半導体装置及びその製造方法
【課題】半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、半導体装置外形の小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】COF等の半導体装置10には、配線パターン2・3が形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板1に半導体チップ4が搭載されている。フレキシブル配線基板1と半導体チップ4との隙間に半導体チップ4の保護用の封止樹脂が充填されている。半導体チップ4の長辺側をノズルで描画して封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡6cの樹脂幅が0.1〜1.0mmであり、かつ描画塗布跡6cの樹脂厚みが10μm以下である。
【解決手段】COF等の半導体装置10には、配線パターン2・3が形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板1に半導体チップ4が搭載されている。フレキシブル配線基板1と半導体チップ4との隙間に半導体チップ4の保護用の封止樹脂が充填されている。半導体チップ4の長辺側をノズルで描画して封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡6cの樹脂幅が0.1〜1.0mmであり、かつ描画塗布跡6cの樹脂厚みが10μm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板上に半導体素子が搭載・接合されたCOF(Chip On Film)と呼ばれる半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ドライバを搭載するフレキシブル配線基板は、液晶ドライバの多出力化の進展に伴い、配線パターンのファインピッチ化が急速に進んでいる。また、半導体装置の軽薄短小化に伴い、半導体素子の保護樹脂部を含めた縮小化が進んでいる。
【0003】
現在、液晶ドライバICの実装には、TCP(Tape Carrier Package)よりも配線パターンのファインピッチ化が可能でありかつフレキシブルに折り曲げ位置を取ることができるCOF(Chip On Film)が主流となっている。
【0004】
上記COFの実装方法は下記の通りである。
【0005】
まず、図8(a)(b)に示すように、ポリイミドからなるフレキシブルフィルム101a上に銅からなる配線パターン102・103を形成し、図9に示すように、突起電極105を形成した半導体チップ104を接合する。
【0006】
次に、半導体チップ104の保護として、半導体チップ104とフレキシブル配線基板101との間にアンダーフィル106の封止樹脂を充填し、加熱処理にてその封止樹脂を硬化させる。
【0007】
アンダーフィル106の封止樹脂を充填するときには、図10(a)(b)に示すように、一定量の封止樹脂をノズル141から吐出して、半導体チップ104の形状に合わせて決められた描画パターンにて半導体チップ104の4側面から半導体チップ104とフレキシブル配線基板との間に注入する。封止樹脂は、半導体チップ104とフレキシブル配線基板101との間を毛細管現象により隙間無く流れ込むことにより、半導体チップ104の側面に均一なフィレット部106a・106bを形成する。その後、図8(a)に示すように、フレキシブルフィルム101aのユーザ外形109にて切断することにより、図8(b)に示すように、個々のCOF半導体装置110が完成する。
【0008】
なお、アンダーフィル106の封止樹脂を吐出する際に用いられる描画パターンは、使用する樹脂の流動性に依存している。このため、半導体チップ104とフレキシブル配線基板101との隙間にムラ無く樹脂を充填し、半導体チップ104の側面に均一なフィレット部106a・106bを形成するには、半導体チップ104の4側面から樹脂を充填するしかなかった。また、封止樹脂を描画塗布した際に残る、描画塗布跡106cの樹脂厚みは30〜50μm以上と厚く樹脂がくっきり残る問題があった。
【特許文献1】特開2003−174045号公報(2003年6月20日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、半導体装置の軽薄短小化に応えるには、半導体チップの縮小化だけなく、半導体チップの樹脂領域を含めた縮小化が必要不可欠である。
【0010】
すなわち、COF半導体装置には、フレキシブルに折り曲げ位置を取ることができるという特長がある。この点、樹脂領域は折り曲げることができない領域となってしまうので、この樹脂領域はできるだけ小さい方がよい。すなわち、樹脂封止部を無理に折り曲げると、封止樹脂にクラックを生じたり、封止樹脂とフレキシブル基材との接着面で剥がれたりする。
【0011】
しかしながら、上記従来の半導体装置及びその製造方法では、アンダーフィル106の形成に基くフィレット部106a・106b及び描画塗布跡106cの領域が大きく、この大きい樹脂領域の存在は、折り曲げ領域に全くかからない機構設計になるので、製品を折り曲げて小型化を図る上での制約になっているという問題点を有している。具体的には、図10(b)に示すように、半導体チップ104の周りのフィレット部106a・106bは、半導体チップ104から同じ幅を有して存在するものとなっている。また、図9に示すように、描画塗布跡106cの樹脂厚みが30〜50μmというように厚いので、この描画塗布跡106cも折り曲げができない部分となっていた。
【0012】
一方、配線パターン102・103のファインピッチ化が進むフレキシブル配線基板101においては、隣り合う配線パターン102・102間及び配線パターン103・103間の電気絶縁抵抗が最も信頼性に影響を与える項目となっている。したがって、図11に示すように、半導体チップ104の保護として半導体チップ104とフレキシブル配線基板101との間にアンダーフィル106の封止樹脂を充填する際に発生する巻き込み気泡151・152が、樹脂が流動して硬化するまでの間に封止樹脂外部へ抜け切らずに半導体チップ104上や突起電極105並びに配線パターン102・102間及び配線パターン103・103間にまたがって残留すると、突起電極105並びに配線パターン102・102間及び配線パターン103・103間に空隙を発生させることになる。この空隙に外部からの水分や樹脂中の残留イオン成分が進入して貯まると、この部分で容易にマイグレーションを発生させ、端子間の電気絶縁抵抗の低下を招くという問題点を有している。
【0013】
また、従来の封止樹脂では、粘度が高いために流動性が悪く、半導体チップ104の4側面を描画塗布しないと、図12に示すように、一方のフィレット部106aのみ存在し、前記フィレット部106bが存在しないというように、フィレットが不均一になる。その結果、配線パターン102・103の露出等の未充填を発生させ、品質不具合を発生させるという問題点を有している。
【0014】
なお、特許文献1では、上述した、アンダーフィルにおける空隙の発生を防止するために、25℃で粘度約1000cp(1000mPa・s)の封止樹脂を50℃に加温して粘度約250cp(250mPa・s)に下げて充填を行い、120秒放置する充填工程の後に、140〜200℃に加温したツールをフレキシブル配線基板1の表面に当てて5秒間加熱する脱泡工程を設けている。しかし、封止樹脂の充填自体は、半導体チップの4角又は外周に線引きして行っている。また、25℃における封止樹脂の粘度は1000mPa・sと高いために流動性が悪く、封止樹脂を50℃に加熱して粘度を下げる手だてをとっているが、封止樹脂は加熱時間が長くなると、硬化反応が進み樹脂粘度は上昇し流動性の低下及び樹脂のポットライフが短くなり、作業性を低下させるという問題がある。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、半導体装置外形の小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された例えばCOF等の半導体装置において、上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填されていると共に、上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の幅が0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下であることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された例えばCOF等の半導体装置の製造方法において、上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂を充填すると共に、上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下とすることを特徴としている。なお、描画塗布跡とは、塗布された封止樹脂がフレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に流動し、硬化後において封止樹脂が塗布した場所に残る樹脂をいう。
【0018】
従来では、封止樹脂の粘度が高かったので、封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の樹脂厚みは30〜50μm以上となり、この描画塗布跡は折り曲げの対象とはならなかった。
【0019】
これに対して、本発明では、半導体素子の長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下としている。
【0020】
このように、樹脂の描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下に抑えることによって、この部分での折り曲げストレスよる樹脂割れや樹脂剥離を防止することが可能となった。また、その結果、従来では折り曲げすることができなかったこの描画塗布跡が折り曲げ可能領域となり、折り曲げ不能樹脂領域を縮小することが可能となった。これにより、半導体装置の見かけの外形サイズつまりフレキシブルでない領域を従来に比べて小さくすることが可能となった。
【0021】
したがって、半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、折り曲げ領域の拡大及び半導体装置外形の小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供することが可能となった。
【0022】
また、本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置において、上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填され、上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填することにより描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部が形成されており、上記描画塗布跡の樹脂幅は、0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下であり、上記半導体素子周辺充填部の幅は、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下である一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下であることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置の製造方法において、上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂を充填し、上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填すると共に、上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる半導体素子周辺充填部の幅を、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下とする一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下とすることを特徴としている。
【0024】
従来では、封止樹脂の粘度が高かったので、半導体素子の4側面から封止樹脂を充填せざるを得なく、その結果、半導体素子周辺充填部の幅を、半導体素子から1.0mm以下とすることができなかった。
【0025】
これに対して、本発明では、半導体素子周辺充填部の幅を、半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下とする一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下としている。
【0026】
これが可能となったのは、封止樹脂について従来にない低粘度化を図り、流動性を向上させた結果、樹脂の充填方法を半導体素子の4側面の描画塗布から長辺の1辺描画塗布に変更できたためである。したがって、特に、半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下となり、半導体素子周辺充填部の幅を、大幅に低減できるようになった。
【0027】
これにより、従来では折り曲げすることができなかった折り曲げ不能樹脂領域を縮小し、半導体装置の見かけの外形サイズつまりフレキシブルでない領域を従来に比べて小さくすることが可能となった。
【0028】
上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記封止樹脂は、充填時の粘度が25℃において50〜600mPa・sであることが好ましい。
【0029】
これにより、フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間を埋めるために使用する封止樹脂について、従来にない低粘度化により流動性を上げることができる。このため、樹脂の充填方法を半導体素子の4側面の描画塗布から長辺の1辺描画塗布に変更できる。
【0030】
また、この結果、半導体素子側面に形成する半導体素子周辺充填部の幅を均一化し、かつ他方の側面側の半導体素子周辺充填部の幅を低減することができる。
【0031】
したがって、半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、折り曲げ領域の拡大及び小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【0032】
さらに、半導体素子とレキシブル配線基板との隙間に封止樹脂を充填するときに発生する巻き込み気泡は、樹脂が流動し硬化するまでの間に封止樹脂外部に抜けやすくなるので、気泡が残留することを防止できる。したがって、封止樹脂上に発生する気泡を撲滅し、半導体装置の品質を向上することができる。
【0033】
また、上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記封止樹脂は、充填時の温度が60〜120℃であることが好ましい。また、封止樹脂の温度を上げるときには、半導体素子を加熱するのが好ましい。これは、封止樹脂側の加熱方法では、封止樹脂の硬化が進み、樹脂粘度の増粘化が進むことによって、ポットライフの低下や樹脂塗布ノズルが詰まるという問題により、作業性が悪化するためである。
【0034】
この結果、樹脂の粘度をできるだけ下げて、封止樹脂の流動性を上げることができる。さらに、封止樹脂の温度を上げるときに、封止樹脂を加熱したのでは、ノズルからの液ダレが発生するおそれがあると共に、封止樹脂を充填した直後に低温に晒されることによって該樹脂の温度が下がり、粘度が増加するおそれがある。したがって、封止樹脂の温度を上げるときには、半導体素子を加熱するのが好ましい。
【0035】
なお、上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記半導体素子の保護用の封止樹脂には、0.10〜0.30重量%の着色料が添加されていることが好ましい。
【0036】
これにより、樹脂の半導体素子周辺充填部と描画塗布跡との目視検査での識別を容易にすることができ、樹脂領域管理が容易となる。
【0037】
また、上記発明の半導体装置では、前記描画塗布跡は、前記半導体素子の一つの長辺側にのみ存在することが好ましい。
【0038】
また、上記発明の半導体装置の製造方法では、前記封止樹脂を、前記半導体素子の一つの長辺側からのみノズルで描画して充填することが好ましい。
【0039】
これにより、樹脂描画塗布にかかるタクトタイムを短縮することが可能となり、樹脂塗布装置の処理能力の向上を図ることができる。
【0040】
また、上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記フレキシブル配線基板は、フイルムキャリアテープに連続的に複数形成されていると共に、前記半導体素子は、上記フレキシブル配線基板にそれぞれ搭載されているが好ましい。
【0041】
これにより、テープキャリア型の半導体装置を提供することができる。
【0042】
また、上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記フレキシブル配線基板には、液晶表示素子及び周辺部品が搭載された液晶モジュールが接続されることが好ましい。
【0043】
これにより、液晶表示素子や周辺部品が搭載された液晶モジュールの半導体装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の半導体装置及びその製造方法は、以上のように、フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填されていると共に、上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の樹脂幅が0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下である。
【0045】
それゆえ、樹脂の描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下に抑えることによって、この部分での折り曲げストレスよる樹脂割れや樹脂剥離を防止することが可能となった。また、その結果、従来では折り曲げすることができなかったこの描画塗布跡が折り曲げ可能領域となり、折り曲げ不能樹脂領域を縮小することが可能となった。これにより、半導体装置の見かけの外形サイズつまりフレキシブルでない領域を従来に比べて小さくすることが可能となった。
【0046】
したがって、半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、折り曲げ領域の拡大及び半導体装置外形の小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0047】
また、本発明の半導体装置及びその製造方法は、以上のように、フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填されていると共に、上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部のうち描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下とし、上記半導体素子周辺充填部の幅を、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下とする一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下とする。
【0048】
これが可能となったのは、封止樹脂について従来にない低粘度化を図り、流動性を向上させた結果、樹脂の充填方法を半導体素子の4側面の描画塗布から長辺の1辺描画塗布に変更できたためである。したがって、特に、半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下となり、半導体素子周辺充填部の幅を、大幅に低減できるようになった。
【0049】
それゆえ、従来では折り曲げすることができなかった折り曲げ不能樹脂領域を縮小し、
半導体装置のフレキシブルでない領域を従来に比べて小さくすることができ、半導体装置の打ち抜き外形サイズをより小さくすることが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0051】
本実施の形態の半導体装置10は、図2(a)(b)に示すように、COF(chip on film)にてなっている。すなわち、上記COFは、フレキシブルフィルムベースの構造を持ち、上記フレキシブルフィルム1a上に配線パターン2・3を形成してフレキシブル配線基板1とした後、半導体素子としての半導体チップ4を搭載した半導体装置10であり、このCOFでは、フレキシブルフィルム1a上に、直接、半導体チップ4が実装されている。
【0052】
上記配線パターン2・3は、例えば、銅(Cu)に錫(Sn)メッキされたものからなっている。ただし、これに限らず例えば銅(Cu)に金(Au)メッキしたものや、単に、銅(Cu)だけでもよい。
【0053】
上記半導体チップ4には、図1(a)に示すように、金(Au)にてなるバンプ電極5が設けられている。そして、このバンプ電極5と上記配線パターン2・3とが接続されることにより、両者が電気的に接続されるようになっている。
【0054】
また、半導体装置10は、フレキシブル配線基板1上における配線パターン2・3と半導体チップ4とを除く部分に、絶縁性材料からなるソルダーレジスト7が塗布されており、これにより、導電性異物が、直接、配線パターン2・3上に付着することによるショートを防止することができる。
【0055】
さらに、半導体装置10は、例えば、バンプ電極5とフレキシブル配線基板1上の配線パターン2・3とを接合した後、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間にできる隙間及び半導体チップ4の周辺に、樹脂からなるアンダーフィル6が充填される。これにより、半導体装置10の耐湿性及び機械的強度の向上を図ることができる。このアンダーフィル6の充填に際して、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間にできる隙間にアンダーフィル6を充填していくと、このアンダーフィル6が半導体チップ4の周辺にまで毛細管現象によって滲み出す。この半導体チップ4の周辺に滲み出したアンダーフィル6は特にフィレット部6a・6bと呼ばれる。また、図1(b)にも示すように、このアンダーフィル6の充填に際して、後述するノズル41にて樹脂を注入する領域に塗布跡が残る。この塗布跡は、描画塗布跡6cと呼ばれる。
【0056】
上述の半導体装置10は、図2(a)に示すように、フレキシブルフィルム1aにおいて、連続して複数個が設けられている。したがって、同図(a)に示すように、この絶縁フィルムにおけるユーザ外形9にて切り出すことにより、同図(b)に示すように、フレキシブル配線基板1に半導体チップ4が搭載された1個の半導体装置10となる。
【0057】
なお、フレキシブルフィルム1aには、同図(a)に示すように、両側に搬送用送り穴部であるスプロケットホール8が設けられている。したがって、このスプロケットホール8に図示しない突起物を通すことにより、フレキシブルフィルム1aを搬送することができるようになっている。これにより、流れ作業にて半導体装置10が製造されるようになっている。
【0058】
完成した半導体装置10は、本実施の形態では、例えば、図3(a)(b)に示すように、表示モジュールとしての液晶モジュール20に実装され、液晶表示パネル21を駆動するために利用される。
【0059】
すなわち、液晶モジュール20は、図3(a)(b)に示すように、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板21a及びカラーフィルタ基板21bからなる液晶表示パネル21に、半導体装置10が実装されてなっている。また、上記半導体装置10における液晶表示パネル21と反対側には、回路基板としてのPW(Printed Wiring)基板30が取り付けられている。上記半導体装置10をこれら液晶表示パネル21及びPW基板30に取り付けるときには、上記半導体装置10は、液晶表示パネル21及びPW基板30に対して異方性導電接着剤(ACF:Anisotropic Conductive Film)11を用いて接着することにより、電気的に接続される。この異方性導電接着剤11は、厚さ15〜45μmの接着性フィルムの中に、直径3〜15μmの導電粒子を分散させたものである。したがって、導電粒子がフィルム中に分散しているために、異方性導電接着剤11自体は絶縁物である。しかし、この異方性導電接着剤11を回路パターンの間に挟み、加熱・加圧することにより、上下の電極間の導通をとり、隣り合う電極間を絶縁し、上下の接着を同時に行うことができる。
【0060】
ここで、上記構成のCOFからなる半導体装置10について、本実施の形態の特徴的な製造方法及びこの製造方法によって製造される特徴的な構成について詳述する。
【0061】
まず、半導体装置10を製造するときには、図1(a)及び図2(a)(b)に示すように、ポリイミドからなるフレキシブルフィルム1a上にバリアメタル層2a・3a及び銅(Cu)膜2b・3bを形成し、この銅(Cu)からなる膜をエッチングにてパターニングする。さらに、その上に錫(Sn)メッキ2c・3cを施すことにより配線パターン2・3とする。次いで、半導体チップ搭載部や液晶表示パネル21やPW基板30と接続する端子部を除いて、配線パターン2・3の保護用としてソルダーレジスト7を印刷塗布し、乾燥硬化させて、テープキャリアフィルムを作製する。次に、このテープキャリアフィルムにバンプ電極5を形成した半導体チップ4を接合する。この接合する工程をインナーリードボンディング(ILB)という。
【0062】
次に、インナーリードボンディング後に、半導体チップ4の保護として、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間にアンダーフィル6の封止樹脂を充填し、加熱処理にてその封止樹脂を硬化させる。アンダーフィル6の封止樹脂を充填するときには、図4(a)(b)に示すように、一定量の封止樹脂をノズル41から吐出して、半導体チップ4の形状に合わせて決められた描画パターンにて半導体チップ4の長辺側から半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間に注入する。封止樹脂は、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間を毛細管現象により隙間無く流れ込むことにより、半導体チップ4の側面に均一なフィレット部6a・6bを形成する。その後、ファイナルテストを行って、COF半導体装置10の実装が完了する。
【0063】
ところで、アンダーフィル6の封止樹脂を吐出する際に用いられる描画パターンは、使用する樹脂の流動性に依存している。このため、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間にムラ無く樹脂を充填し、半導体チップ4の側面に均一なフィレット部6a・6bを形成するには、従来では、半導体チップ4の4側面から樹脂を充填するしかなかった。
【0064】
また、封止樹脂を描画塗布した際に残る、描画塗布跡6cの樹脂厚みは30〜50μm以上と厚く、樹脂が明瞭に残るという問題があった。
【0065】
そこで、本実施の形態では、まず、アンダーフィル6に使用する樹脂の充填時の粘度を低粘度の50〜600mPa・sとすることにより、流動性を向上させている。
【0066】
すなわち、表1に示すように、封止樹脂粘度を25℃において50〜600mPa・sとすることによって、封止樹脂の充填性が良好となる。なお、封止樹脂粘度が800mPa・s以上になると気泡や未充填が発生し易くなる。また、上記封止樹脂粘度50〜600mPa・sの範囲のうち、50〜200mPa・sの範囲では、ノズル41からの液ダレが発生する傾向があり、塗布装置側に液ダレ防止の機構が必要となる。この点、25℃において樹脂粘度300〜900mPa・sの範囲としておけば作業性面で扱い易く、また半導体チップ4を加熱する方法により、さらなる粘度低下が図れ、流動性を向上させることができる。このことから、本実施の形態では、総合評価としては、封止樹脂粘度が25℃において300〜600mPa・sの範囲が最も好ましい。
【0067】
【表1】
【0068】
また、本実施の形態では、ノズル41で樹脂を塗布するときに、半導体チップ4側を予備加熱(プリヒート)し、樹脂を60〜120℃程度にヒートアップさせた状態で樹脂の充填を行う。なお、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間は狭くてアンダーフィル6は少量であるので、アンダーフィル6の樹脂温度は、樹脂塗布後速やかに半導体チップ4の温度に昇温すると考えられる。
【0069】
ここで、半導体チップ4をプリヒートするのは、図5及び図6に示すように、樹脂の加熱による該樹脂の粘度低下により、樹脂の流動性が向上するためである。本実施の形態では、半導体チップ4をプリヒート温度は、流動性効果が最も高い60〜120℃の範囲を使用するのが好ましい。なお、樹脂温度を120℃よりもさらに高温にすることは、封止樹脂の急激な熱硬化の進行や増粘化により、樹脂の流動性は向上し難いという観点により好ましくない。
【0070】
ここで、本実施の形態において、樹脂温度を高くする理由として、もう一つある。すなわち、封止樹脂として一般的に使用されるエポキシ系の樹脂は、常温常圧(25℃、1気圧)においては、粘度700mPa・s以上が一般的である。したがって、常温常圧(25℃、1気圧)において充填性の良い製品を得ることは困難であることから、常温常圧(25℃、1気圧)においては粘度が高くても、温度を高めることにより粘度を低くして容易に充填性を高めることができる。
【0071】
一方、従来では、図10(a)に示すように、半導体チップ104の保護として半導体チップ104とフレキシブル配線基板101の間を半導体チップ104の形状に合わせて4側面に一定量の封止樹脂をノズル141にて吐出するしかなかった。しかし、本実施の形態では、使用する樹脂の低粘度化による流動性向上により、図4(a)に示すように、一定量の封止樹脂を半導体チップ4の長辺側1辺側のみの描画塗布へ変更する。
【0072】
この1辺描画塗布により、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間にアンダーフィル6の封止樹脂を充填するときに発生する巻き込み気泡は、樹脂が流動し硬化するまでの間において、従来の4側面での樹脂の充填に比べて、内部に発生した気泡が抜け易くなる。つまり、ノズル41で樹脂塗布をしない側面から外部に気泡が抜けるので、気泡が残留することを防止することができる。
【0073】
また、封止樹脂を半導体チップ4の長辺側1辺側のみの描画塗布へ変更したことによって、図1(b)に示すように、描画塗布跡6c幅Aは例えば0.43mmとなり、0.1〜1.0mmとすることができた。さらに、フィレット部6aの半導体チップ4からの幅Bは例えば0.92mmとなり、1.0mm以下とすることができた。また、フィレット部6bの半導体チップ4からの幅Cは例えば0.55mmとなり、0.8mm以下とすることができた。さらに、半導体チップ4の短辺側のフィレット部は、半導体チップ4から例えば0.59mmの幅となった。また、描画塗布跡6cの樹脂厚みは、3μmとなった。
【0074】
この結果、図4(b)に示す〔横方向樹脂領域(フィレット部6a・6b+描画塗布跡6c)+半導体チップ幅〕Wb1は、従来の図10(b)に示す〔横方向樹脂領域+半導体チップ幅〕Wa1よりも小さくなった。また、図4(b)に示す〔縦方向樹脂領域〕Wb2は、従来の図10(b)に示す〔縦方向樹脂領域〕Wa2よりも小さくなった。
【0075】
また、本実施の形態では、特に、封止樹脂の流動性を向上させたことにより、描画塗布跡6cの樹脂厚みを薄く仕上げている。すなわち、図7(a)(b)に示すように、従来の封止樹脂では粘度が900mPa・s以上と高いために、描画塗布跡106cの樹脂厚みは20μm厚以上と厚いものであった。しかし、本実施の形態では、樹脂粘度を25℃において50〜600mPa・sに抑える共に、樹脂の充填時に半導体チップ4を60℃〜120℃にプリヒート加熱して25℃の時よりもさらに粘度を低下させることにより、容易に描画塗布跡6cの樹脂厚みが10μm以下に薄く仕上がる。
【0076】
これにより、表2に示すように、従来の封止樹脂では描画塗布跡106cを折り曲げると樹脂クラックが発生するという問題があったが、本実施の形態では、樹脂厚みが10μm以下と極薄いものとなったので、折り曲げてもクラックが発生しない特性に変化した。これにより、従来、折り曲げストレスをかけることができなかった領域を狭めることが可能になった。
【0077】
【表2】
【0078】
ところで、従来では、描画塗布跡106cにて折り曲げることができなかったために、この描画塗布跡106cの封止樹脂領域の視認性を上げる必要性があった。このため、従来では、封止樹脂内に添加する着色料(染料)として、表3の従来例に示すように、0.3〜0.5重量%の範囲で添加して色目を濃くして描画塗布跡106cを明瞭にする必要があった。すなわち、表3に示すように、従来の樹脂における着色剤の配合比は、例えば0.5重量%であった。
【0079】
【表3】
【0080】
これに対して、本実施の形態では、描画塗布跡6cの厚みが小さいので、描画塗布跡6cでも折り曲げが可能となった。しかし、樹脂厚みが30μm以上の厚いフィレット部6a・6bと、樹脂厚みが10μm以下の薄い描画塗布跡6cとについての差異を明確にするために視認性を上げる必要がある。
【0081】
そこで、本実施の形態では、表3に示すように、樹脂における着色剤の配合比として、例えば0.15重量%として、従来に比べて色目を淡くしている。
【0082】
この添加量は、表4に示すように、封止樹脂内に添加する着色料(染料)を0.1〜0.3重量%の範囲とすることが、実験により、フィレット部6a・6bと描画塗布跡6cとの境界の視認性を向上し得ることが確認できたためである。なお、着色料(染料)の添加量は、表4に示すように、0.15〜0.20重量%の範囲とすることがより好ましい。
【0083】
【表4】
【0084】
なお、本実施の形態では、表3に示すように、その他の添加剤の量が、従来例の0.2重量%に比べて、3.1重量%と多くなっている。この理由は、本実施の形態では、封止樹脂の粘度増加抑制策として、封止樹脂の熱硬化反応開始剤の働きをする硬化促進剤に、粘度増加抑制効果のあるものを用いているためである。なお、硬化促進剤の粘度増加抑制手法としては、硬化促進剤の成分をカプセルにしみ込ませて低温反応性を抑制化するタイプや、硬化促進剤の分子構造の調整により低温時において反応を抑えたタイプを用いることが好ましい。
【0085】
このように、本実施の形態の半導体装置10及びその製造方法では、COFに使用する封止樹脂材料について、従来にない低粘度化により流動性を向上させる。これにより、以下のことが可能となる。
【0086】
すなわち、樹脂の充填方法を、従来の半導体チップ4の4側面の描画塗布から、長辺の1辺描画塗布に変更ができる。この結果、樹脂塗布側についてはフィレット部6aを従来の1.5mmから1.0mm以下に抑えることができると共に、樹脂塗布をしない側についてはフィレット部6bを0.8mm以下に抑えることができる。
【0087】
また、樹脂の描画塗布を4側面の描画塗布から1側面の描画塗布にすることによって、樹脂描画塗布にかかるタクトタイムを短縮することが可能となり、その結果、樹脂塗布装置の処理能力のアップが可能となる。
【0088】
また、樹脂の充填方法を半導体チップ4の4側面の描画塗布から長辺の1辺描画塗布に変更することによって、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間にアンダーフィル6の封止樹脂を充填するときに発生する巻き込み気泡は、樹脂が流動し硬化するまでの間に封止樹脂外部に抜け易くなる。この結果、気泡が残留することを防止でき、チップ上に発生する気泡を撲滅することが可能となる。
【0089】
また、樹脂の描画塗布跡6cの樹脂厚みを10μm以下に抑えることによって、この部分での折り曲げストレスよる樹脂割れや樹脂剥離を防止することが可能となる。この結果、従来では折り曲げることができなかった描画塗布跡6cも折り曲げ可能領域となり、折り曲げ不可能な樹脂領域を縮小することが可能となる。また、これにより、半導体装置10の外形サイズは従来に比べてより小さくすることが可能となる。
【0090】
また、半導体チップ4の封止樹脂に添加する着色剤の適正化によって、フィレット部6a・6bと描画塗布跡6cとの視認性が向上し、樹脂領域管理が容易となる。
【実施例】
【0091】
前記の半導体装置10を製造するために、封止樹脂として、表3に示すように、着色材を0.15重量%を含有させ、かつ25℃において粘度400mPa・sのものを用いて、図4(a)に示すように、半導体チップ4の1辺側からノズル41にて一定量の塗布を行った。なお、樹脂を塗布するときには、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間にアンダーフィル6の樹脂の流動性を良くするために、半導体チップ4をヒータにて90℃に予備加熱(プリヒート)を行ったところに樹脂を塗布した。
【0092】
次に、フィレット部6a・6b及び描画塗布跡6cの形状を安定化させ、樹脂を硬化させるべく、熱風循環炉又は遠赤外ヒータにて所定の温度に昇温させた硬化炉に、樹脂が硬化する所定時間滞留させて、硬化を完了させた。
【0093】
この製造方法により製造した半導体装置10の仕上がり寸法値は、図1(b)に示すように、描画塗布跡6c幅Aは0.43mm、フィレット部6aの半導体チップ4からの幅Bは0.92mm、フィレット部6bの半導体チップ4からの幅Cは0.55mm、半導体チップ4の短辺側のフィレット部は、半導体チップ4から0.59mmの幅となった。また、描画塗布跡6cの樹脂厚みは、3μm厚であった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、COF(Chip On Film) と呼ばれる、フレキシブルフィルム上に形成された配線パターンと、少なくとも1つ実装された半導体素子に形成された、外部回路との接続のための電極とを接続してなるテープキャリアパッケージタイプの半導体装置及びその製造方法に適用できる。このCOFの用途として、半導体素子としての液晶ドライバICがフレキシブル配線基板上に搭載された液晶ドライバがある。
【0095】
また、その他、表示用モジュールとしては、アクティブマトリクス型等の上述の液晶表示モジュールの他、電気泳動型ディスプレイ、ツイストボール型ディスプレイ、微細なプリズムフィルムを用いた反射型ディスプレイ、デジタルミラーデバイス等の光変調素子を用いたディスプレイに利用できる。さらに、発光素子として、有機EL発光素子、無機EL発光素子、LED(Light Emitting Diode) 等の発光輝度が可変の素子を用いたディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)は本発明における半導体装置の実施の一形態を示すものであって図2(b)のX−X線断面図であり、(b)は上記半導体装置の封止樹脂におけるフィレット部及び描画塗布跡の樹脂の平面図である。
【図2】(a)はフレキシブルフィルムに連続して複数形成された半導体装置を示す平面図であり、(b)は上記フレキシブルフィルムから切り出された単独の半導体装置を示す平面図である。
【図3】(a)は上記半導体装置に液晶表示パネルとPW基板とが接続された液晶モジュールを示す平面図であり、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
【図4】(a)は上記半導体装置の製造工程において、封止樹脂を充填する方法を示す平面図であり、(b)は充填された封止樹脂のフィレット部及び描画塗布跡を示す平面図である。
【図5】上記封止樹脂の加熱温度(プリヒート)と流れ性との関係を示すグラフである。
【図6】上記封止樹脂の加熱温度(プリヒート)と樹脂粘度との関係を示すグラフである。
【図7】(a)は上記封止樹脂の樹脂粘度と描画塗布跡の樹脂厚みとの関係を示すグラフであり、(b)は描画塗布跡を示す断面図である。
【図8】(a)は従来のフレキシブルフィルムに連続して複数形成された半導体装置を示す平面図であり、(b)は上記フレキシブルフィルムから切り出された単独の半導体装置を示す平面図である。
【図9】図8(b)のX−X線断面図である。
【図10】(a)は上記半導体装置の製造工程において、封止樹脂を充填する方法を示す平面図であり、(b)は充填された封止樹脂のフィレット部及び描画塗布跡を示す平面図である。
【図11】充填された封止樹脂に気泡が発生している半導体装置を示す断面図である。
【図12】充填された封止樹脂において、一方のフィレット部が内部配線パターンが露出した欠損している半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 フレキシブル配線基板
2 配線パターン
3 配線パターン
4 半導体チップ(半導体素子)
5 バンプ電極)
6 フィレット部
6a フィレット部
6b フィレット部
6c 描画塗布跡
8 スプロケットホール
10 半導体装置
11 異方性導電接着剤
20 液晶モジュール
21 液晶表示パネル
21a TFT基板
21b カラーフィルタ基板
30 PW基板(回路基板)
41 ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板上に半導体素子が搭載・接合されたCOF(Chip On Film)と呼ばれる半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ドライバを搭載するフレキシブル配線基板は、液晶ドライバの多出力化の進展に伴い、配線パターンのファインピッチ化が急速に進んでいる。また、半導体装置の軽薄短小化に伴い、半導体素子の保護樹脂部を含めた縮小化が進んでいる。
【0003】
現在、液晶ドライバICの実装には、TCP(Tape Carrier Package)よりも配線パターンのファインピッチ化が可能でありかつフレキシブルに折り曲げ位置を取ることができるCOF(Chip On Film)が主流となっている。
【0004】
上記COFの実装方法は下記の通りである。
【0005】
まず、図8(a)(b)に示すように、ポリイミドからなるフレキシブルフィルム101a上に銅からなる配線パターン102・103を形成し、図9に示すように、突起電極105を形成した半導体チップ104を接合する。
【0006】
次に、半導体チップ104の保護として、半導体チップ104とフレキシブル配線基板101との間にアンダーフィル106の封止樹脂を充填し、加熱処理にてその封止樹脂を硬化させる。
【0007】
アンダーフィル106の封止樹脂を充填するときには、図10(a)(b)に示すように、一定量の封止樹脂をノズル141から吐出して、半導体チップ104の形状に合わせて決められた描画パターンにて半導体チップ104の4側面から半導体チップ104とフレキシブル配線基板との間に注入する。封止樹脂は、半導体チップ104とフレキシブル配線基板101との間を毛細管現象により隙間無く流れ込むことにより、半導体チップ104の側面に均一なフィレット部106a・106bを形成する。その後、図8(a)に示すように、フレキシブルフィルム101aのユーザ外形109にて切断することにより、図8(b)に示すように、個々のCOF半導体装置110が完成する。
【0008】
なお、アンダーフィル106の封止樹脂を吐出する際に用いられる描画パターンは、使用する樹脂の流動性に依存している。このため、半導体チップ104とフレキシブル配線基板101との隙間にムラ無く樹脂を充填し、半導体チップ104の側面に均一なフィレット部106a・106bを形成するには、半導体チップ104の4側面から樹脂を充填するしかなかった。また、封止樹脂を描画塗布した際に残る、描画塗布跡106cの樹脂厚みは30〜50μm以上と厚く樹脂がくっきり残る問題があった。
【特許文献1】特開2003−174045号公報(2003年6月20日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、半導体装置の軽薄短小化に応えるには、半導体チップの縮小化だけなく、半導体チップの樹脂領域を含めた縮小化が必要不可欠である。
【0010】
すなわち、COF半導体装置には、フレキシブルに折り曲げ位置を取ることができるという特長がある。この点、樹脂領域は折り曲げることができない領域となってしまうので、この樹脂領域はできるだけ小さい方がよい。すなわち、樹脂封止部を無理に折り曲げると、封止樹脂にクラックを生じたり、封止樹脂とフレキシブル基材との接着面で剥がれたりする。
【0011】
しかしながら、上記従来の半導体装置及びその製造方法では、アンダーフィル106の形成に基くフィレット部106a・106b及び描画塗布跡106cの領域が大きく、この大きい樹脂領域の存在は、折り曲げ領域に全くかからない機構設計になるので、製品を折り曲げて小型化を図る上での制約になっているという問題点を有している。具体的には、図10(b)に示すように、半導体チップ104の周りのフィレット部106a・106bは、半導体チップ104から同じ幅を有して存在するものとなっている。また、図9に示すように、描画塗布跡106cの樹脂厚みが30〜50μmというように厚いので、この描画塗布跡106cも折り曲げができない部分となっていた。
【0012】
一方、配線パターン102・103のファインピッチ化が進むフレキシブル配線基板101においては、隣り合う配線パターン102・102間及び配線パターン103・103間の電気絶縁抵抗が最も信頼性に影響を与える項目となっている。したがって、図11に示すように、半導体チップ104の保護として半導体チップ104とフレキシブル配線基板101との間にアンダーフィル106の封止樹脂を充填する際に発生する巻き込み気泡151・152が、樹脂が流動して硬化するまでの間に封止樹脂外部へ抜け切らずに半導体チップ104上や突起電極105並びに配線パターン102・102間及び配線パターン103・103間にまたがって残留すると、突起電極105並びに配線パターン102・102間及び配線パターン103・103間に空隙を発生させることになる。この空隙に外部からの水分や樹脂中の残留イオン成分が進入して貯まると、この部分で容易にマイグレーションを発生させ、端子間の電気絶縁抵抗の低下を招くという問題点を有している。
【0013】
また、従来の封止樹脂では、粘度が高いために流動性が悪く、半導体チップ104の4側面を描画塗布しないと、図12に示すように、一方のフィレット部106aのみ存在し、前記フィレット部106bが存在しないというように、フィレットが不均一になる。その結果、配線パターン102・103の露出等の未充填を発生させ、品質不具合を発生させるという問題点を有している。
【0014】
なお、特許文献1では、上述した、アンダーフィルにおける空隙の発生を防止するために、25℃で粘度約1000cp(1000mPa・s)の封止樹脂を50℃に加温して粘度約250cp(250mPa・s)に下げて充填を行い、120秒放置する充填工程の後に、140〜200℃に加温したツールをフレキシブル配線基板1の表面に当てて5秒間加熱する脱泡工程を設けている。しかし、封止樹脂の充填自体は、半導体チップの4角又は外周に線引きして行っている。また、25℃における封止樹脂の粘度は1000mPa・sと高いために流動性が悪く、封止樹脂を50℃に加熱して粘度を下げる手だてをとっているが、封止樹脂は加熱時間が長くなると、硬化反応が進み樹脂粘度は上昇し流動性の低下及び樹脂のポットライフが短くなり、作業性を低下させるという問題がある。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、半導体装置外形の小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された例えばCOF等の半導体装置において、上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填されていると共に、上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の幅が0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下であることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された例えばCOF等の半導体装置の製造方法において、上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂を充填すると共に、上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下とすることを特徴としている。なお、描画塗布跡とは、塗布された封止樹脂がフレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に流動し、硬化後において封止樹脂が塗布した場所に残る樹脂をいう。
【0018】
従来では、封止樹脂の粘度が高かったので、封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の樹脂厚みは30〜50μm以上となり、この描画塗布跡は折り曲げの対象とはならなかった。
【0019】
これに対して、本発明では、半導体素子の長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下としている。
【0020】
このように、樹脂の描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下に抑えることによって、この部分での折り曲げストレスよる樹脂割れや樹脂剥離を防止することが可能となった。また、その結果、従来では折り曲げすることができなかったこの描画塗布跡が折り曲げ可能領域となり、折り曲げ不能樹脂領域を縮小することが可能となった。これにより、半導体装置の見かけの外形サイズつまりフレキシブルでない領域を従来に比べて小さくすることが可能となった。
【0021】
したがって、半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、折り曲げ領域の拡大及び半導体装置外形の小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供することが可能となった。
【0022】
また、本発明の半導体装置は、上記課題を解決するために、配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置において、上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填され、上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填することにより描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部が形成されており、上記描画塗布跡の樹脂幅は、0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下であり、上記半導体素子周辺充填部の幅は、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下である一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下であることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、上記課題を解決するために、配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置の製造方法において、上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂を充填し、上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填すると共に、上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる半導体素子周辺充填部の幅を、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下とする一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下とすることを特徴としている。
【0024】
従来では、封止樹脂の粘度が高かったので、半導体素子の4側面から封止樹脂を充填せざるを得なく、その結果、半導体素子周辺充填部の幅を、半導体素子から1.0mm以下とすることができなかった。
【0025】
これに対して、本発明では、半導体素子周辺充填部の幅を、半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下とする一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下としている。
【0026】
これが可能となったのは、封止樹脂について従来にない低粘度化を図り、流動性を向上させた結果、樹脂の充填方法を半導体素子の4側面の描画塗布から長辺の1辺描画塗布に変更できたためである。したがって、特に、半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下となり、半導体素子周辺充填部の幅を、大幅に低減できるようになった。
【0027】
これにより、従来では折り曲げすることができなかった折り曲げ不能樹脂領域を縮小し、半導体装置の見かけの外形サイズつまりフレキシブルでない領域を従来に比べて小さくすることが可能となった。
【0028】
上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記封止樹脂は、充填時の粘度が25℃において50〜600mPa・sであることが好ましい。
【0029】
これにより、フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間を埋めるために使用する封止樹脂について、従来にない低粘度化により流動性を上げることができる。このため、樹脂の充填方法を半導体素子の4側面の描画塗布から長辺の1辺描画塗布に変更できる。
【0030】
また、この結果、半導体素子側面に形成する半導体素子周辺充填部の幅を均一化し、かつ他方の側面側の半導体素子周辺充填部の幅を低減することができる。
【0031】
したがって、半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、折り曲げ領域の拡大及び小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【0032】
さらに、半導体素子とレキシブル配線基板との隙間に封止樹脂を充填するときに発生する巻き込み気泡は、樹脂が流動し硬化するまでの間に封止樹脂外部に抜けやすくなるので、気泡が残留することを防止できる。したがって、封止樹脂上に発生する気泡を撲滅し、半導体装置の品質を向上することができる。
【0033】
また、上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記封止樹脂は、充填時の温度が60〜120℃であることが好ましい。また、封止樹脂の温度を上げるときには、半導体素子を加熱するのが好ましい。これは、封止樹脂側の加熱方法では、封止樹脂の硬化が進み、樹脂粘度の増粘化が進むことによって、ポットライフの低下や樹脂塗布ノズルが詰まるという問題により、作業性が悪化するためである。
【0034】
この結果、樹脂の粘度をできるだけ下げて、封止樹脂の流動性を上げることができる。さらに、封止樹脂の温度を上げるときに、封止樹脂を加熱したのでは、ノズルからの液ダレが発生するおそれがあると共に、封止樹脂を充填した直後に低温に晒されることによって該樹脂の温度が下がり、粘度が増加するおそれがある。したがって、封止樹脂の温度を上げるときには、半導体素子を加熱するのが好ましい。
【0035】
なお、上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記半導体素子の保護用の封止樹脂には、0.10〜0.30重量%の着色料が添加されていることが好ましい。
【0036】
これにより、樹脂の半導体素子周辺充填部と描画塗布跡との目視検査での識別を容易にすることができ、樹脂領域管理が容易となる。
【0037】
また、上記発明の半導体装置では、前記描画塗布跡は、前記半導体素子の一つの長辺側にのみ存在することが好ましい。
【0038】
また、上記発明の半導体装置の製造方法では、前記封止樹脂を、前記半導体素子の一つの長辺側からのみノズルで描画して充填することが好ましい。
【0039】
これにより、樹脂描画塗布にかかるタクトタイムを短縮することが可能となり、樹脂塗布装置の処理能力の向上を図ることができる。
【0040】
また、上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記フレキシブル配線基板は、フイルムキャリアテープに連続的に複数形成されていると共に、前記半導体素子は、上記フレキシブル配線基板にそれぞれ搭載されているが好ましい。
【0041】
これにより、テープキャリア型の半導体装置を提供することができる。
【0042】
また、上記発明の半導体装置及びその製造方法では、前記フレキシブル配線基板には、液晶表示素子及び周辺部品が搭載された液晶モジュールが接続されることが好ましい。
【0043】
これにより、液晶表示素子や周辺部品が搭載された液晶モジュールの半導体装置に適用することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の半導体装置及びその製造方法は、以上のように、フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填されていると共に、上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡の樹脂幅が0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下である。
【0045】
それゆえ、樹脂の描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下に抑えることによって、この部分での折り曲げストレスよる樹脂割れや樹脂剥離を防止することが可能となった。また、その結果、従来では折り曲げすることができなかったこの描画塗布跡が折り曲げ可能領域となり、折り曲げ不能樹脂領域を縮小することが可能となった。これにより、半導体装置の見かけの外形サイズつまりフレキシブルでない領域を従来に比べて小さくすることが可能となった。
【0046】
したがって、半導体素子の保護に用いる封止樹脂領域幅を低減し、折り曲げ領域の拡大及び半導体装置外形の小型化を図り得る半導体装置及びその製造方法を提供することができるという効果を奏する。
【0047】
また、本発明の半導体装置及びその製造方法は、以上のように、フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填されていると共に、上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部のうち描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下とし、上記半導体素子周辺充填部の幅を、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下とする一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下とする。
【0048】
これが可能となったのは、封止樹脂について従来にない低粘度化を図り、流動性を向上させた結果、樹脂の充填方法を半導体素子の4側面の描画塗布から長辺の1辺描画塗布に変更できたためである。したがって、特に、半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下となり、半導体素子周辺充填部の幅を、大幅に低減できるようになった。
【0049】
それゆえ、従来では折り曲げすることができなかった折り曲げ不能樹脂領域を縮小し、
半導体装置のフレキシブルでない領域を従来に比べて小さくすることができ、半導体装置の打ち抜き外形サイズをより小さくすることが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明の一実施形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0051】
本実施の形態の半導体装置10は、図2(a)(b)に示すように、COF(chip on film)にてなっている。すなわち、上記COFは、フレキシブルフィルムベースの構造を持ち、上記フレキシブルフィルム1a上に配線パターン2・3を形成してフレキシブル配線基板1とした後、半導体素子としての半導体チップ4を搭載した半導体装置10であり、このCOFでは、フレキシブルフィルム1a上に、直接、半導体チップ4が実装されている。
【0052】
上記配線パターン2・3は、例えば、銅(Cu)に錫(Sn)メッキされたものからなっている。ただし、これに限らず例えば銅(Cu)に金(Au)メッキしたものや、単に、銅(Cu)だけでもよい。
【0053】
上記半導体チップ4には、図1(a)に示すように、金(Au)にてなるバンプ電極5が設けられている。そして、このバンプ電極5と上記配線パターン2・3とが接続されることにより、両者が電気的に接続されるようになっている。
【0054】
また、半導体装置10は、フレキシブル配線基板1上における配線パターン2・3と半導体チップ4とを除く部分に、絶縁性材料からなるソルダーレジスト7が塗布されており、これにより、導電性異物が、直接、配線パターン2・3上に付着することによるショートを防止することができる。
【0055】
さらに、半導体装置10は、例えば、バンプ電極5とフレキシブル配線基板1上の配線パターン2・3とを接合した後、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間にできる隙間及び半導体チップ4の周辺に、樹脂からなるアンダーフィル6が充填される。これにより、半導体装置10の耐湿性及び機械的強度の向上を図ることができる。このアンダーフィル6の充填に際して、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間にできる隙間にアンダーフィル6を充填していくと、このアンダーフィル6が半導体チップ4の周辺にまで毛細管現象によって滲み出す。この半導体チップ4の周辺に滲み出したアンダーフィル6は特にフィレット部6a・6bと呼ばれる。また、図1(b)にも示すように、このアンダーフィル6の充填に際して、後述するノズル41にて樹脂を注入する領域に塗布跡が残る。この塗布跡は、描画塗布跡6cと呼ばれる。
【0056】
上述の半導体装置10は、図2(a)に示すように、フレキシブルフィルム1aにおいて、連続して複数個が設けられている。したがって、同図(a)に示すように、この絶縁フィルムにおけるユーザ外形9にて切り出すことにより、同図(b)に示すように、フレキシブル配線基板1に半導体チップ4が搭載された1個の半導体装置10となる。
【0057】
なお、フレキシブルフィルム1aには、同図(a)に示すように、両側に搬送用送り穴部であるスプロケットホール8が設けられている。したがって、このスプロケットホール8に図示しない突起物を通すことにより、フレキシブルフィルム1aを搬送することができるようになっている。これにより、流れ作業にて半導体装置10が製造されるようになっている。
【0058】
完成した半導体装置10は、本実施の形態では、例えば、図3(a)(b)に示すように、表示モジュールとしての液晶モジュール20に実装され、液晶表示パネル21を駆動するために利用される。
【0059】
すなわち、液晶モジュール20は、図3(a)(b)に示すように、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板21a及びカラーフィルタ基板21bからなる液晶表示パネル21に、半導体装置10が実装されてなっている。また、上記半導体装置10における液晶表示パネル21と反対側には、回路基板としてのPW(Printed Wiring)基板30が取り付けられている。上記半導体装置10をこれら液晶表示パネル21及びPW基板30に取り付けるときには、上記半導体装置10は、液晶表示パネル21及びPW基板30に対して異方性導電接着剤(ACF:Anisotropic Conductive Film)11を用いて接着することにより、電気的に接続される。この異方性導電接着剤11は、厚さ15〜45μmの接着性フィルムの中に、直径3〜15μmの導電粒子を分散させたものである。したがって、導電粒子がフィルム中に分散しているために、異方性導電接着剤11自体は絶縁物である。しかし、この異方性導電接着剤11を回路パターンの間に挟み、加熱・加圧することにより、上下の電極間の導通をとり、隣り合う電極間を絶縁し、上下の接着を同時に行うことができる。
【0060】
ここで、上記構成のCOFからなる半導体装置10について、本実施の形態の特徴的な製造方法及びこの製造方法によって製造される特徴的な構成について詳述する。
【0061】
まず、半導体装置10を製造するときには、図1(a)及び図2(a)(b)に示すように、ポリイミドからなるフレキシブルフィルム1a上にバリアメタル層2a・3a及び銅(Cu)膜2b・3bを形成し、この銅(Cu)からなる膜をエッチングにてパターニングする。さらに、その上に錫(Sn)メッキ2c・3cを施すことにより配線パターン2・3とする。次いで、半導体チップ搭載部や液晶表示パネル21やPW基板30と接続する端子部を除いて、配線パターン2・3の保護用としてソルダーレジスト7を印刷塗布し、乾燥硬化させて、テープキャリアフィルムを作製する。次に、このテープキャリアフィルムにバンプ電極5を形成した半導体チップ4を接合する。この接合する工程をインナーリードボンディング(ILB)という。
【0062】
次に、インナーリードボンディング後に、半導体チップ4の保護として、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間にアンダーフィル6の封止樹脂を充填し、加熱処理にてその封止樹脂を硬化させる。アンダーフィル6の封止樹脂を充填するときには、図4(a)(b)に示すように、一定量の封止樹脂をノズル41から吐出して、半導体チップ4の形状に合わせて決められた描画パターンにて半導体チップ4の長辺側から半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間に注入する。封止樹脂は、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との間を毛細管現象により隙間無く流れ込むことにより、半導体チップ4の側面に均一なフィレット部6a・6bを形成する。その後、ファイナルテストを行って、COF半導体装置10の実装が完了する。
【0063】
ところで、アンダーフィル6の封止樹脂を吐出する際に用いられる描画パターンは、使用する樹脂の流動性に依存している。このため、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間にムラ無く樹脂を充填し、半導体チップ4の側面に均一なフィレット部6a・6bを形成するには、従来では、半導体チップ4の4側面から樹脂を充填するしかなかった。
【0064】
また、封止樹脂を描画塗布した際に残る、描画塗布跡6cの樹脂厚みは30〜50μm以上と厚く、樹脂が明瞭に残るという問題があった。
【0065】
そこで、本実施の形態では、まず、アンダーフィル6に使用する樹脂の充填時の粘度を低粘度の50〜600mPa・sとすることにより、流動性を向上させている。
【0066】
すなわち、表1に示すように、封止樹脂粘度を25℃において50〜600mPa・sとすることによって、封止樹脂の充填性が良好となる。なお、封止樹脂粘度が800mPa・s以上になると気泡や未充填が発生し易くなる。また、上記封止樹脂粘度50〜600mPa・sの範囲のうち、50〜200mPa・sの範囲では、ノズル41からの液ダレが発生する傾向があり、塗布装置側に液ダレ防止の機構が必要となる。この点、25℃において樹脂粘度300〜900mPa・sの範囲としておけば作業性面で扱い易く、また半導体チップ4を加熱する方法により、さらなる粘度低下が図れ、流動性を向上させることができる。このことから、本実施の形態では、総合評価としては、封止樹脂粘度が25℃において300〜600mPa・sの範囲が最も好ましい。
【0067】
【表1】
【0068】
また、本実施の形態では、ノズル41で樹脂を塗布するときに、半導体チップ4側を予備加熱(プリヒート)し、樹脂を60〜120℃程度にヒートアップさせた状態で樹脂の充填を行う。なお、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間は狭くてアンダーフィル6は少量であるので、アンダーフィル6の樹脂温度は、樹脂塗布後速やかに半導体チップ4の温度に昇温すると考えられる。
【0069】
ここで、半導体チップ4をプリヒートするのは、図5及び図6に示すように、樹脂の加熱による該樹脂の粘度低下により、樹脂の流動性が向上するためである。本実施の形態では、半導体チップ4をプリヒート温度は、流動性効果が最も高い60〜120℃の範囲を使用するのが好ましい。なお、樹脂温度を120℃よりもさらに高温にすることは、封止樹脂の急激な熱硬化の進行や増粘化により、樹脂の流動性は向上し難いという観点により好ましくない。
【0070】
ここで、本実施の形態において、樹脂温度を高くする理由として、もう一つある。すなわち、封止樹脂として一般的に使用されるエポキシ系の樹脂は、常温常圧(25℃、1気圧)においては、粘度700mPa・s以上が一般的である。したがって、常温常圧(25℃、1気圧)において充填性の良い製品を得ることは困難であることから、常温常圧(25℃、1気圧)においては粘度が高くても、温度を高めることにより粘度を低くして容易に充填性を高めることができる。
【0071】
一方、従来では、図10(a)に示すように、半導体チップ104の保護として半導体チップ104とフレキシブル配線基板101の間を半導体チップ104の形状に合わせて4側面に一定量の封止樹脂をノズル141にて吐出するしかなかった。しかし、本実施の形態では、使用する樹脂の低粘度化による流動性向上により、図4(a)に示すように、一定量の封止樹脂を半導体チップ4の長辺側1辺側のみの描画塗布へ変更する。
【0072】
この1辺描画塗布により、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間にアンダーフィル6の封止樹脂を充填するときに発生する巻き込み気泡は、樹脂が流動し硬化するまでの間において、従来の4側面での樹脂の充填に比べて、内部に発生した気泡が抜け易くなる。つまり、ノズル41で樹脂塗布をしない側面から外部に気泡が抜けるので、気泡が残留することを防止することができる。
【0073】
また、封止樹脂を半導体チップ4の長辺側1辺側のみの描画塗布へ変更したことによって、図1(b)に示すように、描画塗布跡6c幅Aは例えば0.43mmとなり、0.1〜1.0mmとすることができた。さらに、フィレット部6aの半導体チップ4からの幅Bは例えば0.92mmとなり、1.0mm以下とすることができた。また、フィレット部6bの半導体チップ4からの幅Cは例えば0.55mmとなり、0.8mm以下とすることができた。さらに、半導体チップ4の短辺側のフィレット部は、半導体チップ4から例えば0.59mmの幅となった。また、描画塗布跡6cの樹脂厚みは、3μmとなった。
【0074】
この結果、図4(b)に示す〔横方向樹脂領域(フィレット部6a・6b+描画塗布跡6c)+半導体チップ幅〕Wb1は、従来の図10(b)に示す〔横方向樹脂領域+半導体チップ幅〕Wa1よりも小さくなった。また、図4(b)に示す〔縦方向樹脂領域〕Wb2は、従来の図10(b)に示す〔縦方向樹脂領域〕Wa2よりも小さくなった。
【0075】
また、本実施の形態では、特に、封止樹脂の流動性を向上させたことにより、描画塗布跡6cの樹脂厚みを薄く仕上げている。すなわち、図7(a)(b)に示すように、従来の封止樹脂では粘度が900mPa・s以上と高いために、描画塗布跡106cの樹脂厚みは20μm厚以上と厚いものであった。しかし、本実施の形態では、樹脂粘度を25℃において50〜600mPa・sに抑える共に、樹脂の充填時に半導体チップ4を60℃〜120℃にプリヒート加熱して25℃の時よりもさらに粘度を低下させることにより、容易に描画塗布跡6cの樹脂厚みが10μm以下に薄く仕上がる。
【0076】
これにより、表2に示すように、従来の封止樹脂では描画塗布跡106cを折り曲げると樹脂クラックが発生するという問題があったが、本実施の形態では、樹脂厚みが10μm以下と極薄いものとなったので、折り曲げてもクラックが発生しない特性に変化した。これにより、従来、折り曲げストレスをかけることができなかった領域を狭めることが可能になった。
【0077】
【表2】
【0078】
ところで、従来では、描画塗布跡106cにて折り曲げることができなかったために、この描画塗布跡106cの封止樹脂領域の視認性を上げる必要性があった。このため、従来では、封止樹脂内に添加する着色料(染料)として、表3の従来例に示すように、0.3〜0.5重量%の範囲で添加して色目を濃くして描画塗布跡106cを明瞭にする必要があった。すなわち、表3に示すように、従来の樹脂における着色剤の配合比は、例えば0.5重量%であった。
【0079】
【表3】
【0080】
これに対して、本実施の形態では、描画塗布跡6cの厚みが小さいので、描画塗布跡6cでも折り曲げが可能となった。しかし、樹脂厚みが30μm以上の厚いフィレット部6a・6bと、樹脂厚みが10μm以下の薄い描画塗布跡6cとについての差異を明確にするために視認性を上げる必要がある。
【0081】
そこで、本実施の形態では、表3に示すように、樹脂における着色剤の配合比として、例えば0.15重量%として、従来に比べて色目を淡くしている。
【0082】
この添加量は、表4に示すように、封止樹脂内に添加する着色料(染料)を0.1〜0.3重量%の範囲とすることが、実験により、フィレット部6a・6bと描画塗布跡6cとの境界の視認性を向上し得ることが確認できたためである。なお、着色料(染料)の添加量は、表4に示すように、0.15〜0.20重量%の範囲とすることがより好ましい。
【0083】
【表4】
【0084】
なお、本実施の形態では、表3に示すように、その他の添加剤の量が、従来例の0.2重量%に比べて、3.1重量%と多くなっている。この理由は、本実施の形態では、封止樹脂の粘度増加抑制策として、封止樹脂の熱硬化反応開始剤の働きをする硬化促進剤に、粘度増加抑制効果のあるものを用いているためである。なお、硬化促進剤の粘度増加抑制手法としては、硬化促進剤の成分をカプセルにしみ込ませて低温反応性を抑制化するタイプや、硬化促進剤の分子構造の調整により低温時において反応を抑えたタイプを用いることが好ましい。
【0085】
このように、本実施の形態の半導体装置10及びその製造方法では、COFに使用する封止樹脂材料について、従来にない低粘度化により流動性を向上させる。これにより、以下のことが可能となる。
【0086】
すなわち、樹脂の充填方法を、従来の半導体チップ4の4側面の描画塗布から、長辺の1辺描画塗布に変更ができる。この結果、樹脂塗布側についてはフィレット部6aを従来の1.5mmから1.0mm以下に抑えることができると共に、樹脂塗布をしない側についてはフィレット部6bを0.8mm以下に抑えることができる。
【0087】
また、樹脂の描画塗布を4側面の描画塗布から1側面の描画塗布にすることによって、樹脂描画塗布にかかるタクトタイムを短縮することが可能となり、その結果、樹脂塗布装置の処理能力のアップが可能となる。
【0088】
また、樹脂の充填方法を半導体チップ4の4側面の描画塗布から長辺の1辺描画塗布に変更することによって、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間にアンダーフィル6の封止樹脂を充填するときに発生する巻き込み気泡は、樹脂が流動し硬化するまでの間に封止樹脂外部に抜け易くなる。この結果、気泡が残留することを防止でき、チップ上に発生する気泡を撲滅することが可能となる。
【0089】
また、樹脂の描画塗布跡6cの樹脂厚みを10μm以下に抑えることによって、この部分での折り曲げストレスよる樹脂割れや樹脂剥離を防止することが可能となる。この結果、従来では折り曲げることができなかった描画塗布跡6cも折り曲げ可能領域となり、折り曲げ不可能な樹脂領域を縮小することが可能となる。また、これにより、半導体装置10の外形サイズは従来に比べてより小さくすることが可能となる。
【0090】
また、半導体チップ4の封止樹脂に添加する着色剤の適正化によって、フィレット部6a・6bと描画塗布跡6cとの視認性が向上し、樹脂領域管理が容易となる。
【実施例】
【0091】
前記の半導体装置10を製造するために、封止樹脂として、表3に示すように、着色材を0.15重量%を含有させ、かつ25℃において粘度400mPa・sのものを用いて、図4(a)に示すように、半導体チップ4の1辺側からノズル41にて一定量の塗布を行った。なお、樹脂を塗布するときには、半導体チップ4とフレキシブル配線基板1との隙間にアンダーフィル6の樹脂の流動性を良くするために、半導体チップ4をヒータにて90℃に予備加熱(プリヒート)を行ったところに樹脂を塗布した。
【0092】
次に、フィレット部6a・6b及び描画塗布跡6cの形状を安定化させ、樹脂を硬化させるべく、熱風循環炉又は遠赤外ヒータにて所定の温度に昇温させた硬化炉に、樹脂が硬化する所定時間滞留させて、硬化を完了させた。
【0093】
この製造方法により製造した半導体装置10の仕上がり寸法値は、図1(b)に示すように、描画塗布跡6c幅Aは0.43mm、フィレット部6aの半導体チップ4からの幅Bは0.92mm、フィレット部6bの半導体チップ4からの幅Cは0.55mm、半導体チップ4の短辺側のフィレット部は、半導体チップ4から0.59mmの幅となった。また、描画塗布跡6cの樹脂厚みは、3μm厚であった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、COF(Chip On Film) と呼ばれる、フレキシブルフィルム上に形成された配線パターンと、少なくとも1つ実装された半導体素子に形成された、外部回路との接続のための電極とを接続してなるテープキャリアパッケージタイプの半導体装置及びその製造方法に適用できる。このCOFの用途として、半導体素子としての液晶ドライバICがフレキシブル配線基板上に搭載された液晶ドライバがある。
【0095】
また、その他、表示用モジュールとしては、アクティブマトリクス型等の上述の液晶表示モジュールの他、電気泳動型ディスプレイ、ツイストボール型ディスプレイ、微細なプリズムフィルムを用いた反射型ディスプレイ、デジタルミラーデバイス等の光変調素子を用いたディスプレイに利用できる。さらに、発光素子として、有機EL発光素子、無機EL発光素子、LED(Light Emitting Diode) 等の発光輝度が可変の素子を用いたディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)は本発明における半導体装置の実施の一形態を示すものであって図2(b)のX−X線断面図であり、(b)は上記半導体装置の封止樹脂におけるフィレット部及び描画塗布跡の樹脂の平面図である。
【図2】(a)はフレキシブルフィルムに連続して複数形成された半導体装置を示す平面図であり、(b)は上記フレキシブルフィルムから切り出された単独の半導体装置を示す平面図である。
【図3】(a)は上記半導体装置に液晶表示パネルとPW基板とが接続された液晶モジュールを示す平面図であり、(b)は(a)のY−Y線断面図である。
【図4】(a)は上記半導体装置の製造工程において、封止樹脂を充填する方法を示す平面図であり、(b)は充填された封止樹脂のフィレット部及び描画塗布跡を示す平面図である。
【図5】上記封止樹脂の加熱温度(プリヒート)と流れ性との関係を示すグラフである。
【図6】上記封止樹脂の加熱温度(プリヒート)と樹脂粘度との関係を示すグラフである。
【図7】(a)は上記封止樹脂の樹脂粘度と描画塗布跡の樹脂厚みとの関係を示すグラフであり、(b)は描画塗布跡を示す断面図である。
【図8】(a)は従来のフレキシブルフィルムに連続して複数形成された半導体装置を示す平面図であり、(b)は上記フレキシブルフィルムから切り出された単独の半導体装置を示す平面図である。
【図9】図8(b)のX−X線断面図である。
【図10】(a)は上記半導体装置の製造工程において、封止樹脂を充填する方法を示す平面図であり、(b)は充填された封止樹脂のフィレット部及び描画塗布跡を示す平面図である。
【図11】充填された封止樹脂に気泡が発生している半導体装置を示す断面図である。
【図12】充填された封止樹脂において、一方のフィレット部が内部配線パターンが露出した欠損している半導体装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 フレキシブル配線基板
2 配線パターン
3 配線パターン
4 半導体チップ(半導体素子)
5 バンプ電極)
6 フィレット部
6a フィレット部
6b フィレット部
6c 描画塗布跡
8 スプロケットホール
10 半導体装置
11 異方性導電接着剤
20 液晶モジュール
21 液晶表示パネル
21a TFT基板
21b カラーフィルタ基板
30 PW基板(回路基板)
41 ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置において、
上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填され、
上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填することにより形成される描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部が形成されており、
上記描画塗布跡の樹脂幅が0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置において、
上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填され、
上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填することにより描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部が形成されており、
上記描画塗布跡の樹脂幅は、0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下であり、
上記半導体素子周辺充填部の幅は、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下である一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記封止樹脂は、充填時の粘度が25℃において50〜600mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記封止樹脂は、充填時の温度が60〜120℃であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記描画塗布跡は、前記半導体素子の一つの長辺側にのみ存在することを特徴とする請求項1、3又は4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記フレキシブル配線基板は、フイルムキャリアテープに連続的に複数形成されていると共に、
前記半導体素子は、上記フレキシブル配線基板にそれぞれ搭載されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記フレキシブル配線基板には、液晶表示素子及び周辺部品が搭載された液晶モジュールが接続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置の製造方法において、
上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂を充填すると共に、
上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部のうち描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置の製造方法において、
上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂を充填すると共に、
上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部のうち描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下とし、
上記半導体素子周辺充填部の幅を、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下とする一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記封止樹脂を充填するときに、樹脂粘度を25℃において50〜600mPa・sとすることを特徴とする請求項8又は9記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記封止樹脂の充填時における樹脂温度を60〜120℃とすることを特徴とする請求項8、9又は10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記封止樹脂の充填時における樹脂温度を上げるときに、半導体素子を加熱することを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記封止樹脂を、前記半導体素子の一つの長辺側からのみノズルで描画して充填することを特徴とする請求項8、10〜12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記フレキシブル配線基板を、フイルムキャリアテープに連続的に複数形成すると共に、
前記半導体素子を、上記フレキシブル配線基板にそれぞれ搭載することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記フレキシブル配線基板に、液晶表示素子及び周辺部品が搭載された液晶モジュールが接続されることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置において、
上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填され、
上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填することにより形成される描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部が形成されており、
上記描画塗布跡の樹脂幅が0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置において、
上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂が充填され、
上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填することにより描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部が形成されており、
上記描画塗布跡の樹脂幅は、0.1〜1.0mmであり、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みは10μm以下であり、
上記半導体素子周辺充填部の幅は、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下である一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記封止樹脂は、充填時の粘度が25℃において50〜600mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記封止樹脂は、充填時の温度が60〜120℃であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記描画塗布跡は、前記半導体素子の一つの長辺側にのみ存在することを特徴とする請求項1、3又は4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記フレキシブル配線基板は、フイルムキャリアテープに連続的に複数形成されていると共に、
前記半導体素子は、上記フレキシブル配線基板にそれぞれ搭載されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記フレキシブル配線基板には、液晶表示素子及び周辺部品が搭載された液晶モジュールが接続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置の製造方法において、
上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂を充填すると共に、
上記半導体素子の少なくとも長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部のうち描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
配線パターンが形成されたフイルム状のフレキシブル配線基板に半導体素子が搭載された半導体装置の製造方法において、
上記フレキシブル配線基板と半導体素子との隙間に該半導体素子の保護用の封止樹脂を充填すると共に、
上記半導体素子の一つの長辺側をノズルで描画して上記封止樹脂を充填するときにできる描画塗布跡及び半導体素子周辺充填部のうち描画塗布跡の樹脂幅を0.1〜1.0mmとし、かつ該描画塗布跡の樹脂厚みを10μm以下とし、
上記半導体素子周辺充填部の幅を、上記半導体素子の一つの長辺側のノズル塗布側では半導体素子から1.0mm以下とする一方、上記半導体素子の一つの長辺側に対向する長辺側では半導体素子から0.8mm以下とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記封止樹脂を充填するときに、樹脂粘度を25℃において50〜600mPa・sとすることを特徴とする請求項8又は9記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記封止樹脂の充填時における樹脂温度を60〜120℃とすることを特徴とする請求項8、9又は10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記封止樹脂の充填時における樹脂温度を上げるときに、半導体素子を加熱することを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記封止樹脂を、前記半導体素子の一つの長辺側からのみノズルで描画して充填することを特徴とする請求項8、10〜12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記フレキシブル配線基板を、フイルムキャリアテープに連続的に複数形成すると共に、
前記半導体素子を、上記フレキシブル配線基板にそれぞれ搭載することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記フレキシブル配線基板に、液晶表示素子及び周辺部品が搭載された液晶モジュールが接続されることを特徴とする請求項8〜14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−177617(P2008−177617A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101849(P2008−101849)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【分割の表示】特願2005−27056(P2005−27056)の分割
【原出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【分割の表示】特願2005−27056(P2005−27056)の分割
【原出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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