られた電気信号(例えば相対信号S2)に関する最大値及び最小値、得られた電気信号の平均値(積分値)に関する最大値及び最小値、得られた電気信号の変化率(微分値)に関する最大値及び最小値、並びに、これらの面内分布に基づいて、第1基板11の汚染物の除去処理の実施の有無の判断、及び、除去処理の条件の設定、並びに、その除去処理の条件を用いた除去処理、が実施される。
【0096】
第1基板11の汚染物の除去処理は、例えば、各種の薬液による処理を含む他、アッシングなどの気相における各種の処理、及び、各種の熱処理なども含む。
【0097】
なお、汚染物の除去には、既に説明した残渣61及び付着物62の除去の他に、既に説明した汚染領域63の除去も含まれ、この場合には、汚染領域63からの汚染原因物質を選択的に除去することの他に、汚染領域63を汚染されていない領域から分離して汚染領域63を除去することも含む。
【0098】
なお、上記の第1基板11の汚染物の除去に関する各種の基準値は、第2基板の加工条件を設定するための基準値(例えば、上記の最大基準値VH1、最小基準値VL1、平均最大基準値VAH1、平均最小基準値VAL1、微分最大基準値VDH1及び微分最小基準値VDL1など)と同じでも良く、また異なっていても良い。
【0099】
このように、第1基板11に関する電気信号の検出(すなわち、汚染の検出)の結果に基づいて、第1基板11の汚染物の除去を実施することで、第1基板11の汚染物を除去でき、半導体装置の製造の歩留まりが向上する。
【0100】
このように、本実施形態に係る製造方法によれば、先行する第1基板11の汚染状態を後続する第2基板の加工条件にフォードバックして、第2基板を加工することで、第2基板の製造における不良を未然に回避でき歩留まりが向上できると供に、汚染が評価された第1基板11の汚染物の除去処理条件を適正に設定してその汚染物を除去することで、第1基板11の不良の発生を抑制できる。
【0101】
なお、上記の第1基板11の汚染物の除去のステップS140は、ステップS120よりも後に行われれば良く、ステップ140は、ステップS131及びステップS132の少なくともいずれかの前に実施されても良い。
【0102】
また、上記の汚染物の除去(ステップS140)の後に、再度第1基板11に関する電気信号の検出(ステップS120)を行い、汚染物の除去が適正に行われたかどうかの判定を行っても良い。
【0103】
また、例えば、汚染物の除去処理によって他の必要な膜が過剰にエッチングされるなどの副作用が起こる場合には、比較的弱い条件で汚染物の除去処理(ステップS140)を実施し、再度第1基板11に関する電気信号の検出(ステップS120)を行い、汚染の検出を行い、これらの工程を繰り返して実施して、副作用が抑制された状態で、汚染物の除去を行うこともできる。
【0104】
第1基板11と第2基板との2枚の基板の組み合わせを対象とする、上記のステップS110〜S130または、ステップS110〜S140は、3枚以上の基板に関しても拡張して適用でき、同様の効果を得ることができる。
【0105】
図7は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法の変形例を例示するフローチャート図である。
図7に表したように、変形例の製造方法は、本実施形態を任意の複数の基板に適用した場合の製造方法であり、まず、N番目の基板へのN番目の膜の形成を行う(ステップS201)。なお、Nは1以上の整数である。そして、N番目の基板において、N番目の加工を行い、パターンを有するN番目の層を形成する(ステップS211)。
【0106】
そして、N番目の基板での探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS220)。
【0107】
そして、検出された電気信号に基づいて後続の基板のための条件を設定し(ステップS231)、その条件を用いて、後続の基板の層を形成する(ステップS232)。
この時、例えば、後続の基板は、(N+M)番目の基板とされる。ここで、Mは1以上の整数である。すなわち、設定された条件を用いて、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含みパターンを有する(N+M)番目の層を、(N+M)番目の基板の主面上に形成する。
【0108】
そして、さらに、N番目の基板の汚染物の除去を実施する(ステップS240)。なお、この場合も、ステップS240は、ステップS231及びステップS232の少なくともいずれかの前に実施されても良い。また、既に説明したように、ステップS240の後にステップS120を再度実施しても良く、また、ステップS240とステップS120とを繰り返して実施しても良い。
【0109】
そして、Nが所定の数A0を超えるまで、上記の工程が繰り返される。なお、上記のMは一定である必要はなく、Nの値によってMは変化しても良い。すなわち、先行する基板の汚染の検出結果がフィードバックされる後続の基板は、任意の順番の基板とすることができる。
【0110】
なお、ステップS220(電気信号の検出)及びステップS231(条件の設定)に要する時間が短ければ、第1基板11と第2基板とは、互いに近接した順番の基板とすることができ、例えば、第1基板11と第2基板は、同じロットに属することもでき、また、例えば、第2基板の処理の順番は、第1基板11の処理の順番に連続させることもできる。
【0111】
また、第1基板11を用いた汚染の検出が実施される頻度は任意であり、例えば、1つにロットについて1枚の第1基板11を選んでも良く、例えば、複数のロットに対して、1枚の第1基板11を選んでも良く、また、1つのロットにおいて、複数の第1基板11を選んでも良い。
【0112】
例えば、1つのロットのカセットの上部と中部と下部の3枚の基板を、汚染を検出する第1基板11とすることもできる。なお、基板の汚染は、連続または近接して処理された複数の基板において、同じような分布を示すことがあるので、複数の基板における汚染の検出結果(電気信号の検出結果)を合計して重ね合わせることで、汚染の発生をより正確に検出することができる。
【0113】
(第1の実施例)
図8は、第1の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。図8に例示したように、第1の実施形態に係る第1の実施例の半導体装置の製造方法においては、例えば、シリコンなどの半導体のウェーハの表面に、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの手法により、高誘電膜(第1膜)を成膜する(ステップS301)。このウェーハは、例えば先行ロットのウェーハ(第1基板11)である。また、高誘電膜は、例えば、酸化ハフニウムである。
【0114】
そして、高誘電膜の上にシリコン酸化膜を形成する(ステップS302)。そして、リソグラフィにより、所定形状のレジストマスクを形成する(ステップS303)。そして、そのレジストマスクをマスクとして、シリコン酸化膜を、例えばRIE(Reactive Ion Etching)法で加工して、高誘電膜の一部を露出させる(ステップS304)。そして、シリコン酸化膜から露出した高誘電膜をRIE法によりエッチングして、高誘電膜を加工する(ステップS305)。なお、この後、必要に応じて上記のシリコン酸化膜を除去する。
【0115】
このようにして、先行ロットの複数のウェーハの主面に、所定の形状を有する高誘電膜(第1層21)が形成される。
【0116】
次に、そのロット(先行ロット)から、ウェーハを例えば3枚抜き取り、上記の手法によって探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS320)。この時、例えば、ウェーハの全面に渡って2次元的な電気信号の分布が検出される。そして、既に説明した各種のデータ処理及び各種の基準値に基づいて、汚染を検出する。
【0117】
これにより、例えば、上記の高誘電膜に含まれる金属元素のウェーハ上への残留を検出することができる。
【0118】
そして、検出された電気信号と、各種の基準値と、に基づいて、先行ロットよりも後の後続ロットのウェーハ(第2基板)の処理条件を設定し(ステップS331)、その条件を用いて、後続ロットのウェーハへのパターン層(第2層)を形成する(ステップS332)。
【0119】
この時、後続ロットに関するウェーハの加工工程(ステップS332)は、先行ロットに関する上記のステップS301(高誘電膜の形成)、ステップS302(シリコン酸化膜の形成)、ステップS303(レジストマスクの形成)、ステップS304(高誘電膜の一部の露出)、及び、ステップS305(高誘電膜の加工)、並びに、これらの工程に付属する任意の工程、の少なくともいずれかに相当する工程を含むことができ、上記の後続ロットのウェーハの処理条件の設定は、これらの工程の条件の設定である。
【0120】
すなわち、先行ロットの少なくとも一部の工程と、後続ロットの少なくとも一部の工程と、は、同様の種類の工程である。そして、例えば、同様の種類の工程に関して、先行ロットの汚染の検出結果(電気信号の検出結果であり、例えば、電気信号に含まれる汚染信号の検出結果)が、後続ロットの条件に反映されれば良い。
【0121】
例えば、先行ロットと後続ロットとにおいて、ステップS301〜ステップS304までは、同じ条件で連続して実施され、その後、先行ロットのステップS305の工程が実施され、先行ロットの汚染が検出され、その検出結果に基づいて、後続ロットのステップS305に相当する工程の処理条件が設定され、その工程が実施されても良い。また、先行ロットに関して、上記のステップS301〜ステップS305が実施され、その後、先行ロットの汚染が検出され、その検出結果に基づいて、後続ロットのステップS301〜ステップS305に相当する工程が実施されるようにしても良い。このように、後続ロットに関する処理条件の設定及び実施の仕方は、任意である。
【0122】
この時、先行ロットで検出された汚染に基づいて、後続ロットに関して条件を設定される工程は、適切に選択される。例えば、ウェーハ上の特定の位置に偏った汚染(残渣など)が認められる場合には、ステップS301(高誘電膜の形成)及びステップS302(シリコン酸化膜の形成)の少なくともいずれかの工程の条件が不適切であったと推定され、これらの工程の条件が適切に設定される。
【0123】
なお、既に説明したように、ステップS320における電気信号の検出においては、金属による汚染の他、陰イオン及び有機物による汚染も検出され、この場合も同様にして、後続ロットの処理条件を設定して、後続ロットの処理を実施する。
【0124】
これにより、後続ウェーハにおいて、例えば金属元素の汚染が抑制されたパターンが形成できる。
【0125】
そして、先行ロットのウェーハの汚染の検出結果に基づいて、先行ロットのウェーハの汚染物の除去を行う(ステップS340)。この時、先に説明した各種の基準値及びその変形の基準値を用いることができる。
【0126】
例えば、汚染の検出結果が、基準値以下の場合は、ステップS340は省略される。そして、基準値を超える場合には、その汚染の種類に適合する方法を用いて、その汚染物の除去処理を行う。
【0127】
例えば、本具体例の場合、高誘電膜のパターン形成工程であるので、残留している汚染は、高誘電膜に含有されるHf等に起因した金属残渣であることが推定され、例えば、塩酸とオゾン溶解水との混合液を用いた残留金属除去処理が実施される。
【0128】
また、残留している汚染がレジスト等の有機物である場合には、例えば、硫酸、塩酸、及びアンモニアなどの強アルカリと、過酸化水素水と、の混合液による処理、オゾン溶解水等による処理、オゾンガスによる処理、UV(紫外線)照射処理、加熱昇温処理、減圧処理、並びに、プラズマ処理、の少なくともいずれかを実施することができる。
【0129】
また、その後、再度ステップS320を実施して汚染物の除去の確認を行うこともでき、また、ステップS320とステップS340とを繰り返して実施しも良い。
【0130】
(第2の実施例)
図9は、第2の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。図9に例示したように、第1の実施形態に係る第2の実施例の半導体装置の製造方法においては、例えば、シリコンなどの半導体のウェーハの表面に、レジスト膜を形成する(ステップS401)。このウェーハは、例えば先行ロットのウェーハ(第1基板11)である。
【0131】
そして、リソグラフィにより、有機溶剤によってレジスト膜を加工して、所定の形状のレジスト層を形成する(ステップS411)。このようにして、先行ロットの複数のウェーハの主面に、所定のパターン形状を有するレジスト層(第1層21)が形成される。
【0132】
次に、そのロット(先行ロット)から、ウェーハを例えば3枚抜き取り、上記の手法によって探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS420)。この時、例えば、ウェーハの全面に渡って2次元的な電気信号の分布が検出される。そして、既に説明した各種のデータ処理及び各種の基準値に基づいて、汚染を検出する。
これにより、例えば、上記の有機溶剤のウェーハ上への残留を検出することができる。
【0133】
そして、検出された電気信号と、各種の基準値と、に基づいて、先行ロットよりも後の後続ロットのウェーハ(第2基板)の、レジスト膜の形成及び有機溶剤による加工(ステップS401及びステップS411に相当する工程)の条件を設定する(ステップS431)。
【0134】
そして、その条件を用いて、後続ロットのウェーハ(第2基板)に関して、レジスト膜の形成及び有機溶剤による加工を実施し、所定のパターンを有するレジスト層(第2層)を形成する(ステップS432)。
これにより、後続ウェーハにおいて、有機溶剤の残留が抑制されたレジスト層が形成できる。
【0135】
そして、先行ロットのウェーハの有機溶剤に関する汚染の検出結果に基づいて、先行ロットのウェーハにおける有機溶剤の残留(有機汚染物)の除去を行う(ステップS440)。この時、先に説明した各種の基準値及びその変形の基準値を用いることができる。
【0136】
例えば、硫酸、塩酸、及びアンモニアなどの強アルカリと、過酸化水素水と、の混合液による処理、オゾン溶解水等による処理、オゾンガスによる処理、UV(紫外線)照射処理、加熱昇温処理、減圧処理、並びに、プラズマ処理、の少なくともいずれかを実施することができる。
【0137】
なお、汚染の検出(ステップS420)における電気信号の検出においては、有機物の汚染でなく、金属元素に基づく汚染も検出できるので、例えば、有機溶剤に含まれる各種の陰イオン及び金属不純物による汚染も検出でき、必要に応じて、これらの汚染物を除去する処理を行うこともできる。
【0138】
(第3の実施例)
図10は、第3の実施例に係る半導体装置の製造方法を例示するフローチャート図である。
図10に例示したように、第1の実施形態に係る第3の実施例の半導体装置の製造方法においては、例えば、シリコンなどの半導体のウェーハ(第1基板11)の表面に形成されたポリシリコン膜をRIE法によって加工して、パターンを有するポリシリコン層を形成(ステップS510)。なお、この時、ポリシリコン膜の上に所定のレジストが形成され、RIE法による加工が行われ、その後、レジストは除去しても良く、またレジストは残したまま、次の処理を行っても良い。
【0139】
次に、そのロット(先行ロット)から、ウェーハを例えば3枚抜き取り、上記の手法によって探針30に発生する電気信号を検出する(ステップS520)。この時、例えば、ウェーハの全面に渡って2次元的な電気信号の分布が検出される。そして、既に説明した各種のデータ処理及び各種の基準値に基づいて、汚染を検出する。
これにより、例えば、ウェーハ上へのポリシリコン膜の残渣が検出される。
【0140】
そして、検出された電気信号と、各種の基準値と、に基づいて、先行ロットよりも後の後続ロットのウェーハ(第2基板)の、ポリシリコン膜の加工条件を設定し(ステップS531)、その条件を用いて、後続ロットのウェーハに関して、ポリシリコン膜を加工してパターンを有するポリシリコン層(第2層)を形成する(ステップS532)。
これにより、後続ウェーハにおいて、残渣が抑制され所定形状を有するポリシリコン層が形成できる。
【0141】
そして、先行ロットのウェーハのポリシリコン膜の残渣の汚染の検出結果に基づいて、先行ロットのウェーハにおける残渣(汚染物)の除去を行う(ステップS540)。この時、先に説明した各種の基準値及びその変形の基準値を用いることができる。
【0142】
この残渣の除去としては、例えば、ステップS510のRIE処理をさらに行っても良く、また、RIEの処理条件を変えて実施しても良い。
【0143】
なお、例えば、既に説明したように、後続ロットに関する条件の設定(ステップS531)及び加工(ステップS532)と、先行ロットの汚染物の除去(ステップS540)と、の順序は入れ換えても良い。この場合には、RIE処理装置に、探針30の電気信号を検出する検出部(探針30、信号検出部40及びステージ5など)を組み込んでも良い。この場合には、この検出部は、処理のエンドポイントモニタの機能を果たす。
【0144】
従来のRIE処理においては、被加工膜の厚さや、用いるガス種、出力、処理時間などのRIE加工条件などを変更した場合には、残渣の量が変わるため、そのRIE加工条件、及び、その後に行われる加工残渣除去処理条件が適正であることを確認する作業が必要だったが、本実施例に係る製造方法によれば、ロット毎に残渣の量を確認することができ、過不足のない加工残渣除去処理が可能となる。
【0145】
このように、探針30の電気信号を検出する検出部が、各種の処理装置に組み込まれる場合には、この検出部は、処理のエンドポイントモニタの機能を果たす。そして、この形態においては、先行基板の電気信号の検出と、先行基板における汚染物の除去と、後続基板の加工と、が、連続して実施されることも可能になるので、第1基板11と第2基板とは、同じロットに属する連続した順番で処理が行われる基板とすることもでき、より精度が高くより生産性の高い製造が実施できる。
【0146】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1基板11の第1パターンに含まれる異なる領域ごとに、異なる基準値が定められる例である。
【0147】
図11は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法が適用される基板を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)のB部を拡大した平面図であり、同図(c)は、同図(b)のC−C’線断面図である。
【0148】
図11(a)に表したように、本実施形態に係る製造方法が適用される半導体装置のウェーハ(第1基板11)は、それぞれ半導体チップとなる複数の領域13を有している。
【0149】
そして、図11(b)に表したように、1つの半導体チップ(領域13)は、半導体チップに内蔵される各種の機能によって複数の領域にさらに分かれる。ここでは、説明を簡単にするために、1つの半導体チップ(領域13)は、第1領域71と第2領域72とを有する場合として説明する。
【0150】
そして、図11(c)に表したように、第1領域71と第2領域72のそれぞれにおいて、第1領域層21aと第2領域層21bとが設けられている。なお、第1領域層21aと第2領域層21bとは、第1層21に含まれる。
【0151】
そして、このような構成を有する半導体チップ(領域13)が、第1基板11であるウェーハの主面11aにおいて、繰り返し複数設けられている。
【0152】
図12は、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法における基準値を例示する模式図である。
すなわち、同図(a)は、最大基準値及び最小基準値を例示しており、同図(b)は、電気信号の平均に関する基準値を例示しており、同図(c)は、電気信号のX軸方向の変化率に関する基準値を例示している。
【0153】
図12(a)〜(c)に表したように、本実施形態においては、検出された電気信号に関する各基準値として、上記の第1領域71と第2領域72とで異なる値が用いられている。
【0154】
例えば、図12(a)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)に関して、第1領域71においては、最大値に関する第1最大基準値VH1と、最小値に関する第1最小基準値VL1と、が設定され、第2領域72においては、最大値に関する第2最大基準値VH2と、最小値に関する第2最小基準値VL2と、が設定される。そして、第2最大基準値VH2及び第2最小基準値VL2の少なくともいずれかは、それぞれ、第1最大基準値VH1及び第1最小基準値VL1とは異なる値に設定され得る。
【0155】
本具体例では、第2最大基準値VH2と第2最小基準値VL2との差は、第1最大基準値VH1と第1最小基準値VL1との差よりも小さく設定されている。
【0156】
すなわち、本具体例では、第1領域71よりも第2領域72の方が、精密に管理された製造が必要な領域とされており、これに対応させて、第2領域72に関する管理値が第1領域71よりも厳しく設定されている。これにより、第1領域71及び第2領域72のそれぞれに必要とされる要求を満足した上で、製造の許容幅を最大に緩和し、最適化された製造を実施することができる。
【0157】
例えば、1つの半導体チップが、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)が形成され、相対的に高い精度の製造が必要な領域と、それ以外の部分が形成され、相対的に低い精度の製造が許容される領域と、を有する場合などにおいて、上記のように異なる領域ごとに基準値を変える方法が好適に適用される。
【0158】
同様に、図12(b)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)を、一定の範囲の位置x1に関して平均した(積分した)平均信号S3を求め、その平均値に関して、領域ごとに、異なる管理値が設定される。すなわち、第1領域71においては、大きい側の第1平均最大基準値VAH1、及び、小さい側の第1平均最小基準値VAL1、が設定され、第2領域72においては、大きい側の第2平均最大基準値VAH2、及び、小さい側の第2平均最小基準値VAL2、が設定される。第2平均最大基準値VAH2及び第2平均最小基準値VAL2の少なくともいずれかは、それぞれ、第1平均最大基準値VAH1及び第1平均最小基準値VAL1とは異なる値に設定され得る。
【0159】
また、同様に、図12(c)に例示したように、電気信号(この場合は相対信号S2)のX軸方向の変化率(微分信号S4)に関する基準値として、第1領域71においては、第1微分最大基準値VDH1及び第1微分最小基準値VDL1が設定され、第2領域72においては、第2微分最大基準値VDH2及び第2微分最小基準値VDL2が設定される。第2微分最大基準値VDH2及び第2微分最小基準値VDL2の少なくともいずれかは、それぞれ、第1微分最大基準値VDH1及び第1微分最小基準値VDL1とは異なる値に設定され得る。
【0160】
このように、本実施形態においては、第1基板11における電気信号の検出結果に基づいて、第2基板の第2層の形成のための条件の設定する際に、その条件の設定は、第1パターンに含まれ、第1領域とは異なる第2領域に対して定められ、電気信号に関する最大値、最小値、平均値、及び、主面11aに平行な平面内における変化率、の少なくともいずれかに関し、第1基準値とは異なる第2基準値と、検出された電気信号の値と、の関係にさらに基づいて行われる。
このように、第1パターンに含まれる異なる領域ごとに異なる基準値を定めることで、それぞれの領域に最も適した製造を実施することができる。
【0161】
例えば、第2基準値における電気信号(例えば相対信号S2であり、以下同様)に関する最大値(第2最大基準値VH2)と最小値(第2最小基準値VL2)との差は、第1基準値における電気信号に関する最大値(第1最大基準値VH1)と最小値(第2最小基準値VL2)との差よりも小さい、第2基準値における電気信号に関する平均値の最大値(第2平均最大基準値VAH2)と最小値(第2平均最小基準値VAL2)との差は、第1基準値における電気信号に関する平均値の最大値(第1平均最大基準値VAH1)と最小値(第1平均最小基準値VAL1)との差よりも小さい、及び、第2基準値における電気信号に関する変化率の最大値(第2微分最大基準値VDH2)と最小値(第2微分最小基準値VDL2)との差は、第1基準値における電気信号に関する変化率の最大値(第1微分最大基準値VDH1)と最小値(第1微分最小基準値VDL1)との差よりも小さい、の少なくともいずれかに設定することができる。
【0162】
なお、領域ごとに定められる各種の基準値は、領域ごとの仕様に適合するように、例えば、管理すべき濃度で予め汚染させた基準ウェーハの測定値、及び、蓄積された過去のデータに基づく値などに基づいて設定することができる。
【0163】
本実施形態に係る製造方法によれば、パターン付きウェーハの金属及び有機物の汚染を非破壊で短時間で測定し、異なる領域ごとに定められた基準値を用いることで、処理条件の適正化をより高め、後続のウェーハの処理をより高い生産性で実施することができる。
【0164】
また、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、パターン付きウェーハ表面の汚染を直接的に、また、面内分布も含めて、非破壊かつ短時間で測定することにより、汚染物の除去工程前に汚染量を把握し、最適な汚染物の除去条件を適用でき、除去不足や過剰な処理による副作用が防止できる。
【0165】
また、汚染物の除去工程後に汚染物の除去の程度を確認し、必要に応じて追加処理を行うことができる。また、汚染の影響が大きい工程の前に、汚染の検出(電気信号の検出であり、例えば電気信号に含まれる汚染信号の検出)を行い、突発的な異常を検知してトラブルを防止することもできる。そして、生産性を最大化した状態で、金属及び有機物などの各種の汚染の管理を行うことで、汚染状態の変化や突発的な異常を検出して、後続工程への影響を排除し、開発時および量産時のトラブルを防止することができる。
【0166】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置の製造方法が適用される半導体装置を構成する基板、ウェーハ、各種の層、膜等、各要素の具体的な構成、並びに、製造方法に用いられる装置を構成する探針、信号検出部、ステージ等、各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0167】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体装置の製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置の製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0168】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0169】
5…ステージ、 11、11c、11d…第1基板、 11a…主面、 13…領域、 21、21c…第1層、 21a…第1領域層、 21b…第2領域層、 30…探針、 30g…間隙、 40…信号検出部、 51〜53…第1〜第3汚染物、 51d、52d、53d…第1〜第3微分汚染起因信号、 51s、52s、53s、54s…第1〜第4汚染起因信号、 61…残渣、 62…付着物、 63…汚染領域、 71…第1領域、 72…第2領域、 S1…電気信号、 S2…相対信号、 S3…平均信号、 S4…微分信号、 SR…参照信号、 SS0…基準レベル、 VAH1…第1平均最大基準値(平均最大基準値)、 VAH2…第2平均最大基準値、 VAL1…第1平均最小基準値(平均最小基準値)、 VAL2…第2平均最小基準値、 VDH1…第1微分最大基準値(微分最大基準値)、 VDH2…第2微分最大基準値、 VDL1…第1微分最小基準値(微分最小基準値)、 VDL2…第2微分最小基準値、 VH1…第1最大基準値(最大基準値)、 VH2…第2最大基準値、 VL1…第1最小基準値(最小基準値)、 VL2…第2最小基準値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の第1主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第1パターンを有する第1層を形成し、
前記第1層が形成された前記第1主面に対向して設けられた探針と、前記第1基板と、の間の相対位置を前記第1主面に平行な平面内で変化させ、前記探針に発生する電気信号を検出し、
前記電気信号に基づいて設定された条件を用いて、第2基板の第2主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第2パターンを有する第2層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記電気信号の検出は、前記電気信号の前記平面内における面内分布の検出を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記電気信号は、前記第1パターン以外のパターンで変化し、前記第1主面に存在する有機物及び無機物の少なくともいずれかを含む汚染物に起因した汚染起因信号を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記条件の設定は、前記第1パターンに含まれる第1領域に対して定められ、前記電気信号に関する最大値、最小値、平均値、及び、前記平面内における変化率、の少なくともいずれかに関する第1基準値と、前記検出された電気信号の値と、の関係に基づいて実施されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記条件の設定は、前記第1パターンに含まれ、前記第1領域とは異なる第2領域に対して定められ、前記電気信号に関する最大値、最小値、平均値、及び、前記平面内における変化率、の少なくともいずれかに関し、前記第1基準値とは異なる第2基準値と、前記検出された電気信号の値と、の関係にさらに基づいて実施されることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2基準値における前記電気信号に関する前記最大値と前記最小値との差は、前記第1基準値における前記電気信号に関する前記最大値と前記最小値との差よりも小さい、
前記第2基準値における前記電気信号に関する前記平均値の最大値と最小値との差は、前記第1基準値における前記電気信号に関する前記平均値の最大値と最小値との差よりも小さい、
及び、
前記第2基準値における前記電気信号に関する前記変化率の最大値と最小値との差は、前記第1基準値における前記電気信号に関する前記変化率の最大値と最小値との差よりも小さい、
の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記検出された電気信号の値に基づいて前記第1基板の汚染物を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
第1基板の第1主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第1パターンを有する第1層を形成し、
前記第1層が形成された前記第1主面に対向して設けられた探針と、前記第1基板と、の間の相対位置を前記第1主面に平行な平面内で変化させ、前記探針に発生する電気信号を検出し、
前記電気信号に基づいて設定された条件を用いて、第2基板の第2主面上に、導電膜及び誘電膜の少なくともいずれかを含み第2パターンを有する第2層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記電気信号の検出は、前記電気信号の前記平面内における面内分布の検出を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記電気信号は、前記第1パターン以外のパターンで変化し、前記第1主面に存在する有機物及び無機物の少なくともいずれかを含む汚染物に起因した汚染起因信号を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記条件の設定は、前記第1パターンに含まれる第1領域に対して定められ、前記電気信号に関する最大値、最小値、平均値、及び、前記平面内における変化率、の少なくともいずれかに関する第1基準値と、前記検出された電気信号の値と、の関係に基づいて実施されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記条件の設定は、前記第1パターンに含まれ、前記第1領域とは異なる第2領域に対して定められ、前記電気信号に関する最大値、最小値、平均値、及び、前記平面内における変化率、の少なくともいずれかに関し、前記第1基準値とは異なる第2基準値と、前記検出された電気信号の値と、の関係にさらに基づいて実施されることを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2基準値における前記電気信号に関する前記最大値と前記最小値との差は、前記第1基準値における前記電気信号に関する前記最大値と前記最小値との差よりも小さい、
前記第2基準値における前記電気信号に関する前記平均値の最大値と最小値との差は、前記第1基準値における前記電気信号に関する前記平均値の最大値と最小値との差よりも小さい、
及び、
前記第2基準値における前記電気信号に関する前記変化率の最大値と最小値との差は、前記第1基準値における前記電気信号に関する前記変化率の最大値と最小値との差よりも小さい、
の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記検出された電気信号の値に基づいて前記第1基板の汚染物を除去することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−3817(P2011−3817A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147309(P2009−147309)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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