説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】組み立て時の熱伝導材の飛散に起因した不具合の発生を抑えた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置10は、基板11に搭載された半導体素子12、その半導体素子12を覆う放熱体13、及び半導体素子12の上面と該上面に対向する放熱体13の接続領域13aとを接続する熱伝導材14を含む。放熱体13は、その接続領域13aに突起13bを有する。放熱体13が熱伝導材14を挟んで半導体素子12側に押圧されると、突起13bで熱伝導材14の酸化膜14aが破られ、そこから熱伝導材14が濡れ広がり、酸化膜14aで覆われた熱伝導材14の破裂、飛散が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一形態として、基板に搭載された半導体素子の上に放熱体を設ける形態が知られている。このような半導体装置においては、例えば、半導体素子と放熱板の間を熱伝導接合材により接合する技術、突起を設けたリッドを接着樹脂で接着或いはバンプ等で接続する技術等が知られている。また、放熱板に突起状部分が形成された半田部材を載置し、その突起状部分の酸化膜を半導体素子で破壊することによって、半導体素子と放熱板の間に半田部材を供給する技術等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4411123号公報
【特許文献2】特開2002−261214号公報
【特許文献3】特開昭54−13774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上に搭載した半導体素子と放熱体の間に熱伝導材を設ける半導体装置は、例えば、半導体素子と放熱体の間に熱伝導材を介在させ、加熱を行いながら放熱体を半導体素子側に押圧し、放熱体と半導体素子の間を熱伝導材で接合することで組み立てられる。しかし、このような組み立ての際、熱伝導材の表面が酸化膜で覆われているような場合には、熱伝導材が加熱により溶融しても、その表面の酸化膜のために濡れ広がらず、放熱体の押圧により破裂し、半導体素子周辺の基板上等に飛散してしまう場合があった。このように半導体素子の周辺に飛散した熱伝導材は、その飛散箇所によっては、ショート等、半導体装置の不具合を発生させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、基板と、前記基板上に搭載された半導体素子と、前記半導体素子を覆う放熱体と、前記半導体素子の上面と該上面に対向する前記放熱体の接続領域とを接続する熱伝導材とを含み、前記放熱体が、前記接続領域に突起を有している半導体装置が提供される。また、このような半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
開示の技術によれば、熱伝導材の半導体素子周辺への飛散を抑制し、熱伝導材の飛散による不具合の発生を抑えた半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。
【図3】半導体素子及びチップ部品の搭載面側から見た配線基板の平面模式図である。
【図4】第1の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図(その1)である。
【図5】第1の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図(その2)である。
【図6】第1の実施の形態に係る部材配置工程の別例の断面模式図である。
【図7】放熱体の別例を示す図である。
【図8】半導体装置の組み立て工程の別例を示す図である。
【図9】第1の実施の形態に係る半導体装置の第1変形例を示す図である。
【図10】第1の実施の形態に係る半導体装置の第2変形例を示す図である。
【図11】第2の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。
【図12】第2の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。
【図13】第2の実施の形態に係る部材配置工程の別例の断面模式図である。
【図14】第2の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。
【図15】第2の実施の形態に係る放熱体の第1変形例を示す図である。
【図16】第2の実施の形態に係る放熱体の第2変形例を示す図である。
【図17】第3の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。
【図18】第3の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。
【図19】第3の実施の形態に係る放熱体押圧時の状態の一例を示す図である。
【図20】第3の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。
【図21】熱伝導材の流出状態の一例を示す図である。
【図22】第4の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。
【図23】第4の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。
【図24】第4の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。
【図25】第5の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。
【図26】第5の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。
【図27】第5の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。図1において、(A)は部材配置工程の一例の断面模式図、(B)は封止工程の一例の断面模式図、(C)は封止後の一例の断面模式図である。
【0009】
まず、組み立てられる半導体装置の構成について、図1(C)を参照して説明する。図1(C)に示すように、半導体装置10は、基板11、半導体素子12、放熱体13、及び熱伝導材14を有している。
【0010】
基板11は、絶縁部、及びその絶縁部内に設けられた配線、ビア等の導電部を含んでいる。基板11の両主面(表裏面)にはそれぞれ、内部の導電部と電気的に接続された電極パッド11a,11bが設けられている。
【0011】
半導体素子12は、その一方の面に設けられた電極パッド12aを有している。電極パッド12aは、基板11の電極パッド11aと対応する位置に設けられている。半導体素子12は、その電極パッド12aが、基板11の電極パッド11aとバンプ15を介して接続(フリップチップ実装)され、基板11上に搭載されている。
【0012】
放熱体13は、例えば、基板11上に搭載された半導体素子12を覆う形状とされる。放熱体13は、半導体素子12との間に設けられた熱伝導材14を介して、半導体素子12と接続されている。また、放熱体13は、その端部で基板11と接続されている。放熱体13は、半導体素子12と対向する接続領域(熱伝導材14の接合領域)13aに、半導体素子12側に突出する、少なくとも1つの突起13bを有している。突起13bは、熱伝導材14の内部に達するようなサイズで設けられている。
【0013】
図1(C)に示したような構成を有する半導体装置10は、例えば、図1(A),(B)のような工程を経て組み立てることができる。組み立ての際は、まず、図1(A)に示すように、基板11上に搭載された半導体素子12の上に、熱伝導材14を介して放熱体13を配置する。そして、熱伝導材14が溶融する温度で加熱を行いながら、図1(B)に示すように、放熱体13を熱伝導材14側(半導体素子12及び基板11側)に押圧する。
【0014】
この押圧時には、まず放熱体13に設けた突起13bが熱伝導材14に接触する。加熱により溶融した熱伝導材14は、例えば、放熱体13の突起13bから接続領域13aの表面に濡れ広がり、更に半導体素子12の上面へと濡れ広がる。たとえ押圧前の熱伝導材14の表面が、図1(A)に示したような酸化膜14aで覆われている場合でも、その酸化膜14aを、放熱体13の突起13bで破ることができる。突起13bは、熱伝導材14の、酸化膜14aが破られた、より内部の酸化されていない清浄な領域(清浄領域)14bに達するようになる。加熱により溶融した熱伝導材14は、そのような酸化膜14aの破れた所から、放熱体13の接続領域13aの表面や半導体素子12の上面に濡れ広がるようになる。
【0015】
酸化膜14aで覆われた熱伝導材14を、突起13bを設けない放熱体で押圧する場合、熱伝導材14は、その酸化膜14aのために、溶融しても接続領域13aの表面等に濡れ広がらず、押圧が進むにつれて側方へ押し出され、破裂してしまう場合がある。破裂した熱伝導材14が半導体素子12の周辺の基板11上等に飛散すると、飛散した熱伝導材14によってショート等の不具合が発生する可能性がある。
【0016】
これに対し、突起13bを設けた放熱体13を用いると、熱伝導材14を覆う酸化膜14aが突起13bで破られるため、溶融した熱伝導材14は、その酸化膜14aが破れた所から、接続領域13aの表面等に濡れ広がるようになる。このように、放熱体13に突起13bを設けることにより、上記のように酸化膜14aで覆われた熱伝導材14が押し出されて破裂してしまうのを抑制することが可能になる。それにより、破裂した熱伝導材14が半導体素子12の周辺に飛散してしまうのを抑制し、飛散した熱伝導材14に起因したショート等の不具合の発生を抑制することが可能になる。
【0017】
以下、半導体装置及びその形成(組み立て)方法について、より詳細に説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図2は第1の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。図2において、(A)は部材配置工程の一例の断面模式図、(B)は封止工程の一例の断面模式図、(C)は封止後の一例の断面模式図である。
【0018】
図2(A)に示すように、組み立ての際には、半導体素子120が搭載された配線基板110、放熱体130A、及び熱伝導材140が準備される。
配線基板110は、絶縁部、及びその絶縁部内に設けられた導電部(配線、ビア等)を含んでいる。配線基板110の一方の面(表面)には、電極パッド111が設けられ、他方の面(裏面)には、半田ボール等が搭載される電極パッド112が設けられている。
【0019】
半導体素子120は、配線基板110との対向面における、配線基板110の電極パッド111に対応する位置に、電極パッド121を有している。半導体素子120は、電極パッド111,121間がバンプ150で接続(フリップチップ実装)され、配線基板110上に搭載されている。配線基板110と半導体素子120の接続部(電極パッド111,121及びバンプ150)は、アンダーフィル材160で被覆されている。
【0020】
また、配線基板110上には、半導体素子120と共に、他の電子部品、例えばチップ抵抗やチップコンデンサ等のチップ部品170が搭載されている。
図3は半導体素子及びチップ部品の搭載面側から見た配線基板の平面模式図である。
【0021】
前述のように、配線基板110上には、半導体素子120がフリップチップ実装されており、それらの接続部は、アンダーフィル材160で被覆されている。このように配線基板110上に搭載された半導体素子120の周辺に、例えば、図3に示したように、半導体素子120を取り囲んで、複数(ここでは一例として16個)のチップ部品170が配線基板110上に搭載されている。
【0022】
半導体素子120の上面(配線基板110側と反対の面(背面))には、加熱により溶融される熱伝導材140の濡れ性の観点から、図2(A)及び図3に示したように、メッキ層122が設けられている。このメッキ層122には、例えば、チタン(Ti)メッキ層上に金(Au)メッキ層を積層したTi/Auメッキ層、或いはTiメッキ層上にニッケル(Ni)メッキ層及びAuメッキ層を順に積層したTi/Ni/Auメッキ層を用いることができる。
【0023】
組み立て時には、このようにして配線基板110上にチップ部品170と共に搭載された半導体素子120の上に、熱伝導材140が配置される。
熱伝導材140には、例えば、図2(A)に示したように、シート状のものが用いられる。例えば、厚さ約350μmのシート状の熱伝導材140が用いられる。熱伝導材140には、半導体素子120と放熱体130Aの間を接合することができ、半導体素子120で発生した熱を放熱体130Aに効率的に伝熱することができる材料を用いる。熱伝導材140には、例えば、半田材料を用いることができる。熱伝導材140に用い得る半田材料としては、スズ鉛(SnPb)系、スズ銀(SnAg)系、インジウム(In)系、インジウム銀(InAg)系、スズアンチモン(SnSb)系、スズビスマス(SnBi)系等の半田材料を挙げることができる。
【0024】
上記のような半田材料を用いた場合等、熱伝導材140の材質によっては、図2(A)に示したように、その表面に酸化膜141が形成され得る。酸化膜141は、例えば、熱伝導材140を大気中で取り扱う際等にその表面に薄く形成され得る(自然酸化膜)。ここでは、このような酸化膜141が形成されている熱伝導材140を用いた組み立てを例に説明する。
【0025】
図2(A)に示したように、半導体素子120の上方に配置する熱伝導材140の更に上方には、放熱体130Aが配置される。放熱体130Aは、例えば、配線基板110上に搭載された半導体素子120及びチップ部品170を覆う(封止する)ことができるような形状とされる。放熱体130Aには、半導体素子120から熱伝導材140を介して伝熱されてくる熱を、効率的に外部へ放熱することができる材料を用いる。放熱体130Aには、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、アルミニウムシリコンカーバイド(AlSiC)等の材料を用いることができる。放熱体130Aの外周端部には、接着剤180が設けられ、放熱体130Aは、この接着剤180を介して配線基板110の外周端部に接着固定されるようになっている。
【0026】
放熱体130Aの内側の、熱伝導材140や半導体素子120と対向する接続領域(熱伝導材140の接合領域)131は、その周囲よりも高くなる(熱伝導材140及び半導体素子120側に突出する)ように、凸状に形成されている。このような放熱体130Aの接続領域131には、熱伝導材140及び半導体素子120側に突出する、複数の突起132が設けられている。突起132が設けられた接続領域131は、続く図2(B)に示す封止工程において溶融される熱伝導材140の濡れ性の観点から、図2(A)に示したように、その表面がメッキ層133で被覆されている。メッキ層133には、例えば、Niメッキ層上にAuメッキ層を積層したNi/Auメッキ層を用いることができる。
【0027】
図4及び図5は第1の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。図4及び図5には、第1の実施の形態に係る放熱体の突起側から見た平面を模式的に図示している。尚、図4(A)〜(C)及び図5には、放熱体の突起の配置例を示している。
【0028】
放熱体130Aの突起132は、接続領域131に分散して配置する。例えば、図4(A)〜(C)に示すように、5個(図4(A))、9個(図4(B))、16個(図4(C))、25個といったように、接続領域131のサイズに応じ、一定の間隔(密度)で、突起132を接続領域131に配置する(均等配置)。
【0029】
また、図5に示すように、接続領域131の中央部よりもその周辺部で突起132が密になるような配置とすることもできる(一部密集配置)。このように突起132の一部を密集させた配置とした場合には、溶融した熱伝導材140の、接続領域131外への流出を抑制することが可能になる。
【0030】
尚、突起132は、その配置によって、封止工程(図2(B))で溶融される熱伝導材140の、接続領域131での均一性の良い濡れ広がりを阻害しないように、一定以上の間隔で配置しておくことが好ましい。
【0031】
放熱体130Aに設ける各突起132の形状は、封止工程(図2(B))において、熱伝導材140の表面に形成されている酸化膜141を突き破ることができるものであれば、特に限定されない。突起132は、円錐や角錐等、先端が鋭角になるような錐状とすることができる。また、突起132は、必ずしも先端が鋭角であることを要せず、円錐台や角錐台のような錐台状とすることもできる。
【0032】
また、各突起132のサイズは、例えば、熱伝導材140の表面に形成される酸化膜141の厚さ、及び放熱体130Aと半導体素子120のギャップ(組み立て後の半導体装置100Aにおける熱伝導材140の厚さ)に基づいて、設定することができる。
【0033】
例えば、当該ギャップが約250μmであるとすれば、突起132の底面の径を約200μm、高さを約200μm〜約250μmとし、隣接する突起132の間隔を少なくとも約3mm確保して、均等或いは一部を密集させて突起132を配置することができる。
【0034】
組み立て時には、図2(A)に示したように、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110、熱伝導材140、並びに接着剤180を設けた放熱体130Aの各部材が配置される。各部材の配置後は、図2(B)に示すように、各部材間を接合し、封止する。
【0035】
封止工程では、放熱体130Aを、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110側に、間に熱伝導材140を介在させた状態で、加熱を行いながら押圧する。加熱温度は、例えば、熱伝導材140が溶融する温度に設定する。
【0036】
押圧される放熱体130Aは、まずその突起132が熱伝導材140に接触する。熱伝導材140の表面に酸化膜141が形成されている場合、酸化膜141は、半導体素子120のメッキ層122や、放熱体130Aのメッキ層133への濡れ性を低下させ得る。放熱体130Aに設けた突起132は、熱伝導材140との接触後、更に押圧が進むことで、熱伝導材140の表面の酸化膜141を破り、より内部の酸化されていない清浄な領域(清浄領域)142に達するようになる。加熱により溶融した熱伝導材140は、突起132により酸化膜141が破られた所から、接続領域131の表面に濡れ広がり、更に半導体素子120の上面にも濡れ広がるようになる。
【0037】
これと共に、放熱体130Aは、その端部に設けられた接着剤180を介して、配線基板110の端部に接着される。接着剤180が硬化され、溶融して放熱体130A及び半導体素子120の所定領域に濡れ広がった熱伝導材140が冷却、固化されることで、放熱体130Aが配線基板110に接続され、放熱体130Aと半導体素子120の間が熱伝導材140で接続される。尚、熱伝導材140を覆っていた酸化膜141は、例えば、図2(C)に示したように、放熱体130Aや半導体素子120に接合された熱伝導材140の側端面等に残り得る。
【0038】
このように熱伝導材140の加熱、溶融を行いながら放熱体130Aを押圧することにより、図2(C)に示したようなLGA(Land Grid Array)タイプの半導体装置100Aが得られるようになる。
【0039】
尚、熱伝導材140は、上記のような封止工程(図2(B))前に、図6に示すように、放熱体130Aの接続領域131に仮付けしておいてもよい。
図6は第1の実施の形態に係る部材配置工程の別例の断面模式図である。
【0040】
封止工程に先立ち、例えば、熱伝導材140を、その融点以下の温度で加熱しながら接続領域131に圧着し、接続領域131に設けた突起132を、熱伝導材140の酸化膜141を貫通させ、内部の清浄領域142に到達させる。例えば、0.25MPa±0.05MPaの加重で、熱伝導材140の材質に応じた80℃〜160℃の融点以下の温度で加熱を行いながら、15秒以下で加熱圧着を行い、熱伝導材140を放熱体130Aに仮付けする。
【0041】
このようにして熱伝導材140を仮付けした放熱体130Aを、上記の図2(B)の例に従い、加熱を行いながら配線基板110側に押圧する。突起132が予め熱伝導材140の酸化膜141を貫通して内部の清浄領域142に達しているため、溶融した熱伝導材140は、その酸化膜141を貫通している突起132の所から、接続領域131の表面等へ濡れ広がるようになる。そして、接着剤180の硬化、及び熱伝導材140の固化を行うことで、図2(C)に示したような半導体装置100Aを得ることができる。
【0042】
ところで、上記のような熱伝導材表面に形成された酸化膜は、フラックスを用いて除去することも可能であり、それにより、熱伝導材の放熱体や半導体素子等との濡れ性を確保することができる。但し、フラックスを使用した場合には、フラックスの揮発によって熱伝導材にボイドが発生し、組み立て後の半導体装置において、半導体素子から放熱体への熱伝導効率が低下してしまう可能性がある。更に、フラックスの使用は、環境面への影響も懸念されている。
【0043】
一方、第1の実施の形態に係る半導体装置100Aの組み立てにおいては、放熱体130Aに設けられた突起132により熱伝導材140の酸化膜141が破られ、そこから熱伝導材140が接続領域131の表面等に濡れ広がるようになる。そのため、フラックスレスで、また、熱伝導材140のボイドの発生を抑えて、半導体装置100Aの組み立てを行うことができる。
【0044】
更に、放熱体130Aの突起132で酸化膜141が破られた熱伝導材140は、比較的速やかに接続領域131の表面等に濡れ広がっていくため、押圧時に、酸化膜141で覆われた熱伝導材140が破裂するといった事態を回避することが可能になる。またそれにより、破裂した熱伝導材140が半導体素子120の周辺に飛散するといった事態を回避することが可能になる。
【0045】
ここで、上記のような突起を設けない放熱体を用い、フラックスレスで半導体装置を組み立てる方法の一例について説明する。
図7は放熱体の別例を示す図であって、(A)は断面模式図、(B)は平面模式図である。また、図8は半導体装置の組み立て工程の別例を示す図であって、(A)は部材配置工程の別例の断面模式図、(B)は封止工程の別例の断面模式図、(C)は封止後の別例の断面模式図である。
【0046】
ここでは、図7(A),(B)に示すような、突起を有しない放熱体130aを用いる。このような放熱体130aの接続領域131に熱伝導材140を仮付けする。熱伝導材140の表面には、酸化膜141が形成されている。
【0047】
熱伝導材140を仮付けし、端部に接着剤180を設けた放熱体130aを、図8(A)に示すように、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110の上方に配置する。そして、その放熱体130aを、加熱を行いながら、図8(B)に示すように、配線基板110側に押圧する。加熱温度は、例えば、熱伝導材140が溶融する温度に設定する。
【0048】
このとき、加熱により熱伝導材140は溶融するが、表面を覆っている酸化膜141が破れないと、放熱体130aの押圧と共に、図8(B)に示したように、熱伝導材140が側方に押し出される。そして、押圧が進み、熱伝導材140に更に圧力が加わると、その圧力によって、熱伝導材140の側方に押し出された部分の酸化膜141が破れてしまう場合がある。
【0049】
このような熱伝導材140の破裂が起こると、図8(C)に示すように、熱伝導材140が半導体素子120の周辺に飛散してしまう。仮に、飛散した熱伝導材140が、半導体素子120と共に配線基板110上に搭載されているチップ部品170に接触してしまうと、チップ部品170の種類や飛散した熱伝導材140の接触箇所によっては、ショート等の電気的な不具合が発生する場合がある。
【0050】
これに対し、第1の実施の形態に係る半導体装置100Aでは、その放熱体130Aに突起132を設ける。そのため、半導体装置100Aを組み立てる際、放熱体130Aの突起132によって、熱伝導材140を覆う酸化膜141を破ることができ、上記のような熱伝導材140の破裂、及び破裂による熱伝導材140の飛散を効果的に抑制することができる。このような熱伝導材140の破裂、それによる飛散を抑制した半導体装置100Aの組み立てを、フラックスレスで実現することができる。
【0051】
尚、ここでは、図2(C)に示したようなLGAタイプの半導体装置100Aを例示したが、BGA(Ball Grid Array)タイプの半導体装置を形成することもできる。
図9は第1の実施の形態に係る半導体装置の第1変形例を示す図である。図9には、第1の実施の形態に係る半導体装置の第1変形例の断面を模式的に図示している。
【0052】
上記のようにして封止を行った後(図2)、この図9に示すように、配線基板110の裏面(半導体素子120の搭載面側と反対の面)に設けられている電極パッド112に、半田ボール190を搭載する。このようにしてBGAタイプの半導体装置100Aaを得るようにしてもよい。
【0053】
また、熱伝導材140の酸化膜141を破る突起132は、放熱体130Aと半導体素子120の間の、ギャップの確保に利用することもできる。
図10は第1の実施の形態に係る半導体装置の第2変形例を示す図である。図10には、第1の実施の形態に係る半導体装置の第2変形例の断面を模式的に図示している。
【0054】
図10に示す半導体装置100Abでは、放熱体130Aの接続領域131に、半導体素子120との間に確保されるべきギャップ(組み立て後の半導体装置100Abにおける熱伝導材140の厚さ)と同等サイズ(高さ)の突起132が設けられる。これにより、放熱体130Aの押圧時には、突起132で熱伝導材140の酸化膜141が破られるほか、突起132がスペーサとなって放熱体130Aの半導体素子120側への過剰な押圧が抑制される。これにより、放熱体130Aの押圧後に得られる熱伝導材140の厚さのばらつき、放熱体130Aの過剰な押圧による熱伝導材140の側方への流出を抑制することが可能になる。
【0055】
尚、この図10に示したような半導体装置100Abについても、その電極パッド112に半田ボール190を搭載し、BGAタイプの半導体装置を得ることができる。また、LGAタイプの半導体装置100Ab、BGAタイプの半導体装置において、その放熱体130Aに、上記のようなギャップに合わせた高さの突起132に加え、それより低い突起132を混在させて配置するようにしてもよい。
【0056】
次に、第2の実施の形態について説明する。
図11は第2の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。図11において、(A)は部材配置工程の一例の断面模式図、(B)は封止工程の一例の断面模式図、(C)は封止後の一例の断面模式図である。また、図12は第2の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。図12には、放熱体の凹部側から見た平面を模式的に図示している。尚、図12(A)〜(C)には、放熱体の凹部の配置例を示している。
【0057】
第2の実施の形態に係る半導体装置100Bでは、図11及び図12に示すような、接続領域131に複数の凹部134を設けた放熱体130Bが用いられる。凹部134が設けられた接続領域131は、その表面がメッキ層133で被覆されている。
【0058】
凹部134は、上記の突起132と同様に、接続領域131に分散して配置する。例えば、5個(図12(A))、9個(図12(B))、16個、25個といったように、接続領域131のサイズに応じ、一定の間隔(密度)で、凹部134を接続領域131に配置する。また、接続領域131の中央部よりもその周辺部で凹部134が密になるような配置とすることもできる(図12(C))。
【0059】
各凹部134の形状及びサイズは、封止工程(図11(B))において、凹部134のエッジ134aで熱伝導材140の酸化膜141を破ることができ、また、凹部134内に一定量の熱伝導材140を収容することができるものであれば、特に限定されない。例えば、深さが約200μmの凹部134を、隣接する凹部134の間隔を少なくとも約3mm確保して、均等或いは一部を密集させて配置する。
【0060】
組み立て時には、図11(A)に示したように、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110、熱伝導材140、並びに接着剤180を設けた放熱体130Bの各部材が配置される。各部材の配置後は、図11(B)に示すように、各部材間を接合し、封止する。
【0061】
封止工程では、放熱体130Bを、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110側に、間に熱伝導材140を介在させた状態で、熱伝導材140が溶融する温度で加熱を行いながら、押圧する。表面に酸化膜141が形成された熱伝導材140は、押圧される放熱体130Bの凹部134に接触する。そして、その酸化膜141が凹部134のエッジ134aで破られると、清浄領域142が露出し、熱伝導材140が接続領域131の表面や半導体素子120の上面に濡れ広がるようになる。このように濡れ広がる熱伝導材140は、凹部134の内部にも進入する。
【0062】
これと共に、放熱体130Bは、その端部に設けられた接着剤180を介して、配線基板110の端部に接着される。接着剤180が硬化され、濡れ広がった熱伝導材140が冷却、固化されることで、放熱体130Bが配線基板110に接続され、放熱体130Bと半導体素子120の間が熱伝導材140で接続される。
【0063】
このように熱伝導材140の加熱、溶融を行いながら放熱体130Bを押圧することにより、図11(C)に示したようなLGAタイプの半導体装置100Bが得られるようになる。
【0064】
第2の実施の形態に係る半導体装置100Bでは、上記のように、その組み立ての際、放熱体130Bに設けた凹部134により、熱伝導材140の表面を覆う酸化膜141を破り、熱伝導材140が接続領域131の表面等に濡れ広がるようにする。これにより、表面を酸化膜141で覆われた熱伝導材140の破裂、破裂による熱伝導材140の飛散を抑制することができる。また、放熱体130Bに設けた凹部134には、一定量の熱伝導材140を収容することができるため、余剰の熱伝導材140が側方に押し出されるのを抑制し、そのような部分での酸化膜141の破裂、破裂による熱伝導材140の飛散を抑制することができる。
【0065】
尚、図11(C)に示したような半導体装置100Bの組み立てにおいては、図11(B)に示した封止工程前に、図13に示すように、放熱体130Bの接続領域131に熱伝導材140を仮付けしておいてもよい。
【0066】
図13は第2の実施の形態に係る部材配置工程の別例の断面模式図である。
封止工程に先立ち、例えば、熱伝導材140を、その融点以下の温度で加熱しながら接続領域131に圧着し、接続領域131に設けた凹部134のエッジ134aで熱伝導材140の酸化膜141を破り、清浄領域142を露出させる。更に、酸化膜141が破られた熱伝導材140の一部を凹部134内に進入させる。このようにして熱伝導材140を仮付けした放熱体130Bを、上記の図11(B)の例に従い、加熱を行いながら配線基板110側に押圧して、図11(C)に示したような半導体装置100Bを得るようにしてもよい。
【0067】
ここでは、LGAタイプの半導体装置100Bを例示したが、BGAタイプの半導体装置を形成することもできる。
図14は第2の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。図14には、第2の実施の形態に係る半導体装置の変形例の断面を模式的に図示している。
【0068】
図11に示したようにして封止を行った後、この図14に示すように、配線基板110の電極パッド112に半田ボール190を搭載し、BGAタイプの半導体装置100Baを得るようにしてもよい。
【0069】
また、以上の説明では、半導体装置100Bの放熱体130Bとして凹部134を設けたものを用いる場合を例示したが、凹部134に加え、上記第1の実施の形態で述べたような突起132を設けた放熱体を用いることもできる。このような放熱体の例を、図15及び図16に示す。
【0070】
図15は第2の実施の形態に係る放熱体の第1変形例を示す図である。図15には、第1変形例の放熱体の突起及び凹部側から見た平面を模式的に図示している。図15(A)には、放熱体の突起及び凹部の配置例を示している。
【0071】
図15に示す放熱体130Baでは、その接続領域131に、突起132と凹部134が混在して配置されている。突起132と凹部134は、例えば、図15に示したように、縦方向及び横方向に交互に並ぶように、一定の間隔で、配置することができる。尚、図15に示した突起132と凹部134の配置及び個数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0072】
図15に示したような放熱体130Baによれば、半導体装置の組み立てにおける封止工程の際、まず突起132で熱伝導材140の酸化膜141が破られ、そこから熱伝導材140が接続領域131の表面等に濡れ広がる。また、酸化膜141が、凹部134のエッジ134aで破られる場合もある。酸化膜141が突起132或いは凹部134で破られて濡れ広がる熱伝導材140は、一部が凹部134内に収容される。このような放熱体130Baを用いることで、酸化膜141で覆われた熱伝導材140の破裂、破裂による熱伝導材140の飛散を効果的に抑制することができる。
【0073】
図16は第2の実施の形態に係る放熱体の第2変形例を示す図である。図16には、第2変形例の放熱体の突起及び凹部側から見た平面を模式的に図示している。
図16に示す放熱体130Bbでは、その接続領域131に配置された複数の凹部134の各々に、突起132が設けられている。各突起132は、その先端部が凹部134から突出するようなサイズ(高さ)で設けられることが好ましい。尚、図16に示した凹部134(及びその中の突起132)の配置及び個数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0074】
図16に示したような放熱体130Bbによれば、半導体装置の組み立てにおける封止工程の際、熱伝導材140の酸化膜141を突起132で破ることができるほか、凹部134のエッジ134aでも破ることができる。また、余剰の熱伝導材140を、凹部134に残る隙間に収容することもできる。これにより、酸化膜141で覆われた熱伝導材140の破裂、破裂による熱伝導材140の飛散を効果的に抑制することができる。
【0075】
尚、図16には、複数の凹部134の各々に突起132が設けられた放熱体130Bbを例示したが、突起132が設けられた凹部134と、突起132が設けられていない単体の凹部134とが均等又は一部密集して配置された放熱体を用いてもよい。また、突起132が設けられた凹部134と、凹部134に設けられていない単体の突起132とが均等又は一部密集して配置された放熱体を用いることもできる。
【0076】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図17は第3の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。図17において、(A)は部材配置工程の一例の断面模式図、(B)は封止工程の一例の断面模式図、(C)は封止後の一例の断面模式図である。また、図18は第3の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。図18には、放熱体の突起側から見た平面を模式的に図示している。尚、図18には、放熱体の突起の配置例を示している。
【0077】
第3の実施の形態に係る半導体装置100Cでは、図17及び図18に示すような、接続領域131に設けられる複数の突起132のうち、一部が接続領域131の外周に沿って配置された放熱体130Cが用いられる。接続領域131の外周部に配置された突起132は、例えば、その先端部が半導体素子120の側端面より外側に位置するように、配置される。尚、図17及び図18に示した突起132の個数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0078】
組み立て時には、図17(A)に示したように、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110、熱伝導材140、並びに接着剤180を設けた放熱体130Cの各部材が配置される。各部材の配置後は、図17(B)に示すように、各部材間を接合し、封止する。
【0079】
封止工程では、放熱体130Cを、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110側に、間に熱伝導材140を介在させた状態で、熱伝導材140が溶融する温度で加熱を行いながら、押圧する。
【0080】
ここで、図19は第3の実施の形態に係る放熱体押圧時の状態の一例を示す図である。図19は、図17(B)のX部の拡大図である。
放熱体130Cを配線基板110側に押圧すると、接続領域131の外周部よりも内側に配置された突起132は、上記同様、熱伝導材140の表面を覆っている酸化膜141を破り、より内部の酸化されていない清浄領域142へと進入する。
【0081】
一方、接続領域131の外周部に配置された突起132は、図17及び図19に示したように、熱伝導材140の平面サイズが半導体素子120の平面サイズよりも大きい場合、半導体素子120よりも外側の熱伝導材140の端部を配線基板110側に押し込む。熱伝導材140の端部は、突起132に押されて折れ曲がり、また、熱伝導材140の端部と突起132とが擦れる。このとき、熱伝導材140の折れ曲がった部分、突起132と擦れた部分の酸化膜141が破れ、内部の清浄領域142が露出する。
【0082】
このようにして放熱体130Cの突起132で熱伝導材140の酸化膜141が破られることで、加熱により溶融した熱伝導材140が接続領域131の表面等に濡れ広がるようになる。
【0083】
尚、熱伝導材140の平面サイズが半導体素子120の平面サイズと同じか或いは小さい場合には、放熱体130Cの接続領域131の外周部に配置された突起132が、溶融した熱伝導材140の側方への流出を抑制するダムとして機能し得る。接続領域131の外周部に配置する突起132にこのようなダムの機能を持たせる場合には、当該外周部の突起132を、それより内側に配置する突起132よりも大きなサイズ(高さ)としてもよい。
【0084】
封止工程では、上記のようにして熱伝導材140が濡れ広がると共に、放熱体130Cの端部が接着剤180を介して配線基板110の端部に接着される。接着剤180が硬化され、濡れ広がった熱伝導材140が冷却、固化されることで、放熱体130Cが配線基板110に接続され、放熱体130Cと半導体素子120の間が熱伝導材140で接続される。
【0085】
このように熱伝導材140の加熱、溶融を行いながら放熱体130Cを押圧することにより、図17(C)に示したようなLGAタイプの半導体装置100Cが得られるようになる。
【0086】
ここでは、LGAタイプの半導体装置100Cを例示したが、BGAタイプの半導体装置を形成することもできる。
図20は第3の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。図20には、第3の実施の形態に係る半導体装置の変形例の断面を模式的に図示している。
【0087】
図17に示したようにして封止を行った後、この図20に示すように、配線基板110の電極パッド112に半田ボール190を搭載し、BGAタイプの半導体装置100Caを得るようにしてもよい。
【0088】
次に、第4の実施の形態について説明する。
まず、上記のような突起や凹部を設けていない放熱体を用いた場合に起こり得る熱伝導材の側方への流出について述べる。
【0089】
図21は熱伝導材の流出状態の一例を示す図である。図21には、配線基板の上面側から見た平面を模式的に図示しており、放熱体についてはその図示を省略している。
例えば、接続領域131に突起も凹部も設けていない放熱体130a(図7)を用いた場合、加熱により溶融した熱伝導材140は、側方全体に均一に流動するとは限らず、図21のY部のような熱伝導材140の局所的な流出が起こり得る。熱伝導材140のこのような局所的な流出が起こると、その箇所で熱伝導材140とチップ部品170との距離が近くなるため、両者の接触、それによるショートの発生の可能性が高まる。また、このように局所的に流出した熱伝導材140が、その表面を覆っている酸化膜の影響で破裂し、飛散すると、飛散した熱伝導材140とチップ部品170との接触、それによるショートの発生の可能性が高まる。
【0090】
そこで、この第4の実施の形態では、半導体装置に、上記のような熱伝導材140の流出が抑制可能な放熱体を用いる。
図22は第4の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。図22において、(A)は部材配置工程の一例の断面模式図、(B)は封止工程の一例の断面模式図、(C)は封止後の一例の断面模式図である。また、図23は第4の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。図23には、放熱体の突起側から見た平面を模式的に図示している。尚、図23(A),(B)には、放熱体の突起の配置例を示している。
【0091】
第4の実施の形態に係る半導体装置100Dでは、図22及び図23に示すような、接続領域131平面を複数に分割する仕切り状の突起132を備える放熱体130Dが用いられる。仕切り状の突起132は、例えば、図23(A)に示すように、矩形状の接続領域131平面の対向する辺の中点同士を結ぶような十字状に配置したり、図23(B)に示すように、対角線上に十字状に配置したりすることができる。
【0092】
尚、図23(A),(B)には、仕切り状の突起132によって接続領域131平面を4分割する場合を例示したが、分割数はこれに限定されるものではない。例えば、図23(A),(B)の構成を組み合わせ、接続領域131平面を8分割するような仕切り状の突起132を設けることもできる。
【0093】
組み立て時には、図22(A)に示したように、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110、熱伝導材140、並びに接着剤180を設けた放熱体130Dの各部材が配置される。続く封止工程では、図22(B)に示すように、放熱体130Dを、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110側に、間に熱伝導材140を介在させた状態で、熱伝導材140が溶融する温度で加熱を行いながら、押圧する。
【0094】
放熱体130Dを配線基板110側に押圧すると、仕切り状の突起132は、熱伝導材140の表面を覆っている酸化膜141を破り、より内部の酸化されていない清浄領域142へと進入する。このとき、熱伝導材140の酸化膜141は、仕切り状の突起132に沿って破られ、熱伝導材140にはそれを分割するような切れ目が入る。熱伝導材140は、このようにしてその表面の酸化膜141が破られ、仕切り状の突起132の所から均一性良く接続領域131の表面等に濡れ広がる。更に、濡れ広がる熱伝導材140は、仕切り状の突起132が存在することで、その流動方向に一定の制約を受ける。
【0095】
このように仕切り状の突起132で酸化膜141を破り、更に、仕切り状の突起132で熱伝導材140の流動を制御することで、熱伝導材140の側方への流出、その際の局所的な流出を、効果的に抑制することができる。
【0096】
封止工程では、上記のようにして熱伝導材140が濡れ広がると共に、放熱体130Dの端部が接着剤180を介して配線基板110の端部に接着される。接着剤180が硬化され、濡れ広がった熱伝導材140が冷却、固化されることで、放熱体130Dが配線基板110に接続され、放熱体130Dと半導体素子120の間が熱伝導材140で接続される。
【0097】
このように熱伝導材140の加熱、溶融を行いながら放熱体130Dを押圧することにより、図22(C)に示したようなLGAタイプの半導体装置100Dが得られるようになる。
【0098】
尚、放熱体130Dに設ける仕切り状の突起132の高さは、放熱体130Dと半導体素子120の間に設けるギャップ(組み立て後の半導体装置100Dにおける熱伝導材140の厚さ)以下に設定することができる。例えば、仕切り状の突起132の高さを、放熱体130Dと半導体素子120のギャップ(例えば250μm)と同等にする。仕切り状の突起132が高くなるほど、加熱により溶融した熱伝導材140の流動制御、流出抑制の効果は高くなる。
【0099】
ここでは、LGAタイプの半導体装置100Dを例示したが、BGAタイプの半導体装置を形成することもできる。
図24は第4の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。図24には、第4の実施の形態に係る半導体装置の変形例の断面を模式的に図示している。
【0100】
図22に示したようにして封止を行った後、この図24に示すように、配線基板110の電極パッド112に半田ボール190を搭載し、BGAタイプの半導体装置100Daを得るようにしてもよい。
【0101】
次に、第5の実施の形態について説明する。
図25は第5の実施の形態に係る半導体装置の組み立て工程の一例を示す図である。図25において、(A)は部材配置工程の一例の断面模式図、(B)は封止工程の一例の断面模式図、(C)は封止後の一例の断面模式図である。また、図26は第5の実施の形態に係る放熱体の構成例を示す図である。図26には、放熱体の突起側から見た平面を模式的に図示している。尚、図26(A),(B)には、放熱体の突起の配置例を示している。
【0102】
第5の実施の形態に係る半導体装置100Eでは、図25及び図26に示すような、接続領域131平面を複数に分割する仕切り状の突起132を備えていて、その突起132が接続領域131の外側まで延在している放熱体130Eが用いられる。第5の実施の形態に係る放熱体130Eは、このような点で、上記第4の実施の形態に係る放熱体130Dと相違する。例えば、仕切り状の突起132を、放熱体130Dのときと比べて、接続領域131の外側に約1.5mm延長する。
【0103】
放熱体130Eの仕切り状の突起132は、例えば、図26(A)に示すように、矩形状の接続領域131平面の対向する辺の中点同士を通るような十字状に配置したり、図26(B)に示すように、対角線上を通るような十字状に配置したりすることができる。尚、図26(A),(B)には、仕切り状の突起132によって接続領域131平面を4分割する場合を例示したが、分割数はこれに限定されるものではない。
【0104】
組み立て時には、図25(A)に示したように、半導体素子120及びチップ部品170を搭載した配線基板110、熱伝導材140、並びに接着剤180を設けた放熱体130Eの各部材が配置される。続く封止工程では、図25(B)に示すように、放熱体130Eを配線基板110側に、熱伝導材140が溶融する温度で加熱を行いながら、押圧する。
【0105】
放熱体130Eの押圧に伴い、熱伝導材140は、その表面の酸化膜141が仕切り状の突起132で破られ、仕切り状の突起132で流動を制御されて、接続領域131の表面等に濡れ広がる。更に、放熱体130Eでは、仕切り状の突起132が接続領域131の外側まで延在しているため、余剰の熱伝導材140が仕切り状の突起132の延在部分にも濡れ広がるようになる。このような放熱体130Eによれば、熱伝導材140の側方への流出、それに起因した飛散、ショート等の不具合を、効果的に抑制することができる。
【0106】
封止工程では、上記のようにして熱伝導材140が濡れ広がると共に、放熱体130Eの端部が接着剤180を介して配線基板110の端部に接着される。接着剤180が硬化され、濡れ広がった熱伝導材140が冷却、固化されることで、放熱体130Eが配線基板110に接続され、放熱体130Eと半導体素子120の間が熱伝導材140で接続される。
【0107】
このように熱伝導材140の加熱、溶融を行いながら放熱体130Eを押圧することにより、図25(C)に示したようなLGAタイプの半導体装置100Eが得られるようになる。
【0108】
ここでは、LGAタイプの半導体装置100Eを例示したが、BGAタイプの半導体装置を形成することもできる。
図27は第5の実施の形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。図27には、第5の実施の形態に係る半導体装置の変形例の断面を模式的に図示している。
【0109】
図25に示したようにして封止を行った後、この図27に示すように、配線基板110の電極パッド112に半田ボール190を搭載し、BGAタイプの半導体装置100Eaを得るようにしてもよい。
【0110】
以上説明したように、配線基板に搭載された半導体素子と熱伝導材を介して接続される放熱体に、突起若しくは凹部、又は突起と凹部の両方を設ける。これにより、半導体装置の組み立て時には、熱伝導材の表面が酸化膜で覆われているような場合であっても、その酸化膜を放熱体の突起や凹部で破ることができる。その結果、熱伝導材は、酸化膜の破れた所から濡れ広がるようになるため、酸化膜で覆われた熱伝導材が押し出されて破裂し、飛散する事態を回避することができ、そのような熱伝導材の飛散に起因した不具合の発生を抑えた半導体装置を実現することが可能になる。
【0111】
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 基板と、
前記基板上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を覆う放熱体と、
前記半導体素子の上面と該上面に対向する前記放熱体の接続領域とを接続する熱伝導材と、
を含み、
前記放熱体が、前記接続領域に突起を有することを特徴とする半導体装置。
【0112】
(付記2) 前記放熱体は、前記接続領域に凹部を有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3) 前記突起は、前記凹部に設けられていることを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
【0113】
(付記4) 前記放熱体は、前記接続領域の外周部に第2の突起を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
(付記5) 前記突起は、前記接続領域を複数に分割する仕切り状であることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0114】
(付記6) 前記突起は、前記接続領域の外側まで延在していることを特徴とする付記5に記載の半導体装置。
(付記7) 前記突起を複数有し、
複数の前記突起は、前記接続領域の中央部よりも該中央部の周辺部で密に配置されていることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0115】
(付記8) 基板と、
前記基板上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を覆う放熱体と、
前記半導体素子の上面と該上面に対向する前記放熱体の接続領域とを接続する熱伝導材と、
を含み、
前記放熱体が、前記接続領域に複数の凹部を有することを特徴とする半導体装置。
【0116】
(付記9) 前記放熱体は、前記接続領域に突起を有することを特徴とする付記8に記載の半導体装置。
(付記10) 前記突起を複数有し、
複数の前記突起は、複数の前記凹部にそれぞれ設けられていることを特徴とする付記9に記載の半導体装置。
【0117】
(付記11) 複数の前記凹部は、前記接続領域の中央部よりも該中央部の周辺部で密に配置されていることを特徴とする付記8に記載の半導体装置。
(付記12) 基板上に半導体素子を搭載する工程と、
前記半導体素子の上方に、熱伝導材を介して、前記半導体素子を覆い且つ前記半導体素子の上面に対向する接続領域に突起を有する放熱体を配置する工程と、
前記放熱体を、加熱を行いながら前記半導体素子側に押圧し、前記熱伝導材によって前記上面と前記接続領域とを接続する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0118】
(付記13) 前記放熱体を押圧する工程では、前記突起によって、前記熱伝導材を被覆する酸化膜を破ることを特徴とする付記12に記載の半導体装置の製造方法。
(付記14) 基板上に半導体素子を搭載する工程と、
前記半導体素子の上方に、熱伝導材を介して、前記半導体素子を覆い且つ前記半導体素子の上面に対向する接続領域に複数の凹部を有する放熱体を配置する工程と、
前記放熱体を、加熱を行いながら前記半導体素子側に押圧し、前記熱伝導材によって前記上面と前記接続領域とを接続する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0119】
(付記15) 前記放熱体を押圧する工程では、前記凹部によって、前記熱伝導材を被覆する酸化膜を破ることを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0120】
10,100A,100Aa,100Ab,100B,100Ba,100C,100Ca,100D,100Da,100E,100Ea 半導体装置
11 基板
11a,11b,12a,111,112,121 電極パッド
12,120 半導体素子
13,130a,130A,130B,130Ba,130Bb,130C,130D,130E 放熱体
13a,131 接続領域
13b,132 突起
14,140 熱伝導材
14a,141 酸化膜
14b,142 清浄領域
15,150 バンプ
110 配線基板
122,133 メッキ層
134 凹部
134a エッジ
160 アンダーフィル材
170 チップ部品
180 接着剤
190 半田ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を覆う放熱体と、
前記半導体素子の上面と該上面に対向する前記放熱体の接続領域とを接続する熱伝導材と、
を含み、
前記放熱体が、前記接続領域に突起を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記放熱体は、前記接続領域に凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記突起は、前記凹部に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記放熱体は、前記接続領域の外周部に第2の突起を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記突起は、前記接続領域を複数に分割する仕切り状であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記突起は、前記接続領域の外側まで延在していることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
基板上に半導体素子を搭載する工程と、
前記半導体素子の上方に、熱伝導材を介して、前記半導体素子を覆い且つ前記半導体素子の上面に対向する接続領域に突起を有する放熱体を配置する工程と、
前記放熱体を、加熱を行いながら前記半導体素子側に押圧し、前記熱伝導材によって前記上面と前記接続領域とを接続する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2012−227484(P2012−227484A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96304(P2011−96304)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】